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2020年6月4日木曜日

為政者に求められる能力(ハワード・マークス)

前回のつづきで、ハワード・マークスが書いた最新メモのなかで、ウォール・ストリート・ジャーナル紙から引用してきた部分をご紹介します。政治と専門家に関する話題です。

世界的な注目がますます集まっている場所を論じて、チャーリー・マンガー的世界へとつなげている部分を切り取るあたりは、ハワードらしさがよく表れています。(日本語は拙訳)

すくなくとも大統領に類するような職務に就いて統轄していくには、不完全な情報を基にして、競合する候補の中からむずかしい選択をすることが要求される。容易な問題であれば、執務室へあげられる前に解決済である。選出された高官たちが直面するのは、科学的データと世論のどちらによっても適切な解を出せない問題なのだ。そのどちらも重要なため、政治のリーダーはそれらを統合した判断を下さなければならない。しかしながら、それらは「決定的な判断をくだす」という行為自体の代わりを果たせるものではない。

大統領に要求される仕事には、他者の見解に異をとなえる専門家らの意見を聴いたあとに、それらのなかから選び出して、好機と危険の混じる道筋を描くことも含まれる。そして自らのくだした判断に非があれば認め、けりを付ける必要もあろう。これは危機に直面した時にかぎらず、頻繁に行われる。そのような仕事をうまく遂行できる手腕には、本人が身につけたある種の実際的な知恵がかかわってくる。すなわち、「専門家の見解を判断するという意味で、優れた専門家であること」が問われるのだ。 (「専門家では不十分」5月16,17日付)

To govern, at least at the level of the presidency, is to make hard choices among competing options with incomplete information. Easier problems are resolved before they ever reach the Oval Office. Neither scientific data nor public sentiments can properly answer the questions that face elected officials. Both are important and must be integrated into the judgments that political leaders make. But neither can substitute for that crucial act of judgment. . . .

The president’s job, and not only in times of crisis, frequently involves listening to experts disagree with one another and taking responsibility for choosing among them, plotting a course through opportunities and dangers. The capacity to do this well involves its own sort of practical wisdom, an expertise in judging expertise. . . . (“Experts Aren’t Enough,” May 16-17, emphasis added)

言うまでもないですが、この文章は大統領へ向けたものではなく、読み手自身が教訓を引き出すためのものだと受けとめています。

なおチャーリー・マンガーが説く世知、すなわち実践的な知恵の重要性については、おもに彼の講演集『Poor Charlie's Almanack』を訳出する形で、過去記事で取り上げてあります。以下のリンク先に目次ページがあります。

(目次)マンガーの主要記事

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