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2012年12月28日金曜日

ビジョナリー・カンパニーのその後(ダニエル・カーネマン)

前回に続き、カーネマンの『ファスト&スロー』から引用します。今回は「たぐいまれな」能力を持つCEOの話題です。

多かれ少なかれ成功した企業同士の比較は、要するに、多かれ少なかれ運のよかった企業同士の比較にほかならない。読者は運の重要性をすでに知っているのだから、めざましい成功を収めた企業とさほどでない企業とを比較して、ひどく一貫性のあるパターンが現れたときには、眉に唾をつけなければならない。偶然が働くケースで出現する規則的なパターンは、蜃気楼のようなものである。

運が大きな役割を果たす以上、成功例の分析からリーダーシップや経営手法のクオリティを推定しても、信頼性が高いとはいえない。たとえCEOがすばらしいビジョンとたぐいまれな能力を持っているとあなたがあらかじめ知っていたとしても、その会社が高業績を挙げられるかどうかは、コイン投げ以上の確率で予測することはできないのである。『ビジョナリー・カンパニー』で調査対象になった卓越した企業とぱっとしない企業との収益性と株式リターンの格差は、おおまかに言って調査期間後には縮小し、ほとんどゼロに近づいている。トム・ピーターズとロバート・ウォータマンのベストセラー『エクセレント・カンパニー』で取り上げられた企業の平均収益も、短期間のうちに大幅減を記録している。(p.302)


最近取り上げたチャーリー・マンガーの言葉「平均してみれば、ビジネスの質にかけるほうが、経営者の質にかけるよりもよいでしょう」が思い返されますね。(過去記事)

2012年12月26日水曜日

自信を持つなど言語道断である(心理学者ダニエル・カーネマン)

以前とりあげた心理学者ダニエル・カーネマンの新刊『ファスト&スロー』が翻訳されていました。過去記事では、題名の訳を『ぱっと考える、じっくり考える』としてご紹介したものです。現在は上巻を読み終えた段階ですが、内容の充実ぶりに圧倒されています。一般向けの心理学の本は少しずつ読むようにしていますが、本書はチャーリー・マンガーの推薦書『影響力の武器』にならぶバイブル級の一冊になると思います。

重要な意思決定をしなければならない人にとって、参考になるところが多い作品です。投資家のみなさんにも、一読されることを強くおすすめします。

今回は同書から、自信や信念に関する話題を引用します。

あなたはどうしても、手持ちの限られた情報を過大評価し、ほかに知っておくべきことはないと考えてしまう。そして手元の情報だけで考えうる最善のストーリーを組み立て、それが心地よい筋書きであれば、すっかり信じ込む。逆説的に聞こえるが、知っていることが少なく、パズルにはめ込むピースが少ないときほど、つじつまの合ったストーリーをこしらえやすい。世界は必ず筋道が通っているという心楽しい信念は、盤石の土台に支えられている。その土台とは、自分の無知を棚に上げることにかけて私たちはほとんど無限の能力を備えている、という事実である。(p.293)


システム1[瞬発的に判断する機能]は、ごくわずかな情報から結論に飛躍し、しかも飛躍の幅がどの程度かがわからないようにできている。「見たものがすべて」なので、手元にある情報しか問題にしない。それに基づく結論のつじつまが合っていさえすれば、自信が生まれる。私たちが自分の意見に対して抱く主観的な自信は、システム1とシステム2[熟考する機能]がこしらえ上げたストーリーの一貫性に裏付けられているのである。情報は少ないほうがつじつま合わせをしやすいので、情報の量と質はほとんど考慮されない。私たちは、人生で信じていることのうち最も重要ないくつかについては、何の証拠も持ち合わせていない。ただ愛する人や信頼する人がそう信じている、ということだけが拠りどころになっている。自信を持つことはたしかに大切ではあるが、私たちが知っていることがいかに少ないかを考えたら、自分の意見に自信を持つなど言語道断といわねばならない。(p.304)


自信は感覚であり、自信があるのは、情報に整合性があって情報処理が認知的に容易であるからにすぎない。必要なのは、不確実性の存在を認め、重大に受け止めることである。自信を高らかに表明するのは、頭の中でつじつまの合うストーリーを作りました、と宣言するのと同じことであって、そのストーリーが真実だということにはならない。(p.309)


蛇足ですが、字数が多くてうれしいと感じた本は久しぶりでした。

2012年12月25日火曜日

2012年の投資をふりかえって(2)一口投資で撤退編

ピーター・リンチが投資する際に、「気になった企業はひとまず少し買い付ける」という文章をどこかで読んだ記憶があります。この1年はわたしも同じやり方をとってしまい、リンチさんには申し訳ありませんが、あまり誉められたものではないと自省気味に感じています。

今回は、昨年や今年に少額を投資したものの、早々にひきあげた銘柄を振り返ります。基本的には、昨年の投稿で注目銘柄としてあげた企業が対象となります。

6140 旭ダイヤモンド工業
6157 日進工具
3891 ニッポン高度紙工業
6988 日東電工
5201 旭硝子
5333 日本ガイシ
2178 トライステージ

上記のうち、最終的に本格的に投資した銘柄は1社のみとなりました。各銘柄について、以下に売却した理由等を若干記します。

■旭ダイヤモンド工業(6140)
当社は、機械加工で使用する工具のうち、主にダイヤモンドを刃材とするものを製造しています。ニッチで利益率がまずまずだったのですが、近年になってシリコンウエハー切断用のワイヤー「エコメップ」が大ヒットし、利益水準を押し上げました。また財務や配当方針の面でも、株主のほうを向いているように見受けられます。このように、自分の投資方針と合致している会社なのですが、どこか腑に落ちない点が残り、投資をひきあげました。購入は1000円強、売却は1077円で若干の売却益ですが、時期がたまたまよかったようです。その後、昨年来の太陽電池の需給バランスが悪化したことで主力のエコメップの販売が伸び悩み、それに同調して株価も低迷気味で、現在は780円前後です。

何がひっかかっているのか自分でもよくわからないのですが、きちんと納得できないときは、じっとするか手を引くことを旨としています。

■日進工具(6157)
当社は今年の主要投資先となったので、別の回でとりあげます。

■ニッポン高度紙工業(3891)
当社は、主にコンデンサ用セパレータを製造しており、製造技術や素材に特徴があることで、それなりの利益率を確保してきました。地方に本拠地をかまえていることもあり、個人的には応援したい企業なのですが、投資はやめとしました。購入は1400円前後、売却は1250円前後で損失を出しました。現在の株価は650円前後です。

投資をやめた主な理由は2つです。まずは製造拠点の立地についてです。株式投資を始めたころから、リスク管理の中心テーマとして巨大地震のリスク回避を念頭においてきました。今回は東日本でしたが、東海地方を最大のリスクと捉え、同地域周辺を中心拠点とする企業への投資は避けてきました。当社の主要拠点は高知県ということで、当初は確認していませんでしたが、拠点の地図をみると海岸沿いに立地しており、津波の直撃を受ける恐れがありました。なお、このリスクは当社の有価証券報告書に明記されており、新工場を日本海側に建設する大きな理由にも挙げられています。

第2の理由は、設備投資費用が重いことです。この影響のせいか、財務諸表をさかのぼって読むと、株主資本がそれほど増加していない点が気にかかりました。

■日東電工(6988)
投資家に人気のある企業なので、他言は無用かと思います。和製3Mという言葉がぴったりで、経営がうまくまわり、勢いの良さが感じられます。しかし昨年に2900円前後で購入するも、早々に3200円前後で売却しました。現在は4000円前後です。売却した理由として、利益が液晶関連の事業に偏重していることを考えましたが、当社の実績を鑑みれば、もう少し長い目で見て、売らずに保有すべきだったと感じています。株価がまた下がることがあれば、継続保有したいと考えています。

ただし、このような優良企業は全部は売らず、最後の一口(1単元)だけは残すようにしています。

■旭硝子(5201)
当社は液晶ディスプレイ用ガラスで世界シェア第2位につけており、寡占的な事業のため、利益率が高水準です。購入したのは1単元のみで600円、売却は570円なので売却損です。現在は640円です。

売却した理由は2つです。第一に、競合他社のコーニングを調べると、そちらのほうが有望かつ割安に思えたからです。ただし、同社の株式を買うには至っていません。第二は、利益水準と比して自動車関連の事業に関する設備投資が重いことです。これには中長期的な成長戦略が織り込まれているのかもしれませんが、うまく判断できませんでした。きちんと納得できなかったので、利益が出ていたとしてもいずれは売却したと思います。

■日本ガイシ(5333)
当社には投資していません。

■トライステージ(2170)
以前の投稿で触れたので、ここではとりあげません。

これ以外の「一口投資」としては、マニーに投資しました。数単元購入しましたが(2600円強)、日東電工と同じように、株価が若干上がったところで売却し、今は1単元だけの保有です。現在は3200円強です。売却した理由は、そもそもの自分の買値にもうひとつ納得できなかったからです。買値に自信が持てない最大の要因は、当社の顧客動向をきちんと理解していないことです。そのため、顧客との力関係や市場の成長性を、自信をもって判断できていません。当社に対しては、株価が大きく下がらないと本気になって勉強しない、という悪い面がでています。

2012年12月21日金曜日

チェスの名人たちを、目隠ししたまま相手にする(チャーリー・マンガー)

現代の古典ともいえるチャーリー・マンガーの講演は少しばかり古いものが多いのですが、比較的近年のものが公開されていたのでご紹介します。以下のサイトから、Scribdへアップロードされたファイルにリンクされています。

Charlie Munger Lecture at the Harvard-Westlake School (Santangel's Review)

題名にでている「ハーヴァード・ウェストレイク高校」とは以前にとりあげたプレップ・スクールのことで(過去記事)、チャーリーが理事会に関わっている高校です。また、この講演にはオークツリーのハワード・マークスも同席していたようです。

今回から始まるこのシリーズでは、上記のテキストを全訳していきます。PDFファイルで10ページほどの文章ですが、毎度のことながら、のんびりペースで進めていくことをご容赦ください。

ハーバード・ウェストレイク高校におけるチャーリー・マンガーの講話
(2010年1月19日)
Charlie Munger at Harvard-Westlake School January 19, 2010

ジム・ギブソン:
チャーリー、なぜそんなにたくさんの頭脳明晰な人が過ちを犯したのでしょうか。[金融危機のこと]

チャーリー・マンガー:
ああ、それはすばらしい質問ですな。私自身もまったく同じ謎を明かしたいと、これまでかなりの時間を割いてきたものです。非常に優秀でしっかりした人たちが、よってたかってまるでおかしな判断を下し、災厄を招くことがあります。はっきりいって、これはいたるところで見かけられますね。その原因のいくつかは若いころに合点していましたが、この件にはすごく興味があったので、その頃に自分なりに悟りを開きました。6人ものチェスの名人を相手に、しかも目隠ししながら勝負を挑んで勝ちを得るなんて、できっこないと。神は、そのような力をチャーリー・マンガーには与えて下さらなかったのですね。「しょうがないな、わたしがずっと堅実にやっていくのだったら、そういう人たちのように愚かではいけないんですね」。そうしてきたのが、今の私です。

バークシャー・ハサウェイが注目されているのは、我々が何かコツをつかんだように見えることも、その理由のひとつかと思われます。しかしそれは、目覚ましいといったものではなく、単にバカなことを避けているだけのことです。結局は同じことでしょうと思うかもしれませんが、まあ、そうなのかもしれません。しかし我々のようにやってみれば、より深く理解してもらえると思います。つまり、賢い人たちを誘う愚かさの主だったものを見つけ出し、考えたり組み立てるパターンを体系化するのです。そうすれば、その手の愚かしさにはまり込むことはないと思います。さて、現在の状況は、きわめて聡明な人がそろっている場所にも関わらず、ものすごい認知上の誤りがあちこちで起きています。これは本当に興味深いことですね。

それでは、一連の事例をざっとながめていきましょう。まずは学術界による過ちです。最高水準の大学にいる教授連が、完璧にばかげたアイデアにとりつかれています。筆頭にくるのが効率的市場理論ですね。その昔、マッキンゼーに多大なる影響を及ぼした人が、ワシントン・ポストの株が1/5の値段で売られているときに同社に来て、こう発言しました。「株を買ってはなりません。効率的市場理論によれば、会社全体を買う金額の1/5で売られるということはありえないのですから」。当然ながら、こういった愚かな概念を信奉するような心の持ち主は、それを否定するような事実が出てきても、科学における伝統や心の中にある良識に、まるで従わないのです。彼らは何十年間にもわたって、このたわごとを我々の子供に教え込んできましたし、なんともまあ、今でも同じことをやっている人がたくさんいます。この概念は経済学の代表的な教科書にも載っており、ポール・サミュエルソンのような頭のいい人が信じているものです。彼は本当に頭脳明晰な人ですよ。では、賢い人がそのようなばかげた考えをずっと抱いてきたのはなぜでしょうか。もう少し事例をたどった後で、またこの主題に戻ることにします。

Jim Gibson:
Charlie, why did so many smart people get it wrong?

Charlie Munger:
Well, that is a marvelous question and it is such a marvelous question that I have devoted a big chunk of my life to studying that exact question. It was obvious to me for some reason, at an early age, that a great many very brilliant and disciplined people made perfectly screwy decisions that were disastrous -- and that it happened, frankly, wherever I looked. I found this extremely curious, and somehow early in life I got the idea that I would never be able to play chess blindfolded against six Grandmasters and win. God just did not give Charlie Munger any such skill. But I said, ‘Oh my gosh, I cannot be as asinine as all these other people if I just kind of work at it steadily for a long time,' and that is what I did.

I think part of the popularity of Berkshire Hathaway is that we look like people who have found a trick. It's not brilliance. It's just avoiding stupidity. You say it is the same thing just stated differently -- well, maybe it is the same thing just stated differently. But you understand it better if you go at it the way we do, which is to identify the main stupidities that do bright people in and then organize your patterns for thinking and developments, so you don't stumble into those stupidities. Of course, this present situation involves massive cognitive failure at a great number of places dominated by very, very bright people, and that is quite interesting.

Let's just go through the list, briefly. Academia failed. The professors at our greatest universities [have] perfectly asinine ideas -- first, about efficient market theory. One of those people influenced McKinsey [& Company] so much that McKinsey came to the Washington Post at the time it was selling at one-fifth of what it was plainly worth as a share of the total enterprise, and said, ‘You can't buy [the stock] in because, under efficient market theory, it can't be worth a fifth of what people would pay for the whole company.' Of course, the kind of mind that would keep a stupid idea like this when they have a fact that would clearly refute it -- it clearly violates traditions of science and mental decency. They taught this drivel to our children for decades and, by God, a lot of people are still doing it. It was in the major textbooks in economics and people as smart as Paul Samuelson [believed it] -- and that is a significantly smart man. How do smart people get such dumb ideas and hold them so long? I'll try to come back to that theme after I've enumerated more examples.

2012年12月19日水曜日

最高の商売に立ち返る(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーによる世知入門で、バークシャー・ハサウェイが買収したGEICO(ガイコ)の昔話です。このシリーズも今回が最終回になります。(日本語は拙訳)

特上たる事業を営んでいたGEICOはひどい災厄に陥りましたが、それでも商売を続けていました。成功に酔って天狗になってしまい、ばかげたことに踏み入ってしまったのです。これだけ大儲けできるのだから、なんでもやれると考えたのですね。そのツケがまわり、莫大な損失を抱えることになりました。

そんな彼らのすべきことは、やらかした愚行をすべて切り捨て、前からやっていた最高の商売に立ち返ることでした。なんとも単純なモデルだと思われるでしょうが、そのとおりです。過去を振り返れば、この手段は何度も繰り返されています。

我々がGEICOに投資し続けたことであげた利益を考えてみてください。同社のビジネスは素晴らしいものです。しかし一方で、とんでもない商売も抱えていました。容易に手放せたはずなのに、頭はいいけれど気難しい方々がいたおかげで、そうできなかったのです。これこそ、探し当てたい事例の典型といえるでしょう。

いろいろと話をしてきましたが、人生を通じてみれば2,3回は大当たりをみつけられるかもしれませんし、けっこうなものであれば20回や30回はみつけられると思います。

And GEICO had a perfectly magnificent business - submerged in a mess, but still working. Misled by success, GEICO had done some foolish things. They got to thinking that, because they were making a lot of money, they knew everything. And they suffered huge losses.

All they had to do was to cut out all the folly and go back to the perfectly wonderful business that was lying there. And when you think about it, that's a very simple model. And it's repeated over and over again.

And, in GEICO's case, think about all the money we passively made. It was a wonderful business combined with a bunch of foolishness that could easily be cut out. And people were coming in who were temperamentally and intellectually designed so they were going to cut it out. That is a model you want to look for.

And you may find one or two or three in a long lifetime that are very good. And you may find twenty or thirty that are good enough to be quite useful.

2012年12月17日月曜日

手つかずのまま眠っている(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーの世知入門です。ディズニーの話題です。(日本語は拙訳)

どんな経営陣であろうが、値上げするだけで大幅に利益を向上できるビジネスというものが存在します。しかし、それが実施されていないとくれば、これこそ究極の「誰にでもわかる」投資先ですね。そのような企業には、手つかずのまま眠っている莫大な価格決定力があるわけですから。これは成長株モデルの一部をなすもので、人生を通じて何度か出会えるかもしれません。

たとえばディズニーはその力を有しています。孫を連れてディズニーランドへ行くのは非日常的なできごとで、それほど頻繁ではないでしょう。その上、たくさんの人が国中からやってきます。そこでディズニーは価格を大幅に上げられることに気づいたのです。その後も、来場者は増えつづけていきました。

ですから、アイズナーとウェルズがなした見事な業績は彼らの非凡さによるところも大きいですが、あとは値上げのおかげだったのです。ディズニーランドやディズニーワールド、それから昔のアニメ映画のビデオカセットですね。

Within the growth stock model, there's a sub-position: There are actually businesses that you will find a few times in a lifetime where any manager could raise the return enormously just by raising prices - and yet they haven't done it. So they have huge untapped pricing power that they're not using. That is the ultimate no-brainer.

That existed in Disney. It's such a unique experience to take your grandchild to Disneyland. You're not doing it that often. And there are lots of people in the country. And Disney found that it could raise those prices a lot, and the attendance stayed right up.

So a lot of the great record of Eisner and Wells was utter brilliance but the rest came from just raising prices at Disneyland and Disneyworld and through video cassette sales of classic animated movies.


値上げとディズニーの話題は、わずかですが過去記事でも触れています。この文章を踏まえていたのは、言うまでもありません。

2012年12月16日日曜日

合衆国憲法制定会議(アレグザンダー・ハミルトン伝)

前回の投稿で、チャーリー・マンガーはアメリカ合衆国の憲法制定会議について触れていました。話の出所を調べようと思い、伝記作家ロン・チャーナウが書いた『アレグザンダー・ハミルトン伝』をあたってみたところ、内容が一致する箇所があったのでご紹介します。

また[草案を作る]この小委員会では、総じて秘密主義が好ましいという意見が優勢で、予備投票は記録されないことになった。さらに公正を期するため、小委員会は「議場での発言は、許可なく印刷されず、ないしは公表されたり伝達されてたりもしない」ことも決めた。(中略)

新しい憲章を作る会議に、このような非民主的な規則が用いられたのはなぜなのだろう。代表の多くは、自分たちのことを賢明な独立した市民だと考えており、彼らが気にかけていたのは、派閥などという唾棄すべきものではなく、公共の福利だった。「もし討議が公開で行なわれていたとしたら、派閥の怒号に邪魔されて満足な成果を出せなかっただろう」とハミルトンは述べている。「後になって討議の内容が明らかになっていたら、扇動的な雄弁に多くの材料を与えていたことだろう」。非公開の会議だったおかげで、活発で自由な議論が交わされ、史上屈指の啓発的な文書が生まれたのだ。だが同時に、この秘密主義のせいで、会議の内部事情は中傷的な伝説の材料となり、ハミルトンの後のキャリアに悪影響を及ぼすことにもなった。(p.450)


ベンジャミン・フランクリンが「生涯最高の威厳ある立派な会議」と絶賛したこれらの賢人は、いかなる人々だったのか。12邦の代表55名--ロードアイランドは変節して会議をボイコットした--は、アメリカを代表する人々とはあまり言えない。全員が白人で教育を受けた男性であるうえ、大半が裕福な資産家だった。過半数が弁護士で、そのため前例というものを気にしていた。プリンストンの卒業生(9名)が、イェール(4名)とハーヴァード(3名)よりも圧倒的に多かった。平均年齢は42歳で、32歳のハミルトンや36歳のマディソンは若いほうだった。(p.453)


さて、衆院選の投票に向かう時間です。

2012年12月14日金曜日

誤判断の心理学(27)質疑応答(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーによる「誤判断の心理学」は、今回が最後になります。25種類の傾向を示した後に、チャーリーは自問自答の形でいくつかの疑問に答えています。過去記事「(実例)旅客機からの脱出試験」が、今回の前段にあたる文章です。(日本語は拙訳)

3番目の質問も複合的なものです。これら一連の傾向をみてきましたが、現実問題として、この物事を考えるやり方[各種の傾向をチェックリストとして使う方法]にはどんなよさがあるのでしょうか。現実的なご利益は得られるのですか。そういった心理的傾向は広範な進化[遺伝的なものと文化的なものの組み合わせ]を通じて完璧なまでに人の心に組み込まれているので、取り除けないと思いませんか。では、この問いに答えましょう。これらの傾向は、おそらく悪性のものより良性のものが多いと思います。もし反対だったら、人間の状態や限定的な脳の容量から考えると、これらの傾向はきちんと働き、それゆえに人間はここまで到達していなかったと思われるからです。ですから、これらの傾向はただ自然に消失することはないでしょうし、そうなってはならないのです。にもかかわらず、これまで述べてきた心理学的な物事の考え方を正しく理解して使えば、知恵や良き行いを広めることができますし、また災難を避けるのにも役に立つでしょう。これらの傾向を宿命としてうけとめるのではなく、その実態を認識し、対応策を覚えておくことで、トラブルを未然に防ぐ一助となります。数はそれほどありませんが、次に挙げる例をみれば、基本的な心理学的知識があると非常に役に立つことが、改めて認識できるでしょう。

1. カール・ブラウン氏が実践してきたコミュニケーションのやりかた
[未訳出。コミュニケーションの際には、5W1Hを必須とするやりかた。なお同氏の話題は過去記事にもあり]

2. パイロットの訓練に使うシミュレーター

3. アルコホーリクス・アノニマス[断酒団体]が採用しているシステム
[過去記事]

4. メディカル・スクールにおける医療訓練の方法

5. 合衆国憲法制定会議における議事進行上の規則
この会議は完全に非公開とされ、予備的な投票の段階では投票者名は記録されませんでした。また会議末まではいかなるときでも票を覆すことができ、最終的には全会一致をもって決定としました。これは人の心理を重視した、非常に賢明なやりかたです。もし建国者たちがほかの手続きに従っていたら、さまざまな心理学的傾向に影響され、首尾の一貫しない、頑なな態度をとりつづける者が続出したことでしょう。エリートたる建国者たちが心理的な面において鋭敏だったことで、紙一重のところで建国がなしとげられたのです。

6. ばあちゃんのいいつけ
これは、やるべきことを抱えている人に対して動機づけを与え、よりよい成果を挙げるよう仕向けるものです。[過去記事]

7. ハーバード・ビジネス・スクールが強調する決定木の重要性
まだ若かったころの私はおろかにも、ハーバード・ビジネス・スクールのことをバカにしていました。「高校で習う代数を28歳にもなる人たちにむかって、実生活でどう使うのかを教えてるって、どういうこと?」。しかしのちになって私にも道理がわかり、それが非常に重要なことが理解できました。心理的な傾向から及ぼされる悪影響に対抗するためだったのですね。気がつくのが遅かったですが、そうでないよりはマシでしょう。[過去記事]

8. ジョンソン・アンド・ジョンソンにおける事後評価の実施
ほとんどの会社では、買収した会社が失敗だったとしても、おろかな買収に関係した人、事務作業、プレゼンテーションなどは全て、間をおかずに忘れ去られてしまいます。お粗末な結果に関わっていたと思われるので、誰も口にしないのです。しかしジョンソン・アンド・ジョンソンでは定められた規則によって、実施した買収が当初の予想とくらべてどれだけの成果をあげたのか振り返ることを、全員に課しています。これはとても賢明なやりかただと思います。

9. 確証バイアスを避けていたチャールズ・ダーウィンの卓越した先例
このやりかたを模倣したものとして、新薬の研究開発の例があります。これは、試験の際には「二重盲検法」に従うことがFDAによって義務付けられているものです。確証バイアスに対する究極の手段といえるでしょう。[過去記事]

10. 立会取引に対するウォーレン・バフェットのきめごと
参加しないこと。

My third question is also compound: In the practical world, what good is the thought system laid out in this list of tendencies? Isn't practical benefit prevented because these psychological tendencies are so thoroughly programmed into the human mind by broad evolution [the combination of genetic and cultural evolution] that we can't get rid of them? Well, the answer is that the tendencies are probably much more good than bad. Otherwise, they wouldn't be there, working pretty well for man, given his condition and his limited brain capacity. So the tendencies can't be simply washed out automatically, and shouldn't be. Nevertheless, the psychological thought system described, when properly understood and used, enables the spread of wisdom and good conduct and facilitates the avoidance of disaster. Tendency is not always destiny, and knowing the tendencies and their antidotes can often help prevent trouble that would otherwise occur. Here is a short list of examples reminding us of the great utility of elementary psychological knowledge:

One: Carl Braun's communication practices.

Two: The use of simulators in pilot training.

Three: The system of Alcoholics Anonymous.

Four: Clinical training methods in medical schools.

Five: The rules of the U.S. Constitutional Convention: totally secret meetings, no recorded vote by name until the final vote, votes reversible at any time before the end of the convention, then just one vote on the whole Constitution. These are very clever psychology-respecting rules. If the founders had used a different procedure, many people would have been pushed by various psychological tendencies into inconsistent, hardened positions. The elite founders got our Constitution through by a whisker only because they were psychologically acute.

Six: The use of Granny's incentive-driven rule to manipulate oneself toward better performance of one's duties.

Seven: The Harvard Business School's emphasis on decision trees. When I was young and foolish I used to laugh at the Harvard Business School. I said, “They're teaching twenty-eight-year-old people that high school algebra works in real life?” But later, I wised up and realized that it was very important that they do that to counter some bad effects from psychological tendencies. Better late than never.

Eight: The use of autopsy equivalents at Johnson & Johnson. At most corporations, if you make an acquisition and it turns out to be a disaster, all the people, paperwork, and presentations that caused the foolish acquisition are quickly forgotten. Nobody wants to be associated with the poor outcome by mentioning it. But at Johnson & Johnson, the rules make everybody revisit old acquisition, comparing predictions with outcomes. That is a very smart thing to do.

Nine: The great example of Charles Darwin as he avoided confirmation bias, which has morphed into the extreme anti-confirmation-bias method of the “double blind” studies wisely required in drug research by the F.D.A.

Ten: The Warren Buffett rule for open-outcry auctions: Don't go.

2012年12月12日水曜日

ほんまはこいつ賢いんちゃうか(山中伸弥教授)

ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授の聞き語りが新刊で出ていたので、読んでみました。『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』という本です。そのなかで「逆から考える」好例が語られていたので、ご紹介します。

僕らはこの24個の中に、確信するほどではないものの、初期化に必要な遺伝子があるかもしれないと予想していました。そこで24個を1個ずつ、レトロウイルスという遺伝子の運び手を使って、皮膚の細胞(正確には繊維芽細胞)に送りこんでみました。しかし、皮膚の細胞は初期化せず、ES細胞のような細胞はできませんでした。途方に暮れていたところ、ぼくと一緒に奈良先端大から京大に移ってくれた高橋君が驚くべき提案をしました。

「まあ、先生、とりあえず24個いっぺんに入れてみますから」

これがなぜ驚くべきことかというと、遺伝子を外から細胞に送りこんでも、ちゃんとその細胞が取り込んでくれる確率はそんなに高くなく、だいたい数千個のうち1個くらいの割合です。もし遺伝子2個同時であれば取りこまれる確率はもっと低くなる。まして24個なんてできるはずがない。そう考えるのがふつうの生物学研究者です。その点、もともと工学部出身の高橋君はふつうの生物学研究者にはできない発想ができたのだと思います。

実際に24個すべて入れたところ、なんとES細胞に似たものができました。(p.113)


わたしだったら、頭ごなしに確率的に考えてしまい、このような柔軟な発想はできないと思います。24個いっぺんに入れることで、予期せぬ相互作用が生じたのでしょうか。ビジネスの世界では「やってみなけりゃわからない」という言葉をきくことが多いですが、複雑な状況が手詰まりのときには実は有効な選択肢なのかもしれませんね。

そしてもうひとつ、工学部出身にふさわしい秀逸なアイデアが続きます。

24個の中に初期化因子があることは間違いありませんでした。しかし、その中の1個だけではないことも明らかでした。それでは2個か。しかし24個から2個を選ぶ組み合わせの数は24 * 23 ÷ 2で276通りもある。もし3個なら、24 * 23 * 22 ÷ 6で2024通り。こんなにたくさん実験できません。そう考えあぐねていたところ、またしても高橋君が驚くべき提案をしてくれたのです。

「そんなに考えないで、1個ずつ除いていったらええんやないですか」

これを聞いたとき、「ほんまはこいつ賢いんちゃうか」と思いました。24個から1番目の遺伝子を抜いて23個を入れる、次に2番目の遺伝子を抜いた23個を入れるという具合に、1個ずつ抜いていきます。もし本当に重要な遺伝子なら1個欠けても初期化できなくなってしまう。まさにコロンブスの卵のような発想でした。まあ、ぼくも一晩考えれば思いついていたとは思いますが。(p.114)


組合せの回数を減らす取り組みとしては、品質工学(タグチ・メソッド)がよく知られていますが、この高橋さんのアイデアも美しいまでに実学的ですね。個人的な経験を振り返ってみれば、こういうアイデアはいったん頭を冷やした後や第三者からだと出やすいものと感じています。

ところで、新聞を読まないこともあって、山中教授の人となりを知りませんでした。が、本書を読んだかぎりでは、いい意味で普通のおじさんらしい印象を受けました。それほど歳がいっていないせいでしょうか、まだ大きな仕事が残っているとの強い意気込みが感じられる方です。

2012年12月10日月曜日

なかなか2回も当てられない(ハワード・マークス)

前回に続いて、ハワード・マークスの著書『投資で一番大切な20の教え』の話題です。同氏は将来を確率的にとらえた上で意思決定するよう説いていますが、そのプロセスと結果のあいだに横たわる溝に対する見方を引用します。

多くの人は未来が不確実性で覆われていることを認めているが、少なくとも過去は既知で不動だと感じている。しょせん過去は歴史であり、絶対であり、不変だ。だが[ナシム・ニコラス・]タレブは、実際に起こったことは、起きる可能性があったことの小さな集まりに過ぎないと指摘している。したがって、ある計略あるいは行動が(実現した環境下で)良い結果をもたらしたとしても、その背景にあった決断が賢明であったとは限らないのだ。

もしかすると、最終的にその決断を成功に導いたのは、起きるとはまったく考えられていなかった出来事であり、運が良かっただけかもしれない。だとすれば、(結果的にうまくいった)その決断は軽率だった可能性もある。そして、数多くの「違った歴史」のどれかが実現していれば、その決断は誤ったものになっていたかもしれない。(p.237)


すぐれた決断というのは、論理的で知力に秀でた情報通の人が下した決断で、その時点、つまり結果がわかる前の段階において、すぐれているとみなされたものだ。(中略)

損失リスクの場合と同様に、ある決断が正しいものとなるかどうかを左右する多くの要因は、あらかじめ知ったり、数値化したりすることができない。堅実な分析に基づいて、すぐれた決断を下したにもかかわらず、異常事態によって不利益を被った者がいたのか、またヤマを張ったことで利益をあげた者がいたのかを確実に知るのは、事が起きたあとでも難しいかもしれない。つまり、誰が最良の決断を下したのかを知ることは困難なのだ。一方で、過去のリターンは容易に評価できるため、誰が最も儲かる決断を下したのかはわかりやすい。「すぐれた決断」と「儲かる決断」は混同されがちだが、洞察力のある投資家はその違いを十分に認識しているはずだ。

長期的には、すぐれた決断が投資利益をもたらすと信じるほかない。だが短期的には、すぐれた決断が投資利益につながらなかったとしても、冷静に振る舞わなければならない。(p.239)


「世界は、習熟することや予測することが可能な、秩序だったプロセスの中で動いている」と思い込んでいる投資家はプロ、アマを問わず多い。これらの投資家は、物事につきまとうランダム性と、将来の成り行きに関する確率分布を無視している。このため、自分が予測するたった一つのシナリオに基づいて行動する道を選ぶ。それでうまくいくこともあるが(その投資家は称賛されるだろう)、長期的な成功をもたらすほどの一貫した成果はあげられない。注目すべきは、経済予測でも投資戦略でも、その時々でみごとに的中させる者が必ずいるが、同じ人物が2回ということはまれだ。最も成功している投資家とは、大半の場合に「だいたい当たっている」者であり、それが他の投資家よりもはるかにすぐれた点なのだ。(p.310)


確率の話題は、本ブログで何度か取り上げています。たとえば、チャーリー・マンガーが勧めているやりかたは、将来のシナリオを描く際に順列・組み合わせを使うといったものです(過去記事)。

2012年12月8日土曜日

絶対に負けないはずだった(ハワード・マークス)

ファンド・マネージャーのハワード・マークスを過去記事「投資の世界で生き残る公式」でとりあげましたが、コメント欄でisさんが彼の著作が翻訳されていることを教えてくださいました。その『投資で一番大切な20の教え』を読了しました。書かれている内容はオーソドックスですんなりと受けとめられるものばかりですが、重要なのは、投資業界の生存競争に生き残り、現時点で預かり資産800億ドル(日本円で6兆円超)の実績をあげている彼によって書かれたことでしょう。

今回ご紹介するのは、「リスク」を話題にした章であげられた逸話のひとつです。

「最悪の場合の」予測という言葉を何かと耳にするが、実際に起きた状況はそれよりもっと悪かったということがしばしばある。父からよく聞いた話を紹介しよう。いつも負けてばかりのギャンブラーがいた。ある日、馬が一頭しか出場しない競馬のことを知り、借金をつぎ込んでその馬に賭けた。しかし、馬はコースを半周したところでフェンスを越えて逃げてしまった。(p.88)

2012年12月6日木曜日

ソーセージ・マクバフェット(ウォーレン・バフェット)



バークシャー・ハサウェイが買収した新聞社のサイトOmaha.comに、ウォーレン・バフェットの「食」に関する話題がでていました。ときにウォーレンは、ソーセージ・ビスケットを2つ買い、中身のパティを重ねて、ひとつにまとめて食べるとのこと。名付けて「ソーセージ・マクバフェット」(Sausage McBuffett)だそうです。

A traveling Buffett talks taxes, elephants - and less weighty topics (Omaha.com)

もうひとつ、こちらはまじめな話題です。買収候補として求める巨大企業のことを、ウォーレンは"elephant"と喩えています。市場価値が2000億ドル超[1兆6千億円]の企業が該当するようですが、これに関する一節を引用します。(日本語は拙訳)

「その規模の会社でしたら、全部わかります」、バフェットは司会のチャーリー・ローズに答えた。「つまり、すべての象を見張っているということです」。さらにバフェットはこう言った。もしCEOが会社を売りたいと連絡してきたら「5秒か10秒で」返答できます、と。

"I'm familiar with all the companies when you get to that size," Buffett told Rose. "I mean, I've seen all the elephants." If a CEO calls and says a company is for sale, Buffett said, he can make an offer in "five or 10 seconds."

過去記事「10秒ください」の発言と整合していますね。ところで、ソーセージ・ビスケットなる食べ物のことを初めて知りました。

2012年12月5日水曜日

若者の車離れはどうなるのか(GMO)

ジェレミー・グランサムのGMOで、日本の情勢や日本株の見通しを概説したホワイト・ペーパーが公表されていました。このところグランサムは日本株を推していましたが、この文章でも日本企業の見通しは前向きです。

今回はそのなかで登場した日本の「若者の車離れ」について、一節を引用します。(日本語は拙訳)

Japan: After the Quake, After the Floods (GMO)

いくつかのデータによれば、若年層で自家用車の保有率が低下している原因として、低調な所得の伸び率(車を購入できない)、好ましからざる世帯構成(同居している親の車を借りる)、都市化の進展(駐車場不足)などが示されている。このことから、問題なのは車に対する興味ではなく、所得不足によるものであり、景気が上向いて若年層にも所帯を持つのに十分な蓄えができ、郊外へ転居するようになれば、この問題は解決するかもしれない。(p.4)

Some data hint at this, but any weakness in car ownership among younger people may also reflect factors such as weak income growth (cannot buy a car), weak household formation (living at the parents’ house and borrowing the parents’ car), and increased urbanization (no place to park a car). Rather than a lack of enthusiasm for cars, the problem may be a lack of income, solved once the economy picks up and the young have enough money to get married and move to the suburbs.


個人的には、少し楽観的かなという印象を受けました。たとえば、祖父母や両親からの生前贈与で自家用車を購入すると全額が所得控除される、というように税制が変更されれば、少しは消費動向が変わるかもしれませんね。すみません、ただの妄想です。

なお、総務省の「平成21年全国消費実態調査」と平成11年の同調査を比較したところ、たしかに30歳未満や30-39歳の世帯では、単身者および二人以上世帯のいずれも保有率は減少しています。

2012年12月3日月曜日

政府が応援してくれる(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーの世知入門、今回はバイ・アンド・ホールドの核心部分で、税金の話です。(日本語は拙訳)

しかしながら平均してみれば、ビジネスの質にかけるほうが、経営者の質にかけるよりもよいでしょう。どちらをとるかと問われれば、勢いにのっているビジネスをとるべきで、すばらしい経営者のほうではありません。

ですが、ひどいビジネスを立て直そうとする優れた経営者についていくのが実は賢明だったということも、極めて稀には見られます。

効いてくるものとしてもう一点、単純なものですが、税金の影響が挙げられます。資産運用マネージャーか誰かがこのことを話し合っている姿は、ほとんどみたことがありません。さて、30年にわたって年率15%の複利で増えるものを買い、最後の時点で35%の税金を払う場合、税引き後では年率13.3%の利益になります。

一方同じ投資をしても、手にした利益15%から税金35%を毎年払うことになると、15% * 35%を15%から減ずるので、年率9.75%にとどまります。この差は3.5%強ですが、これが30年間もの保有期間にわたって効くので、まさに刮目すべき結果となります。すばらしい企業にずっと投資したままでいる。所得税の仕組みに過ぎないのですが、それゆえに大きな強みとなるのです。

However, averaged out, betting on the quality of a business is better than betting on the quality of management. In other words, if you have to choose one, bet on the business momentum, not the brilliance of the manager.

But, very rarely, you find a manager who's so good that you're wise to follow him into what looks like a mediocre business.

Another very simple effect I very seldom see discussed either by investment managers or anybody else is the effect of taxes. If you're going to buy something that compounds for thirty years at fifteen percent per annum and you pay one thirty-five percent tax at the very end, the way that works out is that after taxes, you keep 13.3 percent per annum.

In contrast, if you bought the same investment but had to pay taxes every year of thirty-five percent out of the fifteen percent that you earned, then your return would be fifteen percent minus thirty-five percent of fifteen percent - or only 9.75 percent per year compounded. So the difference there is over 3.5 percent. And what 3.5 percent does to the numbers over long holding periods like thirty years is truly eye-opening. If you sit on your ass for long, long stretches in great companies, you can get a huge edge from nothing but the way income taxes work.


しかし人生を通じてビジネス上の失策をずっと観察してきましたが、このことは言えます。税金を抑えることばかりに夢中になるのは、とんでもない過ちにつながる典型的な原因のひとつだ、と。税金対策ばかりに心を砕く人がひどい過ちをおかす様子は何度も見てきました。

ウォーレンも私も、個人名義で原油の油井を掘削するようなことはしていません。自分の税金はおさめてきましたし、そうしたあとでも好成績をあげることができました。私から申し上げられるのは、節税商品を勧める人がでてきても、そういうのは買わないことです。

But in terms of business mistakes that I've seen over a long lifetime, I would say that trying to minimize taxes too much is one of the great standard causes of really dumb mistakes. I see terrible mistakes from people being overly motivated by tax considerations.

Warren and I personally don't drill oil wells. We pay our taxes. And we've done pretty well, so far. Anytime somebody offers you a tax shelter from here on in life, my advice would be don't buy it.


すばらしい投資先をいくつかみつけて資金を投じ、ただじっとしている。こうすることで、個人投資家は大きな優位を手にしたことになります。ブローカーに払う手数料は抑えられますし、ろくでもない話を聞かされることもそうありません。さらには国の税制が働いてくれ、複利ベースでみたときの年率を1パーセント、いや2, 3パーセント上乗せしてくれるのです。

利益がでるのだから多額の税金を払うことになったとしても、投資アドバイザーの世話になればずっとうまくやれるだろうし、奮闘してくれるお礼に1パーセント分を払ってもよい、などとお考えですか? なるほど、それはうまくいくといいですね。

There are huge advantages for an individual to get into a position where you make a few great investments and just sit on your ass: You're paying less to brokers. You're listening to less nonsense. And if it works, the governmental tax system gives you an extra one, two, or three percentage points per annum compounded.

And you think that most of you are going to get that much advantage by hiring investment counselors and paying them one percent to run around, incurring a lot of taxes on your behalf? Lots of luck.


この文章の後は引用しませんでしたが、チャーリーは「すばらしい企業であっても、高すぎる買い物はいけません」と注意しています。

2012年12月2日日曜日

2012年の投資をふりかえって(1)失敗編

今年の株式投資を、何度かにわけて総括します。今回は、損失を確定して資金を完全にひきあげた銘柄についてです。

<投資先企業>
トライステージ(2178) (Yahoo! Japan株価)

当社については、昨年から株式購入に前向きなことを何度か表明していました(過去記事など)。その頃の株価は1,000円前後で、現在も同じ水準です。しかし投資結果は損失確定でおわりました。購入平均単価が960円に対して、売却平均単価は850円前後で、株価が下落する最中に売却しています。

当社の株価に対して「安全余裕が十分にある」と判断し、少しまとまった資金を投じました。しかし継続保有せずに損失を出して資金をひきあげました。このような投資行動に、弁解の余地はありません。自分の意思決定がいかに粗末だったか、ふりかえってみます。

■背景
財務指標のよい企業の株価が下がっていると、なにはともあれ注視するところがあります。当社もその一例で、監視銘柄にあげていたところ、実績PERの低さが目にとまったのがはじまりでした。その後、以下のような理由をふまえて投資することにきめました。

・一株当たりの余剰流動資産が大きかったこと
資産の評価は過去記事で取り上げたとおりです。そのため一時的に業績が悪化しても配当は維持され、大きな株価下落は起こりにくいだろうと考えました。つまり、株価の底値の観点からみて安全余裕があると判断していました。

・現段階での高水準の利益率
当社はTV通販の企画屋ですが、経営陣の前職コネによって広告代理店の扱うCM枠を仕入れるルートを確保しています。業界のことをよくわからないながらも、これはひとつの参入障壁だと捉え、今後も利益率を支えてくれるものと考えました。ただし、これが永続するのかどうかは判断できませんでした。

またマーケットの観点については、インターネット広告が急成長しているのは明らかですが、TV通販は急激に消えるものではないと捉えました。TVを漫然と見る消費者層も依然として残るだろうと想定したからです。ただし、この観点についても事業の中長期的な将来性はうまく思い描けませんでした。

一方、主要なリスクとしては「少数ながら大口顧客があるため、そこを逃すと売上高が大幅(10%)に減少する」ことを想定しました。ただし事業自体の利益率が高いことから、1社を逸失しても致命傷にはならないと判断しました。

■実行した投資
株式の売買時期と平均単価は次の図のようになります。


図に示すように、株を売却したのは株価が下落している時期でした。これは、市場全体が下落している時期と重なります。他の銘柄の株価に魅力がでてきていたので、さらなる下落に備えて、余裕資金をふんだんに用意しておきたいという思いがありました。

そこで保有株式の売却を検討したところ、保有したいという思いがいちばん弱かったのが当社でした。財務面からみた割安度はかなり大きく、いずれ(3-5年後)はそれなりの利益が得られると想定していたのですが、一番足りなかったのは自信をもって当社に投資しつづける心構えでした。他の銘柄は全般的に自分なりに納得し、覚悟をきめているのですが、当社はそこまで至っていませんでした。中途半端で始めたものが中途半端に終わる典型で、事業に関する中長期的な見通しも、まったく出番はありませんでした。

わたしが売却した後も大株主のプロスペクトは買い増しを続け、株価は2011年秋の水準である1,000円近辺まで回復しました。また前年比月次売上も、10月からは回復傾向にあります。プロスペクトのほうが賢明な投資をしていると感じました。

■逆に考えてみると...
株価の動きが逆になって、もし含み益がでていたらどうしただろうか、と考えてみました。上がり幅にもよりますが、少なくとも株数の半分は継続保有していたと思われます。当社のことを納得できていないと書いているのに、利益が出ているといないでは方針が一転することになります。大きな矛盾を抱えているな、と自分自身も感じます。しかし、これが現時点での私の正直な姿です。

■教訓
1. 素晴らしいビジネスだと確信できなければ、半額程度の割安水準でも急いで買い進めないこと。
2. 納得できなかったり、どこまでも付き合う覚悟がもてない企業の株は、最初から買わないこと。