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2013年11月30日土曜日

リスキーだがバブルではない(ハワード・マークス)

Oaktreeの会長ハワード・マークスが久しぶりに新しいメモを公開していました。市場全体の動向を描写し、まとめとして現在の価格水準に触れています。そのまとめの部分を引用します。(日本語は拙訳)

The Race Is On (Oaktree) (PDFファイル)

リスクを許容する風潮は最近になってあきらかに高まっています。リスク資産から得られる高いリターンによって相変わらず助長され、市場はさらに過熱しています。セクターによって利益の幅はありますが、2008年末の金融危機や2009年初の株式市場の危機のどん底以来、市場はもっともリスキーな状況にあると断言できます。そしてさらに危険は増しています。

「売り」の合図なのか、それとも別のものか

しかし私は、今が市場から退出する時期だとは考えていません。価格や評価水準は数年前より高くなり、危険な行動も見受けられます。しかし肝心なのはその度合いで、危険な領域にはまだ達していないとみています。

第一の理由として、すでに述べたようにリスクの絶対量が2006-07年ほどには大きくないことがあります。この現代では、金融面での奇跡がたびたび(高頻度とも称される)は起きませんし、借入に依存する水準もそれほどではありません。

第二に、価格や評価水準が高すぎるほどには進展していないことです(S&P500のPERは16前後ですが、これは戦後平均の水準です。一方、2000年には30台前半つまり行き過ぎでした)。

リスクを許容する風潮が高まれば、それに注意を払いながら自分のことに集中すべきです。しかし強く危険視すべきなのは、評価水準が大きく上昇したときです。まだその状況ではないと私は考えます。ほとんどの資産クラスが満額まで値付けされており、多くの場合妥当な水準の上位に達していますが、しかしバブル型の高値にはなっていません。(後略)

Certainly risk tolerance has been increasing of late; high returns on risky assets have encouraged more of the same; and the markets are becoming more heated. The bottom line varies from sector to sector, but I have no doubt that markets are riskier than at any other time since the depths of the crisis in late 2008 (for credit) or early 2009 (for equities), and they are becoming more so.

Is This a Sell Signal? If Not, Then What?

No, I don't think it's time to bail out of the markets. Prices and valuation parameters are higher than they were a few years ago, and riskier behavior is observed. But what matters is the degree, and I don't think it has reached the danger zone yet.

First, as mentioned above, the absolute quantum of risk doesn't seem as high as in 2006-07. The modern miracles of finance aren't seen as often (or touted as highly), and the use of leverage isn't as high.

Second, prices and valuations aren't highly extended (the p/e ratio on the S&P 500 is around 16, the post-war average, while in 2000 it was in the low 30s: now that's extended).

A rise in risk tolerance is something that should get your attention and focus your concentration. But for it to be highly worrisome, it has to be accompanied by extended valuations. I don't think we're there yet. I think most asset classes are priced fully - in many cases on the high side of fair - but not at bubble-type highs.


ハワード・マークスが「まだだ」と言っており、またマクロの状況はあまり気にすべきではないのですが、個人的には中国の過剰な外貨借入れの現状を警戒しています(参考記事)。

2013年11月28日木曜日

ずっと裕福になっていたのに(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーの(再考)世知入門の11回目です。前回の投稿と関連した質疑応答です。(日本語は拙訳)

<質問者> 統計的な分析や洞察に基づくとは、どういうことでしょうか。

<マンガー> たしかに何かを決断するときには、うまく洞察できるものを考えます。しかし洞察できるかどうかが、事実上確率的に決まることもあります。そして繰り返しますが、ほんのわずかしか見つけられません。

単に勝ち目があるというだけでは足りず、そういった機会が我々の認識できるところに来なければならないわけです。ですから、我々の見識で見分けられるような掘り出し物が必要です。そのような組み合わせは、そうそうお目にかかれるものではありません。

それでも大丈夫です。大いなる機会を待ちつづけ、それがやってきたときにしっかりつかむ勇気と精神力を備えていれば、いかほどの数が必要でしょう。バークシャー・ハサウェイが過去に投資した上位10件のビジネスを考えてみればわかります。我々2人の生涯を通じて他に何も手を出していなければ、ずっと裕福になっていたのですから。

ですからくりかえしになりますが、「どんなものに対しても投資上の完全無欠な判断をいつでも下せる」といった仕組みを我々が持っていない以上、みなさんに教えることもできません。そもそも、そんなものはばかげているでしょう。現実を精査する際に利用できるやりかたを説明し、それを理解したみなさんが合理的に反応することで折々に機会を得られるようになる。私のやろうとしているのは、それだけのことです。

その方法を普通株の銘柄選定のような競争の激しい分野で使えば、頭脳明晰な人がたくさんいても太刀打ちできるでしょう。しかし我らのやりかたを使っても、手にできた機会はわずかなものでした。幸いなことに、それで十分でしたが。

Q: Based on statistical analysis and insight?

Well, certainly when we do make a decision, we think that we have an insight advantage. And it's true that some of the insight is statistical in nature. However, again, we find only a few of those.

It doesn't help us merely for favorable odds to exist. They have to be in a place where we can recognize them. So it takes a mispriced opportunity that we're smart enough to recognize. And that combination doesn't occur often.

But it doesn't have to. If you wait for the big opportunity and have the courage and vigor to grasp it firmly when it arrives, how many do you need? For example, take the top ten business investments Berkshire Hathaway's ever made. We would be very rich if we'd never done anything else - in two lifetimes.

So, once again, we don't have any system for giving you perfect investment judgment on all subjects at all times. That would be ridiculous. I'm just trying to give you a method you can use to sift reality to obtain an occasional opportunity for rational reaction.

If you take that method into something as competitive as common stock picking, you're competing with many brilliant people. So, even with our method, we only get a few opportunities. Fortunately, that happens to be enough.

2013年11月26日火曜日

世界を変えて、投資で成功する(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーの(再考)世知入門の10回目です。今回から質疑応答が始まります。(日本語は拙訳)

<質問者> 投資上の判断をする際に、心理学をどのように取り入れていますか。「だれからも気に入られるコークのような製品を選ぶ」、ただそれだけの作業ではないと思うのですが。結局は、どこかに頭のいい人たちがたくさんいて、あなたが今日説明してくださったようにまさしく考えているわけですよね。成功企業を選びだす際には、そういった投資家が思考する上でのあやまちを見つけようとしているのですか。

<マンガー> USC[南カリフォルニア大学]でも話しましたが、投資がむずかしいのは、他社より良い事業を営んでいる企業を見いだすのは簡単だという点にあります。しかし株価が上がるや否や、どの株を買うのが最善かという問題は極めてむずかしいものとなります(過去記事)。

この問題におけるむずかしさを我々が排除できたことは、一度もありません。市場に対する我々の姿勢は、九分九厘において不可知論者です。わからない、ということです。GMがフォードに対して適切に評価されているかなど、わからんのです。

我々がいつもさがしているのは、我々自身の洞察が大幅な統計的優位をもたらすと思われるものです。それが心理学のおかげのときもありますが、他のことのほうがよくあります。ただし1年間で見つけられるのは1,2件程度です。あらゆる投資上の決定においてすぐれた判断を自動的に下せる仕組みなど、持ち合わせていません。我々の仕組みは、まるっきり違うものなのです。

我々が求めているのは何のことはない、簡単に判断できることです。私に限らずバフェットも繰り返し言っているでしょう。2メートル以上もある柵は飛び越せないと。そうではなく、向こう側に大きな見返りが待っている30cmの柵をさがします。ですから我々が成功できたのは、この世界を自分たちにとって単純なものに変えたからであって、むずかしい問題を解いたからではありません。

Q: How do you incorporate psychology in your investment decisions? I think it would be more than just picking products that will appeal to everybody like Coke. After all, there are a lot of smart people out there who obviously think just the way that you showed us today. So are you looking for failure in the thinking of their investors when you go about picking successful companies?

What makes investment hard, as I said at U.S.C., is that it's easy to see that some companies have better businesses than others. But the price of the stock goes up so high that, all of a sudden, the question of which stock is the best to buy gets quite difficult.

We've never eliminated the difficulty of that problem. And ninety-eight percent of the time, our attitude toward the market is … (that) we're agnostics. We don't know. Is GM valued properly vis-a-vis Ford? We don't know.

We're always looking for something where we think we have an insight which gives us a big statistical advantage. And sometimes it comes from psychology, but often it comes from something else. And we only find a few - maybe one or two a year. We have no system for having automatic good judgment on all investment decisions that can be made. Ours is a totally different system.

We just look for no-brainer decisions. As Buffett and I say over and over again, we don't leap seven-foot fences. Instead, we look for one-foot fences with big rewards on the other side. So we've succeeded by making the world easy for ourselves, not by solving hard problems.

2013年11月24日日曜日

慎重派投資家のジェレミー・グランサムが豹変?

ファンド・マネージャーのジェレミー・グランサムに関する記事が、米経済誌バロンズ(Barron's)のWebサイトに掲載されていました。見出しが「今後2年間は強気の見通し」とあり、慎重派のあの人が心変わりしたとはなにごとかと思ったのですが、記事全体を読んでみて納得しました。いつものとおりでした。

Jeremy Grantham's Bullish Two-Year Outlook (Barrons.com)

バロンズに掲載された記事は、実は彼のファンドGMOの2013年第3四半期レターの文章そのものです。今回はその中から話題をいくつかご紹介します。なおグランサム氏のこの話題は、日経新聞のWebサイトでも取り上げられていました(「3割上昇後に急落? 米著名投資家のバブル論」)。(日本語は拙訳)

はじめの引用は、問題の箇所です。

私の個人的な想像では、米国株特に優良銘柄以外は、来年あるいは再来年までの可能性のほうが高そうですが、20%から30%ほど上がると思います。また新興市場を含む世界各国の株式市場も少なくとも部分的には追いつき、好転するでしょう。しかしそのあとにやってくるのが、1999年以来3度目となる深刻なまでの暴落です。グリーンスパンから始まってバーナンキ、イエレンとつづく面々は、おそらく休息をとるでしょう。彼らはみずからの経験による行く末をまぎれもなく予期しているはずです。もちろんですが、我々市民は相応の報いを受けることになります。

My personal guess is that the U.S. market, especially the non-blue chips, will work its way higher, perhaps by 20% to 30% in the next year or, more likely, two years, with the rest of the world including emerging market equities covering even more ground in at least a partial catch-up. And then we will have the third in the series of serious market busts since 1999 and presumably Greenspan, Bernanke, Yellen, et al. will rest happy, for surely they must expect something like this outcome given their experience. And we the people, of course, will get what we deserve.


次の引用こそ、彼の本音にあたる部分だと思います。(2013/11/25追記、一部訂正しました)

しかしそうなるまでは、投資家は米国市場がすでに相当割高だとわかっておくべきです。実際のところ、今後7年間のリターンは実質ベースでマイナスになると我々は確信しています。この夏にはほとんどの外国市場でも急上昇しましたが、いくぶん低いもののこれらも割高です。我々の見解では、分別ある投資家は総じて株式への投資分やリスク水準を既に減らしておくべきです。賢明な投資家(お望みならば「バリュー投資家」とも)は、相場が頂点に達する最終段階では、さまざまな楽しみをまず見送らざるを得ません。これはかなり苦しいことですが、投資における教訓のひとつなのです。今回の相場も、もはや例外ではありません。投機に参加したいという気持ちが慎重な姿勢をくじくかもしれませんし、たぶんそうなります。しかし、これが世の中というものです。中央銀行と共にある我らは、そうなって然るべきなのでしょう。

In the meantime investors should be aware that the U.S. market is already badly overpriced - indeed, we believe it is priced to deliver negative real returns over seven years - and that most foreign markets having moved up rapidly this summer are also overpriced but less so. In our view, prudent investors should already be reducing their equity bets and their risk level in general. One of the more painful lessons in investing is that the prudent investor (or "value investor" if you prefer) almost invariably must forego plenty of fun at the top end of markets. This market is already no exception, but speculation can hurt prudence much more and probably will. Ah, that's life. And with a Fed like ours it's probably what we deserve.


最後の引用はGMOらしい文章で、興味深い過去の事実を紹介しています。今回の彼の発言は、ここから始まっていたようですね。

GMOが設立された1977年の10月以来、36年間が経過しました。その間で、次期選挙に向けて景気を刺激するのが論理的・経験的に必要とされる大統領任期の3年目をみると、ほかの3年間合計よりも1.5倍以上の成績でした。一方の1,2年目はまさに引き締めの時期で、それに伴って市場も不調でした。もっとも不調だった5期分の大統領任期サイクルでは、1,2年目の平均の成績はマイナスでした。一方、3期分のサイクルでは非常に好調な成績におわっています。それら3期の結果が、過剰な刺激傾向を示すグリーンスパン=バーナンキ体制に完全に帰するとは言えませんが、ほとんどはそうだと言えるでしょう。大統領任期サイクルにおける1年間とは、始まりが10月1日で終わりが9月30日であることに留意しておいてください。その3期分のサイクルでの最初の2年間のリターンをみると、1996年のときが48%、1984年が43%、2004年が19%でした。さて、次の事実はおどろくべきものです。1996年から始まるサイクルの最終年は2000年ですが、市場が暴落した年です。1984年サイクルには1987年の暴落がありました。そして2004年サイクルでは2008年の金融危機が発生しています。現在のサイクルは1年目ですでに19%上昇しています。もちろん、非常に好調な2年間にとどまらず全部よかった、となるかもしれません。はたして、どうなることでしょうか。

Since October 1977 when GMO started, 36 years have passed. In that time - when logic and experience say you stimulate to help the next election - the third year has been over 1.5 times the other three added together and years one and two, when you should be tightening, have been commensurately weak. For the weakest five cycles, the average of years one and two was negative but for three cycles it was strong, even very strong. These three cannot be blamed totally on the Greenspan-Bernanke regime's tendency to overstimulate, but mostly they can. Bearing in mind that for us Presidential years run October 1-September 30, these three two-year returns were 1996, +48%; 1984, +43%; and 2004, +19%. Now, this is the scary part. 1996 ended in the 2000 crash, 1984 in the crash of 1987, and 2004 in the financial crash of 2008. In the current cycle we are already up 19% with a year to run! Of course, it may turn out to be a very strong two years and all will be well. Who knows?

2013年11月22日金曜日

累進消費税について(ウォーレン・バフェット)

ウォーレン・バフェットが1994年にネブラスカ大学でおこなった講演その12です。今回も2件の質問に答えています。軽い話題とまじめな話題です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問者> バフェットさん、あなたがコーンハスカー[ネブラスカ大学のアメフト・チーム]の新人クォーターバックを夕食に誘ったといううわさは、本当のことでしょうか。

<バフェット> ちがいます。もしいい人を知っていたら、そうですね..、もしこちらに身体壮健でボールを60ヤード先[=50m超]に放れる人がいたら起立していただけますか。[出身大学のアメフト・チームが]すごく楽しみなのです。われわれのアメフト・コーチは全国でも一番だと思います。彼[コーチのトム・オズボーン]とナンシー[トムの妻]は二人ともすばらしい人です。それは個人的に知っています。今年はすごく運が悪かったので、ぜひ全部の歯車がうまくかみ合うようになってほしいものです。

<質問者> この国の税制は、ビジネスや個人が投資や貯蓄に励むような後押しをしていないと強く感じています。そういった動機づけがないと、国の経済成長は限定されてしまいます。バフェットさんは、付加価値税のような広く適用される消費税に賛成ですか。それと共に譲渡所得税や法人と個人双方[の所得]に課される税率を引き下げ、貯蓄や経済における投資活動を促進させるのです。

<バフェット> ええ、この話をする理由はいろいろあります。その一つが貯蓄を奨励することですが、それとは別の理由で累進税率の消費税がいいと考えています。これは消費する量が増えるほど税率が上がるものです。税率が一定だと比例的に課税されるので、いいやりかたとは思いません。全員に課税する際に同じパーセント分を払わせるようなものです。正直なところ、公平性という面からみて累進消費税がもっとも公平な税だと感じています。現実問題として短期的には経済に悪影響を与えるでしょうが、長い目で見ればもっとも有益だと思います。次第に投資をうながし、基本的には生活水準が向上するでしょう。しかし累進課税ではなく、消費税や連邦売上税などをきっちり比例的にするのは不公平です。ひどく逆進的になるからです。はっきり言えば、他人よりも多く消費する人は、消費することによって社会という蓄えから効率よく引き出すことになります。ですから高い割合で消費する人は、より高い税率を支払うべきだと思います。

わたしは累進税率の消費税導入を強く要請してきましたが、10年前や20年前とくらべると経済学者や政治家にいくぶん受け入れられるようになりました。数十年前には、この考えは経済学の一部の領域に限られていたのです。上院議員の[サム・]ナンと[ピート・V・]ドメニチは1年半前に報告書を出していますが、その中でこれと実質的に同じことを実施するように勧告しています。無制限貯蓄勘定(Unlimited Savings Account)、略称USA というのが彼らのつけた呼び名です。しかし5,6年前にわたしの案ではまだまだだったときとくらべると、今は貯蓄よりも税率のほうが実現しやすいと思います。貯蓄の状況は悪くなってきてはいません。楽観的すぎると思われるかもしれませんが、それでもほとんどの外国の経済とくらべれば、この国では貯蓄を推進するよりも簡単に実現できます。現実問題としては、消費税あるいは無制限のIRA口座[個人退職勘定]がやりやすいでしょう。この国の経済状況は、貯蓄を推進している外国の大多数のようには厳しくないのですから。

Q. Mr. Buffett, I'd just like to know if there is any truth to the rumor that you have been taking Cornhusker quarterback recruits out to dinner?

A. Nope. If I knew any good ones, I think I would, but... If anybody here is healthy and feels like they can throw that ball sixty yards, stand up. I've got an intense interest. I think we have the best football coach in the United States. He and Nancy are both truly outstanding human beings. I know that personally. I would love to see everything come together. I think he has had a lot of bad luck this year.

Q. Mr. Buffett, I believe the Nation's tax code does not provide the incentives for businesses and individuals to save and invest. Without these incentives, the growth of the Nation's economy is limited. Would you support a broad-based consumption tax, such as a value-added tax, combined with offsetting reductions in the capital gains tax and corporate and individual tax rates, to encourage more savings and investment in our economy?

A. Well, I would say this, for various reasons, one of which is encouraging savings, but for other reasons I would favor a progressive consumption tax - a tax where the rates go up as you consume more. I would not favor a flat tax because that’s proportional. That would be like having the some tax on everybody, paying the same percentage. And, I really feel, in terms of equity, that a progressive consumption tax is the most equitable tax. I also think it would have the greatest long-term benefits, although in the short term it would actually hurt the economy. But, over time, I think it would provide more investment and that will provide essentially a higher standard of living. Unless it is progressive though, it’s unfair to have that or a national sales tax or anything that’s strictly proportional, because it gets very regressive and, frankly, I think those people who consume far more than their fellow man are making withdrawals from society's bank effectively when they consume. I think they should pay higher rates as they get up in the high rates of consumption.

But, I've urged a progressive consumption tax and it's achieved somewhat more currency with economists and politicians now than it had 10 or 20 years ago. It was limited to a few academic areas a couple of decades ago. Senators Nunn and Domenici put out a report about 18 months ago, where they recommended something which was equivalent to that. I think they call it USA Unlimited Savings Account. I would say this, though: The tax rates are more conducive to savings now than they were when I was down here five or six years ago. It's not like the situation has gotten worse, in terms of savings. This will sound a little Pollyanna-ish, but it is still relatively easy to save money in this country compared to most economies in the world. A consumption tax or an unlimited IRA, in effect, would make it easier. But, this is not a tough economy compared to most of those around the world in which to save.


ウォーレンの主張する論理「他人よりも多く消費する人のほうが、社会という蓄えから効率よく引き出す」の部分が、恥ずかしながらこれまでは理解できずにいました。しかし今回翻訳するにあたって考え直したところ、ある一面では理解することができました。チャーリー・マンガーは「さまざまな基本的原理を知らないでいるのは不利だ」という趣旨の発言をしていますが、個人的にはその意味を実感できた一件でした。

2013年11月20日水曜日

マックス・プランクの運転手(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の18回目です。前回から間隔があいてしまいましたが、今回まで「総合」の話題がつづきます。(日本語は拙訳)

みなさんを総合の世界へと誘ってきた途中ですが、さて私企業や政府においてどれだけ取り組まれているのか、また何を以って各機能の居場所を決めればよいのか、はたまた総合がうまくいかない理由は何か、こういったことを見極めようとすると、ぐっとむずかしくなります。

私が思うに、経済学を修めて学校を出た高いIQの持ち主であればだれでも、それらの考えすべてを総合した10ページほどの説得力ある文章を書けて然るべきです。しかし、この国の事実上すべての経済学部でこのテストを実施しても、見事にお粗末な総合ばかり返ってくるでしょう。私なら、そちらに大金を賭けます。ロナルド・コース[経済学者]を持ち出してくるかもしれない。取引コストの話になるかもしれない。教授が教えてくれたものの消化しきれないあれこれが出てくるかもしれない。しかし、そういったあらゆるものがどのように相互関連するか本当に理解しているのかとなれば、すごく上手な人はごくわずかだろうと確信をもって予想できます。

じゃあやってみるかと思った人はぜひ挑戦してください。むずかしいことがわかると思います。これに関連して、ぜひ申し上げておきたい興味深い話題があります。プランク定数を発見した偉大なるノーベル賞受賞者マックス・プランクのことです。彼は経済学にいちど挑戦したものの、さじを投げました。指折りの頭脳の持ち主であるマックス・プランクが経済学をあきらめたのはなぜでしょうか。彼の答えはこうでした。「こいつはむずかしすぎる。答えを出そうにも、大雑把で不確かなものにしかならない」。道理を追究していたプランクを満足させるものではなく、けっきょくあきらめることになりました。完璧な道理は導き出せないとプランクが早々に認識していたのであれば、みなさんもまったく同じ結果に到達するだろうと確信できます。

ところでマックス・プランクには有名な逸話があります。真偽のほどはあやしいのですが、こんな話です。ノーベル賞を受賞してから、彼はあちこちから講演を依頼されるようになりました。そこでドイツ中を講演する際に、運転手に車を運転してもらいました。やがて講演内容を覚えてしまった運転手は、あるとき彼に言いました。「どうでしょうプランク教授、お互いの立場をとりかえてみませんか」。そういうわけで、運転手は朝起きると講演にでかけるようになりました。しまいにはある物理学者が席から立ち上がり、きわめて難解な質問をだしてきました。しかし運転手はうまくやったもので、こう答えたのです。「なんとまあ、ミュンヘンのような進んだ街の市民たる方が、そのように初歩的な質問をなさるとは。よろしいでしょう、わが車の運転手に答えさせるとします」(笑)。

Well, I've taken you part way through the synthesis. It gets harder when you want to figure out how much activity should be within private firms, and how much should be within the government, and what are the factors that determine which functions are where, and why do the failures occur, and so on and so on.

It's my opinion that anybody with a high I.Q. who graduated in economics ought to be able to sit down and write a ten-page synthesis of all these ideas that's quite persuasive. And I would bet a lot of money that I could give this test in practically every economics department in the country and get a perfectly lousy bunch of synthesis. They'd give me Ronald Coase. They'd talk about transaction costs. They'd click off a little something that their professors gave them and spit it back. But in terms of really understanding how it all fits together, I would confidently predict that most people couldn't do it very well.

By the way, if any of you want to try and do this, go ahead. I think you'll find it hard. In this connection, one of the interesting things that I want to mention is that Max Planck, the great Nobel laureate who found Planck's constant, tried once to do economics. He gave it up. Now why did Max Planck, one of the smartest people who ever lived, give up economics? The answer is, he said, "It's too hard. The best solution you can get is messy and uncertain." It didn't satisfy Planck's craving for order, and so he gave it up. And if Max Planck early on realized he was never going to get perfect order, I will confidently predict that all of the rest of you are going to have exactly the same result.

By the way there's a famous story about Max Planck which is apocryphal: After he won his prize, he was invited to lecture everywhere, and he had this chauffeur that drove him around to give public lectures all through Germany. And the chauffeur memorized the lecture, and so one day he said, "Gee Professor Planck, why don't you let me try it as we switch places?" And so he got up and gave the lecture. At the end of it, some physicist stood up and posed a question of extreme difficulty. But the chauffeur was up to it. "Well," he said, "I'm surprised that a citizen of an advanced city like Munich is asking so elementary a question, so I'm going to ask my chauffeur to respond." (Laughter).


余談ですが、以前の投稿でご紹介した本『とんでもなく面白い 仕事に役立つ数学』(西成活裕 著)でも、今回と同じ運転手の話題が取り上げられていました。ただし、昔聞いた話ということですが登場人物がアインシュタインになっています(p.234)。

2013年11月18日月曜日

ヤクトマン・ファンドの投資方針

少し前の投稿で引用した文章に、ファンド・マネージャーのドナルド・ヤクトマンが短期的な成績を追わず、現金比率を上げている旨の一節がありました(過去記事)。彼の今年の成績を確認してみると、年初来の成績はS&P500を若干下回っています。また昨年2012年も5%ほど差をつけられていました(ファンドの成績資料PDFファイル)。もちろん現在の彼の動きは長期的な観点によるものであり、はたからそれを観察できるのは個人的には勉強になります。

今回引用するのは、ヤクトマン・ファンドのWebサイトに掲載されているファンドの紹介文です。ウォーレン・バフェットの説明する内容とよく似ていますが(過去記事など)、もう少し具体的な表現に踏み込んだものもあります。(日本語は拙訳)

Managers Investment Group: Yacktman Fund - Overview

<ファンドの狙い>

ヤクトマン・ファンドが主眼とするのは、長期でみたときの資産形成です。そのうえで、現在における収入も副次的な目標としています。当ファンドでは主に米国企業の普通株に投資しますが、多くの銘柄には分散させません。対象企業の規模は問いません。配当金の支払い状況は考慮しますが、必ずしも必須ではありません。[当ファンド]ヤクトマンは規律に基づいた投資戦略に従い、割安と考えられる価格で成長企業を購入します。この方針こそ、「成長株投資」と「バリュー株投資」の最良の特徴を合わせたものとヤクトマンは信じております。株式を購入する際には、次の3つの属性のうち1つ以上を有していると確信できる企業を追求します。その属性とは、第一に優れたビジネスであること、第二に株主本位の経営がされていること、第三が安値で購入できることです。

<優れたビジネスについて>

優れたビジネスは、以下の項目の1つ以上が該当することがあります。

・主力の製品群あるいはサービス群のマーケットシェアが高いこと。
・対有形資産比でのキャッシュ・リターン率が高いこと。
・相対的に少ない設備投資で、成長し続けながらもキャッシュを創出できること。
・顧客の購買頻度が高く、製品ライフサイクルが長いこと。
・独自のフランチャイズを有していること。

<株主本位の経営について>

株主本位の経営者であれば、過大な報酬をみずからに支払うことなく、会社が稼いだ金の使途を賢明に決めるものとヤクトマンは信じています。ヤクトマンが追い求めるのは次のような企業です。

・事業に再投資し、かつ余剰資金をうみだせる企業
・相乗効果のある買収をおこなう企業
・自己株式を買い戻す企業

<安い購入価格について>

ヤクトマンがさがす株式とは、投資家が企業全体を買う際に支払ってもよいと考える金額よりも安く売られているものです。

個々の企業の株価は短期間で大きく変動することがあります。そのような価格変動は企業の本質的な業績の変化と必ずしも連動するわけではありません。よってヤクトマンは通常、購入すべき機会を好んで待つことにしています。そのような機会は市場全体の価格動向と関係なしに出現することがあります。

Fund Focus

The Yacktman Focused Fund seeks long-term capital appreciation, and, to a lesser extent, current income. The Fund is non-diversified and mainly invests in common stocks of United States companies of any size, some, but not all of which, pay dividends. Yacktman employs a disciplined investment strategy, buying growth companies at what it believes to be low prices. Yacktman believes this approach combines the best features of "growth" and "value" investing. When they purchase stocks they generally search for companies they believe to possess one or more of the following three attributes: (1) good business; (2) shareholder-oriented management; or (3) low purchase price.

Good Business

A good business may contain one or more of the following:

High market share in principal product and/or service lines;
A high cash return on tangible assets;
Relatively low capital requirements allowing a business to generate cash while growing;
Short customer repurchase cycles and long product cycles; and
Unique franchise characteristics.

Shareholder-Oriented Management

Yacktman believes a shareholder-oriented management does not overcompensate itself and wisely allocates the cash the company generates. Yacktman looks for companies that:

Reinvest in the business and still have excess cash;
Make synergistic acquisitions; and
Buy back stock.

Low Purchase Price

Yacktman looks for a stock that sells for less than what an investor would pay to buy the whole company.

The stock prices of individual companies can vary significantly over short periods of time, and such price movements are not always correlated with changes in company fundamental performance. Accordingly, Yacktman generally prefers to wait for buying opportunities. Such opportunities do not always occur in correlation with overall market performance trends.


(追記2013/11/19) 「ウォーレン・バフェットの説明する内容とよく似ている」と書きましたが、通りがかりさんからコメントでご指摘頂いたように、「似ている点はあるが、ちがいもある」といった表現のほうが適切でした。


2013年11月16日土曜日

気楽な金もうけはおわりにしよう(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーの(再考)世知入門の9回目です。前回につづいて「不正」の話題です。(日本語は拙訳)

カリフォルニア州の労災制度の話をしましょう。ストレスがかかるのは確かですし、それによる苦痛もあるでしょう。そこで、職場でそういったストレスを抱えている人に補償したいと考えるかもしれません。そうするのは褒められたことだと思うかもしれません。

しかしそのような補償を行うことには問題があります。山のようにでてくる不正をなくすのが事実上不可能なのです。いったん不正に対して補償してしまうと、紹介という企てに乗じる不正直な弁護士、医者、組合などがぞろぞろ出てきます。ひどいふるまいの雰囲気が漂うばかりで、だれもが悪い行いをするようになります。社会の進歩を助けようとしたつもりが、それどころか莫大な害をもたらすのです。

ですから、たやすく不正ができるようなシステムを築くよりも、そのようなことに対して補償しないほうがずっとマシです。つまり、「人生はそんなに甘くない」のです。

ひとつ例をあげましょう。わたしの友人がやっている会社はテキサス州に工場がありました。国境からそれほど離れていない場所で、産業向けの製品を製造していました。彼のビジネスは利益率が低く、なかなか厳しい商売です。その彼は、従業員の労災制度を悪用されてしまいました。金額は莫大で、彼が払う保険料は高くなり、賃金に対する割合が2ケタ台のパーセントに達しました。製品を製造する工程はそれほど危険ではなく、また解体業者というわけでもありませんでした。

彼は労働組合に対して抗議しました。「こういうことはやめてくれ。うちの製品を作るぐらいでは、こういったごまかしの全部をまかなうほどの金は稼げないんだ」。

しかし、だれしもそうするのが習慣になっていました。「これはみんながやっていることで上乗せ分の収入なのだから、おまけの金を手にして悪いわけはない。成功した弁護士や医者やカイロプラクターは、そんなものがいればだが、みんなごまかしているのだから」。

彼らに対して「もうおやめなさい」と諌められる人はいませんでした。ちなみにこれは「パブロフの単なる連想」でもあります。悪い知らせとなれば、それを語る人を憎むわけです。ですから、組合の代表者がみんなに向かって「気楽な金もうけはおわりにしよう」と話すのは非常にむずかしいことでした。組合の代表者として得をすることが何もなかったからです。

結局、我が友人は工場を閉めて、モルモン教の信者が住まうユタ州へ移転することにしました。そこのモルモン教徒は労災制度を悪用していませんでした、少なくとも私の友人の工場ではそうでした。彼が現在支払っている労災保険料がいくらになったかわかりますか。賃金に対する割合が2ケタ台のパーセントだったのが、2%に下がったのです。

この種の不幸なできごとが起こるのは、くだらないことを野放しにするからです。ですから、くだらないことは早々に終わらせるべきです。しばらく放置してしまうと、それをやめさせ、堕落したモラルを取り戻すのは非常にむずかしくなります。

Take the workers' compensation system in California. Stress is real. And its misery can be real. So you want to compensate people for their stress in the workplace. It seems like a noble thing to do.

But the trouble with such a compensation practice is that it's practically impossible to delete huge cheating. And once you reward cheating, you get crooked lawyers, crooked doctors, crooked unions, etc., participating in referral schemes. You get a total miasma of disastrous behavior. And the behavior makes all the people doing it worse as they do it. So you were trying to help your civilization. But what you did was create enormous damage, net.

So it's much better to let some things go uncompensated - to let life be hard - than to create systems that are easy to cheat.

Let me give you an example: I have a friend who made an industrial product at a plant in Texas not far from the border. He was in a low-margin, tough business. He got massive fraud in the workers' compensation system - to the point that his premiums reached double-digit percentages of payroll. And it was not that dangerous to produce his product. It's not like he was a demolition contractor or something.

So he pleaded with the union, "You've got to stop this. There's not enough money in making this product to cover all of this fraud."

But, by then, everyone's used to it. "It's extra income. It's extra money. Everybody does it. It can't be that wrong. Eminent lawyers, eminent doctors, eminent chiropractors - if there are any such things - are cheating."

And no one could tell them, "You can't do it anymore." Incidentally, that's Pavlovian mere association, too. When people get bad news, they hate the messenger. Therefore, it was very hard for the union representative to tell all of these people that the easy money was about to stop. That is not the way to advance as a union representative.

So my friend closed his plant and moved the work to Utah among a community of believing Mormons. Well, the Mormons aren't into workers' compensation fraud - at least they aren't in my friend's plant. And guess what his workers' compensation expense is today? It's two percent of payroll [-- down from double-digits.]

This sort of tragedy is caused by letting the slop run. You must stop slop early. It's very hard to stop slop and moral failure if you let it run for a while.


このシリーズですが、次回からは質疑応答の部になります。長いです。

2013年11月14日木曜日

損失処理で不良債権を一掃する企業(セス・クラーマン)

ファンド・マネージャーのセス・クラーマンの著書『Margin of Safety』からご紹介します。前回のつづきで、第8章「事業価値の算出という技」(The Art of Business Valuation)からの引用です。(日本語は拙訳)

投資家によくみられるのが、自分のくだす未来の評価を楽観的にとらえすぎる傾向だ。その好例として、企業が評価損を計上したときにみせがちな反応がある。企業はこの会計慣行に従うことで、みずからの裁量によって所帯の汚れを一掃できる。つまり業績不振の資産や回収不能な売掛金、不良な貸付金、評価損を伴うあらゆるリストラで生じるコストなどから、即座に解放されるのだ。この施策はウォール街のアナリストだけでなく、投資家からも大歓迎されやすい。それらの損失処理を済ませた企業の業績は、一般的に高ROEで利益率も上昇する。そして業績が改善されたことを将来にも織り込んで予測されるようになり、もっと高い株価で評価される理由づけとなる。しかし財務の大掃除を行ったという歴史を、投資家は大目にみるべきではない。過去の失敗がぬぐいさられたからといって、これまで失敗知らずだったとみるのは安易すぎる。ともすれば、過去にあやまちがないから将来も同じだろうと考えはじめるからだ。現在の黒字経営がまずい状態に陥ることはないし、お粗末な投資がくりかえされることもない、 といった起こりそうもない予想をするようになる。

バリュー投資家は不確実なことを予測することも含めて分析を行う必要があるが、いったいどのように取り組めばよいだろうか。その答えはただひとつ、「保守的にやること」である。あらゆる予測はまちがいと背中合わせなので、楽観的な見通しをするのは、危険な突端にみずから立つことになる。楽観的だと、事実上すべてのことが的中しなければならない。さもなければ損失をこうむるだろう。一方、保守的な予測であれば容易に達成できるし、超過する可能性もある。保守的な見通しをたてた上で、それを起点に価値を評価し、さらにそこから大幅に割り引いた値段で買うこと。それこそが思慮ぶかい投資と言える。(p.125)

Investors are often overly optimistic in their assessment of the future. A good example of this is the common response to corporate write-offs. This accounting practice enables a company at its sole discretion to clean house, instantaneously ridding itself of underperforming assets, uncollectible receivables, bad loans, and the costs incurred in any corporate restructuring accompanying the write-off. Typically such moves are enthusiastically greeted by Wall Street analysts and investors alike; post-write-off the company generally reports a higher return on equity and better profit margins. Such improved results are then projected into the future, justifying a higher stock market valuation. Investors, however, should not so generously allow the slate to be wiped clean. When historical mistakes are erased, it is too easy to view the past as error free. It is then only a small additional step to project this error-free past forward into the future, making the improbable forecast that no currently profitable operation will go sour and that no poor investments will ever again be made.

How do value investors deal with the analytical necessity to predict the unpredictable? The only answer is conservatism. Since all projections are subject to error, optimistic ones tend to place investors on a precarious limb. Virtually everything must go right, or losses may be sustained. Conservative forecasts can be more easily met or even exceeded. Investors are well advised to make only conservative projections and then invest only at a substantial discount from the valuations derived therefrom.

2013年11月12日火曜日

53年分の坂道(ウォーレン・バフェット)

ウォーレン・バフェットが1994年にネブラスカ大学でおこなった講演その11です。今回は2件の質問に答えています。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問者> ネブラスカ州株式ファンドへ投資したのは1回限りのものですか。

<バフェット> ちがいます。そのファンドは1年ぐらい前に州知事か彼の関係する団体が設立したもので、この州の低所得者向け住宅を供給するための出資です。その種のファンドは国中にあり、わたしどもはそういった全国レベルのファンドに拠出してきました。それでネブラスカ州ファンドにも投資してくれないか、と州知事から依頼があったのです。そうですね、いずれ投資しましょうと答えました。そういった投資にはもっと広くから参加してほしいと思います。というのは、社会に貢献するだけでなく、完璧に合理的な投資だからです。その投資によって、われわれの出資分にはどんな犠牲も生じません。これはバークシャー・ハサウェイにとって経済的に理にかなったものです。この州の企業ならば、ぜひ参加してほしいと思います。ですから、この投資は一度きりのものではありません。

<質問者> 私のような若い起業家が開業用の資金を手に入れるにはどうしたらよいでしょうか。

<バフェット> 開業資金がほしいのですか。なかなかむずかしい質問ですね。複利とは坂をころがす雪玉のようなものです。小さな雪玉で始めても、かなり長い坂をころがせば(最初に株を買ったときからなので、わたしの坂は53年分になります)、そして雪の湿り気がうまい具合であれば、最後にはかなりの雪玉に育ちます。でも、こう質問されるかもしれません。「そのてっぺんで、小さな雪玉はどうやって手に入れたのか」と。収入を全部使わずにいくらか残すことしか、わたしの口からは申し上げられません。まあ、遺産をもらえる幸運な人なら別ですが。

ご存知と思いますが、わたしの場合は投資が好きだったので、6歳の時から貯金をしはじめました。学校を出るころにはそれが1万ドルになりました。もちろんですが、お金がたまりやすいのは家族を持つ前です。資金入手を果たす方法として常々感じていたのですが、すでに本業があり、また自分のニーズに合うのであれば(わたしの場合は新聞を配達することでした。1日のうちの数時間を要する仕事としては最高のものでした)、もうひとつ別の仕事をやるという手があります。その稼ぎを全部貯金するのです。タネ銭があって先んじられるのは、人生において非常に重要なことです。有利な場所でタマを込めた鉄砲をかまえていられるのは、すごくいいですよ。資金はほんとうにわずかな金額かもしれません。1万ドルというのはそれほど大金ではなく、たぶん現在の価値で10万ドルぐらいだと思います。ですが、その資金がわたしの強みになりました。それがなかったら、その後のことは果たせなかったと思います。資金をつくるには、収入以下で生活するしかありません。まだ若いときのほうが簡単にできます。特に家族ができる前はそうです。(PDFファイル12ページ目)

Q. Was your investment with the Equity Fund of Nebraska a one time offering?

A. No. About a year or so ago, the Governor, or a group connected with the Governor, organized a fund to sponsor low income, affordable housing in the State. These funds have existed around the country and we had participated in those national funds; so he asked if we would participate in the Nebraska fund. We said yes, and we will participate in the future. I hope that the participation becomes broad, because it not only has a good social purpose, but it's a perfectly intelligent investment. So, it is not like there is any sacrifice on our part in doing this. This is something that makes economic sense for Berkshire Hathaway. And, I would hope that other businesses around the State would join in. It's not a one-time thing.

Q. How would a young entrepreneur, like myself, get start-up cash for my business?

A. Get start-up capital? Well, that's a tough question because compound interest is a little bit like rolling a snowball down a hill. You can start with a small snowball and if it rolls down a long enough hill (and my hill's now 53 years long - that's when I bought my first stock), and the snow is mildly sticky, you'll have a real snowball at the end. And then, somebody says, "How do you get the small snowball at the top of the hill?" I don't know any way to do it except spending less than you earn and saving some money, unless you are lucky enough to inherit some.

In my own case, you know that I was always interested in investing, so I started saving when I was about six and by the time I got out of school, I had about $10,000. It is much easier to save money, obviously, before you have a family than after you have a family. I've always felt that one way to do it, if you've got a job and it's meeting your needs (in my own case, I delivered papers and that's an ideal job for a couple hours a day), is to take a second job and save all the money from that. Getting the initial stake, being ahead of the game, is enormously important in life. It is so much better to be working from a position of strength and have a loaded gun. That may be a fairly small amount of money. Ten thousand dollars doesn't sound so big, although it was probably the equivalent of close to $100,000 now. That was my edge. If I hadn't had that, I wouldn't have had anything to work with subsequently. There isn't really any way to get capital except to spend less than you earn. That's easier when you are very young than at any other time-certainly before you have a family.



2013年11月10日日曜日

バリュー投資家ウォーリー・ワイツの現金比率

ネブラスカ州オマハと言えばウォーレン・バフェットの本拠地です。しかしその土地には、ずっと地味ながらもそれなりに注目されてきた別のバリュー投資家がいます。ウォーリー・ワイツ氏です。今回ご紹介するのは、彼のファンドにおける現在のポートフォリオの現金比率について、米ブルームバーグの記事から引用します。(日本語は拙訳)

Weitz to Yacktman Hoard Cash as Value Managers Find Few Bargains (Washington Post with Bloomberg)
(ワイツからヤクトマンに到るバリュー投資家、掘り出し物がみつからず積みあがる現金)

ミューチュアル・ファンド[=投資信託]のマネージャーであるウォーリー・ワイツは安いと思える株式を買ったことで、過去5年間の成績は同業者の中で上位10%に入った。その彼が、最近はお買い得がほとんどみつからず、手持ち現金が増えるままにしている、と言う。

「すごいアイデアを新しく見つけられるほうがずっと楽しいのですが」、ネブラスカ州オマハにいるワイツに電話でインタビューをすると、そう答えた。彼のファンドのひとつであるワイツ・バリュー・ファンドは預かり資産が1100億円だが、現金や財務省短期証券で保有している割合は9月30日現在で29%になる。「我々は市場がくれるものを頂戴するのですが、今は何もくれませんね」、彼はそう言った。

ワイツが寝かせている現金は、彼の30年間にわたる経歴の中で最高水準に近づいている。これはドナルド・ヤクトマンやチャールズ・ドゥ・ボーといった同業者と同じだ。彼らの話でも、株価は過去最高水準に達しており、お買い得は見出しがたいとのことだった。彼らは、この5年間で株式の上げ相場が4年つづいている現在は現金でいたほうが安全と考え、より高い成績をあえて追いかけない。

プライベート・エクイティーの経営陣レオン・ブラックやウェスリー・エデンスは「行き過ぎた高値になって、売り手市場と化していく」と言っており、ワイツの見解はこれと同調している。またヘッジファンドのマネージャーであるセス・クラーマンは、預かり資産を妥当な水準に保つために資産の一部を顧客へ返還している。

米国株ファンドにおける現金資産の平均は8月31日の時点で、1年前と比較して3.7%から5%へ増加した。シカゴのモーニングスター社のデータによれば、議会が先週合意に達し、暫定的に停止していた連邦政府業務が再開されたことで、S&P500指数が新高値を付け、2013年の上昇率は23%となった。

Wally Weitz, the mutual-fund manager who beat 90 percent of rivals in the past five years by buying stocks he deemed cheap, says bargains are so scarce these days that he's letting his cash holdings swell.

"It's more fun to be finding great new ideas," Weitz, whose $1.1 billion Weitz Value Fund had 29 percent of assets in cash and Treasury bills as of Sept. 30, said in a telephone interview from Omaha, Nebraska. "But we take what the market gives us, and right now it is not giving us anything."

Weitz, whose cash allocation is close to the highest it's been in his three-decade career, joins peers Donald Yacktman and Charles de Vaulx in calling bargains elusive with stocks near record highs. They're willing to sacrifice top performance for the safety of cash as stocks rally for a fourth year in five.

The mutual-fund managers' comments echo private-equity executives Leon Black and Wesley Edens, who say steep prices make this a seller's market. Hedge-fund manager Seth Klarman is returning some client capital to keep assets in check.

The average amount of cash in U.S. equity funds increased to 5 percent as of Aug. 31 from 3.7 percent a year earlier, according to data from Chicago-based Morningstar Inc. That's even as the Standard & Poor's 500 Index rose 23 percent in 2013 after reaching new peaks in the wake of last week's congressional agreement to end the partial U.S. government shutdown.

2013年11月8日金曜日

それでも盗まないでいられるだろうか(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーの(再考)世知入門の8回目です。今回と次回は心理学から派生して「不正」の話題です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

世知のほとんどは、すごく単純なものです。腕まくりして取りくむ意思があれば、私が推奨していることはむずかしいものではありません。そして得られる見返りはすばらしいです。本当にすごいですよ。

しかし、すばらしい見返りに興味がない人がいるかもしれません。不遇が続いても気にしないし、さまざまな自分の好きなことに対してよりよく貢献したいとは考えないかもしれません。そういうつもりであれば、私の話には耳を貸さないでください。なぜなら、すでに正しい道を歩んでいるからです。

人の心理にかかわる世知を考える際には、モラルに関する問題が深く絡みあってきます。このことはいくら強調しても足りないぐらいです。たとえば「盗む」という問題を考えてみましょう。もし容易に盗める状態にあり、かつ捕まる可能性が事実上ないとしたら、大多数の人が盗みをはたらくでしょう。

そしてひとたび盗みに手を染めてしまうと、一貫性の原則[参考記事]、すなわち人の心理面で大きな部分を占めるものが、オペラント条件付け[参考記事]と協調してはたらき、盗みをする習慣がついてしまいます。もし事業を経営している人が、容易に盗みができる環境を自らの方針ゆえにつくっているとしたら、職場で働く人たちに対してモラルの面でひどい傷を負わせていることになります。

あたりまえですが、不正がしにくいシステムを築くことはきわめて大切です。そうしないのは、ここまで進展した社会を壊すことになります。そういった強い動機づけがあると、動機づけによるバイアスを引き起こす上に、悪事をはたらいても問題ないのだと自己を正当化するようになります。

不正をはたらく人には、少なくとも2つの心理的な原理がうかがえます。動機づけによるバイアス[参考記事]、そして社会的証明[参考記事]です。それだけでなく、セルピコ効果[アル・パチーノ主演の映画が有名]も生じます。これは、ある社会環境において悪しき行為から利益を得る人が十分にいると、警鐘を鳴らす人にむかって反抗し、危険な敵となる現象です。

そういった原理を無視して、ばかげたことが忍び込むままとするのは非常に危険です。その心理的な力は強大で、悪行をはたらくからです。

この件が法律の仕事とどう関係するのだろうか、そう感じたかもしれません。では申し上げましょう。スタンフォードのロースクール[=この講演を行っている場所]のような学校を卒業し、崇高なこころざしを抱いてこの国の立法府に進んだ人たちが、容易に不正をはたらくことができる法律を制定するのです。これほどひどいことはなかなかできませんね。

公共の分野で働きたいと望む人がいるとします。そう思案する際の一環として、当然ながら逆から考えてみるでしょう。「我々の社会をダメにするにはどうしたらよいか」。簡単です。社会を堕落させたいのであれば、人が容易に不正をおこなえるシステムを作るように、議会で法案を成立させればいいのです。これで完璧にうまくいきます。

Worldly wisdom is mostly very, very simple. And what I'm urging on you is not that hard to do if you have the will to plow through and do it. And the rewards are awesome - absolutely awesome.

But maybe you aren't interested in awesome rewards or avoiding a lot of misery or being more able to serve everything you love in life. And, if that's your attitude, then don't pay attention to what I've been trying to tell you - because you're already on the right track.

It can't be emphasized too much that issues of morality are deeply entwined with worldly wisdom considerations involving psychology. For example, take the issue of stealing. A very significant fraction of the people in the world will steal if (A) it's very easy to do and (B) there's practically no chance of being caught.

And once they start stealing, the consistency principle - which is a big part of human psychology - will soon combine with operant conditioning to make stealing habitual. So if you run a business where it's easy to steal because of your methods, you're working a great moral injury on the people who work for you.

Again, that's obvious. It's very, very important to create human systems that are hard to cheat. Otherwise, you're ruining your civilization because these big incentives will create incentive-caused bias and people will rationalize that bad behavior is OK.

Then, if somebody else does it, now you've got at least two psychological principles: incentive-caused bias plus social proof. Not only that, but you get Serpico effects: If enough people are profiting in a general social climate of doing wrong, then they'll turn on you and become dangerous enemies if you try and blow the whistle.

It's very dangerous to ignore these principles and let slop creep in. Powerful psychological forces are at work for evil.

How does this relate to the law business? Well, people graduate from places like Stanford Law School and go into the legislatures of our nation and, with the best of motives, pass laws that are easily used by people to cheat. Well, there could hardly be a worse thing you could do.

Let's say you have a desire to do public service. As a natural part of your planning, you think in reverse and ask, "What can I do to ruin our civilization?" That's easy. If what you want to do is to ruin your civilization, just go to the legislature and pass laws that create systems wherein people can easily cheat. It will work perfectly.


参考までに、チャーリー・マンガーは大学を卒業せずにハーバード・ロースクールへ入学しています(過去記事)。また、同僚とともに立ち上げた法律事務所Munger, Tolles & Olsonは、今ではアメリカでも指折りの事務所として評価されています(英文Wikipedia)。

2013年11月6日水曜日

樹木が発生するのは水を好むからではない(エイドリアン・ベジャン教授)

流れとかたち ― 万物のデザインを決める新たな物理法則』という本を最近読みました。熱力学の大家である著者はマクロな視点に立ち、無生物の物理的傾向と生物の進化さらには人間文明の方向性を、ひとつの統一原理「コンストラクタル法則」によって説明しようとしています。これは「あらゆるものごとは、流れをよくする形へと変化する傾向がある」とするものです(英文Wikipedia)。本書で展開される説明はそれなりに説得力のあるものがつづき、なるほどと感心させられます。ただし適用範囲が壮大で、すべて納得できるかというと疑問符がつくかもしれません。意欲作というか問題作というか、先週末に丸の内の丸善をのぞいたときには各所に平積みされており、話題を呼びそうな作品です。

一般に、ミクロ的な基本原理の積み重ねでものごとを説明できればそれに越したことはありません。しかしそれがむずかしかったり、本質をつかみにくい場合には、本書の著者が提示するように俯瞰してとらえるやりかたは有効的だと思います。今回同書から引用する文章はその「俯瞰」の話題とは少し離れますが、本ブログでとりあげる話題に関連する箇所をご紹介します。

まずは、発想の逆転について。チャーリー・マンガーおなじみの思考プロセスですが、この発想には仰天させられました。

熱力学の第二法則によれば、自然界は局地的にも全体的にも、湿気の多い所から少ない所へ水を動かす傾向を示すことになっている。木も草も、湿気の少ない空気が大気から水分を吸い取るために使うストローのようなものだ。(中略)コンストラクタル法則は、樹木と森林が現れて存続するのは大地から大気への水の迅速な移動を促進するためであることを教えてくれる。(中略)樹木が「発生する」のは、そこに水があり、(上方へ)流れなければならないからであって、「木は水を好む」からではない。(p.198)


つぎは、規模の経済についてです。なお、この話題は本書の主題の一部を占めるもので、他の場所でも何度かとりあげられています。

たとえば、質量1,000キログラムのゾウが1キロメートル移動すると、移動する質量1キログラム当たりの食物摂取量は0.0562に比例する。質量が10キログラムのジャッカル100頭が同じく質量1キログラムを同じ距離だけ移動させたら、その1キログラムに必要な食物の量は0.383に比例する。ここで大事なのは、2つの食物必要量の比率、0.0562/0.383(約7分の1)という数値だ。結論として、ゾウが質量1キログラムを移動させると、ジャッカルの質量1キログラムを移動させるときと比べ、食物のコストはわずか7分の1にしかならない。

この事実から、さらに2つの大きな考えが浮かび上がる。第一にこれは、工学、経済学、ロジスティックス、ビジネスの各領域で認められている規模の経済という現象に、理論物理学的な基盤を提供してくれる。何かを大量に動かすときの効率は、規模に応じて向上する。第二にこれは、進化にはものの動きの向上へと向かう方向性があるという考えを際立たせてくれる。雨粒があって初めて川が生じるように、地球上では小さい動物が出てきてから大きい動物が登場した。ゾウより前に単細胞生物が、オオアオサギより前に蚊ぐらいの大きさの昆虫が現れた。コンストラクタル法則を使うと、動きが活発になるだけでなく、動きの効率も向上するという紛れもない傾向が見て取れる。(p.151)


最後の引用は、「コンストラクタル法則」に対する著者の所信表明の中でも東洋的なひろがりが感じられる箇所です。

コンストラクタル法則は、進化についてのダーウィンの考えに物理的原理の後ろ盾を与える。この法則は、特定の変化が他の変化よりも良い理由を説明し、そうした変化は偶然ではなく、より良いデザインの生成を通じて現れることを示してくれる。コンストラクタル法則はまた、進化についての私たちの理解を拡げ、生物学的変化という自然の傾向が、無生物の世界を形作るものと同じ傾向であることを示してくれる。

コンストラクタル法則とはそういうものだから、私たちが森の中を歩くときに感じる統一性の圧倒的な感覚の科学的根拠を提供してくれる。大地も、樹木も、大気も、私たち自身も、本当につながっている。いっさいのものは、同一の普遍的な力によって形作られ、創造の一大交響楽を奏でながら、それぞれが全体を支えているのだ。(p.223)


本書は万人向けするものではないと思いますが、生物の進化や地球物理的な現象のどちらにも興味のある方には刺激を与えてくれる作品です。個人的にはものごとをながめる視点のひとつとして、このメンタル・モデルを積極的に使っていきたいと感じました。

なお、規模の経済については過去記事で何度かとりあげていますが、以下の2つの投稿では「規模の不経済」が登場しています。この件は企業分析を行う際の要所のひとつと感じています。

規模の不経済(チャーリー・マンガー)
何も発明していない男、サム・ウォルトン(チャーリー・マンガー)

2013年11月4日月曜日

ガソリンたっぷりの人たち(スティーブン・ローミック)

FPAのファンド・マネージャーであるスティーブン・ローミックが四半期のレターを出していました。今回は、ポートフォリオの比率に関する話題を引用します。(日本語は拙訳)

FPA Crescent Fund Quarterly Commentary 3rd Quarter (October 8, 2013)

ここ最近の状況ですが、ガソリンたっぷりの人たちがご親切なことに、潜在的な損得勘定を考えるともう魅力がないと思える水準まで、我々の投資先の価格を押し上げてくれました。 頭は正直に、そして心は冷静でいたいと願う以上、この機会に乗じていくらか売却する以外には手がないと考えました。その結果、現在の保有株式銘柄数は46となり、2012年に最大だった時より7つ減少しました。2013年にポートフォリオからはずした11社への投資はすべて利益をだし、平均64%のゲインをあげました。銘柄数が減り、また魅力的な機会が少なくなったことで、買い持ち分の株式合計の割合は2012年末に63.8%だったものが54.2%まで縮小しました。しかし個々の証券のエスクポージャー[価格変動リスクの度合い]はそれに比例して減少してはいません。ほかよりも株価が好調な企業があったところで、それが常に正当だとは言えないからです。[当ファンド]クレセントの正味分の状況としては、有効流動性[=現金等価物]の割合が39.4%へ上昇しました。以前にも述べましたが、機会がめぐってきたときには、この流動性がきっとふたたび我々の味方となってくれるでしょう。

In the meantime, we've taken advantage of the kindness of others who seem to have plenty of petrol and have bid up many of our investments to a point where we find the risk/reward unattractive. To remain intellectually honest and clinically dispassionate, we have found ourselves with little alternative but to make some sales. The number of equity positions now number 46 as a result - 7 fewer than our 2012 peak. Each of the eleven companies purged from the portfolio in 2013 were profitable investments, posting an average gain of 64%. Fewer names and little in the way of attractive opportunities have caused our gross long equity exposure to shrink to 54.2%, down from 63.8% at 2012 year-end. Individual security exposure has not declined ratably, however, as some companies have seen their stock prices perform better than others, and not always justifiably. The net result is that Crescent's available liquidity has increased to 39.4%. As has occurred in the past, we expect that liquidity will inevitably be our friend again once opportunity returns.

2013年11月2日土曜日

石器時代へあともどり(ウォーレン・バフェット、チャーリー・マンガー)

経済誌Fortuneのインタビュー記事で、ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーのコンビがそろって登場していました。よくある話題ですが、ウォーレン側の話題を引用してご紹介します。(日本語は拙訳)

The best advice I ever got (Fortune; November 18, 2013)
(わたしが受けた最高の助言)

<バフェット> わたしには割安株にこだわるところがあったのですが、これはわがヒーローのベン・グレアムから学んだものでした。ところがチャーリーから、「銘柄を探すうえでそのやりかたはよくないよ」と言われたのです。チャーリーはこう説いてくれました。「本当に巨額の財産を時とともに築いていくには、よいビジネスに投資してそこから離れないこと。その上で、よい事業をさらに加えていくこと」。それを聞いてわたしは、まさしく本当に大きく変わりました。すぐにはそうできなかったですし、元に戻ってしまうこともありました。しかしわたしの成績にすごく大きな影響をもたらしました。彼の言ったことは本当に正しかったのです。

<マンガー> 私はふだんからものごとの成否を観察して、なぜそうなるのか考えるようにしていますからね。

<バフェット> そのやりかたで初めて実際に買った事業がシーズ・キャンディーです。これはとびぬけたビジネスでした。昔のわたしだったら、最後の残り数百万ドルが惜しくてしょうがなかったものです。

<マンガー> 残り数百万ドルって言ってますけれど、最後の25,000ドルは惜しんでいたでしょう。

<バフェット> わたしが石器時代へあともどりしないように、チャーリーはずっと注意してくれました。助言の数は、わたしからよりも彼から受けたほうが多いですね。彼の歩んできた人生は非常に合理的なものです。だれかを妬むような言い方はいちども聞いたことがありません。

<マンガー> 昔から言いますからね。「妬んだところで、いいことあるの。こんな罪おかしても、楽しくなんてありゃしない」。

<バフェット> IQよりも気質のほうがずっと大切ですね。

<マンガー> もうひとつ重要な秘訣として、我々は「死ぬまで勉強」という点に長けていることが言えます。若かった時とくらべると、ウォーレンは70,80歳代になってからのほうがいろんな面でよくなっています。ひたすら学びつづけることで得られる優位というのは、それはすばらしいものですよ。

Buffett: I had been oriented toward cheap securities. Charlie said that was the wrong way to look at it. I had learned it from Ben Graham, a hero of mine. [Charlie] said that the way to make really big money over time is to invest in a good business and stick to it and then maybe add more good businesses to it. That was a big, big, big change for me. I didn't make it immediately and would lapse back. But it had a huge effect on my results. He was dead right.

Munger: I have a habit in life. I observe what works and what doesn't and why.

Buffett: The first real business we bought that way was See's Candies. It was an outstanding business. From my past, I didn't want to pay the last few million dollars.

Munger: The last few million? You didn't want to pay the last $25,000!

Buffett: Charlie kept reminding me that I was slipping into the Stone Age again. He's given me a lot more advice than I've given him. He lives a very rational life. I've never heard him say a word that expressed envy of anyone.

Munger: There's an old saying, "What good is envy? It's the one sin you can't have any fun at."

Buffett: Temperament is more important than IQ.

Munger: The other big secret is that we're good at lifelong learning. Warren is better in his seventies and eighties, in many ways, than he was when he was younger. If you keep learning all the time, you have a wonderful advantage.


引用元の記事に掲載されている写真は黒を基調にしており、お二人のシャツやネクタイの色が引き立ってみえます。いいですね。