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2015年9月30日水曜日

専門家をしのぐ方法(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーが2007年に南カリフォルニア大学グールド・ロースクールの卒業式で述べた祝辞の6回目です。今回の話題はチャーリーの中心教義である「学際的メンタル・モデル」です。おなじみの話題ですが「95%」という統計的マジックナンバーも登場しており、彼の信念がよく伝わってきます。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

ロースクールで次の発言を聴いたときに得たアイデアは、途方もなく有用なものでした。おどけた感じの教授がこう言ったときのことです。「2つの物事が互いに入り組んで作用しあっているときに、片方は考慮せずにもう一方だけを検討する。法律家的な思考とは、そのようなやりかたを実現可能かつ有用だとみなす精神なのだよ」。(そのような「法律家的な」やりかたは、何であろうとバカげているね)、彼の遠回しな軽蔑的表現はそう言っているように、私には感じられました。この件によってなおさら私は、あらゆる重要な分野におけるあらゆる重要なアイデアを学ぶほうへと自然に向くようになったのです。そのおかげで、その先生が描写したようなまるっきりのおバカさんにならないで済みました。いいですか、本当に重要なアイデアがあれば、全体の95%を担うことができます。自分が欲するものの95%を手に入れるためにあらゆる分野から得たアイデアを使うのは、私にとってはちっとも難しくありませんでした。得た知識を標準的なものとして思考手順の一部に含めることも同じでした。もちろんひとたびアイデアを覚えたら、それを使う練習をずっと続ける必要があります。ピアノの演奏家のように、うまい演奏をするには練習が欠かせないからですね。ですから、私はその学際的なやりかたを人生を通じて繰り返し練習してきました。

この習慣によってたくさんのものが得られました。生活をずっと楽しくしてくれましたし、より建設的に考えられるようになりました。私にとっては、他の人よりもずっと役に立つものでしたよ。「遺伝によって受け継いだ長所のおかげ」と言えるどれよりも、この身を裕福にしてくれました。適切に練習を積んだことで、私の思考手順は実際に役に立ったのです。ただし効き目抜群なので、その使い方には危険を伴います。自分とはちがう分野の専門家が専門能力を適用してある問題に取り組むよりも、隣りに座ったみなさんのほうがよくわかっている。先に述べた能力をみなさんが使うと、そういう状況がよく起きるようになります。ときには、その専門家には当てられない正答をみなさんが当てることもあります。しかしその専門家が自分の雇い主で、悪影響をもたらせる強い権限を有していることも考えられます。そのような立場は非常に危険ですね。ものごとを正しく進めた結果、相手を責め立てることになり、その人の専門領域や権限階層における面目をつぶしてしまうのです。どうすれば、その深刻な問題がもたらす悪影響を避けることができるのか。いまだに私にはぴったりな方法がわかりません。

Another idea that was hugely useful to me was one I obtained when I listened in law school when some waggish professor said, "A legal mind is a mind that considers it feasible and useful, when two things are all twisted up together and interacting, to try to think about one thing without considering the other." Well, I could see from that indirectly pejorative sentence that any such “legal” approach was ridiculous. And this pushed me further along in my natural drift, which was toward learning all the big ideas in all the big disciplines, so I wouldn't be a perfect damn fool the professor described. And because the really big ideas carry 95% of the freight, it wasn't at all hard for me to pick up about 95% of what I needed from all the disciplines and to include use of this knowledge as a standard part of my mental routines. Once you have the ideas, of course, you must continuously practice their use. Like a concert pianist, if you don't practice you can't perform well. So I went through life constantly practicing a multi-disciplinary approach.

Well, this habit has done a lot for me. It's made life more fun. It's made me more constructive. It's made me more helpful to others. It's made me richer than can be explained by any genetic gifts. My mental routine, properly practiced, really helps. Now, there are dangers in it, because it works so well. If you use it you will frequently find when you're with some expert from another discipline - maybe even an expert who is your employer with a vast ability to harm you - that you know more than he does about fitting his specialty to the problem at hand. You'll sometimes see the correct answer when he's missed it. That is a very dangerous position to be in. You can cause enormous offense by being right in a way that causes somebody else to lose face in his own discipline or hierarchy. I never found the perfect way to avoid harm from this serious problem.

備考です。重要なメンタル・モデルの数はいくつ必要なのかについて、過去の投稿「いくつのモデルが必要なのか」でとりあげています。分野は異なりますが、使う側の認知能力や世の中のフラクタル性を考えると、それほど外れた数字ではないと感じています。

2015年9月28日月曜日

たぶんバフェットも怖かっただろう(セス・クラーマン)

セス・クラーマンが1999年に発表したバリュー投資家に関するエッセイのその2です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

弱気相場を経験した記憶

この逸話を振り返るのは重要だ。というのは弱気相場で起こったこと、つまり「けっこう割安なものでさえも、それよりずっと割安になった」事態を強力に思い起こさせるからだ。 またそれは、その知恵を悟った証しでもあり、力を残しておく必要性を示すものでもある。バフェットがワシントン・ポスト社の株式を早い時期にずっと高い値段で買ったせいで、1974年や75年に一時的な損失が出たことを気に病んでいたら、どうなっていただろうか。同社の株を買い増しできなかっただけでなく、ことによればパニックに陥るか、あるいは株価が順調に転落する間に持ち分を処分してしまったかもしれないのだ。しかし彼がそうしなかったことには、ひとりのバリュー投資家が持ち得る正当な信念が反映されている。それは、安値で買うことによって手にできる安全余裕に対する自信である。

ワシントン・ポスト社の株価がバフェットからすれば垂涎ものまで下落した1974年から75年には、彼はどのような想いで日々を過ごしたのだろうか。確信を持っていた当時の彼は、そのとき落ち込んでいたA地点から将来のB地点には財産が増えると予想していた。しかしそれと同じように、彼にも若干の恐れが湧き上がることがあったのはまずまちがいない。安値で買ったものがほぼ毎日下落するときに自己不信が生まれないとしたら、人間ではないか、リスクをまるで厭わない人だろう。

Bear Market Memory

Recalling this episode is important because it powerfully evokes the memory of what happens in bear markets: Good bargains become even better bargains. It is also inspirational testimony to the wisdom and necessity of staying power: Had Buffett worried about the interim losses in 1974 or 1975 from his earlier and more expensive purchases of Washington Post shares, he might have not only failed to add to his holdings but, conceivably, might also have panicked or been forced out of his steadily dropping position. That he didn't reflects the well-founded conviction a value investor is able to have, confident in the margin of safety that a bargain purchase is able to confer.

Back in 1974 and 1975, when the shares of Washington Post were declining so sweetly for Buffett, what might his daily experience have been like? As confident as Buffett was back then, projecting out his future wealth from currently depressed point A to future point B, there were almost certainly times that a bit of fear rose in his throat, too. He wouldn't be human or risk-averse if the near-daily markdowns of his bargain purchase didn't create room for reflection.

2015年9月26日土曜日

学術界が持つ、価値あるものの例(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーが2007年に南カリフォルニア大学グールド・ロースクールの卒業式で述べた祝辞の5回目です。珍しくチャーリーが誉めているだけあって、堅実で実直な話です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

学術界には価値あるすばらしいものがたくさんあります。それほど昔ではないのですが、その一例に出くわしました。病院理事会の理事長を務めていたときのことです。協議をしていた人物に、メディカル・スクールで学んだM.D.のジョセフ・M・ミラ氏がいました。規律にしたがう職務を何年も経験したことで、この男性は骨腫瘍の病理診断における第一人者となりました。そこで彼は「悪性骨腫瘍の処置に役立てるために、自分が身につけた知識を伝えたい」と考えました。さて、彼はどのように取り組んだでしょうか。そうです、教科書を書くことにしたのですね。その手の教科書が数千冊以上売れることはないと私は思いましたが、結局は世界中のがん医療センターに行き渡ることとなります。彼は1年間のサバティカル休暇をとりました。そして、慎重に保管し体系化しておいたあらゆる撮影スライドを保存したコンピューターに向かって作業しました。彼は1年間を通じて毎週7日間、毎日17時間取り組み続けました。ときに休息をはさみながら、1年経ったところで書き上げました。骨腫瘍の病理診断に関する教科書のなかで、世界で最重要とみなされた双璧を成す片方の本です。「ミラ氏と同じような価値が自分の周囲にあるならば、できるだけたくさん身に付けたい」、みなさんもそう考えると思いますよ。

Academia has many wonderful values in it. I came across an example not too long ago. In my capacity as a hospital board chairman, I was dealing with a medical school academic named Joseph M. Mirra, M.D. This man, over years of disciplined work, made himself know more about bone tumor pathology than almost anybody else in the world. He wanted to pass this knowledge on to help treat bone cancer. How was he going to do it? Well, he decided to write a textbook, and even though I don't think a textbook like this sells more than a few thousand copies, they do end up in cancer treatment centers all over the world. He took a sabbatical year and sat down in his computer with all his slides, carefully saved and organized. He worked seventeen hours a day, seven days a week, for a year. Some sabbatical. At the end of the year he had created one of the two great bone tumor pathology textbooks in the world. When you're around values like Mirra's, you want to pick up as much as you can.

2015年9月24日木曜日

なぜバリュー投資家はちがうのか(セス・クラーマン、1999年)

ヘッジ・ファンドのボスであるセス・クラーマンは本ブログで何度もとりあげています。今回からのシリーズでは、彼が1999年2月15日付で米経済誌バロンズへ寄稿した記事をご紹介します。おもにウォーレン・バフェットをとりあげたエッセイです。(日本語は拙訳)

なお原文ですが、Googleで以下のキーワード検索をすると、バロンズの記事が無料で読めることもあります。またスキャンしたPDFファイルを掲載したサイトもみつかります。

Why Value Investors Are Different - Barron's

ウォーレン・バフェットが50年以上にわたる(そして現在も継続中の)華々しい投資人生でみせてきた最も劇的かつ価値ある教訓とは、1973年から75年の弱気相場の最中に揺らぎない確信を抱いた、今や伝説として語り継がれている顛末だ。彼は1973年になる前に「ワシントン・ポスト社のような企業の株価には、株式が代表している事業そのものの価値の一部分の値段しかついていない」と正しくも見抜いていた。そしてワシントン・ポスト社全体を買収するためならば、当時つけられていた株価の数倍の資金を出す幾多の買い手がいるはずだ、とバフェットは感じていた。しかし同社は創業者一族によって支配されており、売りに出されてはいなかった。バフェットは格安の値段で同社の少数株主の地位を占めることができた。しかし、価値と価格の溝を埋めるように強いることはできなかった。そのため彼は、市場環境が改善され、かつまたは経営陣が事業を成功裏に運営し、株主にとって最良なる務めを果たした後に結果が出るまでの期間を待たねばならなかった。

バフェットにとって幸運だったのは、ワシントン・ポスト社や魅力的な値段になっていた他の企業の株価が、1973年の格安の水準から上昇しなかったことだ。実のところ、その後2年間にわたって容赦ない下落に見舞われ、その規模の大きさゆえに好機が拡大した。バフェットの伝記を書いたロジャー・ローウェンスタインは次のように記している。「巨大店舗の通路で掃き集める[株を買うの意]バフェットの印象ときたら..、市場が下落すると、彼は急げるだけ急いでかき集めた」

The most dramatic and valuable lesson from the fabulous (and still counting) 50-plus-year investment career of Warren Buffett is the legendary account of his steadfast conviction amidst the 1973-75 bear market. He had correctly identified by 1973 that the shares of companies such as the Washington Post were selling for but a fraction of the underlying business value represented by those shares. He observed that numerous buyers would readily pay several times the prevailing market price of Washington Post stock to acquire the entire company, but it was controlled by the founding family and not for sale. Buffett could acquire a minority interest in the business at a bargain price, but he could not force the valuation gap to close. For that, he was dependent on the passage of time to result in improved market conditions and/or on the behavior of management to successfully run the business and to act in the best interest of shareholders.

Fortunately for Buffett, the shares of Washington Post and other attractively priced companies failed to rise from 1973 bargain levels and in fact proceeded to relentlessly decline over the next two years, enhancing the opportunity by orders of magnitude. Roger Lowenstein, in his biography Buffett, describes the "impression of Buffett sweeping down the aisles of a giant store [buying stock]... . As the market fell, he raced down the aisles all the faster."

2015年9月22日火曜日

文明が急速に発展するようになった理由(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーが2007年に南カリフォルニア大学グールド・ロースクールの卒業式で述べた祝辞の4回目です。今回は、以前にも取り上げたことのある内容です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

かつてアルフレッド・ノース・ホワイトヘッド[数学者、哲学者]は、正しくもこう言いました。「文明が急速に発展するようになったのは、人類が『発明の方法を発明した』おかげである」と。そして彼は、一人当たりGDPが劇的に成長したことや我々が当たり前とみなしている数々のものについて言及しました。社会が大幅に発展を遂げたのは数百年前になってからなのです。それ以前の発展度は、1世紀当たりでみてもほとんどゼロに等しいものでした。「文明社会が発展できたのは、発明の方法が発明されてからだった」のと同じで、みなさんも自分自身を向上させるにはまず学ぶ方法を学ばなければなりません。

私にとって非常に幸運だったのは、ロースクールに入って学びの方法を学んだことでした。長き人生において、継続して学ぶ以上に役立ったことはありません。もう一度ウォーレン・バフェットの話題をしましょう。時間をはかりながら彼の様子を観察すれば、起きている時間の半分は読み物をしていることがわかります。そして残る時間の大半は、だれかと電話や対面で話をしています。話の相手は非常に有能な人たちです。ウォーレンが信頼を寄せ、そしてウォーレンを信頼する人たちですね。ウォーレンは俗世間で成功をおさめた人間ですが、近くで観察するとまるで学者のようにみえますよ。

Alfred North Whitehead correctly said at one time that the rapid advance of civilization came only when man “invented the method of invention." He was referring to the huge growth in GDP per capita and many other good things we now take for granted. Big-time progress started a few hundred years ago. Before that progress per century was almost nil. Just as civilization can progress only when it invents the method of invention, you can progress only when you learn the method of learning.

I was very lucky. I came to law school having learned the method of learning, and nothing has served me better in my long life than continuous learning. Consider Warren Buffett again. If you watched him with a time clock, you'd find that about half of his waking time is spent reading. Then a big chunk of the rest of the time is spent talking one-on-one, either on the telephone or personally, with highly gifted people whom he trusts and who trust him. Viewed up close, Warren looks quite academic as he achieves worldly success.

2015年9月20日日曜日

直観に反するように思える投資上の教え(ハワード・マークス)

前々回にご紹介したハワード・マークスのレターから、もう少し引用します。(日本語は拙訳)

最初は、価格下落とリスクについてです。
だれもがリスキーだと感じているものの値段は、「欲しくない」と拒まれるうちに、全然危険でない金額まで低下することがよくあります。否定的な見解が行き渡り、もっともリスクのないものと変わり得るのです。価格に含まれていたあらゆる楽観が取り除かれるからです。(p.7)

When everyone believes something is risky, their unwillingness to buy usually reduces its price to the point where it’s not risky at all. Broadly negative opinion can make it the least risky thing, since all optimism has been driven out of its price.

次も価格下落についてです。
たぶんウォーレン・バフェットを真似ているのでしょうが、好調な時期になると自分の持ち株について「株価がどこそこまで下がってほしい」と話す投資家がでてきます。もっと安い水準で持ち株を増やせるからです。しかしひとたび価格が崩れて平均購入単価を下げる機会がやってきても、歓迎されないほうが多いものです。そして実際に行動に移るのはずっとむずかしいのです。

そのような下落が起きると売却を考える投資家もいるでしょう。「快適に感じられる水準まで売却することが重要だ」といった賢明そうに聞こえる理屈を付けて、感情的な行動を隠すことがよくみられます。しかし売却する際の正当な理由としてまず挙げられるのは、ファンダメンタルが毀損されたか、あるいは価格が相当上昇したか、そのどちらかだと感じたときです。安心したいからといって価格下落時に売却するのは(上昇相場でも同じ理由で購入するように)、価格と価値の関係には何も影響を与えません。(p.12)

In good times - perhaps emulating Warren Buffett – investors talk about how much they’d like to see the stocks they own decline in price, since it would allow them to add to positions at lower levels. But when prices collapse, the chance to average down is usually a lot less welcome ... and a lot harder to act on.

Investors can be tempted to sell during corrections like this one. Oftentimes emotional behavior is cloaked in intelligent-sounding rationalizations like “it’s important to sell down to your comfort level.” But the valid reasons to sell are principally because you feel fundamentals have deteriorated or because the price has risen enough. Selling to get more comfortable as prices fall (just like buying for that purpose in a rising market) has nothing to do with the relationship between price and value.

最後の引用は、ポートフォリオの構成とパフォーマンスについてです。
「うまく分散されたポートフォリオの構成銘柄すべてが良い成績をあげることは望ましい」。それはどうでしょうか。実際のところ、あるシナリオで全銘柄が好成績をあげるとすれば、別のシナリオでは全部ダメになるかもしれません。つまり、分散することの利点を享受できなくなるかもしれないのです。ですから、本当にうまく分散されたポートフォリオの中で遅れをとるものがあったとしても、驚くべきではないですし、すっかり失望する必要もありません。(p.9)

It’s desirable that everything in a well-diversified portfolio performs well - The truth is, if all the holdings were to perform well in one scenario, they could all perform poorly in another. That means the benefits of diversification wouldn’t be enjoyed. It shouldn’t be surprising - or totally disappointing - to have some laggards in a portfolio that’s truly well-diversified.

2015年9月18日金曜日

毎日少しずつ賢くなっていく(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーが2007年に南カリフォルニア大学グールド・ロースクールの卒業式で述べた祝辞の3回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

私がまだずいぶん若い頃に育てた二つめのアイデアは、「称賛に基づいた愛情ほど正しい愛はない」というものです。そのような愛には、教訓を示してくれる死者も含みます。どうにかしてその考えに達した後は、ずっと抱きつづけてきました。私にとって非常に有用なアイデアでしたよ。一方、サマセット・モームが小説『人間の絆』の中で描いたものは病んだ愛情です。あれは災いですね。そのような災厄を抱えていると自覚した人は、捨て去るべきです。

次のアイデアに進みましょう。それは「知恵を身につけよ。それをみずからに義務と課せ」というものです。ここでも孔子を思い起こしたかもしれません。これは単に自分を向上させるだけではありませんよ。その結果として生じるものが非常に重要です。つまり、人生を通じて学びつづけるように要求されるという意味です。生涯学びつづけない人が非常にうまくやっていくなど、できっこないでしょう。すでに身に着けたものだけでは、人生でそれほど多くを手にすることはできません。この地を離れた後にも学びつづけるのです。そうすれば、自分を高めていけるでしょう。

バークシャー・ハサウェイを考えてみてください。世界で最高とみなされている企業のひとつです。有史以来、最も長期にわたって巨額の資産を投資してきた実績を持つ企業と言えるかもしれません。そのバークシャーをある10年間にわたって経営する能力を持っていたとしても、次の10年間も同じ水準の実績をあげるには、その能力のままでは不十分ですね。ですからウォーレン・バフェットは、機械のようにずっと学びつづける必要があったのです。これはもっと低い階層でも同じように必要なことです。私がずっと観察してきた人の中には、最高に頭がいいわけでもなく、最高に熱意があるわけでもない人がいましたが、彼らは出世していきました。そうです、機械のように学びつづけたからです。朝目覚めたときとくらべて、晩にベッドへ入るときのほうがいくぶん賢くなっていたわけです。ですからみなさん、そのような習慣が身を助けます。みなさんのように長い人生がつづくのであれば、なおさらですよ。

The second idea that I developed very early is that there's no love that's so right as admiration based love, and such love should include the instructive dead. Somehow I pick up that idea, and I've lived with it all my life. It's been very useful to me. A love like that described by Somerset Maugham in his book, Of Human Bondage, is a sick kind of love. It's a disease, and if you find yourself with a disease like that, you should eliminate it.

Another idea, and this may remind you of Confucius, too, is that the acquisition of wisdom is a moral duty. It's not something you do just to advance in life. And there's a corollary to that idea that is very important. It requires that you're hooked on lifetime learning. Without lifetime learning, you people are not going to do very well. You are not going to get very far in life based on what you already know. You're going to advance in life by what you learn after you leave here.

Consider Berkshire Hathaway, one of the best-regarded corporations in the world. It may have the best long-term, big-assets-involving investment record in the history of civilization. The skill that got Berkshire through one decade would not have sufficed to get it through the next decade, with comparable levels of achievement. Warren Buffett had to be a continuous-learning machine. The same requirement exists in lower walks of life. I constantly see people rise in life who are not the smartest, sometimes not even the most diligent. But they are learning machines. They go to bed every night a little wiser than they were that morning. And boy, does that habit help, particularly when you have a long run ahead of you.

2015年9月16日水曜日

だれもが好むものだとしたら(ハワード・マークス)

オークツリーの会長ハワード・マークスが9月9日付けで新しいレターを公開していました。夏休み中に執筆できたからか、それとも市場で急激な下落があったからか、今回の文章は力が入っているように感じました。彼にとって語りやすい話題だったのかもしれません。印象に残った箇所を引用してご紹介します。(日本語は拙訳)

It's Not Easy [PDF] (Oaktree Capital Management)

第一段階までしか考えられない人[浅い思考しかできない人]や群れをなす投資家が示すもっとも際立った特徴とは、はっきりと訴えかけてくる投資先を好む点です。容易に理解できるので、気軽に株を買えてしまいます。しかしそのやりかたは投資で成功できる道ではないと思います。この件については、2007年4月に書いたメモ「だれもが知っている」でとりあげました。以下に再掲します。

多くの投資家によって一致をみている見解は、ほぼ必ずやまちがっています。それは明らかに言えることです。

まず申し上げたいのは、大儲けできる可能性をある物事が持つようになるプロセスを、ほとんどの人が理解していない点です。もうひとつは、投資先に対する一般的な見解が寄り集まると、利益の可能性を減じる傾向がある点です。

例として、「だれもが」すばらしいアイデアだと信じている投資先を考えてみます。それは定義上ありえないものだと私は考えています。

・だれもが好むものだとしたら、たぶんそれはこれまで成功してきたからでしょう。そして、それまで続いてきた飛び抜けた成績が将来の成績をも予言している、と考える人がほとんどだと思います。しかし実際には、それまでの見事な成績は将来を前借りしたおかげであって、それゆえに今後の成績が並み以下にとどまると予言している可能性のほうが高いといえます。

・だれもが好むものだとしたら、盲目的な崇拝といえる水準まで価格が上昇しているでしょう。しかしその価格には、相対的にみてわずかしか上昇する可能性が残されていません。(たしかに「割高」なものが「さらに割高」まで上がる可能性はありますが、それが起こるとは期待しないでおきます)

・だれもが好むものだとしたら、その領域は探索し尽くされ、大量の資金が流入することで、割安なものはほとんど残っていないでしょう。

・だれもが好むものだとしたら、もし大衆が集団としての見方を変えて逃げ出そうと動きだせば価格が下落する、という重大なリスクがあります。

卓越した投資家であれば、本来あるべき価格よりも安いかどうかがわかりますし、そのときには買いに動きます。投資対象が本来あるべき価格よりも安くなり得るのは、ほとんどの人がその利点をみていないときだけです。ヨギ・ベラは次のように語ったことで知られています。「あのレストランには、もう誰も来ないぞ。客でいっぱいだからな」。それと同じで、次の言葉も意味を成していません。「だれもがその投資をお買い得だと認識している」。だれもが認識していれば、みんなが買うでしょうし、そうなれば価格が低いままではいないからです。


The most outstanding characteristic of first-level thinkers - and of the investing herd - is that they like things with obvious appeal. These are the things that are easy to understand and easy to buy. But that's unlikely to be the path to investment success. Here's how I put it in "Everyone Knows" (April 2007):

What's clear to the broad consensus of investors is almost always wrong.

First, most people don't understand the process through which something comes to have outstanding moneymaking potential. And second, the very coalescing of popular opinion behind an investment tends to eliminate its profit potential.

Take, for example, the investment that "everyone" believes to be a great idea. In my view by definition it simply cannot be so.

* If everyone likes it, it's probably because it has been doing well. Most people seem to think outstanding performance to date presages outstanding future performance. Actually, it's more likely that outstanding performance to date has borrowed from the future and thus presages sub-par performance from here on out.

* If everyone likes it, it's likely the price has risen to reflect a level of adulation from which relatively little further appreciation is likely. (Sure it's possible for something to move from "overvalued" to "more overvalued," but I wouldn't want to count on it happening.)

* If everyone likes it, it's likely the area has been mined too thoroughly - and has seen too much capital flow in - for many bargains to remain.

* If everyone likes it, there's significant risk that prices will fall if the crowd changes its collective mind and moves for the exit.

Superior investors know - and buy - when the price of something is lower than it should be. And the price of an investment can be lower than it should be only when most people don't see its merit. Yogi Berra is famous for having said, "Nobody goes to that restaurant anymore; it's too crowded." It's just as nonsensical to say, "Everyone realizes that investment's a bargain." If everyone realizes it, they'll have bought, in which case the price will no longer be low.

2015年9月14日月曜日

望みのものを得るためのもっとも手堅い方法(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーが2007年に南カリフォルニア大学グールド・ロースクールの卒業式で述べた祝辞の2回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

私にとって役に立った主要なアイデアとはなんだったでしょうか。私がそのアイデアに思い至ったのは、幸運にも非常に若い頃でした。それは「望みのものを得るためのもっとも手堅い方法とは、望むものにふさわしい人間になること」というものです。単純そのものですね、黄金律です。自分が逆の立場のときに買いたいものを、世界中に提供したいと考えるわけです。私としては、法律家だろうと誰であろうとそれ以上に良いエートスはない、と考えています。概して言えば、そのエートスを獲得した人は人生で成功をおさめています。単に金銭や名誉を勝ち取るだけではありません。関わりのある人たちから、尊敬つまり相応の信頼を抱かれるようになります。相応の信頼を得るようになれば、非常に満ち足りた日々になるものです。

金持ちで有名人ながらも徹底して不正直な人間が亡くなった、ときにはそんなことがあるかと思います。しかしその手の人は、周囲の社会からは卑劣な人間としてほぼ必ずや受けとめられています。大聖堂に葬儀の参加者があふれたとしても、ほとんどの人は当人が死んだという事実を祝福するでしょう。そういえば、こんな話を思い出しました。その手の人間が亡くなったときに、牧師がこう言いました。「さあ、いまこそ故人の美点をおはなしください」。口を開く者はいませんでした。じっといつまで待っていても、誰も口を開きませんでした。しかし、とうとう話し出した男がいました。「たしか彼の兄弟のほうが悪人でしたよ」(聴衆笑)。まさに赴きたくない場所ですね。そのような葬式で終わる人生は、みなさんの望むところではないと思います。

What are the core ideas that have helped me? Well, luckily I had the idea at a very early age that the safest way to try to get what you want is to try to deserve what you want. It's such a simple idea. It's the golden rule. You want to deliver to the world what you would buy if you were on the other end. There is no ethos in my opinion that is better for any lawyer or any other person to have. By and large, the people who've had this ethos win in life, and they don't win just money and honors. They win the respect, the deserved trust of the people they deal with. And there is huge pleasure in life to be obtained from getting deserved trust.

Now, occasionally, you will find a perfect rogue of a person who dies rich and widely known. But mostly these people are fully understood as despicable by the surrounding civilization. If the Cathedral is full of people at the funeral ceremony, most of them are there to celebrate the fact that the person is dead. That reminds me of the story of the time when one of these people died, and the Minister said, "It's now time to say something nice about the deceased". And nobody came forward, and nobody came forward, and nobody came forward. And finally one man came up and said, "Well, his brother was worse". (Audience laughs.) That is not where you want to go. A life ending in such a funeral is not the life you want to have.

2015年9月12日土曜日

知能指数(IO)と合理性指数(RQ)(マイケル・モーブッシン)

マイケル・モーブッシンは以前に何度かとりあげました。クレディ・スイスにもどってさらに昇進したようですが、おもしろそうな文章をひきつづき発表しているようです。今回はそのひとつ、"IQ versus RQ"というレポートの一部を引用します。(日本語は拙訳)

IQ versus RQ - Differentiating Smarts from Decision-Making Skills [PDF] (Credit Suisse)

はじめに

トロント大学発達・応用心理学部のキース・スタノヴィッチ教授は、知能指数(IO)と合理性指数(RQ)を区別してとらえている。一般に、心理学者は特別なテストを用いてIQを測定する。ウェクスラー成人知能検査のそのひとつで、SAT(大学進学適性試験)のような標準化されたテストにおける獲得点数と相関性が高い。

IQはある種の現実を測定するし、ある種の結果とも関連する。たとえばSATの数学のテストで成績が上位0.1%に入る13歳の子供は、上位0.9%-1.0%の成績をとる子供とくらべると、数学や科学の分野で博士号の学位を取得できる可能性が18倍だった。

一方、RQは合理的に思考する能力を示すものであり、結果的に良い判断をくだせるかどうかを決める。一般的に、知能と合理性は軌を共にすると考えられている。しかしスタノヴィッチ教授の研究が示すところでは、IQとRQの相関係数は比較的小さく、0.2から0.35である。知能検査は、思慮ある判断をくだす思考能力をとらえるようには設計されていないことになる。

不合理な行動が高くつく状況において、ほぼすべての社会が知能にばかり目を向けていることを、スタノヴィッチ教授は遺憾に感じている。しかし注意していれば、合理的思考の印をみつけられるものだ。スタノヴィッチ教授が挙げる例としては、順応的な行動、効果的な行動抑制、実際的な目標順序設定、熟考、証拠の適切な扱い、などがある。

しかしSATの点数は、そういった特質のいずれに対してもほとんど光を当ててくれない。だから自分や他人の決断を評価するには、まずはじめにIQとRQを別物としてみなすことが大切になる。バークシャー・ハサウェイのCEO兼会長を務めるウォーレン・バフェットは、IQのことをエンジンの馬力にたとえ、RQのことをエンジンがうみだす出力にたとえている。だれもが知っているように、IQは高いがRQは平均かそれ以下という人がいるものだ。この人の場合は「効率が悪い」と言うことができる。その一方で、まばゆいほどのIQは備わっていないが、一貫して適切な判断をくだす人もいる。この人は「効率が高い」ことになる。

ウォーレン・バフェットの場合、馬力と出力のどちらもとても大きい。しかし成功した理由を問われると、「大きな違いを生み出したのはIQではなくてRQのほうだった」と彼は強調する。

「わたしの場合、ここまできたのはすごく単純なことでした。IQではありません。これを聞いてきっと喜ぶかと思いますが、重要だったのは合理性のほうです。IQや才能は、モーターでいうところの馬力を表現するものと考えています。しかし出力は、つまりそのモーターが生み出す効率は、合理性によって決まります。400馬力のモーターで始めても100馬力分の出力しか得られない人はたくさんいます。それならば、200馬力のモーターでもその全部が出力になるほうがずっといいです」(参考記事)


スタノヴィッチ教授による心理学の研究は、バフェットの見解を支持している。RQを測定する包括的なテストはまだ存在しない。教授は目下開発中だが、我々は較正(キャリブレーション)を使っていこうと考えている。これは合理性における重要な側面のひとつである。本研究の一部でもあるように、我々は何千名もの較正を計測した。おもしろいことに、あなたもこの演習に参加することができる。そして、他人とどう違うのかくらべることができるのだ。 (p.2)

Introduction

Keith Stanovich, a professor of applied psychology at the University of Toronto, distinguishes between intelligence quotient (IQ) and rationality quotient (RQ). Psychologists measure IQ through specific tests, including the Wechsler Adult Intelligence Scale, and it correlates highly with standardized tests such as the SAT.

IQ measures something real, and it is associated with certain outcomes. For example, thirteen-year-old children who scored in the top decile of the top percent (99.9th percentile) on the math section of the SAT were eighteen times more likely to earn a doctorate degree in math or science than children who scored in the bottom decile of the top percent (99.1st percentile).

RQ is the ability to think rationally and, as a consequence, to make good decisions. Whereas we generally think of intelligence and rationality as going together, Stanovich's work shows that the correlation coefficient between IQ and RQ is relatively low at .20 to .35. IQ tests are not designed to capture the thinking that leads to judicious decisions.

Stanovich laments that almost all societies are focused on intelligence when the costs of irrational behavior are so high. But you can pick out the signatures of rational thinking if you are alert to them. According to Stanovich, they include adaptive behavioral acts, efficient behavioral regulation, sensible goal prioritization, reflectivity, and the proper treatment of evidence.

Your SAT scores shed little light on any of these qualities. So the first lesson in assessing your own decisions or those of others is to consider IQ and RQ separately. Warren Buffett, chairman and chief executive officer (CEO) of Berkshire Hathaway, equates IQ to the horsepower of an engine and RQ to the output. We all know people who are high on IQ but average or low on RQ. Their efficiency is poor. There are others without dazzling IQs but who consistently make sound decisions. They are highly efficient.

Warren Buffett has plenty of horsepower and output. But when asked about his success, Buffett emphasized that it was RQ that made the big difference, not IQ:

How I got here is pretty simple in my case. It's not IQ, I'm sure you'll be glad to hear. The big thing is rationality. I always look at IQ and talent as representing the horsepower of the motor, but that the output - the efficiency with which that motor works - depends on rationality. A lot of people start out with 400-horsepower motors but only get a hundred horsepower of output. It's way better to have a 200-horsepower motor and get it all into output.


Stanovich's psychological research supports Buffett's observation. While there is not yet a comprehensive test to measure RQ - Stanovich is working on it - we will look at calibration, one of the important facets of rationality. As part of this research, we measured the calibration of thousands of people. And part of the fun is that you, too, can participate in the exercise and see how you stack up versus others.

2015年9月10日木曜日

USCグールド・ロースクール卒業式祝辞(チャーリー・マンガー)

今回から始まるこのシリーズでは、チャーリー・マンガーの講演などを収録した『Poor Charlie's Almanack』から講演その10(Talk Ten)を全訳でご紹介します。南カリフォルニア大学のロースクールを卒業する学生に向けた祝辞ですので、ハーバード・ロースクールを卒業して弁護士として活躍していたチャーリーにはもってこいの聴衆です。

なおインターネット上でトランスクリプトをさがしたところ、以下のサイトにも掲載されていました。ここで紹介するものと細部は異なっていますが、大筋は同じだと思います。

Charlie Munger – USC Law Commencement Speech (genius.com)

南カリフォルニア大学グールド・ロースクール卒業式祝辞
2007年5月13日

さて、この場におられるみなさんの中には、「ずいぶんと年を取った話し手が出てきたものだ」と考えておられる方がたくさんいるに違いないと思います(聴衆笑)。そのわけははっきりしています。まだ死んでいないからです(聴衆笑)。なぜこの演者が選ばれたのか。それは私にもわかりません。校友関係を担当する部署が何もしなかったからと考えておきましょう。

理由がどうであれ、後方の席にはローブを身に着けていない年配の方々が大勢臨席なさっていますから、私が話をするのもぴったりかと思います。前側の席におられるローブを来た学生のみなさんは、本日こうして栄誉を称えられることになります。私もたくさんの子や孫を教育しましたが、まさに彼らも同じことに値する者たちでした。献身や叡智そして資産移転は、ある世代から次の世代へとなされるものですが、そのことには常々感謝すべきだと思います。私からみて左側にはアジア系の人たちが大勢おられます。これも喜ばしいことです。私は孔子の教えをずっと称賛してきました。「孝(あるいは孝行)」という彼の思想を気に入っています。それは教え教わるものであり、おのずと生じる義務でもあります。「孝」という概念は次の世代へと受け継がれるべきでしょう。その思想に意義を感じない方がいたら、思い返してみてください。アジア系の人たちがアメリカ社会でどれだけ急速に台頭してきたかを。「孝」の思想には有意義なところがあると私は考えています。

さて今日は、書きつけておいた文章のいくつかは消したものの、私にとってうまくいった考えや姿勢について説明したいと思います。だれにでも完璧にうまくいくとは望んでいませんが、その多くは普遍的な価値を持つとともに、「失敗しようのないもの」だと申しておきます。

USC Gould School of Law Commencement Address
The University of Southern California
May 13, 2007

Well, no doubt many of you are wondering why the speaker is so old. (Audience laughs.) Well, the answer is obvious: He hasn't died yet. (Audience laughs.) And why was this speaker chosen? Well I don't know that. I'd like to think that the development department had nothing to do with it.

Whatever the reason, I think it's fitting that I'm speaking here because I see a crowd of older people in the rear, not wearing robes. And I know, from having educated an army of descendants, who it is that really deserves a lot of the honors that are being given today to the robe-wearing students in front. The sacrifice, and the wisdom, and the value transfer, that come from one generation to the next should always be appreciated. I also take pleasure from this sea of Asian faces to my left. All my life I have admired Confucius. I like the idea of "filial piety", of ideas that are taught and duties that come naturally, that should be passed onto the next generation. You people who don't think there's anything in this idea, please note how fast these Asian people are rising in American life. I think they have something.

All right, I've scratched out a few notes, and I'm going to try and just give an account of certain ideas and attitudes that have worked well for me. I don't claim that they're perfect for everybody. But I think many of them contain universal values and many of them are "can't fail" ideas.

2015年9月8日火曜日

2002年にバフェットが予想していた株式市場からのリターン率

ウォーレン・バフェットがバークシャー・ハサウェイの株主向けに書いた2001年度の「バフェットからの手紙」を読んでいたところ、株式市場の将来を予想していた文章がありました。今回はその箇所をご紹介し、現時点で彼の予想がどこまで合致しているか、結果を振りかえります。(日本語は拙訳)

SHAREHOLDER LETTER 2001 [PDF] (Berkshire Hathaway)

当社の[株式]ポートフォリオは、2001年を通じてほとんど変化しませんでした。上位の持ち株を全体としてみたときの成績は、ここ数年間おもわしくありません。業績が残念なものにとどまったことも、その一因です。当社が株式を保有している全企業の営む根本的な事業については、チャーリーもわたしもひきつづき好んでいます。ただし、全体としてみたバークシャーの保有株式は割安ではないと考えています。

それらの証券に対してあまり夢中になれないのは、今後の10年前後における株式全般の見通しについてまったくもって気乗りしないのと同じです。アレン社が7月に開催した会合の席で、株式から得られるリターンについて私見を申し上げました(2年前にも同様の説明をしましたが、それを受けたものです)。わたしの発言を編集した記事が、12月10日付けのフォーチュン誌に掲載されています。その記事の写しを本書に添付しました(同記事[PDF]へのリンク)。なお1999年に講演した内容も、フォーチュン誌が当時掲載しています。そちらをお読みになりたい方は、当社のウェブサイトをご覧ください(同記事[PDF]へのリンク)。

米国の企業はこれからも好業績をあげていくだろう、とチャーリー共々考えております。しかし今日の株価は、「投資家が得られるリターンは平凡な数字にとどまるよ」と警告しているように思います。これまで非常に長い期間にわたり、市場[の成績]は事業を上回ってきました。ですから、いつかはその現象が終わらなければなりませんでした。しかし多くの投資家は、事業の進展と共に歩めない市場にはがっかりしてしまうものです。このゲームに比較的新しく参加した人にとっては特にそうだと思います。(PDFファイル14ページ目)

We made few changes in our portfolio during 2001. As a group, our larger holdings have performed poorly in the last few years, some because of disappointing operating results. Charlie and I still like the basic businesses of all the companies we own. But we do not believe Berkshire's equity holdings as a group are undervalued.

Our restrained enthusiasm for these securities is matched by decidedly lukewarm feelings about the prospects for stocks in general over the next decade or so. I expressed my views about equity returns in a speech I gave at an Allen and Company meeting in July (which was a follow-up to a similar presentation I had made two years earlier) and an edited version of my comments appeared in a December 10th Fortune article. I'm enclosing a copy of that article. You can also view the Fortune version of my 1999 talk at our website www.berkshirehathaway.com.

Charlie and I believe that American business will do fine over time but think that today's equity prices presage only moderate returns for investors. The market outperformed business for a very long period, and that phenomenon had to end. A market that no more than parallels business progress, however, is likely to leave many investors disappointed, particularly those relatively new to the game.

さて、ウォーレンが予想した当時(2002年初)から現在(2015年初)までのS&P500指数の上昇率をくらべてみます。Google Financeのデータによれば、2002年初の指数は1148、2015年初は2059でした。この間の上昇率は約80%、年率にすると約4.63%です。

S&P500のチャート; 2002年初から2014年末まで

一方、13年間でのインフレ率は年率2.2%程度と算出できます(参考サイト)。またS&P500指数に連動するファンドに投資すると、配当利回りは基本的にインフレ率と相殺される程度におさまるようです(参考サイト)。つまりS&P500に投資した場合の実質リターンは、さきに示したように年率5%を超えない水準だったと言えます。10年先を予想したウォーレンは「平凡なリターン(moderate returns)」と書きましたが、現時点から振りかえれば絶妙な見通しだったように感じます。

なおウォーレンが上記のレターを書いたのは、ITバブルで市場が頂点に達した2000年3月から20%ほど下落した頃でした。

2015年9月6日日曜日

自社株買い資本主義(ジェレミー・グランサム)

前々回の投稿でご紹介したジェレミー・グランサムのレターから、もう一か所引用します。米国資本主義における問題点として、彼は次のような状況をあげて憂慮しています。「米国企業では自社株買いと低金利を背景に株高が進むことで、大量に付与されたストック・オプションの売却益を経営陣が享受している。そのおかげで資本投資に費やされる金額は平均以下にとどまり、雇用も改善しない」。今回ご紹介するのはそれに続く部分で、「自社株買い資本主義」の影響を受けた二次的状況の一端を説明しています。個人的には参考になった文章です。(日本語は拙訳)

新たな高い水準に達したまま進んでいるかにみえる米国企業の利益率ですが、ここでも数字が落ちずにとどまり続ける状況について触れておきます。これまでに、新たなストック・オプション文化によって生じた相互作用のことを論じてきました。自社株買いが高い水準で実施され、そのことが資本投資の水準や経済の成長をどれだけ減じているかについてです。そう、ここでも別の裁定が長々と働く姿がみてとれます。まるで心臓周辺の主要な動脈が閉塞することで、いくつもの微小な動脈を次第に拡張させていくかのようです。つまりはこうです。より長期的な視野に立ち、積極的に拡大をはかる非公開企業は、市場シェアを拡大させていくでしょう。おなじように、プライベート・エクイティーも長期的な優位性を拡大していくと思います。彼らは公開企業よりも多額の資本をすでに投資しているからです。同様にベンチャー・キャピタルも、公開企業に多くをさらわれていたとき以上の機会を手にするでしょう。しかし、そのように資本家の位置関係がゆっくり遷移するよりも若干速いペースで生じると思われる事態があります。それは、事業家や政治家やおそらくは現実的な経済学者さえも、ストック・オプション文化が現在招いているもの、特に低成長と低生産性に対してますます不満を抱くようになることです。(後略) (PDFファイル23ページ目)

Now, let's go back to the similar stickiness in U.S. profit margins, also bouncing along on a seeming new high plateau. I have discussed the interplay of the new stock option culture with its high level of buybacks and how this has reduced the level of capital spending and growth in the economy. Well, here also there are long-winded alternative arbitrage mechanisms, like a heart with clogged major arteries slowly developing a host of widened minor arteries. Private companies with more focus on the long term and more aggressive expansion will have a growing market share. Private equity will also have an incremental long-term advantage: they are already doing more capital spending than traded companies. Venture capital will also have more opportunities than they had previously, when public companies scooped up more of the opportunities. But perhaps slightly faster than this slow capitalist adjustment, businessmen, politicians, and perhaps even some of the more real-world economists will increasingly complain of the current consequences of the stock option culture, especially low growth and low productivity.

2015年9月4日金曜日

2015年バークシャー株主総会;成功できた理由

5月2日に開催されたバークシャー・ハサウェイの年次株主総会からの引用です。「成功できた理由はなにか」との質問に対して、チャーリー・マンガーやウォーレン・バフェットの人生訓が語られます。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

成功できた理由

<質問> おふたりが成功できた理由でいちばん重要だったことはなんですか。

<バフェット> すばらしい先生がいたこと、そして尋常でないほどに集中したことです。このゲームを楽しんできました。すごく楽しかったですから。実のところ、投資はかなり簡単なゲームです。ただし、ある種の感情面で落ち着いていることが必要です。若いころには投資先をさがすために、[四季報のような]銘柄情報誌を通読しました。7歳から19歳のころには、投資に入れ込んでいたものの導きとなる原理原則がありませんでした。そのあとに読んだ本がベン・グレアムの『賢明なる投資家』です。その本には投資における思想が書かれていました。まったくそのとおりでした。それよりも複雑なことはなにもありません。

<マンガー> そのとおり。投資に向いた性格の持ち主には、たやすいゲームですよ。しかし他人より賢くやれることで財産を築く人生だとしたら、それだけではないですね。もっと他にもやるべきです。

<バフェット> そうです。バークシャーを経営するのは、投資をするだけよりもずっと楽しいものです。バークシャーをやってきて、すごくよかったです。

<マンガー> 自分の資金をうまく投資できるのなら、他のこともどんどんやったほうがいいですよ。

映画スターや俳優としては成功できっこないとわかってから、私は残念な誘導装置にみちびかれて投資の世界へと入りました。祖父からこう教わっていたのです。「できるだけ合理的な人間になること。それがおまえにとっていちばんの義務だ」。合理的な考えがうまくできた一方、他のことはちっとも上手ではなかったですね。だから自分の得意なほうへ進んだわけです。孔子は「合理的でいることは道徳上の義務だ」と言っています。だから孔子の考えが好きなのです。私も昔から同じ考えを抱いてきました。バークシャーは合理的という意味でのお手本ですよ。

無知のままでいようとするのは、つまり本来あるべきよりも愚かなままでいるのは、恥ずべきことです。狭量なふるまいを異常だと考える場所では、寛大であるべきでしょう。

REASON FOR SUCCESS

When asked what the most important reason for their success was, Buffett attributed it to a great teacher and exceptional focus. He also enjoyed the game which was enormously fun. Investing is actually a pretty easy game, but it does require a certain emotional stability. Buffett went through stock manuals when he was young searching for investments. Between ages 7 and 19, he had enthusiasm for investing but not guiding principles. Then he read The Intelligent investor by Ben Graham, which described an investment philosophy that made total sense. It wasn't more complicated than that.

Charlie agreed that investing is an easy game if someone has the temperament for it. If you amass a fortune in life by being shrewder than others, it's not enough in life.

Buffett agreed and said running Berkshire has been far more fun than just an investment. Managing Berkshire is incredibly more satisfying.

Charlie said, "If you're good at investing your own money, I hope you move on and do more."

Charlie said he had an unfortunate channeling device into the investment world when he realized he was never going to succeed as a movie star or actor. His grandfather provided him with the idea that your main duty is to become as rational as you can be. Since he was good at that and no good at anything else, he was steered into something that worked well for him. Confucius said we owe a moral duty to rationality, which is why Charlie likes Confucius. He had the same idea years ago. Berkshire is a temple of rationality.

Charlie said, "If you have ignorance and keep it, it's dishonorable to stay stupider than you have to be. You have to be generous where it's crazy not to be."

2015年9月2日水曜日

現在の米国民主主義の欠陥(ジェレミー・グランサム)

GMOが2015年第2四半期レターを公開しています。ジェレミー・グランサムは投資におけるマクロ的なテーマをいくつかあげて、自分の見解の一部を記しています。今回は、米国における民主主義についての文章から引用します。(日本語は拙訳)

Ten Quick Topics to Ruin Your Summer [PDF] (GMO Quarterly Letter 2Q 2015)

7. 民主主義と資本主義における欠陥について考えてみる

民主主義について

「我々の調査によって浮かび上がった核心とは、次のようなものだった。経済的エリートや各種事業に関わる者を代表する組織的な団体は、米国政府が遂行する政策に対して独立した立場から大きな影響を及ぼす。それとは反対に、平均的な市民や興味をともにする者の単なる集団は、独立した影響力をほとんどあるいは一切持っていない」。これは、ギレンズとペイジが昨秋に発表した論文で示した決定的な結論です。収入水準を細分化できた政策約1,800件を調査した結果、収入の上位10%以上の人たちを「エリート」とざっくり定義すると、「選挙を通じた多数決による民主主義」は概して過去のものとなったことを見いだしたのです。

同調査について手短に済ませておくには、次の点を指摘しておけば十分だと思います。連邦議会が平均的な法案を可決する割合は31%です。提出された法案が平均的な市民の嫌がるものである場合、その確率は30%に低下します。一方で、平均的市民の望む法案では32%へ上昇します。ところがそれと対照的に、経済的エリートが望む法案の場合、絶対の保証はないものの、可決される確率は60%に上昇します。そしてエリートたちがその問題を心底嫌悪する場合、死刑宣告を受けたも同然で、法案可決の確率は1%になります。

その確率が1%なのか0.01%なのか、あるいは上位2,000件ほどだけが実際にその数字を決めているのか、いずれそれらを知ることは役に立つと思います。実のところ、[エリートが]上位10%ではないのは明らかだからです。それはさておき、そのデータ自身は次のように語っています。「人民の、人民による、人民のための政治」は、現実問題としてこの地上から消え失せてしまったようだ、と。もしリンカーンがいればまちがいなく、「それを蘇らせよう」と檄を飛ばすことでしょう。(PDFファイル19ページ目)

7. Trying to understand deficiencies in democracy and capitalism

Democracy

"The central point that emerges from our research is that economic elites and organized groups representing business interests have substantial independent impacts on U.S. government policy, while mass-based interest groups and average citizens have little or no independent influence." [Emphasis added.] This is the killer conclusion of a paper last fall by Gilens and Page. Based on the study of almost 1,800 policy issues for which income breakdowns were available, and defining the "Elite" generously as those above the 90th percentile, it finds that "majoritarian electoral democracy" is largely a thing of the past.

To keep the review of this study short, it is probably only necessary to point out that the average bill in the U.S. Congress has a 31% chance of passing; this chance falls to 30% when the proposed legislation is hated by average citizens and rises to 32% when they love it! In contrast, love from the economic elite, although not absolutely guaranteeing success, raises the chances of its passing to 60%. But when the elite truly detest an issue, it is like passing a death sentence: About 1% of these bills pass!

It would be helpful to know one day whether it is the 1%, the .01%, or only the top 2,000 or so who really drive this data, for it is surely not the top 10%. Other than that, the data speaks for itself: It would seem that "government of the people, by the people, for the people" has indeed, for practical purposes, "perish(ed) from the Earth." Lincoln would no doubt urge us to try to resuscitate it.