<質問者> あなたやマンガーさんがのんびりされてきて引退しようとなったときのために、後継の経営者についてどのような計画を立案していますか。
<バフェット> これはこれは、わたしたちが死ぬときのことをご丁寧に表現されているわけですね。のんびりするつもりも、引退するつもりもありません。まあ、ペースは落ちるかもしれませんが、引退はしません。実は、死んで5年経ってから引退することにしていますので、そう言っておきましょう。株主総会ではいつもこんな質問をされます、「一体どうなるのでしょうか、もしあなたがええと...」。しばしためらってから、最後にこうです。「そうです、トラックにはねられたらどうなるでしょうか」。それに対してこう答えます。「ありがとうございます、そう質問してくれて。トラックにはねられなかったらどうなるのか、と質問されなくて助かりました」。わたしの仕事はけっこう簡単なものです。どの事業もこれまでと同じように続くでしょうから。H.H.ブラウンやデクスター、シーズやスコット・フェッツァーといった各社は、すべきことをちゃんとわかっています。わたしがやればいいのはただ資本を配分する、つまり送られてきた資金を使ってなにか別のものを買うことです。その他には、それぞれの経営者たちがこれからも働き続けてくれるような状態を維持することがあります。その職責を満足する人として、わたしたち二人は同じ人物を心に抱いていました。ただ現段階では彼らの名前を明かそうとは思っていません。しかし、わたしが死んだからといってコカ・コーラが変わるわけではありません(われわれは同社の8%近くを保有しており、市場価値はおよそ50億ドルとなっています)。その後もコーラは飲まれ続けるでしょうし、実際のところ葬儀の際にはコーラで献杯してくれるでしょうから、売り上げがすこしばかり加速すると思っています。つまり、大幅にペースが落ちる要素は見当たりません。ですから将来も入り続ける資金を受け取って、それを使ってできる賢明なことをさがす、これがわたしの後継者に任される仕事となります。
Q. What plans have you implemented for management succession when you and Mr. Munger slow down and retire?
A. Well, that's a polite way of saying when we die. We're not going to slow down and retire; we may slow down, but we won't retire. I'll put it that way because I plan to retire about five years after I die, actually. At the annual meeting somebody always says, "What happens if you...?", and then they stutter around a little bit and they finally get, "you know, you get hit by a truck?" I say, "Well, I'm glad you are asking that instead of asking what happens if you don't get hit by a truck." My job is fairly easy. All of our operating businesses would continue just as they are. The people that are running H.H. Brown or Dexter or See's or Scott Fetzer, all know what they are doing. All I do is allocate capital. They mail me the money and then I use it to go buy something else. I also try to maintain conditions so that they want to keep working. I've got in mind people beyond the two of us who can fulfill that function. I don't want to name them at present, but it's not as if Coca-Cola (where we own almost $5 billion worth of it, close to 8% of the company) will change when I die. People are going to keep drinking Coke the day after; in fact they will probably toast me at the funeral with Coke and so sales may spurt a little bit! There's no big slowdown that will take place. The job of the person who succeeds me will be to take that money which keeps coming in and find intelligent things to do with it in the future.
2014年4月30日水曜日
コーラで献杯(ウォーレン・バフェット)
2014年4月28日月曜日
ジャック・ウェルチはダンスを踊るか(チャーリー・マンガー)
<質問者> コカ・コーラ社の失策を話題にしていましたが、それではアップル社がやったまちがいについて何かご意見はありますか。
<マンガー> まさにちょうどぴったりの答えをしましょう。GE社のCEOであるジャック・ウェルチを真似たものです。工学の博士号をとった彼は実業家としても第一人者であり、そして非常に優れた男です。その彼がつい最近、ウォーレンの同席している場でこんな質問を受けました。「ジャック、アップルはなにをまちがったのでしょうか」。
彼がどう答えたかって? 「その問いに答えられるほどの特有な能力は、私にはまるでないですね」。まさしくそれと同じように答えましょう。私にとってその領域は、何か特別な洞察を提供できるところではありません。
その一方、ジャック・ウェルチを真似する中で大事なことを伝えようとしているつもりです。つまり、「自分の知らないことだったり、特有の能力がないときには、躊躇せずにそう言うこと」です。
昆虫のハナバチの生態にみられる例と似たことをする種類の人がいます。ハナバチは花の蜜をみつけると巣へ戻ってダンスを舞い、蜜のありかの方位と距離を仲間に教えます。遺伝子に刻まれたものがそうさせるのですね。40年か50年ほど前に、ある頭のいい科学者が花の蜜を外側へ引き出したらどうなるか試してみました。ハナバチの通常の生活では、そのように蜜が外に飛び出していることはありません。さて、あるハチが蜜をみつけて巣へ戻りました。しかし蜜が飛び出していることを伝えるダンスのやりかたは、遺伝子には組み込まれていません。それではどうしたと思いますか。
ジャック・ウェルチのようなハチであれば、黙ってじっとしていたでしょう。しかしそのハチが実際にやったのは一貫性のないダンスで、わけのわからないものでした。人間にもそのハチのような人がたくさんいます。質問されたときに、そうやって答えようとするわけです。これはとんでもないまちがいです。「どんなことでも全部知っていますよね」などとは、誰も期待していないのですから。
実際のことはまるで知らないのに、質問に対していつも自信満々に答える。そんな人がいれば追い出すようにしています。私からすれば、ハチが一貫性のないダンスをするのと同然です。まさに巣全体を混乱させるだけです。
Q: You discussed Coke's mistake. Do you have any thoughts about where Apple went wrong?
Let me give you a very good answer - one I'm copying from Jack Welch, the CEO of General Electric. He has a Ph.D. in engineering. He's a star businessman. He's a marvelous guy. And recently, in Warren's presence, someone asked him, "Jack, what did Apple do wrong?"
His answer? "I don't have any special competence that would enable me to answer that question." And I'll give you the very same answer. That's not a field in which I'm capable of giving you any special insight.
On the other hand, in copying Jack Welch, I am trying to teach you something. When you don't know and you don't have any special competence, don't be afraid to say so.
There's another type of person I compare to an example from biology: When a bee finds nectar, it comes back and does a little dance that tells the rest of the hive, as a matter of genetic programming, which direction to go and how far. So about forty or fifty years ago, some clever scientist stuck the nectar straight up. Well, the nectar's never straight up in the ordinary life of a bee. The nectar's out. So the bee finds the nectar and returns to the hive. But it doesn't have the genetic programming to do a dance that says straight up. So what does it do?
Well, if it were like Jack Welch, it would just sit there. But what it actually does is to dance this incoherent dance that gums things up. And a lot of people are like that bee. They attempt to answer a question like that. And that is a huge mistake. Nobody expects you to know everything about everything.
I try to get rid of people who always confidently answer questions about which they don't have any real knowledge. To me, they're like the bee dancing its incoherent dance. They're just screwing up the hive.
備考です。今年の初めに『ミツバチの会議: なぜ常に最良の意思決定ができるのか』という本を読みました。意思決定の方法を参考にする目的で手に取ったのですが、フィールドワークを楽しむ著者の想いがじんわり伝わってくる作品で、個人的にはとても楽しんで読めました。本ブログで引用してしまうと主題の種明かしになるので取りあげませんでしたが、生物界から学ぶことを好む方にはお勧めできる本です。もちろんダンスの話題も満載です。
2014年4月26日土曜日
泡ブクブクというほどではない(ウォーレン・バフェット)
Warren Buffett: Stocks aren't 'too frothy' now (CNBC 2014/4/23付け)
「[株価は]今は妥当な範囲の中にあると思います。ただしその幅はどんなときにもかなりの広さを持っています。10年単位で見ていけば、株価は上がっていくものです。利益を再投資した分が何年か先に返ってくるからですね。株式の価値は10年また10年と高まっていきます。ただし精確に進むわけではないですし、それどころか順調にといった風にも進みません。しかし10年や20年、30年先には、株の価値は現在よりも高くなるでしょう」
"I think we're in a range, and it's a big zone always, of reasonableness. But stocks ought to be higher every 10 years.There's a plow back of earnings that goes back year after year. Stocks will become worth more decade after decade, not in any precise manner, not in an even manner or anything of the sort. But 10 years, 20 years, 30 years, stocks will be worth more than they are today."
(Adobe Flash Playerが必要です)
2014年4月24日木曜日
バークシャーという名のロック・コンサート(ウォーレン・バフェット)
<質問者> 会社を調べるときは3つのこと、つまり経営者、価格、人材のことを確認すると言われていました。なみはずれた株価にまで達したのは、人に関する分析が良かったからでしょうか。
<バフェット> その3つの中の1つなのですが、しかし3つすべてが大切です。たしか事業の「経済性」と言ったかと思います。つまり最高にすばらしい人がいても、わたしたちが30年前に買ったような織物の事業を経営するのであれば、好業績はあげられないでしょう。反対にコカ・コーラ社を経営すれば、みんなが仰天するほどうまくいくと思います。わたしたちが加わりたいと考える事業は根本的に優れた経済性を持っている、つまりコカ・コーラやジレットのような会社です。その次にくるのが人材と値段です。しかしどれも非常に大切なことです。
Q. You said that you look at three things when you are looking at a firm. You look at management, price and people. Is your analysis of people what makes your stock prices exceptional?
A. It's one of three, but it's all three things. I think I said the "economics" of the business. I mean, you can have the most wonderful person in the world, but if they are running a textile business like we had 30 years ago, they're not going to do well. On the other hand, if they're running Coca-Cola, they are going to do sensationally. So, we want to be in a business that has fundamentally good economics like a Coca-Cola or a Gillette or something of the sort. And, then we want people and the price. But all three are very important.
<質問者> 私の父は必死になって働いたことで、かなりの成功をおさめました。そんな家庭で育ったのですが、バフェットさんは仕事とご家庭をどのように両立されていますか。奥様を仕事のなにかと結びつけることがありますか。それとも2つはまったく別次元・別世界のものとしてとらえているのですか。
<バフェット> ちがいます。2つは別のものとして扱っています。今日ここに来ているわたしの娘は一度質問していたので、高校時代になって自分の父は「セキュリティー」の分析家だと他の人に説明したことがあります。わたしの仕事は家々などを調べてまわり、泥棒に侵入されないことを検証する何かだと考えていたのですね。仕事と家庭は別々のものだとわたしは考えています。自分のしていることが仕事だと考えたことはありません。生活のためにしているわけではなく、これが絶対一番やりたいと思えることをしているわけです。
Q. I've come from a family where my father works a lot and he's rather successful. How do you balance work with your family? Do you tie your wife into any of your work, or is it totally two different dimensions, two different worlds?
A. No, it's two different deals. My daughter, who is here, was doing an interview one time and explained that when she was in high school, she told people I was a securities analyst. She thought that meant I went around checking on homes or something to be sure they wouldn't be burglarized! No, work and family are two independent things. I don't consider what I do as work at all. I'm not doing this for a living. I'm doing it because I would rather do it than anything else I can think of in the world.
<質問者> 年次報告書の中で、株式交換や株式分割によって投資家の数を増やしたくないと書かれていました。しかし、ある種の大きな相互会社[投信]や巨大な持ち株会社となれば、なぜ使える資本の額を増やさないのですか。
<バフェット> たしかにそういったことはやりませんでした。株主数を増やすのとは違う話ですが、わたしたちは資本を追加することを望んでいません。毎年利益をあげることで自然と資本が増えるので、それで十分満足しています。現在の資本以上の妙案を持ち合わせていないのです。学校を出たころは資本以上にやりたいことがありました。ですが資本が決定的に不足しており、追加が必要でした。そこで1956年に共に参画してくれるパートナーを募ってパートナーシップを設立しました。しかしバークシャーは今後の運営に新たな資本を必要としないでしょう。そこで疑問となるのは、「だれが株主になるのか」「だれが株主の座を占めるのか」です。株式を100万株発行する場合、できれば私がと思うのですがだれかが保有することになります。全部の席が埋まると次の疑問になります。「ずっとその座を占めていてほしい人に、どうすればそう思ってもらえるか」、これはすごく簡単です。会場の外に「ロック・コンサート」と書いた看板を出せばその類いの人たちが来ますし、「オペラ」と書けば別の集団があつまります。どちらの集団でもよいのですが、オペラを期待してやってきた人たちが入ってみたらロック・コンサートだった、とはならないほうがよいはずです。その逆でも同じです。
ですから投資の世界と意思疎通してわたしたちの狙いを、つまりどのように考えているかやバークシャーと相性の合う人たちにどれぐらいの期間にわたって加わっていてほしいのか、そういったことを説明するのが大切だと固く信じています。これまでもずっとそうしてきました。バークシャー株の売買回転率が低い理由はそのためです。ニューヨーク証券取引所でいちばん回転率が低いのです。取引所はそれを好みませんが、わたしは気に入っています。というのは、株主でいてほしい人が株主となっていることを基本的に語っているからです。株式を分割したりすれば、少し違う人たちが入ってくるものです。ひどい集団ではないものの、以前の人たちとくらべて良いわけではありません。だれかが入ってくるには、だれかが出ていかなければなりません。わたしたちの目的や期間をわかっている人、別のことに焦点をおいている人々と対峙する人を失わないようにしたいのです。
Q. You say in your annual report that you do not want to increase the number of investors you have through a stock swap or a split, but if you are, in a sense, a large mutual company, a large holding company, why would you not increase the amount of capital available to you?
A. Well, we haven't; we don't want to increase the amount of capital, which is different than increasing the number of shareholders, of course. We get a natural increase in capital just by the amount we earn from year to year, and that's plenty satisfactory. I do not have way more ideas than I have capital at the present. When I got out of school, I had way more ideas than capital. I was definitely capital short and at that point I did need more capital. So that's why I formed a partnership in 1956 to have some partners join with me. But, Berkshire will not need new capital as we go along. Now, the question is, "Who are going to be your shareholders?" "Who is going to sit in every seat?" If you have a million shares outstanding, somebody has to own them, preferably me. All the seats get filled and then the question is, "How do you encourage the people you want to have in those seats to attend?" It's very simple. If you stick a sign outside an auditorium and say "rock concert", you will get one group and if you say "opera", you will get another group. Either group is fine, but you'd better not have people coming who think they are going to the opera and find that they are at a rock concert, or vice versa.
So, I believe in communicating with the investment world about our objectives - how we think, and the time horizons to draw a compatible group into Berkshire - and we've done that over time. That's why the turnover in Berkshire stock is so low. We have less turnover than any stock on the New York Stock Exchange. The New York Stock Exchange doesn't like it but I like that because it means that basically the people are there who want to be there. Splitting the stock or anything like that would tend to draw a slightly different crowd; not a terrible crowd, but not a better crowd than the crowd we have already. The only way somebody can enter is for somebody to leave. And we want to make sure that we're not losing people who identified with our objectives and horizons, to take on people who have some other different focus.
本ブログも看板を掛け替えたほうがいいでしょうかね。「投資翻訳練習所」とか。
2014年4月22日火曜日
天使の側にいてほしい(チャーリー・マンガー)
マンガー家の食卓における倫理教育
ウェンディー・マンガー
父は子供たちを教育するために、一同を食卓に集めてよく会合を開きました。父が教える際に好んで使った道具は、まずは道徳ばなしでした。倫理的な問題に直面した人が正しい道を選ぶ話です。もうひとつは悪循環におちいる話です。そちらの話では、誤った選択をした人は破滅的な損失が公私ともに次々と襲ってくるのを避けられませんでした。
父が真骨頂を発揮するのは「悪循環物語」のほうでした。破局につながる話題となると、本当に熱を入れて語りました。あまりに極端でぞっとする例をあげるので、おはなしが終わるまでわたしたちはうめき声と笑い声を同時にあげていたものです。否定的な結末を描いてそこから教訓を得るとなれば、父ほどの人はいませんでした。
道徳ばなしのほうはもっと直截的でした。上は25歳から下は5歳の子供たちに対して、父がしてくれたある話を覚えています。こんな話でした。父の関わるある会社の財務部門の責任者が、間違いを犯して何十万ドルという損失を会社にもたらしました。 その責任者は過ちを認識するとすぐに、社長へ報告しに行きました。父の話によると、その社長はこう言ったそうです。「このようなひどい間違いを二度と繰り返してほしくありません。しかし間違えるのが人間です。間違いを認めるという正しい行いをしてくれたので、今回は許しましょう。もし隠そうとしたり、少しの間でも取り繕っていたら、この会社にはいられなかったですよ。ですがそうせずに、このまま会社にいてほしいと思います」。間違いを犯した政府高官が正直に告白せずに取り繕った、そんな話を聞くたびに父の語ってくれたこの話を思い返します。
父が食卓でやった教育的な取り組みを記すのに、なぜ過去形を使ってしまったのでしょうか。いちばん年長の子供は60歳代に突入しており、食卓用のテーブルはいまや孫たちでごったがえしています。父は今でも独特のやりかたで語りかけ、わたしたちを天使の側に留まらせています。我が家の食卓の上座に父が座っていてくれて、わたしたちは本当に恵まれていました。
Family Values at the Munger Dinner Table
By Wendy Munger
My dad often used the forum of the family dinner table to try to educate his children. His favorite educational tools were the Morality Tale, in which someone faced an ethical problem and chose the correct path, and the Downward Spiral Tale, in which someone made the wrong choice and suffered an inevitable series of catastrophic personal and professional losses.
His specialty was the Downward Spiral Tale. He could really warm to the topic of apocalyptic consequences. He used such extreme and horrific examples that we were often simultaneously groaning and laughing by the time he finished. He's in a league of his own when it comes to describing negative outcomes and the lessons to be learned from them.
His Morality Tales were more straightforward. I remember the story my dad told his kids, then ranging from age five to twenty-five about a financial officer at one of his companies who made a mistake that resulted in the loss of hundreds of thousands of dollars to the company. As soon as this officer realized his mistake, he went immediately to the president of the company and told him about it. My dad told us that the president then said. "This was a terrible mistake, and we don't want you ever to make another one like it. But people make mistakes, and we can forgive that. You did the right thing, which was to admit your mistake. If you had tried to hide the mistake, or cover it up for even a short time, you would be out of this company. As it is, we'd like you to stay." I think back on this story every time I hear of yet another government official who chose the cover-up instead of the honest confession after making a mistake.
I don't know why I use the past tense in describing my dad's educational efforts at the dinner table. His oldest children are heading toward their sixties, the table is now crowded with grandchildren, and he's still using his distinctive style of storytelling to keep us on the side of the angels. We're very lucky to have him at the head of our table.
ウェンディーさんも今ではベテランの方です。以下の(一昔前の)記事によれば、スタンフォードで学位をとり、UCLAのロースクールを出て、その後は法律家、そして近年は社会活動家として活躍されているとのことです。
Munger elected to Board of Trustees (Stanford University)
2014年4月20日日曜日
2013年度バフェットからの手紙(付録) - 内部留保について
BERKSHIRE HATHAWAY INC. 2013 ANNUAL REPORT [PDF]
本源的価値を算出する際に使う3つめの要素は他よりも主観的なもので、足し算にも引き算にもなります。その要素とは内部留保の効率性、つまり留保された資金が将来どのように活用されるかを問うものです。わたしたちだけでなく多くの他社でも同じように、次の10年についても利益を社内に留めていくでしょうが、その金額は現在投じられている資本と同じかそれ以上に達すると思われます。そして留保された資金を半分にしてしまう会社があれば、2倍へと変える会社もあります。
企業の持つ本源的価値を見積もってまともな値に達するには、常に「今どれだけあるのか」を適切に計算した上で、「資金がどのように活用されるだろうか」という要因を評価しなければなりません。これはわたしたちに限らず、だれにとってもそうです。それというのも、当事者ではない外部の投資家は、会社の利益における投資家自身の持ち分を経営陣が再投資してくれるのを、ただただ待つばかりだからです。CEOがその仕事をうまく遂行してくれるようであれば、再投資される見込みによって会社の現在価値は高まります。一方でCEOの能力ややる気が疑わしい場合、現在価値は割り引いて考えなければなりません。この結果次第で大きな差がつくこともあります。1960年代の末頃にシアーズ・ローバックやモンゴメリー・ウォード[通販会社]のCEOが手にしていた当時の価値での1ドルは、[ウォルマートの]サム・ウォルトンにゆだねられた1ドルとは遠く離れた運命を歩むこととなったのです。(PDFファイル111ページ目)
There is a third, more subjective, element to an intrinsic value calculation that can be either positive or negative: the efficacy with which retained earnings will be deployed in the future. We, as well as many other businesses, are likely to retain earnings over the next decade that will equal, or even exceed, the capital we presently employ. Some companies will turn these retained dollars into fifty-cent pieces, others into two-dollar bills.
This "what-will-they-do-with-the-money" factor must always be evaluated along with the "what-do-we-have-now" calculation in order for us, or anybody, to arrive at a sensible estimate of a company's intrinsic value. That's because an outside investor stands by helplessly as management reinvests his share of the company's earnings. If a CEO can be expected to do this job well, the reinvestment prospects add to the company's current value; if the CEO's talents or motives are suspect, today's value must be discounted. The difference in outcome can be huge. A dollar of then-value in the hands of Sears Roebuck's or Montgomery Ward's CEOs in the late 1960s had a far different destiny than did a dollar entrusted to Sam Walton.
2014年4月18日金曜日
700年にわたって無給で働かせてきた職場(チャーリー・マンガー)
不道徳によってさまざまな悪影響がもたらされることは、はっきりしています。異常なまでのブームや不正直な宣伝を思い出してください。この半年分の新聞をみれば十分わかりますね。悪徳が満載で息苦しいほどです。また、この国の企業のトップが不公平なまでの報酬を受け取っていることにだれもが怒りを覚えていますが、それは当然です。ところが法律家や大学教授の発明によるイカれた対応策が多々はびこっており、不公平な報酬を正すことができません。しかし完全ではないにせよ妙案があります。取締役の選任要件を無報酬の大株主とするのです。互恵的傾向のもたらす影響が削がれることで、経営陣に支払われる不公平な報酬がどう変わるか、きっとびっくりするほどでしょう[参考記事]。
無報酬とするこのシステムとだいたい似たようなものが、あまりなじみのない場所で試されてきました。イングランドの下級刑事裁判所です。その裁判所は[素人の]治安判事によって構成されており、1年間の懲役や相当な罰金を科すことができます。判事は3名で、いずれも報酬はゼロです。かかった経費は支払われますが、裁量にはそれなりに制限があります。1年のうちの40日間を無償で半日勤務に就きます。この制度はおよそ700年間にわたって麗しくも機能してきました。有能かつ善良なる人々が義務を遂行して意義を理解するために、無給の判事になることを競いました。
この仕組みは、ベンジャミン・フランクリンが人生の終わり間際に合衆国政府に望んでいたものです。政府の高官たる者には報酬を支払わず、彼のような人間[=成功した実業家]やまったくの無給で働くモルモン教の裕福な聖職者や預言者のようであってほしいと望んでいました。カリフォルニアで起きている状況をみると、彼が正しかったのかもしれませんね。それはともかく、フランクリンの目指したほうへ進む人は現在はだれもいません。たとえば大学教授が取締役に任命されている状況をみればわかります。彼らの大多数は資金を必要としているからですね。
道徳規範をうまく機能させるには、不公平であっても是とすべきときがあります。現実社会ではほとんどの場合そのような結果になっていますが、これがつねに理解されているわけではありません。完璧な公平を希求することは、システムが機能する上で数々のひどい問題を引き起こします。個人に対して意図的に不公平とするのが然るべきシステムもあります。というのは、全体としてみれば概していっそう公平になるからです。つまり明らかに不公平であるものにも美徳が含まれ得るのです。何度も取りあげている事例ですが、アメリカ海軍では船を座礁させた艦長は自分に過失がなくてもそこで経歴はおしまいとなります。すべての艦長が座礁させまいと日夜精勤するようになれば、過失のない一個人に対する正義が欠けていたとしても、全員に対して大きな正義を貫くよりずっと有意義だからです。全体にわたる大きな公平を得るために一部の者が小さな不公平を忍従するやりかたは、みなさんにお勧めしたいモデルです。しかし繰り返すようですが、大学でよい成績をとりたいのであれば、とくに現代のロースクールでは公平性を求める手続きを溺愛する学校が多いので、これを研究課題にするようにとは申しません。
当然ながら経済学も不道徳によって甚大な影響を受けています。偽りと愚行にまみれたバブルが何度もありましたが、非常に不愉快な結果に終わるものばかりでした。近年にも何度かそうなりました。初期の大きなバブルのひとつが、言うまでもなくイングランドで起きた巨大なおぞましい南海泡沫事件です。その後のなりゆきは興味ぶかいものでした。南海泡沫事件のあとに何が起きたのか覚えている人は、あまりいないでしょう。金融活動が劇的に収縮し、多くの痛みが生じました。イングランドでは何十年にもわたって、特定の稀な例を除いて株式を公開取引することが禁じられました。議会が通過させた法案は、数名のパートナーとパートナーシップを設立することはできるが、株式を公開してはならないとするものでした。ところがイングランドは公開株式がなくても成長し続けました。カジノのような大騒ぎの中で多くの株式が取引されるおかげで儲けている人がこれについてよく勉強したら、きっとこの事例は気に食わないでしょう。公開市場で株式を取引できない時代が長く続いても、それでイングランドが衰退することはなかったのです。
これはまさに不動産と同じです。あらゆるショッピングセンターや自動車ディーラー、そういった不動産の持ち分が公開取引されない時代はずっと続いていました。しかし資本市場がひとたびできると、経済的な側面が考慮されてカジノのようにすばやく効率的であることが要求されるようになります。これは虚構ですね。そんな必要はありません。
Many bad effects from vice are clear. You've got the crazy booms and crooked promotions - all you have to do is read the paper over the last six months. There's enough vice to make us all choke. And, by the way, everybody's angry about unfair compensation at the top of American corporations, and people should be. We now face various crazy nostrums invented by lawyers and professors that won't give us a fix for unfair compensation, yet a good partial solution is obvious: If directors were significant shareholders who got a pay of zero, you'd be amazed what would happen to unfair compensation of corporate executives as we dampened effects from reciprocity tendency.
A roughly similar equivalent of this no-pay system has been tried in a strange place. In England, lay magistrates staff the lower criminal courts, which can send you to prison for a year or fine you substantially. You've got three judges sitting up there, and they all get a pay of zero. Their expenses are reimbursed, but not too liberally. And they work about forty half-days a year, as volunteers. It's worked beautifully for about seven hundred years. Able and honest people compete to become magistrates, to perform the duty and get the significance, but no pay.
This is the system Benjamin Franklin, near the end of his life, wanted for U.S. government. He didn't want the high executives of government to be paid, but to be like himself or the entirely unpaid, well-off ministers and rulers of the Mormon Church. And when I see what's happened in California, I'm not sure he wasn't right. At any rate, no one now drifts in Franklin's direction. For one thing, professors - and most of them need money - get appointed directors.
It is not always recognized that, to function best, morality should sometimes appear unfair, like most worldly outcomes. The craving for perfect fairness causes a lot of terrible problems in system function. Some systems should be made deliberately unfair to individuals because they'll be fairer on average for all of us. Thus, there can be virtue in apparent non-fairness. I frequently cite the example of having your career over, in the Navy, if your ship goes aground, even if it wasn't your fault. I say the lack of justice for the one guy that wasn't at fault is way more than made up by a greater justice for everybody when every captain of a ship always sweats blood to make sure the ship doesn't go aground. Tolerating a little unfairness to some to get a greater fairness for all is a model I recommend to all of you. But again, I wouldn't put it in your assigned college work if you want to be graded well, particularly in a modern law school wherein there is usually an over-love of fairness-seeking process.
There are, of course, enormous vice effects in economics. You have these bubbles with so much fraud and folly. The aftermath is frequently very unpleasant, and we've had some of that lately. One of the first big bubbles, of course, was the huge and horrible South Sea bubble in England. And the aftermath was interesting. Many of you probably don't remember what happened after the South Sea Bubble, which caused an enormous financial contraction and a lot of pain. Except in certain rare cases, they banned publicly traded stock in England for decades. Parliament passed a law that said you can have a partnership with a few partners, but you can't have publicly-traded stock. And, by the way, England continued to grow without publicly-traded stock. The people who are in the business of prospering because there's a lot of stock being traded in casino-like frenzy wouldn't like this example if they studied it enough. It didn't ruin England to have a long period when they didn't have publicly-traded shares.
Just as in real estate. We had all the shopping centers and auto dealerships, and so on, we needed for years when we didn't have publicly-traded real estate shares. It's a myth that once you've got some capital market, economic considerations demand that it has to be as fast and efficient as a casino. It doesn't.
2014年4月16日水曜日
投資が簡単だと思っている人間は愚か者だな(ハワード・マークス)
Dare to Be Great II (Oaktree Capital Management) [PDF]
あるいはチャーリー・マンガーが私にこう言ったように、「投資が簡単だとは思えないね。簡単だと思っている人間は愚か者だな」。これは言いかえれば、投資で簡単に成功できると考えている人は投資の複雑さや競争的な性質を考慮しておらず、単純化しすぎて上っ面しか見ていないということになります。(p.6)
Or as Charlie Munger told me, "It's not supposed to be easy. Anyone who finds it easy is stupid." In other words, anyone who thinks it can be easy to succeed at investing is being simplistic and superficial, and ignoring investing's complex and competitive nature.
その答えは明白ではないかもしれませんが、必須なことではあります。つまり、他のほとんどの投資家が保有しているポートフォリオとは異なった構成をとらなければならない点です。他人のポートフォリオと同じようであれば、うまくいくかもしれませんし、反対にダメかもしれません。ただし、他人と違う結果を出すことはできません。もし人より優れたいのであれば、人と違っていることが絶対に必要です。最上位の成績をめざすには群衆から離れることが不可欠です。そうするには様々な方法があります。一般的でないニッチな市場で活動するやりかた、他人が見いだせなかったり、好まなかったり、危険なので手を出さないものを買うやりかた、これは見逃せないと群衆が考える人気者から遠ざかるやりかた、逆張りのタイミングで市場に参入するやりかた、とびぬけた成績をあげると予想する少数の銘柄に集中投資するやりかた、などがあります。 (p.2)
The answer may not be obvious, but it's imperative: you have to assemble a portfolio that's different from those held by most other investors. If your portfolio looks like everyone else's, you may do well, or you may do poorly, but you can't do different. And being different is absolutely essential if you want a chance at being superior. In order to get into the top of the performance distribution, you have to escape from the crowd. There are many ways to try. They include being active in unusual market niches; buying things others haven't found, don't like or consider too risky to touch; avoiding market darlings that the crowd thinks can't lose; engaging in contrarian cycle timing; and concentrating heavily in a small number of things you think will deliver exceptional performance.
すばらしい投資のほとんどは、初めは不快な思いがするものです。根本となる前提が広く受け入れられていて、直近の成績が好調で、見通しが明るい。そういった投資先であれば、だれでも心地よく感じます。しかしそのようなものに割安な値段はついていません。反対に値段が割安なものと言えば、論争の的となったり、悲観的にみられたり、最近は成績がふるわなかったりするものが普通です。
しかし、不快さを招く行動を起こすのは容易なことではありません。オークツリーで成功した数々の投資の源が債務不履行(か間際の)債券だったことは偶然ではないのです。だれからも敬われる破たん間近の企業などあり得ないからです。1988年に私とブルース・カーシュは初めてファンドを設立しました。死の寸前にあると思われる企業の発行した債券へ投資するためのものです。この考えは資金を募るのがまさに難しいもので、私たちの分析ややりかたがリスクを減ずることを、顧客だけでなく私たち自身も確信することが要求される投資でした。しかしその同じ不快さによって、本来の価値よりも低い価格が債務不履行証券に付けられます。それゆえに、一貫して高いリターンが得られるわけです。(p.3)
Most great investments begin in discomfort. The things most people feel good about - investments where the underlying premise is widely accepted, the recent performance has been positive and the outlook is rosy - are unlikely to be available at bargain prices. Rather, bargains are usually found among things that are controversial, that people are pessimistic about, and that have been performing badly of late.
But it isn't easy to do things that entail discomfort. It's no coincidence that distressed debt has been the source of many successful investments for Oaktree; there's no such thing as a distressed company that everyone reveres. In 1988, when Bruce Karsh and I organized our first fund to invest in the debt of companies seemingly at death's door, the very idea made it hard to raise money, and investing required conviction - on the clients' part and our own - that our analysis and approach would mitigate the risk. The same discomfort, however, is what caused distressed debt to be priced cheaper than it should have been, and thus the returns to be consistently high.
経済学者のジョン・メイナード・ケインズは、1936年に著書『雇用・利子および貨幣の一般理論』で次のように書いています。「世知が示すところによれば、評判という面では型破りなやりかたで成功するよりも、伝統的なやりかたで失敗するほうが望ましい」。勝ちによる利益が負けによる損失を上回るのであれば、金銭面で成功を量る人にとってはリスクを冒すことで報われることがあります。しかし評判や雇用継続を考慮に入れるとなれば、負けること自体が問題となるかもしれません。というのも、挙げた勝ち星では負け星の影響を上回れないおそれがあるからです。その場合の勝利とは、伝統的でないやりかたをして失敗する事態を避ける、という観点で完全に決まるのかもしれません。(p.7)
In 1936, the economist John Maynard Keynes wrote in The General Theory of Employment, Interest and Money, "Worldly wisdom teaches that it is better for reputation to fail conventionally than to succeed unconventionally" [italics added]. For people who measure success in terms of dollars and cents, risk taking can pay off when gains on winners are netted out against losses on losers. But if reputation or job retention is what counts, losers may be all that matter, since winners may be incapable of outweighing them. In that case, success may hinge entirely on the avoidance of unconventional behavior that's unsuccessful.
アラン・グリーンスパンは1996年12月に「根拠なき熱狂」との警告を出したものの、株式市場はその後3年以上も上昇を続けました。その当時、知り合いの聡明なマネージャーが弱気へと転換しましたが、それが正しいとわかったのはようやく2000年になってからでした。その間、彼に投資していた投資家は大量の資本を引きあげていきました。彼は「まちがって」はいませんでした。早すぎただけです。だからと言って、彼がこうむった痛みを和らげるものではありません。(p.9)
Alan Greenspan warned of "irrational exuberance" in December 1996, but the stock market continued upward for more than three years. A brilliant manager I know who turned bearish around the same time had to wait until 2000 to be proved correct . . . during which time his investors withdrew much of their capital. He wasn't "wrong," just early. But that didn't make his experience any less painful.
「投資は簡単なものではない」とするチャーリー・マンガーの見解は当たっています。投資で重要なことはすべて直観に反しており、明白なことはすべて誤っている、と私は確信しています。直観にさからった特異な持ち分を保有するのは、だれにとってもひどく難しいことです。初めの頃に間違っているとみなされるのであれば、なおさらです。そして二重に難しくするのが、「慣例的な見方による検討」が加えられることです[本メモの主な読者は機関投資家]。
優れた成績をあげようと望む投資家は、この現実を受け入れなければなりません。投資によって優れた成績をあげる唯一の道は、伝統的ではない行動をとることにあります。しかし、だれでもそうできるわけではないでしょう。卓越した能力が必要ですし、間違っているとみなされる時期をうけとめ、何度かの失敗を乗り越える力がなければ投資で成功することはできません。そのため、各人はみずからを診断する必要があります。ほぼ必ずやそうなりますが、賭け金を投じたものの最初の頃には間違っているとみえる際に、さきに挙げた姿勢をつらぬく力を性格的に備えているか。そして雇用者や顧客や他人の意見から影響を受けるという点で、置かれている環境がそれを許すのか。この問いに対してだれもが同意できるわけではありません。しかしそれができると信じている人は、大いなる機会をつかむべきだと思います。(p.9)
Charlie Munger was right about it not being easy. I'm convinced that everything that's important in investing is counterintuitive, and everything that's obvious is wrong. Staying with counterintuitive, idiosyncratic positions can be extremely difficult for anyone, especially if they look wrong at first. So-called "institutional considerations" can make it doubly hard.
Investors who aspire to superior performance have to live with this reality. Unconventional behavior is the only road to superior investment results, but it isn't for everyone. In addition to superior skill, successful investing requires the ability to look wrong for a while and survive some mistakes. Thus each person has to assess whether he's temperamentally equipped to do these things and whether his circumstances - in terms of employers, clients and the impact of other people's opinions - will allow it . . . when the chips are down and the early going makes him look wrong, as it invariably will. Not everyone can answer these questions in the affirmative. It's those who believe they can that should take a chance on being great.
2014年4月14日月曜日
バークシャーの組織運営について(ウォーレン・バフェット)
<質問者> あなたはバークシャー・ハサウェイを非常に効率的な組織として運営されています。大きく成長したというのに、どうすればそれほど贅肉が少ないのでしょうか。
<バフェット> いい質問ですね。現在の従業員は[グループ全体で]2万2千名か3千名、もしかしたら2万4千名になっているかもしれません。20年前にはたぶん千名ほどでしたが、今でも本社は10名か11名だけしか雇っていません。なるべく単純にするのが私の信条です。ですから社内には弁護士や広報はいません。守衛もいませんし、カフェテリアもありません。そのように運営するのは、実はすごく簡単です。ずばり言えば、上司に報告するような人の階層がいくつもあるよりもずっと仕事が進むと思います。ほとんどの会社にはムダがたくさんあります。一度ついたムダを取り除くのは非常に大変です。まったくそうしないのはすごく簡単です。相方のチャーリーはこんな言い方をします。「自分が死すべき場所はどこか知りたいね。そこには決して近づかないことにするよ」。巨大な組織というものに対して、わたしはそれと同じように感じています。つまりわたしに関する限りでは、それは事業の死を意味しています。ですから、わたしたちはそこに近づくつもりはありません。人を増やさないのは難しいことではありません。ただ誰も雇用しないだけで、今後もそうするつもりです。株式の売買もすべて自分でやっています。次のような質問を受けることがあります。「業務の上で、あなたに報告する立場にある人は何名いますか」。それが標準的な組織管理のやりかたなのでしょう、彼らは「最適な人数はこうです」といったことを教えてくれます。わたしからの答えは「正しい人を雇っているならば、たくさん人がいるのと同じ」です。その人たちが自分のしていることを理解し、喜んで仕事に臨んでいるのであれば、何十人何百人がいるも同然です。しかしくだらない人を雇ってしまえば、たとえ一人であっても多すぎです。悩みの種となるでしょう。つまり大切なのは「正しい人を雇うこと」です。きわめて有能な人たちといっしょに仕事ができて、わたしたちは非常に幸運でした。
当社は3年前に作業用靴のH.H.ブラウン社を買収しました。従業員はおよそ4千名で売上げが2億5,000万ドル程度です。同社のどの工場にも行ったことはないですし、他のだれも行っていません。もしかして存在していないのかもしれません。つまりは、同社の人たちは毎月こんな風に話し合っていると思います。「今月はウォーレンにどれだけ送ったらいいだろうか。280万ドルでどうかな。そうだな、たぶん彼はそれでいいと思ってくれるだろうから、送っておこう」。このように正しい種類の人を得たのです。ブラムキン一族がファニチャー・マートなどを経営している以上、一体わたしに何ができるでしょう。そこへ出向いて、「これの小売価格は398ドルではなくて498ドルにしたほうがいい」と彼らに忠告すべきでしょうか。そういったことは、わたしにはまったくわからないのですが。
子会社の経営者のうちの4分の3は、経済的に独立した人たちです。何億ドルもの資産を持っている人ばかりで、朝起きて仕事に行く必要はまったくありません。ですからわたしとしては、今日も明日も仕事に行くことが彼らにとってのいちばんの楽しみだ、という雰囲気をつくりだしたり、維持しなければなりません。そこで「自分ならどうすればそう感じるだろうか」と自問してみました。自分自身のショーを自分で運営していると感じられれば、そのひとつと言えると思います。もしわたしに対して一日中とやかく言う人がいたら嫌気がさして、「なぜこんなことをやる必要があるのだろうか」と考えるでしょう。わたしが子会社の経営者に対して後ろ向きなことばかり言ったり、仕事のやり方を指示していたら、 彼らもちょうど同じように感じるでしょう。良き人たちがいれば、わずかの人数でやっていけます。わたしたちのやろうとしているのは、そういうことです。
Q. You keep a very lean machine going at Berkshire Hathaway. How do you keep it so lean when it grows so much?
A. Well, that's a good question, because now we have 22,000 employees or maybe 23,000 or even 24,000, I guess. We probably had 1,000 twenty years ago but we've still got 10 or 11 people in headquarters. I really believe in keeping things simple. We have no inside counsel. We have no public relations people. We have no guards. We have no cafeteria. And, it's a lot easier to run that way. Frankly, I think way more gets done than if you have floor after floor of people that are reporting to people on the floor above them. I see so much waste in most companies and once it gets there, it is very hard to get rid of. It's much easier never to get there. My pal Charlie says that, "All I want to know is where I'm going to die, so I'll never go there." And, that's the way I feel about a large organization. I mean, that would be business death as far as I'm concerned; so we're not going to get there. It's not a problem keeping it down. We just don't hire anybody and we won't. I buy and sell all the stocks myself. Some people say, "How many people can you have reporting to you in a business?" That's standard organizational management stuff. They say, "The optimum number is this" or something like that. The answer is, if you've got the right kind of people, you can have tons of people. You can have dozens and dozens and dozens of people, if they know what they are doing and they like their jobs. But if you have somebody who's a clown, one is too many. They will drive you crazy. The trick is having the right people. We have been very fortunate in getting in with people who are extremely able at doing their jobs.
We bought H. H. Brown, which is a work shoe company, three years ago. It has probably 4,000 employees, and two hundred and fifty million dollars in sales. I've never been to one of their plants. No one ever has. Maybe they don't even exist. I mean, maybe those guys sit there every month and say, "What figures should we send Warren this month? $2.8 million, will he like that? Yeah, he'll probably like that; let's mail it to him." I've got the right kind of people. If you've got the Blumkins running the Furniture Mart or something, what can I do, you know? Should I go out there and tell them we should price this stuff at $498 retail instead of $398? I don't know anything about it.
Three quarters of our managers are independently wealthy. They don't need to get up and go to work at all. Most of them have tens and tens of millions of dollars. So, I've got to create or I've got to maintain an environment where the thing they want to do most in the world is to go to work that day and the next day. And, I say to myself, "What would make me feel that way?" One way is to feel you are running your own show. If I had people second-guessing me all day, I would get sick of it. I would say, ‘What the hell do I need this for?" And, that's exactly the way our managers would feel if I went around second-guessing them or telling them how to run their business. So, you can get by with very few people if they are good people. That's what we try to do.
備考です。バークシャーの2013年度の年次報告書によれば(p.107)、現在の従業員は33万名で、そのうち本社には25名とのことです。その本社一同の集合写真が、今回の「株主のみなさんへ」に載せられていました(最終ページ)。残念ながらチャーリー・マンガーの姿はみられません(カリフォルニア在住のため)。
2014年4月12日土曜日
自信を持つべき時とそうでない時(チャーリー・マンガー)
<質問者> 極端なイデオロギーを持たないことが大切だとのおはなしでした。それではもしあるとすれば、都心部の低開発地域(inner city)において富を増加させるなどを支援するために、企業や法律業界はどのような責務を負っているのでしょうか。
<マンガー> 社会的な問題を解決することには、私は大賛成です。不幸な人たちへ寛大にすることもそうですし、害よりも益を多くもたらす証拠がわずかなりとも大きければ、その行動を起こすのも諸手をあげて賛成です。
私が反対するのは、取り組んでいる対象が非常に複雑なシステムであり、あらゆるものがお互いに関係しあっているというのに、多大な自信を持ち、自分が介入することは害よりも益をもたらすと確信することです。
<質問者> つまり(あなたが言われているのは)自分が(有益なことを)していることに対して、ちゃんと確信を持てということでしょうか。
<マンガー> 私が言っているのは、確信することはできないということです。
それとは反対になりますが、2組の技術者(の出した結論)をひっくり返したことがつい最近ありました。その種の複雑な分野において、そこまで自信が持てるにはどうすればいいと思いますか。みなさんは「この人は少しばかり稼いだからと言ってうぬぼれてしまい、何でも知っていると思いこんでいるのだ」と疑うかもしれません。
なるほど、たしかにうぬぼれているかもしれません。しかし、何でも知っているとは思っていません。各々の技術者たちがその状況のもとで偏った考えをいだいた大きな原因が、私にはみてとれたのです。彼らは、自分たちの方針のほうがずっと有利だと薦めてきました。しかし彼らの話は無意識に生じるバイアスと一致しており、それゆえ私には信用できませんでした。(彼らの言うことが)妥当ではないとわかるほど工学をよく知っていたことも、その理由だったかもしれません。
最終的には、3番目に来た技術者が推奨する解決案を私は承認しました。その後、2番目の技術者が聞きにやってきました。「チャーリー、なぜ私にはそう考えられなかったのでしょうか」。これは称賛に値する行動ですね。結局はその案のほうが安全かつ安価であり、つまり優れた案だったからです。
自分よりも資格を有する人の認識が、動機づけによるバイアスあるいは似たような心理的影響が明らかなことによって損なわれている場合、彼らの意見をくつがえすには自分を信じなければなりません。しかし自分ではそれ以上の知恵を付け加えられないこともあります。その場合には、専門家を信用するのが最善の道です。
実際のところ、みずからが何を知っていて何を知らないのかを知らねばなりません。人生においてそれ以上に役立つことが考えられるでしょうか。
Q: You talked about how important it was not to have an extreme ideology. What responsibility, if any, do you think the business and legal communities have for helping inner-city areas, spreading the wealth and so on?
I'm all for fixing social problems. I'm all for being generous to the less fortunate. And I'm all for doing things where, based on a slight preponderance of the evidence, you guess that it's likely to do more good than harm.
What I'm against is being very confident and feeling that you know, for sure, that your particular intervention will do more good than harm, given that you're dealing with highly complex systems wherein everything is interacting with everything else.
Q: So (what you're saying is to) just make sure that what you're doing (is doing more good)…
You can't make sure. That's my point….
On the other hand, I did recently reverse (the conclusions of) two sets of engineers. How did I have enough confidence in such a complicated field to do that? Well, you might think, "Oh, this guy is just an egomaniac who's made some money and thinks he knows everything."
Well, I may be an egomaniac, but I don't think I know everything. But I saw huge reasons in the circumstances for bias in each set of engineers as each recommended a course of action very advantageous to itself. And what each was saying was so consonant with a natural bias that it made me distrust it. Also, perhaps I knew enough engineering to know that (what they were saying) didn't make sense.
Finally, I found a third engineer who recommended a solution I approved. And, thereafter, the second engineer came to me and said, "Charlie, why didn't I think of that?" - which is to his credit. It was a much better solution, both safer and cheaper.
You must have the confidence to override people with more credentials than you whose cognition is impaired by incentive-caused bias or some similar psychological force that is obviously present. But there are also cases where you have to recognize that you have no wisdom to add - and that your best course is to trust some expert.
In effect, you've got to know what you know and what you don't know. What could possibly be more useful in life than that?
チャーリーの好きな孔子の教えどおりですね。「これを知るをこれを知ると為し、知らざるを知らずと為す。これ知るなり」。
2014年4月10日木曜日
市場が進む方向を当てようとしない(ドナルド・ヤクトマン)
Yacktman Focused Fund & Yacktman Fund ANNUAL REPORT 2013 [PDF]
リスクを慎重に管理することは投資家にとって大切なことだ、と私たちは考えております。買い持ち専門のファンド・マネージャーとしては、相当な割安銘柄が見つからない状況では、ファンドへ投資してくださったみなさんを守るためには進んで現金を手元に残しながら辛抱強く取り組むことが、私たちのできる最良の手段だと考えます。ここで申し上げておきたいのは、私たちは個別銘柄へ投資することに専念する方針をとっており、市場がどちらに進むのか当てようとは考えていません。そのため、手持ちの資金を投じるために市場が下落するのを待つ必要はありません。しかし市場が急激に上昇しているときに大きな影響をもたらす新たな投資先をみつけるのは、一般的に言ってなおさらむずかしくなります。
We think it is important to prudently manage risk for investors. As long-only fund managers, patience - combined with the willingness to hold cash - are some of our best tools to protect our Funds' investors when we are not finding sufficient bargains. To be clear, our approach is focused on investments in individual securities, and we do not try to predict the direction of the market. We do not require market declines to put cash to work, however, it is generally more difficult to find significant new investment opportunities in a rapidly rising market.
なおヤクトマンのファンドのポートフォリオや成績は、以下のとおりです。
[ヤクトマン・フォーカス・ファンドのポートフォリオ 2013年度末] |
[ヤクトマン・フォーカス・ファンドの成績; S&P500との比較] |
2014年4月8日火曜日
相対取引価値分析と現在価値分析(セス・クラーマン)
ノンリコースの借入金は、相対取引価値を算出する際の倍率をゆがめるだけではない。たとえば1960年代後半から1970年代はじめにかけてコングロマリット[複合企業]が流行した頃には、自社の株価に異常なほどの高値がついた企業は、他社を買収する際に割高になった株式を通貨として利用した。規律を持たない投資家は、つかの間の株価のおかげで高く評価されている事実を無視して、相対取引価値を引き上げて評価する道を選んでしまった(当時、その言葉は使われていなかったにもかかわらずだ)。その後、過剰評価されていたコングロマリットの株価が落ち込むと、買収時に使われる倍率もそのあとを追った。
投資家は、高騰した証券価格に基づいた相対取引価値には目をくれてはならない。証券を通貨がわりにした買収時の金額にもとづいて買収対象の証券価格を推し量るのは、実際のところ循環論法に陥っている。というのは、証券の価格が高くなることは自己充足的な予言となるからだ。相対取引価値を決定する際に歴史的水準にもとづいた保守的な評価を信頼するのであれば、本物の安全余裕を確保できる。しかしそうでなければ、安全余裕は金融の世界に吹く風によって吹き飛ばされてしまう。
熟練した相対取引の買い手自身は、見込み案件の事業をどのように評価しているのだろうか。概して言えば、彼らはまずフリーキャッシュフローを予測し、そしてキャッシュフローの現在価値を算出している。ただし評価の際には異なった仮定を想定し、そこから生じる影響を考慮に入れる。言いかえれば、彼らは現在価値分析を行っていることになる。
相対取引価値分析と現在価値分析を峻別するものは、介在する人物つまり熟練した実業家の有無である。その人物の果たす役割には、肯定面と否定面の両方の観点がある。肯定面としては、その人が相当な資金を以って案件に参画していれば、投資家の行う現在価値分析を裏付ける一助となりうる。一方で否定的な面としては、買収する側がくだした判断を信頼することで投資家が自己満足してしまい、自分自身で独立した評価を実行して検証するのを怠ることがある。その人物が本当によくわかっていて洞察力があるかどうかわからずにだ。私自身の決まりとしては、投資対象の事業を保有するのが他人ではなくて自分自身だとしたら一体いくら払うのか、という基準にしたがって評価している。相対取引価値とは評価作業における検討材料のひとつとして使う程度のものであり、価値を決定する際の唯一無二の権威としてはならない。 (p.130)
Nonrecourse debt is not the only skewing influence on private-market-value multiples. In the conglomerate boom of the late 1960s and early 1970s, for example, companies with extraordinarily high share prices used their overvalued equity as currency to buy other businesses. Undisciplined investors were lured into raising their own estimates of private-market values (even if they didn't use this terminology at the time), while ignoring the fact that these high valuations were dependent on ephemeral stock prices. When overvalued conglomerate shares slumped, takeover multiples followed suit.
Investors must ignore private-market values based upon inflated securities prices. Indeed, valuing securities based on the prices paid in takeovers that use securities as currency is circular reasoning, since higher security prices become a self-fulfilling prophecy. Investors relying on conservative historical standards of valuation in determining private-market value will benefit from a true margin of safety, while others' margin of safety blows with the financial winds.
How do sophisticated private-market buyers themselves evaluate businesses for possible purchase? In general, they make projections of free cash flow and then calculate the present value of those cash flows, evaluating the impact of differing assumptions on valuation. In other words, they perform present-value analysis.
What distinguishes private-market-value analysis from present-value analysis is the involvement of the middleman, the sophisticated businessperson, whose role has both positive and negative aspects. On the positive side, if the middleman makes a sizable financial commitment, this may help to corroborate the investors' own present-value analysis. On the negative side, relying on the judgment of a buyer of businesses, who may or may not be truly knowledgeable and insightful, can cause investors to become complacent and to neglect to perform their own independent valuations as a check. My personal rule is that investors should value businesses based on what they themselves, not others, would pay to own them. At most, private-market value should be used as one of several inputs in the valuation process and not as the exclusive final arbiter of value.
2014年4月6日日曜日
社会の利益のために行動する政治家(ウォーレン・バフェット)
<質問者> バフェットさんの政治的関与についておうかがいします。今年はあなたが[ジョン・]ケリー上院議員の金融面での委員長として活動したり、オマハの下院議員である[ピーター・]ホーグランド氏を支援する姿を、報道を通じてよく拝見しました。私が気になっているのは、少なくとも私の読んだビジネス誌や関わっているビジネス上の組織では、実際のところその二人[どちらも民主党の議員]を支持していないことです。たぶん増税や規制強化、政府管掌の健康保険といった理由だと思います。あなたが今回の件に関与し、企業にとって望ましい政策に反対するとみられている二人をなぜ支援されるのか、説明して頂けますか。
<バフェット> (チェリーコークの缶を受け取って一言)
ああ、どうもありがとう。この缶をみて一体どうしたことだと思うでしょう。実はこれが14缶売れれば、ひとつ分がわたしたちの利益になるわけです。ですから、これはわたしの心臓に良いのですよ。
さて、わたしは1948年にペンシルバニア大学[のちにネブラスカ大学へ転籍した]で共和党青年部の部長を務めていました。もちろん共和党の家庭で育ったからです。共和党には何度も投票しました。つまりわたしは民主党員ではありますが、「民主党」と書かれた厚紙を掲げるような人間ではありません。共和党よりも民主党に投票した回数のほうが多いと思いますが、けっこう同じぐらいの割合です。政治の世界にはあまりかかわりたくありませんが、今回の件ではあなたが言われた二人を支援しました。彼らに反対する人たちが唱えるものとちょうど同じ理由からです。政治的に不利になるだけでなく致命傷に至るだろうと承知しながらホーグランドとケリーは票を投じた、と感じています。あなたが彼らの判断に同意するかはわかりませんが、彼らは社会の利益になると考えた上でその道を選んでいます。
これは政治家がやることの中でも、まちがいなくいちばん難しいことです。わたしであっても厳しいと思います。わたしはバークシャー・ハサウェイを経営する仕事に惚れこんでいます。しかし投票の内容によってその仕事を失うかもしれないとしたら、自分がどのように行動するか自信が持てません。あのご両名が投票するところをみましたが、彼らが政治的に傷つくことはたしかでした。しかし彼らの支持者や全国の投票者の雰囲気はどうかという点は問題なかったので、彼らはあのように行動しました。それこそ立法者がふるまうべきことだと思います。これは非常に大切なことです。わたしであれば立案された内容とはずっと違った赤字削減にしたと思いますが、それは問題ではありません。法案のあらゆる面に満足することはありえないですから。あの時点でことを起こし、あの法案に対して採決したことが、この国にとって重要なことだったと思います。ご存じのように非常に接近した投票でした。両名は起立し、賛成票を投じました。そのような状況において、彼らと同じ思いをいだくことで何かの手伝いになるのであれば、よろこんでそうしたいと感じました。票を集計する際に彼らは起立していましたが、わたしもそうすべきだったと思いました。こういったことが今回の理由です。しかし政治に関与することは、わたしにとっては基本的には重要なことではありません。彼らが民主党員だからというわけではなく、わたしには大事なことではないからです。(p.16)
Q. Mr. Buffett, I would like to ask you about your political involvement. This year, we've seen a lot through the media of your being finance chair for Senator Kerrey and helping Congressman Hoagland in Omaha. My concern is, it seems like at least the business publications I read and the business organizations that I'm involved with aren't real supportive of those two individuals because of maybe increased taxes, regulation, and government-run health care. Can you explain to me your involvement with that and why you support those individuals that seem to be opposed to some business incentives?
(Aside, Mr. Buffett receives a can of Cherry Coke.)
Sure. Thank you. This stuff will do wonders for you. If you are wondering, we get the profit from one out of every 14 of these, so it does my heart good.
A. I was president of the Young Republicans Club at the University of Pennsylvania in 1948 and, of course, grew up in a Republican household. I vote for plenty of Republicans. I mean, I'm not a card-carrying Democrat, although I'm a registered Democrat and have probably voted for more Democrats than Republicans. It would be pretty close. I don't like to get mixed up in politics much, but in this particular case, I've supported the two you mentioned for precisely the reason that some people are opposed to them. I felt that both Hoagland and Kerrey made a vote that they knew would be politically disadvantageous, perhaps even politically fatal. And, they did that for what they thought was for the benefit of society, whether you agree with them or not.
Now, that is the hardest thing in the world for a politician to do. It would be hard for me to do. I love the job of running Berkshire Hathaway. If I knew I was going to make some vote that might cause me to lose that job, I'm not sure how I would behave. So, I saw both of those fellows make a vote, and there was no question that it was going to hurt them politically. They had no problem assessing the mood of their own voters or voters around the country. So, they did that and I thought that was exactly the way a legislator is supposed to behave. I felt it was very important. I would have had a much different deficit reduction act than came forth, but that is not the question because you'll never be happy with every aspect of the bill. I felt it was important to the country that something be done at the time, and that was the bill to be voted on. It' was a very close vote, as you know, and both of these fellows stood up and voted for it. So, I felt under those circumstances if I could help in any way by identifying with them, I would be delighted to do so. They stood up when it counted and I felt that I should, too. That's the reason, but basically I'm not big on getting involved in politics and it's not because they are Democrats. That's immaterial to me.
2014年4月5日土曜日
(映像)ネコちゃんがいいと思うよ(ウォーレン・バフェット)
あっという間に終わってしまう1分間のこの映像は、ネブラスカ大学リンカーン校の学長がSNS音痴のため、今日のtweetネタをどうしようかウォーレンに相談する、という設定で作られているそうです。芸が細かいのか、それとも地のままなのかわたしには判断できませんが、ウォーレンのボケ演技は楽しいですね。
2014年4月4日金曜日
ユダヤ人が考えだして、アメリカ人が仕上げた(チャーリー・マンガー)
9) 善行や悪徳がもたらす影響に対する低い関心
さて次は9番目の異議です。経済学では善行や悪徳がもたらすものに対してあまり注意が払われていません。多くの善行や悪徳が経済学に影響を及ぼすことは、私からみれば若い時分から明白でした。しかし善行や悪徳となると、経済学者はひどく居心地が悪くなるようですね。数字をたくさん羅列させるのには、おあつらえ向きではないからです。では、重要な善き行いが経済学にもたらされたことを示してみましょう。修道士のフラ・ルカ・デ・パチョーリによって発明された複式簿記が広まったことで、経済学に大いなる美徳が加わりました。そのおかげでビジネスはより統制できるものとなり、正直さが要求されるようになったのです。それからキャッシュ・レジスター[レジ]もあります。倫理上の面で、レジは会衆派教会[清教徒の一部]よりも多くをなしました。経済システムを向上させる上で、レジの登場はまさに強力なできごとでした。レジの果たす役割は、容易にだませるがゆえに社会を堕落させるシステムとは逆向きに働きます。レジのようにだますのが難しいシステムは悪徳を減らすことにつながり、社会における経済面での成果向上に寄与します。しかしこのような話題をする経済学者はほとんど見当たりませんね。
さらに進みます。私が思うに、信頼関係を徹底したエートスがあれば経済というシステムはもっとうまく機能します。かつて他者を信頼するというエートスは、少なくともこの国の過去の世代では信仰を通じて身につけました。宗教が罪悪感を植え付けてくれたのです。ご近所にチャーミングなアイルランド系のカトリックの司祭が住んでいますが、彼は好んでこういう言い方をします。「罪悪を考えだしたのは、いにしえのユダヤ人かもしれません。しかし仕上げをしたのはわたしたちです」(笑)。宗教から生まれたこの罪悪感は、他者を信頼するというエートスを働かせる上で大きな原動力となりました。これは人間の営む経済活動にも非常に有益なものでした。
9) Not Enough Attention to Virtue and Vice Effects
Okay, my ninth objection: not enough attention to virtue and vice effects in economics. It has been plain to me since early life that there are enormous virtue effects in economics and also enormous vice effects. But economists get very uncomfortable when you talk about virtue and vice. It doesn't lend itself to a lot of columns of numbers. But I would argue that there are big virtue effects in economics. I would say that the spreading of double-entry bookkeeping by the monk, Fra Luca de Pacioli, was a big virtue effect in economics. It made business more controllable, and it made it more honest. Then, the cash register. The cash register did more for human morality than the Congregational Church. It was a really powerful phenomenon to make an economic system work better, just as, in reverse, a system that can be easily defrauded ruins a civilization. A system that's very hard to defraud, like a cash register-based system, helps the economic performance of a civilization by reducing vice, but very few people within economics talk about it in those terms.
I'll go further: I say economic systems work better when there's an extreme reliability ethos. And the traditional way to get a reliability ethos, at least in past generations in America, was through religion. The religions instilled guilt. We have a charming Irish Catholic priest in our neighborhood and he loves to say, "Those old Jews may have invented guilt, but we perfected it." (Laughter). And this guilt, derived from religion, has been a huge driver of a reliability ethos, which has been very helpful to economic outcomes for man.
2014年4月2日水曜日
世界が終わるか、私が生き残るか(アーノルド・ヴァンデンバーグ)
Bottom-Up Investing with an Absolute-Value Focus [PDF] (原文はThe Wall Street Transcript)
<質問者> あなたが設立したセンチュリー・マネジメント[ファンド]の歴史を読者に対してお話しください。
<ヴァンデンバーグ> 私が投資の仕事に就いて投資信託を売り始めたのは1968年で、ちょうど市場が頂点に達した頃でした。投資信託こそ資産を築くのに役立つ究極の方法だと信念を持っていました。そこから株式市場は大恐慌以来最悪の下落をむかえ、ほとんどの投資信託は個別銘柄と同じように値下がりしました。このことは市場や資産運用ビジネスに対する私の信念を揺らがせることとなりました。
投資業界で成功するには、たぶん自分の会社を始めるのが一番だと考えずにはいられなくなりました。そこで次の数年間はウォール街や市場やさまざまな投資哲学を学ぶのに費やしました。そして、ファンド・マネージャーやプロの投資家の中にはその嵐をうまく切り抜けた人がいることに気がつきました。彼らは皆、ベンジャミン・グレアムの思想つまりバリュー投資のやりかたを学んだ人たちでした。結局私は、バリューに基づいた投資戦略をとるマネージャーは他の投資戦略をとるマネージャーよりも顧客の資本をうまく守り、より一貫した投資成績をもたらすと判断しました。
私は1974年の9月にセンチュリー・マネジメントを開業しました。私が見いだしたやりかたで投資すれば悪い市場環境下でも良い成績をおさめられる、と確信していたからです。当時の市場はダウ平均が45%ぐらい下落し、平均的には75%ぐらい下落したどん底付近で、投資に興味を持つ人はほとんどいませんでした。もはや世界の終わりだと告げる記事ばかりでした。しかし私は、世界が終わりになるか、それとも私が顧客の資産を大きく増やすか、そのどちらかだと判断しました。そして40年ちかくが経ち、今ここに私たちがいます。
TWST: Introduce our readers to the firm by telling us about Century Management's history.
Mr. Van Den Berg: I began my investment career in 1968, right at the top of the market, selling mutual funds. I had put my faith in mutual funds as the ultimate way to help people make money. Then as the stock market began what would eventually be its worst decline since the Great Depression, most mutual funds went down as much as individual stocks. This really shook my faith in the market and money management business.
I could not help thinking that maybe the best way to be successful in the investment industry would be to start my own firm, so I spent the next several years studying Wall Street, the market and various investment philosophies. I noticed there were fund managers and investment professionals who had weathered the storm fairly well, and they all came from the Benjamin Graham school of thought, which is the value-investing approach. I concluded that managers who used a value-based investment strategy protected their clients' capital better and provided more consistent investment results than managers using other investment strategies.
I started Century Management in September of 1974, because I believed I had found the investment approach that could do well even in bad market environments. At this time, the market was nearing the bottom of what would be a 45% decline in the Dow Jones Industrial Average and a 75% decline in the average stock. As a result, very few people were interested in investing. Also, there were so many articles talking about how it was the end of the world. Yet, I reasoned that either the world was going to end, or I was going to make a lot of money for my clients - here we are, almost 40 years later.
備考として同ファンドの成績にふれておきます(同社サイトの掲載内容を参照しました)。1974年の創設から2013年末までみると、S&P500の年率12.19%に対して13.16%(報酬控除後の純額ベース)と健闘している成績です。その差が1%と小さいようにみえますが、40年分が累積するので当初の資産がS&P500の約1.4倍に増えた計算になります。またS&P500はあくまでも指標値(+配当)であり、実際には運用者が入って報酬等を差し引くことになります。
一方で、直近10年間の成績はS&P500などのインデックスより低い結果となっています。これは2つの要因が大きく影響していると思われます。ひとつめは現金比率です。同ファンドにおける昨年末の現金比率は22%で、上昇相場がつづく局面ではハンデとなります(ウォーレン・バフェットのバークシャーも、この5年間はS&P500に1勝4敗です)。ふたつめがポートフォリオの内容です。投資額の3割近くを占める上位9社をみるとなるほどと感じさせるバリュー的な銘柄が多く、成果が出るまで辛抱がつづく投資スタイルだと感じました。しかしいずれは果実を手にする日がきて、納得のいく数字を残せるものと想像します。
長期間にわたってバリュー投資を実践し、成功してきた彼です。だからこそ一時的に生じるであろう相対的な優劣差は気にせずに、自分が正しいと考える道を歩き続けられるのだと思います。
[アーノルド・ヴァンデンバーグ氏による顧客向け説明会より(2013年10月26日開催)]