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2012年1月31日火曜日

私を認めてくれない人(ウォーレン・バフェット)

おなじみの「Poor Charlie's Almanack」より引用で、今回は「自分できちんと考えること」について、ウォーレン・バフェットの発言です。(日本語は拙訳)

自分をごまかさないようにするには、論理的に考えるのがいいでしょう。チャーリーは、私が言ったからというだけでは認めてくれないのです。他の人だったら、まずそんなことはないのですが。

Apply logic to help avoid fooling yourself. Charlie will not accept anything I say just because I say it, although most of the world will.


このフレーズは、教訓の部分よりもウォーレンの絶妙なジョークのほうが頭に残りますね。

蛇足ですが、チャーリー・マンガーからウォーレンに対するジョークもご紹介しておきます。2004年のバークシャー・ハサウェイ年次総会にて、チャーリー・マンガーのあいさつです。出典は同じです。

今年で80歳になりましたが、この年になっても壇上にあげられているのは、[となりに座る]ウォーレンを若くみせたいからなのです。

The main reason they have me up here, at age 80, is to make Warren look young.

[ウォーレン・バフェットは当時73歳。高齢になる彼が死んだ後の同社を不安視する見方がある]

2012年1月30日月曜日

アインシュタインもさかさに考える

以前取り上げたアインシュタインの伝記ですが、チャーリー・マンガーの主張する「逆だ、いつでも逆からやるんだ」をアインシュタインもやっていた場面があったので、ご紹介します。

アインシュタインの一般相対性理論への道は1907年11月に始まった。そのとき彼は特殊相対性理論を説明する科学年次報告の論文の締め切りと格闘していた。その理論の2つの制限が彼を悩ませた。つまり等速直線運動だけに適用できる(もしあなたの速度や運動方向が変化していると適用できない)し、その理論はニュートンの重力理論を含んでいない。

「私はベルンの特許局の椅子に座っているとき、急にある考えが頭に浮かんだ」と彼は回顧している。「もしある人が自由落下をしているとすると、自分の体重を感じないであろう」。その認識が彼を「飛び上がらせ」特殊相対性理論を一般化して「重力理論の方向に私を追いやる」という、8年に及ぶ大変な努力に駆り立てた。後になって彼は「人生で最も幸福な考え」とたいそうに回顧している。

(中略)

アインシュタインはその思考実験を洗練して、落下している男は地球上で自由落下しているエレベーターのような閉じた箱の中にいるとした。この落下する箱の中で(最後に地上に衝突して壊れるまで)、この男は無重力状態を感じる。ポケットから物を取り出して、手を離すと彼のかたわらで空中に浮かぶだろう。

別の観点で考えよう。「どんな星や質量からもはるかに離れた」空間に浮いた部屋の中にいる男をアインシュタインは想像する。彼は先と同等な無重力状態を感じるはずだ。「この観測者には重力は存在しない。彼は床に糸か何かで繋いでおかないと、床からのちょっとした衝撃でふわふわと浮き上がり、天井に行ってしまうだろう」

つぎにこの部屋の天井にロープが繋がれていて、一定の力で引っ張られているとアインシュタインは想像した。「部屋とその中の観測者は一定の加速度で『上方』に動き始める」と中の男は床に押し付けられているように感じる。「するとその男は地球上にある家の部屋に立っているのと同様に、箱の中に立っている」。

(中略)

アインシュタインが正にこの問題を調べるときの関連づけは、彼に典型的な天才的なものである。余りよく知られているので科学者が問題にもしないような現象を彼は調べる。 (上巻 p.224)



2012年1月29日日曜日

10秒ください(ウォーレン・バフェット)

以前ご紹介した本「Seeking Wisdom」の第4章で扱われているのが「よりよい考え方(Guidelines to better thinking)」。12の話題が取り上げられていますが、その中の一つが「ルールとフィルター(Rules and Filters)」というものです。使い方は簡単です。白黒を判断できる質問をいくつか用意して順に並べ、答えが「はい」であれば次の質問に進み、そうでなければそこでおしまい、つまりフィルターされます。ウォーレン・バフェットが投資アイデアを評価する際にこれを使っているとのことなので、ご紹介します。(日本語は拙訳)

「案件の9割以上には10秒以内でノーと答えています。というのもフィルターがいくつかあって、単にそこでふるい落としているのです」

We really can say no in 10 seconds or so to 90%+ of all the things that come along simply because we have these filters


具体的にどんなフィルターかですが、以下のとおりです。6つのうち、最初の4つがウォーレンが語ったものです。一方、フィルター5と6は本書の著者Peter Bevelinが読者向けに追加したものですが、チャーリー・マンガーならば納得するでしょう。ただし、フィルター5や6まで到達する場合は、10秒でノーと答えるのは難しいと思いますが。

フィルター1 そのビジネスを理解しているか。高い確度で予測できるか。
フィルター2 長続きする競争優位性をなにか持っていると思われるか。
フィルター3 経営陣は有能かつ誠実な人たちか。
フィルター4 価格は適切か
フィルター5 反論してみる[自分の論理をたたく]
フィルター6 判断が間違っていたら、どんな結末をむかえるか。

Filter 1 - Can I understand the business - predictability?
Filter 2 - Does it look like the business has some kind of sustainable competitive advantage?
Filter 3 - Is the management composed of able and honest people?
Filter 4 - Is the price right?
Filter 5 - Disprove
Filter 6 - What are the consequences if I'm wrong?


一見するとたわいもない仕組みですが、この手のものは手を抜かずに毎回使うことが重要だと思います。固い表現でいえば、このフィルターシステムは投資におけるリスク管理プロセスそのものです。そういえばウォーレンも、自分のことをChief Risk Officerと称していましたね。

なお、上記のフィルターは2001年にウォーレンが語ったもので、それより一昔前のときは以前取り上げた「投資家が見極めるべき5項目(ウォーレン・バフェット1993年)」のリストになっています。内容はほとんど変わっていません。

2012年1月28日土曜日

TOPIX Core30ひとかじり(2)任天堂(2011年度第3四半期決算の雑感)

3四半期連続で下方修正が出るとは予想していませんでした。昨日の業績予想修正で、当社の今期の業績予想が650億円の純損失となりました。娯楽産業が勢いのビジネスであり、ハイリスク・ハイリターンなのは岩田社長自身が折に触れて述べていますが、今期はすべての悪い目が揃ってしまったようです。テンプルトン卿は「見通しが最悪のものに目をつけよ」といっていますが、当社の現状はそれに近いといっていいでしょう。

さて、当社の今期の業績悪化の原因ですが、個人的には以下に集約されると考えます。

1. 新型ハードウェアの発表時期の悪さ(据置型Wii Uと携帯型3DSが重なったこと)
2. 3DSの主力ソフトウェア発売時期の遅れ(売上低迷と値下げへつながる)
3. ドル安及びユーロ安による為替評価損

前にもあげましたが、岩田社長も以下のように同じような認識をされているようです。
それから、会社、社員の仕事という意味では、やはり今回のことで、「(ゲームビジネスでは)たった一つ歯車が狂うだけで、会社のビジネスがこんなに変わるのだ」ということを、任天堂という組織全体が今思い知っているわけですから、そのことをむしろ今後に活かさないといけないと私は思っています。そういうことが教訓となり、任天堂が、タイミング、あえてこの言葉を使いますが、「天の時を逃さない会社になるのだ」というのが私の決意でございます。多分に精神論的ですが、ご理解ください。

さて、ある方は業績不振の一因として為替政策を次のように批判されています(引用元はこちら)。
<Q 3-2>為替差損について、円より強いお金はない状態なので、外貨建て貯金をやめてほしい。任天堂は、ユーロ建てとドル建ての預金をたくさん持っているということで、毎回損をしたと聞くと頭がいたくなる。

<A 3-2 岩田社長>
為替差損が出ており、これは、当然決算の数字が悪い方向に振れるわけですから、その一年一年を見ると(資産を外貨建てで持つことが)適切であるとは言えないとおっしゃることもよく分かります。また、任天堂は今、売上の8割以上が海外ですから、海外で売り上げた時に、その売上というのは必ず一度外貨で入って参ります。そこで、その外貨で入ってきたものを、どのように会社として保持しておくべきか。もちろん、為替差損をなくすということだけに注目いたしますと、その時点で入ってきた瞬間にすべて円に替えれば、為替差損を後で被ることが一番少ないというメリットがございますが、一方で為替というのは常に変動いたします。確かに、この2年強の間、非常に円高基調で進みましたので、その結果、手持ちの外貨建て資産は評価替えをするとどんどん目減りしています。円換算すると、数字上の額が減るわけです。そしてそれは、会計上の決算の数字を悪くします。しかし一方で、為替というのは必ず一定の周期で振れる要素も持っています。私は、今確かに日米欧の通貨の中で円が最強であるという評価をされているということについては否定いたしませんが、その一方で、経済の現状、あるいは今の日本は、これから人口減少が起こっていかざるを得ない人口構成の国であること、その他を考えた時に、円が強いまま未来永劫続いていくとは必ずしも考えられない状況です。私どもとしては、「為替による変動をどうやってヘッジするか」というポイントをまず考えることと、それから「日米欧の基軸通貨をどのようなバランスで持つのか」ということの方が重要だと思っていますので、そういう意味で配分は(過去と)変えております。あるいは、任天堂はこれまで、円建てで支払って製造したものを外貨で売って、外貨の収入を得て、という形でビジネスを展開してきましたが、ここ数年の間に、仕入れに関してはドル建てでの仕入れを非常に大きく増やし、結果、毎期の収益において、ドルの変動に対する影響を以前に比べてはるかに小さくできるようになりました。しかし、残念ながらユーロ建ての支払いを喜んで受けてくださる取引先がまだ大手では見つかっていないこともあり、(ヨーロッパ)現地での売上が上がる一方、支払いには使えず、ユーロばかりがたまってしまうという現状が今起きやすくなっていまして、このユーロを定期的にどの通貨に変えて持つべきかということは当然議論すべきだと思います。確かに、「毎期の為替差損を生じさせないために外貨建ての資産運用は一切やめるべきだ」というご意見は、もちろんご意見として、われわれも考えていかないといけないことだと思いますが、一方で、これからはなおのこと、いつどの国の基軸通貨が不安定になるか分からない、不確実な時代になったわけですから、私たちは、むしろ複数の基軸通貨をバランスよく持つことが、任天堂がどんな場合にも備えを持つ上で最も妥当ではないかと思っています。長い目で見ていただくと、為替差損・差益のバランスがとれていくはずだと思っています。

上のような批判とは逆に、当社を日本企業と捉えるのではなく、アメリカ企業と考えてみるのはどうでしょうか。経営やクリエイターに日本人を登用し、日本の株式市場に上場していると捉えるのです。所在地別セグメントでみると、売上高のいちばん大きいのが南北アメリカ大陸です。また主要3市場(アメリカ、欧州、日本)の中では日本がもっとも売上が小さく、また販管費の割合でも日本単体は5割程度なので、「日本企業」とこだわる必然性は大きくないと思います。そうなれば、少なくとも為替差異はドルベースでみることができます。現在のようにドル安になればNintendo株の日本円換算は安くなりますが、先のことはわかりません。長期的にみれば為替は、相対的にどれだけ国力を維持できるかの問題です。先の批判に岩田社長が答えているように、現経営陣は当社の未来が日本だけに帰するとは考えていません。ですから、当社の株主として判断しなければならないことのひとつに、マクロレベルの観点が加わっているわけです。マクロが読めない投資家は、当社に投資しないほうがよいかもしれません。

一方、為替以外の経営上の失敗(上記の1,2)ですが、今後も同じことをくりかえすかどうかは経営者次第です。個人的には、次はよくなるだろうと予想しています。この手の過ちを繰り返すような人材にはみえないからです。当社の財務基盤があれば少なくとも1回の失敗は許されますし、そもそも経営陣も、そのリスクを踏まえた財務政策をとっています。

また、もうひとつの経営上の懸念である競合スマートフォンですが、これは消費者がプラットフォームを購入するかの問題で、ゲームやシステム自体の課題とは別とみることもできます。つまり、それらの出来がよければ乗り越えられる、ということです。任天堂ブランドを構築している以上、乗り越えられない壁ではない、と感じています。

さて、いよいよWii Uの登場が2012年の年末と発表されました。それまでの売上をどうやってあげるのか、現行機種Wiiの売上をどうするのか、はたまた3DSの売上で逃げ切るのか、今年の任天堂の動向と株価は目が離せなくなってきました。当社にはまだ投資していませんが、6,500円に近づくほど買いの機会と考えています。その前には、自社株買いが決議されるとは思いますが。

2012年1月26日木曜日

株式投資で利益をあげるのに必要な16の要因(ウォルター・シュロス)

今回ご紹介するのは、前回取り上げたウォルター・シュロスが現役時代の1994年に発表した文章です。こちらが引用元のPDFファイルです。真偽はともかく、シュロスのファンドのレターパッドにタイプされています。グレアムから受けた教えの影響が強くみられますが、債券にこだわらない点は異なっています。インフレの時代を乗り越えてきた者として、ウォーレン・バフェットと同じ見方をしています。(日本語は拙訳)

1.価格こそが、価値をはかるのにいちばん大切な要因だ。

2.企業の価値を見定めよ。株式は企業の一部所有をあらわすものであって、ただの紙切れではないことを忘れないように。

3.企業価値を見定める際には、まずは簿価からみるようにしなさい。負債は株主資本とは等価ではない。

4.辛抱強くあれ。株価はすぐには上がらない。

5.聞いたうわさやちょっと株価が動いたからといって買わないこと。そういうのはプロにやらせておきなさい。それから、悪材料が出たからといって売らないように。

6.孤独を恐れずに、自分の判断を信じなさい。完全無欠とはいかないから、自分の考えのどこに弱点があるのか、さがしなさい。一段階下がったら買い、一段階上がったら売ること。

7.一度決めたら自分を信じる勇気を持ちなさい。

8.投資上の哲学をもって、それに従うようにしなさい。上に挙げたものは、うまくいくことを私自身が確かめてきたやりかたです。

9.売るときは急いで処分しすぎないこと。適正と思われる価格になったとき、例えば株価が50%あがると売って利益を確定するように言われるが、一度で売るのではなく、何度かに分けてもよい。売る前にはもう一度企業の価値を評価しなおして、簿価に見合った金額で売られているか確認すること。また相場の状況について、例えば、利回りが低くPERが高いか、歴史的に見て相場は高水準か、みんなは楽観的な様子か、といったことを知っておくこと。

10.株を買うときは、経験上、直近数年来での最安値あたりで買うのがよい。125[ドル]の高値をつけた株価が60[ドル]まで下がっていると魅力的に思えるが、3年間も意気消沈したあげく、結局20ドルで売ることになる。

11.利益に目をむけるよりも資産の割安度に目をむけて買うようにしなさい。短期で見ると利益は大きくふれるが、それにくらべて資産のほうはそれほどは変化しない。利益に注目するのであれば、企業についてより知りつくさなければならない。

12.尊敬する人の助言はきくこと。それをうのみにせよということではない。他でもない、[投資しているのは]自分のお金なのだから。ふつうは、増やすより維持するほうが大変なことを忘れないように。いったん大穴をあけてしまうと、とりもどすのは大変なのだから。

13.感情に任せて判断しないように注意しなさい。こわがったり傲慢な気持ちで株を売り買いするのは最悪のことだ。

14.複利の効果を忘れないように。年利12%で再投資しつづけると6年で2倍になる。これが72の法則で、72を利回りで割った答えが、当初資金が2倍になるのにかかる年数を示している。[72 ÷ 12 = 6年]

15.債券より株式を選ぶとよい。債券では利益が限られているし、インフレになると実質価値が減るからだ。

16.借金には注意せよ。仇となることがある。

1.Price is the most important factor to use in relation to value.

2.Try to establish the value of the company. Remember that a share of stock represents a part of a business and is not just a piece of paper.

3.Use the book value as a starting point to try and establish the value of the enterprise. Be sure that debt does not equal 100% of the equity. (Capital and surplus for the common stock).

4.Have patience. Stocks don't go up immediately.

5.Don't buy on tips or for a quick move. Let the professionals do that, if they can. Don't sell on bad news.

6.Don't be afraid to be a loner but be sure you are correct in your judgement. You can't be 100% certain but try to look for weaknesses in your thinking. Buy on a scale [down] and sell on a scale up.

7.Have the courage of your convictions once you have made a decision.

8.Have a philosophy of investment and try to follow it. The above is a way that I've found successful.

9.Don't be in too much of a hurry to sell. If the stock reaches a price that you think is a fair one, then you can sell but often because a stock a goes up say 50%, people say sell it and button up your profit. Before selling try to reevaluate the company again and see where the stock sells in relation to its book value. Be aware of the level of the stock market. Are yields low and P-E ratios high? Is the stock market historically high? Are people very optimistic etc?

10.When buying a stock, I find it helpful to buy near the low of the past few years. A stock may go as high as 125 and then decline to 60 and you think it attractive. Three years before the stock sold at 20 which shows there is some vulnerability to it.

11.Try to buy assets at a discount [rather] than to buy earnings. Earnings can change dramatically in a short time. Usually assets change slowly. One has to know much more about a company if one buys earnings.

12.Listen to suggestions from people you respect. This doesn't mean you have to accept them. Remember it's your money and generally it is harder to keep money than to make it. Once you lose a lot of money it is hard to make it back.

13.Try not to let your emotions affect your judgement. Fear and greed are probably the worst emotions to have in connection with the purchase and sale of stocks.

14.Remember the work of compounding. For example, if you can make 12% a year and reinvest the money back you will double your money in six years, taxes excluded. Remember the rule of 72. Your rate of return [divided] into 72 will tell you the number of years to double your money.

15.Prefer stocks over bonds. Bonds will limit your gains and inflation will limit your purchasing power.

16.Be careful of leverage. It can go against you.

個人的に強く共感できるのは、3.の簿価にこだわる点です。現在の日本の株式市場ではお買い得企業が多いので、このシュロスの教えを胸に、じっと辛抱といったところです。現預金が豊富で、経営陣が株主本位で、商売もまずまず順調で、そんな企業が「あれもこれも毎日特売」ですよね。

2012年1月25日水曜日

あるファンドの始まり(ウォルター・シュロス)

ウォルター・シュロスは、ウォーレン・バフェットの講演「グレアム・ドッド村の大投資家たち」で紹介されたファンド・マネージャーです。バフェットと共にグレアムのパートナーシップで働いていた経歴を持つ大ベテランです。バフェットやチャーリー・マンガーとは投資方針が異なりますが、見事な実績を残しています。今回はバフェットの伝記「The Snowball: Warren Buffett and the Business of Life」から個人的に気に入っている箇所を引用します。シュロスが独り立ちしようとする場面です。(手元に邦訳がないため、日本語は拙訳です。誤訳がありましたら、後ほど訂正します)

ウォルター・シュロスは、そのての催しに声をかけられることがなかった。パートナーには登用されない、奉公あがりの雇われ人とみなされていたからだ。[パートナーの]ジェリー・ニューマンは他人に優しさをみせるような人間ではなかったが、それに輪をかけてシュロスを冷遇していた。そのため、シュロスには妻と2人の小さな子供がいたのだが、とうとう自ら辞めることを決意した。グレアムにはなかなか言い出せずにいたが、1955年の終わりに投資パートナーシップを立ち上げた。出資者から集めた資金はUS$100,000[=現在価値で約8,000万円]、バフェットがのちに認めるように、それらの出資者はエリス島で呼びかけたところに応じた者たちだった。

バフェットは、シュロスがグレアムのやり方をまねてうまくやるのは間違いないと思い、自身のファンドを立ち上げた心意気を賞賛した。ただ資金が少なすぎて家族を食わせてやれないのではとウォルターのことを心配したが、それでもバフェットは自分の資金をシュロスのパートナーシップにすこしも出資しなかった。グレアム・ニューマン[・パートナーシップ]に出資しなかったのと同じように、自分のお金を他人に投資してもらうなど論外だったからだ。

Walter Schloss was not invited to events like these. He had been pigeonholed as a journeyman employee who would never rise to partnership. Jerry Newman, who rarely bothered to be kind to anyone, treated Schloss with more than his usual contempt, so Schloss, married with two young children, decided to strike out on his own. It took him a while to get up the nerve to tell Graham, but by the end of 1955 he had started his own investment partnership, funded with
$100,000 raised from a group of partners whose names, as Buffett later put it, “were straight from a roll call at Ellis island."

Buffett was certain that Schloss could apply Graham’s methods successfully and admired him for having the guts to set up his own firm. Though he worried that “Big Walter” was starting out with so little capital that he would not be able to feed his family. Buffett put not a dime of his own money into Schloss’s partnership, just as he had not invested in Graham-Newman. It would be unthinkable for Warren Buffet to let someone else invest his money.
(p.197)

シュロスの横顔、今では90歳代半ばのはず。「The Snowball」からお借りした画像です。
(バフェットの友人ウォルター・シュロス氏、自身の90歳の誕生祝いの夜にブギを踊る。2006年)




2012年1月24日火曜日

どのようにして相対性理論に到達したのか(アインシュタイン)

ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーは、年次報告書や株主総会でお勧めの本を紹介することがあります。伝記マニアのチャーリーがアインシュタインの伝記を紹介するのは順当なところでしょう。チャーリーお勧めの本の邦訳『アインシュタイン その生涯と宇宙』が昨年出版されましたが、下巻について出版事情のすったもんだがあったようなので、ようやく手にとっているところです。今回ご紹介するのは、アインシュタインが相対性理論を発見するに至った経緯や背景を数段落に要約した箇所です。

「新しいアイデアが突然頭に浮かんだ。それもかなり直感的なやり方で」とアインシュタインは語ったことがある。ただし次の言葉を直ぐに付け加えた。「直感とはそれ以前の知的経験の結果にすぎないのだが」

アインシュタインの相対性理論の発見は、一〇年に及ぶ知的思索と個人的経験に基づく直感から生まれたものである。最も重要で明らかなことは、著者の私が思うには、理論物理学に対する深い理解と知識である。彼はまた目に見える形の思考実験を行う能力にも助けられた。その能力はアーラウ時代の教育で培われたものだ。それから彼には哲学の基礎がある。ヒュームとマッハの哲学から、彼は観測できないものに対する懐疑精神を育てた。そしてこの懐疑精神は権威を疑問視するという彼の生まれつきの反骨精神に根ざしていた。

以下に述べるいろんな要素の混合が、物理的状況を可視化する能力、概念の核心をえぐり出す能力を増強し、彼の人生における技術的背景になっている。たとえば叔父のヤコブが発電機のなかの運動するコイルと磁石をよりよいものにするのを助けたこと。時計あわせに関する特許申請に溢れていた特許局で働いた経験。懐疑精神を推奨した上司。ベルンの時計塔近く、駅近く、電報局の近くに住んでいたこと。ヨーロッパでは時間帯内の時計を合わせるために電気信号を使っていたこと。話し相手としての技術者である友人のミケーレ・ベッソの存在。彼はアインシュタインとともに特許局で働き、電気器具の特許を調べていたのだ。

これらの影響の順序づけはもちろん主観的なものだ。結局アインシュタイン自身もどのようにして問題を解いたか、はっきりしなかった。「どのようにして相対性理論に到達したかは簡単には言えない。私の考えに動機付けをあたえた非常にたくさんの隠れた複雑な要素がある」と彼は語っている。
(上巻 p.181)


チャーリーが主張するところの「ほとんどの人より、うまくいくやりかた」と重なるように思えます。

ところで、本書(原著)はWescoの2007年株主総会でチャーリーから推薦されたものです。参加したファンド・マネージャーのティルソンがノートをとってくれています

I read the new biography of Einstein by Isaacson [Einstein: His Life and Universe]. I’ve read all the Einstein biographies, and this is by far the best - a very interesting book.(p.20)


2012年1月23日月曜日

誤判断の心理学(4)人はなぜ疑わないのか(チャーリー・マンガー)

当たり前と考えていた仮定が実は落とし穴だった、という経験を数多くしてきました。あとになってから甘さを指摘するのは簡単ですが、前もって気がつくのは、なかなか難しいことです。今回も、個人的には身につまされる話題です。

人間の心理学的傾向その4
疑いをもたないようにする傾向
Doubt-Avoidance Tendency

人間の脳には、結論をみつけるといつまでも疑念を抱かないようにする仕組みがあります。

動物が長きに渡って、速やかに疑念を振り払う方向へ進化してきたのは言うまでもないでしょう。つまり、捕食者に狙われている獲物にとって、どうしたらよいか決めるのに時間をかけるのは、明らかに非生産的なことの一つだからです。ですから人間にとっても、疑いを持つことを避けようとするのは、ヒト以前の古きご先祖様の系譜をたどれば納得のいくものです。

結論に達して早々に疑念を払う傾向が強すぎるため、判事や陪審員にはそれを抑えるよう強制されています。すなわち、判決をきめる前には時間をおくこと。さらには、結論を出す前に、客観視という「仮面」をつけているように振舞うことを要求されます。この「仮面」が、正しく客観視するのを手助けするのです。この件は、次の話題である「終始一貫しようとする傾向」でも取り上げます。

The brain of man is programmed with a tendency to quickly remove doubt by reaching some decision.

It is easy to see how evolution would make animals, over the eons, drift toward such quick elimination of doubt. After all, the one thing that is surely counterproductive for a prey animal that is threatened by a predator is to take a long time in deciding what to do. And so man's Doubt-Avoidance Tendency is quite consistent with the history of his ancient, nonhuman ancestors.

So pronounced is the tendency in man to quickly remove doubt by reaching some decision that behavior to counter the tendency is required from judges and jurors. Here, delay before decision making is forced. And one is required to so comport himself, prior to conclusion time, so that he is wearing a “mask” of objectivity. And the “mask” works to help real objectivity along, as we shall see when we next consider man's Inconsistency-Avoidance Tendency.

2012年1月21日土曜日

実に愚かしい罪(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーは人の生き方について指針となる発言をすることがありますが、なかでも妬むことを厳しく戒めています。おなじみの「Poor Charlie's Almanack」からの引用で、チャーリーの発言をティルソンがメモしたものです。(日本語は拙訳)

普通の投資アドバイザーなら賛成しないかもしれませんが、自分の資産がまあ満足できるほどになっていて、誰か他の人が、たとえばリスキーな株式に投資して、より速くお金持ちになろうとしていても、そんなことは気にしないのが正しいのです。自分より速く金持ちになる人がいるのが当たり前のことで、別に悲しむことではありません。

Here's one truth that perhaps your typical investment counselor would disagree with: If you're comfortably rich and someone else is getting richer faster than you by, for example, investing in risky stocks, so what?! Someone will always be getting richer faster than you. This is not a tragedy.


自分より速く金を稼ぐ人のことを気にかけるのは、大罪の一つです。この「妬み」というのは実に愚かしい罪で、これだけが、[7つの大罪のうち]自分にとって何も楽しいことがないものです。つらいばかりで、ちっとも楽しくない。そんな思いを抱えている人たちに加わりたいとは思わないでしょう。

The idea of caring that someone is making money faster [than you are] is one of the deadly sins. Envy is a really stupid sin because it's the only one you could never possibly have any fun at. There's a lot of pain and no fun. Why would you want to get on that trolley?


2012年1月18日水曜日

雑音には耳を貸さず、何が起きているかをみきわめる(ブランデス)

ブランデス(Brandes Investment Partners)はアメリカの著名なファンドで、運用資産は2.5兆円(=329億ドル)にのぼります。日本株にも積極的に投資しています。そういえば、小野薬品工業の大株主になっていたのを覚えています。EDINETをみると、少し前に同社の持ち株比率を5%未満に下げていたようですね。

今回は日本株に対する彼らの見解(How have Brandes' Japan holdings performed since the earthquake and tsunami in March 2011?)をご紹介します。あっという間に終わる1分半の映像ですが、強気の姿勢です。

・地震と津波は日本にとって確かに大きな出来事でしたが、長期投資家としては雑音には耳を貸さず、何が起きているかをみきわめる必要があります。企業によって、それぞれ事情は異なっているからです。

・今回の地震と津波以後、日本の企業は以前よりも環境の変化に強くなっています。また、この2年間で日本企業の株価は世界中で最も割安になりました。

・いま日本株でお買い得なのは、世界規模で通用する企業なのに、どの評価基準からみても割安なものがあります。その生産能力や技術は、世界で通用するものです。また日経[平均銘柄]の半数以上はNet cashの金額で取引されています。財務状況はきわめて強固です。

(Net cash: 現預金 + 有価証券 - 有利子負債 - 退職引当金のことか?)

東日本大震災以降の日本は、一般の欧米人には危ない国だと思われているでしょうから、日本株を推奨するマネージャーはそれなりに大変でしょうね。

2012年1月17日火曜日

TOPIX Core30ひとかじり(3)信越化学工業

株式市場で人気の高い企業だったのでこれまで近づかないでいました。昨年、書店で平積みになっていた金川会長の新刊を手にとる機会がありましたが、自信や義務感にあふれた言葉が連ねられていました。こうして当社の事業成績を振り返ってみると、それも納得できます。

さて、当社の有価証券報告書や事業報告書を一読して印象に残った点を挙げます。

1. 各事業部門がおしなべて高収益体質
当社の中核事業は5つで、塩化ビニル樹脂・化成品、半導体シリコン、シリコーン、機能性化学品(セルロースなど)、電子・機能材料ですが、おしなべて営業利益率が10%を超えています。2011年度の上半期では、鹿島工場が被災した塩ビ事業は8.3%と低調ですが、そのほかは順に17.0%, 24.7%, 16.6%, 24.5%となっています。各事業の年間売上規模は1,000-3,000億円であり、成長余地が残されています。

2. 赤字を出さない
下の図は1997年度からの一株当たり純利益と配当の推移を示したものです。それ以前の年度は、当社のWebサイトには掲載されていませんでした。一目瞭然ですが、景気後退の時期でも黒字を継続しています。しかもそれなりの水準を保っています。配当も増配基調です。ここ10年間では減配していません。








3. 10年以上前から事業が継続している
原材料に近い川上の産業では製品ライフサイクルが長いものですが、当社の中核事業も10年以上前からのもので、高収益を維持し続けています。1997年度の決算短信をみても、塩ビ、シリコーン、セルロース誘導体、半導体シリコン、合成石英製品、希土類磁石等のように、現在も主力の製品がならんでいます。それらの既存事業は、生産規模の拡大、企業買収、不採算事業からの撤退等によって収益を拡大してきました。なかでも塩ビ及びシリコン関連製品では原料部門を強化しており、垂直統合によって規模拡大と利益率維持をめざしているように見受けられます。

財務や事業内容を簡単にみた上で現時点の株価3,700円を判断すると、半額まではいかないにしても割安な水準だと感じます。10年チャートをみると昔の株価に戻っていますが、純資産はこの10年強で倍増しています。生産能力も増強されており、次の好況期に備えています。前回のテンプルトン卿の教え「優良企業の中から割安なものを選びなさい」がよくあてはまる企業の一つではないでしょうか。

2012年1月16日月曜日

投資で成功するための16のルール(ジョン・テンプルトン)

ジョン・テンプルトン卿の投資スタイルは以前に取り上げた本に詳しいのですが、1993年にご本人が雑誌に寄稿した文章がありましたのでご紹介します。再掲ですが原文は、ミューチュアル・ファンドFranklin Templeton Investmentsここに掲載されています。(日本語は拙訳)

1. 総実質リターンを最大化することを投資の目標とせよ。
2. トレードや投機をするのではなく、投資をせよ。
3. 投資する対象については、柔軟かつ広く受け入れるよう心がけよ。
4. 安く買うこと。
5. 株式を買う際には、優良企業の中から割安なものを選びなさい。
6. 着目するのは[投資対象の]価値であって、市場動向や景気の見通しにふり回されないこと。
7. 分散せよ。株式や債券に投資する場合でも他の例と同じで、数があれば安全になる。
8. 自分で調べよ。そうでなければ賢明なる専門家の手助けを得よ。
9. 投資対象を注視せよ。[ほうっておかないこと]
10. 狼狽するな。
11. 自分の過ちから学びなさい。
12. 祈りと共に始めよ。
13. 市場[の成績]をしのぐのは困難だ。
14. なんでも答えられる投資家ほど、そもそもの問いかけをわかっていない。
15. ただで儲かると思うな。
16. あんまりびくびくしたり、弱気になるな。

1. Invest for maximum total real return
2. Invest - Don't trade or speculate
3. Remain flexible and open-minded about types of investment
4. Buy low
5. When buying stocks, search for bargains among quality stocks
6. Buy value, not market trends or the economic outlook
7. Diversify. In stocks and bonds, as in much else, there is safety in numbers
8. Do your homework or hire wise experts to help you
9. Aggressively monitor your investments
10. Don't panic
11. Learn from your mistakes
12. Begin with a prayer
13. Outperforming the market is a difficult task
14. An investor who has all the answers doesn't even understand all the questions
15. There’s no free lunch
16. Do not be fearful or negative too often


なんといっても、ルール16の説明文には励まされます。株価が低迷しているのをみて落ち込んだときには、ぜひ読んでみてください。

なお、今回の話題を取り上げたきっかけはGuru Focusの寄稿です。ご興味のある方はこちらのリンクをご参照ください。

2012年1月15日日曜日

誤判断の心理学(3)嫌悪・憎悪がもたらすもの(チャーリー・マンガー)

今回は、前回の愛好/愛情傾向の裏返しで、おなじみのことわざ「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の話題になります。

人間の心理学的傾向その3
嫌悪/憎悪の傾向
Disliking/Hating Tendency

愛好/愛情傾向にみられるように、生物として登場してまもない人類は、嫌悪したり憎む性質を持ってうまれついており、それは日常・非日常を問わず、ふとしたきっかけでひき起こされます。これは類人猿やサルと同じものです。

In a pattern observe to Liking/Loving Tendency, the newly arrived human is also "born to dislike and hate" as triggered by normal and abnormal triggering forces in its life. It is the same with apes and monkeys.


嫌悪/憎悪の傾向も[愛好/愛情傾向と同様に]、自身の行動を調節してしまうものです。
第一に、嫌悪する対象が持つ美点には目をくれません。第二に、嫌悪する対象と単に関係があるだけの人・モノ・行動に対しても、嫌悪感情を持つようになります。第三に、他の事実を曲げてでも、憎しみ続けようとします。

よくあるのですが、この手の曲解が極端になりすぎると、あきれるほどの見当違いをするものです。ワールド・トレード・センターが破壊されたときには、パキスタン人の多くは即座にインド人の仕業だと決めつけましたし、イスラム教徒はユダヤ人のせいにしました。そのような事実の曲解をやっているから、憎しみに凝り固まった敵同士が和解するのはきわめて難しいのです。イスラエル人とパレスチナ人がなかなか和解できないのは、双方が捉えている史実が相手側のものと全然合致していないからです。

Disliking/Hating Tendency also acts as a conditioning device that makes the disliker/hater tend to (1) ignore virtues in the object of dislike, (2) dislike people, products, and actions merely associated with the object of his dislike, and (3) distort other facts to facilitate hatred.

Distortion of that kind is often so extreme that miscognition is shockingly large. When the World Trade Center was destroyed, many Pakistanis immediately concluded that the Hindus did it, while many Muslims concluded that the Jews did it. Such factual distortions often make mediation between opponents locked in hatred either difficult or impossible. Mediations between Israelis and Palestinians are difficult because facts in one side's history overlap very little with facts from the other side's.

2012年1月14日土曜日

もはやサル社長ではない

アメリカの経済紙Businessweekはよく知られている雑誌で、日本でいうところの東洋経済や週刊ダイヤモンドのようなものです。今週号の同誌の表紙ですが、なんと、マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマーが登場していました。個人的にはマイクロソフト(MSFT)の株式を保有しているので気になる人物なのですが、世間的には悪役ムードの強い人です。彼の奇行(というか、パフォーマンス)をとりあげた映像もYouTubeにあります。最近の注目はアップルやグーグル、そしてIPO必至のフェースブックあたりですが、大衆経済紙がマイクロソフトに焦点をあてるのはなぜなのでしょうかね。












今回は同誌の記事から、マイクロソフトとバルマーの業績概要を引用します。(日本語は拙訳)

過去十数年にわたって、マイクロソフトの売上は3兆円から5.5兆円へと増加し[USドルベースでは2.8倍]、純利益は215%増の1兆8,000億円となった。その大半は、バルマー以前から続いているWindowsとOffice資産のおかげだ。彼自身の業績といえば、データセンタービジネスにおいて無名に等しかった同社を主要業者にまで押し上げたこと、またXboxもバルマーによるもので、エンターテインメント事業で7,000億円の売上をあげている。年次ベースの利益成長でいえば、バルマーの成績(16.4%)は、伝説的なCEOとされるGEのジャック・ウェルチ(11.2%)やIBMのルイス・ガースナー(2%)を超えている。

Over the past 10 years, Microsoft’s annual revenue has surged from $25 billion to $70 billion, while its net income has increased 215 percent to $23 billion. Much of these gains have come from the Windows and Office franchises Ballmer inherited. That said, he’s moved Microsoft from a virtual nonentity in data centers to a dominant player, building a business that brought in $6.6 billion in profit last year. The Xbox also came to life under Ballmer and anchors the company’s $8.9 billion entertainment and devices division. Measured by total annual profit growth, Ballmer’s performance (16.4 percent) surpasses those of such legendary CEOs as GE’s Jack Welch (11.2 percent) and IBM’s (IBM) Louis V. Gerstner Jr. (2 percent).

もしバルマーが会社の利益に大きく貢献しているのであれば、素晴らしい経営者に恵まれたマイクロソフトは買いでしょうし、そうでなければマイクロソフトは比類なきビジネス特性を持っているので、これまた買いだと思います。冗談ぽくみえるかもしれませんが、いちおうまじめです。同社は、私が投資するアメリカ企業3社のうちの1つなのです。

2012年1月13日金曜日

我が家の家計簿(2011年の支出合計)

溜めていたレシートを家計簿にデータ入力し、ようやく昨年の決算となりました。支出の合計は約277万円。科目ごとの詳細は以下の通りです。










科目小計1ヶ月平均
食費¥491,805¥40,984
日用品¥44,671¥3,723
住居¥1,229,508¥102,459
光熱水道¥90,865¥7,572
被服¥70,874¥5,906
保健衛生¥42,056¥3,505
教育¥460,688¥38,391
教養娯楽¥45,007¥3,751
交際¥68,285¥5,690
交通、通信¥98,772¥8,231
その他¥120,133¥10,011
合計¥2,762,664¥230,222

12で割って月次平均にしてみると、おおよそ想定内の金額です。「その他」の12万円ですが、共済代7万円が含まれています。残り5万円は何に使ったのか振り返りたくなりますが、気がひけるのでそのままに。また交通通信費が高くなったのは、11月の引越し代45,000円が加わっているためです。今年はおさえられる見込みです。

今年2012年の予算は特に決めていませんが、260万円以内に収まるかどうかといったところです。また引越しをしなければ、のことですが。

2012年1月12日木曜日

TOPIX Core30ひとかじり(2)任天堂(コミュニケーションについて)

糸井さんの「ほぼ日刊イトイ新聞」には任天堂の岩田社長との対談がいくつか載っています。今回は企画「社長に学べ!」からの引用です。本ブログのメインテーマのひとつは「自分の誤りに向き合うこと」ですが(例えばこの記事)、彼の姿勢も自我を超えていますね。

(岩田社長)
わたしは昔からここだけはわりと自信があるのですが 「コミュニケーションがうまくいかないときに、絶対に人のせいにしない」ということに決めたんですよ、あるところから。

「この人が自分のメッセージを理解したり共感したりしないのは、自分がベストな伝えかたをしていないからなんだ」と、いつからか思うようにしたんです。

うまくいかないのならば、自分が変わらないといけない。

この人に合ったやりかたを、こちらが探せば、理解や共感を得る方法はかならずあるはずだ。

ですから、いまでもうまくいかなかったら自分の側に原因を求めています。相手をわからずやというのは簡単ですし、相手をバカというのは簡単なんですけどね。

(糸井さん)
うん、岩田さんって、ほんとに相手を責める言葉をいわないもんね。

(岩田社長)
いわないということを、自分に課すことに決めたんです。

いつそうしたかは覚えてないのですが、きっと自分なりに決めた時期があったのでしょう。

似た話題をもう一つ。こちらは、任天堂のゲーム・クリエイターで専務でもある宮本氏の言動について、です。引用元はこちらです。

(岩田社長)
社内から、そのゲーム触ったことのない人をひとり、さらってくるんですよ。さらってきて、なにも説明せずに、いきなりポンとコントローラーを握らせて「さあ、やれ」って言うんですよ。

(中略)

なにも知らない人がそれを遊ぶのを見て、「あ、ここわからないのか」とか、「あそこに仕込んだ仕掛けはとうとう気づかずに先に行ってしまった」とか、「先に、これやってくれないと、あとで困るのに」というようなことが、後ろから見ていると、山ほどあることがわかるんです。お客さんが、前提知識がない状態で、どんな反応をするかがわかるんですね。だから、宮本さんは、自分がどんなに実績のあるゲームデザイナーであろうと、「お客さんがわからなかったものは自分が間違ってる」というところから入るんですよ。

2012年1月11日水曜日

TOPIX Core30ひとかじり(2)任天堂(価値のあるコンテンツについて)

任天堂の岩田社長の発言を目にしたのは、昨年の春だったかと覚えています。震災騒ぎで仕事の進みに若干の余裕ができ、自分の時間が少しとれた頃です。当社のWebサイトで決算発表会か何かの文章を読んだり動画をみました。第一印象は「若いのに、たいした社長だ」。当意即妙でいて、丁重で腰が低い。さすがは任天堂、と感嘆しました。

その後は、任天堂を取り上げた本を一冊読み(『任天堂 “驚き”を生む方程式』)、四半期ごとの決算を追ってきました。年末商戦がおわり、以前の彼の発言が裏付けられてきた感があります。いい機会なので、集中して岩田社長の発言を読んでいます。糸井重里さんのサイト(この記事など)も含めて興味深く読めます。

さて、今回は2011年度第一四半期決算発表会での、アナリストに対する岩田社長の回答から引用です。引用元はこちらです。

<Q6>
ハードとコンテンツの関係が1対1だけではなくて、いろいろなプラットフォームでさまざまなコンテンツができるようになってきている。また、コンテンツは所有するだけでなく消費するものになっている。こういったトレンドを踏まえて、むしろこれを事業機会として捉えて、新しい成長軸として何か外部に当社のコンテンツを提供するであるとか、事業提携の可能性が将来的にあるのかどうか、というところを改めて教えてほしい。

<A6>岩田社長
「ハードとコンテンツの関係が変わってきている」とか、「コンテンツは所有するものから消費するものになっている」とかいうのは、今、一つの流れとして間違いなく世の中で言われていることだと思います。一方で、一つのコンテンツ、それも価値のあるコンテンツは、そんなに簡単に次々と生み出せるのかというと、決してそうではないと思っています。例えば、短期的な業績だけを考えて申し上げれば、当社の看板のソフト資産をいろいろな形でライセンスをすれば、短期的には収益が上がるのかもしれません。ですが、それでそのコンテンツが消費されて価値がなくなってしまった時に、未来の任天堂はどうなるのでしょうか。私が今期の収益だけに責任を持つのでしたら、そういう決断ができるかもしれませんが、任天堂の中長期の展望に責任を持たねばならない立場としては、逆に「いかに消費されない特別なコンテンツをつくり、その価値を維持するか」ということができないと、それこそ任天堂の優位性というのはなくなると思います。また、その時の任天堂の武器は、私たちがつくるコンテンツとハードが一体でご提案できることで、私たちのコンテンツに必要であればハードにそういう機能を仕組んでおくことで、そのコンテンツの価値をより高めることができると思っていますので、原則的に、(たとえ短期的な収益があるのだとしても)私たちが自分たちの持っている知的財産を外にライセンスして出して消費されるものにしていくという考えはありません。
(後略)

なお、後続の質問では次のような回答をされていました。今回の業績不振をどのようにとらえているのか、一端がうかがえます。

<A8>岩田社長
それから、会社、社員の仕事という意味では、やはり今回のことで、「(ゲームビジネスでは)たった一つ歯車が狂うだけで、会社のビジネスがこんなに変わるのだ」ということを、任天堂という組織全体が今思い知っているわけですから、そのことをむしろ今後に活かさないといけないと私は思っています。そういうことが教訓となり、任天堂が、タイミング、あえてこの言葉を使いますが、「天の時を逃さない会社になるのだ」というのが私の決意でございます。多分に精神論的ですが、ご理解ください。

2012年1月10日火曜日

TOPIX Core30ひとかじり(2)任天堂(ブランド価値)

ブランド・マーケティングのコンサルティングを行っているInterblandという会社があります。同社はまたグローバル企業のブランドを独自評価し、順位付けを行っています。個人的には順位やブランド評価金額に重要な意味はないと捉えていますが、アメリカ人が国外ブランドをどのあたりに位置づけているかは参考になると思います。

2011年の順位ですが、任天堂は48位でした。気になる競合は第3位のマイクロソフト、第8位のアップル、第14位のノキア、第17位のサムソン、第26位のアマゾン、第35位のソニーといったところでしょうか。プラットフォームがらみが多いですね。

報告書で任天堂に触れている部分がありますが、以下の一文は共感できます。(日本語は拙訳)

[任天堂の]最も重要な資産のひとつは、「ニンテンドー」ブランドそのものです。ニンテンドーといえば即ち、楽しくて、にっこりさせてくれるものなのです。

One of its most valuable assets is the Nintendo brand itself, which consumers see as fun and a reliable provider of smiles.
(p.30)

ちなみに過去の記録も見ると、任天堂の最高順位は2001年の29位のようです。ゲームキューブとゲームボーイアドバンスあたりの時代です。個人的には、どちらのゲーム機も経験なしです。

2012年1月9日月曜日

TOPIX Core30ひとかじり(2)任天堂

この企業については実は1年ぐらい前から少しずつ調べ続けています。当時の株価は2万円強でしたが、今では1万円ちょっとです。当社はひとかじりで終わりそうにないので、今回はまず純利益の推移をグラフにしてみました。当社Webサイトには数値データ(excelファイル)が掲載されています









ハードウェアの端境期と円高要因が重なり、今年度は赤字決算の業績予想が出ています。30年来の黒字基調をとめそうな岩田社長以下の経営陣ですが、今年は正念場です。動向に注目したいと思います。

テレビのない我が家にはゲーム機もないので、Wiiを触ったことはありません。また少し前は電車に乗るとDSで遊ぶ人が目につきましたが、最近はスマートフォンばかりですね。

2012年1月8日日曜日

誤判断の心理学(2)愛好・愛情がもたらすもの(チャーリー・マンガー)

2回目の今回はわかりやすい話題で、日本語でもことわざになっています。例えば「あばたもえくぼ」あたりでしょうか。前回と同じように、人間の行動をつかさどる根源的な力となるものです。メンタルモデルに加えるべき、重要な概念でしょう。

人間の心理学的傾向その2
愛好/愛情の傾向
Liking/Loving Tendency

殻をやぶったばかりのガチョウのひなどりは、遺伝子に組み込まれた教えに導かれて、初めに目にする生き物に愛情をよせ、付き従います。普通は自分の母親なのですが、殻をやぶるときに母親のかわりに人間が立ち会っていると、ひなどりはその人間を付き従うようになってしまいます。代理母、というわけです。

A newly hatched baby goose is programmed, through the economy of its genetic program, to “love” and follow the first creature that is nice to it, which is almost always its mother. But if the mother goose is not present right after the hatching, and a man is there instead, the gosling will “love” and follow the man, who becomes a sort of substitute mother.


両親や配偶者や子供を除いたら、人は何を好んだり、愛したりするのでしょうか。答えは、自分を好んだり愛してくれるものを、好み、愛するといったところでしょう。ですから、求婚に勝ち残るのはきわめて献身的な人のことが多いですし、本人と直接関係がない大勢の人から愛されたり、認められようと、人は営々と努力するものです。

And what will a man naturally come to like and love, apart from his parent, spouse and child? Well, he will like and love being liked and loved. And so many a courtship competition will be won by a person displaying exceptional devotion, and man will generally strive, lifelong, for the affection and approval of many people not related him.


愛好/愛情傾向が何を引き起こすかというと、わかりやすいものとして自身の行動を調節してしまうことが挙げられます。第一に、好意を持っている対象が間違ったことをしても無視したり、願いに沿ってあげたりします。第二に、好意の対象と単に関係があるだけの人・モノ・行動に対しても、好ましい感情を持つようになります(「単に関係ありのもたらす影響」は後述します)。第三に、他の事実を曲げてでも、その愛情を支えようとする点です。

One very practical consequence of Liking/Loving Tendency is that it acts as a conditioning device that makes the liker or lover tend (1) to ignore faults of, and comply with wishes of, the object of his affection, (2) to favor people, products, and actions merely associated with the object of his affection (as we shall see when we get to “Influence-from-Mere-Assosiation Tendency,”) and (3) to distort other facts to facilitate love.


私も、製品が好きだという理由から投資した企業がありましたが、失敗におわりました。その事例は、近いうちにご紹介します。

2012年1月7日土曜日

驚くほど突然に訪れる(水が世界を支配する)

読んでいる本『水が世界を支配する』で示唆的な文章に目がとまったのでご紹介します。

歴史では何度も繰り返されてきたことだが、昔からの水工学に安住するだけの社会は、水問題に立ち向かって画期的な解決策を見つけた国家や文明にかならず追い越される。イスラムは、まずは中国の帆船に、ついで中国が海から退却したあと、ポルトガルの探検家バスコ・ダ・ガマがインド洋に乗り入れた一四九八年以降のヨーロッパ船に、対抗できなかった。イスラム教徒がビザンチン帝国とペルシャを転覆させたときもそうだが、一つの文明がほかの文明を追い越す瞬間は、驚くほど突然に訪れる。力の蓄積はひそかになされ、やがてあらゆるところで一気に表面化するからだ。ヨーロッパの航海技術や造船業、海上兵器の発達は、安価で速く安全な海上輸送と貿易の機会を着々と広げてはいたのだが、バスコ・ダ・ガマの船団が喜望峰をまわりインド洋を横切ってインドのカリカットの港に入るまでは、公然と知れわたることがなかっただけなのだ。
(p.147)

株式投資で考えると、これから勢いを増す企業を見つけたいのは人情ですが、ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーであれば反対で、逆転されにくい企業を見つけるほうに力を注ぐでしょうね。

2012年1月6日金曜日

TOPIX Core30ひとかじり(1)ファナック

市場で適切に評価されていない銘柄を探して投資対象としているので、有名だったり大きな日本企業はあえて避けていました。ですから、それらの企業については表面的な知識しか持っておらず、分析はほとんどしていません。しかし、思うところがあり、日本を代表する企業も少しずつ勉強したいと考えるようになりました。まずは浅く事実を知る程度ですが、TOPIX Core30から順に触れていくつもりです。

TOPIX Core30とは東証TOPIXのサブインデックスで、東証市場第一部に上場する内国普通株式のうち、時価総額、流動性の特に高い30銘柄が含まれています。現時点の構成銘柄はここに一覧されています。アメリカのDow Jones Industrial Average(DJIA)と雰囲気が少し似ていますね。

世間でも注目されている会社ばかりですので、屋上屋を架して各社を説明する必要はないかと思います。印象に残った点を記述していきます。

今回取り上げるのは、その中でもROAが最高水準の企業、ファナックです。当社のことは以前に一度だけ簡単に調べたことがありますが、今回は有価証券報告書に一通り目を通しました。優良企業は何かしらの特徴が目につくものですが、当社も独特な強い匂いがします。以下、感じた点を3点ほど。

1.自己株式取得の判断がよい
もともと自己株式を13%保有していましたが、2009年8月の取締役会で追加取得を決議しています。890億円で1,200万株(約5%分)取得ですので、1株平均7,500円程度で買っています。底値では買っていませんが、業績が悪かった年度(当期純利益375億円)に決断したのは見事です。

2.一味違うリスク認識
「事業等のリスク」で自然災害を挙げることが多いものですが、当社は富士山噴火を明記しています。富士山周辺に本社を抱える大企業は少ないと思いますが、小さな確率でも壊滅的な影響を及ぼすリスクです。最悪時の対応は検討済かもしれません。

3.現時点での割安度は?
(現預金+売掛金+有価証券)から負債合計をひいた残額は、1株あたり3,000円弱。それを考慮すると、現在のPERはそこそこ妥当に見えます。2009年のような自社株買いができる企業であれば、内部留保の使い方に安心感を覚えます。もっと分析を行って、Moatが長続きするか検討する価値のある企業だと感じました。

蛇足ですが、当社の有価証券報告書の「役員の状況」も一味違います。NTTや三菱UFJでもしていない略歴の書き方です。

2012年1月5日木曜日

(メンタル・モデル)熱力学の法則

チャーリー・マンガーは戦時中にカルテックで熱力学を専攻しました。熱力学の教義は彼のメンタル・モデルに当然含まれているはずです。最近読んだ『サイエンス入門〈1〉』では爆発や温度などの話題がわかりやすく取り上げられており、楽しめました。今回は熱力学の法則を同書から引用します。

(第0法則)
接するもの同士は同じ温度になろうとする。

(第1法則)
エネルギーは保存される。

(第2法則)
熱エネルギーを取り出すには、温度差が必要である。
ある物体のエントロピー(無秩序さ)は増えたり減ったりするが、宇宙のエントロピーの総量はつねに増えつづけている。

(第3法則)
何物も絶対零度に達することはできない。

2012年1月4日水曜日

バリュー投資とは(セス・クラーマン)

カルト的な人気を集めているヘッジファンド・マネージャーに、セス・クラーマン(Seth Klarman)がいます。著書Margin Of Safetyはamazon.comで高値で取引されています。今回は同書から、年頭にあたっての自戒として引用します。(日本語は拙訳)

バリュー投資の信条は、次の3つの主要な考えから成り立っています。まず一つ目は、ボトムアップ戦略です。つまり、やるべきことは特定の割安な投資対象をみつけることです。二つ目は、投資成績は純損益をみること。[他と比べる]相対的な成績は追いかけません。最後の三つ目は、損失を避けるよう努めることです。うまくいく場合(儲け)だけを考えるのではなく、間違えている場合(損失)のことも同じように検討するべきです。

There are three central elements to a value-investment philosophy. First, value investing is a bottom-up strategy entailing the identification of specific undervalued investment opportunities. Second, value investing is absolute-performance-, not relative-performance oriented. Finally, value investing is a risk-averse approach; attention is paid as much to what can go wrong(risk) as to what can go right(return).