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2012年10月19日金曜日

どのようにモデルを使うのか(Seeking Wisdom)

物事を的確に理解するにはモデルをつかうのがよい、というのはチャーリー・マンガーが繰り返し主張していることです。「モデル」については、過去記事「チャーリー・マンガーのMultiple Mental Models」などでも取り上げていますが、別の説明として今回はおなじみの『Seeking Wisdom』から引用します。(日本語は拙訳)

「モデル」とは、世界がどのように働いているかをよりよく理解するのに役立つ考えである。モデルがあれば、どのような結末を迎えるのか、また「なぜ、どうやって」といった疑問に答えられるようになる。ひとつの例として「社会的証明」モデルをあげてみよう。「いったい何がおきたんだ?」、不確かなことに直面すると、本来やるべきことを考えずに他人がとる行動をそのまま真似することがよくある。このモデルを以ってすれば、「なぜ」そうなるのか説明できるし、ある状況下において人は「どのように」ふるまうのか、予測できるようになる。

問題を避けるという意味でもモデルは有効だ。たとえば地球には無限の資源があると教えられたとしても、「ものには限界がある」という概念を知っていれば、その教えは誤っていることがわかる。プロジェクトに投資しないかと提案を受けたとき、それが物理学の法則に反していることがある。そのとき科学的に筋が通らないとして近寄らないでおけば、いったいどれだけの不幸な結末が避けられただろうか。

もしモデルが現実に即したものであれば、そのモデルは本物だろう。生物学に由来する概念を例にとると、現実に即したものとしては「一般的に、人は自分の興味に従って行動する」が挙げられる。一方で「人の性格はロールシャッハ・テストによって評価できる」という概念があるが、人間の性格を予測できるものではなく、こちらは現実離れしている。では、ここからは考えてみてほしい。「根本的で重要な概念」とはどういうものだろうか。日常生活でどのように使われているか、わかるだろうか。それは世界を理解するのに役に立つのだろうか。なぜ、どうやって、どんな状況で働くのか。どれだけ信頼できて、どこまで使えるのか。他のモデルとどう関連するのか。
チャールズ・マンガーは有用な概念として、次のような「化学における自触媒反応」の例を挙げている。

ある種の化学反応を生じさせている際に、反応速度が上昇することがあります。これはすなわち、何かに取り組んでいるときに、この驚くべき促進作用が長時間にわたって続くということです。物理学の法則によればそのようなことは永遠には続きませんが、そこそこの期間であれば継続するので、大きな促進が得られます。「あれ」ができたと思っていたら、突如として「あれ」も「これ」も「それ」も得られる時期がやってくるのです。(p.190)

A model is an idea that helps us better understand how the world works. Models illustrate consequences and answer questions like “why” and “how”. Take the model of social proof as an example. What happens? When people are uncertain they often automatically do what others do without thinking about the correct thing to do. This idea helps explain “why” and predict “how” people are likely to behave in certain situations.

Models help us avoid problems. Assume that we are told that the earth consists of infinite resources. By knowing the idea about limits, we know the statement is false. Someone gives us an investment proposal about a project that contradicts the laws of physics. How much misery can be avoided by staying away from whatever doesn't make scientific sense?

If a model agrees with reality, it is most likely true. One idea from biology that agrees with reality is that “people on average act out of self-interest.” But not the idea that “people's personalities can be evaluated by using the Rorschach ink-blot test.” It can't predict people's personalities. Ask: What is the underlying big idea? Do I understand its application in practical life? Does it help me understand the world? How does it work? Why does it work? Under what conditions does it work? How reliable is it? What are its limitations? How does it relate to other models?
Charles Munger gives an example of a useful idea from chemistry - autocatalysis:

If you get a certain kind of process going in chemistry, it speeds up on its own. So you get this marvelous boost in what you're trying to do that runs on and on. Now, the laws of physics are such that it doesn't run on forever. But it runs on for a goodly while. So you get a huge boost. You accomplish A - and, all of a sudden, you're getting A + B + C for awhile.


大局観をみるには何が助けになるのだろうか。また問題をとらえる際に、どうすれば多くの視点から検討できるようになるのか。それには、多様な学問の分野がもたらす知識や洞察を使うべきだ。ほとんどの場合、問題を解くにはさまざまな観点から追及する必要がある。チャールズ・マンガーはこう言っている、「人の世における乱雑な問題を解決するには、ほとんどの場合、重要な考えをいくつかではなく、すべてが使えるようにしておかなければなりません」。

物理学であらゆる物事を説明できるわけではないし、生物学や経済学であっても同じだ。つまり世界というのは学際的なものなのだ。たとえばビジネスの場では、規模の大小がどのように行動を変化させるのか、どうやってシステムは破綻するのか、供給が価格に対してどう影響するのか、どんな動機づけであれば行動につなげられるのか、こういったことを知っておくのはとても役に立つ。

単一の学問分野だけではすべてを答えることはできない。だから重要な学問分野で得られた重大な概念を理解し、使えるようになることが求められる。数学、物理学、化学、工学、生物学、心理学といった学問を、より信頼できるものから順に並べ、使っていくのだ。(p.191)

What can help us see the big picture? How can we consider many aspects of an issue? Use knowledge and insights from many disciplines. Most problems need to be studied from a variety of perspectives. Charles Munger says, “In most messy human problems, you have to be able to use all the big ideas and not just a few of them.”

The world is multidisciplinary. Physics doesn't explain everything; neither does biology or economics. For example, in a business it is useful to know how scale changes behavior, how systems may break, how supply influences prices, and how incentives cause behavior.

Since no single discipline has all the answers, we need to understand and use the big ideas from all the important disciplines - mathematics, physics, chemistry, engineering, biology, psychology, and rank and use them in order of their reliability.

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