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2015年3月20日金曜日

2014年度マンガーからの手紙(2)バークシャー・システムとは(後)

2014年度「バフェットからの手紙」に含まれる「第3部チャーリー・マンガー副会長による見解」をひきつづき取りあげています。ウォーレンを導き、ウォーレンをいちばんよく知る人物、それがチャーリーです。ウォーレン・バフェットの本質を知る上で、このシリーズの文章は短いながらも最上の資料だと思います。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

[バークシャー・システムの説明のつづき。前回は(6)まで]

(7) 新たに子会社を買収する際には、通常は現金を対価とし、新株は発行しないこと。

(8) バークシャーが利益1ドル分を留保することで、株主にとっての市場価値が1ドル分以上生み出されるのであれば、配当金を支払わないこと。

(9) 新たな子会社を買収する際には、会長自身が十分に理解できる良好なビジネスをそこそこな値段で買えるように努めること。またバークシャーが求める買収先は、良きCEOがこれからもずっとその地位を占め、本社からの支援を必要とせずにうまく経営できる子会社であること。

(10) バークシャーが子会社のCEOを選任する際には、信頼がおけて有能かつ情熱があり、自分のいる事業や環境にぞっこんな人物を見定めること。

(11) 望ましき重要な行動規範のひとつとして、バークシャーは原則的に子会社を売却しないこと。

(12) バークシャーは原則的に、ある子会社のCEOを別の無関係な子会社へ異動させないこと。

(13) バークシャーは、単に高齢になったという理由で子会社のCEOを引退させないこと。

(14) バークシャーは債券をなるべく発行しないこと。あらゆる環境において事実上完璧なまでの信用力を維持し、また不測の事態で使える現金や信用を容易に確保したいためである。

(15) 売却の可能性を秘めた大規模な事業者に対して、バークシャーはいつでも丁寧に応じること。そして事業売却を打診されたら、すみやかに反応すること。もし取引が流れても、会長以外でその件を知る者は1,2名にとどめ、また外部に漏らさないこと。

バークシャー・システムを構成する要素及び全体としてみた規模は、他ではなかなかみられないものです。私の知る限り、他の大企業でその半分でも実行している会社はありません。

それでは、バークシャーはどのようにして、それほどまでに普通とは異なる企業文化を身につけてきたのでしょうか。

バフェットは34歳にしてバークシャーの株式を45%保有し、他のすべての大株主から完璧に信頼されていました。そのため彼は、会社のシステムを自分の好きなようにすることができました。そこで彼は、このバークシャー・システムを作ったのです。

上述した要素は「自分の下でバークシャーの成果を最大化するのに役立つ」とバフェットが確信して選んだものばかりです。彼は、他の企業がやるような一律式のシステムを作ろうとはしませんでした。事実、バークシャーの子会社が自社の経営においてバークシャー・システムを使う必要はありませんでした。他のシステムを採用して大成功した子会社もあります。

それでは、彼は何をねらってバークシャー・システムを設計したでしょうか。

時を追うごとに、私は以下のような大切な主題を見いだしました。

(1) 彼が特に望んでいたのは、システム内のほぼすべての重要な人物が、合理性や能力や献身を継続的に増していくことでした。そのために、まず隗より始めたのです。

(2) 彼はどのような場においても、両者が利益を得られる道を望みました。たとえば、何かを与えることで忠誠心を得るなどです。

(3) 彼は、長期的にみたときに成果が最大になる判断をするように望みました。その判断をくだす者はたいていはずっとその場を占め、決定したことの行く末を受け入れることになります。

(4) 彼は、巨大化した本社による官僚主義がもたらす不可避必至な悪影響を、なるべく小さくしたいと望みました。

(5) ベン・グレアム先生がやったように、彼はみずからが達した知恵を広めるために、個人的に貢献したいと望みました。

バフェットがバークシャー・システムを発展させたとき、そこから生じるあらゆる利益を予見していたでしょうか。ちがいます。バフェットは日々の実際的な進歩を通じて利益をものにしてきたのです。しかし望ましい結果が得られるたびに、彼は意を強めていきました。

(7) New subsidiaries would usually be bought with cash, not newly issued stock.

(8) Berkshire would not pay dividends so long as more than one dollar of market value for shareholders was being created by each dollar of retained earnings.

(9) In buying a new subsidiary, Berkshire would seek to pay a fair price for a good business that the Chairman could pretty well understand. Berkshire would also want a good CEO in place, one expected to remain for a long time and to manage well without need for help from headquarters.

(10) In choosing CEOs of subsidiaries, Berkshire would try to secure trustworthiness, skill, energy, and love for the business and circumstances the CEO was in.

(11) As an important matter of preferred conduct, Berkshire would almost never sell a subsidiary.

(12) Berkshire would almost never transfer a subsidiary's CEO to another unrelated subsidiary.

(13) Berkshire would never force the CEO of a subsidiary to retire on account of mere age.

(14) Berkshire would have little debt outstanding as it tried to maintain (i) virtually perfect creditworthiness under all conditions and (ii) easy availability of cash and credit for deployment in times presenting unusual opportunities.

(15) Berkshire would always be user-friendly to a prospective seller of a large business. An offer of such a business would get prompt attention. No one but the Chairman and one or two others at Berkshire would ever know about the offer if it did not lead to a transaction. And they would never tell outsiders about it.

Both the elements of the Berkshire system and their collected size are quite unusual. No other large corporation I know of has half of such elements in place.

How did Berkshire happen to get a corporate personality so different from the norm?

Well, Buffett, even when only 34 years old, controlled about 45% of Berkshire's shares and was completely trusted by all the other big shareholders. He could install whatever system he wanted. And he did so, creating the Berkshire system.

Almost every element was chosen because Buffett believed that, under him, it would help maximize Berkshire's achievement. He was not trying to create a one-type-fits-all system for other corporations. Indeed, Berkshire's subsidiaries were not required to use the Berkshire system in their own operations. And some flourished while using different systems.

What was Buffett aiming at as he designed the Berkshire system?

Well, over the years I diagnosed several important themes:

(1) He particularly wanted continuous maximization of the rationality, skills, and devotion of the most important people in the system, starting with himself.

(2) He wanted win/win results everywhere--in gaining loyalty by giving it, for instance.

(3) He wanted decisions that maximized long-term results, seeking these from decision makers who usually stayed long enough in place to bear the consequences of decisions.

(4) He wanted to minimize the bad effects that would almost inevitably come from a large bureaucracy at headquarters.

(5) He wanted to personally contribute, like Professor Ben Graham, to the spread of wisdom attained.

When Buffett developed the Berkshire system, did he foresee all the benefits that followed? No. Buffett stumbled into some benefits through practice evolution. But, when he saw useful consequences, he strengthened their causes.

6 件のコメント:

  1. 2015年2月28日の発表から今日まで、短時間での翻訳、大変な作業に対し、betseldom様の能力を心より尊敬しますとともに、有難く感謝申し上げます。

    私も、同社の株主の一人として、毎年、ダウンロ-ドして、読みますが、単に読むことと、翻訳することとの質的な差は100対1よりももっと大きな差があると感じます。

    翻訳者の許可なくプリントアウトして、私のBRKのFILEの中の会長よりの手紙のFILEに添付致しました。

    betseldom 様のこのブログは私にとって、最良の教科書になっています。
    私の書棚にある投資関連の書籍数は100冊を超えていますが、最近ではこのブログで勉強することが、大きな楽しみの一つになっています。

    今後ともどうか宜しくお願い致します。

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    1. 匿名さん、こんにちは。ごていねいなコメントをありがとうございました。

      ここでやっていることと言えば横のものを縦にするばかりなのですが、それでも匿名さんのような方にご感想を書いて頂けるのは、とてもうれしいことです。ありがとうございます。

      バークシャーは柔軟ながらも堅牢な巨大企業となりました。しかし今回のレターなどを読むと、当社は複雑難解な知的作業の末にできたとみるよりも、厳選した単純な要素を巧みに組み合わせて事業活動を継続した結果ととらえたほうが、適切に評価できるような気がします。チャーリーが強調する「バークシャーは部分の和ではない」という言葉が少しわかってきたように感じています。

      この稀なる企業の同じ株主に匿名さんのような方がいらっしゃること、そしてわたし独自の文章ではないものの当ブログを楽しんでくださっていること、どちらもうれしいとしか言いようがありません。ありがとうございます。

      ひきつづきよろしくお願い申し上げます。
      それでは失礼します。

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  2. このブログは本当に勉強になります。
    そういえば、チャーリーが最近読んだ本としてこのブログで取り上げられていた「The Outsiders: Eight Unconventional CEOs and Their Radically Rational Blueprint for Success」はパンローリング社から「破天荒な経営者たち」として出版されています。この本を通じてジョン・マローンという人物を知り、すっかり魅了されてしまいました。

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    1. ブロンコさん、こんにちは。コメントをありがとうございます。

      「The Outsiders」の情報をありがとうございました。評判が高かったので、ぜひ読みたいと考えていた本です。翻訳書が出るのはありがたいことです。ブロンコさんのご感想もうかがえたので、ますます楽しみになってきました。

      蛇足ですが、今日から『石油の帝国』を読み始めました。こちらも読み進めるのが楽しみです。

      それでは失礼致します。

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  3. 既に同様のコメントをされている方がいらっしゃいますが,バフェットの手紙の翻訳の早さと,公表されるbetseldomさまの寛大さには頭が下がります。もちろん私のために翻訳されているわけではありませんが,一読者として,御礼と応援申し上げます。
    betseldomさまのご健康と投資の成功をお祈り申し上げます。

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    1. ATさん、コメントをありがとうございました。

      わたしのほうも同様なお返事になってしまうのですが、ATさんやみなさんが拙訳を通じて読んでくださること、そしてコメントを残してくださること、その2つがすなおにうれしいです。大切な原文なのでそれなりの姿勢で取り組んでいるつもりですが、そっとごまかしている箇所もあります。どうぞご容赦ください。

      ウォーレン・バフェットの文章がしばらくつづいたので、これからはいつもの配分に戻ると思います。5月になればバークシャーの株主総会の話題が出てくるので、再びウォーレンが出ずっぱりになると思います。

      最後になりますが、お気遣いの言葉を頂き、そちらもありがとうございました。
      またよろしくお願いします。それでは失礼致します。

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