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2013年3月22日金曜日

強気相場の第2段階(ハワード・マークス)

Oaktreeの会長ハワード・マークスが新しいメモを公開しています。話題は「株式相場の見通し」、前半では株式のリスクプレミアムをとりあげて楽観視をたしなめていますが、債券と比較したときの相対的な割安さを歴史的にみたり、バリュエーションを定性的に評価して、それほど行き過ぎた状況でないことを示唆しています。今回ご紹介するのはメモの最後の部分で、現在の投資家心理を概括したものです。(日本語は拙訳)

The Outlook for Equities (Oaktree Capital Management)

幸運にも1970年代半ばに、昔ながらの貴重な知恵の筆頭にあげられるものに出くわしました。「強気相場には3つの段階がある」というもので、私にとっては投資家として大きな教訓となったものです。

・1番目の段階では、先見の明があるわずかな人が、これからは好転するだろうと確信しはじめ、
・2番目の段階では、ほとんどの投資家が、良い方向に進んでいることを実感し、
・3番目の段階では、あらゆる人が、良い状態がこのまま永続的に続くと確信する。

2008年3月は金融危機によって生じたどん底が始まる数ヶ月前のことでしたが、そのときに書いた「潮がひいたとき」では同じ考えを逆にやってみました。弱気相場の3段階です。

・1番目の段階では、ひとにぎりの賢明な投資家が、強気の風潮にもかかわらず、未来はずっと明るいわけではないと考えはじめ、
・2番目の段階では、ほとんどの投資家が、悪化していると認識し、
・3番目の段階では、あらゆる人が、ますます悪くなる一方だと諦観する。

過去の特定の時期に何が起きたのか、後知恵で話すのはたやすいことです。2007年の第2四半期には損失を出すなど誰の頭にもありませんでしたが、それは強気相場の第3段階だったからです。一方で2008年第4四半期は債券市場で、そして2009年第1四半期は株式市場において、ずばり弱気相場の第3段階でした。金融システムは今にも崩壊し、半値になった株式はさらに半分になるに違いないと、ほとんどの人が考えていたものです。

しかし市場の歴史を学んで上手な投資家になるには、あとづけから学ぶやりかたではなくて、その時々で状況をどう評価するのかを学びとることが必要です。1年前に「デジャヴュ再び」を書いた頃には、株式は強気相場の第1段階にあると私は感じていました。悪い思い出がずっと残り、無関心の程度も高かったため、再び株の人気がでてくると考えていたのはごく少数の投資家だけでした。期待が低いところに、基礎的要因や心理面がそこそこ改善されたことで、メモを書いた時点からS&P500はおよそ13%上昇しました。

そして現在の状況ですが、基礎的な環境はいくぶん改善され、概して楽観的な投資家が増え、株価はかなり上昇しました。好転した様子はまったく認められないとは言えない状況なので、第1段階はもう過ぎています。私がみたところでは、状況が改善したことは広く認められていますが、その認識は広がりすぎてはいないですし、ひどく行き過ぎているわけでもありません。ですから、今は第2段階の前半の途中と思われます。市場で価格を決定しているのは、もはや悲観派ではありません。だからといって、手放しの楽観派が大勢を占めているほどでもありません。

In the mid-1970s I was fortunate to happen upon one of the first of the time-worn pearls of wisdom that contributed so much to my education as an investor. It described the three stages of a bull market:

・the first, when a few forward-looking people begin to believe things will get better,
・the second, when most investors realize improvement is actually underway, and
・the third, when everyone's sure things will get better forever.

In “The Tide Goes Out,” written in March 2008, several months before the lows of the financial crisis, I applied the same thinking to the converse - the three stages of a bear market:

・the first, when just a few prudent investors recognize that, despite the prevailing bullishness, things won't always be rosy,
・the second, when most investors recognize things are deteriorating, and
・the third, when everyone's convinced things can only get worse.

Hindsight always makes it clear what was going on at a particular point in time. It's a snap now to say the second quarter of 2007 marked the third stage of a bull market: no one could think of a way to lose money. And in the fourth quarter of 2008 (for credit) and the first quarter of 2009 (for equities), we were certainly in the third stage of a bear market: most people thought the financial system was about to collapse, and securities that had halved in price could do nothing but halve again.

But the study of market history only makes us better investors if it teaches us how to assess conditions as they are, rather than in retrospect. When I wrote “Deja Vu All Over Again” a year ago, it was my feeling that equities were in the first stage of a bull market. Experience had been so bad for so long - and the level of disinterest was so high - that only a few investors thought equities could ever catch on again. Those low expectations, when combined with modest fundamental and psychological improvement, gave the S&P 500 a return of about 13% over the year since that memo was written.

So now we have a somewhat improved fundamental environment, a generally more optimistic group of investors, and stock prices that are a fair bit higher. No one should say the likelihood of improvement is entirely unrecognized today, as would have to be the case for this to still be stage one. I think the existence of improvement is generally accepted, but that acceptance is neither extremely widespread nor terribly overdone. Thus I'd say we're somewhere in the first half of stage two. Pessimist no longer control market prices, but certainly neither have carefree optimists taken over.

2 件のコメント:

  1. == No title ==
    こんにちは。今回の記事も素晴らしい翻訳とご紹介、ありがとうございます。
    ハワードっぽい視点ですね。20の教えでの「振り子を意識する」にもありますね
    日本株式もここ最近好調ですが、どのへんなんでしょうかね。
    なんとなく日本も第2段階の前半の途中という感じなんでしょうかね。

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  2. == isさん、こんにちは ==
    isさん、いつもお読みになってくださり、ありがとうございます。
    ハワード・マークスは学者風の雰囲気を漂わせていますが、実はサービス精神旺盛で、ファンドの投資家や一般大衆の心理をつかむ技に長けていると感じています。今回のメモも強気と弱気の加減が微妙で、どちらに転ぶのかなんともハラハラさせる内容でした。
    isさんも感じられている日本株式の動向は、いったいどうなるのか検討もつきません。参院選対策さらには対中意識高揚あるいは30年タイマーが起動した大強気相場かと邪推していますが、手持ちの株はまだまだ割安のため、ほとんど売ることができておりません。isさんがご指摘されているように、第2段階なのかもしれませんね。
    またのコメントをお待ちしております。それでは失礼致します。

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