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2013年3月15日金曜日

李鶴洙(サムスン電子元副会長)

今回は「備える、逃げる」というテーマについて、何年か前に手にとった本『サムスンCEO』で印象に残っていた箇所をご紹介します。このテーマは自分の中でもそれなりに重要な位置を占めているものです。

1976年12月のとても寒い夜だった。ある病院が火事になり、そこから水に濡らしたベッドのシーツを身にまとってかけだしてくる者がいた。李鶴洙[イ・ハクス]だった。彼はその年、急性肝炎で大邱病院に入院していた。彼の病室は6階。そして、その病院で火事が発生した。当時、第一化織の管理部長だった李鶴洙は、「火事だ!」という叫び声で目が覚めた。彼は突然の出来事にもかかわらず、シーツを水で濡らし、非常口に向かって走り出した。幸いにも、外へ逃げることができた。彼のこのような行動は、以前から火災が起きることを予見し準備していたかのようだった。

彼が非常事態でも適切、迅速に対処できたのは、父親のおかげだった。彼が大邱病院に入院して数日も経たないうちに、父親が見舞いにやってきた。その時、父親は李鶴洙にこのように言ったという。

「私がさっき見たのだが、この病棟には非常口が2つある。右側の非常口は閉じられ、左側は空いている。もしかして知らないと思ったので知らせておく。人間はいつも準備しておくものだ

李鶴洙が「火事だ!」という声を聞いて目が覚めた時、最初に浮かんだのはこの父親の言葉だったという。そのため、彼は迷うことなく冷静に左側の非常口に向かって逃げ出せたのだった。(p.37)


余談になりますが、はじめて買った株がノキアだったこともあり、アメリカ市場における各社の動きを注視していた時期がありました。当時はRAZRを擁するモトローラが息を吹き返す一方、サムスン電子もクラムシェル型(折りたたみ型)端末を連発していました。センスのよい日本各社の端末とくらべるとサムスンの初期製品は「ドン亀」といった見ためでしたが、折りたためないストレート型の端末が多い市場でクールな印象を与え、着実にシェアを伸ばしていました。

サムスンの最新型端末ギャラクシーS4が本日発表されました。製品のデモを一瞥して同社の大躍進ぶりに感嘆するとともに、この業界の生態系は次の新たな勝者を望んでいるようにも感じられました。

2 件のコメント:

  1. == No title ==
    「私がさっき見たのだが、この病棟には非常口が2つある。右側の非常口は閉じられ、左側は空いている。もしかして知らないと思ったので知らせておく。[太字]人間はいつも準備しておくものだ[/太字]」
    かっこいい言葉ですね。
    何が起こりうるのか?
    私自身は経験上、先に想定して準備してから行動する方が、色々うまくいくことが多かった気がします。(私は経験で学んでいるので愚者です。)
    備えあれば憂いなしってとこですね。(先人の知恵は本当に為になります)

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  2. == 投資男さん、ありがとうございます ==
    投資男さん、こんにちは。いつもコメントをありがとうございます。
    「先に想定して準備してから行動する方が、色々うまくいくことが多かった気がする」とのことですが、きちんと記憶されている点がすばらしいですね。私の場合、うまくいったのかどうかを記録していませんし、記憶もしていないですし、検証すらできていません。
    今回の主旨から少しはずれますが、先人の言葉で印象に残っているものをもうひとつご紹介します。『となりの億万長者』(p.63)からです。
    (高校中退で、1000万ドルを超える資産を築いた人に聞いて)
    いつも目標を立てて、努力したからでしょう。その日の目標、その月、その年の目標、そして人生の目標をいつも定めています。私なんか、便所に行くときだって目標を持って行きますからね。
    投資男さんのブログはいつも楽しみに拝見しています。カントリーマアムを卒業されてしまったのは残念ですが。(買い物に行ってカントリーマアムをみるたびに、投資男さんのことが思い浮かびます。パブロフ型です)
    それではまたよろしくお願いします。失礼致します。

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