Best Ideas 2013: Yacktman Favors Cash Cows Like P&G And Contrarian Picks Too (Forbes 2012/11/26)
不振の年でもそうだったように、ヤクトマンはこれからも自分の立てた計画を固守していくとみるべきだろう。彼のファンドがあげた今年の成績は、ヤクトマン・ファンドが9.3%、ヤクトマン・フォーカス・ファンドが8.6%の上昇にとどまった。一方、市場は14.3%上昇し、同業者の9割がたはヤクトマンの成績を上回った。このことを彼は案じていないが、それもそうだろう。自分自身の成績だけでなく、買いを検討した銘柄の成績をふりかえる際には、10年単位でながめるようにしているからだ。
「ほとんどの人はじっと辛抱していられないようですな。これも最近の投資ビジネスにおける課題のひとつですよ」。つづけて彼は言った。「平均的にみれば、市場は1年の間に安値から高値まで50%変動しています。そのうえ、取引手数料がどんどん安くなっている。こういうことが投機をうながす原因になっていると思いますね」
ヤクトマンが探すのはROAの高い企業だ。そのようなビジネスは多くの資産を必要としないし、マーケットシェアが大きく、市場がどうであれそのままやっていける力がある。ヤクトマンが選ぶのは、煌々と輝いていても早々に弱まり得る星ではなく、予想のしやすいビジネスのほうだろう。「短期的にみればアップルを選好する人が大当たりを引けるかもしれません。しかし10年経ってわたしの携帯電話がどうなっているかは、なんとも予想がつきません」
「ところが10年後でもアメリカで買われている洗剤は、Tideがほとんどでしょう。これは870億ドルの売上をあげているP&Gの製品のひとつです。同社は他にもおむつのパンパースやペットフードのアイムスのような日用品を扱っているコングロマリットです。この会社なら買いですね」とヤクトマンは言う。「さらに言えば、P&Gは莫大な現金を還元してきましたが、まだ44億ドルの現金を有しています。これはP&Gがビジネスに再投資したり、株を買い戻したり、あるいは配当として払うこともできる証しです」。
[配当]利回りは、ヤクトマンが銘柄を選択する際の主要な要因だ。たとえばP&Gは3.3%だが、ベンチマークである10年物米国債のほぼ2倍に達している。「現在は、ペプシコやP&GがトリプルAの債券と同等の位置にある状況です。そんな時分に、本物のトリプルAやダブルAの債券を買っても、十分には報われないでしょう」。このように利回りに着目はするものの、不動産や工業、公共株には注意を払わない。1.76ドルの年間配当があったことで今年は人気を博したAT&Tのことを質問すると、ヤクトマンは異議を唱えた。「多額の固定資産を必要とするビジネスには魅了されません」。
もちろん、ヤクトマンがもっとも楽しんでおり、かつ秀でているのは、あまりある上昇の可能性を秘めているが人気のない株をすくいあげることだ。たとえばエイボン、CHロビンソン、ヒューレット・パッカードやリサーチ・イン・モーションといった逆張り銘柄にも投資してきた。「水中に沈めたビーチボールのような、そんな理想的なビジネスをさがし当てたいのです。水面が上昇しつづけても、そこはじっと我慢の子です。おさえている時間が長いほど、圧力がとれたときのはね返りも大きくなりますからね」。
Going forward, investors should expect Yacktman to stick to his plan, as well as some mediocre years. Like this one. The Yacktman Fund this year is up only 9.3%, and Yacktman Focused has gained 8.6%. By contrast, the broader market is up 14.3%. Some 90% of peers are beating Yacktman. Understandably, he's not worried. He prefers a 10-year horizon when assessing performance - both when looking at his own and when considering whether to buy a stock.
"Most people just aren't that patient. That's one of the challenges in the investment business today," he says. "The average stock market fluctuates about 50% from low to high in 12 months, and lower and lower transaction costs encourage speculation."
Yacktman looks for stocks with high returns on assets. This means businesses with low capital requirements, large market share and an ability to keep up in any market. So, Yacktman will opt for a more predictable business than a bright star that might fade soon. "In the short term, someone like Apple can shoot the lights out, but I can't tell you in 10 years what my cell phone will look like."
A decade from now, though, Yacktman says, most of America will probably still buying Tide detergent. That makes Procter & Gamble, the $87 billion (by sales) conglomerate with pantry staples like Pampers diapers and Iams pet chow, a buy, Yacktman says. Plus, P&G throws off enormous amounts of cash and has $4.4 billion in cash on the balance sheet, a sign P&G can reinvest in its businesses and also share by buying stock or paying dividends.
Yield is a major factor in Yacktman's picks. P&G pays 3.3%, for example, nearly double what the benchmark 10-year U.S. treasury yields. "We are in an environment where PepsiCo and Procter are like AAA bonds, and the world is not rewarding you enough to go to actual AAA or AA bonds." Even with this focus on yield, little attention goes toward real estate, industrials or utilities. And when asked about AT&T, a popular stock this year because of a $1.76 annual dividend, Yacktman demurred. "We're not enamored with a business that has enormous amounts of fixed capital."
Of course, what Yacktman enjoys - and excels - most at is scooping up unloved stocks, ones offering plentiful upside potential. This has included some contrarian choices of Avon and CH Robinson, as well as Hewlett-Packard and Research In Motion. "What we try to do is to find the ideal business, which is like a beachball being pushed under the water, and the water is rising. Then, all you have to do is have patience. Eventually the pressure will come off, but the longer it takes, the bigger the pop when it finally does happen."
ヤクトマン・フォーカス・ファンドの持ち株上位10社は、以下のとおりです(2012年12月31日時点)。P&Gはポートフォリオの10%超を占めています。
== ヤクトマン ==
返信削除この記事を見るまでヤクトマンのことをグリーンメーラーや乗っ取り屋のようなイメージを持っていました。ヤクトマンの長期的な視点からビジネスを見る姿勢は手本としなければなりませんね。
この記事に出てきたCHロビンソンワールドワイドは私の投資先のひとつです。
ノンアセット型の3PLプロバイダーである同社は、多額の設備投資を必要とせずに多額のキャッシュを生み出すビジネスの典型的な例のひとつであり、私を魅了しています。
== CHロビンソン、はじめて知りました ==
返信削除ブロンコさん、こんにちは。コメントをありがとうございました。
ヤクトマンが気にかかったのは、数年前に豊田自動織機の株を買っていたときでした。同社が保有するトヨタ株に目をつけての投資とのことでした。いかにもバリュー投資家だと感じたものです。
ところでCHロビンソンワールドワイドですが、はずかしながら初耳でした。ROAが高水準の企業ですね。似たようなところで、わたしのほうは内外トランスライン(海上輸出混載)に投資しています。3PLには至っていない、小粒な会社です。
いつも勉強になります。どうもありがとうございます。
それでは失礼致します。
== こちらこそ勉強になります。 ==
返信削除長年企業発掘を行っていますが、内外トランスラインという会社を初めて知りました。
ちらっと財務諸表を見ましたが、現金を多く保有しているようですね。東証2部というところもいいですね。
これをきっかけに同社の調査をしてみようと思います。
== 内外トランスライン ==
返信削除ブロンコさん、返信ありがとうございました。
内外トランスラインは小さな企業の典型で、社長のがんばりで伸びている雰囲気があります。ところで、LMTに投資されているブロンコさんは準備万端かと思いますが、日中軍事衝突リスクは、海運に関わる同社の業績に悪影響を及ぼすものと懸念しています。
それでは失礼致します。
== 内外トランスライン ==
返信削除さっそく調査しました。調査結果は以下の通りとなりました。
財務について
株価は一株純資産を大きく下回っており、1株現金は相当の金額である。
ビジネスについて
NVOCCであるため、設備といった固定費及び設備投資をほとんど必要としない。景気循環の影響を大きく受ける業界であるが、固定費が小さいためその影響は吸収できる。
固定費及び設備投資をほとんど必要としないがために、参入障壁がなく、好景気になると新規参入業者をひきつけることになる。逆に設備投資が不要であるため撤退障壁も低い。
??CHロビンソンに投資する際にNVOCC及び航空輸送を行うエア・フレイト・フォワーダーについて調べたところ、あまりの多さに驚きました。)
多数乱戦となれば、価格競争となるため、いかに低コストでビジネスを行うかが鍵となる。
低コストでビジネスを行うためには規模の経済性が重要となる。(船舶や航空機のスペースを大量に仕入れた方が単価を安く抑えることができる、輸送ネットワークが大きくなればなるほど荷主のニーズをより満たすことができ、取扱量が増える等)
内外トランスコスモスは規模が小さくビジネスも同業他社と差別化されていないため(目指す先も同業他社と同様である。)、世界的リーダーほど世界経済の成長の恩恵を受けることができない。
持続力のある競争優位性と株主価値の最大化という観点からは疑問が残りますが、純資産に注目し、業界及び株式市場の景気循環の波を辛抱強く待つというウォルター・シュロス流の投資で臨めばよい結果につながるかも知れません。
== 内外トランスラインの分析、ありがとうございます ==
返信削除ブロンコさん、内外トランスラインについて早々にコメントをくださり、どうもありがとうございます。
株式を保有している企業に対して第三者からご意見を頂けるのは、わたしにはとてもありがたいことです。自分だけでは見方が偏りがちで、致命的な死角を残している恐れがあるからです。
ブロンコさんの分析内容については、基本的に異論はありません。特にグローバルな視野で評価なさっている点は、わたしが当社を分析した際に漏らしていた視点なので、参考になりました。ブロンコさんの投資スパンの長さを改めて感じさせられた文章でした。「ウォルター・シュロス流」という表現にも納得です。
以下に、わたしなりの見解を追記します。
当社の株を集中的に買った時期は、2009年夏から2010年初頭でした。当時の株価は500-600円強で、今よりも割安感がありました。現在の株価水準で当社に投資するかというと、おそらくしないと思います。魅力のある銘柄が他にも残っているからです。
この手の企業に投資するときは、余剰現金が潤沢で割安かつ成長余地が十分に残っていることを前提条件としています。業績向上と割安水準見直しのダブルプレーを狙えるからです。そのため、当面の投資期間としては5-10年程度を想定し、その程度の期間であれば成長機会はまだあると考えました。たとえばアジア経済の成長、ブランド認知度向上に伴う拡販、多頻度小口輸送へのトレンド継続、余剰現金を使った買収などです。また混載輸出というニッチに主軸をおく間は、競争力が維持できると考えていました。ブロンコさんがご指摘なさっているように、残念ながら景気後退に逆らうまでの力は発揮できていませんが、なんとか健闘している経営状況と評価しています。
大切なご時間を費やしてコメントを書いて下さり、感謝しております。
またよろしくお願いします。
それでは失礼致します。