わたしどもは過去の報告書で、再起をかけたビジネスを買収して経営しても、たいていは残念な結果に終わることを記してきました。幾多の産業に文字どおり何百もの再起をはかる案件があるとは、以前から申し上げてきたとおりです。そのような案件に参画したり傍観してきましたが、得られた成果は期待にこたえるものではありませんでした。結局のところ、すばらしい才能で評判を博している経営者が、根本的な経済性がよろしくないと知れているビジネスに取り組んでも、ごくわずかの例外を除けば評判が変わらないのはビジネスのほうだ、と考えるに至りました。
1976年に破産の背戸際から再起したことを鑑みれば、GEICO(ガイコ)社は例外のひとつに挙げられるかと思います。たしかに同社を蘇生させるには、すぐれた経営手腕が欠かせませんでした。その年に加わったジャック・バーンによって、やるべき仕事が数多くなされています。
しかし、GEICOが享受してきた事業自体の持つ本質的な優位性、すなわち同社が驚嘆すべき成功をおさめてきた理由そのものは、財務や経営上の問題の海に沈みながらも、いまだ変わらずに会社の中に残されていました。GEICOは、広大な自動車保険の市場において低コストで営業できるしくみになっていました。一方、他の大半の企業では環境に順応しようとしても、マーケティング上の構造自体が足をひっぱっていたのです。GEICOは持ち前の力を発揮することで、顧客に対して通常ならぬ価値を提供できました。同時に、会社としても通常ならぬ利益をあげることができました。同社では何十年にもわたって、このようにやってきたのです。70年代中盤にトラブルに陥ったのは、この根本的な経済的特性が縮小したり消失したせいではありませんでした。
この問題によって当時のGEICOは、あたかもアメリカン・エキスプレスが1964年のサラダ・オイルの不祥事の後に陥ったような状況をむかえました。両社とも財務面で大穴を開けてしまったことで、当惑させられる類いの企業とみられていたのです。しかし、会社に内在されている卓越した経済性はなくなっていませんでした。抜きんでたフランチャイズを有する事業に部分切除可能な腫瘍が付いている、GEICOとアメリカン・エキスプレスの状況とはそういうものだったのです。手練れの外科医を必要としていたのはたしかですが、経営陣が企業版ピュグマリオンとして成就するのを希求しているような真の「再起」案件とは、区別すべきものでした。
We have written in past reports about the disappointments that usually result from purchase and operation of "turnaround" businesses. Literally hundreds of turnaround possibilities in dozens of industries have been described to us over the years and, either as participants or as observers, we have tracked performance against expectations. Our conclusion is that, with few exceptions, when a management with a reputation for brilliance tackles a business with a reputation for poor fundamental economics, it is the reputation of the business that remains intact.
GEICO may appear to be an exception, having been turned around from the very edge of bankruptcy in 1976. It certainly is true that managerial brilliance was needed for its resuscitation, and that Jack Byrne, upon arrival in that year, supplied that ingredient in abundance.
But it also is true that the fundamental business advantage that GEICO had enjoyed ‐ an advantage that previously had produced staggering success ‐ was still intact within the company, although submerged in a sea of financial and operating troubles. GEICO was designed to be the low‐cost operation in an enormous marketplace (auto insurance) populated largely by companies whose marketing structures restricted adaptation. Run as designed, it could offer unusual value to its customers while earning unusual returns for itself. For decades it had been run in just this manner. Its troubles in the mid‐70s were not produced by any diminution or disappearance of this essential economic advantage.
GEICO's problems at that time put it in a position analogous to that of American Express in 1964 following the salad oil scandal. Both were one-of-a-kind companies, temporarily reeling from the effects of a fiscal blow that did not destroy their exceptional underlying economics. The GEICO and American Express situations, extraordinary business franchises with a localized excisable cancer (needing, to be sure, a skilled surgeon), should be distinguished from the true "turnaround" situation in which the managers expect - and need - to pull off a corporate Pygmalion.
2013年1月7日月曜日
ピュグマリオンとなりたい(ウォーレン・バフェット)
個人的な話ですが、市場全体が上昇傾向のときには、株価が低迷していたり大きく下落している銘柄ばかり気になる傾向があります。今年の自戒の意味も込めて、今回はウォーレン・バフェットの1980年度「株主へのみなさんへ」から「再起を図る企業」の話題を引用します。おなじみの文章が登場していますし、少し前に取り上げたチャーリー・マンガーの文章とも重なっています(過去記事)。(日本語は拙訳)
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