今年の株式投資を、何度かにわけて総括します。今回は、損失を確定して資金を完全にひきあげた銘柄についてです。
<投資先企業>
トライステージ(2178) (
Yahoo! Japan株価)
当社については、昨年から株式購入に前向きなことを何度か表明していました(
過去記事など)。その頃の株価は1,000円前後で、現在も同じ水準です。しかし投資結果は損失確定でおわりました。購入平均単価が960円に対して、売却平均単価は850円前後で、株価が下落する最中に売却しています。
当社の株価に対して「安全余裕が十分にある」と判断し、少しまとまった資金を投じました。しかし継続保有せずに損失を出して資金をひきあげました。このような投資行動に、弁解の余地はありません。自分の意思決定がいかに粗末だったか、ふりかえってみます。
■背景
財務指標のよい企業の株価が下がっていると、なにはともあれ注視するところがあります。当社もその一例で、監視銘柄にあげていたところ、実績PERの低さが目にとまったのがはじまりでした。その後、以下のような理由をふまえて投資することにきめました。
・一株当たりの余剰流動資産が大きかったこと
資産の評価は
過去記事で取り上げたとおりです。そのため一時的に業績が悪化しても配当は維持され、大きな株価下落は起こりにくいだろうと考えました。つまり、株価の底値の観点からみて安全余裕があると判断していました。
・現段階での高水準の利益率
当社はTV通販の企画屋ですが、経営陣の前職コネによって広告代理店の扱うCM枠を仕入れるルートを確保しています。業界のことをよくわからないながらも、これはひとつの参入障壁だと捉え、今後も利益率を支えてくれるものと考えました。ただし、これが永続するのかどうかは判断できませんでした。
またマーケットの観点については、インターネット広告が急成長しているのは明らかですが、TV通販は急激に消えるものではないと捉えました。TVを漫然と見る消費者層も依然として残るだろうと想定したからです。ただし、この観点についても事業の中長期的な将来性はうまく思い描けませんでした。
一方、主要なリスクとしては「少数ながら大口顧客があるため、そこを逃すと売上高が大幅(10%)に減少する」ことを想定しました。ただし事業自体の利益率が高いことから、1社を逸失しても致命傷にはならないと判断しました。
■実行した投資
株式の売買時期と平均単価は次の図のようになります。
図に示すように、株を売却したのは株価が下落している時期でした。これは、市場全体が下落している時期と重なります。他の銘柄の株価に魅力がでてきていたので、さらなる下落に備えて、余裕資金をふんだんに用意しておきたいという思いがありました。
そこで保有株式の売却を検討したところ、保有したいという思いがいちばん弱かったのが当社でした。財務面からみた割安度はかなり大きく、いずれ(3-5年後)はそれなりの利益が得られると想定していたのですが、一番足りなかったのは自信をもって当社に投資しつづける心構えでした。他の銘柄は全般的に自分なりに納得し、覚悟をきめているのですが、当社はそこまで至っていませんでした。中途半端で始めたものが中途半端に終わる典型で、事業に関する中長期的な見通しも、まったく出番はありませんでした。
わたしが売却した後も大株主のプロスペクトは買い増しを続け、株価は2011年秋の水準である1,000円近辺まで回復しました。また前年比月次売上も、10月からは回復傾向にあります。プロスペクトのほうが賢明な投資をしていると感じました。
■逆に考えてみると...
株価の動きが逆になって、もし含み益がでていたらどうしただろうか、と考えてみました。上がり幅にもよりますが、少なくとも株数の半分は継続保有していたと思われます。当社のことを納得できていないと書いているのに、利益が出ているといないでは方針が一転することになります。大きな矛盾を抱えているな、と自分自身も感じます。しかし、これが現時点での私の正直な姿です。
■教訓
1. 素晴らしいビジネスだと確信できなければ、半額程度の割安水準でも急いで買い進めないこと。
2. 納得できなかったり、どこまでも付き合う覚悟がもてない企業の株は、最初から買わないこと。