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2015年5月4日月曜日

2015年デイリー・ジャーナル株主総会(4)かつて日本は輸出強国だった

デイリー・ジャーナル社の株主総会の記事から、チャーリー・マンガーの質疑応答です。Part1の記事から引用しています(過去記事)。なお前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問者> 技術やその発展によって職場が奪われていく社会的変化を、どのようにお考えですか。

<マンガー> それこそ、ここで話題にしている事例ですよ。自由貿易を進めるなかで、良好なコミュニケーションやより効率的なコンテナ船などがあれば、新たな競争が生まれます。政府のおろかなシステムやマルサスの罠によって抑圧されていた非常に有能な人たちが、突如解放されたからですね。もちろん競争のせいで傷つく人もいます。かつてはその特権的な地位を占めていた人たちです。しかしそれはFRBが正しく行動しなかったせいではないです。政治家が不公平だったせいでも、金持ちが貧乏人を適切に遇しなかったせいでもないです。世界が変化したからです。自由貿易や現代技術を手放さなかったり、あるいは極貧にあえぐ農民を解放することをあきらめない以上は、当然ながら限られた教育しか受けていない勤勉な人たちの将来を害することにはなるものの、世界は変化していきます。それをとどめるのは非常にむずかしいことです。

それでも、しがみつこうとする人がいます。「政策を修正すれば対応できる」という考えです。これはギリシャがやろうとしていることですね。ギリシャの解決案は愚劣の極みです。働かない以上は儲からないわけですよ。アメとムチで導かなければならないのに、ムチがなければ全体としてうまく機能しません。

みずからをして金持ちに選ぶことなどできません。ばかげた考えです。もちろんですが、成功している社会では社会的な支援保障制度が整っています。しかし日本に起きたことを考えてください。彼の国はかつてアジアの強大な輸出国家でした。しかし中国と韓国が台頭し、ドイツも前進しました。突如として、それらの国が輸出強国となりました。

すばらしい独占的な地位を占めていても、もっと有能な他人が懸命に働くようになれば、自分のもうけは減ります。しょうもない経済学者らが、日本でFRB型のシステムを動かす方法などを探し続けてきました。それがどれだけばかげているか、考えてみてください。日本が後退した答えは、ずばりわかりきっています。彼らは強力な輸出国でしたが、当時はなかった大競争が生じたからです。日本は品質管理などの面で優れていました。そして他の国もおなじやりかたを覚えたのです。

韓国は自動車産業を一から始めました。毎週84時間労働を10年以上もやってきました。残業にはならないですよ。同時に韓国人の子供はみんな、小学校から帰宅したあとの午後や夜の4時間、家庭教師がつきっきりで勉強しました。教育ママのせいですね。そんな人たちに負けたからといって、驚くのは本物のバカだけですよ。(笑)

Q: What do you think about societal change, because of the labor displacement by technology and the accelerating of that.

Mr. Munger: That's an example of what I'm talking about. If you're going to have free trade and better communication, more efficient container ships and so forth, and there's all this new competition from very talented people who've been held down by stupid governmental systems and Malthusian traps and they're suddenly unleashed, of course that competition hurts the people who formerly were in the privileged position. It isn't because the Federal Reserve didn't do something right, or the politicians are unfair, or the rich people are mistreating the poor. The world has changed. Unless you're going to do away with free trade and modern technology and the liberation of these people who were working in penury on agriculture, of course that's going to hurt the prospects of hard working people with limited education, and it has. It's very hard to fix.

The people are still going, "All you have to do is tinker with the politics and you can fix it." That's what they tried to do in Greece. The Greek solution is idiocy. If we're going to prosper, we have to work. We have to have people subject to carrots and sticks. If you take away the stick the whole system won't work.

You can't vote yourself rich. It's an idiotic idea. Of course, the successful civilizations, they all have a social safety net. Look what happened in Japan. They were the export powerhouse of Asia. Up rose China and Korea, and Germany got way better. All of a sudden they're the export powerhouse.

When you have a wonderful monopolistic position, and then some more talented people work harder, of course you're less rich. These damned economists keep looking for ways to handle the federal reserve system in Japan or something. Think how stupid that is. The solution is really obvious of why they lost. They got huge competition they didn't formerly have when they were the export powerhouse. Japanese were better at quality control and so forth. Then other people learned to play the same game.

Koreans came up from nothing in the auto business. They worked 84 hours a week with no overtime for more than a decade. At the same time every little Korean came home from grade school, and worked with a tutor for four full hours in the afternoon and the evening, driven by these Tiger Moms. Are you surprised when you lose to people like that? Only if you're a total idiot.

[laughter]

チャーリーに対して残念に思うのは、ミクロの部分で日本を不勉強な点です。特に中国に対しては、盲目的なバイアスがかかっているようにも感じられます。一方でもっと残念なのは、大局的な視点でみるとチャーリーの指摘が正しい点です。伸びしろという面で先行者は不利な上、局面を打開するリーダーや統治機構や制度や社会的風土がこの国には育っていないように思います。もちろん、部分的にはすばらしい人材や組織もあるでしょうが、全体的には潜在能力が発揮されていない国だと思います。すべてを悲観してはいませんが、楽観できる部分も多くない。それが日本に対する個人的な見解です。

4 件のコメント:

  1. チャーリーの日本に対するくだりは、投資対象を選別するうえで参考になりそうな話ですね。

    競争優位性を持った集合体であっても、外的環境の変化にさらされることは避けられないので、

    1.環境の変化に適応できる、適用しようとすることを良しとする文化や理念を持った企業を選ぶ。
    2.環境の変化に侵食されにくい仕組みや「堀」を持った企業を選ぶ。
    3.競争優位性はなくなるものと割り切って、撤退時期を見誤らないようにする。

    などの現時点での自分なりの視点を定めて、しかるべき時のために準備を怠らないことが大切になってくるのでしょうね。

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    1. 匿名さん、こんにちは。返信が遅くなり、もうしわけございません。

      要点を端的にまとめてくださり、どうもありがとうございました。ちょうど『破天荒な経営者たち』を読了したところで、匿名さんのリストに照らし合わせながら考え直すものがありました。そして「しかるべき時のために準備を怠らない」のはわたしたち投資家だけでなく企業経営者にとっても同じことを再認識できたところです。

      またよろしくお願いします。それでは失礼致します。

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  2. 永遠の旅行者master2015年6月13日 11:58

    こんにちは。

    日本は2014年の1年間で、約10兆円(円換算)の対外投資での利益を手にしてます。

    (ソース/ジェトロ)
    http://www.jetro.go.jp/world/japan/stats/fdi.html

    今や日本は金融立国となったことを示すデータではないでしょうか?

    まあ、これこそが、世界の「変化」に対する、日本の「進化」なのでしょうね。

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    1. 永遠の旅行者masterさん、はじめまして。

      リンクして頂いた対外直接投資などの資料は、いろいろと考えごとをする材料になりました。ご紹介くださって、どうもありがとうございました。

      それでは失礼致します。

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