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2015年1月28日水曜日

2014年の投資をふりかえって(7)継続銘柄:モザイク

■モザイク(MOS)
- 当社Webサイト
- Google Finance 株価


肥料を採掘・生産・販売する当社に投資し始めたのは、2013年の夏からです。以下のリンク先はそのときの振りかえり記事です。

2013年の投資をふりかえって(8)新規投資銘柄:モザイク

<株価の状況>
年初の株価が47.27$、年末は45.65$となり、3.5%の下落でした。現在の株価は47.94$です。発表されたばかりの最新の業績予想を反映すると、当社の2014年度実績EPSは約2.6$、PERは約18.5になります。過去1年間の配当実績が1$、配当利回りは2%強です。

MOS株価チャート(2014年)

<事業の状況>
当社の2大事業であるカリウムとリン肥料はコモディティーであり、業績はそれらの販売価格に左右されます。2013年夏にカリウム業界で大きな事件が発生したことで、カリウム肥料の価格が大きく下落しました(リンも連れ安の状態です)。それから1年以上が経過しましたが、価格の大幅回復には至っていません。カリウムの主要生産者であるウラルカリ社とベラルーシカリ社がいまだに関係を改善していないことが、価格低迷がつづく大きな原因だと思われます(併せて、穀物価格も低迷しています)。ただし後述するように、ウラルカリの供給体制に変化があり、価格改善の動きが出てきています。またインドで政権が交代したことも、需要回復そして価格改善につながる材料とみられています(肥料に対する補助金政策の見直し)。

(以下の2つのチャートは、いずれもIndexMundiからお借りしたものです)

塩化カリウム月次価格(USD/t)

一方のリン肥料の価格は底を打ち、ある程度(450$/t)の水準まで回復しました。ただしこの水準では利益をあげるのが厳しい生産者も少なくないので、価格がもう一段階上がるのではと予想しています。

リン酸二アンモニウム月次価格(USD/t)

価格水準は別として、当社の事業自体は順調に進展しています。ひとつは販売量の状況です。リン肥料(DAP)は第3四半期の実績で前年比20%増の3.3Mt、カリウム肥料(MOP)は30%増の1.38Mtでした。いずれも価格が低下したところで需要が増加しているわけですから、経済学的な法則がすなおに働いています。業績見通しの上方修正が先日発表されましたが、需要状況は好ましい状態です。価格が見直されていく段階にあると受けとめています。

もうひとつは事業拡張への投資です。ひきつづき市場拡大が期待できるブラジルでは、流通案件の買収が12月に完了しました。またリン事業で競合していたCFインダストリーズ社から買収した部門(フロリダのリン鉱山)も統合されました。この買収は「市場低迷時に競争環境が集約整理される」典型的な事例で、当社にとってはありがたい案件だったと思います。その他に以前から遂行中のプロジェクト(カリウム鉱山のK3増強や、サウジの国営企業Ma'aden社とのリン事業JV)がありますが、第3四半期決算の発表資料によれば順調に推移しているとのことです。

<当社に対する投資方針>
当社への投資を評価するにあたって、現在の株価ではPER水準が高い点を指摘すべきでしょう。前述したように現在のPERは約18.5です。1/22現在のS&P500が18.6なので(3か月遅れの決算ベース)、ほぼ同じ水準です。

コモディティーの適正価格を見積もるのはむずかしい仕事なので、個人的には供給側のコストを基準にして判断しています。シルバーへの投資でも触れたように、採算割れの供給は長続きできないからです。カリウム業界は寡占が進んでいることから、現在の価格水準でも生産者は利益をあげられます。そのため、利益確保のために価格を無理に上昇させる理由はありません。リン業界は先にも触れたように450$/tの価格ではほとんど利益が出ない企業もあると考えます。もしリン肥料の価格改善が1割程度進むとすれば、当社の利益水準は現在の5-10%増しになると予想されます。しかしそうだとしてもPERはそれほど下がらず、割安とは言いがたい株価です。

そうだとしたら、そもそも2013年夏の事件で暴落した株価を割安だと判断したこと自体が甘かったのでしょうか。この可能性は自分でも折に触れて考え直しています。当時は、いずれ商品価格がもっと回復する可能性を評価していたのですが(特にカリウム肥料)、その判断が甘いのではないかと。

超長期的(10年以上)にみれば、肥料価格が上昇する可能性は高いと思います。しかし中長期的にどうなるかは、正直なところ読めません。しかし逆に言えば、これは機会にもつながります。当社はカリウムとリン事業の利益バランスが比較的とれており、両事業とも大手です。厳しい価格低迷がつづいても、生存できる確率は相対的に高いと期待できます。逆に、競合他社の資産を安く取得できる機会がうまれます。一方で以前の投稿でも触れたように、食糧政策では政治や気象・天災といった巨大リスクを考慮する必要があります。そのため、甘い見積もりと思われるかもしれませんが、若干のリスク・プレミアムは上乗せできると考えています。

つまり現在の株価水準は無条件に安いと言える水準ではないと考えますが、次のような点を考慮すると、中長期的にはまずまずの利益が期待できる投資対象かと判断しています。

・キャッシュフローを再投資することによる販売数量の増加
・それと併せて、規模の経済が進展することによる利益率の向上
・突発的リスクに対するプレミアム
・肥料成分バランスの見直しから生じる販売水準の改善(インドや中国では窒素系が優位)
・超長期的なインフレ傾向による肥料価格の上昇
・低迷期にも競争力を強化できる潜在的な可能性

その一方で、最近の原油価格下落は穀物需要の低迷につながる可能性があります(バイオ燃料)。これは、上記の追い風を相殺するリスク要因としてあげられると思います。

具体的な持ち株数についてですが、上記の株価チャートに示したように正味で少し売却しました(赤矢印が購入、青は売却)。しかし基本的には継続保有したいと考えています。そうは言っても、ずっと有望なコモディティー関連の銘柄をみつけたときには、乗り換える可能性はあります。

最後に、「カリウム肥料業界の問題児」ウラルカリ社の近況について触れておきます。同社の状況はインターネット上のニュースでも散見されますが、業界紙である化学工業日報でも事故の状況をとりあげていました(2015年1月8日)。かん水が流入して問題となったソリカムスク2鉱山は、閉山するリスクが高いようです。年間の生産能力が約2Mtなので、市場シェアの数%に相当します。さて、今年は需要側が動いてくれるでしょうか。

(写真はPotash Investing Newsから、孫借りしました)

ソリカムスク2鉱山から3.5Km離れた地点での陥没(30m * 40m)

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