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2014年6月30日月曜日

インフレ・リスクとコモディティー投資(アーノルド・ヴァンデンバーグ)

アメリカで開催されているバリュー投資家の会合"Value Investor Conference"の文字はどこかのWebサイトで目にした記憶がありましたが、よく知りませんでした。今年が11回目になる会合では、わたしの好きなマネー・マネージャーのアーノルド・ヴァンデンバーグが講演していました。そのトランスクリプトが彼のファンドのWebサイトに掲載されています。取りあげた話題はインフレについてです。

最近の彼は金鉱山会社に投資しており、その背景の一部を説明してくれた形になります。経済学者的な分析と違ってやや一面的な印象を受けますが、骨太な指摘や示唆も感じられました。近い将来の現実と対峙しなければならない一投資家として、それなりに参考になる内容でした。今回はその中の一部をご紹介します。(日本語は拙訳)

なお、同会合はバークシャー・ハサウェイの年次株主総会に合わせて実施しているとのことです(総会の1,2日前にオマハで開催)。ご興味のある方は同会合のWebサイトがこちらにあります。来年2015年開催の参加費は$1,795ですが、今なら特別料金$995だそうです。もちろん、わたしはどちらも行きません。

Value Investing During Worldwide Quantitative Easing [PDF] (Century Management)

みなさんは、株式がインフレのヘッジになるという考えを耳にしたことがあるでしょう。たしかにその可能性はあるのですが、ただしインフレが昂進している時期は違います。株式がインフレのヘッジになる時期はただひとつ、株を低いPERつまり8倍とか10-11倍で買ったときだけです。そうであれば、長期でみればすばらしいヘッジができるでしょう。しかしインフレが襲ってきたときに株式を高い倍率[PER]で買ってしまうと、ヘッジの効果が出始める前にたいていは40%から50%下落します。ですから高いPERで買ったときにヘッジできる[=避けられる]ものとはただひとつ、値上がり益だけだというのが私の見解です。インフレが昂進しているときの高PERは助けにはなってくれません。(p.23)

Now, you've heard the idea that stocks are a hedge against inflation. Yes, they can be but not during accelerated inflation. The only time stocks are a hedge against inflation is when you buy them at the low multiples of 8, 10, and 11 times earnings. Then they will be a wonderful hedge over the long run. But, if you buy stocks with higher multiples when inflation hits, you're most likely going to take a 40% to 50% hit before you start getting the hedge. So, in my opinion, the only thing that higher multiples hedge is capital gains. Higher multiples are not a help when you have accelerated inflation.

コモディティー[商品]を個別にみると、現時点で買える領域に入っているものがいくつかあると考えています。そのうちのひとつがシルバー[銀]です。歴史的に見ると、シルバーはピークの値段からおよそ77%下落しています。現在は1オンス[約30g]当たり19ドル前後で、高値から63%の下落です。これは調べてみる価値があると思います。さらに下落するようであれば、ドルコスト平均法でシルバーを買うことを検討されたらどうでしょうか。これはそっと足を踏み入れられるたぐいのものです。ただし、必ずしもお勧めするわけではありません。値段が下がれば検討する価値があると思われるものを示しているだけで、数ある例のひとつにすぎません。そしてポートフォリオに加える前には、納得できるまでご自分で調べることが不可欠です。(p.29)

Now, when looking at the individual commodities, we think a couple of them today are coming into the buy zone, and one of them is silver. Historically, silver goes down approximately 77% from its peak. Today, at +/- $19 per ounce, it's down about 63% from the top. So I think it's worth researching, and if it were to drop in price from here, I think you could consider a dollar cost averaging approach to silver. It's the kind of thing that you could start to tiptoe into. I'm not necessarily recommending it. I'm just giving you an idea as I think it's worth looking into if the price drops further. But this is just one of many examples. You need to do your own homework to get comfortable with it before putting it into your portfolio.

さてここまでの話で、常に柔軟に考えつづけることやコモディティーを使ってインフレをヘッジするやりかたを示してきました。しかし長期で見たときに最善の投資先がコモディティーだとは信じていません。その理由は図35をみればわかります。

図中の下側の線がコモディティーを示しています。一方、上側の線はダウ工業平均です。1971年に100ドルをコモディティーへ投資すれば、2014年には580ドルになっていました。これは悪くない増えかたです。しかし株式市場へ投資していれば、現在は2,700ドルになっています。この単純な例をみても株式市場が、短期でみれば破壊的な下落に見舞われる可能性があるものの、長期でみるとまさにいるべき場所だというのがわかると思います。(p.30)

[図35: CRB (商品) 対 Dow (人の成した創意工夫)]

While I have shown you how to remain flexible in your thinking and how to hedge against inflation by using commodities, I don't believe that commodities are the best place to invest over the long run. Chart 35 shows you why.

The bottom line on the chart represents commodities. The top line on the chart represents the Dow Jones Industrial Average. You can see if you had invested $100 in commodities in 1971, you would have $580 in 2014, which is not a bad increase. However, had you invested in the stock market, you would have $2,700 today. You can see by this simple example that, over the long run, the stock market is the place to be, even though it can go through disastrous declines in the short run.

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