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2013年9月20日金曜日

大金持ちになるには(ウォーレン・バフェット)

ウォーレン・バフェットが1994年にネブラスカ大学でおこなった講演その8、質疑応答がつづきます。今回の質問は、やや手厳しいです。なお、前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問者> 株式投資を教える学校を開きたいと考えたことはありますか。

<ウォーレン> いいえ、生涯の仕事がありますから。バークシャー・ハサウェイの経営は、これからもつづけていくつもりです。

<質問者> 資金があると、人間は感情に左右されてその使い道を決めてしまう傾向があることが問題になります。これまでメディアなどで見聞きしたところ、あなたは明確で冷静な考えを貫いておられ、すごいなと感じています。たとえば今回の話で東京オフィスの方を登用した件について、ある種の要因をわかりやすいかたちで要約されています。では、株式を買うときにも同じようにしたとして、USエアーやソロモン・ブラザーズのように「はずれ銘柄」になったときは、どんなものなのでしょうか。それらの銘柄が、購入時に期待したような利益をあげてくれなかったのはたしかです。しかしどれだけ時間がたっても、結局はわからないのかもしれませんが。

<ウォーレン> どれか具体的な例でつづけましょうか。

<質問者> 以前にソロモン・ブラザーズのことを「金のなる木」と言われていたと覚えています。ではその株を買うことを決断したうちのどれぐらいが、何年間にもわたる6時間読書や電話での相談や思索の夜といったウォーレン・バフェット的行動によるものだったのでしょうか。また投機家的な感触や直観はどれぐらいだったのでしょうか。ある程度は入っていたのですか。

<ウォーレン> 予感とか直観ではなかったとは言えます。事業の有する今後の経済的見込みを理解しようとじっくり考えましたし、経営陣は信頼に値し、尊敬するに足る人たちか、見極めようとしました。価格が適切かどうかも考えました。そして出した結論が、よき人々に率いられたよい事業であり、値段も適切だというものです。一方で、そのように答えを出せない企業は山ほどあります。ニューヨーク証券取引所に上場されている数千社の企業には、わたしが見解をもっていない企業が非常にたくさんあります。そういった会社のことはよく知っていますが、将来の見通しについては少しもわかりません。ですから「自分の土俵で勝負する」とみずから呼ぶところまで、対象企業の数をしぼりこむようにしています。ここで肝心なのは土俵の広さではないですし、どこを土俵にするかでもありません。どれだけうまく境界線を定めるか、これが大切です。そうすれば、土俵の内側には何があり、外側には何があるのか把握できます。もしわたしに強みがあるとすればおそらく、自分が理解していることをやっているのか、それとも自分が理解していないことをやっているのか、それがわかる点です。これは証券にかかわる仕事をする上でカギとなります。大金持ちになるには、正しい決断をくだして証券をえらぶことが、ほんの何度かできればよいのです。うまい決断を100回もする必要はありません。わたしたちの場合、うまい決断が1年に1回できれば、まずはわたしのパートナー[=チャーリー・マンガー]がおどろきますし、さらにはそれで十分です。まあ、できすぎということです。ですからそれがわたしの目指すところで、今もアイデアをひとつさがしているところです。

しかしあなたのご指摘は正しいと思います。つまり何年間もみてきたあらゆることや、さまざまな読んできたものなどすべてがどこかで一体となり、ある決定を下す際に「自分の土俵の中」にいるという感覚を持ってしまった、という意味です。自分の土俵の中となれば、わたしはよろこんで大きく動きます。本当に理解しているものをちまちまと進めるやりかたは、わたしの信じるところではありません。何をするときでも、小さく進もうと考えたことはありません。そうする理由がないからです。小さくやっているときは、自分の見解に自信がないときです。そういうものはすっかり忘れてしまい、確信のあるほうを取り組みます。

Q. Have you ever thought of opening your own stock school?

A. No, I've got my occupation for the rest of my life. I plan to keep running Berkshire Hathaway.

Q. The problem with money is that it tends to flow toward the emotional part of the human being. And, I guess what fascinates me about you, in what I have observed in the media and so forth, is that you tend to keep a clear, cool head. For example, when you hired that fellow from the Tokyo office, you were adding up certain factors that were tangibles. I wonder if you do the same when you buy stocks, and what happens when they turn out to be "dogs", like USAir and Salomon Brothers. Obviously, those didn't pan out as expected when you bought them; however in the fullness of time, one can never tell.

A. You can probably tell on one of them, anyway.

Q, If you are talking about Salomon Brothers, I think you once referred to them as a cash cow; however, when you buy a stock like that, how much of it is just simply a result of Warren Buffett's many, many years of reading six hours, making phone calls, and thinking at night? Or, how much of it comes down to a gambler's feel or intuition? Is it that much?

A. I would say there is no hunch or intuitiveness or anything of the sort. I mean, I try to sit down and figure out what the future economic prospects of a business are. I try to figure out whether the management is someone or some group I both trust and admire, and I try to figure out whether the price is right. I mean that: It's the right business, the right people, and the right price. There are a whole bunch of businesses don't know the answer on. If you take all the companies on the New York Stock Exchange, a couple thousand plus, I don't have a view on a great many of them. I am familiar with them but I just don't have the faintest idea what is going to happen in the future. So, I try to narrow it down to what I call my "circle of competence". The important thing in your circle of competence is not how big the circle is. It isn't the area of it. It's how well you define the perimeter. So you know when you are in it, and you know when you are outside of it. And, if I have any advantage, it's probably that I know when I know what I'm doing, and I know when I don't know what I'm doing. That's key in the securities business. You have to make very few correct decisions in securities to get very rich. You don't have to do a hundred smart things. If we do one smart thing a year, (a) my partner will be surprised, and (b) that's plenty. I mean, that's more than enough. And, that's all I want to do. So, I'm looking for the one idea.

But you are correct that everything I look at over the years, all the reading I do and everything, comes together at some point in terms of giving me the feeling that this particular decision is within my "circle of competence". And, when it is within it, I'm willing to go very big. I do not believe in taking baby steps when you see something that you really understand. I never want to do anything on a small scale because, what's the reason? If I'm doing it on a small scale because I'm not that sure of my opinion, I'll forget it entirely and go onto something I'm sure about.

2 件のコメント:

  1. == No title ==
    perimeterを定めることの重要性はよくわかるのですが、自分がしていることを理解していないという瞬間が今であるということを見定めることは難しいなと思うことはあります。
    投資という高次元な意思決定でないような、もっと身近な意思決定においても、「自分が知らないということ」の自覚の難しさは存在すると思います。
    はっきりとは掴み切ることは難しいので、いくつかのシグナルで類推するしかないのかもしれないとも思います。

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  2. == 知らないことについて(bfさんへ) ==
    bfさん、こんにちは。
    率直なご意見をどうもありがとうございました。bfさんのほうがわたしよりもずっと深く考えていらっしゃると存じますので、今回のご回答は先人の残した教えでご容赦ください。
    ひとつめは孔子の論語、第二 為政編からです。
    知之為知之、不知為不知、是知也
    (知れるを知るとなし、知らざるを知らずとせよ、これ知るなり)
    もうひとつは老子からです。
    知不知上、不知知病
    (知って知らざるは上なり。知らずして知るは病(へい)なり)
    (知っていても知らないと思うのが最上で、知らないのに知っていると思うのが欠点である)
    こちらは儒家よりも幅が広く、いかにも道家らしい教えだと感じました。
    いずれにせよ、偉大な思想家の教えとして残されたものですから、容易には克服しがたい課題と感じました。
    今回の話題も、重大なものと受けとめております。ありがとうございました。
    またよろしくお願いします。

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