5. 買収したプレシジョン・キャストパーツ社が優良企業であることについて
<ウォーレン・バフェット> それでは次はジョナサン・ブランドさん、お願いします。
<質問: ジョナサン・ブランド> ウォーレン、そしてチャーリー、よろしくおねがいします。私からの質問です。現在の航空機業界における生産数の伸長ぶりからすると、プレシジョン・キャストパーツ社が売上及び利益の両面であまり成功していないとは、思いもよりませんでした。
もちろん私としても、「以前の製造プログラムから新規のものへの移行は平坦ではない」ことは理解しています。しかし業界筋によれば、「市場におけるプレシジョン社の地位は、競争が激化して技術面での混乱が生じる中で、かつてほど強力ではなくなった」と聞いています。
それでは、バークシャーが買収した時に期待していた成長を実現するために、顧客である航空機業界において卓越した地位を堅牢強固にするには、同社は何をすればいいのでしょうか。
<ウォーレン> ええ、それは...
<質問者> 結局のところ、買収してから2年が経過した今、同社の事業の見通しをどのように考えておられますか。
<ウォーレン> すみません、最後が聞こえなかったのですが。「見通し」ですか。
<質問者> 結局のところ、買収してから2年が経過して、長期的に見た同社の見通しを現在はどのように考えておられますか。
<ウォーレン> それは長期的にも、そしてほどほど短期的にも、優秀な企業だと思います。つまり...
航空機業界と言われましたが、他の業界とも取引しています。ただし、航空機業界が最重要であることはまちがいありません。そして航空機の製造会社は、部品の品質や短納期に負うところが大きいものです。
航空機1機あたりの費用が7,500万ドルあるいは1億や2億ドルにのぼるなかで、部品などが納入されるのを待たされたくはないでしょう。ですから...
そういった類のあらゆるものについて、品質と納期の両面における信頼性がきわめて重要になります。プレシジョン社では[製品の供給]契約を[出荷する]何年もずっと前から結んでいます。ときには、機体の製造が開始されるよりもかなり前に受注することもあります。つまり[受注から出荷までの]リードタイムが非常に長いわけです。
しかし昨年の早い時期に、わたしが知っているのは特定の件ですが、別の部品会社が納品できなかったことがわかりました。航空機メーカー数社が「なんとか対応してもらえないか」と、プレシジョン社に打診してきたからです。
それに対してわたしたちは回答しました。「それはもう是非お役に立ちたいところですが、5年契約でお願いしております。他社さんへの欠品がたびたび生じないようにしたいからです」。その手の製品を出荷するまでには、非常に長いリードタイムがかかります。
ですから、ビジネス自体は非常に良好です。損益計算上は4億ドルの費用が課されていますが、年間4億ドルを若干上回る金額ですが、これは無形資産の「のれん」償却費です。なお、この件は損金には算入できないものです。しかしわたしとすれば、この費用は実損をもたらすものではないと考えています。
バークシャーでは巨額の償却費を計上していますが、現在のところはプレシジョン社の買収に関するものが最大の金額です。ですからどのように捉えたとしても、「実損ではないとわたしが考えている」4億ドルを加算することができます。会計士はほかのやりかたを主張すると思いますが、これはわたしたちのお金なので、わたしの見解でやることにしましょう(笑)。[過去記事]
同社を指揮しているマーク・ドネガンは目覚ましい人物ですし、そのうえ経営者としてもたいへん優秀です。「彼が面倒をみてくれる」という条件だったからこそ、同社を買いました。それだけではなく、バークシャーの別の領域でも彼はいろいろと手助けしてくれましたし、好んでやってくれています。ですから彼自身が携わる経営面や、バークシャーをあれこれと支援してくれる献身ぶりに対して、文句をつけるなど考えられません。
プレシジョン社は非常にすぐれた買収先です。同社は、開発中の諸製品へとつながる長大なロング・テールを持つ会社です。
チャーリーはどう思いますか。
<チャーリー・マンガー> それはたしかに、同社のような会社がほかにあるならば、明日にでもその会社を買いたいですね。
<ウォーレン> つまり、そういうことですね(笑)。
「大賢は言葉少なし」といったところですか(笑)。
5. Precision Castparts is “a very good business”
WARREN BUFFETT: OK, Jonathan Brandt.
JONATHAN BRANDT: Hi Warren. Hi Charlie. Given the growth in airplane build rates, it seems surprising that Precision Castparts isn’t doing better on the top or bottom line.
I understand the issue with a bumpy transition from old to new programs, but I’ve also heard from industry sources that Precision’s market position is not as strong as it used to be amid intensifying competition and some technological disruption.
What does Precision need to do to solidify and strengthen its preeminent position with its aerospace customers so that it can deliver the growth you expected when Berkshire acquired it?
WARREN BUFFETT: Yeah -
JONATHAN BRANDT: More generally, two years after the acquisition, what is your outlook for that business?
WARREN BUFFETT: Give me the last part again. The outlook.
JONATHAN BRANDT: More generally, two years after the acquisition, what is your updated outlook for that business longer term?
WARREN BUFFETT: Oh, longer term, I think - and in the reasonably shorter term - it’s a very good business. I mean, you were -
You mentioned aircraft, but we get into other industries. But certainly aircraft’s the most important. You have manufacturers that are very dependent on both the quality of the parts and the promptness of delivery.
You do not want to have an aircraft with 75- or 100- or maybe $200 million and be waiting for a part or something of the sort. So it’s -
Reliability is, both in terms of quality and delivery times and all of that sort of thing, is enormously important. And we get contracts that extend out many years. And sometimes we - I mean, we will get them well before the plane even starts in production. So there’s very long lead times.
And we have found in the last year - found it earlier, but I know of some specific cases in the last year - where other suppliers have failed in their deliveries and then the manufacturers come to us and say, “We would like you to help us out.”
And we say, “Well, we’d be glad to help you out, but we’d like about a five-year contract, if we’re going to do it because we’re just not going to make up for these other guys’ shortfalls periodically.” But that sort of thing has a very long lead time.
The business is a very good business. One thing you will see their earnings charged with is about $400 million - little over $400 million a year - of intangible - nondeductible in that case - amortization of goodwill, which is really - is not an economic cost in my view.
We have a significant amount of that through Berkshire, but by far, the largest amount is related to the Precision acquisition. So whatever you see, you can add about 400 million that in my view is not an economic expense, but the accountants would argue otherwise. But it’s our money, so we’ll take my view. The - (Laughter)
Mark Donegan, who runs that operation, is incredible, and he has been not only - he’s a fabulous manager. I wouldn’t have bought it without him in charge. He also has been very helpful to us in other areas, and he loves to do it. So you can’t beat him, both as a manager in his own operation, but with his devotion to really doing everything that will help Berkshire.
It was - it’s a very good acquisition with very long tails to the products that are being developed.
Charlie?
CHARLIE MUNGER: Well, yeah, I think we’d buy another one just like it tomorrow if we had the chance.
WARREN BUFFETT: Yeah, that’s the answer. (Laughter)
Man of few words, but he gets the point. (Laughter)
2018年6月4日月曜日
2018年バークシャー株主総会(5)買収したプレシジョン社について
今回からは、バークシャー・ハサウェイ株主総会における質疑応答の中から、いくつかの話題を取りあげます。まず今回はバークシャーが2016年に買収した企業、プレシジョン・キャストパーツ社についてです。ウォーレン・バフェットによる定性的な企業評価の一端がうかがえる発言だと思います。前回の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)
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