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2018年6月28日木曜日

人間はコンピューターに勝てるか(ハワード・マークス)

オークツリーのハワード・マークスが新しいメモを公開しています(6月18日付)。今回は「人間が介在しない投資」として、3つの話題をとりあげています。ETF等のパッシブ投資、クォンツ投資、AI投資です。パッシブ投資に関しては、すこし前のメモを拡充したような内容です。クォンツ投資については概要を説明していますが、AIについては触りだけで、展望や技術的な限界を述べるには至っていません。新著の仕上げに注力しているからか、全体的には「中休み」といった印象を受けました。今回は、その中でも記憶にとどめておきたい箇所を断片的に引用します。(日本語は拙訳)

Investing Without People [PDF] (Oaktree Capital Management)

はじめの引用はクォンツ投資の限界についてです。

繰り返しますが、ジョージ・ソロスは再帰性理論のなかで「市場参加者の行動が市場を変える」と説いています。それゆえ、永続的に勝ち続ける数式など存在しないのでしょう。私からすれば、数量的投資(クォンツ投資)によって優れた成果をあげるには、定期的かつ正確に数式を書き換える能力が不可欠になると思います。投資とは動的なものであるゆえ、クォンツ投資の基礎をなす規則も変わらざるを得ないからです。(p. 11)

To reiterate, George Soros’s Theory of Reflexivity says the behavior of market participants alters the market. Thus no formula will be a winner forever. For me, that means the achievement of superior returns through quantitative investing requires the ability to constantly and correctly update the formula. Since investing is dynamic, the rules relied on in quantitative investing have to be dynamic.

次の引用は、市場参加者のうちパッシブ投資が占める割合についての考察です。個人的にも、この問題について空想することが時折あります。

[適正]価格発見の面でどれだけの投資がパッシブになれば、価値に対して支払う金額を適正に保てなくなるでしょうか。それはだれにもわかりません。株式投資信託が現在保有する資産額のうち、およそ40%がパッシブに運用されています。機関投資家においても、その数字の方向へと進むかもしれません。ただしそれでは不十分だとは思います。[機関投資家の世界では]今もなおほとんどの資金がアクティブに運用されています。つまり現在はまだ、価格を探るさまざまな活動が実施されているわけです。たしかにパッシブ運用の割合が100%になれば十分です。しかし「株式の適正価値を評価したり、企業のことを調査する者がだれもいない世界」を思い描けるものでしょうか。そのような世界があるとしたら、ぜひとも「そこで精を出す唯一の投資家」でありたいと思います。しかし問題なのは、「価格が本源的価値から十分に乖離し始めてアクティブ運用に値するようになるのは、40%から100%の間のどこからか」という点です。今の私には判断できませんが、アクティブ投資の未来のためにいずれは見つけ出せるかもしれません。(p. 5)

How much of the investing that takes place has to be passive for price discovery to be insufficient to keep prices aligned with fair values? No one knows the answer to that. Right now about 40% of all equity mutual fund capital is invested passively, and the figure may be moving in that direction among institutions. That’s probably not enough; most money is still managed actively, meaning a lot of price discovery is still taking place. Certainly 100% passive investing would suffice: can you picture a world in which nobody’s studying companies or assessing their stocks’ fair value? I’d gladly be the only investor working in that world. But where between 40% and 100% will prices begin to diverge enough from intrinsic values for active investing to be worthwhile? That’s the question. I don’t know, but we may find out . . . to the benefit of active investing.

最後の引用は、今回のメモでの白眉と言える文章です。

卓越した投資家とは、定量的分析や会計や財務の面で必ずや他よりも勝っているわけではありません。彼らの強みは主として、「平均的投資家が見過ごしてしまう、定性的あるいは長期的観点における利点を見定める力」にあります。もし[AIのような]コンピューターが同じようにそういった過ちをおかすとすれば、上位数パーセントの傑出した投資家がほどなく引退することはないと思います。(p. 16)

The greatest investors aren’t necessarily better than others at arithmetic, accounting or finance; their main advantage is that they see merit in qualitative attributes and/or in the long run that average investors miss. And if computers miss them too, I doubt the best few percent of investors will be retired anytime soon.

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