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2014年9月14日日曜日

リスクについて再び考える(4)(ハワード・マークス)

ハワード・マークスの新しいメモ"Risk Revisited"から、さらに引用します。原文(PDFファイル)のリンク先はこちらの投稿にあります。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

[リスク全般に関して述べたい]第一の点は、リスクは直観に反するものだということです。

・「リスクが存在しない」と広く信じられている状況こそ、この世で最もリスキーなことです。

・「市場はリスキーな状況だ」との恐れ自体が、まさに安全をもたらすことがあります(それによって慎重な投資家がとった行動も然り)。

・資産価格が下落すればリスキーだとみなされます。しかし(他の条件が同じであれば)実際には危険は小さくなっています。

・資産価格が上昇すると、もっと上がるのではとみなされるようになりますが、逆にリスキーになっていきます。

・保有しているものが「安全な」資産だとしても、それが1種類だけであれば、ポートフォリオの分散が不足しています。一度の衝撃にも耐えられないほど脆いかもしれません。

・安全な資産からなるポートフォリオに対して「リスキーな」資産を少しばかり加えると、分散度が増していっそう安全になることがあります。この件を指摘したことで、ウィリアム・シャープ[俗に言うノーベル経済学賞の受賞者]は大きな貢献を果たしました。 (p.12)

The first is that risk is counterintuitive.

・The riskiest thing in the world is the widespread belief that there's no risk.

・Fear that the market is risky (and the prudent investor behavior that results) can render it quite safe.

・As an asset declines in price, making people view it as riskier. it becomes less risky (all else being equal).

・As an asset appreciates, causing people to think more highly of it, it becomes riskier.

・Holding only "safe" assets of one type can render a portfolio under-diversified and make it vulnerable to a single shock.

・Adding a few "risky" assets to a portfolio of safe assets can make it safer by increasing its diversification. Pointing this out was one of Professor William Sharpe's great contributions.


第三の点は、リスクは隠れていることがよくあり、それゆえに見る人を欺くことです。損失が発生するのは、リスクつまり損失を出す可能性が好ましからぬ出来事とぶつかったときです。そのため向かい風の状況で試練にさらされた時でないと、その投資がどれだけリスキーなのかは明らかにはなりません。望ましい環境である限りは、リスキーであっても損失につながらないことがあるわけです。相当ひどい展開は稀にしか起こらないので「未曾有の災厄」と私は呼んでいますが、ある投資がそのような状況下では脆弱であるという事実によって、実際よりも安全にみえている可能性があります。ですから好ましい環境が何年間か続いた後では、リスキーな投資でも安全だとみなされやすいわけです。ウォーレン・バフェットがあの有名な言葉を残したのは、そのためです。「裸で泳いでいるのは誰なのかは、潮が引いた後でないと見わけられません」。

ポートフォリオを構成するにあたって、リスクをきちんと管理すると同時に、利益が得られるように考慮することは、見事な功績と言えます。しかしほとんどの場合、努力の痕跡は見えないまま終わります。リスクが生じて損失を出すのは潮が引いたときだけで、時々しか起こらないからです。 (p.13)

The third is that risk is often hidden and thus deceptive. Loss occurs when risk - the possibility of loss - collides with negative events. Thus the riskiness of an investment becomes apparent only when it is tested in a negative environment. It can be risky but not show losses as long as the environment remains salutary. The fact that an investment is susceptible to a serious negative development that will occur only infrequently - what I call "the improbable disaster" - can make it appear safer than it really is. Thus after several years of a benign environment, a risky investment can easily pass for safe. That's why Warren Buffett famously said, "... you only find out who's swimming naked when the tide goes out."

Assembling a portfolio that incorporates risk control as well as the potential for gains is a great accomplishment. But it's a hidden accomplishment most of the time, since risk only turns into loss occasionally … when the tide goes out.

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