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2018年10月4日木曜日

今度は債券の番だ(ハワード・マークス)

オークツリーのハワード・マークスが顧客向けのメモを先日公開していました(9月26日付)。今回の主な内容は、彼らの本業である債券の市場環境についてですが、株式市場についても若干触れていますので、印象に残った文章をご紹介します。(日本語は拙訳)

The Seven Worst Words in the World [PDF] (Oaktree Capital Management)

この文章を結ぶ前に、私の見方をご紹介しておきたいと思います。株式には高い値がつけられていますが、しかし(テクノロジーやソーシャル・メディアのような、いくつかの特定のグループを除けば)極端に高いというほどではありません。他の資産クラスと比較すれば、特にそうだと言えます。そのため、株式が金融市場におけるトラブルの震源になるとは思えません。今日の株式の位置づけは、2005年から2006年の頃と似通っているように見受けられます。金融危機を引き起こすような役割は当時ほとんど、あるいはまったく果たしていませんでした。(ただし当然ながら、株式投資家も痛みから免れることはできませんでした。たとえそうであっても、50%超の下落に見舞われたのです)。

2007年から2008年にかけて生じた危機をもたらした主な原因は、株式ではありませんでした。そうではなく、サブプライム証券やその他のものから組成されたり、借入比率を高められた投資商品のほうでした。それらは、債券やデリバティブやあらゆる種類の金融工学から生まれた産物によって彩られていました。言い換えれば、証券や債券そのものではなく、前述した諸々をそれらの中へ取り込んだものでした。

おそらく今回においては、「ひろく一般的なものとなり、リスクに見合うかを考慮せずに投資家がリターンを追い求め、上述したような攻撃的な行動の対象となっている」のは、主として公募債や私募債です。それゆえに、次に問題が発生したときに爆心地で発見されるのは、おそらく債券関連の商品になると思われます(後略)。

Before closing, I want to share my view that equities are priced high but (other than a few specific groups, such as technology and social media) not extremely high - especially relative to other asset classes - and are unlikely to be the principal source of trouble for the financial markets. I find the position of equities today similar to that in 2005-06, from which they played little or no role in precipitating the Crisis. (Of course, that didn’t exempt equity investors from pain; they were hit nevertheless with declines of more than 50%.)

Instead of equities, the main building blocks for the Crisis of 2007-08 were sub-prime mortgage backed securities, other structured and levered investment products fashioned from debt, and derivatives, all examples of financial engineering. In other words, not securities and debt instruments themselves, but the uses to which they were put.

This time around, it’s mainly public and private debt that’s the subject of highly increased popularity, the hunt by investors for return without commensurate risk, and the aggressive behavior described above. Thus it appears to be debt instruments that will be found at ground zero when things next go wrong.(p. 9)

「現在は投資すべきではない」とか「債券に投資すべきではない」とは、一切申し上げていません。私たちオークツリーはこのところ、「前進せよ、ただし慎重に」とのマントラを唱えてきましたし、今もなおそのままです。今後の見通しは悪くないですし、資産価格もそれほど高くはないため、「現金化すべし」あるいは「ほぼ現金化すべし」というほどではありません。機会費用と呼べるであろうペナルティーが実に大きいため、市場から退出することを正当化できない状況です。

しかし上述したことすべてを考慮すれば、上昇分すべてを是が非でも手中にしようとするよりも、下落時に損失を限定することに重きを置く戦略や運用者やアプローチこそ、投資家が選好すべきほうだと私は考えます。その両方を同時に手に入れることはできません。

投資の世界ではほぼあらゆるものが、積極的あるいは消極的になされ得るものです。私の見るところ、現在の市場は注意を払うべき時期だと思われます。

I’m absolutely not saying people shouldn’t invest today, or shouldn’t invest in debt. Oaktree’s mantra recently has been, and continues to be, “move forward, but with caution.” The outlook is not so bad, and asset prices are not so high, that one should be in cash or near-cash. The penalty in terms of likely opportunity cost is just too great to justify being out of the markets.

But for me, the import of all the above is that investors should favor strategies, managers and approaches that emphasize limiting losses in declines above ensuring full participation in gains. You simply can’t have it both ways.

Just about everything in the investment world can be done either aggressively or defensively. In my view, market conditions make this a time for caution. (p. 11)

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