66を越える答えがいくつもあったことには、少しばかり首をひねりましたね。そもそも取り得る数の最大値は66です。だれもが100を選んだ時にちょうどそうなる数字です。図表7をみると度数の上昇が認められることから、さまざまな水準で帰納的推論がなされたことがわかります。各参加者が選んだ数字の平均は26でした(この手のゲームではよくある値です)。それゆえ、平均値の2/3は17.4となります。このゲームにおいて他の人たちから一歩先んじることが、実に難しいことがわかる数字です。(p. 6)
(出典: 後述)
The fact I got a number of answers above 66 is a little disturbing! The highest possible answer is 66, because to pick this one must believe that everyone else has just picked 100. In Exhibit 7, you can see spikes at various levels of induction. The average number picked turned out to be 26 (which is fairly typical of such games), and thus the two-thirds average was 17.4. It proved incredibly hard to be one step ahead of everyone else in this game.
もうひとつご紹介する内容は、バブルについてです。今回引用した文書の著者ジェームズ・モンティエ氏は、現在の(主に米国)株式市場は一種のバブル状態にあると評価しています。ただしバブルには次に示すような種類があり、現在のバブルは上述したような「美人コンテスト的バブル」だと述べています。なお、引用元の文献は以下のとおりです(少し前に発表された文書のため、すみませんがURLが見つかりませんでした)。
The Advent of a Cynical Bubble (James Montier, GMO Asset Allocation Insights, Feb 2018)
1つ目の種類のバブルは典型的なもので、「XX現象」や「XX狂」と呼ばれることもあります。まさしくこれは「信念」がバブル状態にあるものです。この種のバブルでは、「今回ばかりは違う」「新たな時代が始まったのだ」と信じ込むようになります。巨大バブルの歴史を飾ってきた実例を挙げてみると、ドットコム・バブル[ハイテク、メディア、通信関連業界]、日本でのバブル、米国住宅バブル、行け行けの1920年代、があります。それらはいずれも、「妄想的な新時代思考」を示した輝かしい事例として際立っています。
2つ目の種類のバブルは「本源的バブル」と描写されるものです。このバブルでは、バブルの源にファンダメンタルズが存在します。さらに言えば、利益の上昇率が継続不能な水準まで増加することで、投資家が[将来の見通しをそのまま]外挿したり、過剰資本を起こしがちになります。米国住宅バブル期の金融企業は、この種のバブル状態にあった好例でした。住宅市場で沸いたバブルのおかげで彼らの利益は増大しましたが、多くの投資家はその事実を認識していませんでした。
3つ目の種類のバブルは、アカデミックな文献において「近合理的バブル」として知られています。個人的には、この命名にまるで賛成できません。その言葉は「見せかけの敬意」を匂わせていますが、私としては価値が認められないからです。私からすれば、このバブルは「さらなる愚者を待つ市場」をうまく描写したものだと考えています。「当該資産を妥当な価格(あるいは本源的価値)で買えたとは考えてもいないのに、バブルがはじける前にもっと高値で他人へ売りつけたいがゆえに買う」点で、なんとも冷笑的なバブルです。シティバンクの元CEOだったチャック・プリンスは、よくある冷笑的バブル思考を的確に披露してくれました。2007年7月にそれを示す言葉を口にしたのです。「曲の演奏がつづく限り、席を立って踊り続けねばなりません。当社はまだ踊り続けているのです」と。(p. 3)
The first and canonical type of bubble is the what might be called the “Fad” or the “Mania.” This is truly a bubble of belief. In this type of bubble, people really do believe that this time is different, that a new era has been begun. These are the great bubbles of history: the TMT bubble, the Japanese bubble, the US housing bubble, and the Roaring 20s all stand out as shining examples of delusional new age thinking.
The second type of bubble is described as an intrinsic bubble. In an intrinsic bubble, it is the fundamentals that are the source of the bubble. That is to say, earnings booming at an unsustainable rate, which then often gives rise to extrapolation and overcapitalization by investors. Financials during the US housing bubble were a good example of this kind of bubble. Their earnings were inflated by the economic bubble in the housing market, and this wasn’t recognized by many investors.
The third type of bubble is known in the academic literature as a near rational bubble. I am not a great fan of this nomenclature as it suggests a veneer of respectability that I find undeserved. To me these are really better described as greater fool markets. They are cynical bubbles in that those buying the asset in question don’t really believe they are buying at fair price (or intrinsic value), but rather are buying because they want to sell to someone else at an even higher price before the bubble bursts. Chuck Prince, the former CEO of Citibank, aptly demonstrated the typical cynical bubble mentality when in July of 2007 he uttered those fateful words, “As long as the music is playing, you’ve got to get up and dance. We are still dancing.”
はじめまして。
返信削除いつも興味深い記事をあげていただいて、ありがとうございます。
なお、アカウントをもっていないため、匿名での投稿で申し訳ありません。
早速、今回のゲームに取りかかってみましたが、私の出した回答は「1」でした。
プレイヤーがプロの投資家という点を重視しすぎたのと、シンプルに答えを出そうとするバイアスが働いてしまっていたようです。
betseldom氏は2ポイント差まで答えを寄せられたとのことで、自分の回答の安直さに恥じるばかりです。
もしよろしければ、betseldom氏はどのようなロジックで回答を出したのか、ご教授いただけませんでしょうか?
匿名さん、はじめまして。コメントをいただき、また当ブログをお読みくださっていたとのことで、どうもありがとうございます。
削除早速ですが、ご質問にお答えします、この設問に取り組む上で、次の手順を踏みました。正式めいた書きかたをしていますが、実際にはもっと直感的に考えたはずです。
1. 「ゲーム参加者の知的水準がどのような分布になるのか」を推定する。
2. 「それぞれの知的水準にある人たちがどんな思考をするのか」を推測する。
手順その1「ゲーム参加者の知的水準」ですが、この手の話題では知能指数(IQ)が利用されがちかと思いますが、ここではもっと都合のいい道具を用意しました。IQとほぼ同義ながらも本設問に要求される知性という意味で、別の基準「NIQ」(近知能指数; Near IQ)を独自に定めます。
さて、1,000名超にのぼる「プロ投資家」がどの程度のNIQを有しているのか想像しました。フェルミ推定的な見積もりなどを経て、「上位10%(=10人に1人)」から「上位2%(=50人に1人)」程度の能力があると判断しました。NIQ(標準偏差15)にすると120弱から130強です。
次に手順その2「知的水準ごとの思考」ですが、ここではシャーロック・ホームズ式の推論を使いました。かの天才は次のように発言しています。
「君は、こういう場合にぼくが取る方法を知っているね、ワトスン。ぼくは自分を相手の立場に置いて、相手の知能をまず計算してみて、次にそういう状況に置かれたら、相手ならどうするだろうか、と想像してみる」(河出文庫、訳者: 小林司、東山あかね)
本設問に取り組む上で第1段階に当たる思考は、「数33を回答」することだと思います。これは、題意である「全参加者が選択した数の平均の2/3」を正しく理解できていれば自動的に思いつくものです。初歩的な統計なので難易度は小学生レベルですが、不意に出された問いの数学的な意味を適切に理解しながらも、本来の含意は考慮できなかった人が、この回答をくだすと想像します。そのような人のNIQは100強だと判断しました。
次の第2段階に当たる思考(数22を回答)は、「第1段階の回答を出す参加者が多いと考えた上で、自分自身はその先回りをする」です。ここでは2次的思考に至っているものの、その先に進めていない(つまり、自分と同じように考える人が出現する割合をよく考えていない)ことから、それなりに多くの人が該当すると想像します。NIQにすると120程度だと判断しました。
参加者の平均的水準がこの第2段階なのか、あるいはその次の第3段階なのかで迷いましたが、ここで推論を打ち切ることにしました。そう考えた理由は、第2段階寄りの分布になると予想したからです。第3段階の思考(数15を回答)では、「先回りをする人たち(第2段階思考者)を外側から冷静に観察する」ことが要求されます。しかし、そのような能力をとっさに発揮できる人物像(NIQ=135程度)は、モンティエ氏の催しに参加したプロ投資家の平均ではないだろう、と判断しました。
あと知恵ゆえに書ける論理なので良否は判断できませんが、この種の問題を考えるときには、この手の手順で考えることがよくあります。
自分の思考を整理するという意味で、有用な時間になりました。今後もどうぞよろしくお願いします。それでは失礼します。
betseldomさん、詳細にお答えいただきありがとうございます。
削除先日、コメントにて質問をした者です。
相変わらずの匿名で申し訳ありません。
“直感的”と言われながらも、数学的な計算を随所に入れていらっしゃるのは感銘を受けました。
日常的に確率の計算や推理を働かせていらっしゃるからできるものと思います。
私は、基礎的な確率の計算やフェルミ推定といった知識は持っているものの、実際に活用するようにできていないのが現状です。
今後は、今回のようなゲームを解くなどして、頭を鍛えていきたいものです。
匿名さん、いまさらの返信ですみません。
削除当方の文中で記述が不足している点がありました。「NIQにすると120弱から130強」と書いたところでは、「平均的にみて」という言葉が抜けていました。
当然のこととして補ってくださったとは存じますが、確認モレがあったことをご容赦ください。