朝食会の場で物思いにふける話題としては、見事に資格がないのはわかっています。私の話した内容がことごとく正しいとすれば、我々が現在享受している繁栄は普通株に関連した「資産効果」によって、過去に起きたさまざまな急上昇期よりも強力な後押しを受けていたことになります。その中には不愉快なものも含まれていますよ。もしそうであれば、このところの好調期に大きく上昇したものは、将来の株価下落時のどこかで大きく下落するかもしれません。もしかしたら経済学者らはいずれ、株式市場の上下動が長く続くとみなされたときに、「株式市場が1ドル上がるごとに選択的支出を上昇させる圧力よりも、1ドル下がるごとに下落させる圧力のほうが大きい」と結論付けるようになるかもしれません。しかし、経済学者らが他の分野から最良の概念を借りることで力添えを得たいと望んだり、あるいは日本のことをもっとじっくり観察する意思があれば、以前からそのように確信していたと思いますね。
日本とくれば、経済学で言う「美徳効果」をずっと長期間にわたって存在させたいのも私の願いです。たとえば美徳を背景に成功した複式簿記がヴェニスに盛時をもたらしましたが、それとはある種反対の効果によって、公然となった腐敗した会計がやがては長期的な悪しき結末を生み出すからです。金融界での光景をみてソドムとゴモラを思い出すようになったら、現実問題としてどんなことになるのか心配しておいたほうがいいですよ。たとえその顛末に加わりたいと考えていてもです。
最後になります。今日私から示した結論が慈善財団に対して示唆するものは、以前に財団の財務担当役員諸氏へ話した結論も込みになりますが[過去記事]、投資上の技術を示唆するところをずっと超えているのは間違いないと思います。私が正しければ米国におけるほぼすべての財団は、より巨大なシステムと関わっている自分たちの資産運用業務を理解し損ねており、それゆえに賢明さを欠いています。そうだとすれば、良き状態とは言えません。大筋で当たっている掟として、次のようなものがあります。「ある組織が複雑なシステムに取り組むやりかたがそれなりにバカげているならば、その他もおしなべてバカげている」。ですから、財団への寄付に関して良しとされていることは、資産運用面での実情と同じように改善する必要があるかもしれません。ここでもさらに古き2つの掟が我々を導いてくれます。第一が「道義に従え」、第二が「聡明であれ」です。
道義のほうはサミュエル・ジョンソンによるものです。「責任ある公職者がたやすく取り除ける無知状態を放置したままでいることは、道義的義務を果たすという点で信用できない不正な行為だ」と彼は確信していました[過去記事]。聡明のほうの規則は、かつてのワーナー・スウェイジー社が工作機械を宣伝した広告を下敷きにしています。次のような文句です。「新しい工作機械をお望みなのに未だ購入されていないお客様は、すでに対価をお支払いになっていらっしゃいます」[過去記事]。ワーナー・スウェイジー社の規則は、思考する際の道具にも間違いなく当てはまりますよ。適切な思考道具を持っていない人は容易に取り除ける無知さゆえに、その人が助けたいと望む相手共々、以前から苦しみ続けているのですから。(おわり)
Well, this is enough uncredentialed musing for one breakfast meeting. If I am at all right, our present prosperity has had a stronger boost from common-stock-price-related "wealth effects", some of them disgusting, than has been the case in many former booms. If so, what was greater on the upside in the recent boom could also be greater on the downside at some time of future stock price decline. Incidentally, the economists may well conclude, eventually, that, when stock market advances and declines are regarded as long-lasting, there is more downside force on optional consumption per dollar of stock market decline than there is upside force per dollar of stock market rise. I suspect that economists would believe this already if they were more willing to take assistance from the best ideas outside their own discipline, or even to look harder at Japan.
Remembering Japan, I also want to raise the possibility that there are, in the very long term, "virtue effects" in economics - for instance that widespread corrupt accounting will eventually create bad long-term consequences as a sort of obverse effect from the virtue-based boost double-entry bookkeeping gave to the heyday of Venice. I suggest that when the financial scene starts reminding you of Sodom and Gomorrah, you should fear practical consequences even if you like to participate in what is going on.
Finally, I believe that implications for charitable foundations of my conclusions today, combined with conclusions in my former talk to foundation financial officers, go way beyond implications for investment techniques. If I am right, almost all U.S. foundations are unwise through failure to understand their own investment operations, related to the larger system. If so, this is not good. A rough rule in life is that an organization foolish in one way in dealing with a complex system is all too likely to be foolish in another. So the wisdom of foundation donations may need as much improvement as investment practices of foundations. And here we have two more old rules to guide us. One rule is ethical, and the other is prudential.
The ethical rule is from Samuel Johnson, who believed that maintenance of easily removable ignorance by a responsible officeholder was treacherous malfeasance in meeting moral obligation. The prudential rule is that underlying the old Warner & Swasey advertisement for machine tools: "The man who needs a new machine tool, and hasn't bought it, is already paying for it". The Warner & Swasey rule also applies, I believe, to thinking tools. If you don't have the right thinking tools, you, and the people you seek to help, are already suffering from your easily removable ignorance.
2016年3月30日水曜日
我らを導く2つの掟(チャーリー・マンガー)
チャーリー・マンガーが2000年にフィランソロピー円卓会議で行った講話の最終回(10回目)です。しびれる話題で締めくくりをするのは、あいかわらずです。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)
お疲れ様です。
返信削除今年春から再開されるのを楽しみにしております。
日本株も買うには絶好の機会が来そうですね。
koma10さん、コメントをありがとうございました。すっかりご無沙汰しております。
削除再開は少し先で、5月末か6月になりそうです。時機を逸したものの、まずはウォーレンの書簡を訳したいと考えております。
この1年間、株式ポートフォリオはほぼ現状維持でやってきました。手持ちの日本株をみると、大きく割安と思える水準までは価格が下落していません。残念ながら調査不足のわたしには、好機がめぐってきてはいないようです。
それでは失礼します。