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2016年3月14日月曜日

2015年度バフェットからの手紙(7)重大なリスクについて

2015年度「バフェットからの手紙」より引用します。今回は、バークシャーに関する経営上のリスクと基本戦略についてです。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

すべての公開企業と同じように、当社も毎年10-K[米国版の有価証券報告書]の中で「リスク要因」を列挙するよう、証券取引委員会(SEC)から義務付けられています。しかし10-Kに書かれた「リスク」の節を読んだところで、事業を評価するのに役に立った例はひとつも記憶にありません。現実的なリスクが示されていないからではありません。本当に重要なリスクはよく知られているものです。そうではなく、10-Kに列挙されているリスクが次の点を評価する上でほとんど役に立たないからです。第一が、脅威とみなすできごとが実際に生じる確率。第二が、そうなったときに対処するのにかかる費用の幅。第三が、想定される損失が発生する時期です。「危機が表面化するのは今後50年以内」としただけの予測であっても、社会にとっては問題かもしれません。しかし今現在の投資家にとっては、財務的問題とはなりません。

バークシャーはわたしの知る限り、どの企業よりも様々な業界にわたって事業を展開しています。それぞれの事業では、発生しうる問題や機会をいくつも抱えています。それらを並べ立てるのは簡単ですが、評価するのは大変です。そういった可能性の起こる確率や時期や費用(あるいは便益)を算出してみると、わたしとチャーリーとCEO諸氏の間でその差がとても大きくなることがよくあります。

いくつか例をあげさせてください。まずは明白な脅威からですが、[バークシャーの子会社である]BNSF社や他の鉄道会社は、今後10年のうちに石炭の相当な輸送量を失うはずです。またいずれどこかの時点で、ただし長期にはならないと思いますが、ガイコ[バークシャーの損保子会社GEICO]の保険料収入が減少する可能性があります。無人運転の自動車がでてくるからです。さらにこの展開は当社の自動車販売会社にも同じように悪影響を及ぼすでしょう。それから、各新聞社の紙面購読者数も減少し続けると思います。ただしそれらの企業を買収する際に、そのことははっきりと承知していました。再生可能エネルギーは今日に至るまで当社の公益事業を助けてきましたが、それが変わる可能性があります。特に、電力貯蔵能力が大幅に向上する場合です。インターネット上での小売は当社の小売事業がとっている商売の仕方を脅かしていますし、消費者向けブランドにおいても当然です。ここにあげたものは、当社が直面している悲観的な可能性のごくわずかに過ぎません。しかしビジネスに関するニュースを斜め読みで済ます人たちでも、ずっと以前から知っていたことです。

ですがそういった問題のいずれも、バークシャーの長期的な健全性に対して致命的にはなりません。1965年にわたしたちが当社の経営権を獲得したときには、会社のリスクは次の一言で言い表せたと思います。「当社の全資本が住まう処である北部における織物事業は、今後も損失を計上し続ける運命にあり、やがては消滅すると思われる」。しかしその後どうなったかと言うと、弔いの鐘は鳴りませんでした。ただ単に、状況に合わせて適応したのです。わたしたちはこれからも同じようにやっていくつもりです。(PDFファイル23ページ目)

We, like all public companies, are required by the SEC to annually catalog "risk factors" in our 10-K. I can't remember, however, an instance when reading a 10-K's "risk" section has helped me in evaluating a business. That's not because the identified risks aren't real. The truly important risks, however, are usually well known. Beyond that, a 10-K's catalog of risks is seldom of aid in assessing: (1) the probability of the threatening event actually occurring; (2) the range of costs if it does occur; and (3) the timing of the possible loss. A threat that will only surface 50 years from now may be a problem for society, but it is not a financial problem for today's investor.

Berkshire operates in more industries than any company I know of. Each of our pursuits has its own array of possible problems and opportunities. Those are easy to list but hard to evaluate: Charlie, I and our various CEOs often differ in a very major way in our calculation of the likelihood, the timing and the cost (or benefit) that may result from these possibilities.

Let me mention just a few examples. To begin with an obvious threat, BNSF, along with other railroads, is certain to lose significant coal volume over the next decade. At some point in the future - though not, in my view, for a long time - GEICO's premium volume may shrink because of driverless cars. This development could hurt our auto dealerships as well. Circulation of our print newspapers will continue to fall, a certainty we allowed for when purchasing them. To date, renewables have helped our utility operation but that could change, particularly if storage capabilities for electricity materially improve. Online retailing threatens the business model of our retailers and certain of our consumer brands. These potentialities are just a few of the negative possibilities facing us - but even the most casual follower of business news has long been aware of them.

None of these problems, however, is crucial to Berkshire's long-term well-being. When we took over the company in 1965, its risks could have been encapsulated in a single sentence: "The northern textile business in which all of our capital resides is destined for recurring losses and will eventually disappear." That development, however, was no death knell. We simply adapted. And we will continue to do so.

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