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2012年8月20日月曜日

規模の不経済(チャーリー・マンガー)

チャーリー・マンガーによる世知入門、規模の経済の第3回目ですが、今回は規模が大きいほど効率が悪くなる話です。(日本語は拙訳)

規模が大きいからといって常に勝てるわけではないのがこのゲームの面白いところで、大きくなると官僚的になってしまうという重大な欠点があります。官僚主義はなわばり争いを生み出します。またもや登場しましたが、これも人の本性に根ざすものです。

ここでも動機付けが悪い方向に働いています。たとえば私が若かった頃のAT&Tは巨大な官僚主義の職場で、株主のような存在のことを考える人はいませんでした。官僚主義ときくと、みなさんはこう考えるかもしれません。自分の未処理かごに仕事が入ってきたら、別の人の未処理かごに進めればおしまいだろうと。ところがAT&Tはそうではありませんでした。やるべき仕事とは、自分たちがやりおわった仕事のことをさしたのです。膨張して巨大になり、おろかで意欲を失った官僚主義がはびこっていたのです。

実のところ、いくぶん腐敗していたとも言えます。たとえば私がある部門の責任者で、あなたが別の部門の責任者だとします。あることをやるのに必要な権限を両者で共有していたとしたら、そこには不文律がありました。「あなたが厄介なことをしなければ、私のほうもしません。それでお互い満足ですよね」。そんなわけで、管理上の階層が積み重なり、不要な間接費が積み上げられていったのです。そういった階層を正当化する人もいますが、それではいつまでたっても何も終わりません。とにかく決断するのが遅すぎます。機敏な人たちは、もっとうまくやっています。

The great defect of scale, of course, which makes the game interesting - so that the big people don't always win - is that as you get big, you get the bureaucracy. And with the bureaucracy comes the territoriality - which is again grounded in human nature.

And the incentives are perverse. For example, if you worked for AT&T in my day, it was a great bureaucracy. Who in the hell was really thinking about the shareholder or anything else? And in a bureaucracy, you think the work is done when it goes out of your in-basket into somebody else's in-basket. But, of course, it isn't. It's not until AT&T delivers what it's supposed to deliver. So you get big, fat, dumb, unmotivated bureaucracies.

They also tend to become somewhat corrupt. In other words, if I've got a department and you've got a department and we kind of share power running this thing, there's sort of an unwritten rule: “If you won't bother me, I won't bother you, and we're both happy.” So you get layers of management and associated costs that nobody needs. Then, while people are justifying all these layers, it takes forever to get anything done. They're too slow to make decisions, and nimbler people run circles around them.


バークシャー・ハサウェイが買収した企業には似たような業種同士のものがありますが、チャーリーやウォーレン・バフェットはそれらを合併統合してシナジーを求めようとはしません。その理由のひとつが、無益ななわばり争いを避けることなのかもしれませんね。

2 件のコメント:

ケントマン さんのコメント...

== 大きい組織 ==
基本的に、大きくなった組織は複雑にもなりやすいですよね。
理想なのは、シンプルなまま大きくなること。
複雑さ弊害を生み出すような大きさは邪魔でしかないが、多くの組織はそのことに気づいていない。
これは投資する企業を見るときに役立つ考え方ですよね。

betseldom さんのコメント...

== ケントマンさん、こんにちは ==
ケントマンさん、コメントをありがとうございました。
ご指摘のとおり、組織をシンプルなまま大きくするのは、すごく難しいことだと思います。
それを打破しようと苦心している企業では、たとえばアメーバ経営やマトリックス経営・組織といった対策を講じ、なかには成果を挙げているところもあるかと思います。しかし組織の問題を改革しようと手をつけても、実行はなかなか容易ではない、というのが個人的な印象です。チャーリー・マンガーはGEのジャック・ウェルチを絶賛していますが、彼ほどの熱意と能力のある人だからこそ、ようやく社内の官僚主義を打破できたとしています。
その一方で組織が大きいと専門化が進み、個々人の生産性が向上する。チャーリーはその利点も強調しています。
結局のところ、答えはきれいに割り出せるというよりは、黒と白のあいだのどこかにあり、うまくいった会社があるからといって他社がそっくりまねできるものでもないと思います。その意味でケントマンさんがご指摘されている「投資する企業を見るとき」に、組織運営の巧拙は競争優位のひとつとして捉えるべきと感じました。
またよろしくお願いします。それでは失礼致します。
(8/24追記)お名前の敬称に不備があり、修正しました。申し訳ございませんでした。