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2012年3月3日土曜日

誤判断の心理学(7)カントの「公正」なる傾向(チャーリー・マンガー)

??公正さ」についてはチャーリー・マンガーの話を聞くまでもなく、我々日本人にきちんとしみこんでいる概念でしょう。具体的には表現しにくくても、見ればそれが公正かどうかわかる、そういうものです。ただ、この指摘は冷静に活かすべきで、例えば商売を進める上で公正を悪用する者には注意すべきだし、あるいは公正さを貫いて顧客からの信頼を築くのが王道だとも受けとれます。後に取り上げる「返報の傾向」と同様、この文章も人間の心理的側面をあらわにするものです。

今回も短い文章ですので、原文全てになります。(日本語は拙訳)

誤判断の心理学
The Psychology of Human Misjudgment

(その7)カントの言う「公正」の傾向
Seven:Kantian Fairness Tendency

カントは「定言命法」で有名ですが、これは一種の黄金律で人の従うべき行動基準を示しており、あらゆる人がこれに従うならば、人間をとりまくあらゆるシステムは完璧に機能するというものです。文化的に様変わりした現代人は多くの公正をあらわにし、また他人からも期待するものですが、元はといえばカントが定義したものです。

アメリカではよくみられる光景ですが、小さな街で車が1台しか通れない幅の橋やトンネルがあると、譲ってもらった相手に返礼を返すものです。お互いに何も合図をしていないのに、です。高速道路でも同じように、車線変更などをしてくる他のドライバーが前に入るように譲ります。私もそうですが、立場が逆だったら自分にもそうしてほしいからです。それだけではなく、現在社会では他人から様々な礼儀をうけています。これは、「早い者勝ち」をよしとする傾向に則ったものです。

また、人はしばしば自発的に、先行き不透明な幸運や不運を共に分かち合うものです。そのような「公正な配分」をする振る舞いがあるゆえ、期待をうらぎって公正にしないと意趣返しされることがよくあります。

世界中に広まっていた奴隷制度がこの300年で粛々と廃止されていったのは、興味深い出来事です。過去には長きにわたって、世界中の多くの地域でそれぞれ許容されてきたものです。こうなったのも、カントの言うところの公正なる傾向が大きな役割を果たしたものと、私は考えています。

Kant was famous for his “categorical imperative,” a sort of a “golden rule” that required humans to follow those behavior patterns that, if followed by all others, would make the surrounding human system work best for everybody. And it it not too much to say that modern acculturated man displays, and expects from others, a lot of fairness as thus defined by Kant.

In a small community having a one-way bridge or tunnel for autos, it is the norm in the United States to see a lot of reciprocal courtesy, despite the absence of signs or signals. And many freeway drivers, including myself, will often let other drivers come in front of them, in lane changes or the like, because that is the courtesy they desire when roles are reversed. Moreover, there is, in modern human culture, a lot of courteous lining up by strangers so that all are served on a “first-come-first-served” basis.

Also, strangers often voluntarily share equally in unexpected, unearned good and bad fortune. And, as an obverse consequence of such “fair-sharing” conduct, much reactive hostility occurs when fair-sharing is expected yet not provided.

It is interesting how the world's slavery was pretty well abolished during the last three centuries after being tolerated for a great many previous centuries during which it coexisted with the world's major religions. My guess is that Kantian Fairness Tendency was a major contributor to this result.

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