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2011年12月20日火曜日

液晶パネル企業とガラス企業の例(赤門マネジメント・レビュー)

ガラスメーカーに関する情報を集めていたところ、参考になる文章がありましたのでご紹介します。2008年に発表されたものなので現状とは違うかもしれませんが、組立系メーカーの部材購買政策の一例として参考になるかと思います。赤門マネジメント・レビューに掲載されている「ものづくりアジア紀行第二十一回 韓国液晶産業における製造技術戦略」(新宅純二郎)から引用します。

部材の供給をサードパーティのサプライヤーに依存する企業にとって、特定の部材産業が寡占的であると、価格交渉力で不利になり、利益確保が困難になる。液晶パネルの製造コストでは、購入する部材コストが高く、大型パネルでは製造コストの6割程度が部材費であると言われている。今回調査した企業のひとつは、液晶用の薄型ガラス基板がパネル製造コストの3割程度に及ぶと指摘していた。ガラス基板、液晶材料、偏光板などの主要部材では上位数社への集中度が高い。

とりわけ、ガラス基板は、集中度が高くて価格も高い上に、供給量が限られていた。ガラスの製造は設備集約的な工程であり、設備投資によって供給能力が制約される。韓国の企業が第5世代に投資するにあたっては、ガラス・メーカーが第5世代向けの設備投資と大型化を実現する開発投資をしなければ、パネルは製造できない。

また、初期のTFT 液晶パネル製造工程では、同一メーカーの同じガラス基板を使用しないと、パネル製造の歩留まりをあげることができなかったという。その理由のひとつは、パネル製造工程での熱収縮の問題があったからである。パネル製造では、上側のガラスにカラーフィルターを、下側のガラスにTFT を形成し、その2枚のガラスで液晶材料を挟み込む。その際、熱を加える工程があり、ガラスが若干収縮する。上下のガラスの収縮率に微妙な違いがあると、カラーフィルターの画素セルとTFT のセルとがずれてしまい、適切に表示できなくなる。そこで、熱収縮率が同じガラスを使っていた。しかし、そのような状況だと、特定のパネル工場は、特定のガラス・メーカーの供給に依存することになる。

そこで、韓国の液晶パネル企業は、第4世代の頃から、特定のガラスに依存しない工程開発を進め、第5世代以降では複数のガラス・メーカーのガラスを混在して使えるようになったという。ガラスとパネル工程の依存性の問題は、現在でも完全には解決していないそうだが、ほぼ9割方は解決したとの評価であった。三星コーニング精密というグループ企業を抱えている三星電子でさえ、三星コーニング精密以外からも購入している。三星電子では、基本的には二社購買の政策をとっており、同じスペックのものを2社から調達することで部材メーカーのコスト競争による調達コスト削減を狙っている。偏光板も、同じスペックで2社から購入している。ただし、化学品は配合が微妙に異なると特性に影響を与えるので、2社購買が難しい。液晶材料がその典型で、液晶材料の微妙な差が偏光板やカラーフィルター、バックライトの仕様に影響を与える。(p.65)


と、赤色をつけた箇所がガラスメーカーに関する話題なのですが、それよりも気になる記述がありました。

ただし、化学品は配合が微妙に異なると特性に影響を与えるので、2社購買が難しい。液晶材料がその典型で、液晶材料の微妙な差が偏光板やカラーフィルター、バックライトの仕様に影響を与える。


やはりアナログ感覚に訴える混ぜ物系は、差別化につながりやすいようですね。コカ・コーラのレシピと似ていますね。

余談ですが、この赤門マネジメント・レビューの編集委員として、生産管理分野で著名な藤本隆弘教授が参画していました。同氏の研究は、ものづくり経営研究センターのWebサイトで読めます。こちらも参考になります。

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