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2019年2月26日火曜日

2018年度バフェットからの手紙(2)米国に吹きつづける追い風(後)

2018年度「バフェットからの手紙」からの引用です。前回のつづき、「米国に投資する優位性」の話題です。(日本語は拙訳)

政府の財政赤字をとらえて、あいも変わらず破滅の事態を唱える人たちは(わたし自身もお決まりのように、たびたびそうしてきましたが)、「わが国の国家債務は、この77年間で400倍ほどに増加した」と言及するかもしれません。つまりは4万%というわけです。もしもその増加を予見して、底なしの赤字や通貨価値喪失の可能性にたじろいでいたら、どうなっていたでしょうか。みずからを「保護する」ために、114ドル75セントを使う先として株式は見合わせ、そのかわりに3.25オンス分のゴールドを選んでいたかもしれません。

予測にしたがってそのような守りに出たことで、どのような結果が得られたと思いますか。その場合に現在手にしていた資産は、4,200ドル相当になっていたはずです。米国企業に対して管理費不要の単純な投資をすることで得られた成果の、1%未満にとどまる数字です。かの魅力的な金属は、アメリカ人の意欲には及びませんでした。

また、この国が果たしてきた信じがたいほどの繁栄は、超党派的なとりくみによってもたらされました。1942年以降の大統領のうち、共和党から7名、民主党からも7名が選出されました。彼らが公職を果たす間に、この国は幾度となく困難に直面しました。容易に広まるインフレーションは長期にわたり、プライム・レート(最優遇貸出金利)は21%を記録し、賛否両論だった金食い虫の戦争が何度かあり、大統領が辞任し、住宅価格が広範に暴落し、金融面で麻痺的なパニックが生じ、その他もろもろの問題がありました。それらはいずれもぞっとする見出しを飾りましたが、どれも今では歴史となりました。

セント・ポール大聖堂の設計者だったクリストファー・レンは、ロンドンに位置するその教会に埋葬されました。彼の墓のそばには、次のような銘が刻まれています(原文はラテン語)。「我がための記念碑を求めん人は、御身のまわりをご覧ぜよ」。米国経済が演じてきた様子に否定的な人は、彼の言葉を噛みしめたほうがよいと思います。

話の起点だった1788年に戻ります。この地に、さほどのものはありませんでした。わずかばかりの熱意ある者たちと、夢を現実に変えることを目的とした、芽生えたばかりの統治体制があっただけでした。連銀の推計によると、今日における我が国の家計資産は108兆ドルに達するとのことです。およそ想像もできない金額に達しています。

留保利益がバークシャー繁栄のカギとなってきたことを、この文章のはじめ[未訳部分]でどのように描写していたか、覚えておられるでしょうか。それと同じことが米国についても言えました。国家会計の場合、「貯蓄」という言葉がそれに相当します。ですから、わたしたちは貯蓄をしなければなりません。もしもご先祖様たちが、貯えをせずに生みだしたものをすべて消費していたら、なにも投資されず、生産性も向上せず、生活水準が大きく改善されることもなかったのですから。

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「バークシャーが果たした成功の多くは、『米国に吹きつづける追い風』と呼ぶべきものによって生じたに過ぎない」ことを、チャーリーともども喜んで認めたいと思います。米国の企業や個人が、なしとげてきた成果を指して「独力で果たした」と豪語するのは、尊大の極みです。ノルマンディーの崖に整然と並ぶ白色の質素な十字形の石を想い起せば、そのように語る者たちが恥ずかしく思えることでしょう。

世界中には、わたしたちと同じように輝かしい未来をひかえた国がいくつもあります。わたしたちはそのことを大いに喜ぶべきです。あらゆる国々が発展すれば、アメリカ人はますます豊かになるとともに、いっそうの安全を享受できます。バークシャーとしては、多大なる資金を国外へ投資したいと願っています。

ただし次にくる77年間においても、当社のおもな収益源はほぼまちがいなく、「米国に吹きつづける追い風」によってもたらされると思います。わたしたちの背後にそのような力がひかえていたのは、実に幸運、空前絶後の幸運でした。(PDFファイル13ページ目)

(この節、おわり)

Those who regularly preach doom because of government budget deficits (as I regularly did myself for many years) might note that our country’s national debt has increased roughly 400-fold during the last of my 77-year periods. That’s 40,000%! Suppose you had foreseen this increase and panicked at the prospect of runaway deficits and a worthless currency. To “protect” yourself, you might have eschewed stocks and opted instead to buy 3 1⁄4 ounces of gold with your $114.75.

And what would that supposed protection have delivered? You would now have an asset worth about $4,200, less than 1% of what would have been realized from a simple unmanaged investment in American business. The magical metal was no match for the American mettle.

Our country’s almost unbelievable prosperity has been gained in a bipartisan manner. Since 1942, we have had seven Republican presidents and seven Democrats. In the years they served, the country contended at various times with a long period of viral inflation, a 21% prime rate, several controversial and costly wars, the resignation of a president, a pervasive collapse in home values, a paralyzing financial panic and a host of other problems. All engendered scary headlines; all are now history.

Christopher Wren, architect of St. Paul’s Cathedral, lies buried within that London church. Near his tomb are posted these words of description (translated from Latin): “If you would seek my monument, look around you.” Those skeptical of America’s economic playbook should heed his message.

In 1788 – to go back to our starting point – there really wasn’t much here except for a small band of ambitious people and an embryonic governing framework aimed at turning their dreams into reality. Today, the Federal Reserve estimates our household wealth at $108 trillion, an amount almost impossible to comprehend.

Remember, earlier in this letter, how I described retained earnings as having been the key to Berkshire’s prosperity? So it has been with America. In the nation’s accounting, the comparable item is labeled “savings.” And save we have. If our forefathers had instead consumed all they produced, there would have been no investment, no productivity gains and no leap in living standards.

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Charlie and I happily acknowledge that much of Berkshire’s success has simply been a product of what I think should be called The American Tailwind. It is beyond arrogance for American businesses or individuals to boast that they have “done it alone.” The tidy rows of simple white crosses at Normandy should shame those who make such claims.

There are also many other countries around the world that have bright futures. About that, we should rejoice: Americans will be both more prosperous and safer if all nations thrive. At Berkshire, we hope to invest significant sums across borders.

Over the next 77 years, however, the major source of our gains will almost certainly be provided by The American Tailwind. We are lucky – gloriously lucky – to have that force at our back.

個人的な見解ですが、今回のウォーレンは重層的なメッセージをのせて、文章を書いたように感じられました。翻訳する際には文中で登場する話題を都度調べるものですが、そのおかげで思い至った次第です。教養があり、それなりに注意を払いながら本文書を読む英米系の読者であれば、それらのメッセージに自然と気がつくことでしょう。いつの日か余韻に導かれて読み返したくなる、佳作と評したい一節でした。

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