チャーリー・マンガーの誤判断の心理学です。短いので、全文を引用しています。(日本語は拙訳)
(その23)無駄話をする傾向
Twenty-Three: Twaddle Tendency
人間は言語を授かった社会的動物であるゆえに、おしゃべりをしたり、真剣に働かなければいけないときでも、ぺちゃくちゃと無駄口をきいて少なからぬ害を及ぼしてしまうように生まれついています。しかしながら、とかく無駄話ばかりの人がいる一方、ほとんど無駄口をきかない人もいます。
ある興味深い実験によって、ミツバチが無駄口をきくとどんなトラブルをもたらすのか、明らかになっています。ミツバチは普通、巣を出て花の蜜をさがしだし、巣に戻ってきて他のハチに蜜のありかを知らせるためにダンスを踊ります。それをみて他のハチも出動し、蜜にたどりつくのです。さてB.F.スキナーばりに賢い科学者が「障害があったらハチはどうするだろうか」と考え、蜜の場所をひっぱりだして外のほうへ移してみました。自然の状態では蜜はそんなに飛び出していません。さて困ったミツバチには、この件をうまく伝える術は遺伝子には組み込まれていません。このミツバチが巣に戻ったら、隅っこに身を隠していたと思われるかもしれませんが、ちがいました。巣に戻ると、ちぐはぐなダンスを披露したのです。私の人生も、このハチと同じことをやる人間に対処することの連続でした。おしゃべりばかりの無駄話にふける人を、真剣に仕事をしている場から遠ざけておくのは、うまく管理していこうとする者にとって、大切な仕事のひとつです。カルテックの工学系で有名なること当然な教授が、かつて彼の流儀で、この件を気配りなしにずばり表現しています。「重要な人が働いているところを、そうでない人には邪魔させない。これは大学運営における肝心な仕事だ」。この教授が発言したことを私も自分なりの方法でやっていたのですが、反発を受け、ずっと悩んできました。多大なる努力の末、私もすこしはまともになりました。ですから、この発言を引用したのは、少なくとも以前と比べたら私も気配りできるだろう、という想いを込めているところがあります。
Man, as a social animal who has the gift of language, is born to prattle and to pour out twaddle that does much damage when serious work is being attempted. Some people produce copious amounts of twaddle and others very little.
A trouble from the honeybee version of twaddle was once demonstrated in an interesting experiment. A honeybee normally goes out and finds nectar and then comes back and does a dance that communicates to the other bees where the nectar is. The other bees then go out and get it. Well some scientist - clever, like B. F. Skinner - decided to see how well a honeybee would do with a handicap. He put the nectar straight up. Way up. Well, in a natural setting, there is no nectar a long way straight up, and the poor honeybee doesn't have a genetic program that is adequate to handle what she now has to communicate. You might guess that this honeybee would come back to the hive and slink into a corner, but she doesn't. She comes into the hive and does an incoherent dance. Well, all my life I've been dealing with the human equivalent of that honeybee. And it's a very important part of wise administration to keep prattling people, pouring out twaddle, far away from the serious work. A rightly famous Caltech engineering professor, exhibiting more insight than tact, once expressed his version of this idea as follows: “The principal job of an academic administration is to keep the people who don't matter from interfering with the work of the people that do.” I include this quotation partly because I long suffered from backlash caused by my version of this professor's conversational manner. After much effort, I was able to improve only slightly, so one of my reasons for supplying the quotation is my hope that, at least in comparison, I will appear tactful.
無駄話、たしかにその通りです。昨今はTwitter等が全盛ですが、さかのぼってみればショートメール、携帯電話、チャット、掲示板、電子メール、果ては喫煙所での世間話や井戸端会議と、メディアは変わりますが、やっていることはあまり変わりませんね。しかし改めて考えてみると、これをとりまくビジネスが大きくなっていることに、ある種の驚きをおぼえます。
ミツバチのダンスに関する補足的な話題は、過去記事「尻振りダンスだけではない(ミツバチの群れ)」で取り上げています。
ところでチャーリーの文章ですが、ドライなユーモアがあいかわらずです。
== No title ==
返信削除「無駄話の類」をとりまくビジネスが大きくなっている、というのは、大衆がそれをもとめている側面もあるかもしれないと感じました。
バリュー投資家としては、
・大衆の流れに逆らって、「無駄話の類」には乗らない
・「無駄話の類」ビジネスが大きくなっていることに驚きを覚える感性を大事にする
・大衆が群がることで価値以上の価格が発生し、利益を生み出すチャンスがあるならそれを活かす
という姿勢かな、と思います。
== a96332587さん、ありがとうございます ==
返信削除a96332587さん、どうぞよろしくお願い致します。
ご指摘の項目は、いずれもうなずくばかりです。特に「驚きを覚える感性を大事にする」という点は、個人的には戒めと受けとめました。ありがとうございました。
たとえば携帯電話を持たないことを、ある意味で自負している身ですが、そのせいで大きな投資機会を最低2つは見逃してきました。a96332587さんやみなさんが送ってくださる刺激を無為にしないためにどうしたらよいか、自分なりに考えていきたいと感じております。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
それでは失礼します。
== No title ==
返信削除こちらこそよろしくお願いいたします。
携帯電話を持たないことで投資機会を2つは見逃してきました、とのお話から「バフェット流思考法でいけば、持っていたとしたら発生したであろう利益と損失と持っていないことで発生した利益と損失を天秤にかける、ということなのだろう。」と思いました。
持っていたとしたら発生したであろう損失というのは、無駄話に巻き込まれるとか投資判断にノイズが入るとか、ですね。
刺激を無為にしないためには、というお話は、私も似た気持ちになります。
対策は、可能なかぎりすぐに文字にする、ということなのかなと思っています。
パソコンのネタ帳兼todoリスト兼スケジュール帳に記録しています。
そして、後で何か閃いた時に検索できるようにしています。
あまり考えないでブログにアップしてしまおうかと思うこともあります。
ブログに載せてしまえば、人の目に触れるようになるので、誰かの役に立つこともあるかもしれない、という考えです。
ただ、こう書いてみたものの、betseldomさんのブログは「実績ある投資家の発言や行動をきちんと引用し、それに基づいて意見を発信する」というスタイルになっているところが魅力だと思いますので、この考えはそぐわないかもしれませんね。
== a96332587さん、ありがとうございます ==
返信削除a96332587さん、返信をありがとうございます。
「可能なかぎりすぐに文字にする」というやりかたは、いろいろな人が勧めているとおり、とても大切なことですね。わたしも手帳を活用しているのですが、手帳から離れてちょっとした用事をしている時に出てくるアイデアは、そのまま忘却の彼方へと消えてしまうことがあります。
またよろしくお願いします。
それでは失礼します。
追伸
投資方針に関する最新のブログを拝見しました。濃密な内容で、いろいろ参考になりました。