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2012年8月25日土曜日

チャーリー・マンガーの自宅

アメリカの経済誌Fortune(2012/8/22)にウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーの記事がありましたので、今回はチャーリーの部分をご紹介します。チャーリーの自宅を訪ねてのインタビューです。引用元の記事は以下の通りです。(日本語は拙訳)

Warren and Charlie and the chocolate factory(Fortune)
(ウォーレンとチャーリーとチョコレート工場)

チャーリー・マンガーに対して電子メールでインタビューを正式に依頼したところ、彼のアシスタントから次のような簡潔な返信があった。
「明日の8時半であれば、チャーリーはお会いできると申しております」

そうなるとは予想していなかったし、また私にとってはいささか早い時刻だった。L.A.の交通事情には慣れていない上、前日はずっとL.A.にあるシーズ・キャンディーの工場見学をしてきたので疲れてもいた。労力を要する仕事だったが、そういったものに立ち向かわなければならないライターもいるのだ。5月の水曜日の朝にL.A.の自宅で待っているとだけ伝えられて、全然形式張らないのだなと感じた。ウォーレン・バフェットとの約束はその次の日になっていたが、ずっと前から予定を組んでいたのだ。実のところ、その晩には飛行機でオマハへ移動するつもりだった。

水曜日の朝は7時に起きた。かばんに荷物をつめ、ホテルをチェックアウトし、レンタカーに飛び乗った。ハーツで借りた白の三菱ギャランだが、GPSは調子が悪かった。道は混んでいたものの、なんとか8時31分にはマンガー家の前に到着できた。彼の自宅は大きかった。大豪邸ではないが、カリフォルニアではよくある高級住宅だった。屋根は一面の赤色、車寄せにはヤシの木が並んでいた。玄関の前まで進むと、魔法のように扉が開いた。執事(兼給仕だろうか)が小さな読書室へ私を案内してくれた。そこには88歳になるマンガーが安楽椅子に腰かけていた。本業は弁護士だが、長きにわたるバフェットの同僚かつ投資上のパートナーでもある彼は、大きな虫眼鏡を手にハードカバーの本を読んでいた。彼は貪欲な読書家で、のちほどバフェットはこう語ってくれた。「私の知るかぎりでは、チャーリーほどたくさんの本を読んでいる人はいません。いまは88歳ですが、98歳になっても読んだことを全部覚えているでしょう。そこがわたしと違うことで、わたしは本を読んで楽しみますが、ささいなことは覚えていません」。

それからチャーリーと私は食堂へ移動した。そこで私は録音機のスイッチを入れ、時をおかずシーズ・キャンディーの話題を始めた。1972年に2500万ドルをだしてこの会社を買うようにバフェットを説きふせたのが彼なのだ。マンガーと話をしてすぐわかったのは、彼はビジネスに限らず、誰のことでも知っているし、どんなことでも覚えていた。本題と関係するような買収や破産の話題について、よく知られていない逸話をその都度詳しく思い出してくれた。例えば、ハーシーズがはじめてカナダに進出しようとしたことを話してくれた。またコダックの話に及ぶと、こう語った。「あの会社はまるごと失敗したものと考えて忘れていると思いますが、実は破産していなかったのです。イーストマン・ケミケルというスピンオフした会社のほうは、今も健在で成功をおさめていますよ」。P&Gの話題になるとこうだ。「P&Gはボディケア製品でいろいろうまくやっていますね。肌の具合がほんとうによくなるのであれば、そういうブランドは大当たりでしょう。その手のことになると、人はなかなかあきらめないですからね」。バフェットのようなわかりやすくて愉快なユーモアの感覚はないかもしれない。しかし、とことんドライで実際的な話題をするときでも笑わせてくれる能力を彼は持っている。

家の中に案内してくれた男が、今度は朝食を出してくれた。スクランブル・エッグ、ポテトの炒め物、焼きたてのベーコンだ。マンガーは長年にわたるシーズの強さを話してくれた。彼の見立てでは、バークシャーが買収する前と同じようにその後もシーズは正しい方向へ進んできた。「箱詰めチョコの会社は数多くあります。この小さな一粒ずつが、いにしえから続く人間の欲求にこたえるものですからね」。しかし、シーズは自社製品同士が競合しないよう懸命に努めてきた。そして、いつも慎重にことを進める体質が長期にわたる成功に寄与してきた。彼はつけくわえた。「もちろん我々はシーズの業務に基本的には関わっていませんよ」。また彼はシーズ製品のギフトとしての重要性を指摘した。「大安売りをみつけた云々、と言って贈り物を渡したがる人なんていないですからね」

In response to a formal email about setting up a sit-down interview with Charlie Munger, his assistant simply wrote: "Charlie says to come over tomorrow at 8:30."

It wasn't what I had expected. And it was a bit early for me, being new to Los Angeles traffic and tired from the long previous day of touring the See's Candies plant in L.A. (it was a grueling task, but some intrepid writer had to do it.) Being told to simply show up at Munger's private home in Los Angeles on a Wednesday morning in May felt starkly casual compared to my meeting with Warren Buffett, which would be the next day and had been scheduled far in advance. I would be flying to Omaha for it that night.

got up at seven on Wednesday, stuffed my bag, checked out of the hotel and hopped into my rental car, a white Mitsubishi Gallant with dysfunctional Hertz GPS unit. Traffic was bad, but I made it, pulling up outside Munger's address at 8:31. His house is big, but not a mansion; it looks like your standard upscale California home, complete with red roof and a wealth of palm trees around the driveway. When I walked up to the door, it opened, as if by magic. A butler (or waiter, or maybe both) led me into a small reading room where the 88-year-old Munger, a lawyer by trade and longtime colleague and investing partner of Buffett, was seated in an easy chair, using a large magnifying glass to read a hardcover book. The man is a voracious reader. ("Charlie has read about as much as anybody I know, Buffett later told me. "He's 88 now, and when he's 98, he'll remember everything he read. That's the difference; I read it, and I enjoy it, but I don't remember a damn thing.")

Charlie and I went to his dining room, where, with my recorder on, we began talking immediately about See's Candies, the brand he convinced Buffett to buy in 1972 for $25 million. The first thing immediately apparent about Munger is that in business and beyond, he knows everyone and remembers everything. At each turn he is able to recall specific and obscure anecdotes about buyouts and bankruptcies that relate in some way to the subject at hand. He talked about when Hershey's (HSY) first tried to expand into Canada. He waxed about Kodak ("People think the whole thing failed, but they forget that Kodak didn't really go broke, because Eastman Chemical did survive as a prosperous company and they spun that off") and about P&G ("Procter & Gamble, they just make a fortune on some of the body products. Some of these brands, I mean, if you can make something that actually improves the skin, wow. That's the last thing people will give up"). He may not possess the obvious, gleeful sense of humor of Buffett, but Munger has the ability to make you laugh even as he's discussing something completely dry and practical.

As the same man who had led me into the house served up breakfast (scrambled eggs, home fries, and delicious bacon), Munger talked about the strengths of See's over the years. In his estimation, it has made all the right decisions, both before Berkshire got there and since. "There are a lot of boxed chocolate companies; it's an old human desire," he said. "People like those little pieces." But See's worked hard, he said, to prevent cannibalizing its own stores, and has always had a cautious nature that helped it succeed in the long run. "And of course," he added, "We haven't basically touched it at all." He pointed out the significance of See's as a gift item. "Who wants to give a gift that announces 'I'm a cheap ... ' You know."


俗物根性丸出しで恐縮ですが、チャーリーのご自宅の写真をはじめてみました。おそらくこちらの物件だと思います。あるいは航空写真ではGoogle Mapsのこちらの画像です。そういえばチャーリーは建築が好きな人でしたね。ちなみにチャーリー個人の純資産は10億ドル。日本円で約800億円です。

3 件のコメント:

  1. == No title ==
    英語の件はありがとうございました。非常に参考になりました。
    いやー留学経験とかその辺かと思っておりました。非常に努力を重ねた結果ですね。
    私も頑張って文章を読んでみたいと思います。(chromeの翻訳に頼ってばかり・・・)
    チャーリーの個人資産は気になっていましたが800億円程度なのですね。
    とてつもない額ですがバフェットと比較すると寂しくうつりますね。消費もして気前もいいからでしょうかね。
    それでは失礼致します。

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  2. == No title ==
    ん?「チャーリーとチョコレート工場」?
    もしかして狙いました?(笑)

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  3. == raccoonさん、こんにちは ==
    つっこみありがとうございます。
    狙ったのは私ではなくて、記事を書いた方のほうですよ。
    しかし98歳になってもあの調子のままだったら、すごいですよね。

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