引用元PDFファイル
Reports of the Death of Equities Have Been Greatly Exaggerated: Explaining Equity Returns
「GDP成長率と株式からのリターン率には相関がない」
株式からのリターンを理解するために初めにみるのが、GDPの成長との関係である。一言でいえば、正の相関はない。株式からリターンをあげるのに、ある程度のGDPの成長が必要というわけではない。同様に、ある程度のGDP成長が株式市場でのリターンを示唆するものでもない。このことは実証されており、例えばディムソン=マーシュ=スタウントンによる1900年から2000年までの研究結果が示している。GDPが力強く成長することは、その国の株式市場が他の国よりも好成績をあげる最大の理由であると、多くの投資家はかたく信じている。しかし図1のように、20世紀をみればこの信念はあてはまらない。
The first point to understand about stock returns is their relationship with GDP growth. In short, there isn’t one. Stock returns do not require a particular level of GDP growth, nor does a particular level of GDP growth imply anything about stock market returns. This has been true empirically, as the Dimson-Marsh-Staunton data from 1900-2000 shows. Many investors are utterly convinced that strong GDP growth is the primary reason why one country’s stock market will outperform another. As we can see in Exhibit 1, this was certainly not the case in the 20th century. (p.1)
「企業利益の成長とGDPの成長には相関がある」
もし相関があるとすれば、道理に合わなくなる。ほかの条件がすべて同じだとすると、GDPの高成長率と株式市場からの低リターンが相関することになってしまうからだ。これはどういうことだろうか。企業があげる利益はGDPに連動して成長し、そして株価は利益に連動して上昇するものではないか。企業全体でみれば利益はGDPに連動して成長するとみて然るべきだし、株式市場の時価総額は利益に連動して成長すると期待されて当然だ。図4で示すアメリカ合衆国の例ではそうなっている。
Insofar as there is any relationship here, it’s a perverse one. All else equal, higher GDP growth seems to be associated with lower stock markets returns. How could this possibly be? Don’t earnings grow with GDP and stock prices with earnings? Aggregate corporate profits should indeed be expected to grow with GDP. And overall market capitalization of the stock market should be expected to grow along with aggregate earnings, as can be seen in the U.S. (Exhibit 4). (p.1)
「急成長がゆえに、株主へのリターンをある程度減じる」
急成長を望むのであれば、それに見合った投資が必要となる。この投資の原資は、配当せずに留保した利益か、株主利益を希薄化することによって作られる(注)。実際のところ、急成長をとげる国の企業では一般的に低配当率と株主利益の高希薄化の両方がみられる。そのどちらも、急激な成長にともなう増益効果を減じ、必要以上に株主リターンを引き下げている。
The faster you want to grow, the more you will need to invest, but this investment must either come from retained earnings (forgone dividends) or dilution of shareholders. In practice, companies in fast-growing countries generally exhibit both low dividend payout ratios and high rates of dilution of shareholders, both of which hurt shareholder returns enough to more than counteract the higher aggregate profit growth associated with fast growth. (p.4)
(注)
ここでは、新株発行と同様に借入金も株主利益の希薄化とみなしている。その理由として、資金の貸し手は公式には企業の所有者ではないが、キャッシュフローに対する権利だけでなく、破産や契約違反といった状況下で適用される期待権を有していることを考慮した。
(footnote)
For this purpose, I’m counting borrowing money as well as equity issuance as dilution of shareholders. Lenders may not officially have an ownership stake in the company, but they do have a right to some of its cash flow as well as having contingent rights under certain circumstances, i.e., bankruptcy or covenant breach.
「株式からのリターンの多くを占めるのは配当である」
株式市場からのリターンをみると、全体で見て大きな影響を与えるのは配当金だ。配当は過去のほとんどにおいて、株式投資家へのリターンの多くを担ってきた。図5は複利ベースで見た実質リターン及び実質EPSの成長を、実質GDPと比較する形で示している。全企業利益の総額や株式市場での時価総額の場合とは異なり、リターンやEPS成長はGDPと連動していないことが明確にあらわれている。
When we look at stock market returns, dividends have a very large impact on the total, providing the bulk of equity investor returns for most of history. Exhibit 5 shows the compound growth of real returns and real earnings per share against real GDP. Unlike aggregate profits and market capitalization, it is fairly clear that neither returns nor EPS grow in line with GDP. (p.4)
「全体として見ると、企業収益とEPSの相関が小さい理由」
全企業利益の総額や株式の時価総額は、EPSや株主に対する複利ベースのリターンとはほとんど相関していない。新会社設立、既存企業による増資、自己株式取得、M&Aといった企業活動が行われると、EPSは総計ベースの値から乖離したものになり得るからだ。
Total corporate profits and total stock market capitalization have very little to do with earnings per share or the compound return to shareholders because new companies, stock issuance by current companies, stock buybacks, and merger and acquisition activity can all place a wedge between the aggregate numbers and per share numbers. (p.4)
== GDPと株価の関係について ==
返信削除はじめまして。
いつもブログ拝見してます。
大変勉強になる内容で毎度感服しております。
今回の記事、GDPと株価の関係について私も以前調べた事があったので興味を持って拝見しました。
私の結論も「GDP成長率と株式からのリターン率には相関がない」
というものですが、
「同一のPERであれば、ほぼ名目GDPと沿った形で株価は上がる」
という結論になりました。
日本の場合、1985年から2011年までの実質GDPの増加額は156兆232億円で、44.56%。複利換算で年1.374%の成長でした。
名目GDPでは複利換算で年1.099%です。
長期金利(10年物国債利回り)の1985年から2011年までの平均利回りは2.926481%です。
一般に長期金利は名目GDP成長率+1.5~2.5%で推移すると言われていますが概ねそのとおりの結果かなと思います。
一方でTOPIXですが、1985~2011年までで147.855ポイント下落しています。
マイナス14.97%。複利換算で年マイナス0.538%です。
この数値は配当を考慮してないのですが、配当を2%として計算しても年1.5%程度となり、国債投資の方がマシという結果になります。
ただ1985年のTOPIX時価総額はPER35~45倍の価格で、2011年はPER16倍程度なので、こういう結果になったと考えます。
1985年のTOPIXのEPSがPER40倍相当だったとして、時価総額がPERが16倍であったら1985~2011年までで114.53%の上昇率となり、複利で年2.97%の上昇。
これに配当がプラスされるので、ちょうど配当の分だけ長期金利よりもプラスとなるのかなと思います(リスクプレミアムがほぼ配当利回りに相当していると考えられる)
結論として、高すぎる値段を避ける事がやはり重要なのかな?と思います・・・
乱文失礼しました。
== No title ==
返信削除こんにちは.
いつも拝見させていただいております.
GDPとリターンの相関性はない....
そうですよね...
例えば..
もし増資をすれば株式総数が増え希薄化される...
??ERが高くなれば,配当金などで得られた資金を再投資する場合,利回りが悪くなる...
ジェレミー・シーゲルの著書を読みましたが,結局は[太字]価格と価値の関係[/太字]になると思いました.
成熟した企業であっても,PERが非常に低ければ魅力的になる...
??もちろん成長する企業で,PERが低ければ最高にいい投資になる)
私はGDP成長率と株式リターンは相関性があると信じていました.
??色々調べてみると違う事に気がつけたので非常によかったです)
間違いだったことが分かってよかったです!!
節約発投資行きさんのブログを見たことで,より確信に変わりました!!
ありがとうございます!!
あと,この話題を取り上げてくださってありがとうございます.
これからも,ためになるお話期待しております!!
== 「twitterから」さん、ありがとうございます ==
返信削除「twitterから」さん、はじめまして。
過分なお言葉をいただき、ありがとうございます。
さて、お書きくださった分析ですが、明快そのもので、説得力あるものと感じました。このような計算をしたことがなかったので、とても参考になりました。貴重なご指摘をどうもありがとうございました。
当ブログはすばらしい先人の言行をご紹介しているだけのものですが、「twitterから」さんのような方にお読みになっていただけるのは、人の土俵ながらもうれしいものです。今後とも、どうぞよろしくお願い致します。
それでは失礼致します。
== 投資男さん、いつもありがとうございます ==
返信削除投資男さん、こんにちは。
いつも興味深い話題をありがとうございます。こちらのほうがお世話になっております。
今回ご紹介したGMOによる分析データですが、決定係数(R2)が小さいのが気になります。さらに、サンプル数がそもそも少なく、ここから傾向を読むのは苦しいものがあるかなと感じました。個人的には、やはり個別企業ごとの事情をあたっていきたいと考えています。その際には、マーケットの成長性も考慮すべき要因のひとつと捉えています。
ところで、投資男さんのポートフォリオを少しずつ参考にしております。
羅欣薬業などは割安かつ成長銘柄のようで興味をひきますね。ですが、中国株式についてはまるで不勉強で、会計監査がどのようにされているのか知識がなく、投資に踏み出すに至っていません。みすみす機会を逃しているかもしれませんが、自分の努力不足です。
またよろしくお願いします。それではこのあたりで失礼します。