ot

2017年8月4日金曜日

最強銘柄が選出されるとき(ハワード・マークス)

ハワード・マークスが新しいメモを7月末に公開していました。彼は2冊目の著作を現在執筆中で、来年刊行の予定だそうです。新刊で扱うテーマは「周期」で、今回のメモでもその種になる話題が含まれているとのことです。そのこともあったのでしょう、「いつもの2倍」ほどの長さになったメモは正味22ページあり、現状に対して彼が感じている想いやその元となる事実が、さまざまな観点から書き連ねてあります。彼は「未来を予測するものではなく、きざしを示すだけ」だと表明していますが、個人的にはそのほうがありがたいです。今回のメモは通読する価値があります。

さて今回からの投稿では、メモの一部をご紹介します。はじめに、"Super-Stocks"(最高の株式銘柄)と題した一節を取り上げます。原文は以下のリンク先にあります。(日本語は拙訳)

There They Go Again... Again [PDF] (Oaktree Capital Management)

最高の株式銘柄

強気相場というものは、株式のなかから「最強の銘柄」とされる一群が選出されることによって特徴づけられることがよくあります。一群の周囲をただよう魅惑的な伝説は、他の要因と相まって株価上昇の機運を支えます。その現象が極端な段階にまで達すれば、毎度のことながらも4ページ目に列挙したようなブームの際にみられる要素を、ある程度満たすようになります。たとえば以下のようなものです。

・「中断する術を持たない好循環」を信用すること。
・「企業の持つ本質的な強みを考慮すれば、株価が高すぎることはない」と確信すること。
・そのような肯定的見解を無制限に外挿することに対して、投資家みずからが疑念を抱かないこと。

現在起こっている循環をみると、"FAANG"(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、社名を変更してアルファベットとなったグーグル)によって代表されるテクノロジー企業の小集団へそれらの特徴が当てはまります。どの企業も秀でたビジネス・モデルを誇示し、市場では比類なきリーダーシップを露わにしています。ここでもっとも重要なのは、「各社は未来を手中にしており、それゆえにこれからも勝者たること必至」とみなされている点です。

好循環が続いている間は、たしかにその通りです。まさしく1960年代のニフティー・フィフティー銘柄がそうだったように。はたまた70年代の石油株や80年代のハードディスク会社、90年代のテクノロジー・メディア・通信会社がそうだったように。しかしそれらの時代には、次のようなことが生じました。

・予期せぬ形で環境が変化した。
・ビジネス・モデルの新規性ゆえに隠れていた欠陥が明らかになった。
・競争が激化した。
・卓越したコンセプトが事業運営上の弱さを招いた。
・企業のファンダメンタルがいかに優れていても、株価が割高となって巨額の損失をもたらした。

FAANGの各社は実にすばらしい企業で、急速に成長しています。また(競合が存在する領域では)、敵を粉砕しています。しかしながら、なかには利益率の高くない企業がありますし、売上高と比較して利益の伸びが鈍化している企業もあります。「明日の超優良企業」と断言できる会社もありますが、各社すべてがそうだと言えるでしょうか。向かうところ敵なしで、成功するのは絶対確実なのでしょうか。

そういった企業の株を投資家が購入する際の株価は、当該企業が現在あげている利益の30年分以上になるのが普通です。明らかな理由があるからこそ、少し先までの成長見通しに胸躍らせるのでしょうが、それでは長期的に見たときにその利益水準は持続するものでしょうか。利益に対して高い倍率の値段がついている株式の場合、その価値の多くは必然的に「長期」の位置を占めるわけです。[息子の]アンドリューの指摘では、iPhoneが世に出てからちょうど10年ですし、インターネットが広く使われるようになってから20年は経過していません。このことから次の疑問が浮かび上がります。「テクノロジーに資金を投じる投資家は、本当に未来を観通せるのか。それゆえに、長期的な収益力に関して抱いている楽観的な各種の仮定、それらが総合された購入金額に対してどれだけの幸福を感じたらよいのか」。もちろんですが、まだまだ若いそれらの企業にとって最上の時はこれからやってくることを、単純に意味しているだけなのかもしれません。

この話題に関する一節を、ある企業が株主向けに書いた1997年度のレターから引用します。

私たちは、数多くの重要な戦略的パートナーと長期的な提携関係を結びました。そのなかには、アメリカ・オンライン、ヤフー、エキサイト、ネットスケープ、ジオシティーズ、アルタビスタ、アット・ホーム、プロディジーの各社が含まれています。


上の文に出てくる「重要な戦略的パートナー」のうち、現在も意味のある形で存在している企業は何社あると思われますか(重要なのか、あるいは戦略的なのか、という疑問は別として)。正解は0社です(ヤフー社はその条件を満たしていないはずだと考えるのであれば、正解は1社となるでしょう)。この文章は、アマゾン社の1997年度の年次報告書から抜粋したものです。つまるところ、将来とは予測できないものであり、小さな欠陥に無縁なものや企業なぞ存在しないのです。(p. 6)

(この項つづく)

Super-Stocks

Bull markets are often marked by the anointment of a single group of stocks as “the greatest,” and the attractive legend surrounding this group is among the factors that support the bull move. When taken to the extreme - as it invariably is - this phenomenon satisfies some of the elements in a boom listed on page four, including:

- trust in a virtuous circle incapable of being interrupted;
- conviction that, given the companies’ fundamental merit, there’s no price too high for their stocks; and
- the willing suspension of disbelief that allows investors to extrapolate thse positive views to infinity.

In the current iteration, these attributes are being applied to a small group of tech-based companies, which are typified by “the FAANGs”: Facebook, Amazon, Apple, Netflix and Google (now renamed Alphabet). They all sport great business models and unchallenged leadership in their markets. Most importantly, they’re viewed as having captured the future and thus as sure to be winners in the years to come.

True as far as it goes … just as it appeared to be true of the Nifty-Fifty in the 1960s, oil stocks in the '70s, disk drive companies in the '80s, and tech/media/telecom in the late '90s. But in each of those cases:

- the environment changed in unforeseen ways,
- it turned out that the newness of the business model had hidden its flaws,
- competition arose,
- excellence in the concept gave rise to weaknesses in execution, and/or
- it was shown that even great fundamentals can become overpriced and thus give way to massive losses.

The FAANGs are truly great companies, growing rapidly and trouncing the competition (where it exists). But some are doing so without much profitability, and for others profits are growing slower than revenues. Some of them doubtless will be the great companies of tomorrow. But will they all? Are they invincible, and is their success truly inevitable?

The prices investors are paying for these stocks generally represent 30 or more years of the companies' current earnings. There are clear reasons to be excited about their growth in the near term, but what about the durability of earnings over the long term, where much of the value in a high-multiple stock necessarily lies? Andrew points out that the iPhone is just ten years old, and twenty years ago the Internet wasn't in widespread use. That raises the question of whether investors in technology can really see the future, and thus how happy they should be paying prices that incorporate optimistic assumptions regarding long-term earnings power. Of course, this may just mean the best is yet to come for these fairly young companies.

Here's a passage from one company's 1997 letter to shareholders:

We established long-term relationships with many important strategic partners, including America Online, Yahoo!, Excite, Netscape, GeoCities, AltaVista, @Home, and Prodigy.


How many of these "important strategic partners" still exist in a meaningful way today (leaving aside the question of whether they're important or strategic)? The answer is zero (unless you believe Yahoo! satisfies the criteria, in which case the answer is one). The source of the citation is Amazon's 1997 annual report, and the bottom line is that the future is unpredictable, and nothing and no company is immune to glitches.

0 件のコメント:

コメントを投稿