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2012年4月22日日曜日

スナック菓子が食事を占める割合

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前回の記事に続いて『食の終焉』からの引用です。今回は食品メーカーのマーケティングやR&Dについてです。

まずはブランドについて。
ほとんどの加工食品において(ついでに言えば、ほとんどあらゆる消費者製品についてもこれはいえる)、消費者は首位のブランドをあたかもそれがより高い価値を持つ製品であるかのように扱い、その価値を手に入れるためであれば、消費者は喜んで割高の代金を支払ってくれる。具体的には、消費者は売上トップのブランドには2位のブランドよりも最大4パーセントまでの割高な代金を、3位のブランドよりも7パーセント余分な代金を支払う意思がある。その3つの製品が本質的に同一のものであったとしてもだ。(p.97)

次は嗜好に関する研究結果です。
ネスレ、クラフト、ハインツなどの会社は、味と嗜好の謎をデータ化することに成功した。それだけでなく、私たちが何を好んで食べるか、そしてそれをなぜ好むのか、その理由まで、私たち自身が認識している以上に、彼らは私たちのことをよく理解している。彼らは塩味やカリカリ感への嗜好性が性別、年齢、民族性、国民性によってどう変わるかも、正確に把握している。年長者は味蕾の衰えもあって濃い味を好み、アジア人は塩気のあるパリッとしたスナックに目がなく、アメリカ人は新しい味に夢中になりやすいが、マカロニやミートローフのような「郷愁を感じさせる味」にも弱く、これまで慣れ親しんだ味からそう簡単には離れられないことも、彼らはすべてお見通しなのだ。(p.102)

「慣れ親しんだ味からそう簡単には離れられない」理由を、ネスレ社のあるマネージャーは次のように説明しています。
「人間はこと食べ物のことになると、昔からとても保守的にできています。かつて狩猟採集民だった頃から、何か急な味の変化を感じ取ったとき、それを何かの警告として受け取る習性が身に付いているからです」
(p.84)

最後は、スナック菓子のマーケット調査結果です。
世界中の食品販売を分析しているイギリスのデータモニター(Datamonitor)社は、平均的なアメリカ人は3日に1回は朝食を抜いていて、さらに昼食と夕食を抜く回数も増え始めていると分析している。このような傾向は消費者の健康には恐ろしく悪いことだが、食品会社にとってみればまた新たなチャンスの訪れを意味している。消費者が日常の食事の回数を減らせば、それを補完するために、利益率の高い食物カテゴリーであるスナック菓子を多く食べるようになるからだ。データモニター社によると、現在アメリカでは、スナック菓子がすべての食事の約半分を占めるまでになっているという。(p.105)

2012年4月21日土曜日

インスタントコーヒーのあけぼの

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投資に役立つヒントを求めて、マクロな視点の本も少しずつ読んできました。水資源、食糧、省資源、気候、地球温暖化、大企業の社会的問題といったものです。最近読んだ本『食の終焉』はこれらの話題を包含するような力作です。本書の主題は、ビジネスに取り込まれてしまった「食」を様々な観点からとらえ、警鐘をならすことにあります。情報量が多い本は消化不良でおわったり、主旨がふらつくことがありますが、本書にはあてはまりません。著者はひとつひとつの話題をそれなりに掘り下げ、互いをつなぎあわせ、自らの主張を織り込み、読みごたえのある文書をつくりあげています。邦訳のほうも、幅広い分野にわたる原文に追いつくだけでなく、なめらかな日本語へと置き換えています。ビジネスや世界情勢を理解するのに役立つ知識はもちろん、社会や我々の中にある闇をみつめるきっかけも得られるでしょう。個人的には、今年読んだ中でベスト3に入れたい本です(これから読む本も含めて)。

同書の中から印象に残った文章をいくつかご紹介します。今回はインスタントコーヒー商業化のいきさつについてです。

もちろん、消費者の時間不足だけが食品メーカーをインスタントコーヒーなどのお手軽食品の開発に駆り立てたわけではない。そもそも、ネスレがインスタントコーヒーを考案したのは、消費者が手軽に入れられるコーヒーを望んでいたからではなく、コーヒー豆の価格が生の状態で売るには安くなり過ぎたからだった。1930年代、ブラジルのコーヒー農園はアメリカの穀物農場のように非常に広大になったため生産効率が高くなり、コーヒー豆の市場はだぶついていた。コーヒー相場は大幅に下落し、ブラジル人はコーヒー豆を機関車の燃料として燃やすほど持て余していた。困ったコーヒー産業の関係者たちは、需要喚起を願って、もっと消費者に手軽なコーヒー製品を開発するようネスレに懇願した。コーヒーの加工は初めてだったが(当時ネスレは主に牛乳を扱う会社だった)、その時のネスレの幹部らの推測は正しかった。余った豆をもっと手軽に使えるような形に変えることができれば、消費者はより多くのコーヒーを飲むだけでなく、喜んで生の豆の相場よりも高い金額を支払うだろうと考えたのだ。

このように未加工の農産物を加工して利益をもたらすような製品に変換することを「付加価値」と呼ぶが、この程度のことは今日、あらゆる商品を対象に当たり前のように行われているため、それが食品加工産業の成功とその特性に、どれほど中心的な役割を果たしてきたかをついつい見逃しがちである。穀物相場の下落は農場主の首を絞めていたかもしれないが、安い穀物をコーンフレークやキンダーミールに変えることで加工費を原材料費に上乗せして受け取っていたケロッグやネスレなどの加工業者には、逆の効果があった。確かに千年以上前から職人たちは穀物や牛乳、肉に付加価値を付けてきた。ワインから発酵という付加価値をなくせばただのブドウである。しかし大量生産と市場出荷という新しい手段のおかげで、付加価値は、未加工農産物の生産者が手に入れられなかった潜在的利益を食品会社にもたらした。(p.92)

2012年4月20日金曜日

TOPIX Core30ひとかじり (5)パナソニック

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当社は消費者向け製品も多く、おなじみの企業なので、詳細に立ち入る必要はないかと思います。そこで今回は以下の3点に着目して、当社の現状把握としておきます。

1.セグメント毎の営業利益率
当社ではセグメントという表現で事業を大きく分けています。どれも売上高が1兆円を超えるものばかりです。セグメントというよりも、企業グループといった趣きです。以下の表は少し前の2010年度の営業成績です。

#セグメント製品例売上高(10億円)営業利益(10億円)営業利益率(%)
1デジタルAVCネットワークテレビ、デジカメ3,3031143.5%
2アプライアンス冷蔵庫1,275927.2%
3電工・パナホームLED、住宅1,735724.2%
4デバイス半導体926323.6%
5三洋電機電池全般1,561△ 8-0.5%
6その他FA機器1,197524.4%
(出典:当社アニュアルレポート DATA BOOK 2011)

質のほうに目を向けると、いずれのセグメントでも営業利益率が10%に届いていません。以前取り上げた信越化学工業のような企業とくらべると(過去記事)、業種も規模も違いますが水をあけられています。


2.事業毎の営業利益率

下の図は、もっと細分化された事業レベルでの営業利益率のイメージです。ただし、上の表とは時期が異なっており、2011年度第3四半期までの営業成績です。

(出典:当社プレゼンテーション「収益力強化の取組み」 スライドp.4)










当社の不振ぶりが昨今騒がれていますが、その元凶がひとめでわかります。左側が赤字事業で、テレビ及び半導体です。


3.テレビ事業について
なぜテレビ事業が急激に失速したのか。液晶テレビのような家電製品の安値販売に対して、世間では「コモディティー化」と呼んでいますが、特に国内での販売状況を見ると需給バランスの悪化が目につきます。2011年夏の地上波デジタル移行に向けて、テレビ製造各社が進んだ道を振り返ってみましょう。

下の図は、ここ数年間の国内での薄型テレビの販売台数実績をまとめたものです。調査会社の資料ではなく、各製造会社のIR資料から独自に推測したものなので、精度はかなり大雑把です。また主要4社のみ対象としています。







国内の世帯数は約5,000万世帯で(総務省統計から)、1世帯あたりのテレビ保有台数は2.5台です(平成19年3月の消費動向調査から)。このことから、マーケットの大きさは12,000万台前後とみられます。それに対して、上記の図では2010年度末には7,000万台に達しており、それ以前に販売されていた台数も含めれば、飽和するのが遠くない状況です。買い替えサイクルは約10年なので、飽和後に期待できる年間販売台数は1,200万台強。この図の4社で均等に分け合っても、1社あたり300万台です。

この図は過去の実績をさかのぼってまとめたものですが、各社で薄型テレビのマーケティングや事業戦略を練る際には、このような需給予測は行っていたはずです。精度はずっと高いものでしょう。国内マーケットはいずれは縮小し、設備過剰に陥ることも予想されていたでしょう。それなのに、なぜ今回のような道を選んだのか。個人的にはその一つとして、前回記事で取り上げた「競合動向を軽視」していた可能性を挙げたいと思います。「そうではない。自社が売らなければ他社を利する」とゲーム理論的に考えたのかもしれません。真偽のほどはわかりませんが、2,000億円の減損は小さくはありません(出典: 2011年度第3四半期決算概要スライドp.11)。既に払ったお金であればサンクコストに過ぎませんが、お金の使い方という観点では当社を見る目は厳しくなったのではないでしょうか。

2012年4月18日水曜日

ぱっと考える、じっくり考える(セス・クラーマン)

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今回ご紹介するのは、ヘッジファンド・マネージャーのセス・クラーマンが投資家に向けて書いた2011年度の年次報告からで、おなじみの主題「判断の誤り」についてです。(日本語は拙訳)

心理学者のダニエル・カーネマンは経済学の分野で活躍しており、人の判断や意思決定における合理的モデルを開拓した業績に対して[俗に言う]ノーベル経済学賞を受賞しました。さらに研究を進めた彼が最近になって出版した作品も、注目に値するものです。題名は『ぱっと考える、じっくり考える』[邦訳は未刊行]。自分たちは常に合理的に行動していると考えている人が本書を読むと、がっかりさせられるかもしれません。ですが、カーネマンは人間を非合理な生き物だと決めつけているのではなく、人は常に合理的だと考えるのは現実には即していないと言っているだけです。カーネマンはこう考えています。「人の脳では2つのシステムが共存して働いている。システムその1は素早く考えるようにできており、日常的に入ってくる何百万もの情報に対して自動的に反応する。この反応はぱっとでてくるが、そこそこ信頼できるものだ。このシステムは友人と敵を見分けたり、無害な食べ物と有害なものを選り分けたりする。いつも使う道路を運転する際にも働いており、目的地に着いたときには何をどう運転してきたのか思い出せないぐらいだ。そう、システムその1は世の中で生きていくには欠かせないものなのだ。一方、システムその2のほうはじっくり考えるようにできている。システムその1は特に計算せずに2 + 2 = 4のような答えを出せるが、17 * 24のような問題にはシステムその2が必要になる。落ち着いて考えなければ解けないからだ」。

Daniel Kahneman, a psychologist who won the Nobel Prize in Economic Sciences for his work that challenged a rational model of judgment and decision-making, recently published a remarkable account of his intellectual journey: Thinking, Fast and Slow. The implications for those who believe that we are always rational actors are quite disheartening. Kahneman does not, by the way, brand people as irrational; he simply believes that the idea that we are always rational actors does not hold water. Kahneman thinks of the human brain as operating on two systems simultaneously. System One, the fast brain, is mostly on autopilot-responding to millions of inputs on a daily basis, forming quick and mostly reliable impressions. System One helps us discern friend from foe, or edible from poisonous. It controls our driving on a familiar highway, so that when we arrive at our destination, we hardly remember how we got there. We need System One to navigate the world. System Two is slow. System One knows that two plus two is, four without doing the math. System Two is needed to know what 17 times 24 equals', We have to slow down and think.


続いて、セス・クラーマンは、システムその1を使う場合の危険性に触れています。

システムその1を使って、簡単な問いではなく難解な問いに答えようとすると、失敗しやすくなります。物事を単純化しすぎることの危うさを示す例として、コリン・キャメラーという学者が最初に注目した「競合動向の軽視」という概念を紹介しましょう。これは、ある会社が自分たちの強みばかりに目がいってしまうと、実は競合他社も同じような力をつけていて、顧客をうばいとってきたり、いい商売の機会をみつけようと動くのを見逃しかねない、というものです。もうけ話が眠っているニッチをみつけるには、自分の能力を正しく見極めるだけではなく、競争相手の能力や意図のほうも考えることが不可欠なのです。これはビジネスでも投資でも同じことです。

When System One substitutes an easier question for a harder one, it is easy to make mistakes. Colin Camerer coined the concept of "competition neglect," which illustrates one of the dangers of oversimplification. When a business only focuses inward on its own strengths, it can miss the fact that its competitors may be equally strong and pursuing the same customers and business opportunities. Figuring out profitable niches to exploit-in business or in investing--depends not only on correct identification of your own capabilities, but also the capabilities and intentions of your competitors.


ダニエル・カーネマンは行動経済学の大家で、その手の本を読むたびにお目にかかる名前です。今回の引用で出てくる『Thinking, Fast and Slow』は遠からず翻訳されるでしょうから、楽しみに待つことにします。なお、題名の『ぱっと考える、じっくり考える』は私の勝手訳です。

2012年4月16日月曜日

ここより永久に(ジョン・メイナード・ケインズ)

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ケインズといえば経済学の大家として有名です。なじみの少ない人でも、歴史の教科書あたりで見聞きしたことがあるものです。しかし、投資家としての彼の手腕は、それほど知られていないものです。数年前までは、わたしも知りませんでした。

今回は、少し前のThe Wall Street Journalの記事Keynes: One Mean Money Managerから引用します。(日本語は拙訳)

資産運用を始めた頃のケインズは、今で言うところの「マクロ派」だった。金融や経済上の動きを注視し、株・債券・現金の間で資産をローテーションした。また外貨や商品にも投資していた。イングランド銀行の理事だったころには、金利政策の変更のような内部情報を知ることのできる立場にいたが、その情報をもとに投資したという証拠は残されていない。

しかし、ケインズはすぐれたマクロ派マネージャーというわけではなかった。英国株式市場とくらべると、1928年までの成績は散々だった。1929年の秋の時点では[世界恐慌の直前]、自身のポートフォリオの83%を株式に投資していた。

「市場の動きを読むのは難しい」チャンバース氏は述べる。「ケインズは奮闘しましたが、比類なき情報網をもってしても1929年の下落は予見できなかったのです」

その後、ケインズはまったく違うやり方をとることにした。「トップダウン」で資産運用するのをやめて、「ボトムアップ」で銘柄をみつけることにしたのだ。彼がのめりこんでいったのは、割安な値がついている中堅以下の企業だった。

ケインズはまた、割安だとにらんでいる産業へ大きな賭けをした。1936年には、ポートフォリオの2/3を鉱山株が占めていた。銀行やエネルギーには一銭も投じていなかった。彼の予想は的中し、南アフリカのゴールドを採鉱する会社は通貨下落の恩恵を受けた。

ケインズは、大手の投資家がそろって債券に向かうときに、株式を買うような人種の先駆けだったが、それだけではない。悠然とリスクをとることができたので、例えば自分の資産の半分を、すっかりほれ込んだ5銘柄に集中させたこともある。たいていの場合、買った株式は5年間は手放さなかった。「いったん投資したら、結婚と同じように永久に離れられないことにしましょう」と冗談交じりにいったものだ。(今日の平均的な米国株ファンドでは、上位5銘柄の占める割合は19%に過ぎない。また、銘柄の平均的な保有期間は15ヶ月間ほどである)

Keynes began as what we would today call a "macro" manager, relying on monetary and economic signals to rotate in and out of stocks, bonds and cash. He traded foreign currencies and commodities. As a director of the Bank of England, Keynes was privy to inside information about interest-rate changes, although there isn't evidence that he traded on it.

But Keynes wasn't a very good macro manager. He lagged behind the British stock market miserably until 1928, and he had 83% of his primary portfolio in stocks going into the fall of 1929.

"It's hard to time the markets," Mr. Chambers says. "Keynes struggled with it, and then he missed the 1929 crash?even with an unrivaled network of information sources."

So Keynes made a series of radical changes: He switched from being a "top down" asset allocator to a "bottom up" stock picker. He tilted sharply toward undervalued small and midsize companies.

Keynes also made titanic bets on industries he thought were cheap; by 1936, he had 66% of his portfolio in mining stocks and not a farthing in bank or energy shares. South African gold companies, he correctly foresaw, would benefit from falling currency values.

Keynes wasn't only a pioneer in owning stocks when most big investors favored bonds. He also relished risk, concentrating as much as half of his assets on his favorite five holdings or, as he called them, his "pets." Keynes clung to his typical stock for more than five years at a time. Only partly in jest, he had proposed making "the purchase of an investment permanent and indissoluble, like marriage." (Today, the average U.S. stock fund has only 19% in its five biggest positions and hangs on to its typical stock for just 15 months.)

2012年4月15日日曜日

飢えた犬が骨に食らいつくような光景

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最近読んだ本『ハイパーインフレの悪夢』は、その時代に生きた人々の思いや世相が伝わってくる一冊です。インフレが高じたメカニズムを解明する類の本ではありませんが、歴史から何かを学ぼうとする人にとっては一読に値する本だと思います。

今回は同書からの引用で、1923年11月6日ごろに、あるイギリス人実業家がベルリンで見た光景です。第一次世界大戦でドイツが敗れ、1919年6月にヴェルサイユ条約を受諾した時点での為替レートは、1ポンド=20マルクでした。一方、この文章が書かれたのはハイパーインフレの末期で、1ポンド=3100億マルクまで減価していました。

わたしは自分が目にした光景に気分が悪くなりました。たまたま、フリードリヒシュトラッセとウンターデンリンデンのあいだのアーケードを通りかかったのです。するとその狭い空間に、ほとんど死にかけた3人の女がいました。肺病か飢餓の最終段階にあるようでした。おそらく飢餓のほうでしょう。女たちには施しを求める力さえありませんでしたが、わたしが無価値なドイツの札をひと束与えると、必死になってそれをつかもうとしました--飢えた犬が骨に食らいつくように。それを見て、わたしは衝撃を受けました。わたしはドイツびいきではありませんが、休戦から5年が経つ今、わたしたちがこのような事態を容認しているとは驚きです。ああいう惨めなものを見たことがない人たちに、ここの実情がほんとうに理解できるのか、疑問に思わざるをえません。(中略)もちろんベルリンでは、自動車や、ぜいたくに暮らす裕福な人々も見かけます。しかし貧しい地区で何が起こっているか、ご存知ですか?食糧を求める長い行列を見れば、説明は無用でしょう。(p.245)

2012年4月14日土曜日

これは最低だな(チャーリー・マンガー)

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過去記事「順列や組み合わせ」に続いて、チャーリー・マンガーが世知にあげているのが「会計」です。なお、本シリーズの先頭にあたる過去記事はこちらです。(日本語は拙訳)

当然ですが、会計の知識は不可欠です。ビジネスの現場で語られる言葉ですからね。この有用な概念は、文明社会の発展に寄与しました。かつて地中海世界を経済力で席巻したヴェニスでうまれ育ったとのことですが、しかし複式簿記はすごい発明ですね。

会計を理解するのはそれほど難しくはありません。

ですが、会計にも限界があることは重々承知しておくべきです。会計で表される数字は大雑把なもので、あくまでも出発点に過ぎないからです。限界を知るのも、それほど難しくありません。例えば、ジェット機の耐用年数はと聞かれたら、大体のところで予想するしかないでしょう。償却率をそれっぽい数字に決めるでしょうが、だからといって自分でひねり出した予想が現実に即したものになってくれるわけではありません。

会計の限界について、わたしの好きな逸話があります。カール・ブラウンというすばらしい事業家の話です。彼はC. F. ブラウン・エンジニアリングという原油の精製プラントを設計、施工する会社をおこしました。この手のビジネスは技術的な難易度がかなり高いのですが、ブラウン氏は職人芸を発揮して、納期を守り、爆発事故を起こすこともなく、効率の高いプラントを建設してきました。

生粋のドイツ人気質をもっていたブラウン氏には、一風かわったところがありました。たとえば、標準的な会計規則をプラント施工の仕事に適用するところをみて、「これは最低だな」とした一件。

彼は経理屋をみんなお払い箱にし、技術者たちに向かって言ったのです。「これからは、うちの作業にあうように、会計のほうをあわせていくことにする」。そして時がたってみると、会計規則のほうがカール・ブラウン氏のやりかたを採用することになりました。彼は、会計の重要性だけでなく、その限界を知ることも大切だと示してくれたのです。並はずれた強い意志と能力を兼ね備えた人でした。

Obviously, you have to know accounting. It's the language of practical business life. It was a very useful thing to deliver to civilization. I've heard it came to civilization through Venice, which, of course, was once the great commercial power in the Mediterranean. However, double-entry bookkeeping was a hell of an invention.

And it's not that hard to understand

But you have to know enough about it to understand its limitations - because although accounting is the starting place, it's only a crude approximation. And it's not very hard to understand its limitations. For example, everyone can see that you have to more or less just guess at the useful life of a jet airplane or anything like that. Just because you express the depreciation rate in neat numbers doesn't make it anything you really know.

In terms of the limitations of accounting, one of my favorite stories involves a very great businessman named Carl Braun who created the C. F. Braun Engineering Company. It designed and build oil refineries - which is very hard to do. And Braun would get them to come in on time and not blow up and have efficiencies and so forth. This is a major art.

And Braun, being the thorough Teutonic type that he was, had a number of quirks. And one of them was that he took a look at standard accounting and the way it was applied to building oil refineries, and he said, “This is asinine.”

So he threw all of his accountants out, and he took engineers and said, “Now, we'll devise our own system of accounting to handle this process.” And, in due time, accounting adopted a lot of Carl Braun's notions. So he was a formidably willful and talented man who demonstrated both the importance of accounting and the importance of knowing its limitations.


余談ですが、私の場合、株式投資を始めたころは会計のことはあまりわかっていませんでした。財務諸表を読んで企業分析のまねごとをするうちに、知識を少しずつ身につけていったものです。そのうち、仕事の関係で簿記や決算に携わる機会がありました。実際に仕訳をしたり、固定資産の減価償却費を計算したり、税額を計算したりすることで、財務会計の基本を体で理解できました。チャーリーが言うように難しい概念ではないのですが、実際に手を動かすことで、いろいろ合点できるところがありました。貸借対照表が巨大な恒等式であることを肌身で感じられたのは、自分にとってよい経験でした。

そのこともあって、企業分析を行う際には損益計算書だけでなく、貸借対照表も大いに気にします。資産がどのように使われているのか調べるのは、財務面での安全余裕を確認するだけでなく、ビジネスの性質を理解したり、経営陣の金銭意識を推し量るのに役立つからです。

2012年4月13日金曜日

(映像)華麗なるスローイング(ウォーレン・バフェット)

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ウォーレン・バフェットは中学・高校時代に、新聞配達に熱を入れていたのは有名な話です。もちろん、お金を稼ぐためです。まさか、その彼の技をみられるようになるとは、思ってもみませんでした。今回は3/31(土)に開催されたOmaha Press Club Showからで、技あり、歌ありの楽しいセッションです。個人的には、一投目が気にいってます(12秒ごろ)。

2012年4月11日水曜日

企業はすばらしくても自分はがっかり(アーノルド・ヴァンデンバーグ)

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前回に続いて、アーノルド・ヴァンデンバーグのインタビュー記事から引用します。今回は、質の高いビジネスについてです。

(質問)
「質が高い」とはどういうことでしょうか。どんな要因があれば質の高いビジネスだと呼べるのでしょうか。

(アーノルド)
本当に質の高い企業とは、真のフランチャイズを持っており、価格決定力があって、うらやましいほどの競争力を持ち、バランス・シートが強固で、対資本利益率が高く、時の試練にも耐える文化が築かれているものです。みなさんも異論はないでしょう。ただし、あくまでも理想の話で、そういう理想的な企業を安く買える機会は、まずやってこないだろうと思います。一方、わたしどもが挙げた利益のほとんどは、この理想像には当てはまらない企業からですが、安く買えたことで投資としては理想的なものとなりました。結局のところ、よい価値を手にいれるにはどうすればよいでしょう。我々も努力していますが、すばらしい企業を買うというだけでは十分ではありません。よい値段で買うことも欠かせないのです。そうしないと、安心して投資できる企業を保有しても、ひどいリターンに終わるかもしれないのです。正しい値段で買っていないと、企業はすばらしくても自分はがっかり、そうなるかもしれないことを忘れないでください。

(Q)
How do you define “high quality?” What factors will make you think a company has a high quality business?

(A; Van Den Berg)
Companies that are of real high quality have a true franchise, have pricing power, an enviable competitive position, a strong balance sheet, earn a good return on capital and equity, and have a culture that can stand the test of time. I am sure that most of your readers would agree with this. This is the ideal, but very rarely do you have the opportunity to buy the ideal at cheap prices. Most of our returns have been by companies that did not fit this category of the ideal, but the price made it an ideal investment. However, in order to get a good value, which is what we are looking for, it is not sufficient to just have a great company; you also need to buy it at good price. If not, you may end up with a comfort stock that gives you a mediocre return. Always remember that even a great company can disappoint you, especially if it is not bought right.

2012年4月10日火曜日

わたしも慎重です(アーノルド・ヴァンデンバーグ)

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私の好きなファンド・マネージャーにアーノルド・ヴァンデンバーグ(Arnold Van Den Berg)という人がいます。ボブ・ロドリゲスほどではないですが慎重派のバリュー投資家で、彼のファンドCentury Managementの読み物はいつも楽しみにしています。彼の文章を読んだのがきっかけで、昨年からマイクロソフト(MSFT)へ投資しています。

今回は、昨年11月にアーノルドが応じたインタビュー記事GuruFocus Interview with Investor Arnold Van Den Bergからの引用で、弱気相場についてです。彼の見立てでは、アメリカの株式市場はまだ弱気相場のまっただなかです。ただし、5,6年経った後に大きな強気相場がくる可能性も示唆しています。(日本語は拙訳)

時間がたてば、リターンを決めるのは買値です。質の高い企業をPER1ケタで買えれば、先行きが不透明で不安定なときでも儲けることができます。もちろんビジネスからの利益は現実のもので継続的にあげられるべきですが、そうであれば適正な値段を払ってもリスクを見込んだことになります。現金を保有する選択をしてもそれが誤っていることもあるので、あらゆるリスクをヘッジできるわけではありません。が、企業価値の面ではヘッジできると考えます。株のバブルのあとには必ず弱気相場がやってきます。弱気相場になると、低金利のような相場を盛り上げた要因は、一時的あるいは少ししか効果を発揮しなくなります。利益面で成長しても、平均PERのほうは低くなっています。ですから、株価があがっても1,2年たつと低いレベルに戻っていき、それがまた繰り返されます。弱気相場の間には、株価がすごく上昇するというのはないかもしれません。PERでみて安い株でも、もっと安くなることはよくあります。西暦2000年以来、まさに我々が目の当たりにしてきたものです。弱気相場も最後になると、PERはとても低い水準まで下がります。そこでようやく次の強気相場が始まるのです。

弱気相場がどれぐらい続くかですが、平均的には16年間ぐらいです。その調子ですと[2000年が始まりとすると]、あと5年かそこらは残っています。偶然ですが、先ほどコメントした不動産や失業率や財政危機にめどが立つ時期と一致しています。このような状況下で投資をするには、あくまでも個々の企業毎の価値に焦点を当てるのが大切です。安く買って適正株価に近づいたら売ることで、こんな時分でも利益をあげることはできます。注意しないといけないのは、PERは低めに考えないといけないので、ふつうのときほどには株価はあがらないでしょう。そしてお買い得がみつからなければ、現金のままでいることです。

Over time, price determines return. Buying high quality companies at single digit P/Es gives us the opportunity to make money, even in an uncertain and unstable environment. Obviously the profits have to be real and sustainable, but assuming those two conditions are met, if we buy companies at the right price, we are discounting the risks. We can’t hedge every risk (even cash can be a bad investment), but we can hedge valuation. Stock bubbles are always followed by a bear market. A major characteristic of bear markets is that things that would normally cause the market to explode - like low interest rates - have either minimal or temporary effects. In bear markets, earnings could continue to grow, but multiples become compressed. This causes stock valuations to trade up one to two years, but then revert back to low levels and start the cycle over. Over the duration of the bear market, the prices of stocks may not significantly appreciate. Stocks that may look cheap on a multiple basis may often get even cheaper. This is exactly what we have been seeing since 2000. At the end of the bear market, multiples have compressed to very low levels. This sets the stage for the next bull market.

How much longer will we be in this bear market? Bear markets typically last about sixteen years, so I would say that we have about five more years to go. This coincides with our earlier comments on how long we think it will take for the real estate, unemployment, and fiscal problems to be reconciled. The way to invest in this kind of environment is to stay focused on the valuations of individual companies. You can still make money in this environment by buying stocks when they are cheap and selling when they are near fair value (remember that multiples are compressing, so stocks won’t go as high as one would expect in a normal environment). When bargains can’t be found, hold cash.


ボブ・ロドリゲスの見解と通じるものがありますね(過去記事)。ただ、個人的には日本の株式相場についてはもっと楽観的です。地震による原発リスクは依然残っていますが。

2012年4月8日日曜日

かなりの世間知らずですね(ウォーレン・バフェット)

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今回は将来の予測について、ウォーレン・バフェットによる1995年開催のバークシャー・ハサウェイ株主総会での発言をご紹介します。おなじみ『Seeking Wisdom』で孫引きされているものです。(日本語は拙訳)

わたしは今後の予測とか業績予想といったものは気にしません。あたかも精確にみえますが、そう思えるだけでしょせんは作り立てたものです。細かな点にこだわっているほど、よく注意したほうがいいですね。わたしどもは予想をしないかわりに、過去の実績のほうをずっと気にかけ、なるべく深く調べるようにしています。これまでの実績が思わしくないのに今後の見通しが華々しいような企業の話がきても、見送ることにしています。

ビジネスを買おうとする際に、売り手や仲介者が出してくるような将来予測をなぜ参考にするのでしょうか。その手の予測に意味があるとは思えません。あてにしてもしょうがないです。

将来どうなるのか自分で考えていないところへ、ビジネスを売りたい人や仲介手数料を稼ぎたい人がやってきて「このビジネスは、将来こうなりますよ」と説明する。そんなときにふむふむと耳を傾けるのは、かなりの世間知らずだと思います。

I have no use whatsoever for projections or forecasts. They create an illusion of apparent precision. The more meticulous they are, the more concerned you should be. We never look at projections, but we care very much about, and look very deeply at, track records. If a company has a lousy track record, but a very bright future, we will miss the opportunity ...

I do not understand why any buyer of a business looks at a bunch of projections put together by a seller or his agent. You can almost say that it's naive to think that those projections have any utility whatsoever. We're just not interested.

If we don't have some idea ourselves of what the future is, to sit there and listen to some other guy who's trying to sell us the business or get a commission on it tell us what the future's going to be - like I say, it's very naive.
(p.52)

一見するとウォーレンのこの発言は、決定木を使った分析(過去記事)と矛盾していると感じるかもしれません。決定木の役割は不確実な将来を確率的に描くことなので、ある種の予測をしているでしょうと。しかし立ちどまって考えてみると、ウォーレンはやはり過去を重視しているように思えます。予測の中核となるのは、あくまでも過去の実績から延長線をひいた未来であって、それ以外に想定される未来は悲観的なリスクを盛り込むために使う。例えば、これまで年率10%成長しているところを、0%成長やマイナス成長といったシナリオを確率的に盛り込む。あるいは別の大きなリスクを想定してみるなどが挙げられます。

真偽のほどはウォーレンに聞いてみないとわかりませんが、決定木を使った確率的な未来の捉え方を自分なりに見直せるような気がしてきました。ちなみに、ロバート・ルービンはこのような考え方を「蓋然的思考」と呼んでいるようです(過去記事)。

2012年4月7日土曜日

まだ若ければ、私もそうしたいです(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーは順ぐりに世知を説いていくうちに、「規模の経済」の話題にすすみます。そして、その流れを受けて、どのような投資先を選ぶべきか、彼らしい忠告が登場します。

引用元はいつもながら「Poor Charlie's Almanack」の講演その2 「投資やビジネスで活かす世知入門」です。(日本語は拙訳)

長期でみれば、ビジネス自体が挙げる利益よりも大幅によい成績を株式からあげるのは、難しいものです。あるビジネスが40年間にわたって投下資本ベースで6%の利益を挙げるとして、その株をすごく割安に買えたとしても、40年間保有して得られる利益は年率6%ぐらいにおちつくでしょう。その反対に、投下資本ベースで18%の利益を20年から30年にわたってあげられる企業ならば、少しばかり高い株価で買っても大きな成功をおさめられるでしょう。

つまるところは、よいビジネスに投資することです。「勢いにのったおかげ」でそこまで達したようにみえるかもしれませんが、あらゆるスケールメリットも、よいビジネスの条件のひとつになります。[この文章の前では、規模の経済の話題がされている]

そのようなすばらしい企業に一枚加わるにはどうしたらいいか。ひとつには、企業規模がまだ小さい頃に手をつけておくやりかたがあります。例えば、サム・ウォルトンが株式を公開した時点でウォルマートを買ってしまうのです。そうしようとする人も多いですが、これは魅力的な考えですよ。わたしもまだ若ければ、ほんとうにそうするでしょう。

ただ、バークシャー・ハサウェイはもう大きすぎて、そのやりかたは通用しません。我々に見合った大きさの企業が見つからないからです。そのうえ、我々は独自のやり方をしています。ですが、規律を重んじて投資ができる人であれば、小さいうちに見つけるのは、まさしく知的なやりかただと思います。わたしがやってきたやつとは、ちょっとやりかたが違いますが。

あきらかに大きな企業から探すとなると、狙う人も多くて難しいものです。これまでのところバークシャーはなんとかやってきましたが、コカ・コーラに続くような投資が今後もできるかどうかは、わかりません。道は険しくなるばかりです。

理想を言えば、すばらしい経営者が率いるすばらしいビジネスを手に入れるべきです。我々は何度もそうしてきましたが、やはり経営は重要です。GEを率いるのがジャック・ウェルチか、それともウェスティングハウスを経営していた人かでは、まったくの大違いですよ。

Over the long term, it's hard for a stock to earn a much better return than the business which underlies it earns. If the business earns six percent on capital over forty years and you hold it for that forty years, you're not going to make much different than a six percent return - even if you originally buy it at a huge discount. Conversely, if a business earns eighteen percent on capital over twenty or thirty years, even if you pay an expensive looking price, you'll end up with one hell of a result.

So trick is getting into better businesses. And that involves all of these advantages of scale that you could consider momentum effects.

How do you get into these great companies? One method is what I'd call the method of finding them small - get 'em when they're little. For example, buy Wal-Mart when Sam Walton first goes public and so forth. And a lot of people try to do just that. And it's a very beguiling idea. If I were a young man, I might actually go into it.

But it doesn't work for Berkshire Hathaway anymore because we've got too much money. We can't find anything that fits our size parameter that way. Besides, we're set in our ways. But I regard finding them small as a perfectly intelligent approach for somebody to try with discipline. It's just not something that I've done.

Finding 'em big obviously is very hard because of the competition. So far, Berkshire's managed to do it. But can we continue to do it? What's the next Coca-Cola investment for us? Well, the answer to that is I don't know. I think it gets harder for us all the time.

And ideally - and we've done a lot of this - you get into a great business which also has a great manager because management matters. For example, it's made a hell of a difference to General Electric that Jack Welch came in instead of the guy who took over Westinghouse - one hell of a difference. So management matters, too.


私の投資する企業も、大手とは言えないところばかりです。マイクロソフトやバークシャー・ハサウェイにも投資していますが、それはポートフォリオのごく一部です。小さめの企業にはそれなりのリスクがいろいろありますが、割安に放置されやすいのと、成長性が大きいことを考慮し、判断しています。ただし、チャーリーがいうような「すばらしい経営者」は、水準はいろいろだと思いますが、なかなか難しい要件かなと感じています。

なお、チャーリーが世知のひとつとして説明する「規模の経済」は、また改めてご紹介します。

2012年4月6日金曜日

マクドナルド、いただきます(モーニッシュ・パブライ)

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ウォーレン・バフェットはチャリティーの一環として、自分とランチを楽しむ権利を売りに出していましたが、バフェットを信奉するファンド・マネージャーが、大枚はたいて手にしたことがありました。彼の名はモーニッシュ・パブライ。その対価は約5,000万円でした。

カナダの大手新聞The Globe and Mailのサイトで、彼のやりかたをとりあげた記事The case for being a copycat investorがありましたので、ご紹介します。(日本語は拙訳)

よいアイデアを盗むのは後ろめたい? アメリカのファンド・マネージャー、モーニッシュ・バブライはそうは考えない。資産を築くにはすばらしいやりかたなので、著名な投資家をもっとまねしたほうがよいと説く。そういう彼の本からアイデアを借りて、あなたも自分のポートフォリオを見直したくなるかもしれない。

パブライ氏は先日、オンタリオ州ロンドンのリチャード・アイヴィー・スクール・オブ・ビジネスで学生を相手に「他人をまねることの楽しさ」について話をした。よく知られた話だが、彼はマクドナルドが新しい店をどこに開くか手間ひまかけて調べる例をあげた。「立地のよしあしが成否につながるので、そうするだけの価値があるのです。ところが競合のバーガーキングのほうは、ずっと安上がりにすませています。そう、単にマクドナルドの向かいに店を開くだけです。ライバルが調べたおいしいところを、ただで手に入れてしまおうというわけです」。

Is purloining good ideas distasteful? U.S. fund manager Mohnish Pabrai doesn’t think so. He says it’s a great way to make money and urges people to copy notable investors more often. You might want to take a page out of his book and improve your portfolio.

Mr. Pabrai recently talked about the joys of being a copycat with students at the Ben Graham Centre for Value Investing at the Richard Ivey School of Business in London, Ont. He pointed to the case of McDonald’s, which is well known for spending a great deal of time and effort on selecting locations for new restaurants. The effort is worth it because a good spot can make the difference between success and failure. But rival Burger King has a less expensive approach. It simply puts its restaurants across the street from existing McDonald’s locations, thus getting the benefit of its rival’s research for free.


まねる場合には、情報公開時期の遅れに注意するよう触れています。

ただし、注意する点がひとつ。頻繁に売買するマネージャーは、持ち株の状況を報告してもすぐに他の株へ乗り換えてしまうことがある。その手の報告書に載っている株に飛びつくと、すでにマネージャーが手放した株を買うことになるかもしれない。

だから、他人のまねをするとしたら長期投資家をまねるべきだ。となると、バリュー投資家をまねることになるだろう。不人気の証券を買って何年でも持ち続ける人たちを、だ。

But there’s another hitch. Managers who trade frequently may have swapped into different stocks soon after they filed their list of holdings. Someone who jumps into stocks on the basis of those regulatory filings could be purchasing stocks the manager has already discarded.

For that reason, copycats should focus on investors who hold stocks for long periods. By and large, that means copying value investors ? money managers who buy out-of-favour securities and hold onto them for several years.


パブライのランチ代は高額でしたが、それゆえメディアでも取り上げられました。ファンド・マネージャーとしては名前が売れて、おそらく本人が予期したような、よい投資になったのではないでしょうか。

2012年4月4日水曜日

底値で株を売却する投資家をばかにはできない(ロバート・ルービン)

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引続き、ロバート・ルービンの『ルービン回顧録』です。この本は投資家にとっても学ぶところのある一冊ですが、特に第12章の「上げ相場の終焉をめぐって」には忠告や助言が多くみられます。どれもまっとうなものばかりで、ウォーレン・バフェットが「よく書けている」と推薦するだけのことはあります。今回も同書からの引用です。

私自身のこれまでの投資を振り返ってみると、市場というのは予想や勘や期待どおりにはいかないものだと痛感する。したがって、常に株式投資には危険がつきものだと心にとどめ、多額の投資をしないように心がけている。ゴールドマン・サックス時代の投資経験から、市場の性質を思い知らされたためでもある。しかし、1973年に市況がかなり悪かった頃、私が基礎的条件を熟知している企業の株が下落し、その長期的な経営見通しに比べてかなり割安になった。買い時だと判断し、そうした企業の株を購入したのだが、その後も株価は下落し続け、翌1974年の底値の時には購入時から50パーセントも下がっていた。

この話は、熟練した手堅い投資家にとっても、市場の底やピークを見きわめるのは難しいことを物語っている。もう少し幅広い観点から言うならば、目先の市場の動きは予測不可能なので、投資家は長期的なリスクやリターン、リスクに対するみずからの忍耐力に基づいて、資産運用を行うべきである。しかしながら、かく言う私もこのささやかな教訓を忘れ、短期的な市場の動きに関心を奪われがちである。1998年から2000年にかけてのように好調だった時期だけに目を向ければ、私はすばらしい投資実績を記録していると言える。しかし、これまでの投資判断を正直にすべて振り返ると、おそらく短期市場予測の正答率は、せいぜい五分五分であり、それ以上の判断のできる投資家はいないと思う。1973年の経験は、何事にも絶対主義は禁物だというよい警告となるだろう。それは反対思考の株式投資運用者にも言えることだ。ある方向の長期的なトレンドを目にしたときには、それが賢明な判断であるかどうか常に疑念を持つべきである。とくに1973年に私がしたように、市場全体の動きに反する判断を下す場合には、総崩れした際には長い間痛手を負うこともあると覚悟するべきである。かつてゴールドマン・サックスのパートナーだったボブ・ヌーチンがよく口にしていたように、底値で株を売却する投資家をばかにはできない。問題は現実に目の前にあるが、結果はどうなるかわからないからだ。あとから振りかえってみて初めて、最悪の事態がすぎたことがわかるものなのである。 (p.457)

2012年4月3日火曜日

私がウォール街で見てきたこと(ロバート・ルービン)

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ロバート・ルービンがゴールドマン・サックスに転職する前は、ある法律事務所に勤めていました。そこで株式公開の仕事に携わったことで、投資に興味を持つようになります。分析手法のよりどころとしたのは、ベンジャミン・グレアムの『証券分析』。今回は株式投資に対する彼の見方をご紹介します。前回と同じ『ルービン回顧録』からの引用です。

今日でも、私はこれ[ベン・グレアムのやりかた]が株に投資する唯一の賢明な方法だと考えている。企業活動全体の経済的価値を考えるときと同じように、株の経済的価値を分析すべきなのだ。製鉄所であれハイテク企業であれ、その企業が将来見込める収益に、ほかの基本的要因 - リスクやバランスシートに載らない資産など - を加味した現在の価値に相当する。長期的に見れば、株価はこの経済的価値を反映しているのだが、長い間その価値から大きく乖離することもある。投資家はときどきこの現実を見失ってしまうらしく、その結果、当然ながら予測しうる事態を招く。最新の例では、2000年と2001年にインターネット業界と通信業界の株が暴落したとき、多くの投資家が価値判断ではなく流行にしたがった結果、多大の損害をこうむった。このことと関連しているが、もうひとつ別のポイントとしてあげられるのが、最大のチャンスは往々にして時流に逆らうところにあることである。

市場のとらえ方として、グレアムとドッドのアプローチも、私のハーバード時代からの懐疑主義に合致していた。市場を眺めて、価格が市場の大方の見方を反映していない証券を見つけようとすることに、私は大きな魅力を感じた。市場は効率的だというのが、不動の学術的原則である。つまり株価は、その株に関するあらゆる既知の情報や判断を織り込んでいるというのである。この効率的市場論に付随して、長期的には誰も市場の効率に勝てないということも指摘される。しかし私がウォールストリートで見てきたことのすべてが - そして金融理論に関するもっと最近の考え方の多くが - そうではないことを物語っている。当然ながら大半の投資家は、いや、たいていの専門家でさえ、市場に勝つことはできない。しかし、よりよい分析、よりよい判断、より強い自制心を兼ね備えていれば、一部の者にはそれが可能だろう。 (p.100)

2012年4月1日日曜日

わたしなら、こう考えます(ロバート・ルービン)

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ひきつづきロバート・ルービンの話です。彼はクリントン政権時代に財務長官として名をあげましたが、その前にはゴールドマン・サックスで共同会長を務めていました。ハーバードやイェールで法学を学んでいた彼が、なぜゴールドマンで活躍するようになったのか。彼自身は哲学に興味を持ったことを大きな要因としてあげています。そういえば、バフェットやマンガー、ソロスといった著名な投資家が、哲学や数学といった論理を追究する学問、あるいは物事の本質に迫る物理学のような学問を重視しているのと通じるものがあります。

今回は、物事を分析するときのルービンのやりかたについて、前回と同じで『ルービン回顧録』から引用します。

まずは学生時代をふりかえって。

デモス教授は証明可能な確実性があるというプラトンらの哲学者を尊敬していたが、私たちに教えたのは、人の意見や解釈はつねに改訂され、さらに発展するという見解だった。教授はプラトンなど哲学者の思想を取り上げて、いかなる命題でも最終的あるいは究極的な意味で真実だと証明することは不可能である、と説き明かしていった。私たちには、分析の論理を理解するだけでなく、その体系が仮説、前提、所見に拠っている点を探し出すことが求められた。

絶対的な意味で何も証明できないという概念をいったん自分の心に取り込むと、人生をそれだけますます確率、選択、バランスで考えるようになる。証明可能な真実がない世界で、あとに残る蓋然性をいっそう精密にするためには、より多くの知識と理解を身につけるしかない。 (p.84)


次は、クリントン政権1期目の補佐官時代です。

大統領首席補佐官室で、予算案を手渡されたことがあった。私はサマーズとともにその仕事に取り組んだ。数値を丸で囲い、クエスチョンマークを走り書きし、余白におおよその見積もりを立てて書き込んだ。サマーズは、あとになって、予算数字の並んだ紙を手渡されたときの反応には二通りあるといった。ひとつは、ざっと目を通し、それを既知の事実として、そこから検討を始める方法。もうひとつは、まず数字を疑ってかかり、矛盾点を探し、数字の意味や根拠の説明を求めたり関連性を追求したりする方法。私とサマーズはともに後者の性向をもち、数字だけでなく確かだという前提そのものも見直すほうだった。 (p.393)


「既知の事実として、そこから検討を始める方法」といえば、投資家がやってしまいがちなのは、決算短信や四季報に載せられている業績予想をうのみにしてしまう例でしょう。それらの数字にひきずられるのは心理学でいうアンカリングで、その危険性をルービンは冷静にみつめています。そもそも短期的業績の変動に左右されやすいのも、直近のことばかりに目がいく我々の傾向ですね。

余談ですが、本書『ルービン回顧録』は、ウォーレン・バフェットの2003年度の推薦図書です。「株主のみなさんへ」で取り上げられています。

A 2003 book that investors can learn much from is Bull! by Maggie Mahar. Two other books I'd recommend are The Smartest Guys in the Room by Bethany McLean and Peter Elkind, and In an Uncertain World by Bob Rubin. All three are well-reported and well-written. Additionally, Jason Zweig last year did a first-class job in revising The Intelligent Investor, my favorite book on investing.

2012年3月31日土曜日

プリンストンへのふざけ半分の手紙(ロバート・ルービン)

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ルービンという名前を聞くと、クリントン政権時代の閣僚で日本経済をこてんぱんにしてくれた印象があり、これまではなんとなく近寄るきっかけがありませんでした。が、少し前にチャールズ・エリスの『ゴールドマン・サックス』を読んだところ、控えめな言動ぶりが意外で(他の歴代頭領は、ごり押し型が多いのです)、彼に対して少しばかり興味を持ち始めていました。そして別の理由もあり、めぐりめぐって『ルービン回顧録』を手にとることになりました。

今回は同書からの引用で、ちょっとした粋なやりとりです。こういったウィットを交わせる大人になりたいものです。

[ハーバード大学を]卒業後、私は四年前不合格にされたプリンストン大学の入試部長にふざけ半分の手紙を出した。「貴大学の卒業生を追跡調査しておられることと拝察いたします。他方で貴大学に合格を許されなかった学生のその後にも興味がおありではないかと存じます。このたび私は最優等とファイ・ベータ・カッパ[優等学生友愛会の会員資格]をいただき、ハーバード大学を卒業いたしましたことをお知らせしたくお手紙を差し上げました」。すると、部長から折り返し返事があった。「お手紙ありがとうございます。毎年、プリンストンでは非常に優秀な学生を何名か不合格にしなければならないと考えております。ハーバードにも、すぐれた学生が入学できるように」 (p.87)


蛇足ですが、上述の『ゴールドマン・サックス』は楽しめた本です。アツい男たちのチーム・プレーや心意気が描かれており、ひきこまれました。自分の人生やポリシーとはまったく違うので、この手の世界には無意識にあこがれているのかもしれません。

2012年3月30日金曜日

シルバーの投資でいちばんへまをやった人

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ウォーレン・バフェットに対する反論としてマーク・ファーバーの見解を以前ご紹介しましたが(過去記事)、今回はシルバー陣営からのものをご紹介します。Jim Cookという、シルバー・アナリストのエッセイREMEMBER SILVERから引用します。(日本語は拙訳)

先日、ウォーレン・バフェットがゴールドについて否定的なコメントを出したので、ウォール街の住人やワシントンの役人たちを刺激したようです。ゴールドの信奉者は怒り心頭ですよ。しかし、バフェット氏の矛先がシルバーには向いていなかったのは、なぜでしょう。それは、彼こそがシルバー投資でいちばんへまをやった張本人だったからかもしれませんな。なにせ、一時期は世界中のシルバーの供給量の37%を保有していたんですよ。1オンス6ドル平均で1.3億オンス[合計で約800億円]買ったのが、1998年の5月。ところが2006年になって1オンス7.5ドルで売ってます。もし2010年まで我慢していれば、50億ドル[4000億円]の利益がでたでしょうに。そうそう、2006年にこういってましたな。「早く買ったのですが、早く売ってしまいました。シルバーは失敗しました」

His recent negative comments on gold titillated the Wall Street and Washington establishment. Gold bugs seethed with resentment. However, Mr. Buffett didn’t mention silver in his latest barrage of opinions. That’s probably because he’s the dumbest silver investor in history. At one time he owned 37% of the worlds known silver supply. In May 1998 he purchased 130 million ounces of silver at an average price of $6.00. He sold it in 2006 for $7.50 an ounce. If he had held it until 2010 he would have made a profit of $5 billion. He commented in 2006 that “I bought early and sold early. Silver was my fault.”

シルバーでの失敗というとハント兄弟のほうが有名ですが、あちらは「投資」ではなく「投機」といったところでしょうか。

さて、ここでご紹介したかったのは、実はこの一節ではなく、同じサイトに転載されているTed Butlerの文章です。過去のものがこちらに一覧されています。テッドは、世界でいちばん信頼されているであろうシルバーのアナリストで、わたしがシルバーに投資しはじめたのも彼の文章を読んだのがきっかけでした。ネタが少ないので話題が繰り返されていますが、基本的な知識を得るには役に立つかと思います。

最近はゴールドと共にシルバーの価格も下がってきており、再び注視する時期がやってきました。

2012年3月29日木曜日

やることがありません(ウォーレン・バフェット)

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あれやこれやとじたばたしても、何もやることがない。そんなときには、ウォーレン・バフェットのこの文章がぴったりです。1992年度「株主のみなさんへ」から引用です。(日本語は拙訳)

[買うほうと比べると]株式を売るほうは状況が違いました。それはもう、さびれた村の一軒しかない宿に泊まることになった旅人のようなものです。部屋にはテレビもなく、退屈な夜が待っていました。と、そこでベッド脇のテーブルの上に置かれた1冊の本に目がとまりました。題名をみると『寒村での楽しみ方』。これはもしぞやと表紙をめくると、そこに書いてあるのは、ほんの一言だけでした。「今まさに、あなたがやっていること」

Selling, however, is a different story. There, our pace of activity resembles that forced upon a traveler who found himself stuck in tiny Podunk's only hotel. With no T.V. in his room, he faced an evening of boredom. But his spirits soared when he spied a book on the night table entitled "Things to do in Podunk." Opening it, he found just a single sentence: "You're doing it."

1990年代前半のS&P500のチャートを以下に挙げました。たしかに1992年は騰落幅が小さいですね。11月の大統領選をはさんで一本調子で上昇しているのはお約束でしょうか。そういえば、今年も大統領選の年ですね。


2012年3月28日水曜日

4兆円の始まり(ウォーレン・バフェット)

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3/26付けのForbesの記事Warren Buffett's $50 Billion Decisionは、パートナーシップを設立した頃の思い出をウォーレン・バフェット自身が書いたものです。アリス・シュローダーによる伝記『スノーボール』でも知られた内容ですが、微妙にニュアンスが異なっているあたりが含みを感じさせます。以下に一部を引用します。(日本語は拙訳)

大学を卒業した時[1950年]の資産は9,800ドル[現在価値で約650万円]でしたが、1955年の末には127,000ドル[8,000万円]に増えていました。ですから、[ニューヨークを離れて]オマハに戻って、大学で授業をとったり、読み物にふけったり、そんな引退生活をしようと考えていたのです。1年間で12,000ドルもあればやっていけますので、127,000ドルの資産からすれば楽勝だと思いました。妻には「複利で増えるので、いずれ金持ちになれるよ」と説明しました。

(中略)

当初は、パートナーシップをはじめたり、仕事をやるつもりはありませんでした。自分で運用する分には何も心配なかったからです。他人に株を売ってまわる仕事はもうごめんでした。ところがひょんなことから、親戚も含めた7人の知り合いが相談してきました。株の商売をしていたのだから、自分たちの資金をどう運用したらよいか教えてほしい、と。そこで私は答えました。「株を売るのはもうやりませんが、ベン・グレアムとジェリー・ニューマンがやっていたようなパートナーシップだったら作れます。私も入れておきたければ、それでもかまいません」。そういうわけで、義理の父、大学時代のルームメイトとその母親、おばのアリス、私の妹、義理のきょうだい、私の弁護士の7名が判をつきました。まったくの偶然でしたが、それがはじまりだったのです。

(中略)

特に参加を募ったわけではないですが、面識のない人からも小切手が送られてくるようになりました。その頃、ニューヨークのグレアム=ニューマン・パートナーシップは解散中でしたが、パートナーのひとりにヴァーモント州のある大学で学長をつとめるホーマー・ドッジがいました。彼はベンにたずねました。「私の資金はいったいどうしたらよいかね」。ベンいわく「以前、うちで働いていた若いのがいるのですが..」。そんなわけでドッジはオマハまで車でやってきて、借家暮らしだった私の家をたずねてくれました。当時の私は25歳でしたが、みためは17歳といったところ、ふるまいときたら12歳でしょうか。ドッジは切り出しました。「で、きみは何をやっているのですか」私は答えました。「家族と暮らしながら、ここで仕事をしています。あなたの分もいっしょにやりますよ」

The thing is, when I got out of college, I had $9,800, but by the end of 1955, I was up to $127,000. I thought, I’ll go back to Omaha, take some college classes, and read a lot?I was going to retire! I figured we could live on $12,000 a year, and off my $127,000 asset base, I could easily make that. I told my wife, “Compound interest guarantees I’m going to get rich.”

I had no plans to start a partnership, or even have a job. I had no worries as long as I could operate on my own. I certainly did not want to sell securities to other people again. But by pure accident, seven people, including a few of my relatives, said to me, “You used to sell stocks, and we want you to tell us what to do with our money.” I replied, “I’m not going to do that again, but I’ll form a partnership like Ben and Jerry had, and if you want to join me, you can.” My father-in-law, my college roommate, his mother, my aunt Alice, my sister, my brother-in-law, and my lawyer all signed on. I also had my hundred dollars. That was the beginning?totally accidental.

I did no solicitation, but more checks began coming from people I didn’t know. Back in New York, Graham-Newman was being liquidated. There was a college president up in Vermont, Homer Dodge, who had been invested with Graham, and he asked, “Ben, what should I do with my money?” Ben said, “Well, there’s this kid who used to work for me.…” So Dodge drove out to Omaha, to this rented house I lived in. I was 25, looked about 17, and acted like 12. He said, “What are you doing?” I said, “Here’s what I’m doing with my family, and I’ll do it with you.”

2012年3月27日火曜日

ガーガー鳴くアヒル(ウォーレン・バフェット)

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まずは、下に挙げたS&P500の1990年代から現在までのチャートをごらんください。1997年以降にご注目です。









2008-2009年の暴落では、1997年初の株価水準まで戻しました。1997年といえばアメリカではITバブル真っ最中だったころですね。朝にTVをつけてNHKのニュースをみると、毎日のように新規上場企業のCEOがNYSEの鐘をついていたのを思い出します。さて、今回はそんな時代のウォーレン・バフェットによる1997年度「株主のみなさんへ」から引用です。

1997年がそうだったように、株価が上がっているときは誰でも大きなリターンを達成できるものです。上昇相場で避けなければならないのは、にわか雨がざっと降った後で「漕いで進むのがずいぶんうまくなったものだ」と考えながら、自慢げに鳴きたてて毛づくろいをするアヒルのようになってしまうことです。そうではなくて、どしゃ降りの後に他の仲間と比べて、池のどのあたりに留まっていられたかを考えるアヒルのほうが正しいでしょう。

Any investor can chalk up large returns when stocks soar, as they did in 1997. In a bull market, one must avoid the error of the preening duck that quacks boastfully after a torrential rainstorm, thinking that its paddling skills have caused it to rise in the world. A right-thinking duck would instead compare its position after the downpour to that of the other ducks on the pond.

おまけのチャートです。1997年以来のS&P500とバークシャー・ハサウェイ(BRK.A)の株価を比較したものです。









二度のどしゃ降りの中、S&P500は行きつ戻りつですが、バークシャーはずっと先まで前進していますね。

2012年3月26日月曜日

100年の大計が進められない?(信越化学工業金川会長)

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この週末は図書館で日経新聞の縮刷版を読んできました。新聞をとっていないので(過去記事)、情報を集めたり関連付けたりといった点で、新聞を読んでいる方には水をあけられていると感じています。また、年末年始にひととおり目を通した四季報からもあまりアイデアが得られず(過去記事)、最近は八方ふさがり気味です。そんなわけで初心にかえってみたところですが、半月分の紙面にざっと目を通したところで、都合のいい記事が待っているわけはないですね。

さて、今回ご紹介するのは1/5の日経新聞9面から、信越化学工業の金川会長の言葉です。「経営者」に対する辛口の批評ですが、投資家の視点で語ってくれています。

「市場が短期的な収益を求めるので『100年の大計』が進められないという経営者もいるが、ごまかしだと思う。長期的な成果は毎日毎日の積み重ねだ。今がちゃんとできない経営者は先もだめだし、私が投資家でも信用しない」

「研究開発投資などはしなければ先がないのでする。株主に説明して『今は負担だが、将来のためだ』と分かってもらえればいい。それにはまず利益という実績を示す必要がある。不信の言い訳に長期的な戦略を使ってはならない」

2012年3月23日金曜日

投資における最も価値ある道具(セス・クラーマン)

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株価が上がってしまって割安な銘柄があまり見つからなくなったら、ヘッジファンド・マネージャーのセス・クラーマンの言葉はどうでしょうか。見た目もしゃべりも温厚な雰囲気の彼ですが、投資のほうは凄腕です。今回の引用は、パートナーに向けた2004年度のレター(の転載)からです。

全額を投資せずに現金を大量に待機させておくのはギャンブルだ、という人がいます。市場に参加する時期をみはからっているのだろう、と。ですが、投資するかしないかを決めること自体、投資上の重要な要因だったはずではないでしょうか。「投資とは、あたりだろうがはずれだろうが、とにかく何か買うことだ」なんて、一体どこで決まったのでしょう。「今は投資しない」と言えない人は、投資における最も価値ある道具を投げ出しているわけです。ウォーレン・バフェットの古くからのパートナーであるチャーリー・マンガーは、こう助言してくれています。「将来得られるキャッシュフローを現在価値に割り引いて、それが買値以上のものをさがすのです。そして初歩的ですが、自分が有利なときだけ動くこと。勝率を見定め、勝ち目があるときだけ勝負に出るように自分を律する、これが大切です」。

Some argue that holding significant cash is gambling, that being less than fully invested is akin to market timing. But isn’t a yes or no decision the crucial one in investing? Where does it say that investing means always buying something, even the best of a bad lot? An investor who can’t or won’t say no forgoes perhaps the most valuable tool available to investors. Charlie Munger, Warren Buffett’s long-time partner, has counseled investors, “Look for more value in terms of discounted future cash flow than you’re paying for. Move only when you have an advantage. It’s very basic. You have to understand the odds and have the discipline to bet only when the odds are in your favor.

2012年3月22日木曜日

ひきつづき慎重です(ボブ・ロドリゲス)

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慎重派ファンド・マネージャーのボブ・ロドリゲスによる講演「注意!この先危険」をご紹介したのは、1ヶ月ほど前です。それなりに注目を集めたのか、最近になって同氏に対するインタビューがありましたので引用します。引用元の記事はBob Rodriguez on the Dangers in Today's Marketsです。(日本語は拙訳)

(質問者)
投資家に対する先日の講演では、株式や債券への投資では注意を忘れず、また辛抱するよう促していましたね。ある程度の安全余裕をみたうえで、どの資産クラスが現時点では好ましい価格だとお考えですか。

(ボブ・ロドリゲス)
一般的な投資ファンドということでしたら、株式にはわずかに魅力が残っています。講演でもとりあげたのですが、この半世紀でもっとも長くPERが減少し続けており、株式市場は魅力的だとみる人が多くなっています。この50-70年間の平均PERは15-16倍でしたが、現在は12-13倍です。だから安いと考えるのですね。ですが、過去のPERと今のものを比べるのは適切でないと思います。債務面において、経済状況が根本的に大きく変化したからです。

過去を振り返ると、1929年の大恐慌の始まりには、我が国のGDP債務比率は16%でした。その前の11年間は黒字です。第二次世界大戦初期の1942年には、その前の12年間は不況に苦しみましたが、41%でした。その上、当時は簿外債務は全然ありませんでした。

現在の状況は、当時のものとはかけ離れています。ですから、単純にPERを比べるのは適切だとは思えません。企業の成長見通しが低く、利益率は天井をつけており、ビジネス上の変化も激しい。そんな時代ですから、PERは低い水準で扱うのが適切だと思います。

(Q)
You have advised investors to be patient and cautious with respect to equities and fixed income. Are there any asset classes that you believe are attractively priced now, sufficient to provide the margin of safety that you mentioned at the beginning of “Caution: Danger Ahead?”

(A)
For what I would call a generalized investment fund, I view the equity markets as marginally attractive. As I tried to explain in the speech, we have just gone through the longest decline in P/E ratios in over half a century. Many are saying the stock market is attractive, because over the last 50 to 70 years the average P/E was 15 to 16 versus 12 to 13 now; therefore we have a discount. I would argue that to compare historical P/E ratios over this period is inappropriate, given the fundamental structures of our system are so dramatically different in terms of leverage.

I try to remind people that at the beginning of the depression in 1929, US debt-to-GDP was 16% after 11 straight years of surplus. And at the beginning of 1942, World War II, after fighting depression for 12 years, we were at 41% debt-to-GDP, and we didn't have any off-balance-sheet entitlement liabilities.

What we are looking at today is so far removed from any of these periods that I don't think it is an appropriate comparison. If you have a company with slow growth expectations, peak margins and business volatility, what type of P/E is given it? Typically, it is a lower P/E.

2012年3月21日水曜日

グランド・キャニオンをわたる(ウォーレン・バフェット)

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今回は、ベン・グレアムの言葉「Margin of Safety(安全余裕)」について。ウォーレン・バフェットは、この言葉をたびたび強調してきましたが、ここで彼による例え話をどうぞ。おなじみ『Seeking Wisdom』からの孫引きで、1997年開催のバークシャー・ハサウェイの株主総会での発言です。(日本語は拙訳)

ビジネスをきちんと理解しているのでしたら、つまり未来を完璧に見通せるということですが、[株式を買う際に]安全余裕はほとんどとらなくてもよいでしょう。反対に、ビジネスに関するさまざまな出来事がおきたり、不確実なことが多かったり、ビジネスが脆弱になっていたり、変化する可能性が高くなるほど、安全余裕を多くとらなければなりません。

車両総重量が4.4トンのトラックにのって活荷重が4.5トンの橋をわたる場合、橋の高さが地面から15cmぐらいだったら、まあ安心してわたれるでしょう。しかし、グランド・キャニオンにかかる橋だったら、もっと余裕がほしくなりますよね。たとえば2トンぐらいのトラックにしておくのではないでしょうか。ですから、どれだけ安全余裕が必要かは、そこに潜んでいるリスクに応じて決まってくるのです。

If you understand a business ? if you can see its future perfectly ? then, obviously, you need very little in the way of margin of safety. Conversely, the more things can happen, the more uncertainty there is, the more vulnerable the business is or the greater the possibility of change, the larger margin of safety you require...

If you're driving a 9,800 pound truck across a bridge that says it holds 10,000 pounds and the bridge is only about six inches above the ground, then you may feel OK. However, if the bridge is over the Grand Canyon, then you may want a little larger margin of safety. And, therefore, you may only drive a 4,000 pound truck across. So it depends on the nature of the underlying risk.

2012年3月20日火曜日

(答え)男の子が多く生まれる病院はどちらか?; 究極の鍛錬

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まずは、前回とりあげた問題の回答になります。

ここで驚かされるのは、確率論のロジックに学生があまり注意を払っていないことだ。男の子の割合が60パーセントを超える日数は、小さな病院の方が多い可能性が高いと考えられる。大きな病院のほうがサンプルが多く、平均からずれる可能性が低いからだ。 (p.105)

例えば、こちらのサイトの図8-1 標準正規母集団下での標本平均値の確率変動(6.5万回の実験)がわかりやすいかと思います。ちなみに私の回答ですが、反射的に「3.ほぼ同じ」を選んでしまいました。

自分の落とし穴に気づいたのはもちろんよかったことですが、この問題をはずして小さな悟りがひらけたような気がします。それは「問題に直面したら、自分なりに解決策を検討してみること」。自分で答えを考えずに回答を読んでいたら、この初歩的な落とし穴に気づかないまま、進んでいたと思います。あらゆる問題を検討する時間はないのでどれかを選ぶ必要がありますが、投資に立ち返ってみると、自分なりにチャンスがあると考えた銘柄に対しては、きちんと評価して文書化してみる、となります。

頭の中で漫然と評価してすぐに興味を失うのではなく、自分なりの枠組みを用意して、自分なりに評価する。このような作業をこなすことで、あとになって落とし穴や盲点に気づいたり、足りない部分を補うことができるのではないでしょうか。

そういえば、以前読んだ本『究極の鍛錬』では、鍛錬方法を以下のように定義していました。

1.実績向上のため、特別に考案されている。
例えば、改善が必要な要素を鋭く限定し、鍛え上げていく。
2.何度も繰り返すことができる。
3.結果に関し、継続的にフィードバックを受けることができる。
4.精神的にはとてもつらい。
5.あまりおもしろくない。

4番目とか5番目あたりに「究極」の秘密がかくされているような気がしますね。

2012年3月19日月曜日

(問題)男の子が多く生まれる病院はどちらか?

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最近読んだ本『ギャンブラーの数学』では、ギャンブルにまつわる確率や心理が取り上げられています。数学者の書いた本なのですが、個人的には歴史上の逸話のほうがおもしろく、ドストエフスキーの伝記あたりを読んでみたくなりました。

さて、確率についての基礎的な考え方はわかったつもりでいたのですが、本書を読んで反省しました。文中で挙げられていた次の問題で、答えをはずしてしまったのです。

高校レベルの確率の知識があれば正解できる簡単な問題です。解答は次回にご紹介します。

赤ん坊の50パーセントが男の子で、ある町の大きな病院では1日に約45人の赤ん坊が生まれ、小さな病院では1日に約15人の赤ん坊が生まれる。それぞれの病院で1年にわたり、新生児の60パーセント以上が男の子だった日数を記録した。では問題。
その日数が多かったのはどちらの病院か?

1.大きな病院
2.小さな病院
3.ほぼ同じ

(p.104)

2012年3月17日土曜日

誤判断の心理学(8)羨望・嫉妬する傾向(チャーリー・マンガー)

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今回の傾向は、誰にでもわかりやすいでしょう。ねたみ、そねみ、うらやみなど、微妙な意味の違いはありますが、その手の感情です。(日本語は拙訳)

誤判断の心理学
The Psychology of Human Misjudgment

(その8)羨望・嫉妬する傾向
Eight: Envy/Jealousy Tendency

ときに不足してしまう食料を摂取するように進化した種は、最初に食料をみつけるとそれを得ようと躍起になってしまいがちです。また同じ種の自分以外の者が食料を持っているときにも、いさかいが始まりやすいものです。人の本性に深く根ざしている「羨望・嫉妬する傾向」は、進化をたどると、ここに始まるものだったと思われます。

A member of a species designed through evolutionary process to want often-scarce food is going to be driven strongly toward getting food when it first sees food. And this is going to occur often and tend to create some conflict when the food is seen in the possession of another member of the same species. This is probably the evolutionary origin of the envy/jealousy Tendency that lies so deep in human nature.


羨望や嫉妬は、現代社会でもひどくなっています。大学界を例にとると、たとえば資産運用の担当者や外科の教授が標準的な年俸の何倍もとっているとなれば、おかしな方向に進んでしまうのです。もっと極端なのが、投資銀行や法律事務所のたぐいです。大手の法律事務所あたりでは、羨望や嫉妬からくる混乱を避けて、個人の貢献度合いに差があってもシニアパートナーには一律同じ報酬をだしてきたものです。ウォーレン・バフェットと共に何十年も世間をながめてきましたが、そういえば彼はうまいことを繰り返していました。「世界を動かすのは傲慢かと思いましたが、そうではなくて、他をうらやむ力でした」

And envy/jealousy is also extreme in modern life. For instance, university communities often go bananas when some university employee in money management, or some professor in surgery, gets annual compensation in multiples of the standard professorial salary. And in modern investment banks, law firms, etc., the envy/jealousy effects are usually more extreme than they are in university faculties. Many big law firms, fearing disorder from envy/jealousy, have long treated all senior partners alike in compensation, no matter how different their contributions to firm welfare. As I have shared the observation of life with Warren Buffett over decades, I have heard him wisely say on several occasions: “It is not greed that drives the world, but envy.”


投資家は、この傾向に対して二重に注意する必要があると思います。まずは自分自身について。他人や市場の成績に追いつこうと、あせって自分の意思決定を誤ってしまうリスクが考えられます。もうひとつは投資先の経営者について。同業他社、社会動向、公私にわたるつきあいといったものが、経営者の心をゆさぶります。その経営戦略や設備投資は、本当に会社のためになっているのですか? ウォーレンが言うように、どちらに向かおうとしても企業を動かしているのは、他をうらやむ力なのかもしれませんね。

2012年3月16日金曜日

反射的に、にょきにょきと枝をのばす(チャーリー・マンガー)

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以前に取り上げましたが、チャーリー・マンガーが筆頭に挙げるメンタル・モデルは「順列と組み合わせ」でした。ただし、それを使うのが目的ではなく、狙いは決定木(Decision Tree)を描いて将来の期待値を求めることでしょう。今回もおなじみの「Poor Charlie's Almanack」の続きを引用します。過去記事では、前段にあたる文章をご紹介しています(「世の中の働きと驚くほど一致する」「慣れるように習え、そして慣れよ」)。(日本語は拙訳)

十分というには程遠いですが、多くの教育機関はこのこと[順列や組み合わせの重要性]を認識しています。例えばハーバードのビジネス・スクールでは、初年度のクラスの結束を強める上で、彼らが言うところの「決定木理論」が大きな役割を果たしています。何をやるかと言うと、高校で習う代数を実生活上の問題に適用してみる、これだけです。学生にはこれが好評で、高校時代の数学がふだんの暮らしに役立つんだと感激するわけです。

バフェットとはずっといっしょに働いてきましたが、彼のような同僚がいることの強みはいくつかあって、彼は何かを考えはじめると頭の中で反射的に、順列や組み合わせのような初歩的な計算を行って決定木を作ってしまうのも、そのひとつです。

Many educational institutions ? although not nearly enough ? have realized this. At Harvard Business School, the great quantitative thing that bonds the first-year class together is what they call “decision tree theory.” All they do is take high school algebra and apply it to real life problems. And the students love it. They're amazed to find that high school algebra works in life.

One of the advantages of a fellow like Buffett, whom I've worked with all these years, is that he automatically thinks in terms of decision trees and the elementary math of permutations and combinations.


個人的な話ですが、サイコロやトランプといった抽象度の高い事象には、順列や組み合わせといったモデルは、わりと違和感なく適用できるものです。一方、企業の見通しとなると想像力も洞察力も足りず、頭に思い浮かぶのは、ぱっとしないモデルばかりです。実践の回数を意識的に増やさないと、力が伸びないのでしょうね。

2012年3月15日木曜日

最高のリターンをあげているビジネス(ウォーレン・バフェット)

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今回の話題は「最高のリターンを挙げているビジネス」です。早速ですが、ウォーレン・バフェットによる1987年度「株主のみなさんへ」から引用します。

私どもの経験では、最高のリターンを挙げているビジネスは、5年前10年前とよく似たことを今も続けている企業ばかりです。むろん、経営者がそれに甘んじてよいとは言っておりません。ビジネスには、サービス、製品群、製造技術などを改善する機会がいつでもあるので、それらは取り組むべきでしょう。ですが、度々大きな変化にさらされるビジネスは、大失敗をするリスクも大きくなります。その上、激しく動き続ける、いわば「経済的な」地域に、堅固鉄壁なフランチャイズを築くのは難しいときたものです。そのてのフランチャイズこそ、高いリターンをあげ続けるための鍵なのですが。

Experience, however, indicates that the best business returns are usually achieved by companies that are doing something quite similar today to what they were doing five or ten years ago. That is no argument for managerial complacency. Businesses always have opportunities to improve service, product lines, manufacturing techniques, and the like, and obviously these opportunities should be seized. But a business that constantly encounters major change also encounters many chances for major error. Furthermore, economic terrain that is forever shifting violently is ground on which it is difficult to build a fortress-like business franchise. Such a franchise is usually the key to sustained high returns.


ウォーレンの「5年前10年前云々」はトートロジー的に聞こえますが、別の言い方をすれば「製品やサービスの寿命が長い」ということだと思います。そこを足場に、何らかの強みをいかしてMoatを築く。ウォーレンやチャーリー・マンガーが好むビジネスの姿です。

そういえば、「製品寿命が長い」という戦略は、マニーの社長が強調していたのを思い出します(例えば第51期決算説明会資料のPDFファイルp.18)。同社の株価は最近の上昇相場には追いつけていませんが、間違いなく注目に値する企業のひとつです。

ウォーレンの文章でもうひとつ重要な点が、赤字で示した「度々大きな変化にさらされるビジネスは、大失敗をするリスクも大きくなる」。さりげなく確率論的な表現ですが、ウォーレンもチャーリーも数学好きですので、こういう思考は自然に浮かび上がるのでしょう。

2012年3月14日水曜日

ブラック・マンデー前夜(ウォーレン・バフェット)

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1987年の株価大暴落は10月19日ブラック・マンデーで有名です。1日の下落率が22%、日経平均10,000円の感覚では7,800円まで下がることになります。ウォーレン・バフェットにとっては重要な年で、この下落がコカ・コーラ社に投資するきっかけとなりました。今回は、ウォーレンの「株主へのみなさんへ」から数字を拾い、ブラック・マンデー前のバークシャー・ハサウェイの動きをまとめてみました。

まずは市場の動きとして、ダウ工業平均のチャートを載せました。暴落前の2年間は株価が大きく上昇し、ざっと2倍になっています。








一方のウォーレンです。「1987年の春には主要銘柄を残して他の株式は処分した」とどこかで読んだ記憶があり、そのときには「身を引くのが上手だな」と感じていたのですが、今回調べてみると若干事情が異なりました。どうやらウォーレンが1987年に売却した普通株はそれほどではなく、大半は手つかずのままだったようです。「永久保有銘柄」と宣言して保有し続けたABC、GEICO、ワシントン・ポストが、株式ポートフォリオの大半を占めていたからです。一方、その他の企業は前年の1986年までにはあらかた処分し、保有比率が小さくなっていました。








この傾向から得た、個人的な教訓は次の3つです。

1.真に価値ある企業を見つけ、機会を見て集中投資する。
2.株価が大きく上昇すれば、継続保有に値しない企業の株式は処分する。
3.機会の高まりとともに、それなりの余裕資金を準備する。

日本市場はまだ息を吹き返したばかりです。この観察が何かの役に立つのは、ずいぶん先になりそうです。

なお、上の図には挙げていませんが、優先株としては1987年に「問題児」ソロモン・ブラザーズに7億ドルを投資しています。

2012年3月13日火曜日

辛抱できなくて、何かしたくなったときには(チャーリー・マンガー)

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2000年に開催されたWesco年次総会でのチャーリー・マンガーの発言を引用します。おなじみ「Seeking Wisdom」からの孫引きです。(日本語は拙訳)

我々はより柔軟になりましたし、単にいろいろやっているというだけのアホなことをしでかさないように、ある種の原則を身につけました。じっと辛抱していられなくて何かしたくなれば、それこそやらない、という原則です。

We've got great flexibility and a certain discipline in terms of not doing some foolish thing just to be active - discipline in avoiding just doing any damn thing just because you can't stand inactivity. (p.100)


発言の時期は、ちょうどアメリカでITバブルが峠を越した頃です。この発言の文脈が想像できます。

余談ですが、当時のナスダック指数は4,000-5,000あたりで、今は3,000弱です。ダウ平均は逆に上昇しています。一方の日経平均は当時にピーク20,000円をつけて、現在は10,000円です。

2012年3月12日月曜日

みじめになれる方法、教えます(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーは1986年に、自分の息子も通う高校Harvard Schoolの卒業式で祝辞を述べることになりました。一流校といっても、しょせんは高校生です。どれだけまじめに話をきくのだろうか、とチャーリーは考えたことでしょう。というのは個人的な邪推に過ぎませんが、実際の祝辞は彼らしいスタイルと内容に満ちており、ヤコビも思わずにやりとする傑作になりました。そうです、逆からやったのです(過去記事「逆だ、いつでも逆からやるんだ」)。幸せな大人になる方法ではなく、不幸な大人になる方法を説いたのです。

今回はそのうちの一部を引用します。高校卒業生というよりも、大人によく効く処方です。出典はおなじみの「Poor Charlie's Almanack」です。

みじめになるための私からの二番目の処方は、何かを学ぶにはできるかぎり自分が経験したことから学びとること。存命か故人かを問わず、他人の成功や失敗から間接的には、なるべく学ばないようにしてください。そうすれば効き目抜群、並み以下のことしか達成できず、みじめになれること間違いなしです。

My second prescription for misery is to learn everything you possibly can from your own experience, minimizing what you learn vicariously from the good and bad experience of others, living and dead. This prescription is a sure-shot producer of misery and second-rate achievement.


なお、Harvard SchoolはL.A.にあるプレップ・スクールで、ハーバード大学とは異なるものです。現在では女子校と合併し、Harvard-Westlake Schoolとなっています。2010年のForbesの記事America's Best Prep Schoolsによれば、全米で12位にランクされています。

2012年3月10日土曜日

マーク・ファーバー対ウォーレン・バフェット

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マーク・ファーバーは逆張りで有名な投資家です。見た目がちょっとこわいおじさんですが、切れ味のよい論理的な主張で人気があります。ジム・ロジャーズと同じように、ここ何年かは商品強気を説いてきました。今のところは当たってますね。

先日ご紹介したバークシャー・ハサウェイの「株主のみなさんへ」では、ウォーレン・バフェットは彼らしい表現でゴールドに対する懐疑的な評価を展開していました。今回ご紹介するのは、マーク・ファーバーによる逆の見解です。引用元の記事はBuy Gold “Right Away” Says Marc Faberです。(日本語は拙訳)

最近になってウォーレン・バフェットが、資産としてのゴールドを否定的にみる見解を表明したが、いうまでもないがファーバーは強く反対している。ゴールドを保有していない投資家は大きなリスクに直面している。ファーバーは幾度もそう述べてきた。債務不履行とか、G7各国の中央銀行が協調して自国通貨を減価させるようなこともありうる。それらのリスクはまだ消えていない、と彼は確信している。

ファーバーは言う。「ゴールドをぜんぜん保有していない?私なら今すぐ買い始めますよ。ただし、値段は下がるかもしれないのをお忘れなく」

Without saying so, directly, Faber disagrees strongly with Warren Buffett’s recent and controversial negative assessment of gold as an asset. Faber has stated on numerous occasions that investors who own no gold take on enormous risk, including debt defaults and/or currency devaluations, as central banks of the G-7 seek to simultaneously devalue its respective currencies. He believes those risks remain alive and well.

“If you don’t own any gold, I would start buying some right away, keeping in mind that it could go down,” states Faber.


こちらは、ゴールドの現在の価格水準についての見解です。

ゴールドがバブルかどうか議論されているが、ファーバーはそのような説は抱いていない。ゴールドにはバブルの兆候がみられない、と彼は何度も言ってきた。ゴールドを保有している投資家はほとんどいないのだから、「ナスダックや不動産に投資すれば金持ちになれると言われたけれど、今回もそれと同じだ」というような雑音は気にしないように、とも。

「ゴールドはバブルではない。まだバブルじゃなかった1973年には、40%も調整したのだ」とファーバーは言う。200ドルの記録的な水準をつけたあとに100ドル近くさがったときの、否定的だった見方を振り返った。

As far as the debate whether gold is in a bubble, Faber doesn’t hold to that thesis. He, on several occasions, has said the signs of a bubble in the gold market aren’t there. So few investors hold any gold, never mind raving about it as a road to riches, as was the case of the Nasdaq and real estate.

"No, gold is not in a bubble. It wasn’t in a bubble in 1973, either, but it still corrected by 40% then," says Faber, referring to the negative sentiment at that time in the gold market after the price sank to nearly $100, from a record high of $200.


2000年前半には、ウォーレンもシルバーを大量に買い集めていました。価格が大きく上昇する前に処分してしまいましたが、商品の動向は引き続き監視していると思います。単なる予感にすぎないのですが、ウォーレンは今後のゴールド・バブル(とその後の急落)を想定し、警告の意味を含めてあのような文章を書いたのかもしれません。

2012年3月9日金曜日

もうかってますか?(ベン・グレアム)

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このところは日本の株式市場が好調ですね。そんなときには、この引用をどうぞ。ベンジャミン・グレアムのThe Intelligent Investor第8章からです。ちなみに、この章はウォーレン・バフェットも目からうろこが落ちたやつです(過去記事「2011年株主のみなさんへ」)。手元に翻訳版がないので、日本語は拙訳です。

真剣な投資家は日々や月々の株価がどう動いたからといって、もうかったとか損したとは、思い込んだりしないものです。

A serious investor is not likely to believe that the day-to-day or even month-to-month fluctuations of the stock market make him richer or poorer.

2012年3月8日木曜日

バークシャー・ハサウェイの夜明け

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個人的な思い込みですが、2008年以来の日本の株式相場の低迷は、1970年代のアメリカのものと似たところがあります。1973年と1974年にはS&P500指数も大きく落ち込み、-14.8%と-26.4%の減少でした(配当込み)。ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイも同様に純資産が伸び悩みましたが、その後の上昇ぶりは相当なものです。1975年からの4年間のゲインは、21.9%, 59.3%, 31.9%, 24.0%です。今回はウォーレンによる1978年の「株主のみなさんへ」からの引用で、1970年代中盤以降にウォーレンがとっていた投資姿勢です。(日本語は拙訳)

ご参考までに、当時のアメリカ株式市場の動きとしてS&P500のチャートを文末に載せています。ウォーレンの文章を読んでから、ごらんになってください。

ここで打ち明けてしまいますが、保険部門で行っている株式投資については、すごく楽観的にみています。もちろん、無条件に株に入れ込んでしまうわけではありません。状況によっては、保険屋が普通株へ投資するのはほとんど意味がないときもあります。

今はわくわくしながら、保険部門の純資産の大部分を株式投資へ向けています。ただし、投資対象は次の条件を満たすものに限っています。私どもがビジネスを理解しており、長期的な見通しが明るく、誠実でいて有能な人が経営しており、そしてとても魅力的な値段がつけられている場合です。最初の3つの条件を満たす投資候補は若干は見つかるものですが、最後の条件がそろわずに投資に踏み切れないことはよくあります。例えば、1971年にはバークシャーの保険部門における普通株投資の資産規模は、簿価ベースで10.7百万ドル[現在価値で約58億円。以下同様]、時価評価額では11.7百万ドル[63億円]でした。素晴らしい企業はあったのですが、株価のほうはほとんど興味を持てませんでした。(書かずにいられないので書いてしまいますが、年金基金の[資産運用]マネージャーは、1971年当時には純資産の122%を株式へ投資していました。高値での買い物だったので、十分には買えなかったようです。一方、株価が底値をつけた後の1974年には、株への投資比率は21%と、記録的な低水準にとどまりました)

この数年間、われわれの歩みは変わりました。1975年末に保険部門が保有していた普通株は、時価では39.3百万ドル[160億円]、簿価ベースもちょうど同じです。それが1978年末の株式(転換優先株含む)は、簿価ベースで129.1百万ドル[520億円]、時価で216.5百万ドル[870億円]に増えました。普通株の売却益は税引前で24.7百万ドル[100億円]でしたので、この3年間での株式投資からの利益は、含み益を合わせると112百万ドル[450億円]になります。同期間のダウ平均は852から805ポイントへ下がりました。バリュー株の投資家にとっては最上の時期でした。

証券市場では競売によって価格が提示されるので、まさしくずば抜けた企業に対して、ぱっとしないビジネスを取引相手から買うときよりも、大幅に割り引かれた値段がつくことがあります。私どもはそのような機会を探し続け、保険部門の株式ポートフォリオに組み入れていきます。

(訳注)1ドル=100円で計算しました。

We confess considerable optimism regarding our insurance equity investments. Of course, our enthusiasm for stocks is not unconditional. Under some circumstances, common stock investments by insurers make very little sense.

We get excited enough to commit a big percentage of insurance company net worth to equities only when we find (1) businesses we can understand, (2) with favorable long-term prospects, (3) operated by honest and competent people, and (4) priced very attractively. We usually can identify a small number of potential investments meeting requirements (1), (2) and (3), but (4) often prevents action. For example, in 1971 our total common stock position at Berkshire's insurance subsidiaries amounted to only $10.7 million at cost, and $11.7 million at market. There were equities of identifiably excellent companies available - but very few at interesting prices. (An irresistible footnote: in 1971, pension fund managers invested a record 122% of net funds available in equities - at full prices they couldn't buy enough of them. In 1974, after the bottom had fallen out, they committed a then record low of 21% to stocks.)

The past few years have been a different story for us. At the end of 1975 our insurance subsidiaries held common equities with a market value exactly equal to cost of $39.3 million. At the end of 1978 this position had been increased to equities (including a convertible preferred) with a cost of $129.1 million and a market value of $216.5 million. During the intervening three years we also had realized pre-tax gains from common equities of approximately $24.7 million. Therefore, our overall unrealized and realized pre-tax gains in equities for the three year period came to approximately $112 million. During this same interval the Dow-Jones Industrial Average declined from 852 to 805. It was a marvelous period for the value-oriented equity
buyer.

We continue to find for our insurance portfolios small portions of really outstanding businesses that are available, through the auction pricing mechanism of security markets, at prices dramatically cheaper than the valuations inferior businesses command on negotiated sales.

1975年末のバークシャーには株式の含み益がなかったとは、なんとなく勇気付けられるものです。といっても、その後に大きなゲインをあげたのは、ワシントン・ポストとGEICO。どちらもバークシャー躍進の中心銘柄です。ただし、両社ともウォーレンが経営判断に関わるようになっていくので、ふつうの個人投資家とは、若干趣きが違いますね。

最後になりましたが、S&P500のチャート(1970年代)はこちらです。


2012年3月7日水曜日

「フランチャイズ」と「ビジネス」の違い(ウォーレン・バフェット)

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ウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーは、投資候補の企業がMoat(経済的な堀)を持っているかどうかを重要視しています。Moatとはあいまいな表現ですが、今回引用する言葉「フランチャイズ」は、もう少しかみくだいた例を示しています。ウォーレンによる1991年の「株主のみなさんへ」からの引用です。(日本語は拙訳)

経済的な「フランチャイズ」を有している製品やサービスには、次のような特徴があります。第一に、必需品あるいは嗜好品である。第二に、顧客にとって他に似たような代わりがない。第三に、価格統制の対象外である。その3つがそろった企業は、価格改定を定期的かつ大胆に実施できます。これは高い資本利益率へとつながります。その上、経営上の失敗があっても「フランチャイズ」にはそれに耐える力を持っています。無能な経営陣が「フランチャイズ」から得られる利益を減らすことはあっても、致命傷を負わせるほどにはなりません。

反対に、「ビジネス」から素晴らしい利益を挙げるには、低コストに徹するか、製品やサービスの供給がタイトな場合に限られます。供給がタイトな状況というのは長くは続きません。また優れた経営が行われている企業では、それよりは長い期間にわたって低コスト体質を維持できるかもしれません。ですが、競合企業との絶え間ない競争からは逃れられません。「ビジネス」が「フランチャイズ」と違うのは、経営が悪いと会社がおしまいになることがある点です。

An economic franchise arises from a product or service that: (1) is needed or desired; (2) is thought by its customers to have no close substitute and; (3) is not subject to price regulation. The existence of all three conditions will be demonstrated by a company's ability to regularly price its product or service aggressively and thereby to earn high rates of return on capital. Moreover, franchises can tolerate mis-management. Inept managers may diminish a franchise's profitability, but they cannot inflict mortal damage.

In contrast, "a business" earns exceptional profits only if it is the low-cost operator or if supply of its product or service is tight. Tightness in supply usually does not last long. With superior management, a company may maintain its status as a low- cost operator for a much longer time, but even then unceasingly faces the possibility of competitive attack. And a business, unlike a franchise, can be killed by poor management.


個人的には、この3つの基準でしぼりこむのは厳しいので、別の基準とあわせて使っています(過去記事「競争優位性とは」)。いずれにせよ、「顧客が離れにくい」とか「顧客が集まりやすい」点が決定的だと捉えています。

2012年3月6日火曜日

企業の目的とは何か

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前にご紹介した赤門マネジメント・レビューの論文長期存続ものづくり‘中企業’の群発(岸本 太一)を読んでいて目にとまった文章をご紹介します。この論考の筆者は中小企業の製造業経営者と接する中で、彼らが抱いている「企業の目的」とは何か、を肌身に感じています。よく言われることではありますが、研究者によるフィールドワークの成果ゆえ、生の声が感じられます。

ペンローズや既存の戦略論の学者は「利潤の最大化」を企業の目的と仮定して、理論の構築を行なっている。しかし、私が現場で見た国内ものづくり‘中企業’の目的は、どうもそれだけではない。「従業員(家族) の雇用の確保」および「企業(家業) の存続」といった目的も強く存在するように見受けられた。特に‘中の小’企業では、「利潤最大化」よりこれらの目的を優先していることを感じさせるコメントに、数多く遭遇した。また、「長期存続と成長がトレードオフとなる状況に、これまで何度も直面してきた」という話も何度も伺った。そのひとつが、第2 節で紹介した豊田周辺地域に所在する自動車2次サプライヤーにおける海外展開と国内開発能力維持のトレードオフの話であった。やはり、(日本製造業の)‘中企業’と大企業は同じ企業という生き物でも、種がやや異なるのであろう。 (PDFファイルのp.37)

中小企業では資本と経営が一体となっていることが多いので、自分たちのニッチを見つけてそこで暮らすことができれば、どれだけ成長を望むかは経営者すなわち資本家次第です。長く存続してきた中小企業は大きくは成長できなかったかもしれませんが、生き残ってきたという実績があります。あるいは成長したいという誘惑よりも、もっと充実したものをみつけたのかもしれません。

株式を公開したり資本参加を募った企業は、一転して投資家から冷徹な扱いを受けます。うまくいけば喝采が、そうでなければ非難が待っています。投資家と経営者の距離が離れるだけで、二者の関係は大きく変わるものです。「信用」という言葉は、実に重い意味を持っていますね。

競争に明けくれ、利益があがらず、行き先に迷っている大企業はいったいどこへ行けばよいのでしょう。その答えは、上にもあげた「ニッチ」という言葉にあると思います。つまり、人とは違う自分の居場所を探す、それに尽きるのではないでしょうか。

2012年3月5日月曜日

投資に活かす世知入門(はじめに)(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーは学問的な話題を好んでとりあげます。彼には大きな持論があり、全てはそこに流れ込みます。学問は各専門領域にとどまるべきではなく、領域を超えて連携したり融合して使うことでもっと大きな力を発揮する、という主張です。その知識やスキルが、ビジネスや投資判断や日常生活にも適用できるとなれば、私のような一般大衆にとってはうれしいものです。チャーリーは自らがそれを実践し、体現してきました。その成果のひとつがバークシャー・ハサウェイです。バークシャーは売上高が10兆円を超える企業となりましたが、もしチャーリー・マンガーがいなかったらどうなっていたでしょう。企業規模はもちろんのこと、今のような存在感は出せなかっただろう、と思います。

学問的知識やスキルを横断的かつ自在に使えるにはどうしたらよいのか。チャーリーは「頭の中に多面的、学際的なメンタルモデルを作る」ように説いています(過去記事「ほとんどの人より、うまくいくやりかた」)。では、何から取組んでいくのがよいのか。チャーリーは細かな指針はあまり出さないタイプですが、ここではそれらしいことを示しています。短いですが重要な文章なので、ご紹介します。出典はおなじみの「Poor Charlie's Almanack」です。(日本語は拙訳)

基礎的なミクロ経済学的モデル、少しばかりの心理学、少しばかりの数学、そういった一切合財は、私が言うところの「世知を支える普遍的な礎(いしずえ)」を築くのに役立つでしょう。

Well, so much for the basic microeconomic models, a little bit of psychology, a little bit of mathematics, helping create what I call the general substructure of worldly wisdom.


少しばかりの数学として、順列と組み合わせは以前にご紹介しました(過去記事「世の中の働きと驚くほど一致する」)。心理学は既に「誤判断の心理学」シリーズを進めています。このシリーズでは、残りのモデルについて少しずつご紹介していきます。

2012年3月3日土曜日

誤判断の心理学(7)カントの「公正」なる傾向(チャーリー・マンガー)

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??公正さ」についてはチャーリー・マンガーの話を聞くまでもなく、我々日本人にきちんとしみこんでいる概念でしょう。具体的には表現しにくくても、見ればそれが公正かどうかわかる、そういうものです。ただ、この指摘は冷静に活かすべきで、例えば商売を進める上で公正を悪用する者には注意すべきだし、あるいは公正さを貫いて顧客からの信頼を築くのが王道だとも受けとれます。後に取り上げる「返報の傾向」と同様、この文章も人間の心理的側面をあらわにするものです。

今回も短い文章ですので、原文全てになります。(日本語は拙訳)

誤判断の心理学
The Psychology of Human Misjudgment

(その7)カントの言う「公正」の傾向
Seven:Kantian Fairness Tendency

カントは「定言命法」で有名ですが、これは一種の黄金律で人の従うべき行動基準を示しており、あらゆる人がこれに従うならば、人間をとりまくあらゆるシステムは完璧に機能するというものです。文化的に様変わりした現代人は多くの公正をあらわにし、また他人からも期待するものですが、元はといえばカントが定義したものです。

アメリカではよくみられる光景ですが、小さな街で車が1台しか通れない幅の橋やトンネルがあると、譲ってもらった相手に返礼を返すものです。お互いに何も合図をしていないのに、です。高速道路でも同じように、車線変更などをしてくる他のドライバーが前に入るように譲ります。私もそうですが、立場が逆だったら自分にもそうしてほしいからです。それだけではなく、現在社会では他人から様々な礼儀をうけています。これは、「早い者勝ち」をよしとする傾向に則ったものです。

また、人はしばしば自発的に、先行き不透明な幸運や不運を共に分かち合うものです。そのような「公正な配分」をする振る舞いがあるゆえ、期待をうらぎって公正にしないと意趣返しされることがよくあります。

世界中に広まっていた奴隷制度がこの300年で粛々と廃止されていったのは、興味深い出来事です。過去には長きにわたって、世界中の多くの地域でそれぞれ許容されてきたものです。こうなったのも、カントの言うところの公正なる傾向が大きな役割を果たしたものと、私は考えています。

Kant was famous for his “categorical imperative,” a sort of a “golden rule” that required humans to follow those behavior patterns that, if followed by all others, would make the surrounding human system work best for everybody. And it it not too much to say that modern acculturated man displays, and expects from others, a lot of fairness as thus defined by Kant.

In a small community having a one-way bridge or tunnel for autos, it is the norm in the United States to see a lot of reciprocal courtesy, despite the absence of signs or signals. And many freeway drivers, including myself, will often let other drivers come in front of them, in lane changes or the like, because that is the courtesy they desire when roles are reversed. Moreover, there is, in modern human culture, a lot of courteous lining up by strangers so that all are served on a “first-come-first-served” basis.

Also, strangers often voluntarily share equally in unexpected, unearned good and bad fortune. And, as an obverse consequence of such “fair-sharing” conduct, much reactive hostility occurs when fair-sharing is expected yet not provided.

It is interesting how the world's slavery was pretty well abolished during the last three centuries after being tolerated for a great many previous centuries during which it coexisted with the world's major religions. My guess is that Kantian Fairness Tendency was a major contributor to this result.

2012年3月2日金曜日

こわくて眠れなかったんだよ(ジョリー・オルソン51歳)

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アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルの記事Investors' Sell Signal: Surging U.S. Stocksで、株式投資信託の資金状況の記事がありました。最近の相場の上昇とは反対に、個人投資家は解約傾向が続いているとしています。以下の右図でピンク色の棒がマイナス側にでており、ファンドからの資金流出を示しています。

(出典:The Wall Street Journal)









記事中のインタビューに応じている人は、株式を売って債券を買っているとのことです。51歳になるエンジニアの彼は、こうも話しています。(日本語は拙訳)

「2009年の春に、どんなにひどい思いをしてたか、思い出すようにしてるんだ」、彼は危機当時の安値に言及した。
「こわくて眠れなかったんだよ。今は状況が逆になっているけど、上がったのと同じように下がるのも速いんじゃないの」

"I remind myself of how bad it felt in March 2009," he said, referring to the crisis-era low. "I just didn't sleep because it was horrible. Now, we're on the other side of that swing and this could just as easily go down as it could go up."

上記の記事にならって、日本の状況がどうなっているか、グラフにしてみました。原資料は投資信託協会がとりまとめている公募投資信託の資産増減状況(実額)になります。








赤線が株式投資信託への資金の純流入出額を示しています。アメリカと違って、日本で大きく流出超になった時期は、2008年10月と、この2011年10月以降です。2011年4月にもそうでしたが、大震災直後のためと思われます。短期的な変動はともかく、こうして長期間の傾向をみると2006年から2007年にかけた活況ぶりがよくわかりますね。

2012年3月1日木曜日

IBMの株価は、簿価の何倍?(チャーリー・マンガー)

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以前に一部をご紹介した、チャーリー・マンガーの講演その2 「投資やビジネスで活かす世知入門」(A lesson on Elementary, Worldly Wisdom as It Relates to Investment Management and Business)で、IBMの名が引き合いに出されていました。今回はその部分を引用します。出典は、おなじみの「Poor Charlie's Almanack」です。(日本語は拙訳)

株式市場では、すぐれた競合や強い組合に頭を悩まされている鉄道会社には、簿価の三分の一の値になることもあります。対照的に、全盛期の頃のIBMは簿価の6倍で取引されていたものです。まさしくこれが、パリミュチュエル方式なのです [賭けの配分方式。代表的な例が競馬]。大ばか者なら、単に鉄道会社よりもIBMのほうが商売の見通しがよいからとみるでしょう。しかし株価を式に当てはめてくらべてみると、どちらの株を選んだほうがよいのか、あまりはっきりしなくなります。パリミュチュエル方式とよく似ています。だからこそ、勝つのは難しいのです。

In the stock market, some railroad that's beset by better competitors and tough unions may be available at one-third of its book value. In contrast, IBM in its heyday might be selling at six times book value. So it's just like the pari-mutuel system. Any damn fool could plainly see that IBM had better business prospects than the railroad. But once you put the price into the formula, it wasn't so clear anymore what was going to work best for a buyer choosing between the stocks. So it's a lot like a pari-mutuel system. And, therefore, it gets very hard to beat.

ところで現在のIBMの株価はUS$200の少し下ですが、PBRのほうは11となっています(Mkt. cap.が230Bで、Total IBM stockholders' equityが20B)。自社株買いを続けているため、株主資本が低く抑えられています。上述の講演は1994年のものですから、時代は変わるものですね、チャーリーさん。

2012年2月29日水曜日

借り手にも貸し手にもなるな(ジェレミー・グランサム)

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ファンド・マネージャーのジェレミー・グランサムによる最新のレターが少し前に公開されました。こちらのファイルです。「ポローニアスじいさんからの投資の助言」という題名で、10の助言を記しています。今回は、そのうちの1つをご紹介します。

4. 辛抱して、長期でみること
よいカードがくるまで待ってください。とにかく待ち続けて、相場がとことん安いところまで下がったら、それが安全余裕となってくれます。「とてもよい」投資が「格別な」にかわるまで、今はただ苦悩に耐えるときです。個別株はたいてい持ち直しますし、相場全体は必ずそうなります。上述の規則[本引用では省略]に従っていれば、やがては悪いニュースを乗り越えられるでしょう。

4.Be patient and focus on the long term. Wait for the good cards. If you’ve waited and waited some more until finally a very cheap market appears, this will be your margin of safety. Now all you have to do is withstand the pain as the very good investment becomes exceptional. Individual stocks usually recover, entire markets always do. If you’ve followed the previous rules, you will outlast the bad news.


最近の市場での上昇ぶりをみると、この文章は少し前に書かれたものかと思わせる節があります。そうだとしても、以前ご紹介したボブ・ロドリゲスの発言「注意!この先危険」と似ていますね。ちなみに、このお二人は早めに警告を出すタイプです。

なお、ポローニアスとはハムレットの登場人物の一人です。レターの最終ページには、ハムレット第一幕第三場のせりふが引用されています。

2012年2月28日火曜日

バークシャー・ハサウェイの株式ポートフォリオ(2011年度末)

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ウォーレン・バフェットによる「株主のみなさんへ」には保有株式(普通株)の一覧が掲載されています(PDFのp.15)。以下に、2011年度分の保有株式の比率を図にしました。








株式ポートフォリオのおよそ半分を3銘柄で占めています。また上位10銘柄になると、80%占めることになります。ほどほどに集中投資ですね。この他にもワラントを保有しており、例えばBank of Americaの分を全て行使して株式を取得したら、AmexとP&Gの間に追加されます。残りのワラントはGoldman SachsとGEです。

余談ですが、我が家の株式ポートフォリオ配分も似たような比率になっています。3銘柄で半分です。個人的には上位2,3銘柄で半分ぐらいになるのが、調べものや考えるのが集中できてやりやすいです。

2012年2月27日月曜日

今年も反省します(ウォーレン・バフェット)

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ウォーレン・バフェットは「株主のみなさんへ」の中で、自社の経営状況の概要を説明します。他社のトップも同じようなことをしていますが、ウォーレンが大きく違うのは、自分のあやまりを認め、おおやけにする点です。普通の勤め人の感覚だと何ということはないのですが、ある種の人たちにとっては反省できない事情があるのでしょう。大株主という立場を割り引いたとしても、多くの人がウォーレンに親しみを持つのは、そういう当たり前感覚をきちんと持っているからだと思います。前回に続いて今回も、2011年度「株主のみなさんへ」からの引用です。(日本語は拙訳)

なお、ウォーレンは各種の証券投資で名実ともに大投資家となりましたが、今では事業会社を数多く買収し、利益の大半はそれらの子会社があげています。前年度(2011年度)は大震災の支払いで保険事業は低採算でしたが、一般事業(電力エネルギー、鉄道、その他)を合計すると、純利益は5,000億円強でした。

このグループに属する子会社[バークシャーでの報告上の分類。製造、サービス、小売事業が属する] の販売する商品は、ロリポップ[お菓子]からジェット飛行機にまでわたります。すばらしい経済特性を謳歌するものは、純有形資産比で25%から100%超の税引後利益をあげています。それ以外は12%から20%の、そこそこの利益をあげています。しかし、ひどく残念な利益にとどまるものもいくつかあります。資産を配分するのが私の仕事ですが、そこで重大な失敗をおかしたからです。買収対象ビジネスが持つ競争力か、あるいはその所属業界の経済情勢の先行きを見誤ったのです。買収に先立っては10年、20年先を見通そうとするのですが、ときには不十分でした。チャーリーのほうが当たっていました。しくじった買収先の何件かは、検討時に「棄権」とだけ言っていたからです。

This group of companies sells products ranging from lollipops to jet airplanes. Some of the businesses enjoy terrific economics, measured by earnings on unleveraged net tangible assets that run from 25% after-tax to more than 100%. Others produce good returns in the area of 12-20%. A few, however, have very poor returns, a result of some serious mistakes I made in my job of capital allocation. These errors came about because I misjudged either the competitive strength of the business being purchased or the future economics of the industry in which it operated. I try to look out ten or twenty years when making an acquisition, but sometimes my eyesight has been poor. Charlie’s has been better; he voted no more than “present” on several of my errant purchases. (PDFの11ページ目)


ここで重要なのはウォーレンの謝罪ではなく、投資の失敗の原因です。「買収対象ビジネスが持つ競争力か、あるいはその所属業界の経済情勢の先行きを見誤った」としています。これは経営管理や戦略以前の、根本的な次元のものです。以前取り上げた記事「10秒ください」をふりかえってみてください。ウォーレンの判断基準に優先順位がついていますが、フィルター1とフィルター2に見事に当てはまっています。

チャーリー・マンガーは言っています。「自分で痛い目にあうよりも、他人の過ちから学べ」。ウォーレンの反省を他山の石としたいものです。

2012年2月26日日曜日

2011年度「株主のみなさんへ」(ウォーレン・バフェット)

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昨日の2/25(土)に、ウォーレン・バフェットによる2011年度「株主のみなさんへ」がバークシャー・ハサウェイのWebサイトに公開されました。

後半部は、先日Fortuneに掲載されていたものと同じでした。本ブログでも「ゴールドや債券よりも株式がよい理由(ウォーレン・バフェット)」で取り上げています。未見の方はそちらをご覧ください。今回ご紹介するのは、持ち株に加わったIBMに関する話題です。ウォーレン、あいかわらずイケてます。(日本語は拙訳)

IBMを例にしてみましょう。ビジネス界を注視している人でしたらみなさんご存知のように、歴代CEOのルー・ガースナーとサム・パルミサーノはすばらしい業績をあげてきました。20年前には破産寸前だったIBMを立てなおし、今日では際立った存在となっています。彼らのなした経営管理面での業績は、まさにたぐいまれなものでした。

一方、それにひけをとらないほど財務管理面も秀でています。特に近年になって、財務がより柔軟になっています。実のところ、これほど上手に財務管理ができている大企業は他に思いあたりません。IBMの株主にとって望ましい利益を、著しく増やしてくれているのです。同社は借金をうまく活用し、もうけにつながる買収を続けています。買収の対価はほとんどの場合、現金払いです。さらには、自社株買いを積極的に行っています。

現時点のIBMの発行済株式数は11億6,000万株で、私たち[バークシャー]はそのうちの5.5%にあたる6,390万株を保有しています。当然のことですが、同社が今後5年間であげる利益がどうなるかは、私たちにとって非常に重要です。加えて、同社はその期間に4兆円ほどを投じて自社株買いをやるでしょう。では、ここで問題です。バークシャーのような長期投資家にとって、その間はどうなってほしいでしょうか。

速攻でお答えしましょう。その5年間はIBMの株価が低迷するよう祈るべきです。

ちょっと計算してみましょう。IBMの株価がたとえば平均で200ドル[=16,000円]だとします。同社は2億5000万株を買うのに4兆円払うことになります。[自己株式を除いた]発行済株式総数は9億1000万株になり、私たちは同社の7%を保有することになります。逆に5年間の株価が平均300ドルに上がると、IBMは[同じ金額では]1億6700万株しか買えません。すると5年後の発行済株式総数は9億9000万株で、私たちの保有率は6.5%となります。

もしIBMが5年間で1兆6,000億円の利益をあげるとしたら、株価が上がる場合よりも株価が下がって「残念な」場合のほうが、私たちのぶんは80億円多くなります[1兆6,000億円の0.5%]。時がたつと、私たちが[安値で]買った株式は、高値で自社株を買う場合とくらべると、1,200億円ぐらいは価値が大きくなるでしょう。[IBMの現在のPERは15。そのため、80億円 * 15 = 1,200億円]

単純なことです。将来、株を買い増しするつもりであれば、自分のお金を使うのでも、あるいは間接的(投資先の企業が自社株買いをする)になっても、どちらにしても株価が上がれば痛むのはあなたです。逆に株価が打撃を受ければ、あなたが得をします。ですが、人の感情というのは話をややこしくするもので、ほとんどの人は、株を買い増ししようとしている人も含めて、株価が上がるのを見るとうれしくなってしまいます。そういう株主は、まるでガソリンが値上がりしているのに喜ぶマイカー通勤者のようです。
「今日の分はタンクの中にちゃんと入ってるぜ」

チャーリーと私の考え方は、多くのみなさんには納得してもらえないかもしれません。私どもは人の振舞いを十分に観察して、そういうのは無意味だとわかったのですが。ただ、私どもがどうやって計算したのかはわかって頂ければと存じます。ここで打ち明けておくべきでしょう。私も若かった頃には、相場が上昇すると喜んだものでした。そのうち、ベン・グレアムの「賢明なる投資家」を読む機会がありました。第8章を読むと、そこには投資家は株価の変動をどう捉えるべきか書いてありました。読むや否や、目からうろこが落ちました。それからというもの、株価の下落を歓迎するようになったのです。そのような本に巡り合えたのは、人生のうちでもっとも幸運だったことの一つです。

最後になりますが、IBMへの投資の成否は、第一には今後どれだけ利益をあげてくれるかにかかっています。しかし、その次に重要なのは、同社がそれなりの規模で自社株をどれだけ買ってくれそうか、という点です。もし自社株買いが進んで、発行済株式総数が6,390万株[すなわち、バークシャーの持株数]になるようであれば、私も節約家の看板を下ろして、バークシャーの社員のみなさん[270,000名]に有給休暇をお贈りします。

Let’s use IBM as an example. As all business observers know, CEOs Lou Gerstner and Sam Palmisano did a superb job in moving IBM from near-bankruptcy twenty years ago to its prominence today. Their operational accomplishments were truly extraordinary.

But their financial management was equally brilliant, particularly in recent years as the company’s financial flexibility improved. Indeed, I can think of no major company that has had better financial management, a skill that has materially increased the gains enjoyed by IBM shareholders. The company has used debt wisely, made value-adding acquisitions almost exclusively for cash and aggressively repurchased its own stock.

Today, IBM has 1.16 billion shares outstanding, of which we own about 63.9 million or 5.5%. Naturally, what happens to the company’s earnings over the next five years is of enormous importance to us. Beyond that, the company will likely spend $50 billion or so in those years to repurchase shares. Our quiz for the day: What should a long-term shareholder, such as Berkshire, cheer for during that period?

I won’t keep you in suspense. We should wish for IBM’s stock price to languish throughout the five years.

Let’s do the math. If IBM’s stock price averages, say, $200 during the period, the company will acquire 250 million shares for its $50 billion. There would consequently be 910 million shares outstanding, and we would own about 7% of the company. If the stock conversely sells for an average of $300 during the five-year period, IBM will acquire only 167 million shares. That would leave about 990 million shares outstanding after five years, of which we would own 6.5%.

If IBM were to earn, say, $20 billion in the fifth year, our share of those earnings would be a full $100 million greater under the “disappointing” scenario of a lower stock price than they would have been at the higher price. At some later point our shares would be worth perhaps $1.5 billion more than if the “high-price” repurchase scenario had taken place.

The logic is simple: If you are going to be a net buyer of stocks in the future, either directly with your own money or indirectly (through your ownership of a company that is repurchasing shares), you are hurt when stocks rise. You benefit when stocks swoon. Emotions, however, too often complicate the matter: Most people, including those who will be net buyers in the future, take comfort in seeing stock prices advance. These shareholders resemble a commuter who rejoices after the price of gas increases, simply because his tank contains a day’s supply.

Charlie and I don’t expect to win many of you over to our way of thinking - we’ve observed enough human behavior to know the futility of that - but we do want you to be aware of our personal calculus. And here a confession is in order: In my early days I, too, rejoiced when the market rose. Then I read Chapter Eight of Ben Graham’s The Intelligent Investor, the chapter dealing with how investors should view fluctuations in stock prices. Immediately the scales fell from my eyes, and low prices became my friend. Picking up that book was one of the luckiest moments in my life.

In the end, the success of our IBM investment will be determined primarily by its future earnings. But an important secondary factor will be how many shares the company purchases with the substantial sums it is likely to devote to this activity. And if repurchases ever reduce the IBM shares outstanding to 63.9 million, I will abandon my famed frugality and give Berkshire employees a paid holiday. (PDFの6ページ目)

2012年2月25日土曜日

誤判断の心理学(6)好奇心(チャーリー・マンガー)

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以前取り上げた「投資で成功するのに大切なこと」では、チャーリー・マンガーは正しい気性を持つよう、発言していました。しかし、それだけでは足りなくて、好奇心を持ち続けることも必要だとしています。

今回の話題「好奇心」は、他の心理学的傾向とは異なり、望ましいものとして取り上げられています。そのせいか文章も短めで、今回ご紹介するもので全てです。(日本語は拙訳)

誤判断の心理学
The Psychology of Human Misjudgment

(その6)好奇心
Curiosity Tendency

哺乳類はうまれつき好奇心にあふれていますが、人間以外で筆頭に挙げられるのは類人猿や猿でしょう。そして人間の好奇心は、それらの真猿類よりもさらに強くなっています。進んだ文明圏では、知識が進展した文化ゆえに好奇心はいっそう役立つものへつながります。たとえば、アテネやその植民地アレキサンドリアでは、純粋な好奇心から数学や科学が発達しました。一方のローマは、それらにはほとんど貢献せず、そのかわりに鉱山、街道、水道橋といった「現実的な」工学面に注力しました。近代教育の最高峰(語義上は、ほんの一握り)がその範囲を広げ続けていますが、好奇心は身近なところで大いに役立つものです。他の心理学的傾向はよからぬ結果につながるものですが、そうならないようにしたり、減らしたりしてくれるからです。また好奇心があれば、学校を出た後でも末永く、楽しみをえたり、知恵を身につけることができます。

There is a lot of innate curiosity in mammals, but its nonhuman version is highest among apes and monkeys. Man's curiosity, in turn, is much stronger than that of his simian relatives. In advanced human civilization, culture greatly increases the effectiveness of curiosity in advancing knowledge. For instance, Athens (including its colony, Alexandria) developed much math and science out of pure curiosity while the Romans made almost no contribution to either math or science. They instead concentrated their attention on the "practical" engineering of mines, roads, aqueducts, etc. Curiosity, enhanced by the best of modern education (which is by definition a minority part in many places), much helps man to prevent or reduce bad consequences arising from other psychological tendencies. The curious are also provided with much fun and wisdom long after formal education has ended.