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2018年10月12日金曜日

2018年バークシャー株主総会(19)年率0.5%は絶対に越えさせない(後)

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答から、長期債に関する話題、前回のつづきです。(日本語は拙訳)

<チャーリー・マンガー> それはもう、金融当局が預金金利を引き下げたのは公正とは言えなかったですね。彼らが支払う金額と同じ程度が、 およそ年配者の定期預金口座へと支払われるわけですから。しかしながら、金融危機に対して適切に戦うためには、たぶんそうせざるを得なかったのでしょうね。

そうは言っても、公正でなかったのはたしかですよ。状況も普通ではありませんでした。金利があれほどまでに引き下げられ、長きにわたって低いままだったことは、我が人生を通じて一度きりのことでしたよ。

多くの人々にとっては、実に不公平なことでしたね。しかしこの会場にいるみなさんには、はなはだ有用でした。というのは、バークシャー株も含めて資産価格を上昇させたからです。ですから我々はみな、その範疇外だった人ばかりというわけです(笑)。今後もそのままであってほしいと望みますがね(笑)。

<ウォーレン・バフェット> 先ほどお見せした新聞が刊行されたのは1942年のことでした。当時の政府は全国民の愛国心に訴えかけました。学校に通っていたころのわたしたちは、貯金切手を買ったものです。当初は「米国戦時債」と呼ばれていましたが、やがて「米国国防債」に変わり、さらには「米国貯金債」になりました(笑)。まあ、「戦争債券」と呼んでいました。

18.75ドル分ですと、10年後に25ドル戻ってきました。その件によってわたしは、3ドル出して10年後に4ドルになる場合、複利で年率2.9%になることを学びました。当時は、小さな字で印字しておく必要がありました。

「年率2.9%で10年間」という投資がうまいものではないことは、11歳の子供であっても理解できました。しかしそれでもわたしたちは、その戦争債券を買いました。つまりそれも、戦争がもたらしたもののひとつだったわけです。

そして政府にはわかっていました。第二次世界大戦の戦費を調達したおかげで、やがて急激なインフレーションがやってくることを、です。

実際には、この国で大々的なケインズ主義的行動が起こりました。しかし、それはケインズに従う道を選んだせいではありません。戦争によって莫大な財政赤字を抱えたからでした。国の債務はGDP比で120%にのぼりました。まさに空前の、一大ケインズ主義的実験場となりました。そしてそこに立ち戻った米国は、かつてみたことのないような繁栄の波に乗ることとなりました。「棚からぼたもち」というのも、ときには起こるものです。

しかし連邦政府は(音声不明瞭)、あらゆる国民の資金を10年固定の利率2.9%で預かりました。ですから財務省債券はそれ以降ずっと、魅力に欠けていたと思いますよ(笑)。ただし1980年代の初期を除きます。当時はそういうものだったのです。

つまり財務省発行の割引債を買うことで、その後の人生30年間を通じて複利で年率14%程度の利益が事実上得られる権利を、確定できた機会が現実にあったのです。

ですから市場という場所では、実に奇妙なことがときには起こるわけです。その際に大切なのは、それに備えるのみならず、それが起きたときに行動に移すことです。

チャーリーは、戦争債券を買ったことがありますか。

<チャーリー> いや、一度もないですね。

<ウォーレン> なかったですか。たしか昔は..

<チャーリー> 戦争のころには、金なんてこれっぽちもなかったですよ(笑)。

<ウォーレン> なるほど。それはうまい理由でしたね(笑)。

CHARLIE MUNGER: Well, it really wasn’t fair for our monetary authorities to reduce the savings rates, paid mostly to our old people with savings accounts, as much as they did. But they probably had to do it to fight the Great Recession, appropriately.

But it clearly wasn’t fair. And the conditions were weird. In my whole lifetime, it’s only happened once that interest rates went down so low and stayed low for a long time.

And it was quite unfair to a lot of people. And it benefited the people in this room enormously because it drove asset prices up, including the price of Berkshire Hathaway stock. So we’re all a bunch of undeserving people - (laughter) - and I hope that we continue to be so. (Laughter)

WARREN BUFFETT: At the time this newspaper came out in 1942, it was - the government was appealing to the patriotism of everybody. As kids, we went to school and we bought Savings Stamps to put in - well, they first called them U.S. War Bonds, then they called them U.S. Defense Bonds, then they called them U.S. Savings Bonds. (Laughs) But they were called war bonds then.

And you put up $18.75 and you got back $25 in ten years. And that’s when I learned that that $4 for three - in ten years - was 2.9 percent compounded. They had to put it in small print then.

And even an 11-year-old could understand that 2.9 percent compounded for ten years was not a good investment. But we all bought them. It was - you know, it was part of the war effort, basically.

And the government knew - I mean, you knew that significant inflation was coming from what was taking place in finance, in World War II.

We actually were on a massive Keynesian-type behavior, not because we elected to follow Keynes, but because war forced us to have this huge deficit in our finances, which took our debt up to 120 percent of GDP. And it was the great Keynesian experiment of all time, and we backed into it, and it sent us on a wave of prosperity like we’ve never seen. So you get some accidental benefits sometimes.

But the United States government (inaudible) every citizen to put their money into a fixed-dollar investment at 2.9 percent compounded for ten years. And I think Treasury bonds have been unattractive ever since - (laughs) - with the exception of the early ’80s. That was something at that time.

I mean, you really had a chance to buy - you had a chance to invest your money by buying zero-coupon Treasury bonds, and in effect, guarantee yourself that for 30 years you would get a compounded return, you know, something like 14 percent for 30 years of your lifetime.

So every now and then, something really strange happens in markets and the trick is to not only be prepared but to take action when it happens.

Charlie, did you ever buy any war bonds?

CHARLIE MUNGER: No. No. I never bought war bonds.

WARREN BUFFETT: No. Used to be like take me -

CHARLIE MUNGER: I didn’t have any money when I was in the war. (Laughter)

WARREN BUFFETT: That’s a good reason not to buy. (Laughs)

2018年7月20日金曜日

ヨーロッパが豊かになった理由(『進歩: 人類の未来が明るい10の理由』)

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中世までは世界の片田舎でしかなかった西欧が世界の中心部へと躍進した理由は、人文科学の領域でたびたび取り上げられる主題です。少し前の投稿でとりあげた本『進歩: 人類の未来が明るい10の理由』でも、単純ながらも強力な説明をしていたので、引用してご紹介します。

この時代、科学と技術の面ではアラブ人がはるかに先を行っており、西洋ではほぼ忘れ去られていたギリシャ哲学を生かし続けたのもアラブ人だった。

同時期に、経済的にも文化的にも繁栄した中国を支配していたのは宋王朝だった。法治と高い経済的な自由のおかげで、イノベーションの気運が生まれた。中国人は活字や火薬や羅針盤を使っていた--これは1620年という時期になっても、三大発明としてフランシス・ベーコンが挙げたものだ。

でも14世紀に中国を支配した明王朝は、技術や外国人に敵対した。海洋航海を死罪にして、世界を発見したかもしれない大型船を焼き払った。同様に、イスラム世界は13世紀の蒙古侵略のあとで内向きとなり、科学と近代化の多くの発想を粛清した。オスマン帝国では新技術は阻害され、印刷術は300年も遅れてしまい、タキ・アッディンが1577年に作ったイスタンブールの近代的な天文台は、たった3年しか続かずに、その後は神をスパイしようとしているといって破壊されてしまった。

別にヨーロッパの列強がマシだったわけではない。ヨーロッパのエリート層もまた新しいアイデアやイノベーションに反対した。でもこの大陸はあまりに断片化していた--地理的にも政治的にも言語的にも--おかげで、何か一つの集団や皇帝がそのすべてを支配はできなかった。著書『ヨーロッパの奇跡』でエリック・ジョーンズは、14世紀にはヨーロッパに1,000以上の政治単位があったと述べている。この複数主義はある意味で、競合する国民国家の体系を構築したときにもまだ残っていたといえる。新しい理論や発明、ビジネスモデルは必ずどこかでは生き延びられたし、その優位性を実証できた。それが他の人々に模倣されて、広まる。進歩は常に命綱を得られたというわけだ。

つまりヨーロッパを豊かにしたのは、優れた思想家や発明家や企業ではなく、ヨーロッパのエリート層がそれを邪魔するのにあまり成功しなかったという事実なのだった。アイデア、技術、資本は国から国へと移動できたので、国はお互いに競争して学び合うしかなく、お互いを近代化へと押しやった。これはいまのグローバリゼーションの時代と少し似ている。(p. 302)

2018年4月20日金曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(5)ヒトラーから学んだこと

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前回に続いて、デイリー・ジャーナル社株主総会の模様です。今回からはチャーリー・マンガーが交わした質疑応答を取り上げます。米国に主眼を置いた現在のマクロ経済に関する話題です。(日本語は拙訳。意味段落での改行追加あり)

(1:13:13)

<質問17> GDP比でみた連邦政府の債務水準が上昇しており、同時に景気循環の終盤にあって巨額の財政赤字に陥っています。そういったあらゆる現状を憂慮されていますか。

<チャーリー・マンガー> 連邦政府の債務水準が上昇していることは、もちろん不安視していますよ。この国にとって新たな領域に突入しており、新たな領域というものはたぶんに危機が待ち受けているものです。その一方で、程度はともあれこの世界がそれなりにうまく進行する可能性もあります。政府のとる行動パターンが、「歴史に照らして信頼できるものだ」とみなさんや私が考えるものとは大きく異なっているとしてもです。もちろん、この100年間でインフレーションを避けてきた時期には、当時の政府は物価の安定を目標に掲げていました。一方、今の政府の目標は2%のインフレです。さあ、一体どうなることでしょうか。「だれにもわからない」というのが答えです。しかし、「長期的なインフレ率が2%を大きく超える」とする側に賭けるのが筋ではないですかね。私ならそちらに賭けますよ。ただし我々は過去の経験から、「マクロ経済という代物は実に奇異なもので、物理学のようには動かない」ことを学んでいます。今後10年間における[経済]システムは、過去10年間に存在したシステムとは別のものです。異なるシステムには異なる公式が当てはまります。しかしシステムがいつ変化したのか、そして公式がいつ変化すべきなのかは、だれも教えてくれません。

ですから、「世界がすっかりとんでもないことになる」とは想像していません。第1次世界大戦後のドイツでは何が起きましたか。通貨の価値が基本的にゼロとなり、ハイパー・インフレーションが起きたのです。実に大きな過ちを大規模におかしました。しかしそのあとどうなったのかと言えば、かなりの短期間で復活しました。どうやって実現したかというと、モーゲージ[=住宅ローン]を価値の裏付けとした新たなライヒスマルク[通貨]を制定したのです。そのモーゲージは、不当にもタダでモーゲージを剥奪された人たちが所有する住宅や地所へと戻されたものでした。新ライヒスマルクは十分うまく機能しました。そのおかげでドイツは大惨事からうまく回復し、大恐慌の時期を迎えられました。そして実のところ、大恐慌とヴァイマル時代のインフレが組み合わさったことによって、ヒトラーが登場したのです。大恐慌がなければ、彼は権力を手にできなかったと思いますよ。

その後何が起きたのかは、みなさんもご承知の通りですね。欧州を先導する経済力を1930年代末までに持つようになった国は、どこでしょうか。そう、ドイツです。報復の思いなどに焦がれていたヒトラーは、多大なる軍備を取りそろえたり、多くの兵士を訓練したりしました。このように偶然生じたケインズ主義によって、ヒトラーの率いるドイツは大いに繁栄しました。そして1939年の欧州において、ドイツはもっとも繁栄した場所となったのです。だからこそ、彼らはあれほどまでの大惨事から復活できたのですよ。ですから私は、「世界が動乱の時代を迎えるかもしれないと思い病むことはない」と思います。なぜなら回復する術があるからです。いや、かつてのドイツが取ったやりかたを擁護してはいませんよ(笑)。しかしそういった先例を学ぶことで、私が言うところの「思考する上での奇抜さ」を築けるものと思います。おろかな戦争で壊滅した国家が、さらに自国の通貨を崩壊させ、世界恐慌を通過した後に、1939年には欧州でもっとも繁栄した国家となったのですから、これは励まされることですね。みなさんも一安心してください(笑)。

Question 17: Are you concerned at all about the rising level of government debt to GDP at the same time that we’re running large deficits late in the economic cycle.

Charlie: Of course I’m concerned about the rising level of government debt. This is new territory for us, and new territories probably has some danger in it. On the other hand, it is possible that the world will function more or less pretty well, even with a very different pattern of government behavior than you and I would have considered responsible based on history to date. Of course if you look at the inflation we got out of the last hundred years when the announced objective of government was to keep prices stable. Now the announced objective is 2% inflation. Well what the hell’s going to happen? Well the answer is, we don’t know. But isn’t the way to bet that it’s going to be…inflation over the long-term is way higher than 2%? I think the answer is yes. But I think that we have learned from what has happened in the past that macro-economics is a very peculiar subject and it doesn’t work like physics. The system is different in one decade, than the system that was present in the last decade. Different systems have different formulas, but they don’t tell you when systems have changed, and when the formulas have to change.

So I don’t expect the world to go totally to hell because…well, look at what happened in Germany after World War I. They had a hyper-inflation when the currency basically went to zero in value. They really screwed up big time. And what happened?…Well what happened was they recovered from it pretty quick. And they did it by creating a new Reichsmark backed by the mortgages which they put back on the houses and properties of the people who had unfairly gotten rid of their mortgages at no cost. And that new Reichsmark was working pretty well and Germany had pretty well recovered from that catastrophe and then along came the Great Depression. And the combination of the Great Depression and the Weimar inflation really brought in Hitler. Without the Great Depression I don’t think he would have come into power.

What happened…now you’ve got…by the late 30’s, what was the leading economic power in Europe? It was Germany. Cause Hitler in his crazy desire for vengeance and so on, bought a lot of munitions and trained a lot of soldiers and so forth. And the accidental Keyensianism of Germany under Hitler caused this vast prosperity. So Germany was the most prosperous place in Europe in 1939. So all that catastrophe, they recovered from. So I don’t think you should be too discouraged by the idea that the world might have some convulsions. Because there’s a way of recovering. Now I’m not advocating the German system (laughter), but I do think knowing these historical examples creates what I call “mental ploys.” And you’d think that a country that destroyed (itself) in a silly war, destruction of your own currency, great depression, and by 1939 it’s the most prosperous country in Europe. It’s encouraging. I hope you feel better. (laughter)