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2024年3月6日水曜日

2023年度バフェットからの手紙(3)さようなら、チャーリー・マンガー

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今回の「株主への手紙」では最初のページに、ウォーレン・バフェットからチャーリー・マンガーに向けた弔辞が掲げられています。以下、その全文です。(日本語は拙訳)


バークシャ・ハサウェイを設計監理した男、チャーリー・マンガー


チャーリー・マンガーは100歳の誕生日まであと33日の、11月28日に亡くなりました。


彼は[ウォーレン・バフェットと同じネブラスカ州の]オマハで生まれ育ったものの、存命中の8割は別の場所で暮らしていました。そのため、わたしが彼とはじめて対面したのは1959年になってからで、そのとき彼は35歳でした。その彼が資産管理の道を歩むべきだと決意したのは、1962年のことでした。


その3年後に、彼はわたしをこう諭しました。「バークシャーの経営権を買った判断はお粗末だったね」と。しかし、彼は次のように請け合ってくれたのです。「済んだことは良しとして、まちがいを正す方法を説明しよう」


話を進めるうえで留意していただきたいのは、わたしが当時運営していた小規模の投資パートナーシップに、チャーリーや彼の親族は一銭も投資していなかった点です。そこの資金を使って、わたしはバークシャー株を買っていました。そのうえチャーリーがバークシャー株を保有することになるとは、わたしたちのだれもが予想してしませんでした。


それにもかかわらず、チャーリーは速やかに助言してくれました。1965年のことです。「いいかいウォーレン、バークシャーのような企業の株を買おうなんて考えないこと。もはやバークシャーを経営できるのだから、今後はすばらしい事業をそこそこの値段で買い加えていこう。そこそこの企業をすばらしい値段で買うのは、おしまいだよ。つまり、君の英雄たるベン・グレアムから教わったことは全部放り出してほしい。あのやりかたが通用するのは、規模が小さいときだけだから」と。その後、後退することはたびたびありながらも、わたしは彼の導きに従いました。


何年も経ってから、チャーリーはわたしのパートナーとしてバークシャーの経営に加わってくれました。そしてわたしの古い習慣が顔を出すたびに、正気へと引き戻してくれました。彼は亡くなるまで、その役割をつづけてくれました。初期のころからわたしたちと投資し続けてくれた人たち共々、チャーリーとわたしは当時想像していた以上の成功をおさめることができました。


実際のところ、現在のバークシャーを「設計監理した建築家」はチャーリーでした。そしてわたしは、彼の構想を実現するために日々の作業を遂行する「元請け業者」でした。


チャーリーは「自分が創始者である」と謳うことはありませんでした。そうではなく、賞賛を受ける場でお礼をかえす役割は、わたしに任せてくれたのです。わたしにとって彼は兄であり、はたまた愛すべき父親でもありました。自分のほうが正しいとわかっているときでも、わたしに手綱さばきを任せてくれました。わたしがポカをしでかしたときにも、その過ちを思い出させるような素振りは一切みせませんでした。


実体をきずく世界において、偉大なる建築物はそれを設計監理した人物を思い起こさせるものです。一方、そこでコンクリートを流し込んだり、窓を取り付けた人物のことはたちまち忘れられます。巨大な企業となったバークシャーにおいて、わたしは建設要員としての責務を担ってきましたが、チャーリーは建築家として携わったと末永く評価されるべきでしょう。


Charlie Munger – The Architect of Berkshire Hathaway


Charlie Munger died on November 28, just 33 days before his 100th birthday.


Though born and raised in Omaha, he spent 80% of his life domiciled elsewhere. Consequently, it was not until 1959 when he was 35 that I first met him.  In 1962, he decided that he should take up money management.


Three years later he told me – correctly! – that I had made a dumb decision in buying control of Berkshire. But, he assured me, since I had already made the move, he would tell me how to correct my mistake.


In what I next relate, bear in mind that Charlie and his family did not have a dime invested in the small investing partnership that I was then managing and whose money I had used for the Berkshire purchase. Moreover, neither of us expected that Charlie would ever own a share of Berkshire stock.


Nevertheless, Charlie, in 1965, promptly advised me: “Warren, forget about ever buying another company like Berkshire. But now that you control Berkshire, add to it wonderful businesses purchased at fair prices and give up buying fair businesses at wonderful prices. In other words, abandon everything you learned from your hero, Ben Graham. It works but only when practiced at small scale.” With much back-sliding I subsequently followed his instructions.


Many years later, Charlie became my partner in running Berkshire and, repeatedly, jerked me back to sanity when my old habits surfaced. Until his death, he continued in this role and together we, along with those who early on invested with us, ended up far better off than Charlie and I had ever dreamed possible.


In reality, Charlie was the “architect” of the present Berkshire, and I acted as the “general contractor” to carry out the day-by-day construction of his vision.


Charlie never sought to take credit for his role as creator but instead let me take the bows and receive the accolades. In a way his relationship with me was part older brother, part loving father. Even when he knew he was right, he gave me the reins, and when I blundered he never – never –reminded me of my mistake.


In the physical world, great buildings are linked to their architect while those who had poured the concrete or installed the windows are soon forgotten. Berkshire has become a great company. Though I have long been in charge of the construction crew; Charlie should forever be credited with being the architect.


2024年3月2日土曜日

2023年度バフェットからの手紙(2)例によって、やらかしました

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2023年度「バフェットからの手紙」より、今回の文章ではウォーレン・バフェットが自身のおかした失敗を告白しています。失敗と断定するには少し早いようにも思えますが、主力子会社に関する話題なので、バークシャーの株主諸氏のみなさんはそれなりに調査研究なさったほうがいいかもしれません。なおウォーレンは自分の失敗を明らかにする人で(過去記事の例)、この点は他の大多数の経営者と一線を画していると思います。(日本語は拙訳)


昨年残念な業績におわった部門の二つめはBHE社[エネルギー事業の子会社; Berkshire Hathaway Energy]で、こちらはさらに厳しい損益でした。同社が営む大規模な電力事業のほとんどは、広域にわたるガスパイプラインと同様に、期待通りの成果をあげました。しかし、いくつかの州における規制の雲行きゆえに、利益ゼロあるいは破綻にさえ至る恐れを抱くようになりました(実際カリフォルニア州の最大手会社がそうなり、ハワイ州では現在その危機に面しています)。そのような規制をとる地域では、米国でもっとも安定した産業として以前には考えられていた収益や資産価値を見込むのは困難です。


電力業界は1世紀以上にわたって、成長を果たす原資とするために多額の資金を調達してきました。それは定められた資本利益率が得られるとする、州ごとの協約に基づくものです(優秀な運営には、若干のボーナスを出す場合もあり)。このやりかたによって莫大な投資が実行され、何年か先を見通した際に要求される能力が構築されました。そのような将来を見据えた法規制は現実を反映していました。つまり公共企業が供する発送電用の資産を建設するには、往々にして長い年月を要する現実をです。BHE社が米国西部で展開している複数州にわたる広大な送電プロジェクトは2006年に着工され、完工まで幾年かを残しています。そしてこの操業範囲は、米国本土の30%を占める10州にわたるものとなります。


私企業および公企業いずれの電力会社でも採用されてきたこの方式によって、たとえ人口成長や産業部門による需要が予想を上回ったときにおいても、電灯は灯されてきました。「安全余裕」を見込んだアプローチは、規制当局や投資家や公衆にとって妥当なものと考えられていました。しかし現在はいくつかの州において、「固定ながらも十分な利益率を定めた制度」は崩壊しました。そして投資家は、そのような破局が広まるのではないかと危惧するようになりました。さらには気候変動問題が心配に輪をかけています。地中送電が必要なのかもしれませんが、「そのように造るために、多額の費用をかけるべきだ」と考えた人が数十年前の時点で存在したでしょうか。


わたしどもはバークシャーにおいて、発生した損失の大きさを最良に見積もるよう努めています。そういった費用は山火事から生じましたが、その頻度や影響度はこれまでに増加してきただけではなく、対流性嵐の発生頻度が高まるのであれば、今後も増加しつづけると思われます。


BHE社が被った山火事による損失の勘定を締めたり、脆弱な西部諸州における将来にむけた投資の必要性を賢明に判断できるようになるには、かなりの年月がかかることでしょう。そして規制環境がどのように変わるのか、今はまだ様子見の段階です。


他の電力会社においても、パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック社[2019年に破綻]やハワイ電力社[2023年の山火事]と似たような、存亡のかかった問題に直面するかもしれません。わたしたちが現在直面している問題に対して没収的な形で手を打つやりかたは、当然ながらBHE社にとって望ましくないものです。しかしながら同社およびバークシャーはどちらであっても、悲観的な想定外の事象を乗り越えられるように構築されています。わたしたちは保険事業において、日常的にそういったことに直面しています。同事業において当社が扱う基本的な製品ではリスクを考慮に入れておりますし、想定外とはどこかで生じるものです。金融的な想定外が生じてもバークシャーは耐えることができます。しかし、それとわかりながら追銭を払うことはしません。


バークシャーでどうなるかは別として、この行く末は電力業界全体でみると不吉なものとなるかもしれません。会社によっては、もはや米国市民の貯蓄をあてにしていないかもしれず、その場合には電力会社の公企業化が必至となるでしょう。ネブラスカ州は1930年代にその道を選びましたし、国全体でみれば多くの公共電力会社があります。つまるところ、どの方式を選びたいかは、有権者や納税者や利用者が決めることとなります。


騒動が落ち着くころには、米国における電力需要やそれに応じた資本投資は膨大になるでしょう。規制が復活して不利な展開になることを、わたしは想像していなかっただけでなく、考慮すらしませんでした。バークシャーとともにBHE社に投資している2人のパートナーも含めて、わたしどもはそうしなかったことで費用のかさむ失敗を犯してしまいました。


Our second and even more severe earnings disappointment last year occurred at BHE. Most of its large electric-utility businesses, as well as its extensive gas pipelines, performed about as expected. But the regulatory climate in a few states has raised the specter of zero profitability or even bankruptcy (an actual outcome at California’s largest utility and a current threat in Hawaii).  In such jurisdictions, it is difficult to project both earnings and asset values in what was once regarded as among the most stable industries in America.


For more than a century, electric utilities raised huge sums to finance their growth through a state-by-state promise of a fixed return on equity (sometimes with a small bonus for superior performance). With this approach, massive investments were made for capacity that would likely be required a few years down the road. That forward-looking regulation reflected the reality that utilities build generating and transmission assets that often take many years to construct. BHE’s extensive multi-state transmission project in the West was initiated in 2006 and remains some years from completion. Eventually, it will serve 10 states comprising 30% of the acreage in the continental United States.


With this model employed by both private and public-power systems, the lights stayed on, even if population growth or industrial demand exceeded expectations. The “margin of safety” approach seemed sensible to regulators, investors and the public. Now, the fixed-but-satisfactory-return pact has been broken in a few states, and investors are becoming apprehensive that such ruptures may spread. Climate change adds to their worries. Underground transmission may be required but who, a few decades ago, wanted to pay the staggering costs for such construction?


At Berkshire, we have made a best estimate for the amount of losses that have occurred.  These costs arose from forest fires, whose frequency and intensity have increased – and will likely continue to increase – if convective storms become more frequent.


It will be many years until we know the final tally from BHE’s forest-fire losses and can intelligently make decisions about the desirability of future investments in vulnerable western states. It remains to be seen whether the regulatory environment will change elsewhere.


Other electric utilities may face survival problems resembling those of Pacific Gas and Electric and Hawaiian Electric. A confiscatory resolution of our present problems would obviously be a negative for BHE, but both that company and Berkshire itself are structured to survive negative surprises. We regularly get these in our insurance business, where our basic product is risk assumption, and they will occur elsewhere. Berkshire can sustain financial surprises but we will not knowingly throw good money after bad.


Whatever the case at Berkshire, the final result for the utility industry may be ominous: Certain utilities might no longer attract the savings of American citizens and will be forced to adopt the public-power model. Nebraska made this choice in the 1930s and there are many public-power operations throughout the country. Eventually, voters, taxpayers and users will decide which model they prefer.


When the dust settles, America’s power needs and the consequent capital expenditure will be staggering. I did not anticipate or even consider the adverse developments in regulatory returns and, along with Berkshire’s two partners at BHE, I made a costly mistake in not doing so.