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2022年2月27日日曜日

かいじゅうおどりをはじめよう(ジェレミー・グランサム)

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年頭になると、GMOのジェレミー・グランサムは株式市場全般の動向について触れることが通例になっています。「バブルの予言者」として名高い彼は、今年もその見解を披露してくれました。まず今回はその文章から、彼が言うところの「バブル」の定義をご紹介します。(日本語は拙訳)

LET THE WILD RUMPUS BEGIN (GMO)

バブル及びスーパーバブルの定義

当社GMOでは20年間以上にわたって、投資上のバブルを統計的にみた極端さによって定義してきました。すなわち、価格傾向からの乖離幅が2シグマに達したものをバブルとしています。たとえば、真正な硬貨を投げたときにでる表裏の回数が無秩序かつ正規分布することから、2シグマの事象とは一連のコイン投げを44回試行したときに、分布の各方向に1回生じる計算になります。

しかしながら現実の世界では、人間は(経済学的な意味において)効率的ではありません。もっと非合理にふるまいがちで、我を忘れてしまうこともあります。そのため、2シグマの非常事態はランダムすなわち44年毎ではなく、35年毎に生じてきました。私たちは金融史に登場するあらゆる資産クラスに関する入手可能なデータを調べてきました。そして300を超える2シグマ級の事象を発見しました。発展した証券市場で過去100年の間に生じた2シグマ級の株式バブルは、いずれも最終的にはバブルが形成される以前の価格傾向の水準へ完全に戻るまで下落していました。

The Definition of a Bubble and a Superbubble

We have defined investment bubbles at GMO for over 20 years now by a statistical measure of extremes - a 2-sigma deviation from trend. For a random, normally distributed series, like the sum of tosses of a fair coin, a 2-sigma event should occur once every 44 trials in each direction. This measure is arbitrary but seems quite reasonable.

In real life, though, humans are not efficient (in the economic sense) but are often quite irrational and can get carried away so that 2-sigma outliers occur more often than random - not every 44 years, but every 35 years. We studied the available data across all asset classes over financial history and found a total of more than 300 2-sigma moves. In developed equity markets, every single example of a 2-sigma equity bubble in the last 100 years has eventually fully deflated with the price moving all the way back to the trend that existed prior to the bubble forming.

「35年毎」というマジックナンバーは、よく言われるように「世代間の間隔」とおよそ一致しているように思えます。言いかえれば、「人間は、なかなか歴史から学べるようになれない」といったところでしょうか。

もうひとつ、こちらは備考です。本投稿の題名『かいじゅうおどりをはじめよう』は、絵本『かいじゅうたちのいるところ』(神宮輝夫訳)から借りたものです。原文の注釈において、タイトル"LET THE WILD RUMPUS BEGIN"は"Where the Wild Things Are."から引用した旨が記されています。

2020年11月12日木曜日

衰颯すいさつの景象は、就ちすなわち盛満の中に在り(GMO)

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ジェレミー・グランサムのファンドGMOが最近公開した文書のなかに、バリュー志向投資の不振ぶりを取り上げたものがあったので、一部をご紹介します。Covid-19の影響を追い風としたグロース志向投資が相対的に伸長する現状を、1999年になぞらえて鳥瞰しています。(日本語は拙訳)

なお、本文書では割安な例のひとつとしてMSCI Emerging Value Indexをあげています。MSCIのWebサイトで同指数の構成銘柄および比率を確認すると、最大銘柄がサムスン電子で2.85%、第2位がインドのリライアンスで2.71%、第3位が中国建設銀行で2.27%でした(2020年10月30日付資料)。たしかに代表的な人気銘柄には集中しておらず、相対的に割安な比較的大型の銘柄に分散されているようです。

TONIGHT, WE LEAVE THE PARTY LIKE IT’S 1999 (GMO)

1999年当時と同様に、現在のグロース志向投資はバリュー志向の成績を圧倒

1990年代の終盤に、バリュー志向の運用者は守りに入っていました。彼らの掲げるバリュー志向は、5年以上も前から不人気でした。バリュー型運用で名高いファンドは顧客が流出し続け、次第に閉設されていきました。彼らの顧客は「長期的にみればバリュー志向が勝つ」との信念に従っていたものの、ラッセル1000バリュー指数の成績をその親類たるグロース指数と比較すると、1999年に先立つ11年間のうちの7年間で大幅に負けていたのです。数知れぬほどの学術論文が「バリューの死」を謳いました。もちろん最終的には平均回帰の力がはたらき、バリュー志向は7年連続でグロース志向に大差をつけることとなります。初期の苦しみを辛抱できた投資家は、最終的には報われました。バリュー志向は1999年から2006年の間に、グロース志向に対して都合99%の差をつけました。

(中略)

今日に目を転じても、当時と同じリズムが刻まれています。有名で定評あるバリュー型ファンドは店仕舞いをつづけています。バリュー投資家はなおも苦しみ続け、成績はますます離されるばかりです。バリュー志向の成績がグロース志向に劣った年はこの11年間で8回になり、年率でみた負け幅も悪化しています。図3には直近5年間の状況を記しています。今日と1999年当時が奇妙なまでに一致している様子が示されています。


(中略)

これでもまだ痛みが足りないでしょうか。それでは2020年の3月23日に始まって夏のあいだを通して継続した、Covid-19によるグロース志向の急上昇をみてみましょう。3月23日から8月31日までの113日間におけるグロース志向の上昇幅は77%に達し、32%の成績差をつけてバリュー志向を打ち砕きました(これは標準偏差4.5になるできごとで、403年間に一度しか発生しない計算になります。図4を参照のこと)。ここで重要なのは、グロース志向のあげた好成績がファンダメンタルズによって正当化できない点です。今回の例はわたしたちがこれまで観察してきたなかで、価値評価の乖離幅が最も広くなったひとつとなりました。それゆえに当社は「今こそバリュー志向を受け容れる時機であり、敬遠する時機ではない」と確信しています。1999年以降の時期と同様に、「最終的に平均回帰が生じたときには、正しい側にいたい」と投資家は考えることでしょう。



Growth Trouncing Value Today…Just Like 1999

In the late 1990s, Value managers were on the defensive. The Value style had been out of favor for more than half a decade. Well-known Value firms were losing clients and going out of business. Clients had been led to believe that “in the long run, Value wins.”Yet by 1999, the Russell 1000 Value Index had underperformed its growth cousin in 7 of the preceding 11 years, and by huge margins. Countless academic papers were proclaiming the “Death of Value.” Ultimately, of course, mean reversion worked, and Value went on to trounce Growth seven years in a row; despite the early pain, patient investors were ultimately rewarded for their perseverance. From 1999 to 2006, Value beat Growth by a cumulative 99%.

(snip)

Fast forward to today and the same rhymes are echoing. Well-known and established Value shops are calling it quits. The pain for Value investors has lasted even longer and performance spreads are even worse: Value has lost to Growth in 8 of the last 11 calendar years and by even wider margins. Exhibit 3 focuses on the last 5 years, drawing eerie parallels between today and 1999.

(snip)

Not painful enough? Enter the Covid-19 Growth rally of 2020, which started on March 23 and continued all summer. From March 23 to August 31 - a 113-day run - Growth was up 77%, beating Value by a soul-crushing 32% cumulatively (a 4.5 sigma event, which officially happens once every 403 years; see Exhibit 4). This outperformance of Growth, importantly, has not been justified by the fundamentals, resulting in one of the widest valuation spreads we’ve ever witnessed. We believe this is a time for leaning into Value, not away from it. When mean reversion ultimately occurs, just as it did in the post-1999 period, investors will want to be on the right side of that trade.

備考です。標題は、最近読んでいる本『菜根譚』の前集118から採りました。現代語訳は、「総て物事が衰えるきざしというものは、いきおいの盛大な時に動き始めている」になります(講談社、久須本文雄訳より)。なお同書の文章は、機会があればあらためてご紹介したいと思います。

2020年7月6日月曜日

企業の成長性と価値評価の関係(後)(マイケル・モーブッシン)

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マイケル・モーブッシンのエッセイより、今回で最後です。「成長投資」という言葉を株主の立場からみつめなおす話題です。あっさりとした内容の文章に読めますが、企業へ長期的に投資をして大きな利益をあげる上で、この話題は核心になるものだと、個人的には考えています。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<ROIIC>
さらにここからは、ROIICの予想値が変化するとどのような影響がでるのか見てみよう。NOPAT(税引後営業利益)成長率が10%と仮定した状況に戻って、異なるROIICを設定することで保証PER倍率がどうなるのか検討していく。

ROIIC. We now turn to seeing the impact of changing assumptions about ROIIC. We’ll revert back to our 10 percent baseline NOPAT growth and consider the warranted P/E multiples assuming different ROIICs.

ここでいったん、文中で登場する用語を説明する文章に移ります。「標準PER倍率(commodity P/E multiple)」という用語についてです。

標準PER倍率(commodity P/E multiple)の基礎的な例から始めよう。この値は「年あたり1ドルの利益を生み出すが、今後は新たな価値を創出しない永久債として扱うべきもの」に対して支払う金額の倍率である。これを求めるには、資本コストの逆数を乗算すればよい。たとえば資本コストが8%であれば、標準PER倍率は12.5になる(1 / 0.08 = 12.5)。

Let’s start with the basic example of the commodity P/E multiple. This is the multiple you should pay for $1 of earnings into perpetuity assuming no value creation. You calculate the multiple by taking the inverse of the cost of equity capital. For example, if the cost of equity is 8 percent, the commodity P/E multiple is 12.5 (1/.08 = 12.5).

以下、本文に戻ります。

図4にその結果を示す。この条件における標準PER倍率が14.9であることに留意してほしい[6.7%の逆数]。それでは考えを進めてみよう。ROIICは、予想成長率を達成するために資金をどれだけ投下すべきかを示している。ROIICが高ければ、成長に対する投資はそれほど必要ではない。つまり、株主に回すことのできる現金が多く残る。その反対にROIICが低いと、成長を果たすための資金が余計にかかり、株主用の現金が少なくなる。

 

バフェットは、成長することが「好影響になることもあるし、悪影響になることもある」と付け加えた。ROIICが資本コストを下回っていれば、成長は[価値に対して]悪影響を与える。そのような企業は1ドルの資本を費やすことで、1ドル未満の価値を手にいれるのだ。その場合、企業の成長が急速であるほど、より多くの財産が失われていくことになる。

上記の図は「ROIICが資本コスト6.7%に満たないと、株価のPER倍率が標準倍率を下回る」ことを示している。企業買収の例がこれに当てはまる。一般に買収を実現することで、買い手からすれば利益は増加するものの、[企業]価値は下落する。つまり「ROIICの低い投資を実施している企業は、株価倍率を標準倍率へ押し下げている」と、みなすことができるだろう。

Exhibit 4 shows the results. Recall that the commodity P/E is 14.9. Here’s the way to think about it: ROIIC tells you how much you have to invest to achieve an assumed growth rate. A high ROIIC means you don’t need to invest much to grow, which means there’s more cash left over for shareholders. A low ROIIC means you have to invest a lot of capital to grow, leaving little for the owners.

Buffett added that the impact of growth “can be negative as well as positive.” Growth is a negative when the ROIIC is below the cost of capital. In that case, a company is spending $1 worth of capital to attain less than $1 of value. The faster the company grows the more wealth it destroys.

The exhibit shows that an ROIIC below the cost of capital of 6.7 percent yields a P/E multiple below the commodity multiple. Acquisitions are again a case in point. For buyers, M&A deals commonly add to earnings growth but subtract from value. You can think of low-ROIIC investments as pushing down the P/E multiple of a company’s stock toward the commodity multiple.

2020年7月2日木曜日

企業の成長性と価値評価の関係(中)(マイケル・モーブッシン)

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マイケル・モーブッシンのエッセイをもう少し取り上げます。今回の文章では、前回分の投稿で取り上げた割引キャッシュフロー・モデルを使い、事業の予想成長率が低下したときの価値評価をみています。(日本語は拙訳)

<成長性>
それではここで、予想成長率を10%から7%へと低下させてみよう。なお、基準年の利益を100ドルとしている。

今期末の予想利益PER
利益成長率変更前変更後変更前変更後
10% → 7%$110 $107 32.3 24.9


注目すべき点は、利益成長率が2.7%しか低下していないのに、そこから保証されるPER倍率は激しく急落して、22.9%も減少している点だ。投資家というものはPER倍率を算出する際に、現在の株価と来年[つまり今期末]の利益を使うことが多い。その結果、「次の利益はわずかな変化にとどまるようだが、それと比較すると市場は過剰に反応している」と思いこむことがある。しかし、PER倍率が大きく下落したように見えても、成長の足取りに対する期待がしぼんでしまえば、それは完全に正当化される。

(中略)

上述した計算は、バフェットが指摘した次のことを裏付けている。「価値(バリュー)を求める計算には、成長(グロース)という変数を必ず含んでいる。その変数は計算結果に対して、『軽微』以上『甚大』以下の影響を及ぼす」。資本コスト程度のリターンしか得られない事業では、価値を求める上で成長性はほとんど違いをもたらさない。しかし、投下資本に対して高いリターンをあげる事業では、成長性は価値を大きく増大させる。

Growth. Let’s start by reducing the growth rate from 10 percent to 7 percent. We’ll assume the base year earnings are $100.

Next year’s earningsP/E
GrowthBeforeAfterBeforeAfter
10% → 7%$110 $107 32.3 24.9


Note that the change in growth reduces next year’s earnings by only 2.7 percent, but that the warranted P/E multiple drops a more precipitous 22.9 percent. Investors often calculate the P/E multiple using the current price and next year’s earnings. As a result, they sometimes believe that the market overreacts to what appear to be modest changes in the near-term earnings. But if expectations for the trajectory of growth really do shift down, the large apparent drop in the P/E multiple is completely justified.

(snip)

This calculation substantiates Buffett’s point that, “Growth is always a component in the calculation of value, constituting a variable whose importance can range from negligible to enormous.” Growth makes little difference for businesses that earn a return close to the cost of capital but is a huge amplifier of value for high-return businesses.

2020年6月28日日曜日

企業の成長性と価値評価の関係(前補)(マイケル・モーブッシン)

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マイケル・モーブッシンに関する前回分の投稿で、コメント欄にてご質問がありました。「計算結果のPERが合わない」とのお問い合わせでしたが、今回の投稿はその返答になります。以下の図は、前回分投稿の内容に基づいてわたしが作成したスプレッドシートです。NOPAT成長率が10%と15%の2つの例を計算して、それぞれ掲載しています。

どちらの図でも出典元のエッセイで示されていたPERの数字(32.3および52.2)と合致していませんが、おおよそ合っていると勝手に判断して、それ以上は深入りしていません(計算途中の端数まるめ処理を調整するなど)。単純なモデルですが冷静にながめてみると、当たり前のことが数値になって現れており、ふだんの価値評価プロセスを見直す材料になりそうです。

(NOPAT成長率が10%の場合)

DCFモデル(NOPAT成長率20%)

(NOPAT成長率が15%の場合)

2020年6月26日金曜日

企業の成長性と価値評価の関係(前)(マイケル・モーブッシン)

2 件のコメント:
少し前の投稿で取り上げたマイケル・モーブッシンのエッセイでは、企業価値を評価する上での成長性や金利の影響について持論を展開しています。今回ご紹介するのは、PERのようなわかりやすい評価指標を使う上での注意を促すような文章です。(日本語は拙訳)

計算式 

それでは、PERが30台前半になるように入力値を調節した上で、割引キャッシュフロー・モデルを使って検討してみよう。 以下に、用語の定義と初期条件を記しておく。

・NOPAT(税引後営業利益)が年率10%で増加すると仮定した。NOPATとは、財務的な借入れに頼らないで企業があげる損益を示す金額である。

・ROIIC(増分投下資本利益率)が20%と仮定した。ROIICの定義は、今期と比較した来期NOPATの増分を、今期中に支出される投資額で除した割合である。たとえば、来期のNOPATが10ドル分増加すると見込まれ、今期中に50ドルを事業に投資するとき、ROIICは20%になる(=10/50)。ここで注意すべき点は、投資した資金の仕分け先が費用か資産かは問わない点である。ただし、若干の税効果は別とする。

・株主資本コストを6.7%と仮定した。これはアシュワス・ダモダラン[ニューヨーク大学スターン・スクールの教授]が2020年2月1日時点で見積もった値である。この指標は、想定されるリスクに対して投資家が期待しているリターンを測るものである。そのため無リスク金利1.5%に、株式リスク・プレミアムの推計値5.2%を加算した値となっている。話を単純にするため、対象企業の資本調達先は、株主からの出資だけとしている。なお、債券が加わっていると計算が若干やっかいになるが、筋書きが変わることはない。

・本モデルでは15年間で得られるキャッシュフローの価値を算出し、その後の期間については残存価値を見積もるために永久債として扱う。なお、NOPATを16年目にも計算している。これは15年目に実施された投資の成果を反映するためであり、さらにそれを株主資本コストを使って還元している。そうして得られた数値を現在価値へ割り引く。

以下に、このモデルにおける入力および出力値を示す。

(入力値)
NOPAT(税引後営業利益)の増加率: 10%
ROIIC(増分投下資本利益率): 20%
資本コスト: 6.7%

(出力値)
PER: 32.3

ここで増加率を15%にして他の値はそのままだと、以下のような結果が得られる。

(入力値)
NOPATの増加率: 15%
ROIIC: 20%
資本コスト: 6.7%

(出力値)
PER: 52.2

それでは次に、それらの初期条件を変化させることでPER倍率にどのような影響をもたらすのか確認しよう。[価値評価の際にPERのような]倍率を使っている投資家のほとんどは基礎的な仮定を熟慮していないため、概して彼らが予想する以上の変化があらわれる。

(つづく)

The Math

We start by calibrating our discounted cash flow model with inputs that yield a P/E multiple in the low 30s. Here are the definitions and the initial assumptions:

- We assume net operating profit after tax (NOPAT) will grow 10 percent per annum. NOPAT represents the cash profits a company would earn if it had no financial leverage.

- We assume a return on incremental invested capital (ROIIC) of 20 percent. ROIIC is defined as the change in NOPAT from this year to next year divided by this year’s investment. For example, if NOPAT grows by $10 next year and the company invests $50 this year, the ROIIC is 20 percent (10/50). Note that it does not matter if the investment is expensed or capitalized, save for some effect on taxes.

- We assume the cost of equity capital to be 6.7 percent, which was Aswath Damodaran’s estimate as of February 1, 2020. The cost of equity measures the return an investor expects to earn given the assumed risk. As such, the figure is the sum of the risk-free rate of 1.5 percent and an estimated equity risk premium of 5.2 percent. We assume the company is financed solely with equity for simplicity. Adding debt makes the calculations slightly more cumbersome but does not change the story.

- The model values explicit cash flows for 15 years after which it uses a perpetuity to estimate the residual value. Specifically, the model takes NOPAT in year 16, which reflects the benefit of the investment made in year 15, and capitalizes it by the cost of equity. That figure is then discounted to a present value.

Here’s a summary of the inputs and the output:

NOPAT growth: 10%
ROIIC: 20%
Cost of capital: 6.7%
→ P/E: 32.3

If we increase the growth rate to 15 percent and hold everything else constant, we get this result:

NOPAT growth: 15%
ROIIC: 20%
Cost of capital: 6.7%
→ P/E: 52.2

We will now change these assumptions to see what the impact is on the P/E multiple. Because most investors who use multiples do not contemplate foundational assumptions, the changes are larger than they generally expect.

備考です。ROIICの具体的な計算例としては、米マクドナルド社がSECに提出した10-K中の文章が参考になりそうです。

One-year return on incremental invested capital (ROIIC)

また本文中で取り上げられていた割引キャッシュフロー・モデルは、スプレッドシートでおおよそ再現できます。

2020年6月20日土曜日

よほどの大胆不敵ぶり(ジェレミー・グランサム)

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少し前の投稿でGMOのベン・インカー氏の文章をとりあげましたが、ここにきて大御所のジェレミー・グランサムもメディアに登場していました。おそらく自宅からのインタビュー映像から、発言をいくつかご紹介します。(日本語は拙訳)

Grantham dumping stocks (CNBC)

「現在米国で行われているのは、単なる火遊びです。わずかな期間であれば儲けを大量にあげられるかもしれません。しかし、薄氷の上でスケートをしている現実を認識しておくべきです」

"The U.S. is simply now playing with fire. You might make a lot of money in a really short time but recognize we are skating on very thin ice."

つづいて、MarketWatchからの引用です。 インタビュー映像は記事の末尾のほうにあります。

Stock-market legend who called 3 financial bubbles says this one is the ‘Real McCoy,’ this is ‘crazy stuff’ (MarketWatch)

「どうやら現在の局面は、わが投資人生における4回目の正真正銘のバブルになりつつあります。その確信は急激に深まってきました。巨大なバブルは長期間持続することもありますが、多大な痛みをもたらします。少なくとも、まさしく今はバブルの最中だと思います。経済や金融の見通しがひどく悪い時期に今回のバブルは生じましたが、そこで見られる大胆不敵ぶりは相当なものですね」 

‘My confidence is rising quite rapidly that this is, in fact, becoming the fourth, real McCoy, bubble of my investment career. The great bubbles can go on a long time and inflict a lot of pain but at least I think we know now that we’re in one. And the chutzpah involved in having a bubble at a time of massive economic and financial uncertainty is substantial.’


投資家は米国株式の保有割合をどの程度にすればよいかとの質問に対して、グランサム氏は強気派の度肝を抜くような、節を曲げない見解を披露した。 

「ゼロという数字が望ましいと思います。もし可能であればゼロ未満というのも悪くはないかと思います」

Asked what level of exposure investors should have to U.S. equities, Grantham offered an unflinching view that may leave some bulls gobsmacked.

"I think a good number now is zero and less than zero might not be a bad idea if you can stand that."

上の文章でジェレミー・グランサムは、「米国株は売りなさい」と発言しています。一方で前回の投稿でとりあげたウォーレン・バフェットは、「米国のインデックス・ファンドを買って忘れよ」としています。日本語の字面からは逆のことを言っているように読めますが、実際には同じような山頂をめざしていると個人的には受けとめています。

2020年6月12日金曜日

醜悪なPL、素敵なBS。しかし、その正体は(マイケル・モーブッシン)

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本ブログで何度か取り上げたマイケル・モーブッシン氏が職場を移り、今度はモルガン・スタンレーの一員になっていました。彼がTwitterで紹介していたペーパー(あるいはエッセイ)を読んで、はじめて気がつきました。

それはともかく、その最新エッセイから興味をひいた部分をご紹介します。損益計算書と貸借対照表の読みかたに関わる話題です。(日本語は拙訳)

The Math of Value and Growth [PDF] (Morgan Stanley)

[競争優位性からくる]影響度や投資収益率を理解することは大切だ。[事業上の]投資は伝統的に、貸借対照表に現れる有形資産の形をとっていた。その一例として、運転資本や設備投資の増加があげられる。しかしこの何十年間のうちに、投資の形態は無形資産へと変化した。そのような投資は損益計算書で支出として扱われ、貸借対照表上には概して出現しない(他社を買収する場合を除く)。

これは重要なことである。著しい資金を無形資産へ投下して、その投資から高いリターンをあげる企業は、利益が貧弱だったり、さらには赤字を出す例もよくあるからだ。投資家としては、その種の企業にできるだけたくさん投資したいだろう。「悪く見える損益計算書」の一方で「良好に見える貸借対照表」であり、その正体は「抜群の価値創造」を果たしていると思われる企業を。

これとは対照的に過去の世代においては、有形資産へ投資した結果が貸借対照表上に計上されていた。そのため当時は「良好に見える損益計算書」だが「悪く見える貸借対照表」だった。

別の言いかたをすると、2つの企業が同水準の投資をして同水準の投資収益をあげたとき、会計士が投資分をどこに仕分けするかによって、大きく異なった財務諸表がでてくることがある。我々が注視するフリー・キャッシュ・フローの金額は同じかもしれない。しかし、そこに至るまでには別の道のりを歩むわけだ。

Understanding the magnitude and return on investments is crucial. Investments have traditionally been in the form of tangible assets that show up on the balance sheet. Examples include increases in working capital or capital expenditures. But in recent decades investments have shifted in form to intangible assets, which are expensed on the income statement and are typically absent on the balance sheet (except for when one company acquires another).3

This is important because companies that invest heavily in intangible assets and have high returns on those investments often produce poor profits, or may even lose money. As an investor, you want that kind of company to invest as much as it can. The income statement looks bad, the balance sheet looks better, and the value creation looks great.

Contrast this to generations past when tangible investments were captured on the balance sheet. In those days, the income statement looked good but the balance sheet looked bad.

Saying this differently, two companies can have the same level of investment and return on investment but very different financial statements based on where accountants record investments. Free cash flow, the number we care about, may be the same but the path to get there is different.

この件は、わたし自身もときおり考えていました。たとえば、機械設備等の固定資産に資本投下する場合と、開発に携わる要員に人件費を払う場合を対比させて、その優劣を想像してみることがありました。また「悪く見える損益計算書」の点では、ウォーレン・バフェットが何度か触れていた「のれん償却費」を適宜調べるようにしています。 参考記事の一例を以下にあげておきます。

2013年度バフェットからの手紙 - 無形資産の償却費について

また企業会計の限界についてチャーリー・マンガーが触れた文章は、以下の過去記事で取り上げています。

これは最低だな(チャーリー・マンガー)

2020年6月7日日曜日

幸福な結末(GMOベン・インカー)

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本サイトでは何度か、資産運用会社GMOの創業者(の一人)ジェレミー・グランサムの文章を取り上げてきました。最近の彼は気候変動などの大きな課題に注力し、第一線的な職務からは離れていたようです。その彼が直近四半期の顧客向けレターで筆をとっていたので目を通しましたが、後任的存在のベン・インカー氏が書くところと主旨は変わらないため、今回はそのベン・インカー氏による文章をご紹介します。この波乱の時期にあって、いかにもバリュー志向のファンドらしい内容です。(日本語は拙訳)

1Q 2020 GMO QUARTERLY LETTER (GMO)

要約

3月につけた安値の時点では、今後予想される厳しい景気後退によって生じる平均的な悪影響を各種資産の適正価値へ反映したとしても、ほとんどのリスク性資産に対する市場評価は、適正あるいは割安だと思われた。そのため我々が運営している「多種資産ポートフォリオ」では、その安値近辺の数週間のあいだに株式および債券の保有割合を増加させた。経済における不確実性が非常に高い水準にあること、さらにそれら不確実性のほぼすべてが下落を招くものだという事実を考慮すれば、市場は今後も変動しつづけ、厳しい前進の時期が度重なるものと、我々は予想した。ところがその後の6週間を超える期間において、リスク性資産の価格は大幅に上昇した。特に株式は顕著で、2か月に満たない間に4-6年間分の「標準的な」リターンを実現した。その一方で、グローバル経済面での下落リスクは、我々が評価するところでは目を引くほどには減少していなかった。そこで我々は高値の機会に乗じて、「多種資産ポートフォリオ」における株式の実質配分比率を大幅に縮小させた。そして、その資金の一部をロング・ショート戦術に投入した。具体的には、相対的に割安な株式を継続保有する傍らで、市場全体の価格変動に対する感応度を低下させた。これらの施策を講じたのは、今後の市場の方向性に確信を持ったからではない。「最良のシナリオに近い状況が将来到来することを市場が想定し、現在の価格を形成している」と判断したためである。そのようなシナリオが実現する可能性は、たしかに存在する。Covid-19に対する有効なワクチンが広範に流通するか、あるいは顕著な効果を発揮する治療法が速やかに開発されるのであれば、なおさらそうだと言える。しかしそういった幸福な結末に至らない場合、ほとんどの株式市場において大幅に下落する可能性が高いと、我々は考えている。そのような魅力に欠けたリスク対リターンを比較対照した結果、我々が顧客諸氏のためにできることは、市場が提供してくれている稀有な株式選別の機会をとらえる一方で、今後何か月間において市場が実際に向かう方向に関するリスクを低減させることだと判断した。それがために、「ベンチマーク無比較資産配分戦略」における実質株式配分比率を、55%近辺から約25%へ低下させた。

Executive Summary

At the March lows, most risk assets appeared to be fair value or cheap, even assuming a moderate hit to fair value from a severe recession. In our multi-asset portfolios, we added to our holdings of equities and credit over the few weeks around the lows. Our expectation was that markets would continue to be volatile and would have a hard time making too much headway given very high levels of economic uncertainty and the fact that most of that uncertainty was to the downside. Instead, over the following six weeks we saw a massive rally in risk assets, particularly equities. We got four to six years of “normal” equity returns in the space of less than two months. Meanwhile, our estimate of the downside risks to the global economy have not notably lessened. As a result, we have taken advantage of the higher prices to significantly reduce the effective equity weight in our multi-asset portfolios, turning some of it into long/short trades where we maintain exposure to relatively cheap stocks but reduce the portfolio’s sensitivity to overall market direction. We are not doing this out of a sense of certainty as to the market’s direction from here, but due to a belief that at current prices, markets seem to be pricing in something close to the best-case scenario. Such a scenario is certainly possible, particularly if an effective and widely available vaccine or strikingly effective treatment for Covid-19 were to be developed quickly. But if we do not get that happy outcome, we believe substantial losses would be likely across most equity markets. In the face of that unattractive risk/reward trade-off, we believe we can do better for our clients by taking more risk on the extraordinary relative stock selection opportunities the market is offering and less on the direction the stock market actually takes over the coming months. To that end, we have reduced our net equity exposure in our Benchmark-Free Allocation Strategy from around 55% to about 25%.

備考です。同氏へインタビューした少し前の記事が、Barron'sのサイトに掲載されています。日本語サイトの翻訳記事は有料のようですが、本家のサイト記事は無料公開されているようです。

Stocks Are Too Risky. What GMO’s Inker Says to Buy Instead. (Barron's)

2018年12月24日月曜日

いつ買い始めればよいのか(後)(ハワード・マークス)

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前回の投稿のつづきで、ハワード・マークスによる「証券の買いどき」の説明です。『市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学』からの引用文です。

だが、真意はこうなのではないか。「(とりわけ下げどまる前に買うこと、そして市場の状態が良くないことに)恐怖を感じるから、相場が底に達して混乱が収まり、先行き不透明感がなくなるまで待とう」。だが、これまで述べてきたことから、もうすっかりおわかりではないかと思うのだが、混乱が収まり、投資家の気持ちが落ち着いたころには、バーゲンは終わっているのだ。

オークツリーでは、底に達するまでは買わない、という考え方を徹底的に排除している。

・第一に、いつ底に達したのかを知る方法などない。ネオンサインが光って知らせてくれるわけではないのだ。その時点を過ぎてからでなければ、底に達したと認識することはできない。回復が始まる前の日というのが底の定義だからである。したがって、当然のように事後でなければ認識できない。

・第二に、欲しい資産を最大限に買うことができるのは、だいたいにおいて相場が下落しているときだ。ナイフを掴もうとしない市場参加者が傍観している間に、降伏した売り手から買うのである。だが、ひとたび相場が底に達して下げどまると、当然のように売り手はほとんどいなくなる。そして、その後の反騰の時期には買い手が優勢となる。売り物は枯渇し、買い志望者は競争の激化に直面するのである。

(中略)

確実性と精度を重視する方針に基づいて実施されるであろう他の多くの投資行動の場合と同じく、底打ちするのを待ってから買いはじめるのは非常に典型的な愚行である。では、底値に狙いを定めるのが間違いだというのなら、一体いつ買えばよいのか。答えは単純明快だ。価格が本質的価値を下回ったときである。価格が下がりつづけている場合はどうなのか。さらにお買い得になっているであろうから、買い増せばよい。したがって、最終的に成功を収めるために必要なのは、(1)本質的価値を推計すること、(2)初志貫徹するための精神的な強さを身につけること、(3)結果的に本質的価値の推計が正しかったと判明すること、の三つに尽きる。(p. 316)

上の引用文には重大な注意点があります。「価格が本源的価値を下回ったとき」が買いどきだとしていますが、ハワード・マークス氏自身が本書全般で触れているように、下落中の価格はさらに下落し続ける可能性が十分に考えられる点です。その方向性に対する感覚を学べるのが本書であり、それこそが本書の持つ最大の価値ですから、上記引用の字面だけをとらえて行動に移すのは早計だと思われます。

また価格下落については、高名な2人のバリュー投資家が教示してくれた言葉を以下の過去記事でご紹介しています。

3割下がっても、油断は禁物(セス・クラーマン)
「いずれ来たる下落を見やった投資家3名の言葉」中の、チャーリー・マンガーの言葉

2018年12月23日日曜日

いつ買い始めればよいのか(前)(ハワード・マークス)

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ハワード・マークスの新刊『市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学』を読了しました。「市場サイクル」という言葉をみるとわかりきったことに思えるかもしれませんが、内容にはもっと奥行きがあり、新たに学べることのある一冊でした。ベテランの持つ知恵や業界的な話題もあり、中級以上の投資家の方にとっても一読する価値はあると思います。

本書では市場における価格変動サイクルの話にとどまらず、そのサイクルを構成する主要成分としていくつかのサブ・サイクルをあげています。そしてそれぞれについて事実や経験をもとに著者自身の見解を説明しています。具体的には、景気サイクル、企業収益サイクル、投資家自身の心理的サイクル、リスク管理面でのサイクル、信用サイクルなどです。これは言い換えれば、「市場価格の変動サイクルは、それらサブ・サイクルの合成や相互作用によって生じる」となります。この見解は本書の中核をなすもので、たしかに勉強になりました。その上でさらに参考になったのは、「個々のサブ・サイクル要因がどのようなベクトルを有しているかを考慮すべきだ」と示唆している点です。各サブ・サイクルの位相はある程度そろいやすいと思いますが、そうならないときに、世間一般とは違う自分独自の判断をくだす基盤となってくれる見方だと感じました。

さて、同書から今回引用する文章は、彼が率いるファンドであるオークツリーが投資に踏み切るタイミングについてです。個人的には、本書を読んで得られた即物的な大きな成果のひとつでした。今回は前半部だけ引用し、後半部は次回の投稿で取り上げます。残された後半の内容がどのようなものなのか、どうぞ想像してみてください。

2008年終盤の情勢を振り返っているところだが、このあたりで投資家が市場の底へと向かっている時期に、そして市場の底でどう振る舞うのかについて、話しておきたい。

そもそも底とは何か。サイクルの中で最も価格が低くなったところである。つまり底は、パニックに陥った資産保有者の最後の一人が資産を売った日、あるいは買い手よりも売り手が優勢だった最後の日と考えることができる。理由はさておき、価格が下がった最後の日であり、一番下に達した日である(もちろん、このような表現はかなり誇張されている。「底」や「頂点」といった言葉が表すのはたった1日ではなく、ある程度の期間だ。したがって「最後の日」と表現するのは、言葉のあやみたいなものである)。底を起点として価格は上昇する。それは、降伏し、売りに動く資産保有者がもはや存在しないから、あるいは売り手の売りたいという気持ちよりも、買い手の買いたいという気持ちがまさったから、である。

そこで次に出てくる疑問は「いつ買いはじめればよいのか?」である。以前の章で「落下するナイフ」という表現を用いたが、これは非常に重要な概念を表している。相場が滝のような勢いで下落しているとき、投資家はしばしば「落下するナイフを掴もうとはしない」という言葉を耳にするかもしれない。別の言い方をすると、「下落トレンドが続いていて、いつ歯止めがかかるかは知りようがない。底に達したと確信できるまで買わなくてよいのではないか」である。(p. 315)

(つづく)

2018年9月28日金曜日

この良き時代に終わりは来ない(スティーブン・ローミック)

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バリュー・ファンドFPAのマネージャーであるスティーブン・ローミックが、少し前に第二四半期のコメントを公開していたので、ご紹介します。引用する話題は、今後の市場動向を占ったものです。この手の話題は疑念を抱きながら目を通すようにしていますが、今回取り上げるチャートはそれなりに信頼できると感じました。(日本語は拙訳)

Second Quarter 2018 Commentary (FPA Crescent Fund) [PDF]

下図における青色の線は、S&P500の10年平均収益率[過去10年間であげた総リターンの騰落率を年率換算した値]を示しています。一方で緑色(若草色)の線は、家計部門が保有する金融資産のうち株式投資が占める割合を示しています。ただしこちらは10年先に進めて描線するとともに、縦軸の天地を逆転させています。それによって、S&P500収益率との相関関係がいっそう明確になるように表現しています。


この図において緑色の線は、西暦2010年に最底辺に達しています。ただし先に述べたように縦軸が逆転しているので、実際には頂点に到達していました。さらにグラフを10年分先に進めて描いているので、40%ほどの保有率に達していたのは実のところ10年早く、2000年のことでした。これは言い換えれば、家計部門による株式の保有割合が頂点に達したのは2000年であり、収益率がやがてマイナス一桁の値になることを示唆していたのです。まさしくそのとおりになりました。

この図に示したように、家計部門における金融資産中の[株式]保有率と、市場平均があげる将来リターン率の間にみられる負の相関が、56年間にわたって存在してきたことがはっきりとみられます。

それでは、現在の家計部門が金融資産の面でとっているリスクの度合いは、将来についてなにを言わんとしているでしょうか。それはつまり、米国市場の想定リターン率が一桁前半の数値へ向かおうとしていることです(図中で緑色の線が右端へと向かっている箇所は、青色の線がそちらへ到達することを暗示しています)。(p. 6)

The blue line on this chart below shows the trailing 10-year return of the S&P 500. The green line shows household equity as a percent of household financial assets, shifted forward ten years and flipped upside-down to more clearly depict its correlation to the S&P’s return.

You can see the green line reaching its nadir in 2010. That was really the peak - remember, the chart is flipped. Since it’s also shifted forward ten years, that peak of about 40% really occurred 10 years earlier in 2000. In other words, household investment in stocks hit a high in 2000 and suggested that returns would be negative single digits and that’s what happened.

The inverse relationship between household ownership of financial assets and future market returns has clearly been present for 56 years.

So what does today’s household financial asset exposure suggest about the future? Current exposure suggests that the US market’s projected return will converge towards the [low single digits] (the green line data point to the far right of the chart suggests that the blue line will end up there.)”

大衆が正しかった例は稀有であり、今回も例外とはならないようです。株価が後退する時期には、上昇するときよりも速やかに下落するものです。「この良き時代に終わりは来ない」と投資家が考える時期は、「この苦難の時代が終わるとは思えない」と投資家が考える時期へと姿を変えるのです。(p. 10)

The Crowd is rarely right, and this time is unlikely to prove the exception. When stocks do decline, they tend to fall more quickly than they rise. The good times that investors think will never end morph into bad times that investors think will never end.

2018年3月20日火曜日

企業の成長、自社株買い、株価について(ウォーリー・ワイツ)

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バリュー志向のマネージャーであるウォーリー・ワイツのインタビュー記事から、さらに引用します。オーソドックスな内容ですが、銘柄選択及び購入価格に関する大切な側面が簡潔に語られています。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問> 企業は、いつ配当を支払うべきですか。あるいはいつ自社株買いをすべきでしょうか。

<ワイツ> [投資先の]企業には、1株当たり事業価値の長期的成長に焦点を置いた資本配分を実施してほしいと考えています。その中で筆頭に挙げたいのが、「高いリターンの得られる機会があれば、その事業に再投資する」という選択肢です。また自社株買いもよいと思います。ただし本源的な事業価値よりもずっと安い値段で株が売買されている場合の話です。反対に、株価が本源的価値よりも高いのであれば、資金の下手な使いかたです。過去を振り返れば、高値のときに熱狂的に買う一方で、安値のときに多く買えなかった経営陣がたくさんいました。しかしその足跡はお粗末の連続だったにもかかわらず、継続株主にとってみれば、自社株買いは1株当たりの価値を増加させる上で非常に効果的な手段になり得ます。そして配当ですが、これは多くの株主にとって魅力的かもしれません。しかし現在の低金利環境では、「利回りを追求する」動きゆえに保証なき株価高騰を招いた例が、数多くみられます。

JR: When should a company pay a dividend or repurchase stock?

WW: We want companies’ capital allocation decisions to be focused on long-term growth in business value per share. Our first choice is reinvestment in the business if the company has high return opportunities to do so. Stock buybacks are great if the stock sells well below its intrinsic business value and terrible if the stock price is above intrinsic value. Historically, many managements have bought enthusiastically at high prices and failed to buy much at cheap prices. However, despite a history of poor execution, buybacks can be very effective in increasing the value per share for remaining shareholders. Dividends can be an attraction for many shareholders, but in this low interest rate environment, it appears that “chasing yield” has resulted in unwarranted stock price inflation in many cases.

<質問> 低成長率の現代において、利益をともなった成長ができる企業に投資するのは、どれほど大切なのでしょうか。

<ワイツ> 成長は、事業の価値を算出するのに重要な要素です。しかし私たちにとって問題なのは、事業価値に対する株価であって、成長率そのものではありません。近年では、将来の見通しが立つ成長というものが稀になってきています。また[余剰の]価値がとぼしくなってきたせいで、代金を支払いすぎた投資家が多くいるに違いありません。そのような見方をとってきたことが、近年における私たちの相対的成績に、影響を及ぼしてきました。しかし「たとえ素晴らしい企業だとしても、払い過ぎるのは投機的である」と強く思います。

JR: How important is it to invest in companies that can grow profitably in this low-growth world?

WW: Growth is an important factor in calculating business value. What matters to us, though, is stock price relative to business value, not a growth rate, per se. Predictable growth has been rare in recent years, and we believe that many investors have been over-paying because of its scarcity value. This opinion has impacted our relative performance in recent years, but we believe that over-paying for even a great business is speculating.

備考です。自社株買いと事業拡大のどちらを優先すべきかについては、ウォーレン・バフェットが昨年書いたレターでも取り上げられていました。

2016年度バフェットからの手紙(1)自社株買いについて

2018年3月8日木曜日

割引率および割安度について(ウォーリー・ワイツ)

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バリュー・ファンドのマネージャーであるウォーリー・ワイツのインタビュー記事をひきつづき引用します(前回分の投稿はこちら)。今回の話題はDCF法で使う「割引率」と、適正価格からどれだけ割安であれば購入に踏み切るのかの「割安度」の話です。オーソドックスな内容ですが、取り組む上での工夫や具体的な数字に触れていて、参考になります。(日本語は拙訳)

<質問> 調査対象の企業に対しては、どれも同じ割引率を使いますか。それともリスクや他の要因にもとづいて必要なリターン率を決めますか[=つまり割引率を適宜調整するか]。

<ワイツ> 同じ割引率を使って[評価]モデルを作成しています。現在適用しているのは9%です。しかし各企業には「事業の質」を評価した異なった点数を与えますから、モデル中で正当化された「残存倍率」[残存価値を算出する方法で使われる乗数]にそれが影響してきます。また、将来の予想キャッシュフローがどれだけ正確なのか、その信頼性は企業によって異なります。そのため、ポートフォリオ・マネージャーが「価値」からどれだけ割り引くかは、各々異なってきます。他の人たちも、そういったものと同様の要因を調整する際に、それぞれの割引率を使っているはずだと思います。ただし、企業分析中の異なった段階においてですが。

<質問> すばらしい企業には妥当な金額を出すのですか。そうでなければ、少なくとも安全余裕をどの程度とりますか。

<ワイツ> チャーリー・マンガーが示してきた「素晴らしい企業をそこそこの値段で買う」とする見識を、ウォーレン・バフェットは確信していますね。その「素晴らしい」企業と、それよりもずっと普通の企業に違いはありますが、もし価値を正しく測ることができるのであれば、その違いは評価プロセスにおいてひとまとめにすべきです。評価額から安全をみるための余裕率(私たちの標準としては最低でも30%)を妥協すべきではありません。

しかし、あらゆる株が高く、絶対的な意味で安いものがないようなときは、相対的価値という考えがしのびこんできます。手元に現金が残っていても私たちのように気にかけない運用者は、数少ないと思います(現金比率が20から25%になることもあります)。しかし今日の市場では、実のところ私たちががっちり保有している株式に、購入時の決まりとして価格対価値比を70%とした制限をずっと超えたものがあります。「70%以上の値段でもポジションを取り始めたり買い増ししたりするのか」、わたしたちもそう見られるようになってしまいました。そういった数字に何か特別な意味合いはないのですが、しかし安値で買ったときのほうが(それが安全余裕です)、良いリターンを達成する確率が高いことはわかっています。

JR: Do you use the same discount rate for every business you are researching or do you adjust your required rate of return based on risk and/or other factors?

WW: We use the same discount rate, currently 9%, for each of our models. However, we use varying “business quality” scores for different companies and this impacts the warranted “terminal multiple” in the model. Also, our confidence in the accuracy of the estimates of future cash flows will vary from company to company, and the portfolio manager will vary their required (price) discount from “value” accordingly. We believe that others who use varying discount rates are adjusting for these same factors, but at a different stage of the analysis.

JR: Will you pay a fair price for a great business? If not, what is the minimum margin of safety you require?

WW: Warren Buffett credits Charlie Munger with convincing him of the wisdom of “paying a fair price for a great business.” The differences between a “great” business and a more ordinary one should be incorporated in the valuation process so if value (V) is measured correctly, we shouldn’t have to compromise on the discount from full value that we seek (generally at least a 30% discount).

However, when all stocks seem expensive and nothing seems cheap in absolute terms, the concept of relative value creeps in. We are willing to hold more in cash reserves than most managers (sometimes as much as 20-25%), but in today’s market, we find ourselves holding onto stocks with price-to-value (P/V) ratios well above our 70% threshold for buying. We have even been known to pay over 70% to initiate or add to a position. There is nothing magic about any of these numbers, but we know that the odds of earning high returns are better when we buy at a cheaper price (the margin of safety).

2018年2月24日土曜日

ヨギ・ベラの卓見(ウォーリー・ワイツ)

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前回の投稿につづいて、ウォーリー・ワイツのインタビュー記事を引用します。今回の話題は「価格決定力」と「価値評価」についてです。ウォーレン・バフェットと同じように、ちょっとした冗談を折り込むのがワイツ氏も上手ですね。マネー・マネージャーとしての研鑽を積んでおられるようです。(日本語は拙訳)

<ロトンティ> 最近お書きになった文章の中で、「ほとんどの業界において企業側の価格決定力が弱くなった。それというのも、インターネットを利用して価格をすみやかに比較できる能力を、買い手側が手にしたからだ」としています。それではどのような種類の企業であれば、今もなお強力な価格決定力を確実に持っていると思いますか。

<ワイツ> 強力な価格決定力とは、手元に維持するのが難しいものです。今でもそれが存在すると考えられるのは、たとえばライセンスに守られた独自製品やニッチ製品、フランチャイズ契約、特許が挙げられます。また莫大な初期投資を必要とする事業であれば、優位性があるかもしれません。しかし資本がごく安価に調達できたり横溢している時期に、安全といえる企業はほとんどないでしょう。ほかには「ネットワーク効果」が発揮されることで、市場を「勝者の総取り」によって独占できるかもしれません。しかしこれも優位性が営々とつづくものは、きわめてわずかです。

<ロトンティ> 価値評価をどのように考えていますか。ディスカウンティド・キャッシュ・フロー(DCF)分析を使いますか。売却金額を定めていますか。また、好みの評価指標がありますか。たとえばPER、PBR、フリー・キャッシュ・フロー(FCF)利回りはどうですか。

<ワイツ> 私たちが信奉している理論が2つあります。第一に、「事業の価値は、将来得られるキャッシュ・フローを現在価値に割り引いたものである」こと。第二に、「事業価値は、いずれ株価に反映されるであろう」ことです。しかしヨギ・ベラが言ったように、「理論と実践に理論上の違いはないが、実践してみると違いはある」ものです。

おなじみの評価指標は、様々な文脈を考慮して使わなければ、ほとんど意味がありません。DCF分析も同様にかなり鈍い道具で、「科学的精度を有する」という幻想を生み出しかねません。以前からの冗談でこんなものがあります。「DCFで使う割引率と掛けて、ハッブル宇宙望遠鏡と解く」。その心は、「数度動かせば、別の惑星系が見える」。

そうであれ、私たちが念入りに調べる企業については、DCFモデルを必ず作成しています。ただしモデルが一点の場所として示す「価値」は、すなわち購入に踏み切れと指示するものではありません。しかしモデルを構築するアナリストはその作業を通じて、当該企業がどのように機能しているか必然的に理解することになります。またモデルが存在すること自体によって、私たちの投資検討チームが企業の魅力や価値を議論・討議しやすくなります。

FCFについて一点申し上げますと、その定義は使う人それぞれによって異なっています。私たちは「随意利用可能な」キャッシュ・フローの意味で使っています。これは保守・保全費用を支払った後の現金収支[原文はcash earnings]を指しており、成長を期した投資費用は含みません。一例をあげると、ホテルは客室を定期的に改装する必要がありますが、これは保守・保全費用になります。一方、新規の客室棟を建て増す場合は成長投資、すなわち「随意」分となります(この差異は財務諸表上で明確ではないこともありますが、違いがある点を認識しておくことが大切です)。

「売却目標」についてですが、企業価値の見積もりや計算に変更があったり、株価が満額あるいは割高だと思われたり、さらには資本投下先としてもっと魅力的な対象が他にある場合に売却します。

JR: You recently wrote that the pricing power of companies in most industries has decreased because of the shopper’s ability to quickly compare prices using the Internet. Which types of companies do you believe still have strong pricing power?

WW: Strong pricing power is hard to come by. Unique products and niches protected by licenses, franchise agreements, patents, etc. still exist. Businesses that require huge, upfront capital investments can have an advantage, but in a period of very cheap and abundant capital, few companies are safe. “Network effects” can lead to “winner take all” market dominance, but again, very few advantages are permanent.

JR: How do you think about valuation? Do you use discounted cash flow analysis? Do you set sell targets? Do you have a preferred valuation ratio such as price-to-earnings (P/E), price-to-book (P/B), free cash flow (FCF) yield?

WW: We believe in the theory that (1) the value of a business is the present value of its future cash flows and that (2) business value is likely to eventually be reflected in its stock price. However, as Yogi said, “In theory there is no difference between theory and practice. In practice, there is.”

Popular valuation ratios mean very little without lots of context. Discounted cash flow analysis is also a very blunt instrument which can create the illusion of scientific precision. There’s an old joke that DCF discount rates are like the Hubble Telescope…move it a couple of degrees and you’re in a different solar system.”

We do make DCF models on all the companies we get serious about, though. While the single point “value” that comes out of the model doesn’t dictate our buying decision, building the model forces the analyst to understand how the business works and the model itself facilitates discussion/debate among our investment team about the attractiveness and value of the business.

One note on “FCF”: Practitioners differ on the definition of “free cash flow.” We talk about “discretionary” cash flow. That is, cash earnings after maintenance capex but before growth investments. For example, regular refurbishment of hotel rooms is required - maintenance capex. Adding a new wing of rooms is discretionary - growth capex. (The difference may not always be clear from financial statements but the distinction is important.)

As for “sell targets,” we sell if our estimate or calculations change, if a stock becomes fully/over-valued, or if we have a more attractive alternative use of the capital.

さて本日2月24日(土)の夜10時には、バークシャー・ハサウェイの年次報告書(及び「バフェットからの手紙」)が公開される予定です。新たな副会長2名の件は、必ずや取り上げられることでしょう。また現在の金利環境についても触れそうな印象があります。そして、アップル社や暗号通貨の話題は登場するでしょうか。

2018年2月20日火曜日

バリュー投資家ウォーリー・ワイツのインタビュー

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ときどき取り上げるバリュー志向のファンド・マネージャー、ウォーリー・ワイツ氏が顧客向けレターの最新版を公開していました。そのなかで、株式投資情報サイトのモトリー・フールから受けたインタビュー記事が転載されていますので、一部をご紹介します。(日本語は拙訳)

Value Matters: Fourth Quarter 2017 Letter to Investors (Weitz Investment Management, Inc.)

(前略)その一方で、投資からのリターンがなだらかに、あるいは想定可能なスケジュールにもとづいて得られることはありません。株式市場から「冷や飯を食わされる」期間がしばらく続くことには、すっかり慣れっこになっています。私たちの場合、「安い株を買い、高い株を売る」ことのどちらも、早い時期に実行することがよくあります。しかし作為的な低金利環境がここまで継続していることや、[証券が]高い評価を受けている現状や経済及び地政学的なリスクに直面しても投資家が無頓着でいることを過小評価していました。その結果、慎重を期した私たちのポートフォリオに対して、相対的リターンという意味でマイナスの影響をもたらしました。

そのようなやりかたで私たちが投資するのは、「長期にわたる投資期間でみたときに、成功する確率を最大化できる」と考えているからです。顧客であるみなさんから寄せられた資金は、大学進学にかかる費用や引退後に快適な生活水準を保つといった長期的な目標に向けたものと受けとめています。そのため、短期的な成績競争には重きを置いていません(資産が大幅に増加する年があっても、やぶさかではありませんが)。

(中略)

自分たちの投資プロセスやそれを実践する能力については、満足しています。それが不朽の原則にもとづいているからです。そして、「論理的に価値を測定できる資産は、高低どちらへも誤った値付けが必ず生じる」と考えています。なぜならば、「投資家はときに感情に従い、高値で買って安値で売る」ものだからです。ウォーレン・バフェットが言っているように、私たちのやるべきことは「他人が恐れをなすときに買い、他人が欲深いときに売る」ことにあります。先だってモトリー・フールから受けたインタビューの記事を、以下に一部再掲します。私たちの取り組むバリュー投資がどのようなものなのか、思い起こす際のお役に立てれば幸いです。

On the other hand, investment returns do not arrive smoothly or on a predictable schedule. We are very accustomed to being “out of step” with the stock market for stretches of time. We are often early both in buying cheap stocks and selling expensive ones. However, we underestimated the persistency of artificially low interest rates as well as investor complacency in the face of high valuations and both economic and geopolitical risks. As a result, our overly cautious portfolio positioning has had a negative impact on our relative returns.

The reason we invest the way we do is that we think it gives us the highest probability of success over long investment periods. We are investing client capital with an eye to funding long-term goals such as college education and improving the quality of life in retirement. We are not focused on short-term performance contests (though we are not opposed to outsized annual gains from time to time).

We feel good about our investment process and our ability to implement it because we think it is based on timeless principles. We believe that assets with logically measurable values become mispriced—both on the high and low sides—because investors’ emotions lead them to, on occasion, buy high and sell low. Our job, as Warren Buffett has said, is to “buy when others are fearful and to sell when they are being greedy.” A portion of our recent interview published by The Motley Fool is reproduced on the following pages. Hopefully, it will provide a good reminder of how we approach our version of value investing.

ここからがインタビュー記事になります。

ワイツ資産管理会社における連携作業及び利益について
創業者ウォーリー・ワイツが語る、見込み投資先のみつけかたと評価方法
2017年11月、モトリー・フール社ジョン・ロトンティ記

<ジョン・ロトンティ> 質の高いビジネスをどのように定義していますか。

<ウォーリー・ワイツ> ある著名な投資家がすばらしいビジネスについて次のように定義したことがあります。「原価は1円、売値は100円。そして中毒性があること」。この冗談はやがて魅力を失います、次の一言が付け加えられてからですね。「ただし顧客の命を奪うこと」。おそらくだれもが次のような事業を保有したいと考えることでしょう。まずは、大幅な競争優位性(バフェット言うところの「濠」(moat))を持っていること。2番目に、余剰の現金を生み出すこと。3番目に、当該事業において高いリターンを生み出す再投資の機会を有していること。そして4番目に、経営者が誠実であると共に、強力な資本配分の能力を持っており、株主を事業上のパートナーとして処遇し、長期的視点から1株当たりの企業価値を成長させることに注力する人物であること、です。

<ロトンティ> 投資に関するチェックリストをお使いですか。もしそうであれば、どのような項目をあげられているのか、少しばかり教えていただけないでしょうか。

<ワイツ> 正式なリストは作成していません。しかし作るとすれば、「質の高いビジネス」に関する属性が筆頭にくると思います。「生存能力」や「支配力の継続性」に関する項目がいくつか来るでしょう。「慎重な形で」借り入れを活用することは気にしませんが、会社の財務が十分な強靭さを持ち、想像し得るほぼすべての困難時にも耐えられる点は要求します。「パラシュートは、ほぼ常に開いていますから」では不十分です。スカイダイビングをするつもりはありません。

<ロトンティ> どのようにして投資対象の範囲を狭めているのか、またその範囲がどれほど広いものなのか、ご説明いただけますか。

<ワイツ> 正式のスクリーニングはあまりやりません。しかし10名からなるアナリストとポートフォリオ・マネージャーは、各々が投資候補の案を収集しています。読み物をしたり、各社と対話をしたり、投資業界内で話を交わしたり(バイサイド[機関投資家]とセルサイド[証券会社]の両方)などです。そして、あげられた投資候補について調査分析し、議論します。そのような精査を通過したものが、購入対象となったり、あるいは価格が適切と思われる時期が来たときに実際に投資する対象として、「待機」リストに加えられます。

<ロトンティ> 好みの業界や、あるいは避けている業界がありますか。

<ワイツ> 理屈の上では、投資候補に対して広く柔軟性をもって取り組んでいます。しかしながら、その企業がどのように機能しているのか理解できることが不可欠ですし、5年から10年後にどんな様子になっており、その期間内にどれだけの現金を生み出せるのか、それらを妥当に見積もれることも必要です。「予測可能であること」を要求するので、コモディティー関連あるいは競争が厳しくて急激に変化するビジネスには、あまり興味がありません。「軽資本」で済み、ケーブルテレビのような継続契約のビジネスのほうが好みです。正味で現金を生み出し、そこそこの借入で済む企業がいいですね。

[以降もインタビューは続く]

Collaboration and Profit at Weitz Investment Management
Founder Wally Weitz talks about how he finds and evaluates potential investments.
By John Rotonti • The Motley Fool • November 2017

John Rotonti:How do you define a high-quality business?
Wally Weitz: One well-known investor used to define a great business as one whose product cost a penny, sold for a dollar, and was addicting. That joke lost its appeal when people began to add, “but it kills its customers.” We would probably all like to own businesses that (1) have significant competitive advantages (Buffett’s “moat,”) (2) generate excess cash, (3) have high return reinvestment opportunities in the business, and (4) management with integrity and strong capital allocation skills who treat shareholders like partners in the business and who focus on long-term growth in the per share value of the business.

JR: Do you use an investing checklist? If so, would you mind sharing a few of those checks?
WW: We don’t have a formal list. If we did, the attributes of a “high-quality business” listed in No. 1 would be on it. There would also be some “viability” and “staying power” items. We are fine with the “prudent” use of leverage, but we insist that a company’s balance sheet be strong enough to withstand almost any conceivable type of adversity. “The parachute almost always opens” is not good enough—we don’t go sky-diving.

JR: Please explain how you narrow down your investable universe and how large that universe is.
WW: We do not do much formal screening, but each of our ten analysts and portfolio managers collects potential ideas from reading, interacting with other companies, talking to others in the investment business (both buy side and sell side), etc. Potential ideas are researched and discussed. Those that survive scrutiny may be bought or placed on the “on-deck” list for future investment when the price is right.

JR: Are there any industries you tend to prefer? Or avoid?
WW: We have great theoretical flexibility in what we may invest in. However, we need to be able to understand how the business works, to be able to make a reasonable estimate of what it will look like in 5-10 years and how much cash it will generate over that period. The need for predictability tends to lessen our interest in commodity related or highly competitive and rapidly changing businesses. We tend to favor “capital-light” and subscription businesses like cable TV. We like net cash generators and companies with modest leverage.

質の高いビジネス(high-quality business)に関する話題は、過去記事でも何度か登場しています。たとえば、以下のような記事があります。

・企業はすばらしくても自分はがっかり(アーノルド・ヴァンデンバーグ)
・レストランを品定めするように(ジョン・テンプルトン)

2018年1月8日月曜日

強気相場がますます高騰する可能性を感じる(ジェレミー・グランサム)

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GMOのジェレミー・グランサムが1月3日付で、「私見」と断り書きをした文章を公開していました。今回の株式市場がこれからどうなるのか、過去のバブルを振り返った上で、以前の彼とはずいぶん異なる見解を披露しています。冒頭部及びまとめの部分を中心にご紹介します。(日本語は拙訳)

Bracing Yourself for a Possible Near-Term Melt-Up (A Very Personal View) (GMO) [PDF]

バリュー投資を奉じる投資家の一員たる私自身が、今やなんとも興味深い場所に位置しているものだと感じています。「現在の市場は、米国史上において最も高値をつけた時期のひとつだ」と認識する一方で、巨大株式バブルの歴史を研究する一人として、「長く続いてきた今回の強気相場において、急騰期あるいは高騰期に踏み入ったことを示す兆候が現在観察できる」ことを認める自分がいるからです。市場が高値をつけていることを示すデータは、明快で現実のものです。「現在の価格が際立って高い」との結論を株式市場分析から得るのと同様に、たしかなものだと言えます。それとは対照的に、「株価高騰が続く」とする私見は、統計的要因と心理的要因を混ぜ合わせたところから導いています。ただしそれらの要因は、それぞれが大きく異なった過去の時期に基づいており、それがために利用可能な情報の多くが容易には比較できません。さらには、米国それも数件の事例に著しく依存しています。しかしながらおかしなことに、今回のバブルという意味では、「割高だ」とする単純な事実よりも、統計的ではないデータのほうがより説得力があると感じられます。読者のみなさんも、どうなのかは判断できないことでしょう。それはともかく、この文章で私がやるべきことは、統計的なものだけでなくあけっぴろげなものも合わせて、なるべく明瞭に証拠を示すことであります。(p. 1)

I find myself in an interesting position for an investor from the value school. I recognize on one hand that this is one of the highest-priced markets in US history. On the other hand, as a historian of the great equity bubbles, I also recognize that we are currently showing signs of entering the blow-off or melt-up phase of this very long bull market. The data on the high price of the market is clean and factual. We can be as certain as we ever get in stock market analysis that the current price is exceptionally high. In contrast, my judgment on the melt-up is based on a mish-mash of statistical and psychological factors based on previous eras, each one very different, so that much of the information available is not easily comparable. It also leans very heavily on a few US examples. Yet, strangely, I find the less statistical data more compelling in this bubble context than the simple fact of overpricing. Whether you will also, dear reader, remains to be seen. In any case, my task in this note is to present the evidence, both statistical and touchy-feely, as clearly as I can.

私の予想のまとめ(まったくの個人的見解によるもの)

・株価の高騰あるいはバブルの最終期が今後6か月から2年にわたって生じる可能性が、例えば50%以上の確率で考えられます。

・もし株価高騰が続いたとすれば、そのあとにバブルの破裂あるいは価格下落が生じる確率は、相当高い(例えば90%以上の確率)と思われます。

・もし株価高騰の後に下落が生じるとすれば、50%程度の下落率になる可能性がかなりあると思われます。

・そのような下落が生じた後には、1998年以前の水準だった15倍超の倍率まで反騰する可能性がかなり高い(2/3以上)と思われます。ただし直近20年間で見られた傾向の平均には若干とどかないでしょう。それ以降の傾向は、以前に記したレター『鳴動ならんや、さめざめと』で触れた航路を進み、従前の平均へとゆるやかに近づいていくと思われます。(p. 12)

Summary of my guesses (absolutely my personal views)

- A melt-up or end-phase of a bubble within the next 6 months to 2 years is likely, i.e., over 50%.

- If there is a melt-up, then the odds of a subsequent bubble break or melt-down are very, very high, i.e., over 90%.

- If there is a market decline following a melt-up, it is quite likely to be a decline of some 50% (see Appendix).

- If such a decline takes place, I believe the market is very likely (over 2:1) to bounce back up way over the pre 1998 level of 15x, but likely a bit below the average trend of the last 20 years, as the trend slowly works its way back toward the old normal on my“Not with a Bang but a Whimper” flight path.

以下の図は、現在の株式市場がやがてバブルの頂点に達すると仮定したS&P500のチャートです(グランサム氏による予想)。3400や3700という数字が書かれています。

(p. 4)

最後におまけです。ビットコイン相場と過去のバブル相場における頂点を対比したチャートです。(緑色:ビットコイン、えんじ色:南海バブル、紺色:チューリップ・バブル、黄色:1929年世界恐慌時のS&P500)

(p. 11)

2017年12月20日水曜日

投資家トッド・コームズの仕事量

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バークシャー・ハサウェイのトッド・コームズと言えば、ウォーレン・バフェットが次の世代を見すえて運用を任せているマネー・マネージャーの一人です(もうひとりは、テッド・ウェシュラー)。半年以上前のものですが、彼がどのように仕事に取り組んでいるのか触れた記事がありましたので、ご紹介します。同様の話題について過去にも投稿しましたが、補完する内容が語られています。(日本語は拙訳)

EXCLUSIVE: Warren Buffett's money managers, Todd Combs and Ted Weschler, speak (Yahoo! Finance)

「朝は7時か8時にオフィスに着いて、夜の7時か8時まで読み物をしていますね」、彼は笑いながらそう答えた。「家に帰って家族と会った後は、眠りに就くまでベッドの中でさらに1,2時間読んでいます。想像がつくと思いますが、1週間にかかってくる電話はほんの3,4件ほどですから、仕事に割込みが入ることはごくわずかです。ついてくれているアシスタントの女性がすばらしく、私の読むものについて熟知していますし、ある程度はなんでも用意してくれます。私が印をつけて彼女に戻す、といった若干のやり取りをするわけです。ファイリングなどは、きちんとした決まりを定めてあります。しかし文字通り1日に12時間、あらゆるものについて読んでいます」。

(中略)

「ええ、読む対象もあらゆる範囲にわたっています。当然なのは、まず新聞です。それから、250社前後の公開企業を毎四半期監視しているので、各社の四半期報告書には目を通しています。さらにはSEC[証券取引委員会]に提出された各種報告書も数多く読みます。また[業績発表説明会の]トランスクリプトも多々読んでいます。聴くよりも読んだほうが速いですし、会話で出てくる双方の小競り合いも飛ばせますから」。

「SECへの提出資料をいろいろ読むほかに、業界誌もいろいろと数十誌購読しています。それから、相談できるすばらしいアナリストが一人いて、チャネルの現状を調べる際に手伝ってくれます。たとえば、顧客や供給者や元従業員などと話ができるわけです。実のところ、「実際にそうだったらどうなのか」という見方をするように心がけています。どの証券を調べる際にも、『企業全体を保有していたらどうなるだろうか』という感覚で取り組むようにしています」。

“I get in around 7 or 8, and I read until about 7 or 8 at night,” he says with a laugh. “And I go home, and see my family, and then I’ll read for another hour or two in bed at night. And you know, there might only be three to four phone calls the entire week. So there are very, very few interruptions. I have a great assistant who knows everything that I read, and she kinda provides everything, and there’s a back and forth between us where I’ll mark it up, and give it back to her. And we have a system for filing and so forth. But it’s literally just reading about 12 hours a day of everything I just mentioned.”

*

“Well it runs the gamut as well. I would say certainly newspapers. I follow about 250 public companies every quarter. And so I go through, for each quarter each one of those companies, their quarterly reports. So a lot of S.E.C. filings. A lotta transcripts. I can read a transcript much faster than I can listen to the conference call. And you weed out some of the friction there as well.

“So a lot of S.E.C. filings. A lotta trade magazines. There are a couple dozen of those that I subscribe to. And then I have a wonderful analyst who helps me with channel checks where we talk to customers, suppliers, ex-employees and so forth. We’re really trying to get a view of what it would be like - every security that we look at, we’re really trying to get a sense of what it would be like to own the entire business.”

トッドの仕事ぶりは、まさしくGEICO時代のルー・シンプソンを思い出させますね(参考記事)。

2017年12月16日土曜日

パッシブはアクティブである(GMO)

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ジェレミー・グランサムのファンドGMOのサイトに掲載されていた「S&P500の価値評価」の文書から、もう少し引用します。なお同文書が読者として想定しているのは、機関投資家だと思われます。そのため、投資を生業としていない一般の個人投資家には当てはめにくい指摘があります。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

パッシブの道を選ぶことはアクティブな判断である
人間には、ここしばらくに起きたできごとを延長して将来を予想する性質があります。絶対的および相対的基準のどちらにおいても、米国株式が著しい成績をあげてきたことで、多くの人によって「米国株こそ保有すべき唯一の資産であり、それをパッシブに保有するやりかたがもっとも安あがりだ」と推奨される理由が、容易にうかがえます。

そうだとしてもパッシブを選んだ判断は、アクティブに決めた結果だと言えます。そして現在の投資家が十分な注意を向けていない重大なリスクがそこに存在するのではないか、と私たちは考えています。多くの投資家がパッシブ運用をますます強要するにつれて、アクティブ運用による各種の投資機会が増加しています。S&P500指数に連動したパッシブ運用へ資産を配分すると決めることは、長期的リターンを決定づけるものとして私たちが最も重要だと信じている要因、すなわち価値評価水準(valuation)を無視することを意味しています。そこに至っては、みずからを「投資家である」と語る資格はありません。「投機家」と名乗ることはできますが、「投資家」ではありません。パッシブ運用を選ぶことは、アクティブ投資家が持つある能力を排除することになります。それは、「指数を構成する証券の中で、とんでもなく割高な銘柄の割合を減らす」能力です(当然ながら私たちの好みは株式の銘柄選択においても同様で、価値評価に基づいたやりかたです)。史上3番目に割高な米国株市場に際して、パッシブな指数における構成比率と同じ配分をすることは、いずれは非常に高くつく決定だと私たちは考えています。それにもかかわらず、パッシブ投資は今もなお人気のある選択肢です。米国株市場におけるパッシブなインデックス投資の占める割合は、30%前後に至っています。(p. 8)

(中略)

絶対的な面からみると、投資機会は乏しくきわめて困難な状況です。しかしながら、現在のように資産価格が完璧と言える状況であれば、資産への値付けを大きく変動させても、失望を招くことはほとんどないでしょう。そうであれば私たちからは、現金的な短期性資産を大量に保有することをお勧めします(私たちの資産配分方針も同様です)。クマのプーさんが語った不滅の忠告を思い返してみてください。「なにもしないことのありがたさはバカにできないよ」。お好みであれば、次のように覚えておくのもよいでしょう。「することが何もなければ、何もするな」[過去記事1, 過去記事2]。(p. 111)

Going passive is an active decision
Human nature is to extrapolate the recent past. It is easy to see, given the strong performance of US equities in both absolute and relative terms, why many are suggesting they are the only asset you need to own. And the cheapest way of owning them is passively.

However, the decision to be passive is still an active decision - and we would suggest one with important risks that investors are not paying adequate attention to today. As more and more investors turn to passively-managed mandates, the opportunity set for active management increases. A decision to allocate to a passive S&P 500 index is to say that you are ignoring what we believe is the most important determinant of long-term returns: valuation. At this point, you are no longer entitled to refer to yourself as an investor. You may call yourself a speculator, but not an investor. Going passive eliminates the ability of an active investor to underweight the most egregiously overpriced securities in the index (we obviously prefer a valuation-based approach for stock selection as well). When faced with the third most expensive US equity market of all time, maintaining a normal weight in a passive index seems to us to be a decision that will likely be very costly. Yet despite this, it remains a popular path, with around 30% of all assets in the US equity market in the hands of passive indexers (see Exhibit 9).

*

In absolute terms, the opportunity set is extremely challenging. However, when assets are priced for perfection as they currently are, it takes very little disappointment to lead to significant shifts in the pricing of assets. Hence our advice (and positioning) is to hold significant amounts of dry powder, recalling the immortal advice of Winnie-the-Pooh, “Never underestimate the value of doing nothing”or, if you prefer, remember - when there is nothing to do, do nothing.

2017年12月4日月曜日

S&P500に対する価値評価(GMO)

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今回は、ジェレミー・グランサム氏のファンドGMOのWebサイトで公開されている文書から、S&P500の価値評価(valuation)の状況について触れた文章を一部ご紹介します。(日本語は拙訳)

The S&P 500: Just Say No (Matt Kadnar and James Montier; GMO White Paper) [PDF]

S&P500に対する価値評価

我々が行うあらゆることの基盤となるものが、価値評価です。ですから、まずは現在のS&P500が受けている評価の状況に対して受託者スミス氏[説明省略]が抱いている悩みから始めましょう。はじめに独自のフレームワークを用いることで、我々が実施している価値評価を見て回ります。次に、リターンに寄与する要因を理解していきます。

どのような証券市場においても、発生するリターンは4つの要素に分解できます。長期的にみた場合、リターンは配当(成長及び利回り)によってのみ、ほとんどが説明できます。株式の保有者は「企業が長期的成長のために費やせるように」と資本を提供しているのですから、報酬を受ける必要があります。その報酬は、企業がリスキーな投資から生み出すキャッシュフローから利益や配当の形でまかなわれます。

証券という資産クラスを保有することで儲けをあげる際に、寄与する要因として他に考えられるものは、株価倍率(PER)そして利益率上昇の2つです(これらを合わせて「価値評価要素」と我々は呼んでいます)。それら4つの要素はひとつの個性を形成しています。つまり、リターンは常に4つの要素へと(事後的に)分解できるという性格です。図表1では、西暦1970年以降におけるS&P500のリターン[黒]を4要素(利益[青]、配当[黄]、利益率[えんじ]、PER[緑])に分解しています。利益率[えんじ]とPER[緑]は非常に長期にわたって、基本的に横ばいに推移してきました。前述したように長期間でみると、生じたリターンの多くは配当がもたらしています。


これと同じ分割手法を直近7年間に当てはめてみると、図表2に示すように異なった展開があらわれます。予想されるとおり、利益と配当は成長しています。しかし大幅に拡大したPER[緑]と利益率[えんじ]が4つの中で最も強く押し上げたことで、リターンに対して著しく寄与しています。これは短期間にみられるよくある例であり、価値評価要素の移り変わりがリターンの変動性を司っています。


もし利益と配当が見事なまでに安定していれば(現在はそのとおりですが)、「この7年間に味わったすばらしいリターンをS&P500が今後ももたらし続ける」と信じるのは、「この7年間と同じように、PERと利益率が今後も拡大し続ける」と信じるのと同じことになります。歴史を振り返ると、この仮定が存在した記録は、慎ましく言っても極めてわずかしか残されていません。「直近の状況が際限なく継続する」と仮定するのはおどろくほど容易なことですが、資産を扱う市場においてそのような仮定をするのは、この上なく危険です。おそらく現在のS&P500がそうであるように、割高な市場においては特にそうだと言えます。(p. 1)

Valuation of the S&P 500

The bedrock of everything we do is valuation, so let’s begin addressing Trustee Smith’s concerns with a look at the current valuation of the S&P 500. We will start our tour of valuation by examining our own framework. This in turn starts by understanding the drivers of return.

For any equity market, the return achieved can be broken down into four component parts. In the long term, the return is almost exclusively driven by dividends (growth and yield). Equity owners need to be compensated for providing capital to companies to help fund their long-term investments. That compensation comes from the cash flows the companies generate from their risky investments via earnings and dividends.

The two other ways to make money from owning an equity asset class are from multiple (P/E) or margin expansion (collectively we call these elements the valuation components). Together these four components make an identity - we can (ex post) always decompose returns into these factors. In Exhibit 1, we show a return decomposition for the S&P 500 since 1970 based on these four factors (earnings, dividends, margins, and P/Es). Margins and P/Es are basically flat over this very long time period. As we stated above, over the long term, the returns achieved have been delivered largely by dividends.

Using this same decomposition over the last seven years, we see quite a different story in Exhibit 2. Earnings and dividends have grown as one would expect, but P/E and margin expansion have significantly contributed to returns with multiple expansion actually providing the biggest boost of the four. This is typical of short-term periods, where the volatility of returns is dominated by shifts in the valuation components.

If earnings and dividends are remarkably stable (and they are), to believe that the S&P will continue delivering the wonderful returns we have experienced over the last seven years is to believe that P/Es and margins will continue to expand just as they have over the last seven years. The historical record for this assumption is quite thin, to put it kindly. It is remarkably easy to assume that the recent past should continue indefinitely but it is an extremely dangerous assumption when it comes to asset markets. Particularly expensive ones, as the S&P 500 appears to be.