後半部は、先日Fortuneに掲載されていたものと同じでした。本ブログでも「ゴールドや債券よりも株式がよい理由(ウォーレン・バフェット)」で取り上げています。未見の方はそちらをご覧ください。今回ご紹介するのは、持ち株に加わったIBMに関する話題です。ウォーレン、あいかわらずイケてます。(日本語は拙訳)
IBMを例にしてみましょう。ビジネス界を注視している人でしたらみなさんご存知のように、歴代CEOのルー・ガースナーとサム・パルミサーノはすばらしい業績をあげてきました。20年前には破産寸前だったIBMを立てなおし、今日では際立った存在となっています。彼らのなした経営管理面での業績は、まさにたぐいまれなものでした。
一方、それにひけをとらないほど財務管理面も秀でています。特に近年になって、財務がより柔軟になっています。実のところ、これほど上手に財務管理ができている大企業は他に思いあたりません。IBMの株主にとって望ましい利益を、著しく増やしてくれているのです。同社は借金をうまく活用し、もうけにつながる買収を続けています。買収の対価はほとんどの場合、現金払いです。さらには、自社株買いを積極的に行っています。
現時点のIBMの発行済株式数は11億6,000万株で、私たち[バークシャー]はそのうちの5.5%にあたる6,390万株を保有しています。当然のことですが、同社が今後5年間であげる利益がどうなるかは、私たちにとって非常に重要です。加えて、同社はその期間に4兆円ほどを投じて自社株買いをやるでしょう。では、ここで問題です。バークシャーのような長期投資家にとって、その間はどうなってほしいでしょうか。
速攻でお答えしましょう。その5年間はIBMの株価が低迷するよう祈るべきです。
ちょっと計算してみましょう。IBMの株価がたとえば平均で200ドル[=16,000円]だとします。同社は2億5000万株を買うのに4兆円払うことになります。[自己株式を除いた]発行済株式総数は9億1000万株になり、私たちは同社の7%を保有することになります。逆に5年間の株価が平均300ドルに上がると、IBMは[同じ金額では]1億6700万株しか買えません。すると5年後の発行済株式総数は9億9000万株で、私たちの保有率は6.5%となります。
もしIBMが5年間で1兆6,000億円の利益をあげるとしたら、株価が上がる場合よりも株価が下がって「残念な」場合のほうが、私たちのぶんは80億円多くなります[1兆6,000億円の0.5%]。時がたつと、私たちが[安値で]買った株式は、高値で自社株を買う場合とくらべると、1,200億円ぐらいは価値が大きくなるでしょう。[IBMの現在のPERは15。そのため、80億円 * 15 = 1,200億円]
単純なことです。将来、株を買い増しするつもりであれば、自分のお金を使うのでも、あるいは間接的(投資先の企業が自社株買いをする)になっても、どちらにしても株価が上がれば痛むのはあなたです。逆に株価が打撃を受ければ、あなたが得をします。ですが、人の感情というのは話をややこしくするもので、ほとんどの人は、株を買い増ししようとしている人も含めて、株価が上がるのを見るとうれしくなってしまいます。そういう株主は、まるでガソリンが値上がりしているのに喜ぶマイカー通勤者のようです。
「今日の分はタンクの中にちゃんと入ってるぜ」
チャーリーと私の考え方は、多くのみなさんには納得してもらえないかもしれません。私どもは人の振舞いを十分に観察して、そういうのは無意味だとわかったのですが。ただ、私どもがどうやって計算したのかはわかって頂ければと存じます。ここで打ち明けておくべきでしょう。私も若かった頃には、相場が上昇すると喜んだものでした。そのうち、ベン・グレアムの「賢明なる投資家」を読む機会がありました。第8章を読むと、そこには投資家は株価の変動をどう捉えるべきか書いてありました。読むや否や、目からうろこが落ちました。それからというもの、株価の下落を歓迎するようになったのです。そのような本に巡り合えたのは、人生のうちでもっとも幸運だったことの一つです。
最後になりますが、IBMへの投資の成否は、第一には今後どれだけ利益をあげてくれるかにかかっています。しかし、その次に重要なのは、同社がそれなりの規模で自社株をどれだけ買ってくれそうか、という点です。もし自社株買いが進んで、発行済株式総数が6,390万株[すなわち、バークシャーの持株数]になるようであれば、私も節約家の看板を下ろして、バークシャーの社員のみなさん[270,000名]に有給休暇をお贈りします。
Let’s use IBM as an example. As all business observers know, CEOs Lou Gerstner and Sam Palmisano did a superb job in moving IBM from near-bankruptcy twenty years ago to its prominence today. Their operational accomplishments were truly extraordinary.
But their financial management was equally brilliant, particularly in recent years as the company’s financial flexibility improved. Indeed, I can think of no major company that has had better financial management, a skill that has materially increased the gains enjoyed by IBM shareholders. The company has used debt wisely, made value-adding acquisitions almost exclusively for cash and aggressively repurchased its own stock.
Today, IBM has 1.16 billion shares outstanding, of which we own about 63.9 million or 5.5%. Naturally, what happens to the company’s earnings over the next five years is of enormous importance to us. Beyond that, the company will likely spend $50 billion or so in those years to repurchase shares. Our quiz for the day: What should a long-term shareholder, such as Berkshire, cheer for during that period?
I won’t keep you in suspense. We should wish for IBM’s stock price to languish throughout the five years.
Let’s do the math. If IBM’s stock price averages, say, $200 during the period, the company will acquire 250 million shares for its $50 billion. There would consequently be 910 million shares outstanding, and we would own about 7% of the company. If the stock conversely sells for an average of $300 during the five-year period, IBM will acquire only 167 million shares. That would leave about 990 million shares outstanding after five years, of which we would own 6.5%.
If IBM were to earn, say, $20 billion in the fifth year, our share of those earnings would be a full $100 million greater under the “disappointing” scenario of a lower stock price than they would have been at the higher price. At some later point our shares would be worth perhaps $1.5 billion more than if the “high-price” repurchase scenario had taken place.
The logic is simple: If you are going to be a net buyer of stocks in the future, either directly with your own money or indirectly (through your ownership of a company that is repurchasing shares), you are hurt when stocks rise. You benefit when stocks swoon. Emotions, however, too often complicate the matter: Most people, including those who will be net buyers in the future, take comfort in seeing stock prices advance. These shareholders resemble a commuter who rejoices after the price of gas increases, simply because his tank contains a day’s supply.
Charlie and I don’t expect to win many of you over to our way of thinking - we’ve observed enough human behavior to know the futility of that - but we do want you to be aware of our personal calculus. And here a confession is in order: In my early days I, too, rejoiced when the market rose. Then I read Chapter Eight of Ben Graham’s The Intelligent Investor, the chapter dealing with how investors should view fluctuations in stock prices. Immediately the scales fell from my eyes, and low prices became my friend. Picking up that book was one of the luckiest moments in my life.
In the end, the success of our IBM investment will be determined primarily by its future earnings. But an important secondary factor will be how many shares the company purchases with the substantial sums it is likely to devote to this activity. And if repurchases ever reduce the IBM shares outstanding to 63.9 million, I will abandon my famed frugality and give Berkshire employees a paid holiday. (PDFの6ページ目)
2 件のコメント:
== No title ==
IBM,もっているのですが英語力がなく「株主の皆さんへ」が読めなくて残念だったところだったので嬉しいです。ありがとうございます。
== vis2004tachikawaさん、ありがとうございます ==
早速お読み頂きまして、こちらこそありがとうございました。意訳ばかりなので、ご迷惑をおかけしなければよいのですが。
ところで、IBMは右肩あがりで株価が上昇してますね。ウォーレンは、へこむかもしれませんね。
またMMIの件は、おめでとうございました。わたしは発表後にrisk arb.としていったんは買ったのですが、欧州委員会のgoogle関連の訴状をすこし読んでみて、あやしい雰囲気だったので、尻尾を巻いて逃げ出してしまいました。
日本株についても割安な銘柄をご紹介されているようですね。私のほうもアイデアをお借りに、ブログへお邪魔させて頂きます。
それでは、このあたりで失礼します。
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