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2018年6月24日日曜日

妥当な価格で優良企業を買うためのチェックリスト(GuruFocus創業者)

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コメント欄でリュウジさんがご紹介くださった本『とびきり良い会社をほどよい価格で買う方法』を少し前に読みました。投資で利益をあげるにはさまざまなやりかたがあると思いますが、本書ではあくまでもひとつのやりかたにこだわっています。題名が示すように「とびきり良い会社をほどよい価格で買う」、これだけに焦点を当てて平均以上の成績をあげるための戦術論全般を説明しています。対象読者としては「株式投資中級者」を想定しているようです。チャーリー・マンガー的な信条をそのまま掲げている点には感心しましたが、あとは本書のやりかたで望む成果をあげられるかどうかですね。

さて本書から今回引用するのは、p. 197に掲載されている「妥当な価格で優良企業を買うためのチェックリスト」です。これは完全無欠なものではないですし、状況によって要否が変わることもあるでしょう。しかし「あくまでもひな形として参考にし、個々人が吟味発展させる」という意味では、役に立つと思います(たとえば日本企業を評価する場合には、このままでは適用しにくい)。なによりも明文化され、リスト化されていることに意義があります。

なお、訳語「優良企業」に対応する原語は"Good companies"のようです。妥当な訳出だと思いますが、念のため記しました。

妥当な価格で優良企業を買うためのチェックリスト

1. 私はこの事業を理解しているか。

2. 企業を守る経営上の堀があるおかげで、今後5年から10年間、同じか類似した製品を売り続けることができるか。

3. この業界は変化が激しいか。

4. この企業には多様な顧客基盤があるか。

5. 固定資産が少ない事業か。

6. 景気循環に大きく影響される業界か。

7. この企業にはまだ成長の余地があるか。

8. 過去10年間、好景気のときも不景気のときも常に利益を出し続けてきたか。

9. 営業利益率は安定して2桁を維持しているか。

10. 利益率は競合他社よりも高いか。

11. 15%以上のROIC(投下資本利益率)を過去10年にわたって維持しているか。

12. 一貫して2桁の成長率で、売上高と利益を伸ばしてきたか。

13. 財務基盤がしっかりしているか。

14. 経営陣は自社株をかなり保有しているか。

15. 経営陣の収入は似た規模の他社と比べてどうか。

16. インサイダーはこの企業の株式を買っているか。

17. 内在価値やPER(株価収益率)で測った株価は妥当か。

18. 歴史的に見て、現在のバリュエーションはどうか。

19. これまでの不況期に株価はどうだったか。

20. 自分の調査にどれくらいの自信があるか。

著者であるチャーリー・ティエン氏が触れているように、上記のリストには投資界の達人たちが示した教えが取り入れられているので、たとえばフィル・フィッシャーの15項目と似たものがあります。ただし上記のリストは定量化しやすい項目ばかりになっているのが特徴的です(本書内で解説あり)。もちろんそれは、著者が運営する投資サイトGuruFocusで定量的評価ツールを提供していることの裏返しでもあるでしょう。しかし、閾値を厳密に定める評価には長短があることを承知していれば、「達人の教えをなるべく定量的に実践試行しつづける」ことでも、相応の成果をあげられると思います。

2018年6月20日水曜日

2018年バークシャー株主総会(9)ウェルズ・ファーゴについて(了)

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答から、ウェルズ・ファーゴ等の不祥事に関する話題は今回でおわりです。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<ウォーレン・バフェット> それは、ティノ・デ・アンジェリスという名の人間があらわれたときのことです[詐欺事件の首謀者]。たしかニュージャージー州のベイヨンだったと思いますが...

スキャンダルが発生した後の、1964年に開催されたアメックスの株主総会には、実はわたしも参加しました。その席で、ある参加者が監査人に歩み出るよう要求しました。

具体的な名前は挙げませんが、ある大手会計事務所の一員だった監査人がマイクのところへ足を進めました。そして次のように質問されました。「当社はあなたがたに昨年いくら支払ったのですか」。

その監査人は答えました。質問者はさらに問いただしました。「それでは、ここから15kmほど離れたベイヨンに赴いて、タンクの中に油がどれだけ残っているか調べてきてほしいと言われたら、一体いくらの追加費用をわれわれに要求するのですか」(微笑)。

実はちょっとした出来事がありました。ある人物がベイヨンの酒場から[会社に]連絡してきて、詐欺話が進んでいると知らせてくれていたのです。しかしアメックス側はそのことを聞きたくなかったため、耳を傾けませんでした。[参考サイト]

強大な企業がその後にむかえたのは、彼らいわく「息も絶え絶えの状態」でした。ですから、過ちとはいずれ犯してしまうものなのです。

いつかはバークシャーでも不愉快なニュース沙汰になることは、請け合います。それが何かはわかりません。しかし繰り返しになりますが、その後わたしたちがどのように行動するか、それがいちばん大切です。

そのような状況で尻込みしていたことが、わたしにも何度かあります。そのたびにチャーリーは、「何か行動を起こせ」と小突いてきました。ですから、みなさんが知らないところでチャーリーもいろいろと活躍してきたのです(微笑)。

(この質疑応答は、おわり)

And when some guy named Tino De Angelis in, I think it was Bayonne, New Jersey -

In fact, I went to the annual meeting in 1964 of American Express after the scandal developed, and somebody asked if the auditor would step forward.

And the auditor from one of the big firms, which I won’t mention, came up to the microphone, and somebody said, “How much did we pay you last year?”

And the auditor gave his answer, and then the questioner said, “Well, how much extra would you have charged us to go over to Bayonne, which was ten miles away, and check whether there’s any oil in the tanks?” (Laughs)

So it - you know, here was something - a tiny little operation - some guy was calling him from a bar in Bayonne and telling him this phony stuff was going on, and they didn’t want to hear it. They shut their ears to it.

And then what emerged was one great company after this kind of, what they thought was a near-death experience. So it’s - we’re going to make mistakes.

I will guarantee you that we will get some unpleasant news at Berkshire. I don’t know what it’ll be, you know - the most important thing is we do something about it.

And there have been times when I procrastinated, and Charlie has been the one that jabs me into action. And so he’s performed a lot of services you don’t know about. (Laughter)

2018年6月16日土曜日

2018年バークシャー株主総会(8)ウェルズ・ファーゴについて(3)

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答から、ウェルズ・ファーゴに関する話題がさらにつづきます。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<チャーリー・マンガー> それには賛成ですね。これからのウェルズ・ファーゴは、そういった悪事が露見しなかった場合よりも、いい企業になりますよ。

<ウォーレン・バフェット> あるいは「悪事を起こさなかった場合」よりも、良くなると思います。

<チャーリー> そのとおり。しかし、ハーヴェイ・ワインスタイン[映画『パルプ・フィクション』などのプロデューサー]もずいぶんと行動を改めたようですね(笑いと拍手)。

あれはたしかに不始末でしたよ。ただし彼らはそのことを心底わかっており、痛く混乱していますから、同じことは繰り返したくないと思っているでしょう。

さすれば、「将来に最良の振舞いをみせる銀行は、どこになりそうか」と問われたときに、ウェルズ・ファーゴの可能性も十分あると思いますね。

<ウォーレン> さきほど示したニューヨーク・タイムズ紙の1942年3月12日付紙面の裏側をみると、求人欄があります。その一部を占める大きめの欄には、「男性求む」と書いてあります。そして別の欄には「女性求む」とあります。

それでは、当時のニューヨーク・タイムズ紙がそうしていたことは正当だったのでしょうか。ご存知のように、同紙は優れた新聞です。しかし、人間とはあやまちを犯すものなのです。

「求人広告の掲載箇所を分ける」という発想は、広告を受けた際にいろいろ考えて出てきたのかもしれません。「求人が来たら、どの職業が適切かを考えながら、男女に分けるとしよう」と。あるいは、求人側が適切な割り振りを考えたのかもしれません。

世間ではおろかなことが数多くなされています。先に述べたように、1970年代初期のガイコは適切な引当金を計上できたのに、無視していました。つまり彼らは、新規の顧客に対してあやまった金額を請求していたのです。実際よりも少ない損失で済むと考えていたからです。

そういったことは、ウォール街を喜ばせたいがために行った部分も間違いなくあると思います。あるいは、ものごとがどのように進むのか正視したくなかったのかもしれません。しかし、その同社が目を見張るほどの強力な会社となりました。そうです、今では米国における[自動車]保険加入世帯の13%を占めています。

引当金だけでなく、破産が目前にせまった時期におのずと知ることになった困難によって高じたものに対しても、同社は目を向けるようになりました。42年前の..

<チャーリー> あれは、今回のウェルズ・ファーゴよりもずっとひどかったですね。彼らが大昔にしたことは、実にひどいものでしたよ。ねえ。

<ウォーレン> そのとおりです。彼らは大成功していたので、引当金の見直しを怠っていました。そしてアメックスは、1963年の委託倉庫会社に関する分として数ドルしか確保しませんでした。その後はご存知のように、その会社がアメックス本体を没落させるのではないかと恐れるようになったのです。

(もう1回つづく)

CHARLIE MUNGER: Well, I agree with that. I think Wells Fargo is going to be better going forward than it would have been if these leaks had never been discovered.

WARREN BUFFETT: Or happened.

CHARLIE MUNGER: Yeah, so I think it’s - it - but I think Harvey Weinstein has done a lot for improving behavior, too. (Laughter)

It was clearly an error, and they’re acutely aware of it and acutely embarrassed, and they don’t want to have it happen again.

You know, if I had to say which bank is more likely to behave the best in the future, it might be Wells Fargo, of all of them.

WARREN BUFFETT: This New York Times that I have here from March 12th, 1942, if you go toward the back of it, in the classified section, you have one big section that says, “Help Wanted Male,” and another one that says, “Help Wanted Female.”

You know, was the New York Times doing the right thing in those days? You know, I think the New York Times is a terrific paper. But people make mistakes.

And you know, the idea of classifying between - taking ads and saying, “Well, we’ll take them and divide them up between men and women, what jobs we think are appropriate,” or that the advertiser thinks is appropriate.

We do a lot of dumb things in this world. And GEICO, as I say, in the early 1970s, they just ignored - and you can do it in the setting of proper reserves, which mean they charged the wrong price to new customers because they thought their losses were less than they were.

And I’m sure some of that may have been a desire to please Wall Street or just because they didn’t want to face how things were going. But it came out incredibly stronger. You know, and now it’s got 13 percent of the households in the United States insured.

And it came out with an attention to reserves and that sort of thing that was heightened by the difficulties that they’d found themselves in where they almost went bankrupt. Forty-two -

CHARLIE MUNGER: It was a lot more stupid than Wells Fargo. It was really stupid what they did way back, right?

WARREN BUFFETT: Yeah. They had the world by the tail, and then they quit looking at the reserve development. But - and American Express was just picking up a few dollars by having the field warehousing company in 1963. And, you know, they were worried whether it was going to sink the company.

2018年6月12日火曜日

2018年バークシャー株主総会(7)ウェルズ・ファーゴについて(2)

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答からウェルズ・ファーゴに関する話題、前回のつづきです。(日本語は拙訳)

<ウォーレン・バフェット> 当社はアメリカン・エキスプレスの株式を買いましたが、わたしがパートナーシップを運営していた時分に行った投資で、同社が最良のものでした。アメックス株を買ったのは1964年のことでした。「アメリカン・エキスプレス委託倉庫」という会社に関して、まちがったことを企んだ人がいたからです。

また当社はガイコ社(GEICO)の株を大量に買いました。その金額は4千万ドルで、同社株式の半数に達しました。ウォール街の出す収益や成長予測に合わせようと企んだ人がいたときのことです。その当時、同社では適正な引当金を計上しませんでした。

それゆえにアメックスは1964年に大きな痛手を受けました。それゆえにガイコは1976年に大損害を被りました。そして、相当な規模の従業員を解雇するといった対策をとることになりました。しかしそのおかげで、きれいな白紙に戻ったのです。

その後のアメックスがどこへ向かったのかは一目瞭然ですし、ガイコがどこへ向かったのかもご存知のとおりです。

ですから、「非常に大規模な組織には、いずれは問題を起こすものもある」ことは、特別な事実でもなんでもありません。実際のところほとんどすべての銀行、さらにはすべての大銀行では、ひとつやふたつ問題を抱えてきたものです。

ですから、投資という観点そしてモラルという観点から、企業としてのウェルズ・ファーゴが将来どのように歩むかを考えた場合、競争相手である他の大銀行とくらべて劣っているところは、なんら思い当たりません。

彼らは大きな過ちをおかしました。当社の保有分株式には今もなお多大な未実現益がありますが、それは[売却か継続保有かの]判断材料にはなりません。しかし...

同社のことは投資先としてわたしは気に入っていますし、ティム・スローンが経営者でいてくれてありがたいと思います。彼は現在、別の人たちがしでかした過ちを正している最中です。

かつてわたしは、ソロモン社で生じたあやまちを正そうとしました。そのときにはデリック・モーンが見事に手助けしてくれました[過去記事]。またマンガー・トーレス&オルソン法律事務所のみなさんにも、同じように助けてもらいました。つまりは、この手のことは起こるものなのです。ただしそうなった場合には、できるだけの手を打たねばなりません。

チャーリーが言うように、「1オンスの予防は1ポンドの治療にあらずして、1トンの治療の如し」です[過去記事]。そしてすべてに攻め入るべきです。チャーリーはいつもわたしの背中を押して、明るみになった不愉快な問題を攻め立てるように強要しました。他のすべてはうまくいっているのに、それだけが容易でないということもありました。

正確なところは知りませんが、あらゆる組織でも時には見られる悪事を、ウェルズはあきらかに働いていました。そしてそれを極端な地点まで激化させていました。

しかし、ウェルズ・ファーゴがそのような逸話を社史に残したくなかったと願いつつも、「非常に巨大な優良銀行になる日はやってこない」とみなす理由はないと思います。

ガイコはいっそう強固になりましたし、アメックスもずっと強力になりました。つまりここで問われるのは、「各種の問題を発見したときに、自分がどのように行動するか」なのです。

チャーリーはどうですか。

(さらにつづく)

We bought our American Express stock - that was the best investment I ever made in my partnership years - we bought our American Express stock in 1964 because somebody was incented to do the wrong thing in something called the American Express Field Warehousing Company. We bought -

A very substantial amount of GEICO we bought that became half the - half of GEICO, for $40 million because somebody was incented to meet Wall Street estimates of earnings and growth. And they didn’t focus on having the proper reserves.

And that caused a lot of pain at American Express in 1964. It caused a lot of pain at GEICO in 1976. It caused a layoff of a significant portion of the workforce, all kinds of things. But they cleaned it up.

They cleaned it up, and look where American Express has moved since that time. Look at where GEICO has moved since that time.

So the fact that you are going to have problems at some very large institutions is not unique. In fact, almost every bank has - all the big banks have had troubles of one sort or another.

And I see no reason why Wells Fargo as a company, from both an investment standpoint and a moral standpoint going forward, is in any way inferior to the other big banks with which it competes on -

It - they made a big mistake. It cost - I mean, we still got - I mean we have a large, unrealized gain in it, but that doesn’t have anything to do with our decision-making. But the -

I like it as an investment. I like Tim Sloan as a manager, you know, and he is correcting mistakes made by other people.

I tried to correct mistakes at Salomon, and I had terrific help from Deryck Maughan as well as a number of the people at Munger, Tolles. And I mean, that is going to happen. You try to minimize it.

Charlie says that, “An ounce of prevention isn’t worth a pound of cure, it’s worth about a ton of cure.” And we ought to jump on everything. He’s pushed me all my life to make sure that I attack unpleasant problems that surface. And that’s sometimes not easy to do when everything else is going fine.

And at Wells, they clearly - and I don’t know exactly what - but they did what people at every organization have sometimes done, but it got accentuated to an extreme point.

But I see no reason to think that Wells Fargo, going forward, is other than a very, very large, well-run bank that had an episode in its history it wished it didn’t have.

But GEICO came out stronger, American Express came out stronger. The question is what you do when you find the problems.

Charlie?

投資先企業を検討するという意味で、今回の文章はケーススタディとしていろいろと勉強になりました(個人的に思い至った観点は、順列、stickiness、バックアップの3つでした)。

2018年6月8日金曜日

2018年バークシャー株主総会(6)ウェルズ・ファーゴについて(1)

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バークシャー・ハサウェイ株主総会における質疑応答から、今回はバークシャーの主要投資先であるウェルズ・ファーゴの話題です。優良銀行として成長してきた同社がさまざまな不正を働いていたことが、この数年間で明らかになりました。ウォーレン・バフェットが同社に対してどのような見解を示すのか、話の内容は平易ですが、継続投資先としての是非をどのように判断するかという点では、今回の話題は株式投資上級者向けかと思います。前回の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

10. 「大きな過ち」を乗り越えて、ウェルズ・ファーゴは強くなる

<ウォーレン・バフェット> 次の質問は、アンドリューさん、いいですか。

<アンドリュー・ロス・ソーキン> ウォーレン、よろしくおねがいします。イリノイ州シカゴ在住のポール・スピーカー氏からの質問です。なお、彼は今日ここに参加しているはずだと思います。

質問の内容は次のとおりです。「あなたが語った言葉のなかで、かなり有名で、もっとも優れた見方を示していると思われるものに、次のようなものがあります」

「『たびたび水漏れする船だとわかったら、穴をふさぐ作業に奮闘するよりも、別の船舶に乗り換えることに注力したほうが生産的だ』と」

「ウェルズ・ファーゴ社では許可されていない会計上の各種スキャンダルが生じましたが、それらを考慮すると、つまり自動車保険の重複分を契約して顧客に料金を請求したことや、同社自身の過失による遅延によって生じた期限超過に関してモーゲージの保有者(抵当権者)から料金を不当に徴収したことや、さらにはモーゲージの金利を固定するために不適切な手数料を顧客に課したこと、あるいはFRBによって同社に課された制裁すなわち総資産の増加を禁じられたこと、そして先に述べた諸々の悪しき行為に対して連邦政府の規制当局が10億ドル超の罰金を最近になって定めたこと、それらを考えたときにウェルズ・ファーゴが慢性的に水漏れを起こす船だとしたら、どの程度の水漏れであればバークシャーは船を乗り換えようと検討するのでしょうか」(拍手)。

<ウォーレン・バフェット> そうですね、ウェルズ・ファーゴの件ですが..

ウェルズ・ファーゴという会社は「動機づけがもたらす有効性」を証明してしまいました。会社が間違った動機づけをしてしまったのです。あれは悪いことでした。

しかし彼らはもっと大きな失敗をおかしました。いつだれがどのようにかは正確には知りませんが、「欠陥のある動機づけ体系を有している事実を無視したこと」がそうです。たとえば、「存在するはずのない口座を開設する」といった異常なたぐいのことを、従業員が実行するようにうながしました。

これはバークシャーでは大罪とされています。ただし今ここにいる間にも、バークシャーでだれかがあやまちを犯しているのは、わたしたちも承知しています。

37万7千名にのぼる全従業員が、ベン・フランクリンのような人物と同じように世間で振舞うなどと、望むことはできません。ここで話をしている間に良からぬことがどれだけ起きているのか、10件なのか20件なのか、あるいは50件なのかはわかりません。

大切なのは、「回避可能なあらゆる悪しきことを助長しないように」とわたしたちが考えている点です。そして問題を起こしていることを把握したときには、何か手を打たなければなりません。そのことが決定的なカギとなります。

ウェルズ・ファーゴはそうしませんでしたし、ソロモン[・ブラザーズ社]もしませんでした。しかし実際のところ、当社が投資したなかでもっとも成功した各社は、それと同様の失敗をおかした会社でした。

(つづく)

10. Wells Fargo will emerge stronger after its “big mistake”

WARREN BUFFETT: OK, Andrew?

ANDREW ROSS SORKIN: Hi Warren. This question comes from Paul Spieker (PH) of Chicago, Illinois. I believe he may be here today.

He writes, “One of your more famous and perhaps most insightful quotes goes as follows:

″‘Should you find yourself in a chronically leaking boat, energy devoted to changing vessels is likely to be more productive than energy devoted to patching leaks.’

“In light of the unauthorized accounting scandal at Wells Fargo, of its admission that it charged customers for duplicate auto insurance, of its admissions that it wrongly fined mortgage holders in relation to missing deadlines caused by delays that were its own fault, of its admission that it charged some customers improper fees to lock in mortgage interest rates, of the sanction placed upon it by the Federal Reserve prohibiting it from growing its balance sheet, and of the more than recent $1 billion penalty leveled by federal regulators for the aforementioned misbehavior, if Wells Fargo company is a chronically leaking boat, at what magnitude of leakage would Berkshire consider changing vessels?”

WARREN BUFFETT: Yeah, well, Wells Fargo (Applause) -

Wells Fargo is a company that proved the efficacy of incentives, and it’s just that they had the wrong incentives. And that was bad.

But then they committed a much greater error - and I don’t know exactly how or who did it or when, but - ignoring the fact that they had a faulty incentive system which was incenting people to do things that were kind of crazy, like opening nonexistent accounts, et cetera.

And, you know, that is a cardinal sin at Berkshire. We know people are doing something wrong, right as we sit here, at Berkshire.

You can’t have 377,000 employees and expect that everyone is behaving like Ben Franklin or something out there. They - we - I don’t know whether there are ten things being done wrong as we speak, or 20, or 50.

The important thing is, we don’t want to incent any of that if we can avoid it, and if we find - when we find it’s going on, we have to do something about it. And that is absolutely the key to it.

And Wells Fargo didn’t do it, but Salomon didn’t do it. And the truth is, we’ve made a couple of our greatest investments where people have made similar errors.

2018年6月4日月曜日

2018年バークシャー株主総会(5)買収したプレシジョン社について

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今回からは、バークシャー・ハサウェイ株主総会における質疑応答の中から、いくつかの話題を取りあげます。まず今回はバークシャーが2016年に買収した企業、プレシジョン・キャストパーツ社についてです。ウォーレン・バフェットによる定性的な企業評価の一端がうかがえる発言だと思います。前回の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

5. 買収したプレシジョン・キャストパーツ社が優良企業であることについて

<ウォーレン・バフェット> それでは次はジョナサン・ブランドさん、お願いします。

<質問: ジョナサン・ブランド> ウォーレン、そしてチャーリー、よろしくおねがいします。私からの質問です。現在の航空機業界における生産数の伸長ぶりからすると、プレシジョン・キャストパーツ社が売上及び利益の両面であまり成功していないとは、思いもよりませんでした。

もちろん私としても、「以前の製造プログラムから新規のものへの移行は平坦ではない」ことは理解しています。しかし業界筋によれば、「市場におけるプレシジョン社の地位は、競争が激化して技術面での混乱が生じる中で、かつてほど強力ではなくなった」と聞いています。

それでは、バークシャーが買収した時に期待していた成長を実現するために、顧客である航空機業界において卓越した地位を堅牢強固にするには、同社は何をすればいいのでしょうか。

<ウォーレン> ええ、それは...

<質問者> 結局のところ、買収してから2年が経過した今、同社の事業の見通しをどのように考えておられますか。

<ウォーレン> すみません、最後が聞こえなかったのですが。「見通し」ですか。

<質問者> 結局のところ、買収してから2年が経過して、長期的に見た同社の見通しを現在はどのように考えておられますか。

<ウォーレン> それは長期的にも、そしてほどほど短期的にも、優秀な企業だと思います。つまり...

航空機業界と言われましたが、他の業界とも取引しています。ただし、航空機業界が最重要であることはまちがいありません。そして航空機の製造会社は、部品の品質や短納期に負うところが大きいものです。

航空機1機あたりの費用が7,500万ドルあるいは1億や2億ドルにのぼるなかで、部品などが納入されるのを待たされたくはないでしょう。ですから...

そういった類のあらゆるものについて、品質と納期の両面における信頼性がきわめて重要になります。プレシジョン社では[製品の供給]契約を[出荷する]何年もずっと前から結んでいます。ときには、機体の製造が開始されるよりもかなり前に受注することもあります。つまり[受注から出荷までの]リードタイムが非常に長いわけです。

しかし昨年の早い時期に、わたしが知っているのは特定の件ですが、別の部品会社が納品できなかったことがわかりました。航空機メーカー数社が「なんとか対応してもらえないか」と、プレシジョン社に打診してきたからです。

それに対してわたしたちは回答しました。「それはもう是非お役に立ちたいところですが、5年契約でお願いしております。他社さんへの欠品がたびたび生じないようにしたいからです」。その手の製品を出荷するまでには、非常に長いリードタイムがかかります。

ですから、ビジネス自体は非常に良好です。損益計算上は4億ドルの費用が課されていますが、年間4億ドルを若干上回る金額ですが、これは無形資産の「のれん」償却費です。なお、この件は損金には算入できないものです。しかしわたしとすれば、この費用は実損をもたらすものではないと考えています。

バークシャーでは巨額の償却費を計上していますが、現在のところはプレシジョン社の買収に関するものが最大の金額です。ですからどのように捉えたとしても、「実損ではないとわたしが考えている」4億ドルを加算することができます。会計士はほかのやりかたを主張すると思いますが、これはわたしたちのお金なので、わたしの見解でやることにしましょう(笑)。[過去記事]

同社を指揮しているマーク・ドネガンは目覚ましい人物ですし、そのうえ経営者としてもたいへん優秀です。「彼が面倒をみてくれる」という条件だったからこそ、同社を買いました。それだけではなく、バークシャーの別の領域でも彼はいろいろと手助けしてくれましたし、好んでやってくれています。ですから彼自身が携わる経営面や、バークシャーをあれこれと支援してくれる献身ぶりに対して、文句をつけるなど考えられません。

プレシジョン社は非常にすぐれた買収先です。同社は、開発中の諸製品へとつながる長大なロング・テールを持つ会社です。

チャーリーはどう思いますか。

<チャーリー・マンガー> それはたしかに、同社のような会社がほかにあるならば、明日にでもその会社を買いたいですね。

<ウォーレン> つまり、そういうことですね(笑)。

「大賢は言葉少なし」といったところですか(笑)。

5. Precision Castparts is “a very good business”

WARREN BUFFETT: OK, Jonathan Brandt.

JONATHAN BRANDT: Hi Warren. Hi Charlie. Given the growth in airplane build rates, it seems surprising that Precision Castparts isn’t doing better on the top or bottom line.

I understand the issue with a bumpy transition from old to new programs, but I’ve also heard from industry sources that Precision’s market position is not as strong as it used to be amid intensifying competition and some technological disruption.

What does Precision need to do to solidify and strengthen its preeminent position with its aerospace customers so that it can deliver the growth you expected when Berkshire acquired it?

WARREN BUFFETT: Yeah -

JONATHAN BRANDT: More generally, two years after the acquisition, what is your outlook for that business?

WARREN BUFFETT: Give me the last part again. The outlook.

JONATHAN BRANDT: More generally, two years after the acquisition, what is your updated outlook for that business longer term?

WARREN BUFFETT: Oh, longer term, I think - and in the reasonably shorter term - it’s a very good business. I mean, you were -

You mentioned aircraft, but we get into other industries. But certainly aircraft’s the most important. You have manufacturers that are very dependent on both the quality of the parts and the promptness of delivery.

You do not want to have an aircraft with 75- or 100- or maybe $200 million and be waiting for a part or something of the sort. So it’s -

Reliability is, both in terms of quality and delivery times and all of that sort of thing, is enormously important. And we get contracts that extend out many years. And sometimes we - I mean, we will get them well before the plane even starts in production. So there’s very long lead times.

And we have found in the last year - found it earlier, but I know of some specific cases in the last year - where other suppliers have failed in their deliveries and then the manufacturers come to us and say, “We would like you to help us out.”

And we say, “Well, we’d be glad to help you out, but we’d like about a five-year contract, if we’re going to do it because we’re just not going to make up for these other guys’ shortfalls periodically.” But that sort of thing has a very long lead time.

The business is a very good business. One thing you will see their earnings charged with is about $400 million - little over $400 million a year - of intangible - nondeductible in that case - amortization of goodwill, which is really - is not an economic cost in my view.

We have a significant amount of that through Berkshire, but by far, the largest amount is related to the Precision acquisition. So whatever you see, you can add about 400 million that in my view is not an economic expense, but the accountants would argue otherwise. But it’s our money, so we’ll take my view. The - (Laughter)

Mark Donegan, who runs that operation, is incredible, and he has been not only - he’s a fabulous manager. I wouldn’t have bought it without him in charge. He also has been very helpful to us in other areas, and he loves to do it. So you can’t beat him, both as a manager in his own operation, but with his devotion to really doing everything that will help Berkshire.

It was - it’s a very good acquisition with very long tails to the products that are being developed.

Charlie?

CHARLIE MUNGER: Well, yeah, I think we’d buy another one just like it tomorrow if we had the chance.

WARREN BUFFETT: Yeah, that’s the answer. (Laughter)

Man of few words, but he gets the point. (Laughter)

2018年5月28日月曜日

2018年バークシャー株主総会(4)ウォーレン・バフェット直伝の教え(了)

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バークシャー・ハサウェイ株主総会でウォーレン・バフェットが質疑応答の前に語った「究極の教え」は、今回で最後です。次回からは質疑応答の部を取りあげますが、大多数の投資家(少なくとも米国在住の投資家)にとっては、今回のものが「株式投資について知っておくべき、最良かつ唯一の見解」だと思います。前回の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

ちょっとおもしろい話題がありますので、もうひとつほど触れたいと思います。たとえば1万ドルが手元にあったときに、絶望的破滅を予言する人物が周囲にいたとします。そのような話は人生を通じて繰り返し耳にするでしょうから、その1万ドルを使ってゴールド(純金)を買ってしまったとします。

1万ドルあれば、[1942年]当時は300トロイオンス分のゴールドを買うことができました。企業であれば、再投資をして工場を増やしたり、新たな発明を起こしたりするものですが、金庫に保管してあるゴールドを毎年思い出したとしても、300オンスのまま変わりはありませんでした。

ゴールドであれば、目で見て確認できますし、そっと撫でることもできます。つまり「自分の望むがまま」にできます(笑)。

しかし、ゴールドはなにも生みだしません。まったく何も生み出しませんでした。

1942年3月に手に入れたままのゴールド300オンスは、今日ではいくらになっているでしょうか。正解は、およそ40万ドルです。

ですから、もし生産的な資産ではなく、ゴールドのように非生産的な資産を選ぶとすれば、結局はどうなるでしょうか。生産的な資産であればより多くの儲けをあげて再投資したり配当を出したり、自社株買いもあるでしょうから、それが何であろうと、非生産的な資産よりも100倍以上の価値を手にできると思います。[ウォーレンの語った原文では、文章がねじれていると思われる]

言い換えれば、これは「新聞の見出しなどを読んでおびえる度に、『あっちへ逃げ込め』と教えてくれる人にしたがって金銭的価値の保存先[ゴールド等]を買ったとすれば、それによって得られる儲けは1セント以下にとどまる一方、資金を米国企業に投じていれば儲けは1ドルになる」とも言えます。[過去記事]

この国では、これ以上は思いつかないほどの強い追い風が、わたしたちの背後から吹きつづけていました。そのようななかで事業を営むというのは、実に並はずれたことだと思います。まさに投資家にとって、うってつけの場所です。つまり、まちがった株を買うか、まちがった時期に調子に乗らない限り、失敗のしようがないのです。

しかし米国の大断面と言える企業群[=S&P500 ETFなど]を保有し、また時間をかけて定期的に資金を投じれば、なにも生み出せない資産を保有するのとは比較にならないほどの利益を得ることができます。

さらにはっきり言いますと、株式を頻繁に売り買いしたり、投資の助言をする者に手数料を払ったりするのも論外です。

ちなみに、わたしからの助言と言いますか、今回説明した回顧的な助言などに従うという方がおられましたら、わたしからお話しするのは朝飯前です(笑)。

もちろん、その助言にしたがう場合には問題がひとつ出てきます。好意的に接してくれていた株式売買業者が飢え死にしてしまう点です。

ですから、罪滅ぼしのために彼らの葬儀には参列したほうがいいもしれません。しかし実のところ、このやりかたのほうが、相当大きな割合に至る投資のプロよりも、あるいはアクティブに投資する人よりも、ずっと良い成果を残せるでしょう。このような肩肘の張らない哲学に基づいて達成できる成績に対して、それを凌駕して成功裏におわろうとするのは、非常にむずかしい仕事です。

その上、会計のことや、株式市場に関する専門用語やその類のもの、さらには連銀が次にどんな手を打つのか、あるいは今後の金利引上げが3回なのか4回なのか、それとも2回なのか、そういったことを詳しく知る必要もありません。

実際のところ投資を続けていく際に、そういったものはまるで重要ではありません。「なぜそこに投資したのか理解できているものにこだわり、どう取り組めばいいのかわからないものには目もくれない」、大切なのはそのような哲学を胸に刻むことです。

(この話題は、おわり)

I would like to make one other comment because it’s a little bit interesting. Let’s say you’d taken that $10,000 and you’d listened to the prophets of doom and gloom around you, and you’ll get that constantly throughout your life. And instead, you’d used the $10,000 to buy gold.

Now for your $10,000 you would have been able to buy about 300 ounces of gold. And while the businesses were reinvesting in more plants, and new inventions came along, you would go down every year in your - look in your safe deposit box - and you’d have your 300 ounces of gold.

And you could look at it, and you could fondle it, and you could - I mean, whatever you wanted to do with it. (Laughter)

But it didn’t produce anything. It was never going to produce anything.

And what would you have today? You would have 300 ounces of gold just like you had in March of 1942, and it would be worth approximately $400,000.

So if you decided to go with a nonproductive asset - gold - instead of a productive asset, which actually was earning more money and reinvesting and paying dividends and maybe purchasing stock - whatever it might be - you would now have over 100 times the value of what you would have had with a nonproductive asset.

In other words, for every dollar you had made in American business, you’d have less than a penny by - of gain - by buying in this store of value, which people tell you to run to every time you get scared by the headlines or something of the sort.

It’s just remarkable to me that we have operated in this country with the greatest tailwind at our back that you can imagine. It’s an investor’s haven - I mean, you can’t really fail at it unless you buy the wrong stock or just get excited at the wrong time.

But if you’d - if you owned a cross-section of America and you put your money in consistently over the years, there’s just - there’s no comparison against owning something that’s going to produce nothing.

And there - frankly - there’s no comparison with trying to jump in and out of stocks and pay investment advisors.

If you’d followed my advice, incidentally - or this retrospective advice - which is always so easy to give - (Laughs)

If you’d follow that, of course you - there’s one problem. Your friendly stock broker would have starved to death.

I mean, you know, and you could have gone to the funeral to atone for their fate. But the truth is, you would have been better off doing this than a very, very, very high percentage of investment professionals have done, or people have done that are active that - it’s very hard to move around successfully and beat, really, what can be done with a very relaxed philosophy.

And you do not have to be - you do not have to know as much about accounting or stock market terminology or whatever else it may be, or what the Fed is going to do next time and whether it’s going to raise three times or four times or two times.

None of that counts at all, really, in a lifetime of investing. What counts is having a philosophy that you’ve - that you stick with, that you understand why you’re in it, and then you forget about doing things that you don’t know how to do.

いつになるかわかりませんが、ウォーレンが去った後の投資の世界では、有象無象が跋扈しはじめると想像します。しかし今回のウォーレンは公式の場で助言を直接語り、映像記録として公開されるように手を打ちました。ですから一般投資家は何にも惑わされることなく、彼の助言を折に触れて思い出し、その導きにひかれて歩み続ければよいだけだと思います。

単なる私見ですが、ウォーレンは今回の発言を以って一通りの手を打ち終えたと感じました(株主に対する助言はすでに済ませ、バークシャーの主要経営陣も定まり、今回の発言が一般投資家向け、という意味において)。

2018年5月24日木曜日

2018年バークシャー株主総会(3)ウォーレン・バフェット直伝の教え

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ひきつづき、バークシャー・ハサウェイ株主総会でウォーレン・バフェットが質疑応答の前に語った「究極の教え」です。前回の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

結局のところ、この話の要点は何だと思いますか。シティーズ・サービス社の話は終わりとして、ここでもう一度1942年の3月11日に立ち戻ってみてください。

さきほど触れましたが、太平洋戦線と同じように、欧州という舞台でも状況はきびしいものでした。しかしアメリカ人であればだれもが知っているように、米国はその後の戦いで勝ちをおさめていきます。つまり出だしで不意を突かれたものの、戦争を勝ち進んでいきました。1776年以来、米国というシステムはうまく機能してきたのです。

そして次のスライドですが、その当時に1万ドルを投資していたらどうなるか想像してみてください。その頃にインデックス・ファンドは存在しませんでしたが、仮にインデックス・ファンドに資金を投じて、S&P500を事実上買っていたとします。

スライドはしばらくこのままで、少しばかり考えてみましょう。

その1万ドルが現在にはどれだけの価値になったか、考えてみてください。その際に、基本的な前提をひとつ置いてください。たとえば、「後生大事に保有することになる農地を買う」場合には、その投資が賢明かどうかを判断するために、「農地からあがる生産物やその量を考慮する」ものです。

あるいは、「生涯保有するつもりで小規模の集合住宅を買う」場合、投資の巧拙を判断するには「その物件からあがる利益を考える」ものです。[過去記事]

そのかわりに、1万ドルを投じて「『米国』というビジネスの一部分を保有する」道を選ぶかもしれません。その場合、別の株価を気にしたり、助言やそういったものを提供しようとする他人の話に耳を傾けたりするべきではありません。

さあ、さきほどの金額がいくらになったか、ぜひ考えてみてください。数字を思い描いたと思いますので、答えが書いてある次のスライドへ移ります。

正解は、5,100万ドルです。まったく何もせずに、この金額になります。会計のことを理解する必要もありません。株式投資初日のわたしがしていたように、株価を毎日たしかめる必要もありません(笑)。あのときは、学校から帰宅するまでに3.75ドル損をしていましたが。

やるべきことはただひとつ、「米国が過去を通じてうまくやってきたという事実を思い起こす」、これだけでよかったのです。だからこそ、この国は現在の困難も乗り越えるでしょうし、この国がうまくやれるとすれば、この国のビジネスもうまくいくでしょう。

勝ち銘柄を探し当てる必要はなかったですし。絶好の機会などを見計らう必要もありませんでした。つまるところ、投資に踏み切る決断を生涯で一度下すだけでよかったのです。

しかもそのときは、「一度きりの機会」というほどでもありませんでした。振り返ってみれば、ほかの時期に投資を始めてもうまくいきましたし、利益がもっと大きくなった時期もありました。

ですから、今日これから質疑応答が進みますが、その際には「これから自分が投資をつづける間に、米国のビジネスはどのように進展するのだろうか」という、大局的な観点を忘れないようにしてください。

(さらにつづく)

Well, what’s the point of all this? Well, we can leave behind the Cities Service story, and I would like you to, again, imagine yourself back on March 11th of 1942.

And as I say, things were looking bad in the European theater as well as what was going on in the Pacific. But everybody in this country knew America was going to win the war. I mean, it was, you know, we’d gotten blindsided, but we were going to win the war. And we knew that the American system had been working well since 1776.

So, if you’ll turn to the next slide, I’d like you to imagine that at that time you had invested $10,000. And you put that money in an index fund - we didn’t have index funds then - but you, in effect, bought the S&P 500.

Now I would like you to think a while, and don’t - do not change the slide here for a minute.

I’d like you to think about how much that $10,000 would now be worth, if you just had one basic premise, just like in buying a farm you buy it to hold throughout your lifetime and depend - and you look to the output of the farm to determine whether you made a wise investment.

You look to the output of the apartment house to decide whether you made a wise investment if you buy an apartment - small apartment house - to hold for your life.

And let’s say, instead, you decided to put the $10,000 in and hold a piece of American business, and never look another stock quote, never listen to another person give you advice or anything of this sort.

I want you to think how much money you might have now. And now that you’ve got a number in your head, let’s go to the next slide, and we’ll get the answer.

You’d have $51 million. And you wouldn’t have had to do anything. You wouldn’t have to understand accounting. You wouldn’t have to look at your quotations every day like I did that first day - (laughs) - when I’d already lost $3.75 by the time I came home from school.

All you had to do was figure that America was going to do well over time, that we would overcome the current difficulties, and that if America did well, American business would do well.

You didn’t have to pick out winning stocks. You didn’t have to pick out a winning time or anything of the sort. You basically just had to make one investment decision in your life.

And that wasn’t the only time to do it. I mean, I can go back and pick other times that would work out to even greater gains.

But as you listen to the questions and answers we give today, just remember that the overriding question is, “How is American business going to do over your investing lifetime?”

2018年5月20日日曜日

2018年バークシャー株主総会(2)ウォーレン・バフェット直伝の教え

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前回の投稿につづいて、バークシャー・ハサウェイ株主総会でウォーレン・バフェットが質疑応答の前に語った「究極の教え」です。(日本語は拙訳)

それでは翌日にどうなったのか、次のスライドをお願いします。そうです、うれしい日ではありませんでした。市場つまりダウ工業平均は下落して、100ポイントを割りました。

下落率は2.28%でしたので、現在に換算すると500ポイントの下落になります。もちろん、学校に行ってからも気になって仕方がありませんでした。

余談ですが、紙面の左側をみるとダウ工業平均がありますが、その上にはニューヨーク・タイムズ自身が算出した株価平均指標が載っています。彼らは独自の指標を使っていましたが、やがては消えてしまいました。一方のダウ平均はそのまま残りました。

さて株を買った翌日の話に戻りますと、次のスライドに進めば事情がわかります。株価は39ドルになっています。「3株買ってほしい」と頼んだために、父が朝一番に買ってくれていたのです。これは、その日の高値で買っていたことになります。

わたしの持ち分を買った値段は38.25ドル、その日の高値でした。一方の終値は37ドルまで下がりました。この頃合いの計りかたはわたしが株を買う際のまさしく典型で、その後の年月でも見受けられるようになります(笑)。

ただし、この株は当時の「ニューヨーク・カーブ取引所」で取引されていました[カーブは「屋外」的な意味]。のちの「アメリカン証券取引所」です。

しかしものごとが、つまりミッドウェイ海戦までは戦況が非常に悪いと思われていたにも関わらず、次のスライドを見れば、わたしの買った株がなかなか良かったことがわかります。買値38.25ドルと記されています。


その後株価は続伸し、やがてはシティーズ・サービス社が1株200ドル超で[優先株を]償還するに至りました。しかし、この話は「めでたしめでたし」では終わりません。次のページに進むと..(笑)


..よく言われるように、「そのときにはうまい考えだと、思えたのだよ」(大笑)。

株を売却したことで、5ドルの儲けをだしました。これもまた、わたしがとる行動の典型でした(笑)。しかし株価が27ドルまで下がった様子をみたあとですから、うまいこと利益を上げたと思ったわけです。

(さらにつづく)

Well, let’s take a look at what happened the next day. Let’s go to the next slide, please. And it was not a good day. The stock market, the Dow Jones Industrials, broke 100 on the downside.

Now they were down 2.28 percent as you see, but that was the equivalent of about a 500-point drop now. So I’m in school wondering what is going on, of course.

Incidentally, you’ll see on the left side of the chart, the New York Times put the Dow Jones Industrial Average below all the averages they calculated. They - they had their own averages, which have since disappeared, but the Dow Jones has continued.

So the next day - we can go to the next slide - and you will see what happened. The stock that was at 39 - my dad bought my stock right away in the morning because I’d asked him to, my three shares. And so I paid the high for the day.

That 38 1/4 was my tick, which was the high for the day. And by the end of the day, it was down to 37, which was really kind of characteristic of my timing in stocks that was going to appear in future years. (Laughs)

But it was on the - what was then called the New York Curb Exchange, then became the American Stock Exchange.

But things, even though the war, until the Battle of Midway, looked very bad and - and if you’ll turn to the next slide, please - you’ll see that the stock did rather well. I mean, you can see where I bought at 38 1/4.

And then the stock went on, actually, to eventually be called by the Cities Service Company for over $200 a share. But this is not a happy story because, if you go to the next page, you will see that I - (Laughter)

Well, as they always say, “It seemed like a good idea at the time,” you know. (Laughter)

So I sold - I made $5 on it. It was, again, typical - (laughs) - of my behavior. But when you watch it go down to 27, you know, it looked pretty good to get that profit.

2018年5月16日水曜日

2018年バークシャー株主総会(1)ウォーレン・バフェット直伝の教え

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バークシャー・ハサウェイの株主総会が5月5日(土)に開催されました。今回からのシリーズでは、例によってウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーによる質疑応答(の一部)をご紹介します。

英文のトランスクリプトを入手するために、例年ですと有志の方が起こしてくれたものを待っておりました。しかし(少なくとも)今年は、先だってご紹介したCNBCのサイトで映像とともに公開されているので、そちらの文章をお借りします。

Morning Session - 2018 Berkshire Hathaway Annual Meeting (CNBC)

(映像の再生が始まらない場合は、テキスト本文の上下行間にマウスポインターを置いて、"SYNC VIDEO TO PARAGRAPH"という文を表示させた上で、クリックしてみてください)

今回からご紹介する文章は、おなじみの質疑応答を始める前に、ウォーレンが「株式投資一般」について特別に語ったものです。彼が過去に書いてきた文章を包括した内容なので、これといって目新しいところはありませんが、こうして彼が改めて語ることに大きな意味があると受けとめました。今回から続く数回分の文章が、「ウォーレン・バフェット自らが語る、究極の教え」になると思います。(日本語は拙訳)

3. バフェット直伝の教え: 投資をどのように捉えるべきか

<ウォーレン・バフェット> まずはじめに少しばかり時間をいただき、投資をどのように考えることができるか、ちょっとした見方をご紹介したいと思います。現在は「今日あるいはこの瞬間に起こっていることばかりに意識を向ける風潮」がみられますが、それとは対極にある話です。

話がわかりやすくなると思いますので、わたし自身のちょっとした昔話を振り返ってみます。

画面上で最初にご紹介するのがニューヨーク・タイムズ紙、1942年の3月12日付の紙面です。すみませんが、文章を読むのは若干遅いほうでして(笑)。

当時を振り返りますと、ええとこれは参戦してから3か月ほど経った時期です。その時点の我が国はまだ劣勢でした。

新聞の見出しに出ているのは、太平洋戦線からの悪いニュースばかりでした。このスライドは、3月11日に先立つ日々の見出しからいくつか抜粋したものです。これから話題にするその日こそ、わたしにとってまさしく重大な1日となりました。

2枚目のスライドの上側にある見出しだと思いますが、「太平洋戦線が深刻な事態に陥っている」と書かれています。フィリピンが陥落してから数か月が経ったばかりの頃でしたが、悪いニュースばかり続いていました。

見出しがお読みになれるといいのですが、3枚目のスライドは3月9日のものです。ちなみに当時の同紙の値段は、一部3セントでした。

そして次に出てきたスライドが、3月10日の記事です。この先進技術によるスライドをなぜ利用しているのか説明しますと、わたしの目の前にあるスライドと同じものを、みなさんもいっしょに読めるようにしたかったからです。


それはそうと本題に戻って3月10日ですが、その日のニュースもひどいものでした。「敵軍[=旧日本軍]、オーストラリア侵攻を確たるものに」。株式市場の動きも、それを反映していたようでした。

当時のわたしは、シティーズ・サービスという会社の優先株を追いつづけていました。前年の株価は84ドルでしたが、その日の2か月前だった年初には55ドルになり、3月10日には40ドルまで下落していました。

新聞の見出しはどうであれ、その日の夜にわたしは父に言いました。「いよいよ打って出ることに決めたよ。だからシティーズ・サービスの優先株を3株、買ってもらえますか」。次の日の注文でお願いしたわけです。

資金はそれですべてでした。つまり、過去5年間かそこらで蓄えたお金です。そして次の日の朝、父は3株分を買ってくれました。[ウォーレンの父ハワードは株式ブローカーだった。そして1943年からは、連邦議会の下院議員となる]

(つづく)

3. Master class: How to think about investments

[some sentences omitted]

And I would like to just spend just a couple of minutes giving you a little perspective on how you might think about investments, as opposed to the tendency to focus on what’s happening today, or even this minute, as you go through.

And to help me in doing that, I’d like to go back through a little personal history.

And we will start - I have here a New York Times of March 12th, 1942. I’m a little behind on my reading. (Laughter)

And if you go back to that time, that - it was about, what? Just about three months since we got involved in a war which we were losing at that point.

The newspaper headlines were filled with bad news from the Pacific. And I’ve taken just a couple of the headlines from the days preceding March 11th, which I’ll explain was kind of a momentous day for me.

And so you can see these headlines. We’ve got slide two up there, I believe. And we were in trouble, big trouble, in the Pacific. It was only going to be a couple months later that the Philippines fell, but we were getting bad news.

We might go to slide three for March 9th. Hope you can read the headlines, anyway. The price of the paper’s three cents, incidentally.

The - and let’s see, we’ve got March 10th up there, as slide - I - when I get to where there’s advanced technology of slides, I want to make sure I’m showing you the same thing that I’m seeing in front of me.

So anyway, on March 10th, when again, the news was bad: “Foe Clearing Path to Australia.” And it was like it - the stock market had been reflecting this.

And I’d been watching a stock called Cities Service preferred stock, which had sold at $84 the previous year. It had sold at $55 the year - early in January, two months earlier - and now it was down to $40 on March 10th.

So that night, despite these headlines, I said to my dad - I said, “I think I’d like to pull the trigger, and I’d like you to buy me three shares of Cities Service preferred” the next day.

And that was all I had. I mean, that was my capital accumulated over the previous five years or thereabouts. And so my dad, the next morning, bought three shares.

2018年5月12日土曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(10)なおす術はわからない

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デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答、前回の話題だった「企業文化」のつづきです。(日本語は拙訳、意味段落での改行追加あり)

(1:41:04)

<チャーリー・マンガー> 所属する組織の規模が大きくなり、複雑さが増すにつれて、つまりはGM社やAT&T社のような文化と言えますが、非常に難しい問題になりますね。大企業では多かれ少なかれ同じように、非常に官僚主義的になっています。「きわめて官僚的である」、これがお決まりの社風ですよ。もちろん政府でもそうで、巨大な政府組織では官僚主義が生じています。官僚主義というものはさまざまな間違いを起こしますから、基本的には好かないですね。だからといって、そのかわりを私が示せるわけではありません。これまで以上に連邦政府をうまく運営する方法も知りません。私自身の見解として巨大な官僚的文化は基本的に好きになれないので、それゆえ深く考えることもないのです。官僚主義を大幅に修正する方法など、私にはわかりません。「従業員が100万人もいる企業の文化を変えてほしい」と任されても、私には地獄行きを宣告されたも同然ですよ。レストラン1軒の文化を変えることでさえ、容易ではないです。すでに官僚主義的な文化に染まった場所を、どうやって非官僚的に変えればよいのか、実に難しい問題だと思いますね。

バークシャーでは官僚主義の問題を解決するために最善を尽くしてきました。そうです、本社自体が存在しなければ、本社的な官僚主義などそんなに生じようがないですから(笑)。それが我々のとったシステムです。しかしそのようなシステムができあがったのは、我々が天才だったとか英明だったとか、そういうわけではないですよ。たまたまそうなった部分もあったのです。しかしそのやりかたがうまくいくとわかってからは、ずっとそうしてきました[過去記事]。しかし巨大な組織の企業文化を正す方法は、私にはわかりませんね。

But the minute you get into the bigger and more complicated places…I mean you can talk about the culture of General Motors or the culture of AT&T, it’s a very difficult subject. What big businesses have in common by and large is that they get very bureaucratic. That’s the one norm in culture is that they get very bureaucratic. And of course it happens to the government too. A big governmental body. And basically I don’t like bureaucracy, it creates a lot of error. I don’t have a substitute for it. I don’t have a better way of running the U.S. government than the way they’ve been doing it. But I basically don’t personally like big bureaucratic cultures and so I don’t think very much about big bureaucratic cultures. I don’t know how to fix bureaucracy in a big place. I would regard it as a sentence to hell if they gave me some company with a million employees to change the culture. I think it’s hard to change the culture in a restaurant. A place that’s already bureaucratic, how do you make it un-bureaucratic? It’s a very hard problem.

Berkshire has solved the problem as best it can…of bureaucracy. You can’t have too much bureaucracy at headquarters if there’s no bodies at headquarters. (laughter) That’s our system. I don’t think it arose because we were geniuses or anything. I think partly it was an accident. But once we saw what was working, we kept it. But I don’t have a solution for corporate culture at monstrous places.

2018年5月8日火曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(9)我が麗しきコストコよ

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デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答、今回の話題は企業文化です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

(1:39:16)

<質問29> 社風についておうかがいします。ある企業の社風を部外者の立場から、本当に知ることができるものでしょうか。それと同様に、組織における上層部の人間が、配下の者たちが抱く企業文化について、本当に確信できるものでしょうか。また、ウェルズ・ファーゴ社やGE社のような巨大企業の文化を評価する上で、どのようになさっていますか。文化を理解するのに有用だと考えていらっしゃるものには、何がありますか。

<チャーリー・マンガー> コストコ社のような企業の末端でどのような社風が根付いているか、みなさんもよく知っておられるでしょう。そこまで至った企業文化とは、広大かつ前向きな活力を有していますね。これからもずっと長きにわたって継続すると思いますよ。

しかしGEを調べてみると、非中央集権的な部分もあれば、そうでない部分もあります。単一のビジネスではなく、複数のビジネスを営んでいるからですね。これはかなり複雑な問題になりますよ。事業内容があれほど激しく異なってしまうと、いったい何がGEの文化だと言えるでしょうか。おそらく本社は、ある種の文化を有していることでしょう。その文化は、えてして誤った方向へと進むものです。ある事業から別の事業へと人材をできるだけ異動させるやりかたは、私が思うにずばり間違いですね。

コストコのように、並外れた文化をだれもが受け入れている企業は、きわめて稀です。そして彼らはその文化のもとで、ただひとつの基本的事業にまったくもって留まっています。彼らの有する強靭な文化が正しければ成果がどれだけ得られるのか考えたからこそ、コストコのような企業に心惹かれるわけですよ。

(次回に続く)

Question 29: Questions about culture. How can an outsider really know a company’s culture? And for that matter, how can an insider, at the top of an organization, really be certain about the culture of the company beneath him? And how would you go about assessing the culture of giants like Wells Fargo or General Electric? What is it that you look at that helps you understand culture?

Charlie: Well, you understand culture best where it’s really down (low) in a place like Costco. And there the culture is a vast and constructive force. Which will probably continue for a very, very long time.

The minute you get into General Electric, partly decentralized, partly not. Multi-business instead of one business. It gets very complicated. What is the culture of General Electric when the businesses can be so radically different? Maybe headquarters can have a certain kind of culture. And maybe the culture will be a little wrong. And maybe it’s wrong to shift people around from business to business as much as they do. Which I strongly suspect.

I do think…there are very few businesses like Costco that have a very extreme culture where everybody’s bought into. And where they stay in one basic business all the way. I love a business like Costco because of the strong culture and how much can be achieved if the culture is right.

備考です。チャーリーというよりもウォーレン・バフェットの件ですが、Twitterでご紹介したように、バークシャー・ハサウェイ株主総会の映像記録がCNBCのサイトで公開されていました(お世話になっている某サイトで紹介されていたのを見て、はじめて知りました)。1994年以降のものが収録されているので、天井と底が2組分ありますね。

Berkshire Hathaway Annual Meetings (CNBC)

上位にあたるサイトはこちらです。

The definitive collection - Buffett in his own words (CNBC)

2018年5月4日金曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(8)人工知能について

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前回につづいて、デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答です。「知恵のかたまり」とも言えるチャーリーが、人工知能について語ります。(日本語は拙訳)

<質問28> 人工知能(AI)は、社会に対してインターネット革命以上に大きな影響をもたらすと思われます。それでは、AIは各種業界に対して概してどのような影響を与えるか、また人類の将来に対してどのような影響を与えるのか、ご見解をお聞かせいただければ幸いです。

<チャーリー・マンガー> これはいい質問ですね(笑)。人工知能を研究している人たちは実際のところ、その質問に答えられないと思いますよ。私自身は、それほど多くは学び得られないと思って、人工知能のことは勉強していません。Facebook社やGoogle社ではAIがマーケティングの一環として機能しているのはわかります。だから、ある領域ではうまく機能するのでしょうね。しかし、この主題は実に複雑ですよ。正確にどうなっていくのかは、私にはわかりません。わが人生では、体系化した常識を用いるだけで相当うまくやってきました。ですから、人工知能のような領域に足を踏み入れたいと考えたことはないですね。水辺を探し回って小さな金塊を拾えるとすれば、それが可能な限りは、わずかな優位を得んがために沖積漂砂鉱床へ出向いて、莫大な量のデータをふるいにかけたいとは思いませんよ[=砂金採りの意に引掛けている。過去記事]。つまり、質問する相手をまちがっています。AIがどれほどすごいものなのか、私には自信をもって言い切れません。「AIがまちがいなく経済面での革命を起こす」とは思えないのです。これまで以上に利用されるのはたしかだと思いますが、AIを使うことによって世界で最高の大成功者になれるかどうかは、どんなものでしょうかね。人工知能がうまく働く領域はあるのでしょうが、我々もガイコ社(GEICO)で相当な時間にわたって導入を検討してきたものの、いまだに昔ながらの情報や工夫でやっています。ですから私の知っているのはここまでで、もうこれ以上は語れないのですよ。

Question 28: It looks like the A.I. will have a much bigger impact on society than the internet revolution, so would you mind maybe sharing some of your thoughts on how artificial intelligence will impact different industries in general and who [errata?] it will impact the future of the human race?

Charlie: Well, that’s a nice question. (laughter) The people who studied artificial intelligence don’t really know the answer to that question. I’m not studying artificial intelligence because I wouldn’t be able to learn much about it. I can see that artificial intelligence is working in the marketing arrangements of Facebook and Google, so I think it is working in some places very well. But it’s a very complicated subject. And what its exact consequences are going to be, I don’t know. I’ve done so well in life by just using organized common sense, that I never wanted to get into these fields like artificial intelligence. If you can walk around the shores and pick up boulders of gold, as long as the boulders keep being found and picked up, I don’t want to go to the placer mining sifting vast amounts of data for some little edge. So you’re just talking to the wrong person. And I’m not at all sure how great…I don’t think artificial intelligence is at all sure to create an economic revolution. I’m sure we’ll use more of it, but what are the consequence of using artificial intelligence to become the world’s best (golden boy)? There may be places where it works, but we’ve thought about it at Geico for years and years and years, but we’re still using the old fashion intelligence. So I don’t know enough about it to say more than that.

備考です。デイリー・ジャーナル社ではなくバークシャーの話ですが、明日5月5日は株主総会の開催日です。例によって、Yahooのサイトで実況放映されるとのことです(日本時間はPM10:45より)。

Berkshire Hathaway 2018 Annual Shareholders Meeting Livestream (Yahoo! Finance)

2018年4月28日土曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(7)保険会社はつらいよ

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前回につづいて、デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答です。(日本語は拙訳。意味段落での改行追加あり)

(1:25:32)

<質問23> おはようございます、バフェットさん...いや、マンガーさん。

<チャーリー・マンガー> 「バフェット」と呼んでくださるとは、これは光栄の至りですね(爆笑)。

<質問者> バークシャーが出した最新の年次報告書では、これまでと同様に簿価の変遷が記されています。52年間で19ドルから17万2千ドルへと増加しており、年率にすると19%の成長になります。それでは、この並外れたパーセントにおける大きな割合が、保険事業によってもたらされたレバレッジによるものなのでしょうか。保険会社を使って投資資産を保有できるおかげで、たとえば14%のリターンをあげることで、簿価の20%増へとつながるのでしょうか。

<チャーリー> バークシャーの数字には、あきらかにレバレッジが若干埋まっていましたね。それを保険事業がいくらか供したのも明白です。だからといって、すっかり埋まっていたわけではなかったですよ。それが役立った年もありましたし、困ってしまうほどの大量の資金をアジート[・ジェイン]がもたらしてくれた年もありました。彼はその資金をウォーレン[・バフェット]へ回し、ウォーレンが20%増やしたという顛末です。ですから、保険事業とバークシャー・ハサウェイの間で目を瞠るような相乗効果の生じた年が、何度かあったわけです。

しかし基本的には、保険という事業はたやすく儲けられる道ではないですよ。かの商売には危険や困難が多々ありますし、こうして座っている間にも刻々と競争が激しくなっています。バークシャーが成功できたのは、大きな失敗をほとんどおかさなかったからです。大間違い、そう実に大きなものはなかったですね。そして成功のほうは、かなりありました。我々が成果をあげた頃とくらべると、現在の状況下でそれらすべてを果たすのは、相当むずかしいことでしょう。50年間を通して年率19%の成長を遂げる企業など、きわめて稀ですよ。まったくもって、純資産がですよ。実に珍奇なことです。そんなことが再びすぐに起こるとは思えませんね。デイリー・ジャーナル社で起こるなど、絶対ありえないですよ。

Question 23: Good morning Mr. Buffett…Mr. Munger.

Charlie: I’m flattered to be called Mr. Buffett. (laughter)

Question 23 Continued: The most recent annual report for Berkshire, as in the past reports, the growth in book value was shown and over the past 52 years it has grown from $19 to $172,000. Which represents a return of 19% a year. Is a large part of that outsized percentage attributable to the leverage inherent in the insurance company, such that you can own an investment in the insurance company which returns say 14% and it becomes 20% to book value?

Charlie: Well obviously there was a little leverage buried in the Berkshire numbers. Obviously the insurance business provided some of that. It’s not over-whelming in its consequences. There were years when it was helping. There were years when Ajit made so much money that it was almost embarrassing. And then he’d give the money to Warren and Warren would make 20% on the money. So there were some years when some remarkable synergies between the insurance business and Berkshire Hathaway.

But basically the insurance business is not some cinch easy way to make money. There’s a lot of danger and trouble in the insurance business and its more and more competitive all the time now as we’re sitting here. Berkshire succeeded because there were very few big errors…there were like no big errors, really big. And there were a considerable number of successes. All of which would have been much harder to get under present conditions than they were at the time we got the results. And there are very few companies that have compounded at 19% per annum for fifty years. It’s (a weird) in net worth. That is very peculiar. I wouldn’t count on that happening again soon. It certainly won’t happen at the Daily Journal.

2018年4月24日火曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(6)やっぱり、今は甘くない

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前回のつづきで、デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答です。今回は2件の話題を取り上げます。ひとつめがバークシャー・ハサウェイのアジート・ジェインについて、もうひとつがウォーレン・バフェットの発言したリターン率についてです。(日本語は拙訳。意味段落での改行追加あり)

(1:19:02)

<質問19> アジート・ジェインはどのようにしてバークシャーの再保険事業を一から築き上げたのですか。

<チャーリー・マンガー> すごく単純なことですよ。彼は毎週90時間ほど働きましたし、非常に頭が切れて、実に賞賛すべき人物でしたからね。取引においても、すこぶる楽しんでいましたよ。ウォーレン・バフェットとは毎晩話しをしていましたね。そのような人物が他にいるかどうか、探してみたらどうですか。しかしながら、彼も以前ほどの成果は出せないと思います。昔よりもむずかしいゲームになりましたからね。つまりはそういうことですよ。

Question 19: How did Ajit Jain build Berkshire reinsurance from scratch?

Charlie: Well it’s very simple. He worked about 90 hours a week. He was very smart. He’s very honorable. He’s very pleasant to deal with. And he talked every night to Warren Buffett. Just find somebody else like that. But he won’t do as well because the game is harder now than it was then. And that’s my answer to your question.

(1:21:05)

<質問21> ウォーレン・バフェットは1999年に次のように言っておられました。「自分の運用資金が100万ドルであれば、[年率]50%のリターンをあげられる」と。一方であなたは「現在の投資環境はむずかしい」とおっしゃっていますが、そうであれば彼の言ったリターンは、今日では何%になるとお考えですか。

<チャーリー> 辛抱強い上に積極果敢で非常に聡明な人物が、「売買高の少ない株式」や「珍妙な領域」といった往来の少ない場所を探しだそうとして、労苦を厭わずに働いていると思いますよ。ことごとく抜け目のない人物が少額の資本を運用しているのであれば、現在のような状況であっても高いリターン率をあげられることでしょう。しかし、この問題は現在の私自身には当てはまりません。私にとっては困難な仕事ですし、バークシャーにとっても困難です。デイリー・ジャーナル社にとっても、容易なところは微塵(みじん)もありません。

当社のような「企業」という形態において株式を保有するのは不利ですね。期せずして株式を保有するに至ったのであって、そこに金(かね)があったから株式を買ったわけです。功を奏したものの、当社の株主の立場から見れば、間接的に保有したことになる株式に達するまで、所得税が幾層にも立ち並んでいるわけですから、好ましいことではありません。内国歳入法が規定するところのCコーポレーションとして課税される公開企業では、公開株をひとたび保有してしまえば、所得税を含むあらゆる種類の要因が、投資上の判断に影響を及ぼすことになります。そうであれば、慈善財団あるいは個人年金プランを通じて投資したほうが、ずっと容易ですよ。

概して言えば、そつのない人物が少額の資金を運用するのであれば、かなりうまく増大させられると思います。しかし金額が大きくなるや否や、難しくなりはじめます。ご列席のみなさんと同じ立場にあった私の頃とくらべると、みなさんのほうがずっと難しい状況だと思いますね。しかし私は死にかけている身であり、みなさんには長い年月が残されています(笑)。ですから、「私が占めている立場と交代したい」と望む人はいないでしょうね。

Question 21: In 1999, Warren Buffett said that he could return 50% if he ran $1 million. Give what you said about the investment landscape today being more difficult, what do you think that number would be today?

Charlie: Well I do think that a very smart man who’s patient and aggressive in combination, is willing to work hard, to root around in untraveled places like thinly traded stocks and other odd places. I do think a person with a lot of shrewdness, working with a small amount of capital, can probably earn high returns on capital even today. However that is not my personal problem at the moment. And for me it’s hard. And for Berkshire it’s hard. And for the Daily Journal we don’t have any cinch either.

It’s disadvantageous to have securities in a corporate vehicle like the Daily Journal Corporation. It’s an accident that we have them there. We have them there because that’s where the money was. The way it’s worked out, it’s not desirable if you’re a shareholder and you have a layer of corporate taxes between you and your securities that are indirectly owned. And once you get public securities held in a public corporation taxable under sub-Chapter C of the internal revenue code, all kinds of factors, including income taxes affect your investment decisions. And it’s much easier to invest in charitable endowment or your personal pension plan.

Generally speaking, I would say, if you’re shrewd enough with small sums of money, I think you can compound pretty well. The minute you get bigger sums, I think it starts getting difficult. It’s way more difficult for all you people sitting here than it was for me when I was in your position. But I’m about to die and you have a lot of years ahead. (laughter) You would not want to trade your position for mine.

2018年4月20日金曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(5)ヒトラーから学んだこと

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前回に続いて、デイリー・ジャーナル社株主総会の模様です。今回からはチャーリー・マンガーが交わした質疑応答を取り上げます。米国に主眼を置いた現在のマクロ経済に関する話題です。(日本語は拙訳。意味段落での改行追加あり)

(1:13:13)

<質問17> GDP比でみた連邦政府の債務水準が上昇しており、同時に景気循環の終盤にあって巨額の財政赤字に陥っています。そういったあらゆる現状を憂慮されていますか。

<チャーリー・マンガー> 連邦政府の債務水準が上昇していることは、もちろん不安視していますよ。この国にとって新たな領域に突入しており、新たな領域というものはたぶんに危機が待ち受けているものです。その一方で、程度はともあれこの世界がそれなりにうまく進行する可能性もあります。政府のとる行動パターンが、「歴史に照らして信頼できるものだ」とみなさんや私が考えるものとは大きく異なっているとしてもです。もちろん、この100年間でインフレーションを避けてきた時期には、当時の政府は物価の安定を目標に掲げていました。一方、今の政府の目標は2%のインフレです。さあ、一体どうなることでしょうか。「だれにもわからない」というのが答えです。しかし、「長期的なインフレ率が2%を大きく超える」とする側に賭けるのが筋ではないですかね。私ならそちらに賭けますよ。ただし我々は過去の経験から、「マクロ経済という代物は実に奇異なもので、物理学のようには動かない」ことを学んでいます。今後10年間における[経済]システムは、過去10年間に存在したシステムとは別のものです。異なるシステムには異なる公式が当てはまります。しかしシステムがいつ変化したのか、そして公式がいつ変化すべきなのかは、だれも教えてくれません。

ですから、「世界がすっかりとんでもないことになる」とは想像していません。第1次世界大戦後のドイツでは何が起きましたか。通貨の価値が基本的にゼロとなり、ハイパー・インフレーションが起きたのです。実に大きな過ちを大規模におかしました。しかしそのあとどうなったのかと言えば、かなりの短期間で復活しました。どうやって実現したかというと、モーゲージ[=住宅ローン]を価値の裏付けとした新たなライヒスマルク[通貨]を制定したのです。そのモーゲージは、不当にもタダでモーゲージを剥奪された人たちが所有する住宅や地所へと戻されたものでした。新ライヒスマルクは十分うまく機能しました。そのおかげでドイツは大惨事からうまく回復し、大恐慌の時期を迎えられました。そして実のところ、大恐慌とヴァイマル時代のインフレが組み合わさったことによって、ヒトラーが登場したのです。大恐慌がなければ、彼は権力を手にできなかったと思いますよ。

その後何が起きたのかは、みなさんもご承知の通りですね。欧州を先導する経済力を1930年代末までに持つようになった国は、どこでしょうか。そう、ドイツです。報復の思いなどに焦がれていたヒトラーは、多大なる軍備を取りそろえたり、多くの兵士を訓練したりしました。このように偶然生じたケインズ主義によって、ヒトラーの率いるドイツは大いに繁栄しました。そして1939年の欧州において、ドイツはもっとも繁栄した場所となったのです。だからこそ、彼らはあれほどまでの大惨事から復活できたのですよ。ですから私は、「世界が動乱の時代を迎えるかもしれないと思い病むことはない」と思います。なぜなら回復する術があるからです。いや、かつてのドイツが取ったやりかたを擁護してはいませんよ(笑)。しかしそういった先例を学ぶことで、私が言うところの「思考する上での奇抜さ」を築けるものと思います。おろかな戦争で壊滅した国家が、さらに自国の通貨を崩壊させ、世界恐慌を通過した後に、1939年には欧州でもっとも繁栄した国家となったのですから、これは励まされることですね。みなさんも一安心してください(笑)。

Question 17: Are you concerned at all about the rising level of government debt to GDP at the same time that we’re running large deficits late in the economic cycle.

Charlie: Of course I’m concerned about the rising level of government debt. This is new territory for us, and new territories probably has some danger in it. On the other hand, it is possible that the world will function more or less pretty well, even with a very different pattern of government behavior than you and I would have considered responsible based on history to date. Of course if you look at the inflation we got out of the last hundred years when the announced objective of government was to keep prices stable. Now the announced objective is 2% inflation. Well what the hell’s going to happen? Well the answer is, we don’t know. But isn’t the way to bet that it’s going to be…inflation over the long-term is way higher than 2%? I think the answer is yes. But I think that we have learned from what has happened in the past that macro-economics is a very peculiar subject and it doesn’t work like physics. The system is different in one decade, than the system that was present in the last decade. Different systems have different formulas, but they don’t tell you when systems have changed, and when the formulas have to change.

So I don’t expect the world to go totally to hell because…well, look at what happened in Germany after World War I. They had a hyper-inflation when the currency basically went to zero in value. They really screwed up big time. And what happened?…Well what happened was they recovered from it pretty quick. And they did it by creating a new Reichsmark backed by the mortgages which they put back on the houses and properties of the people who had unfairly gotten rid of their mortgages at no cost. And that new Reichsmark was working pretty well and Germany had pretty well recovered from that catastrophe and then along came the Great Depression. And the combination of the Great Depression and the Weimar inflation really brought in Hitler. Without the Great Depression I don’t think he would have come into power.

What happened…now you’ve got…by the late 30’s, what was the leading economic power in Europe? It was Germany. Cause Hitler in his crazy desire for vengeance and so on, bought a lot of munitions and trained a lot of soldiers and so forth. And the accidental Keyensianism of Germany under Hitler caused this vast prosperity. So Germany was the most prosperous place in Europe in 1939. So all that catastrophe, they recovered from. So I don’t think you should be too discouraged by the idea that the world might have some convulsions. Because there’s a way of recovering. Now I’m not advocating the German system (laughter), but I do think knowing these historical examples creates what I call “mental ploys.” And you’d think that a country that destroyed (itself) in a silly war, destruction of your own currency, great depression, and by 1939 it’s the most prosperous country in Europe. It’s encouraging. I hope you feel better. (laughter)

2018年4月16日月曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(4)正しい生き方とは

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前回に続いて、デイリー・ジャーナル社株主総会でチャーリー・マンガーが発言した内容です。短いですが、大切なことがすし詰めの文章です。(日本語は拙訳。意味段落での改行追加あり)

だからと言って、我々のしてきたことや心構えが時代遅れで、もう役に立たないと言っているわけではないですよ。今はただ見込みが薄いというだけです。「釣り人のおきて」というのがありますが、これは秀逸です。釣りをする上での規則、その1が「釣りたい魚のいるところで釣れ」、その2が「規則その1を忘れるな」[過去記事]。投資においても同じことが言えますね。魚がたくさん集まっている場所では、釣り人の腕前の良さを気にする必要はありません。しかし大量に釣り上げられた場所では、どれほどの腕利きでもさしたる釣果はあげられないでしょう。現在のこの世界をみれば、いたるところが後者に当てはまります。

しかし、それで意気消沈するのは違いますね。そうではなく、人生とは先の長いゲームで、易しい時期もあればむずかしい時期もあり、好機がやってくれば不運に見舞われることもあるわけです。だから正しい生き方とは、「あるがままを受けいれ、最善を尽くす」、そう歩むことです。年を取るまでには、みなさんにも好機がやってくるでしょう。一生の間に二度ばかり、それで打ち止めかもしれません。しかし、そのうちの一度でも物にできれば上出来ですよ。さあ、偉ぶった物言いはここまでにして、質問を受けましょう。

That’s not to say what we did and the attitudes that we had are obsolete or won’t be useful, it’s just that their prospects are worse. There’s a rule of fishing that’s a very good rule. The first rule of fishing is “fish where the fish are”, and the second rule of fishing is “don’t forget rule number one.” And in investing it’s the same thing. Some places have lots of fish and you don’t have to be that good a fisherman to do pretty well. Other places are so heavily fished that no matter how good a fisherman you are, you aren’t going to do very well. And in the world we’re living in now, an awful lot of places are in the second category.

I don’t think that should discourage anyone. I mean life’s a long game, and there are easy stretches and hard stretches and good opportunities and bad opportunities. The right way to go at life is to take it as it comes and do the best you can. And if you live to an old age, you’ll get your share of good opportunities. It may be two to a lifetime, that may be your full share. But if you seize one of the two, you’ll be alright. Well with that pontification done, I’ll take questions.

2018年4月12日木曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(3)そう簡単には大儲けできない

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前回に続いて、デイリー・ジャーナル社株主総会でチャーリー・マンガーが発言した内容をご紹介します。(日本語は拙訳。意味段落で改行追加しました)

[29:59]

資産運用業界における報酬体系、これは実におもしろいですね。昔から多額の資金を扱ってきた存在として、例えばマサチューセッツ・インベスターズ・トラスト(MIT)があります。同社は、ミューチュアルファンド[=投資信託]が許可された頃からの草分けでした。たしかに当時は称賛を集め、敬意を払われるに足る会社でしたよ。しかし運用資産が7,000億ドルかそこらを超えて、若き男女をおおぜい雇って要員を拡大するなどして、投資先を最低でも50件以上に拡大させたとなれば、S&P[500]平均の成績を上回る確率は減少して、ほぼ皆無へと至るでしょうね。もちろん彼らは、顧客がどれだけ払ってくれるのか思案したでしょう。実際のベーシス・ポイントはどうであれ、MITは長期にわたって運用報酬をとっていくのですから、プレッシャーを感じたり、自分たちの世界がおびやかされていると感じているかもしれません。

もうひとつ、おびやかされている領域があります。もしも手数料として「1アンド20」、すなわち運用資産総額の1%分に加えて利益の20%分を徴収する、あるいはもっとひどく資産総額の2%及び利益の20%を徴収するとしましょう。そして運用資産が300億ドルほどもあるとすれば、野心満々な部下の若者らはこぞって、理不尽なまでの金持ちに一刻も早くなりたいと欲するでしょう。そんな状況で顧客のために好成績をあげられる可能性は、いかほどだと思いますか。そういった手数料をとる普通の組織であれば、顧客がよい成績をあげる確率はわずかでしょうね。だからウォーレン[・バフェット]がヘッジファンド勢と対決して勝ちをおさめたのですよ[過去記事]。ウォーレンがS&P平均に賭けたのに対して、彼らは選り抜きの天才たちに賭けました。非常に高額の手数料をとる者たちです。しかし、その高い手数料が首をしめるのです。

競争のはげしい世界では、単純に証券を買うだけで大きな優位を得ようとするのは、それは大変なことです。何十億ドルもの資金で取り組む上に、多額の手数料が足枷となる状況で、「証券会社側の出すリサーチなどをいろいろ読んで、身を粉にして働ければうまい成果があがる」と考えるなんて、なおさらです。それは幻想ですよ。幻じみた見方で世の中と向き合うのは、正しいやりかたとは言えませんね。「現在直面している世の中よりも、バークシャーが台頭し始めた頃のほうが単純だった」とは思いませんし、「我々がしてきたのと同じやりかたをすれば、同じような成果を得られる」とも思いませんね。

I think the incentive structure in investment management is very interesting. If you look at the people who have a ton of money from the past, like say the Massachusetts Investor Trust or something like that, which pioneered Mutual Fund investing in the early days after Mutual Funds were allowed. It was certainly a respectable and honorable place. But once it gets to be $700 billion or whatever it is, and hires a lot of young men and has a big staff and so forth…and young women too…and spreads its investment over 50 securities at least, the chances that it’s going to outperform the S&P average really shrinks to about zero. And of course they wondered what we’ll keep paying, whatever number of basis points Massachusetts Investor Trust’s management operation charges for the long-term, and they may feel under pressure and that their world is threatened.

Another place that’s threatened. Suppose you’re charging say 1 and 20, one percent off the top and twenty percent of profits…or even worse, two percent off the top and twenty percent of profits…and you’ve got $30 billion or so under management and an army of young ambitious people, all of whom want to get unreasonably rich very fast. What are your chances of doing better for your clients? Well the average entity that charges those fees, the chances the clients will do well is pretty poor. That’s the reason Warren won that bet against the hedge funds. Where he bet on the S&P averages and they bet on carefully selected bunch of geniuses charging very high fees. And of course the high fees will just kill you.

It’s so hard in a competitive world to get big advantages just buying securities, particularly when you’re doing it by the billion, and then you add the burden of very high fees and think that by working hard and reading a lot of sell-side research and so forth, that you’re going to do well. It’s delusional. It’s not good to face the world in a delusional way. And I don’t think, when Berkshire came up, we had an easier world than you people are facing this point forward, and I don’t think you’re going to get the kind of results we got by just doing what we did.

2018年4月8日日曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(2)長老一同の知恵深さ

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2月に開催されたデイリー・ジャーナル社株主総会の模様から、前回の内容を受けたチャーリー・マンガーの語りをご紹介します。読み手によって解釈に差がつきそうな内容ですが、年齢を重ねてきた人ならではの、厚みがある見解だと感じました。そして、こまかいジョークのほうも楽しめます。(日本語は拙訳。意味段落で適宜改行しています)

(27:23)

<チャーリー・マンガー> 諸君が資金を託している人物も、その中に含まれていますね。我々には長い期間は残されていません。だからと言って、当社がうまくやれないとは言っていませんが(笑)、運用期間の点では実に興味深いものがありますね。

風変わりなるバークシャー・ハサウェイの取締役陣は年寄りばかりですし、経営陣も高齢です。年寄りの取締役をそろえているという点でバークシャー・ハサウェイやデイリー・ジャーナル社を超える組織はただひとつ、モルモン教会だけですよ(笑)。モルモン教を統率する集団には、すばらしい性質が2つあります。ひとつめは、[預言者などの]聖職者は無給であること。もうひとつは、率いる人たちは男性ばかりで、齢はおよそ85歳から100歳であること(笑)。彼らはこの仕組みを、ほかの教会よりもうまく運営しているわけです。無給の聖職者、そして高齢の男性陣ですよ。当然ながら我々は、バークシャーとデイリー・ジャーナル社でその仕組みを真似しています(笑)。その上、ずいぶんと高齢なバークシャーの取締役諸氏よりも、当社の取締役のほうがさらに高齢者ときています。ウォーレンいわく、「バークシャーと比べて当社では、若い連中がどうなのかいつも見て回っている」とのことですよ(笑)。

これは少しばかり珍妙なことですね。この世の中でどの教会が、人々を幸せにし続けるなどで最高の成績をあげているかと考えたら、(音声不明瞭)モルモン教会だというわけですから。無給の聖職者、それも85歳以上の男性だけで統率しているとは、だれに想像できるでしょう。なんとも不可思議な結末です。その意外な結末を良しとすべきなのでしょうね。私自身、奇妙な成り行きばかりが続いた人生を歩んできたことは、なんといっても間違いないですし。今日ここにいること自体、おどろきですよ。ある人によれば、私の敬する老婦人が94歳の誕生日パーティーでこう言ったそうです。「こうしてここにいられて、すごくうれしいわ」。いや、実際はこう言ったのです。「こういうのがなくても、すごくうれしいわ」(笑)。つまり私が言いたいのはそういうことです。奇妙なことですよ。

Charlie: Those include those who you’re invested with. We do not have a long runway. That doesn’t mean the company won’t do well, (laughter) but in terms of investment management runway, it’s rather interesting.

Berkshire Hathaway’s peculiar in that its directors are so old and its managers are so old. The only institution that exceeds Berkshire Hathaway and the Daily Journal in terms of old directors in office is the Mormon Church. (laughter) The Mormon church is run by a group of people and they have two wonderful qualities. There’s no paid clergy in the Mormon church. And the ruling powers in a group of males between about 85 and 100. And that system is more successful than any other church. No paid clergy and very old males. Obviously we are copying that system at Berkshire and the Daily Journal. (laughter) And we are so much older than the Berkshire directors who are also very old. Warren says we’re always checking to see how the young fellows are doing at the Daily Journal versus Berkshire.

It is slightly weird. But the world is…who would have guessed that the church with the best record for keeping people happy and so on and so on…(inaudible)…which is the Mormon church. Who would have guessed that it had no paid clergy, run only by males who are about 85 and up? Now that is a very odd result. I guess I should like odd results, because I’m sure as hell living a life of a lot of odd results. And I’m very surprised to be here. Somebody said, an old woman whom I liked, said at her 94th birthday party, “I’m very pleased to be here”, in fact she said, “I’m very pleased to be anywhere.” (laughter) Well that’s what it is, and it is weird.

2018年4月4日水曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(1)理想のマネー・マネージャー

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チャーリー・マンガーが会長を務めるデイリー・ジャーナル社の株主総会が、今年の2月14日に開催されました。そのトランスクリプトを公開してくださっているサイトがありましたので、一部をご紹介します。まず今回は「飛び抜けたマネー・マネージャー」に関する話題です。(日本語は拙訳。また意味段落で改行しています)

Charlie Munger: Full Transcript of Daily Journal Annual Meeting 2018 (Latticework Investing)

(21:00)

<チャーリー・マンガー> (前略)我々取締役会のひとりが、「どんな投資アドバイザーでも有するべき特質」を列挙していましてね。彼は、プロの投資家を選び出す後継担当者へその内容を伝えたところ、その人物は即座に半数をクビにしてしまいました。そのような異色の結果となった以上、[取締役の]ピーター・カウフマン本人から資産運用者を選定する際に使う「ファイブ・エース」方式を説明してもらおうと考えたわけです。それではピーター、よろしく。

<ピーター・カウフマン> 「飛び抜けたマネー・マネージャーとして推薦できるのは、どのような人物なのか」をご説明する上で、これから示す一連の条件を思い至りました。それらが的確なものであってほしいと思いますし、それにあてはまる当人のかたが、実際に決定をくだす人物へ結びつけてほしいとも思います。そうなれば私からではなく、その最終的な決定者からの話として受けとめるわけですから、より説得力が増すことでしょう。さて、私の考えた5つの条件に「ファイブ・エース」と名付けましたが、「ファイブ・エース」とはワイルドカードを使用するポーカーにおいて最強の役を指しています。

では、それぞれのエースを挙げていきます。1枚目のエースは「曇りなき誠実さ」です。2枚目のエースは「顧客から請け合ったことは何であれ、難なく軽々とこなせる能力」です。3枚目のエースは「正負両方向に対して、本当に公正な手数料体系」です。4枚目のエースは「投資対象となる領域において競争が少ないこと」です。そして5枚目のエースが「長期的な投資期間が見込めること」です。つまり、その運用者がまだ若いことを意味します。さらに、「もしそのような5つの特性すべてを有するマネー・マネージャーを探し出せたとしたら、やるべきことが2つある」と申し添えておきます。ひとつめは、その人物へ速やかに資金を託すこと。ふたつめは、許されるかぎりの全資金を託すことです。この会場にはマネー・マネージャーの方がおられるのは承知していますし…、

<チャーリー> それはもう、そのとおりですよ!(笑)

<ピーター> …さらには会場におられるマネー・マネージャーを雇っている方もおられます。もしマネー・マネージャーを雇う立場であれば、その人物を評価する上ですぐれた基本原理となります。

<チャーリー> そのとおり。しかし、雇った人の半数をクビにするには費用がかさむでしょうね(笑)。

<ピーター> しかし、もしみなさん自身がマネー・マネージャーであれば、この5つを「希求すべきことがら」とするほうが、たぶんもっと重要でしょう。「マネー・マネージャーとして、自分はどのような特質を持ち合わせるべきか」。まずは完璧に信用できる人物たるべきですし、「やります」と発言したことは実際に造作なくこなせなければなりません。手数料については、正負どちら側でも基本的に公正な体系を採用すべきです。そして競争の少ない領域をさがすべきです。というのは周知のように、謎を秘めている事業には余地が残されているからです。競争の激しい領域だとしたら、一体どのようなたぐいの余地が残っているでしょうか(質問21参照)。最後の5番目ですが、みなさんのなかには非常に幸運な方がたくさんおられます。「長期の投資期間」の欄には、「該当する」との印をつけられるでしょう。史上最高のマネー・マネージャーの方には、4つのエースしか当てはまらない人がいます。それは5番目に該当しないからです。

One of our directors came up with a list of qualities that any investment advisor should have. And he gave it to a future picker of professional investors, and the picker immediately fire half his picks. And I thought that was such a peculiar outcome that I’ll let Peter Kaufman share with you his ‘five aces’ system for picking an investment manager. Peter, go ahead.

Peter Kaufman: So I came up with this list in giving reference to a very exceptional money manager. And I not only wanted to give what I thought was the correct reference, I wanted the person that I was giving the reference to, to in turn be able to relate this above to the real shot-caller. So that a compelling narrative would be transferred from me directly to the ultimate shot-caller. So I came up with what I call the “five aces”. The five aces being the highest hand you can have in a wild card poker game.

Ace number one is total integrity. Ace number two is actual deep deep fluency on whatever it is you say you’re going to do on behalf of the client. Ace number three is a fee structure that is actually fair in both directions. Ace number four is an uncrowded investment space. Ace number five is a long run-way. Meaning that the manager is reasonable young in age. I further add that if you ever find a money manager who possesses all five of these characteristics, there are two things you should do. One, you should put money with them immediately. And number two, put as much money as you are allowed to put. Now I know we have money managers in the room, and we have…

Charlie: Do we ever! (laughter)

Peter Kaufman: And we have people who employee money managers who are in the room. If you employ money managers, this is an excellent formula to evaluate your money managers.

Charlie: Yeah, but it will cost you to fire half those you’ve hired..or you have hired. (laughter)

Peter Kaufman: But perhaps more importantly, if you’re a money manager, this should be your list of five aspirations. What characteristics should I seek as a money manager to possess? I should be completely trustworthy. I should have actual deep fluency in what I claim that I’m going to do. I should adopt a fee structure that’s generally fair in both directions. I should seek an uncrowded space because as we all know, in business where there’s mystery, there’s margin. What kind of margin are you going to have in a crowded space? (Note: See Question 21) And number 5, many of you in here, you’re very fortunate. You get to check that box for having a long runway. Some of the best money managers in history only get four out of these five aces because they don’t qualify for number five.

備考です。訳文や原文中に記されている時刻のハイパーリンク先は、総会の模様を録音した音声データを聞くことのできるサイトになっています(チャーリーの発言はあいかわらず爆笑を誘っています)。残念ながら映像のほうは、Youtubeにアップロードされた様子はないようです。いずれそのときが来れば、そちらへの紹介リンクも追記します。

2018年3月28日水曜日

私が勧めるメンタル・モデル(エドワード・ソープ)

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Twitterのほうでご紹介しましたが、ギャンブラーとしても有名な天才数学者エドワード・ソープのインタビュー記事が、米投資雑誌バロンズのサイトに掲載されていました。短い記事ですが、個人的には再読したい文章ばかりです。今回ご紹介するのは、本サイトで主要な話題として取り上げている「メンタル・モデル」の話題です。(日本語は拙訳)

なお、下記リンク先は購読者のみのアクセス制限付きです。無料で読みたい方は、たとえばTwitterの投稿でご紹介したGoogle検索経由などの方法でアクセスしてください。

Why Edward Thorp Owns Only Berkshire Hathaway (Barron's)

<質問> あなたの新刊『どんな市場でも闘える男』[未訳; 原題はA Man for All Markets]から、どのような教訓を得てほしいとお考えですか。

<ソープ> 己のためにできる最高のこととは、「みずからを教育して、明確かつ合理的にものごとを考えられるようにすること」です。数学や科学、論理的思考を身につけるのに役立つでしょう。その次に大切なのは、広い分野にわたって、書物を読んだり興味をいだくことです。もしそうできれば、道具として使えるものを増やすことができます。(バークシャー・ハサウェイの副会長である)チャーリー・マンガーは多種多様なメンタル・モデルの持ち主ですが、それらはものごとを考える上での短縮法といえるものです。私自身も手持ちがありますが、お気に入りのひとつに「外部性を理解せよ」というものがあります(他者の経済活動から生じる波及効果)。

たとえば、私が自宅に火災保険をかけたとしましょう。すると、となりに住むご家族は若干安全になります。これが「正の外部性」です。一方、環境性能の低いガソリン車に乗って大気を汚染させるにもかかわらず、なんの対価も支払わない人がいるとすれば、それが「負の外部性」です。もうひとつの例として「銃」があげられます。客が銃を買っていったことで、販売業者は大儲けをします。しかしその客が他人を殺せば、社会が大きな費用を支払うことになります。一方で、銃の販売業者は何も支払いません。

さまざまな問題を分析しようとする際に、「外部性」を考えるのは有効なやりかたです。もし「負の外部性」をもたらす人に対して、その責任をとらせるようにすれば、多くの問題が解消されます。単刀直入な解決例をあげてみましょう。自動車は年間3万5千人の命を奪っています。もし自動車を運転したければ、免許証が必要ですし、訓練もそうですし、損害を与えたときのために保険も必要です。それと同じように、銃の場合も保有者に責任を持たせるべきです。たとえば、紛失した際にはその旨を報告しなければなりません。銃の場合でも同じようにすれば、何千もの銃器を保有することはできなくなるでしょう。それを引き受ける保険会社など考えられないですから。AR-15[半自動ライフル銃]に必要な保険料はいくらになると思いますか。おそらくは相当な金額になるでしょう。

Q: What lessons do you want people to come away with from A Man for All Markets?

A: That the best thing you can do for yourself is to educate yourself to think clearly and rationally. It helps to have math or science or logical training. The next is to be widely read and curious. If you are that way, you have so much more to use in terms of tools. [Berkshire Hathaway Vice Chairman] Charlie Munger has a collection of multiple mental models—shorthand ways to think of things. I also have my own, and one of my favorites is to understand externalities [spillover effects from other economic activity].

For example, if I buy fire insurance for my house, my neighbor is a little safer. That’s an externality benefit. If someone drives a polluting gasoline car and uses the atmosphere as a waste dump without paying any consequences, that’s a negative externality. Another one is guns. Gun dealers make a lot of money, their clients go out and kill people, and society pays huge costs. Gun dealers don’t.

Externalities are a good way to start analyzing problems. A lot of problems go away if you make people who distribute negative externalities pay the consequences. There’s a neat solution. Automobiles kill about 35,000 people a year. If you want to drive a car, you need a license, some training, and also insurance if your car does damage. People have to be accountable for their guns, just like cars. If your car is stolen, you are expected to report it. [What if it were the] same with guns? People wouldn’t be able to accumulate thousands of guns, because what insurance company will insure it? What do you think the insurance would be for an AR-15? It would be very high.

2018年3月24日土曜日

2017年度バフェットからの手紙(8)資本主義を育むところ

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2017年度「バフェットからの手紙」から、ちょっとした話題をひろい集めました。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

バークシャー子会社における買収について。
最後になりますが、買収によって成長してきた[子会社の]プレシジョン・キャストパーツ社が、防食材やパイプ関連のシステム及びコンポーネントを製造しているドイツのヴィルヘルム・シュルツ社を買収しました。ただし、これ以上の説明はご勘弁ください。不動産仲介や建築会社やトラック・ステーションの活動について疎いように、生産現場のこともわたし自身がよく知らないからです。

ありがたいことに、この件で知識を並べ立てる必要はありません。プレシジョン社のCEOを務めるマーク・ドネガンは製造会社における卓越した経営者で、配下のあらゆる事業をうまくいくように仕立てあげているからです。ときに「現物」に賭けるよりも「人物」に賭けたほうが、確かなことがあります。(PDFファイル5ページ目)

Finally, Precision Castparts, a company built through acquisitions, bought Wilhelm Schulz GmbH, a German maker of corrosion resistant fittings, piping systems and components. Please allow me to skip a further explanation. I don’t understand manufacturing operations as well as I do the activities of real estate brokers, home builders or truck stops.

Fortunately, I don’t need in this instance to bring knowledge to the table: Mark Donegan, CEO of Precision, is an extraordinary manufacturing executive, and any business in his domain is slated to do well. Betting on people can sometimes be more certain than betting on physical assets.

年次株主総会おなじみの卓球仲間について。
友人のアリエル・シンが、日曜日にモールのほうにも参加して卓球の勝負を挑む人を待っています。アリエルにお会いしたのは彼女が9歳の時でしたが、そのときすでに彼女から1点も取れませんでした。アリエルは2012年のオリンピックで米国の代表選手を務めました。物おじしない方はぜひ、彼女に挑戦して腕前を試してみてください。開始時刻は午後1時です。昨年はビル・ゲイツがけっこういい勝負をしましたので、今年も挑むと思います(でもアリエルに賭けたほうがいいですよ)。わたし自身は、助言者として参加するにとどめておきます。(PDFファイル14ページ目)

My friend, Ariel Hsing, will be in the mall as well on Sunday, taking on challengers at table tennis. I met Ariel when she was nine, and even then I was unable to score a point against her. Ariel represented the United States in the 2012 Olympics. If you don’t mind embarrassing yourself, test your skills against her, beginning at 1 p.m. Bill Gates did pretty well playing Ariel last year, so he may be ready to again challenge her. (My advice: Bet on Ariel.) I will participate on an advisory basis only.

年次株主総会における質疑応答について。
上述したように、少なくとも54件の質問を受けるつもりです。アナリストやジャーナリスト各氏からは6件ずつ、そして聴衆のみなさんからは18件分です。それ以降、聴衆のみなさんからさらに質問があればお受けします。過去には、チャーリーとわたしで60件以上の質問を受けたことが何度もあります。質疑応答の終了時刻は3時半です。(PDFファイル15ページ目)

All told, we expect at least 54 questions, which will allow for six from each analyst and journalist and for 18 from the audience. After the 54th, all questions come from the audience. Charlie and I have often tackled more than 60 by 3:30.

総数が10数名の本社スタッフについて。
本社に務める仲間は相変わらずの素晴らしい人ばかりです。SECなどの当局に必要な数多くの用件を効率よくさばき、連邦所得税の申告では32,700ページにわたる文書を提出し、州税の申告3,935件を監督し、株主やメディアから寄せられる止むことのない要求に対応し、年次報告書を送付し、この国最大の年次株主総会にむけた準備にいそしみ、取締役会の活動を調整し、このレターに含まれる事実確認を行う、そのような作業の項目は延々と続きます。

彼らは事業上のあらゆる作業を快く受けてくれ、信じられないほど効率的に処理し、容易で快適な日常をわたしが過ごせるように手助けしてくれます。彼らの活動は、バークシャーだけに限定されるものではありません。たとえば、わたしとの質疑対話のためにオマハを訪問しに来る大学生たちが、昨年は200件の申し出のなかから40件が選ばれましたが、それらを対応してくれました。またわたしが受けるあらゆる要請にも応じてくれますし、旅行の準備や、さらには昼食時にハンバーガーとフレンチ・フライ(もちろん、ハインツ・ケチャップがたっぷり)も持ってきてくれます。また年次総会においては、こうあってほしいと願うあらゆるやりかたを以って、快く尽くしてくれます。彼らはバークシャーで働くことを誇りにしてくれますが、そんな彼らと働けることをわたしも誇らしく思います。(PDFファイル15ページ目)

We continue to have a wonderful group at headquarters. This team efficiently deals with a multitude of SEC and other regulatory requirements, files a 32,700-page Federal income tax return, oversees the filing of 3,935 state tax returns, responds to countless shareholder and media inquiries, gets out the annual report, prepares for the country’s largest annual meeting, coordinates the Board’s activities, fact-checks this letter - and the list goes on and on.

They handle all of these business tasks cheerfully and with unbelievable efficiency, making my life easy and pleasant. Their efforts go beyond activities strictly related to Berkshire: Last year, for example, they dealt with the 40 universities (selected from 200 applicants) who sent students to Omaha for a Q&A day with me. They also handle all kinds of requests that I receive, arrange my travel, and even get me hamburgers and French fries (smothered in Heinz ketchup, of course) for lunch. In addition, they cheerfully pitch in to help at the annual meeting in whatever way they are needed. They are proud to work for Berkshire, and I am proud of them.

ウォーレンやチャーリー亡き後の、バークシャーの経営陣について。
最後に最高の話題を。バークシャーの取締役会は2018年初に、新たな取締役としてアジート・ジェインとグレッグ・アベルを選出し、さらには両名を副会長に任命しました。今ではアジートが保険事業を、そしてグレッグがその他の事業を統括しています。チャーリーとわたしは、投資及び資産配分の職務に専念していきます。

アジートとグレッグが当社のために働いてくれているのは、わたしのみならず、株主のみなさんにとっても実に幸運なことだと思います。長らく当社と共にあった両名には、バークシャーという名の血潮が通っています。彼らの性格は才能と合致しており、そのことがすべてを語っています。

5月5日には、ぜひオマハへいらしてください。バークシャーは資本主義を育むところ、その一同が総出でお迎えします。(PDFファイル16ページ目)

I’ve saved the best for last. Early in 2018, Berkshire’s board elected Ajit Jain and Greg Abel as directors of Berkshire and also designated each as Vice Chairman. Ajit is now responsible for insurance operations, and Greg oversees the rest of our businesses. Charlie and I will focus on investments and capital allocation.

You and I are lucky to have Ajit and Greg working for us. Each has been with Berkshire for decades, and Berkshire’s blood flows through their veins. The character of each man matches his talents. And that says it all.

Come to Omaha - the cradle of capitalism - on May 5th and meet the Berkshire Bunch. All of us look forward to your visit.

株式市場が大幅に下落して、さらには円高が進むようであれば、そのときこそ日本人にとってバークシャー株を買う好機だと思います。はたしてその日がやって来るのか、今は成り行きに任せるばかりです。

2018年3月20日火曜日

企業の成長、自社株買い、株価について(ウォーリー・ワイツ)

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バリュー志向のマネージャーであるウォーリー・ワイツのインタビュー記事から、さらに引用します。オーソドックスな内容ですが、銘柄選択及び購入価格に関する大切な側面が簡潔に語られています。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問> 企業は、いつ配当を支払うべきですか。あるいはいつ自社株買いをすべきでしょうか。

<ワイツ> [投資先の]企業には、1株当たり事業価値の長期的成長に焦点を置いた資本配分を実施してほしいと考えています。その中で筆頭に挙げたいのが、「高いリターンの得られる機会があれば、その事業に再投資する」という選択肢です。また自社株買いもよいと思います。ただし本源的な事業価値よりもずっと安い値段で株が売買されている場合の話です。反対に、株価が本源的価値よりも高いのであれば、資金の下手な使いかたです。過去を振り返れば、高値のときに熱狂的に買う一方で、安値のときに多く買えなかった経営陣がたくさんいました。しかしその足跡はお粗末の連続だったにもかかわらず、継続株主にとってみれば、自社株買いは1株当たりの価値を増加させる上で非常に効果的な手段になり得ます。そして配当ですが、これは多くの株主にとって魅力的かもしれません。しかし現在の低金利環境では、「利回りを追求する」動きゆえに保証なき株価高騰を招いた例が、数多くみられます。

JR: When should a company pay a dividend or repurchase stock?

WW: We want companies’ capital allocation decisions to be focused on long-term growth in business value per share. Our first choice is reinvestment in the business if the company has high return opportunities to do so. Stock buybacks are great if the stock sells well below its intrinsic business value and terrible if the stock price is above intrinsic value. Historically, many managements have bought enthusiastically at high prices and failed to buy much at cheap prices. However, despite a history of poor execution, buybacks can be very effective in increasing the value per share for remaining shareholders. Dividends can be an attraction for many shareholders, but in this low interest rate environment, it appears that “chasing yield” has resulted in unwarranted stock price inflation in many cases.

<質問> 低成長率の現代において、利益をともなった成長ができる企業に投資するのは、どれほど大切なのでしょうか。

<ワイツ> 成長は、事業の価値を算出するのに重要な要素です。しかし私たちにとって問題なのは、事業価値に対する株価であって、成長率そのものではありません。近年では、将来の見通しが立つ成長というものが稀になってきています。また[余剰の]価値がとぼしくなってきたせいで、代金を支払いすぎた投資家が多くいるに違いありません。そのような見方をとってきたことが、近年における私たちの相対的成績に、影響を及ぼしてきました。しかし「たとえ素晴らしい企業だとしても、払い過ぎるのは投機的である」と強く思います。

JR: How important is it to invest in companies that can grow profitably in this low-growth world?

WW: Growth is an important factor in calculating business value. What matters to us, though, is stock price relative to business value, not a growth rate, per se. Predictable growth has been rare in recent years, and we believe that many investors have been over-paying because of its scarcity value. This opinion has impacted our relative performance in recent years, but we believe that over-paying for even a great business is speculating.

備考です。自社株買いと事業拡大のどちらを優先すべきかについては、ウォーレン・バフェットが昨年書いたレターでも取り上げられていました。

2016年度バフェットからの手紙(1)自社株買いについて

2018年3月16日金曜日

割引率について(ウォーレン・バフェット)

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バリュー投資サイトのGuruFocusで、ウォーレン・バフェットが過去にインタビューで語った内容を取り上げている記事がありましたのでご紹介します(原典は、バリュー投資家にとっておなじみのOID誌です;Outstanding Investor Digest)。今回の文章は短いですが、前2回つづけた投稿(過去記事1, 2)のカギとなるものです。(日本語は拙訳)

Buffett and Munger on Discount Rates and How They Read Annual Reports (Grahamites氏の記事、GuruFocus)

<バフェット> 将来における現金の収支を見積もることができたら、それらの数字を現在価値へと引き直すために、割引率をいくつにすればよいかが問題になります。わたしの感覚では、ほとんどの資産においておそらく長期国債[おそらく30年債]の利回りが最適な数字だと思います。ただしわたしだけでなくチャーリーもそうですが、「金利が低い側にある」という印象を持っているときは、おそらく長期国債の利回りそのものを使おうとは考えないと思います。そのようなときには、ふつう1ポイントか2ポイント追加するかもしれません。しかし、この一連の説明を聞いた方は、長期国債の利回りを使ってみたくなるでしょう。そうだとしたら、株式と債券における経済的な面での違いは事実上なくなります。違っているのは、債券の場合は将来どれだけのキャッシュフローが得られるのか知り得るのに対して、株式の場合は自分でそれを見積もらなければならない点です。これは骨の折れる仕事ですが、ずっと大きな見返りが得られる可能性を秘めています。それゆえ、仮想的な収入には関わりたくないのでしたら、農地やアパートやそういったものを見積もったほうがいいでしょう。少なくとも、わたしたちはそうしています。

Buffett: And once you’ve estimated future cash inflows and outflows, what interest rate do you use to discount that number back to arrive at a present value? My own feeling is that the long-term government rate is probably the most appropriate figure for most assets. And when Charlie and I felt subjectively that interest rates were on the low side – we’d probably be less inclined to be willing to sign up for that long-term government rate. We might add a point or two just generally. But the logic would drive you to use the long-term government rate. If you do that, there is no difference in economic reality between a stock and a bond. The difference is that the bond may tell you what the future cash flows are going to be in the future – whereas with a stock, you have to estimate it. That’s a harder job, but it’s potentially a much more rewarding job. Logically, if you leave out psychic income, that should be the way you evaluate a farm, an apartment house or whatever. And in a general way, Charlie and I do that.

2018年3月12日月曜日

ウォーレン・バフェットの株式投資入門:金利と債券と株式について

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「バフェットからの手紙」を公開したウォーレン・バフェットが、恒例となっているベッキー・クイックのインタビューを受けていました。そのなかから、昨年後半にも話題になっていた金利に関する質疑応答を引用してご紹介します。なお長文の段落は、意味段落で適宜改行しました。(日本語は拙訳)

FULL TRANSCRIPT: BILLIONAIRE INVESTOR WARREN BUFFETT SPEAKS WITH CNBC’S BECKY QUICK ON "SQUAWK BOX" TODAY (CNBC)

<質問者: ベッキー・クイック> 株式に強気で来た理由として、現時点では金利の状況もそうだとのご意見ですが、たしか以前に「金利は株価に作用する重力であり、十分に低ければ株価は必ずや上昇する」と言われていましたね。しかし市場では実に奇妙なことが起こっています。雇用に関する報告が良好だといううれしいニュースが出たとたん、突如として不安が漂うようになりました。金利が上昇し、連銀が予想以上に上昇率を高めるのではないかと、みんな心配性になっています。朝起きて確かめる度に、10年物の国債利回りが3%へと戻りつつあります。このことで投資家は、いえ「少なくともトレーダーは」と言うべきですね、何が起きているのだろうと気がかりになっています。この件をどんなふうに捉えていますか。

<ウォーレン・バフェット> そうですね、ベッキー、もし30年物の米国債を買ったとしますよ。するとすべてのクーポンが付いてきます。今は電子的になりましたが、昔はそうだったのです。とにかくクーポンが全部付いてきます。クーポン毎に3%などが支払われるとします。今から30年後までずっとですよ。そして最後になると、額面分の金額を返してくれます。

それでは株式はどうなのかと言いますと。それと同じようなものです。クーポンがたくさん付いてきます。ただし、数字は印刷されていません。その数字を印刷することが、株式を買う投資家のやるべきことなのです。数字が10%だとしましょうか。ほとんどの米国企業は、有形資本比で10%以上の利益をあげています。この債券[的にとらえることのできる株式]が10%だとすれば、3%と書かれている債券よりも、ずっと高い価値があります。しかし米国債が10%であれば、あなたが買った債券[風の株式]の価値は変わります。GMやバークシャー・ハサウェイなどの一部を[株式として]買うということは、現金の形で徐々に戻ってくるわけです。バークシャーの場合はずっと先になりますが、大きな金額になるでしょう。それらがクーポンなのです。そのクーポンをどう考えればいいのか投資家として決断するのは、買うのは自分だからですし、価値を割り引いた金額で買うからです。しかし物差しとしての米国債の利回りが高くなれば、ほかの債券[=株式など]の価値は魅力が薄れます。これが[この手の話題についての]経済的な理屈です。

1982年や83年には長期米国債の利回りが15%になりました。当時ROEが15%だった企業は、そのような環境では簿価分の価値しかありませんでした。30年物のストリップス[=割引債]を買えば、年率15%を確実にできたからです。当時12%の利益を得ていた企業は水準以下だったことになります。しかし現在のように米国債の利回りが3%であれば、12%の利益をあげる企業はすごく素晴らしいと言えます。ですから、そういった企業には法外な値段がついているわけです。

<質問> だから以前に、「3%は15%からほど遠い」とおっしゃったのですね。

<バフェット> そのとおりです。ただし、3%から15%へ上昇した様子を目にしたことはありますが。

<質問> たしかに。その途中で「なんと、2.4%から2.9%へ上がったのね。これは大きな違いだわ」と感じる変曲点がありますか。

<バフェット> その数字はそれほどではないですね。そんなに大きくはないです。

<質問> 過去を振り返れば、まだ...

<バフェット> そのとおりです。

<質問> ...絶対的な意味で大きく変化しておらず、パーセンテージもそれほど上昇していない、と受け止めるべき段階ですか。

<バフェット> ROE12%をあげている企業が再投資をしているのと比べれば、2.4から2.9%へ上昇した数字にはそれほど意味はありません。S&P[500]の数字はそれこそ云十年分もありますが、有形資本比でみてもっと高い数字をあげてきました。ですから、もっと高い値段になっていくわけです。

<質問> その途上で転換点があるのですか。それともそういったものは徐々に減少するのですか。

<バフェット> それはだれにもわかりません。ただし、重力として働きます。つまり「債券の利回りが来年には15%になる」と教えてくれれば、今にも手放したい株がいろいろありますし、15%の債券をたくさん買いたいところです。1982年にそうしていればと思ったりしますが、実際には買いませんでした。

<質問> それでは、もし「来年の長期債は4.5から5%で売買される」と私からお伝えしたら、どうなりますか。

<バフェット> それはたしかに違いますね。しかし例のときに長期債を保有するのは愚かでしたよ。この件は年次報告書で触れていますが、まさしく愚かなことでした[過去記事]。巨大な公的年金基金やその手の機関投資家が、座して債券を保有していました。4%あるいは5%近辺で買ったのかもしれません。しかし3%前後になると、額面以上の価格で売り買いしています。そのような考えかたでは、非常にバカげた行動をとることになります。

BECKY QUICK: And part of the reason that you've been so bullish on equities for many years at this point is the interest rate environment. You've looked at interest rates and said, "Interest rates are gravity on stock prices. And when interest rates are so low, stock prices inevitably are going to climb." There's been this really weird thing that's been happening in the markets. Where all of a sudden, good news that we got from a good jobs report made people start to worry that interest rates were going to climb and that the Fed was going to raise rates more than anticipated. People got really nervous around that. You can still see it every time we get up on the ten year back towards 3%. It gives investors, or at least traders I should say, some concerns about what's happening. How do you kind of gauge all of that?

WARREN BUFFETT: Becky, a bond, if you buy a 30-year government bond, it has a whole bunch of coupons attached. In the old days it does, now it's all electronic. But it has a whole bunch of coupons. And the coupon pays 3%, or whatever it may say. And you know that's what you're going to get between now and 30 years from now. And then they're going to give you the money back.

What is a stock? A stock is the same sort of thing. It has a bunch of coupons. It's just they haven't printed the numbers on them yet. And it's your job as an investor to print those numbers on it. If those numbers say 10% and most American businesses earn over 10% on tangible equity. If they say 10%, that bond is worth a hell of a lot more money than a bond that says 3% on it. But if that government bond goes to 10%, it changes the value of this equity bond that, in effect, you're buying. When you buy an interest in General Motors or Berkshire Hathaway or anything, you are buying something that, over time, is going to return cash to you. Maybe a long time in terms of Berkshire, but it'll be bigger numbers. And those are the coupons. And your job as an investor to decide what you think those coupons will be because that's what you're buying. And you're buying the discounted value. And the higher the yardstick goes, and the yardstick is government bonds, the less attractive these other bonds look. That's just fundamental economics.

So in 1982 or '83, when the long government bond got to 15%, a company that was earning 15% on equity was worth no more than book value under those circumstances because you could buy a 30-year strip of bonds and guarantee yourself for 15% a year. And a business that earned 12%, it was a sub-par business then. But a business that earns 12% when the government bond is 3% is one hell of a business now. And that's why they sell for very fancy prices.

BECKY QUICK: So 3% is a long way from 15% that you were just talking about.

WARREN BUFFETT: Absolutely. But I watched it go from 3-15% though, too.

BECKY QUICK: Right. Is there an inflection point on that way because people think, "Oh my gosh, we've gone from 2.4% to 2.9% and that is a big difference."

WARREN BUFFETT: It isn't much. That's not much.

BECKY QUICK: Historically speaking, that's still the way we should be measuring these things

WARREN BUFFETT: Absolutely.

BECKY QUICK: Not on the absolute movement or the percentage gain movement over time?

WARREN BUFFETT: 2.4-2.9% is nothing if you're comparing it with businesses that earn 12% on equity and reinvest. And the S&P, you can just look at the figures for decades, has earned on tangible equity, it's earned a lot more than that. And it translates into more, higher prices than it should.

BECKY QUICK: Is there a tipping point along the way, or is it a gradual decline in terms of these things?

WARREN BUFFETT: Nobody knows. Yeah. But it is gravity. I mean, if you told me interest rates were going to be 15% next year on bonds, you know, there's a lot of equities I wouldn't want to own now. And I would buy a lot of governments at 15%, and I kind of wish I had in 1982, but I didn't.

BECKY QUICK: If I told you that the long bond was going to trade at 4.5-5% next year, what would you (think)?

WARREN BUFFETT: It makes a difference. But it's been idiotic to own long bonds during the last, you know, I talk about this in the report. It's just been idiotic. And big, public pension funds and all that, they sat there and they owned bonds. Now, they may have bought them on a 4% or 5% basis. But if they go to a 3% basis, they're selling way above par. The way people think about it is that they do some very silly things.