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2018年9月24日月曜日

<新訳>誤判断の心理学(チャーリー・マンガー)

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本ブログではチャーリー・マンガーの講演を順次ご紹介してきました。ただし「誤判断の心理学」と銘打った講演は抄訳にとどまっていました。今回からのシリーズでは同講演の全訳を拙訳にてご紹介します。引用元原書の版はExpanded Third Editionです。なお「講演」と呼んではいるものの、実際には各種講演をもとにした新たな「書き下ろし」エッセイとのことです。

誤判断の心理学
チャーリー・マンガーの講演3件から抜粋してまとめられた初出の文章。2005年にチャーリー自身が改訂し、相当量の文章が加筆修正された。

前書き

15年ほど前に心理学の話をしたときの各講演録を読み返してみたところ、当初の内容のほぼすべてを含みながらも、より論理的で、ずっと長い「講演」を生み出せることに気がつきました。

しかし、そうすることで次の4つの不利益が生じるだろうと、即座に思い至りました。

第一に、その長い「講演」は論理的にずっと完成された内容に書き上げられるはずだったので、多くの読者が当初の講演以上に退屈かつ混乱すると思われた点です。心理的傾向における独特の定義を扱う際に、心理学の教科書やユークリッド[数学]を連想させるようなやりかたをとるつもりでしたから、その可能性は考えられました。一体だれが、気晴らしのために教科書を読んだり、ユークリッドを学びなおそうと考えるものでしょうか。

第二に、私が身につけた心理学に関する知識のうち正式と言えるやりかたのものが、15年前にわずか3冊の教科書に目をとおした程度だった点です。そのため、心理学の分野でその後に発展したことは、事実上なにも知りません。さらに、長き論説にはみずからの推考を含み、はるかに学術的な心理学に対して批判をくだすことでしょう。このように素人がプロの領域へと侵入すれば、その領域の先生方が苦く受けとめるものも当然です。私のあやまちを嬉々として探し出し、私が開陳した批判に対して自説を以って反論する労を厭わないかもしれません。そのような新たな批判に、なぜ私が直面する必要があるのでしょうか。情報の面で優位な上に弁の立つ批判者からの追及を待ち望む人など、いったいどこにいるのでしょうか。

第三に、わが考察を披露した長き改訂版が、私に対して好意を持つまいと過去に心を決めた人たちから、必ずや批判を受ける点です。表現面や本質的な面に対する反論もあるでしょうが、そのほかにもあるでしょう。一介の老人が「伝統的な知恵にはろくに目を向けない態度を示す一方で、自分がなにひとつ受講したことのない教科に登場する話題を『まくし立てる』」姿に対して、傲慢とみる見解です。ハーバード・ロースクール時代からの旧友であるエド・ロスチャイルドは常々、そのようにまくし立てる心情を「靴用ボタン・コンプレックス」と呼んでいました。家族関連の知り合いが、靴用ボタンの事業で優勢的な地位を占めた後になってから、あらゆる話題を予言的に話していた様子にちなんで付けた呼び名でした。

第四に、私自身が間抜けぶりをさらしてしまう可能性がある点です。そういった非常に憂慮すべき4つの点があるにもかかわらず、以前の文章を拡充した版を発表することに決めました。私が何十年間にわたって成功を収めることができたのは、仕事やその方策において失敗する可能性が低い行動だけに限定してきたからこそと言えます[参考文献]。しかし今や私は、これから歩む道を選択しました。重大な個人的便益が得られることはなく、家族の一員や友人には確実に痛みをもたらすと共に、みずから醜態をさらしかねない道をです。それでは、なぜそのような道を歩むのでしょうか。

(つづく)

The Psychology of Human Misjudgment
Selections from three of Charlie's talks, combined into one talk never made, after revisions bv Charlie in 2005 that included considerable new material.

PREFACE

When I read transcripts of my psychology talks given about fifteen years ago, I realized that I could now create a more logical but much longer "talk," including most of what I had earlier said.

But I immediately saw four big disadvantages.

First, the longer "talk," because it was written out with more logical completeness, would be more boring and confusing to many people than any earlier talk. This would happen because I would use idiosyncratic definitions of psychological tendencies in a manner reminiscent of both psychology textbooks and Euclid. And who reads textbooks for fun or revisits Euclid?

Second, because my formal psychological knowledge came only from skimming three psychology textbooks about fifteen years ago, I know virtually nothing about any academic psychology later developed. Yet, in a longer talk containing guesses, I would be criticizing much academic psychology. This sort of intrusion into a professional territory by an amateur would be sure to be resented by professors who would rejoice in finding my errors and might be prompted to respond to my published criticism by providing theirs. Why should I care about new criticism? Well, who likes new hostility from articulate critics with an information advantage?

Third, a longer version of my ideas would surely draw some disapproval from people formerly disposed to like me. Not only would there be stylistic and substantive objections, but also there would be perceptions of arrogance in an old man who displayed much disregard for conventional wisdom while "popping-off' on a subject in which he had never taken a course. My old Harvard Law classmate, Ed Rothschild, always called such a popping-off "the shoe button complex," named for the condition of a family friend who spoke in oracular style on all subjects after becoming dominant in the shoe button business.

Fourth, I might make a fool of myself. Despite these four very considerable objections, I decided to publish the much-expanded version. Thus, after many decades in which I have succeeded mostly by restricting action to jobs and methods in which I was unlikely to fail, I have now chosen a course of action in which (1) I have no significant personal benefit to gain, (2) I will surely give some pain to family members and friends, and (3) I may make myself ridiculous. Why am I doing this?

蛇足ですが、チャーリーがなにかを説明するときには、冗長とも思える前振りを語ります。もちろんそれには理由があって、そのひとつが過去記事「<旧約>誤判断の心理学(24)他人に何かを頼むとき」で示されていると思います(再帰的なリンクになっている点にご注目を)。

2018年9月20日木曜日

ミクロがわかってもマクロがわかるとは言えない(『次なる金融危機』)

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次なる金融危機』という本を読みました。本書の主張をまとめると、「家計部門や企業(除金融)部門の債務が、GDPと比較して高い割合へ上昇するほどに、経済危機を招きやすく、かつ回復も遅れる」というものでした。主流の経済学派からは大きく逸れた見解らしいですが、一市民としての感覚からすれば納得できる仮説だと感じました。なお同書の著者は、過剰債務がみられる国として中国などを挙げ、大きな揺り返しがやってくること必至と予測しています。

その本題とは別に、同書から今回ご紹介するのはハード・サイエンス関連の話題です。本ブログで取り上げる話題のひとつに、「ものごとを分析する際には還元的に捉えよ」というものがあります。その「還元的分析」に関して注意をうながすような文章がありましたので、引用します。

以上のようなわけで、ミクロ経済学からマクロ経済学を導くことはできない。だが、だからといって、ブランシャールが言うように、広く受け容れられてきた分析的マクロ経済学の核心、つまりその検討と展開の場が、夢想かもしれないことを意味しない。すべての経済学者が賛成する基礎から出発して、マクロ経済学を導き出す道が存在するのだ。だが、実際にその道を進むには、これまで主流派が避けてきた考え--複雑性を受け容れねばならない。

高い層の現象を低い層のシステムから直接的に推定するのは不可能だという発見は、今では純正な科学では共通の認識だ。それが複雑なシステムにおける、いわゆる「創発(エマージェンス)だ。 [参考記事]

ひとつの複雑システムの支配的な諸性質は、考えられた単独の要素の性質よりも、むしろ要素の相互作用に由来する。(中略)

(マクロ経済学のような)高いレベルの現象は(ミクロ経済学のような)低いレベルの現象から導き出され得るし、また導き出されねばならない、という信念の誤りについては、1972年--ルーカスが講演するよりも前に--ノーベル物理学賞受賞者のフィリップ・アンダーソンがつぎのように述べていた。

「この種の考えの主な誤りは、還元主義的な仮説が決して『構築主義的』な仮説を意味しないことだ。あらゆる事柄を単純な法則に還元できる能力は、そうした法則から出発して宇宙を再構築する能力を意味しない」

アンダーソンは、物理学で、とくに「ミクロ」から「マクロ」へと延ばす(外挿する)態度を排斥した。そうした排斥が素粒子の振る舞いにあてはまるならば、人間の行動にはどれほど多く応用されねばならないのだろうか。

「素粒子の大きな複雑な集合体の振る舞いは、少数の粒子の性質の単純な外挿として理解されるべきではない、ということが分かる。そうではなくて、複雑性のそれぞれのレベルにおいて、新しい性質が現れるのだ。だから、新しい振る舞いの理解には、他の場合と同じように、その性質について私が基本的と思う研究を必要とする」

アンダーソンは、科学には階層が存在するという考えをすすんで受け容れた。つまり、諸科学をほぼ直線的に階層として配列できるというわけだ。その着想に従えば、「科学Xの基本的存在は、科学Yの法則に従う」(表1を参照)。しかし、彼は、X欄のどの科学もY欄の相当する科学の応用版として扱えるという考えを排斥した。

表1
XY
固体物理学もしくは多体物理学素粒子物理学
化学多体物理学
分子生物学化学
細胞生物学分子生物学
......
心理学生物学
社会科学心理学

「だが、この階層は、科学Xは『単なる応用Y』を意味するのではない。各段階でまったく新しい法則、考え、一般化を要する。それにはインスピレーションや創造性が、前段階と同じ程度に必要だ。心理学は応用生物学ではなく、生物学は化学の応用ではない」(p. 28)

なお本書の主張は冒頭に示したとおりですし、引用文を読まれてお気づきと思われますが、本書を読むために自腹で購入する必要はないと思います。あくまでも個人的な意見ですが。

2018年9月16日日曜日

2018年バークシャー株主総会(17)若きバークシャー株主諸君に告ぐ

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答からおなじみの話題、「バフェット以後」についてです。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

22. マンガーいわく、「我らが立ち去った後でも、心を移さず、株を売らぬべし」

<ジョナサン・ブラント> いいですか。

<キャロル・ルーミス> わたしの番を飛ばしていますよ。

<ウォーレン・バフェット> ええと、キャロルを飛ばしましたか。

<キャロル> そうです。

<ウォーレン> それはすみません。

<キャロル> いいですよ。

<ウォーレン> はい、それではお願いします。

<キャロル> この質問は軽い話題ではないと思います。モントリオールのギデオン・ポラックさんからの質問です。

彼はこう訊ねています。「1965年にあなたが指揮をとり始めてからバークシャー・ハサウェイの様相が変わったことは、世間が広く認めるところだと思います。当時のバークシャーは北東部で織物を製造する会社でした。それが今では、フォーチュン500のうちの第4位に位置する企業となりました。

「それでは、これからの50年間ではどうなるのでしょうか。2068年までのバークシャーはどのような姿をしているか、ご意見を披露していただけますか」。

<ウォーレン> それはずいぶん先のことだと思います(笑)。

残念ですが、わたしにはわかりません。50年前のときにも、今のようになっているなどわかりませんでした。

つまり、ある種の原則に従っていくとは思います。しかしそのころには、わたしとは違った考えをする人たちを見つけだして、会社を任せていると思います。また世の中も違っていることでしょう。

ただし、「世界中のどの大企業に劣らず、株主のことを考える企業」であってほしいとは強く願っていますし、そうなるに違いないと思います。株主をパートナーとして扱うでしょうし、自分たちを利するものとして会社の資金を使おうと考えるのではなく、自分の資金とまったく同じように使うことを心がけると思います。それ以外のことがどうなるかは、知るすべはないでしょう。

チャーリーはどうですか。

<チャーリー・マンガー> 私からは、若手の株主諸君に申し上げたいですね。我々が消え去った後に、さまざまな友人からの導きにしたがって、みなさんがバークシャー株を売却し、別のものに取り組むのであれば、そのほうが悪い結果につながると思いますよ(笑)。

ですから、「そのまま信頼せよ」と申し上げましょう(拍手)。

まあ、すでにそうしてしまったご家庭も数多くあるでしょうが。

<ウォーレン> みなさんからこれほど称賛されたのですから、次からはわたしも彼と同じように答えることにします(笑)。


22. Munger: Keep the faith and don’t sell your stock when we’re gone

WARREN BUFFETT: Jonathan?

JONATHAN BRANDT: Hello ?

CAROL LOOMIS: You skipped me.

WARREN BUFFETT: Did I skip ? I skipped Carol?

CAROL LOOMIS: Yup.

WARREN BUFFETT: Oh. I’m sorry.

CAROL LOOMIS: OK.

WARREN BUFFETT: OK.

CAROL LOOMIS: This question, and I would concede it is not a small one, comes from Gideon Pollack of Montreal.

He says, “The world knows generally how the looks of Berkshire Hathaway have changed since you began to run the company in 1965. Berkshire was then a tiny northeastern, textile company. And now it is the number-four company on the Fortune 500.

“What about the next 50 years? Could you give us your view of what Berkshire looks like in 2068?”

WARREN BUFFETT: I think it’ll look a long way away. (Laughter)

No, the answer is I don’t know. And I didn’t know, 50 years ago, what it would like now, I mean -

It will be based on certain principles. But where that leads, you know, we will find out and we’ll have people that are thinking about different things than I am. And we’ll have a world that’s different. But -

We will be - I very much hope and believe that we will be - that we’ll be as shareholder-oriented as any large company in the world. We will look at our shareholders as partners and we will be trying to do with their money exactly what we’d do with our own, not seeking to get an edge on them. And who knows what else will be happening then?

Charlie?

CHARLIE MUNGER: Well, I want to talk to the younger shareholders in the group. Those of you who, after we are gone, sell your Berkshire stock and do something else with it, helped by your many friends, I think are going to do worse. (Laughter)

So I would advise you to keep the faith. (Applause)

By the way, some of that has already happened in many families.

WARREN BUFFETT: I’ll give his answer next time now that I see it get all of that applause. (Laughter)

ウォーレン以降のバークシャーがどうなるのか。以下の過去記事ではチャーリーがその予想を披露しています。

2014年度マンガーからの手紙(4)ウォーレン・バフェットが去った後

2018年9月12日水曜日

中国が米国にもたらした、ささやかで劇的な日常(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーのインタビューのつづきです。今回は質問者が投げかけた下世話な問いに対して、チャーリー・マンガーは直接的には答えず、そのかわりにコスモポリタニズム的な話題を展開しています。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

なお文中に登場する著作『プーア・チャーリーの暦(Poor Charlie’s Almanack)』は、チャーリーの主要な講演をまとめた本です(ほかに、チャーリーに関連する文章も掲載されています)。ご存知とは思いますが、本ブログでは同書に含まれる全講演を訳出してあります。それらの記事に関する目次は以下のとおりです。ただし「講演その11: 誤判断の心理学(Talk 11: The Psychology of Human Misjudgment)」は抄訳にとどめていたため、遠からず全訳に取り組むつもりです。

(目次)チャーリー・マンガーの主要記事

<質問者> バークシャーの年次総会に参加するために、今年は1万名を超える中国人がオマハにやってきました。総会では中国に関する話題がよく取り上げられています。マンガーさんのお話しでは、「中国の将来は非常に明るく、中国での潜在的な投資先をこれまでに探してきた」とのことでした。それでは、現在の中国は投資環境の面でどういった時期にあるとお考えですか。現在の中国市場は、ちょうど米国市場の1973年や1974年、あるいは1982年のような段階でしょうか。また中国で物色されているのは、どの領域のものでしょうか。

<チャーリー・マンガー> 実に奇妙な事態だということは承知していますよ。ニューヨーク・タイムズ紙からは、「なぜバークシャー・ハサウェイやチャーリー・マンガーが、かの人々に人気があるのか」という質問を受けました。例の書物『プーア・チャーリーの暦(Poor Charlie’s Almanack)』のせいもあるでしょうが、それではなぜ中国人はあの本を好むのでしょうか。その答えは儒教を感じさせるからだと思いますね。中国には儒教の教えが深く根差しています。裕福だったり権力を有していたとしても、礼節を重んじることが要求されます。絶えず学ぶことを忘れず、品格と分別をもって行動することを良しとします。年を経てさらに充実し、働き続けるわけです。そういった教えはひとつの国に限定されはしませんが、おどろくべきことにウォーレン・バフェットや私が、儒教的な価値観を重要視してきたさまざまな人たちと同じように振舞ってきたのも事実です。

それから、ウォーレンや私が実のところ中国人を好んでいる、という理由もありますよ。もちろん人間とは自分を好む相手のことを好むものです。それでは、なぜオマハの二人組が中国人をひいきにするのだと思いますか。実は、多くの中国人が理解していない点があるのですね。米国人という観点から中国をながめると、こんな感じになるのですよ。中国人がはじめてやってきたころ、ここではシエラネバダ山脈を越える大陸横断鉄道を敷設しようとしていました。冬のさなかにひどい山道を通って険しい山々を越えようとする仕事で、だれにも果たせませんでした。不可能でした。人々が死に至ったのも、ひどく難事業だったからです。そこで、1万5千人ほどの中国人労働者が呼ばれました。当時の彼らは奴隷も同然でした。その労働者を冬季の山へと送り込み、鉄道を敷設するように言い渡しました。すると彼らは成し遂げたのです。アメリカ人だけでは成し得なかったことをです。もちろんそのことが非常に好ましい印象を残しました。そして月日は流れ、現在はアジアからの移民がたくさんやってきています。そういったアジア出身の人たちが米国で何を成し遂げたでしょうか。アジアからやってきた人たちは早々に、医者や法律家、学者、事業家などになりました。目ざましい成功をおさめました。以前の交響楽団をみれば、中国人は含まれていなかったものです。しかし今日では、練習をしている人たちをながめたときに、難易度の高いあらゆる楽器をうかがえば、そこには中国人の顔がみられます。この国で大きな成功を収めつつある人には有名な人たちもおり、当然ながらそのことは大きな問題とはなっていません。ですから、我々が中国人を好むのも当たり前と言えるわけです。

私が思うに、中国本土で暮らす普通の人たちは、米国でうまくいっている中国のイメージがどのようなものかを理解していませんね。これから極端な話をしますが、だれも想像していなかったでしょうし、だれも口にしたことがないことです。それというのも、かつて中国ではひどい貧困が続きましたし、人口が多すぎました。そこで、アメリカ人の夫婦が子宝に恵まれなければ、中国へおもむいて非常に貧しい家庭から中国人の女の子を養女に迎えることができました。ほどなくすると、米国における主要なあらゆる都市の人たちは、遠い中国の農地で産まれた望まれぬ女の子を引き取ってきたことで、「良い赤ちゃんを迎え入れた」と考えるようになりました。そういった赤ん坊は平均してみると、米国人の子供たちよりも健全に成長していきます。だから養子を欲しがる人たちはだれもが、米国の子供を欲しがらないのです。彼らが求めるのは中国人の女の子です。ことごとく立派に育ったからですね。中国本土の人たちは、それがどれだけ極端なことだったのか理解していません。米国におけるあらゆる町で起きてきたことなのですよ。米国のあらゆる私立学校では、中国の田舎から棄てられた女の子たちであふれています。彼女たちが取る成績はオールA、そのうえ表彰も受けています。当然ながら、このことは良い印象をもたらしました。全米でみられる、実に劇的なできごとですよ。

Question: There are more than 10,000 Chinese who came to Omaha to attend this year’s Berkshire’s annual meeting. China is a focus among those topics. Mr. Munger mentioned that the future of China would be very bright and you had already looked for potential targets in China. What kind of investment environment period is China now in? Is China’s market like the U.S. market in 1973, 1974 or even 1982? And what areas have you looked at to find your potential targets in China?

Munger: I know it’s very peculiar, and The New York Times asked me why are these people so interested in Berkshire Hathaway and Charlie Munger. Partly the book ("Poor Charlie’s Almanac"), yes, but why do the Chinese like the book? I think the answer is it sounds Confucian. China has a deep Confucian ethos. They want people to act modestly even though they are rich and powerful. They want people to constantly keep learning and behave with dignity and reason, and improves as they get old and keep working. Those lessons are not confined to one country. But it just happens that Warren Buffett and I act like much of the people who take Confucianism very seriously.

The other reason is that Warren and I really like the Chinese. And of course everybody likes people who like them. Now you say, why have the Chinese got so popular with the couple of Omaha boys? There’s something that a lot of Chinese don’t understand. If you look at China with a viewpoint of a U.S. citizen, here is what you see. The Chinese first came in here, trying to build the Sierra, the trans-continental railroad, in the winter through horrible passes in the steep mountains. Nobody could do it. It was impossible. They were dying and it was just too hard. So they brought in like 15,000 Chinese labors, who in those days were practically slaves, and they took those labors to the mountains in the winter and said you build the railroad. And they did. And the Americans couldn’t do it by themselves. That of course made a very favorable impression. While fade in fade out, now we have Asians immigrants. What have those Asians done in America? Well they come in and rapidly become doctors, lawyers, professors, businessmen and so forth, and succeeded mightily. If we go to a symphony orchestra, which used to have no Chinese. Every instrument that’s hard to play, and pick someone that are doing practice, you look up the instruments, there’s a Chinese face. Of course we find people popular who are succeeding so much in our country and not causing a lot of troubles. So naturally we like the Chinese.

And I don’t think the ordinary person on mainland China understands what an image of success China has in the United States. And the most extreme thing of all, nobody could have anticipated and nobody ever talks about it, it’s because there was so much poverty in China and it was so overpopulated, if an American couple were unable to have children of their own, they can always go to China and adopt a Chinese girl of a very poor family. So in every important city of America, people soon learned they got better babies, taking the unwanted Chinese girls from the remote Chinese farms. Those babies on average work out better than their own children. So everybody if they want to adopt a child they don’t want an American child. They want a Chinese girl. And of course all those girls worked out well. And most people in China don’t realize how extreme that’s been. That’s happened in every American city. Every American private school is full of the discarded Chinese girls from the Chinese countryside. They are getting all As and winning prizes. Of course they made a favorable impression. It’s just dramatic it’s all over America.

2018年9月8日土曜日

2018年バークシャー株主総会(16)お嬢さん、お供の爺やは私です

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答から、中国株式市場の話題です。リー・ルー同席インタビューのシリーズと同じように、チャーリー・マンガーは中国を推していますが、ウォーレン・バフェットが主役のこの場では、簡潔な発言にとどめています。なお、本シリーズ前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

21. 中国株に対してバフェットよりも興味を示すマンガー

<ウォーレン・バフェット> 次は質問所6番の方、お願いします。

<聴衆からの質問者> バフェットさん、マンガーさん、おはようございます。中国株に注力した調査業務を営んでいる上海のホライゾン・インサイト社から参りました、ステフィー・ユーと申します。当社の顧客には、中国における投資信託会社が多数あります。彼らは非常に若く、つまり相対的に若いほうなので、運用している資金は少額です。

そこで質問ですが、もし現時点でポートフォリオの資金が10億ドルだけだとしたら、おふたりは投資先をどこへ変更なさいますか。中国のような新興市場のほうが投資の機会が多いとお考えですか。よろしくお願いします。

<ウォーレン> そうですね、もし資金が10億ドルだとしたら、市場規模が30兆ドルになる米国で機会を探すだろうと思います。概して言えば、他の国よりもよく理解しているからです。何千億ドルの資金を抱えた状態で探すよりも、まあそうですね、成績にある程度差をつけられる投資先を発見できると思います。

ただし、新興国の市場を除外する必要はないと思います。15年ほど前でしたか、いい機会がありました。興味深いものがあったからです。週末に韓国市場の銘柄一覧を読み進めていたところ、昔の経験を思い出したかのように感じました。それで、小型の株をいくつか買いました。そうですね、韓国企業あるいは米国企業の水準からみても小さくはありませんでした。かなり大きな会社でした。

15あるいは20件ほど見つけました。定量的にみて割安だったので、いくつかを自分用に買いました。

資金が少額であれば、現在は不可能なことでも果たせる機会があります。ただしいつであっても、わたしとしてまずはじめに米国内を注視したいと考えています。そして...

他の国々についても調べてみましたが、非常に小さな市場には足を踏み入れないと思います。それというのも、売買実行や課税の面でもむずかしい点が数多くあり得るからです。

米国や中国や英国といった国々で見つからないのであれば、たぶん他の場所でも見つからないでしょう。みつけたと思うかもしれませんが、きっとそれはおなじみのものではなく、別種のゲームかもしれません。わたしたちにとって問題なのは規模であって、地理的なものではありません。

チャーリーはどうですか。

<チャーリー・マンガー> 割合でみれば、私のほうがずっと中国株に投資してきましたね。ですからお嬢さん、共に歩んでいるのは私ですよ(笑)。

<ウォーレン> なるほど。それでは具体的な名前をあげますか。その株式には名前があるのですか。それとも..(笑)

<チャーリー> いや、言いませんね(バフェット笑)。

<ウォーレン> 次はキャロル、お願いします。

<キャロル・ルーミス> 次の質問は...

<ウォーレン> すみませんが、付け加えることがもうひとつありました。中国ではさまざまな機会を見つけることと思います。「米国で同じ程度の資金を有する人よりも、ずっと良い狩場にいるわけだ」とチャーリーは発言していました。そうですよね。

<チャーリー> そう言いましたよ。

<ウォーレン> そうです。まだ若い市場でありながらも十分に巨大な市場ですから、そうなるのも当然かと思います。というのは..

市場とは、年月を経るにつれて効率的になっていくようです。30年前の日本ではワラントの値付けがおかしなことになったりと、諸々が非常に奇妙な状況になりました[バブル期のワラント債など]。しばらくしてそのことに気づく人が出てくると、その状況は消滅しました。市場が進展すると、非常に奇妙なことが起こり得るものです。チャーリーも賛成してくれると思いますが、どうですか。

<チャーリー> そのとおり。

<ウォーレン> なるほど。

21. Munger is more interested than Buffett in Chinese stocks

WARREN BUFFETT: OK. Station 6?

AUDIENCE MEMBER: Hi, good morning, Mr. Buffett and Mr. Munger. My name is Stephie Yu from Horizon Insights, a China-focused research firm based in Shanghai. So I have a lot of mutual fund clients in China, who are very young - relatively younger - and they manage a smaller portion of funds.

So my question is, if you only have $1 billion in your portfolio today, how would you change your investments? Would you consider more investment opportunities in emerging markets such as China? Thank you.

WARREN BUFFETT: Yeah. I would say, if I were working with a billion, I would probably find - within a $30 trillion market in the United States, where I understood things better, generally, than I do around the world - I’d probably find opportunities there that would be better, incidentally, by some margin, than what we can find for hundreds of billions.

But I wouldn’t - there’s no way I’d rule out emerging markets. There was a time, 15 years ago or so, when just because it was kind of interesting and it took me back to my youth, I - on the weekend, I went through a directory of Korean stocks. And I bought - and these were small stocks - well, they weren’t small by standards of either Korean or American business. They were big, big companies.

But I found 15 or 20 in - that were statistically cheap and bought some of each one myself.

And there are opportunities with smaller amounts of money to do things that we just can’t do. And - but I - my first inclination always would be to comb through things in the United States. And -

But I’ve combed through - in other countries. I probably wouldn’t get into very, very small markets because there can be a lot of difficulties even in market execution and taxation, (inaudible).

You can find - if you can’t find it, you know, in America and China and Britain and a few other places - (laughs) - you probably aren’t going to find it someplace else. You may think you’ve found it. But that may be - it may be a different game than you know. Our problem is size, not geography.

Charlie?

CHARLIE MUNGER: Well, I already have more stocks in China than you do, as a percentage, so I’m with the young lady. (Laughter)

WARREN BUFFETT: OK. Well, you can - you want to name names? Do these stocks have names- Or - (Laughs)

CHARLIE MUNGER: No, I don’t. (Buffett laughs)

WARREN BUFFETT: Carol?

CAROL LOOMIS: This question is -

WARREN BUFFETT: I should just add one thing. You will find plenty of opportunities in China. Charlie would say you’ve got a better hunting ground than even a person with similar capital in the United States. Would you agree with --

CHARLIE MUNGER: Yes, I do.

WARREN BUFFETT: Yeah, yeah. So - and in the sense they’re - it’s logical that should be the case because it’s a younger market, but still a large market. So that -

Markets probably work toward efficiency as they age. Japan had this very strange situation with warrants being priced out of line and all of that 30 years ago. And people notice after a while and it disappears. But there can be - some very strange things happen in markets as they develop. I think you’d agree with that, Charlie, wouldn’t you?

CHARLIE MUNGER: Absolutely.

WARREN BUFFETT: Yeah.

2018年9月4日火曜日

投資先は3つ(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーのインタビューのつづきです。ひとつめの話題は彼の投資先についてです。おなじみの話題ながらも、これまた最重要な投資哲学を体現しています。もうひとつの話題は読書についてです。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問者> マンガーさんが生涯を通じてもっとも満足した投資とは何ですか。また、いちばん悔いの残った投資は何ですか。

<チャーリー・マンガー> バークシャー・ハサウェイ株は1株につき16ドルで買いましたが、今では30万ドル近くで取引されていますね。非常に優れた投資先でしたよ。長い期間にわたりましたが、長期的な視点にたった投資でしたからね。投資をともにする仲間は好ましい人たちですし、投資した各社も気に入っています。同社に資金を据えたきりで50年以上になりますが、驚くなかれ、実にうまくいきました。その手の話はほかにもいろいろありますよ。リー・ルーと組んで中国に投資してきましたが、一体何だったか、13年あるいは15年だったか、さまざまな証券を買いましたが、売ったものはほとんどありませんね。失敗した投資はそれほど多くはなかったですよ。少しはありましたが、多くはありませんでした。まずい投資先をあれこれと抱えていたりはしませんね。マンガー家で保有している株式は、基本的には3つです。バークシャー・ハサウェイとコストコ、もうひとつがリー・ルーの運営しているパートナーシップです。齢95になる私の保有しているのが、3種類ですよ。金持ちになるために、あれこれと違ったものを保有する必要はないですね。

Question: Mr. Munger, what is your most satisfactory and what is your most unsatisfactory investment in your life time?

Munger: My Berkshire Hathaway stock cost me $16 a share, and it’s now selling for almost $300,000 a share. That’s been a very good investment. It took a long time, and it was a long-term investment. I like the people I was investing with and I like the companies I was investing in. I just sat there for more than 50 years and low and behold it’s worked out really well. And there are lots of stories like that. Li Lu and I have been investing together in China for what? Thirteen years or 15 years? And we have bought a lot of securities and we sold very few. I’ve not made very many bad investments. There have been small ones but not very many. I don’t have many bad investments. Basically the Mungers have three stocks - Berkshire Hathaway, Costco and Li Lu’s partnership. Well along my 95th years, three things. You don’t need to own different things to get rich.

<質問者> 1年間で何冊の本をお読みになりますか。どんな分野の本を読まれますか。

<チャーリー> 流し読みする本と、きちんと読む本を合わせて、毎週20冊読んでいますね。伝記をたくさん読みますし、歴史も読みます。ほとんどがノンフィクションですよ。

Question: How many books do you read every year and what subjects are they?

Munger: I either skim through or read through 20 books week. I read a lot of biographies, and some history. I read almost no fiction.

2018年8月30日木曜日

(解答)なぜリスは周囲に危険を告げるのか

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前回の投稿で取り上げたリスの問題に対する解答部です。引用元の本は『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』です。

リスの行動は、その声が意味論的情報を伝えないとした場合にのみ意味をなす。リスの「タカ警報」を考えてみよう。まず、それはぴいーっという高い音の声だ--実験が明らかにしたところでは、タカはその位置を特定しにくい。つまりリスは自分の位置についてタカにはほとんど知らせていないのだ。次に、自分だけが遮蔽物に向かって逃げると、かえって目立つ。一群のリスが一斉に逃げ回る中の1匹でいる方がよい。タカに目をつけられる可能性が小さくなるからだ。同様に、高い鳴き声を聞いて遮蔽物を求めて逃げるリスは、その場に立っているリスよりタカに食べられる可能性は低い。つまり淘汰はタカを察知したときに声を上げるリス、また高い声を聞いたときに遮蔽物目指して逃げるリスの方に有利に作用する傾向がある。人類がこの状況を見るとき、われわれはリスが情報を伝えていると解釈する。しかしそうなっているわけではない。この行動は単純に、有効だからということで世代を超えて伝えられる形質にすぎない。この種の行動が進化するには、リスがお互いの行動を知っている必要もない。単語も言語もない。ただ進化の力があるだけだ。(p. 464)

2018年8月28日火曜日

(問題)なぜリスは周囲に危険を告げるのか(『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』)

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少し前の投稿で取りあげた『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』の文章から、もう1点ご紹介します。今回の内容はリスの生態に関するパラドックス的な問題です。この手の問題を解くには該当分野におけるミクロな専門知識が欠かせないと考えがちですが、例によってチャーリー・マンガー的な取り組みをすれば、きれいに答えを出せるかもしれません。次回の投稿で解答部をご紹介しますので、どうぞお考えになってください。

なお私自身の成績ですが、あいにく今回はよく考えずに文章を読み進めてしまったので、0点です。もったいない読書の仕方だと反省しました。

事象についての当初の解釈が間違っているかもしれない例を一つだけ挙げよう。開けた土地に住むジリス(地上生活をするリス)のいくつかの種にとっては、2種類の捕食者がいる。スピードに任せて空中から襲ってくるタカと、地上でこっそりと忍び寄って襲ってくるアナグマだ。リスが捕食者を察知すると、二つの防御方式のいずれかを選ぶ(もう擬人的な言い方をしている)。アナグマを察知すると、巣穴の入り口まで戻って直立姿勢を維持する。アナグマはその姿勢を見て、リスはそのアナグマを察知しているので、襲っても時間とエネルギーの無駄だということを知る。タカを察知したときは、直近の遮蔽物に向かってまっしぐらに走る。リスは2種類の警戒音も出す。アナグマの場合は、粗い、かたかたという音を立て、タカの場合は、高い、ぴーいーという音を出す。近辺の他のリスはこの音を聞いて、アナグマ警報なら巣穴に戻り、タカ警報なら遮蔽物に向かって走る。人はまずあたりまえのように、リスは声をかけ合って、要するに「注意しろ、あたりにアナグマがいるぞ、巣に戻った方がいい」とか「あっ、タカだ、そこから逃げろ」とかのことを言っているのだと思うものだ。しかしそうなのだろうか。

捕食者を察知しての個々のリスの行動が示すように、いずれのリスも、関心は自らの身を守ることにある。実際、進化論はそうならざるをえないことを言う。リスは知り合いの運命を気にしてはいられないだろう。しかしリスの警戒音が意味を持つ情報を伝えるとすれば--リス語で「アナグマだ」とか「タカだ」と声を上げているとすれば--パラドックスにぶつかる。淘汰で有利になるのは、黙ってこそこそと逃げて、他のお人好しが食べられるようにするリスの方だろう。声を上げる集団の中の声を上げない個体が淘汰では有利で、そういうリスが自分の遺伝子を伝える。しかしそれではすぐに、声を上げないリスばかりの集団になるはずだ。声を上げる本能はどこから生じるのか。(p. 463)

2018年8月24日金曜日

2018年バークシャー株主総会(15)配当は要らんから全部再投資してくれ

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答から、特別配当そしておなじみの話題である自社株買いについてです。本シリーズ前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

20. バークシャーが特別配当を出す可能性は「非常に低い」

<ウォーレン・バフェット> グレッグさん、次をお願いします。

<グレッグ・ウォーレン> この質問も、ウォーレンがもっと最近発言された内容に対してです。そのため、「こちらの質問のほうが、くみしやすい」とは言いかねます(バフェットが軽く笑う)。

あなたが最近おはなしされたなかで、「株主へ資本を返還する方法として、配当金よりも自社株買いのほうを好む」とありました。昨年の年次総会で触れたときには、バークシャーの現金残高は増えつづけ、1,500億ドルの限界に達すると、株主へ弁明しがたくなるとのことでした。

普通配当を設定しないことの論理は理解できます。しかし一度かぎりの特別配当であれば、バークシャーの有する超過資本の大きな部分を、株主へ返還するのに効果的な選択肢になり得ると思います。その場合、「普通配当金を恒久的に支払う」とほのめかす必要がありません。

ただし特別配当には、簿価及びBPSがただちに減少する欠点があります。それとは対照的に、自社株買いを大規模に行えば、簿価は減少するもののバークシャーの株式数は減少し、BPSへの影響を抑えることになります。

もし数年たってバークシャーが1,500億ドルの上限に達した時点で、企業買収や自社株買いの面で市場の評価がひきつづき高いままだとすれば、そのときには株主へ資本を返還する方法として、特別配当を一度実施することを検討されますか。

<ウォーレン> そうですね、もし資本を効率的に使えないと考えるようになれば、株主に資本を返す最良の方法をさがすように努めると思います。そしておそらくは、そうするために特別配当を使う可能性は低いと思います。

そうではなく、もし自社株買いで支払う金額が1株当たりの本源的価値以上にならなければ、自社株買いをする可能性のほうが高いと思います。継続株主のみなさんにとって害になると思えることは、決してなにひとつ実行しません。

ですから、もし株の本源的価値がXだと考えたときに、買い戻す株の対価としてそれほどでもない倍率ながらもXを越える金額を支払わねばならないとしたら、自社株買いは行いません。株主の座から離れる者を厚遇する一方で、継続株主の利益を損なうからです。

しかし、もっとも妥当なことであれば、何であろうとそれを実行するつもりです。ただしその案とは、毎日しなければいけないことではありません。そうそう毎日はみつからないからです。

たしか数年前だったと思いますが、みなさんもご存知のように、当社における配当金支払いの是非が決議にかけられたことがありました。そのときB株を保有する方々は47対1で反対票を投じました。なお、チャーリーやわたしなどの株の分は含まれていません。[過去記事]

ですから、「当社の株主になろうとする時点で、そもそもその人は選択しているのだ」と思います。株主という世界あるいは国中をみても、47対1の投票結果がでることはまったくないと思います。

しかし、当社では株主の一員に加わるという時点で自己選択がなされています。「すべての株主にとって利益になることであれば、なんでもしてほしい」と、株主のみなさんはわたしたちに対して期待を寄せています。当然ながら、「事業を通じて資本を効果的に運用するなど、到底無理だ」とわたしたちが心底考えるようであれば、なんとかして資本を会社から取り出さねばなりません。

取締役の面々をみると、当社の株式を大量に保有しています。ですから、「当社のオーナーであるかのように、彼らは物事を考えるだろう」と期待してよいと思います。だからこそ彼らは取締役会の一員であるわけです。

また「当社の経営陣も、当社のオーナーであるかのように物事を考える」と受けとめてよいと思います。やるべきことを探し続けるよりも妥当だと思えば、当社の全オーナーに対して資金を返還することでしょう。

ただし、この第一四半期ではたしか4月だったと思いますが、正味にして150億ドルに近い金額を投資しました。

その上、世界がいつまでも超低金利であるわけではないですし、相対取引の価格水準が高いままでもないと思います。

ですからわたしたちは、もっとも理にかなったことを実行していきます。しかし、多額の特別配当を一度実施するという状況は、わたしとしては想像しがたいことです。もし株主のみなさんに議案を出せば、チャーリーもわたしも以前の議決には参加しませんでしたが、おそらく大差をつけて否決されると思います。わたしとしてはそうなるほうに喜んで賭けます。

チャーリーはどうですか。

<チャーリー・マンガー> 既存のシステムがうまく機能し続けているときに、それを変えねばいけないのは何故ですかね。それこそ大多数の株主が、そのやりかたに慣れ親しんでおり、そのやりかたでうまくいっているわけですから。ただし状況が変われば、心を変える準備はできていますよ。事実が変化すればのことですが。

<ウォーレン> そうです。過去にも何度かそうしてきました。

<チャーリー> そのとおり。

<ウォーレン> そうですよ。

<チャーリー> ただし、「少しばかり難儀だった」とは言い添えておきますよ(笑)。

<ウォーレン> いつも彼はそうやって、わたしを引きおろすわけです。

20. “Very unlikely” Berkshire would pay a special dividend

WARREN BUFFETT: OK, Gregg. (Laughter)

GREGG WARREN: Warren, this question’s also based on something you said more recently, so I can’t guarantee it’s going to be any easier. (Buffett laughs)

You recently noted that you prefer share repurchases over dividends as a means for returning capital to shareholders should Berkshire’s cash balances continue to rise and hit the $150 billion threshold you noted as being difficult to defend to shareholders at last year’s annual meeting.

While I understand the rationale for not establishing a regular dividend, a one-time special dividend could be a useful option for returning a larger chunk of Berkshire’s excess capital to shareholders without the implied promise to keep paying a regular dividend forever.

The drawback with the special dividend, though, is that it would lead to an immediate decline in book value and book value per share. Whereas a larger share repurchase effort, while depressing book value, would reduce Berkshire’s share count, limiting the impact on book value per share.

If we do happen to get a few years out and Berkshire does hit that $150 billion threshold, because valuations continue to be too high, both for acquisitions and for the repurchase of company stock, would you consider a one-time special dividend as a means for returning capital to shareholders?

WARREN BUFFETT: Well, if we thought we couldn’t use capital effectively, we would figure - we would try to figure out the most effective way of returning capital to shareholders. And - you could - I would have probably - I think it’d be unlikely we’d do it by a special dividend.

I think it’d be more likely we’d do it by a repurchase, if the repurchase didn’t result in us paying a price above intrinsic value per share. We’re never going to do anything that we think is harmful to continuing shareholders.

So if we think the stock is intrinsically worth X, and we would have to pay some modest multiple even above that to repurchase shares, we wouldn’t do it because we would be hurting continuing shareholders to the benefit of the people who are getting out.

But we will try and do whatever makes the most sense, but not with the idea that we have to do something every day because we simply can’t find something that day.

We had a vote as you know - I don’t know, a few years back - on whether people wanted a dividend. And - the B shares - so I’m not talking my shares or Charlie’s or anything - but the B shares voted 47 to one against it.

So I think through self-selection of who become shareholders - I don’t think shareholders world - or countrywide - on all stocks would vote 47 to one at all.

But we get self-selection in terms of who joins us. And I think they expect us to do whatever we think makes sense for all shareholders. And obviously, if we really thought we never could use the money effectively in the business, we should get it out, one way or another. And -

You’ve got a bunch of directors who own significant - very significant - amounts of stock themselves. And you can expect them to think like owners. It’s the reason they’re on the board.

And you can expect the management to think like owners and - owners will return money to all of the owners if they think it makes more sense than continuing to look for things to do.

But we invested in the first quarter, maybe - have to look it up on the - well, certainly through April - probably close to 15 billion or something like that, net, so -

And we won’t always be in a world of very low interest rates - or high private market prices.

So we will do what makes the most sense. But I can’t see us ever making a special - almost - it’s very unlikely we would just pay out a big, special dividend. I think that if we put that to the vote of the shareholders, and Charlie and I did not vote, I think we would get a big negative vote. And I’d be willing to - be willing to make a bet on that one.

Charlie?

CHARLIE MUNGER: Well, as long as the existing system continues to work as well as it has, why would we change it? We’ve got a whole lot of people that are accustomed to it, have done well under it. And if conditions change, why, we’re capable of changing our minds, if the facts change.

WARREN BUFFETT: Yeah, and we’ve done that several times.

CHARLIE MUNGER: Yes.

WARREN BUFFETT: Yeah.

CHARLIE MUNGER: Although, I must say, it’s a little hard. (Laughter)

WARREN BUFFETT: He always brings me back to earth.

2018年8月20日月曜日

中国市場の未来は明るい(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーのインタビュー、前回分の投稿のつづきで、長期投資の話題です。赤字で強調した部分では、最重要な哲学にさりげなく触れています。(日本語は拙訳)

<質問者> かつてあなたは「誤った現象ばかりに投資家は目を向けている」とおっしゃいました。そのことについて、どう考えるべきなのでしょうか。真実とはどこにあるのでしょうか。真実にたどりつくにはどうすればいいのでしょうか。

<チャーリー・マンガー> 「市場には真実がある」と考える人が数多くいますね。「値段が動くことで、まさしく市場はなにかを訴えたがっている」と。しかし、バークシャー・ハサウェイやチャーリー・マンガーという人間は、資金を投じる際にそんな風には考えませんよ。我々が思い描くのは、その本源的価値がどれぐらいかであり、なにが取引にあがっているかです。そして「支払う金額以上に価値がある」と思えるときだけ買います。ですから我々は、割安になるのを待ちつづけ、そうなったときに買うことで、長期的な投資ができるように心がけているわけです。市場にいるあらゆるギャンブラー諸氏の様子に、目をやることもありません。私からすれば、彼らは泡沫にまみれていますね。そんな風にして金持ちになろうとするのは、愚かな時間の使いかたですよ。

<リー・ルー> 「真実とは、企業自体が持つ本来の価値である」と彼は答えました。これを理解することによってのみ、本当の儲けをあげることができます。価格の上下動だけを気にかけ、それらの変動に基づいて関連の投資をして儲けをあげるのは、非常に愚かな行動だというわけです。

<質問者> 中国では多くの投資家が、あなたやバフェットさんやリー・ルーさんを崇拝しています。それでは、まだ30年間の歴史しかない中国の資本市場が、御三方のような投資の達人を「生みだす」までに、どれほど時間がかかり、どのような条件が必要とされるでしょうか。

<チャーリー> 中国の市場は、投資で成功する者を数多く生みだしていくと思いますよ。中国人に満ちた香港は、投資家秩序に基づいた優れた証券市場と調和してきました。そのありようは今後何十年にもわたって中国本土全体にも広がり、信認の度合いを深め、規模を増大させていくでしょう。中国の証券市場や投資の取り組みは、長期間にわたって改善されていくと思いますね。当然ながら変動はあるでしょうが、しかし長期的な趨勢としては、ますます発展し、信頼を集め、価格も上昇していくことでしょう。

<リー・ルー> そちらの質問そのものに対する答えではないですが、「投資の達人は必ずや現れる」と彼はおっしゃっています。中国市場が、少しずつ良くなっていくだろうとも。

<チャーリー> 香港の中国人はこの50年間で金持ちになりましたね。彼らは短期志向の投機家やギャンブラーではなく、長期のうまい投資先をさがし求めた長期志向の投資家でした。投資先を手放さずに長期にわたって頑として保有しつづけました。香港在住の中国人を評したように、中国本土に対しても一言申し上げたいですね。成功するのは短期志向のギャンブラーではないと。長期で投資できるうまい対象を見出し、堅持しつづけることです。長期間にわたって、ですよ。

<リー・ルー> 香港における例は、中国の未来もうまく描いているかもしれません。大儲けできる人とは、当然ながら長期志向の投資家であり、短期志向のトレーダーではないでしょう。

(つづく)

Question: You said before most of what investors see are false phenomena. How should we think about that? Where is the truth then? How can we get to the truth?

Munger: A lot of people think there is such a thing it’s the truth in the market. And market tells you something just by bouncing around. That is not the way Berkshire Hathaway or Charlie Munger invests money. We have a view as to what the intrinsic value is and what is being traded. And we only buy it when we think it’s worth more than we are paying. So we are trying to make a long-term investment by waiting for something to be underpriced and then buying it. And we don’t give a damn about all those gamblers in the market. To me they are so much froth. It’s a foolish way to spend your time if you want to get rich that way.

Li Lu: He answered what the truth is - it’s the real value of the company itself. Only by understanding this can we really make money. For those who only care about price fluctuations and make relevant investments based on such fluctuations, making money this way is a very stupid action.

Question: In China, many investors regard you, Mr. Buffett and Mr. Li Lu, as their idols. Could you talk about how much time it would take the Chinese capital market, which only has 30 years of history, and under what conditions would the Chinese capital market “produce” investment masters like you three.

Munger: Well the Chinese market is going to create a lot of successful investors. If you look at Hong Kong, which has been full of Chinese people, meshed in a capitalist order with good securities market. That is going to spread all over China and increase in respectability and size for decades ahead. I anticipate the Chinese securities market and investing practices will get better and better for a long, long time. There will be fluctuations to be sure, but the long-term trend will be toward more achievement and more respectability and higher prices.

Li Lu: He didn’t answer your question directly, but he’s saying some investment masters will definitely appear. The Chinese market will get better step by step.

Munger: The Chinese, who’ve got rich in Hong Kong over the last 50 years, are not the short-term traders and gamblers. These have been the long-term investors who’ve sought out good long-term investment and stubbornly held them for a long period of time. And just as I said words for the Chinese in Hong Kong, a little words for the Chinese on the mainland. It’s not the short-term gambler that’s good. It’s identifying the good long-term investment and sticking with it. For a long term.

Li Lu: The example of Hong Kong can also reflect well the future of China. Those who will make big money undoubtedly will be the long-term investors, rather than short-term traders.

2018年8月16日木曜日

人類の余命(『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』)

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最近読み終えた本『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』は、個人的には引きこまれてしまう類の本で、全編をとおして楽しんで読めました。本書では、異星人(本書では地球外文明、ETCと記す)の存在を裏付ける現実的証拠がまだみつからない理由について、さまざまな分野からあげられた説明を科学的かつわかりやすく再構成しています。また14年前に刊行された邦訳の増補改訂版ということで、新しい科学的発見や知見が盛り込まれています。さらには、それぞれの理由に対して著者自身の見解が付け加えられています。話題は物理学にとどまらず、ハードサイエンスの各部門(地球科学、生物学、化学)や数学そしてSF小説に及んでおり、そういった専門用語の訳文の正確さも十分だと感じました(単純な校正モレは散見されます)。ただし「人類や地球生物の未来は、多難で暗いものである」と繰り返し説明されるので、心配が募りやすい方にはお勧めできません。

今回ご紹介するのは、本書で取り上げられていた思考法についてです。この「デルタt論法」と呼ばれる思考法は単純ながらも強力で、読んでいて感心の一言でした。ただし個人的に感銘を受けた点は、この論法自体や具体的な効力ではなく、ものごとを形而上的にとらえてモデリングする能力のほうです。

1969年、学生時代のリチャード・ゴットはベルリンの壁を訪れた。休暇でヨーロッパ旅行をしている途中で、ベルリンの壁を見に行くのも予定の一つだった。その前にはたとえば4000年前にできたストーン・ヘンジを見て、それにふさわしい感動を得た。ベルリンの壁を見たとき、この冷戦の産物はストーンヘンジほど長い間立っているのだろうとかと思った。冷戦時代の外交戦略の詳細に通じ、両陣営の相対的な経済力・軍事力を知る立場にあった政治家なら、根拠のある推定をしたかもしれない(政治家の実績から判断すれば、それは間違っていただろうが)。ゴットにはそんな専門知識はなかったが、次のような推論をした。

まず、自分がいるのは、壁が存続している間のランダムな時点だ。壁が築かれる(1961年)のを見ているのではなく、壁が壊されるのを見ているのでもない(今は1989年にそうなったことはわかっているが)。ただ休暇でそこにいただけだ。したがって、壁が立っている期間を4つに分けたまん中の2つ分の間に壁を見ている可能性が50パーセントだと推論を進めた。自分がその期間の最初にいるなら、壁は寿命の4分の1の間存在しており、まだ4分の3の寿命が残っていることになる。言い換えると、壁はこれから、すでに存在している期間の3倍の期間続くことになる。自分がそこにいるのが同じ期間の最後だとしたら、すでに寿命の4分の3が経過しており、残りは4分の1だけとなる。言い換えると、壁がこれから存在しつづけるのは、これまで存在してきた期間の3分の1だけだということだ。ゴットが見たときの壁は、できて8年だった。そこで1969年夏のゴットは、壁はあと2年と3分の2(8*1/3)から24年(8*3)立っている可能性が50パーセントあると予想した。あのテレビの劇的な映像を見た人なら思い出すように、壁が壊されたのは、ゴットが訪れてから20年後のことだった--予測の範囲内に収まる。(中略)


物理学で予測をするときは、50パーセントの可能性ではなく、95パーセントの可能性で考えるのが標準となる。ゴットの論法はそのまま使えるが、数字が少し変わる。自分が何かの事物を見ていることに特別のことがない場合、その事物はその時点での年齢の39分の1から39倍の間続く可能性が95パーセントある。(p. 276)

デルタt論法を使ってコンクリートの壁や人間関係の寿命を推定するのは楽しいが、それはもっとゆゆきしきことの推定にも使える。ホモ・サピエンスの余命だ。人類は誕生して17万5000年ほど。ゴットの規則を適用すると、人類の残りの寿命はおよそ4500年から680万年である可能性が95パーセント。それからすると、人類の寿命は18万年ないし700万年程度ということになる(哺乳類に属する種の平均寿命は200万年ほどと言われる。いちばん近い近縁種のネアンデルタール人は20万年だったらしい。やはりヒト科に属し、人類の直接の祖先かもしれないホモ・エレクトゥスは、140万年続いたかもしれない。するとゴットの推定は、種の寿命についても、確かにおおよそは正しいと言える)。(p. 278)

蛇足ですが、この手の話題を進めると「地球外への移住」にも行きつきますが、そこで思い当たるのはやはりイーロン・マスクです(過去記事)。最近は欠点が目立つようになってきましたが、新たな世界を切り開けるのは彼のような変人だろう、と個人的には考えています。「世界を動かすのは凡人であり、世界を変えるのは変人である」というのが私の持論です。なお「変人」という言葉に語弊を感じられる方は、「神経発達症を強く有している者」と読みかえてください。

2018年8月12日日曜日

中国人と長期投資について(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーが中国系メディアによるインタビューに応じた記事がありましたので、ご紹介します。今回取り上げる話題は最重要な教えのひとつ、長期投資についてです。引用元は何度かご紹介しているGuruFocusです。なおインタビューの同席者として、チャーリーが個人的な資産の一部を運用委託しているマネージャー、リー・ルー氏も登場してきます。(日本語は拙訳)

Rare Charlie Munger and Li Lu Interview - Part I (GuruFocus, Grahamites氏の記事)

<質問者> 最初の話題として、プロの投資家はどのようにすれば適切な投資哲学を持てるかについてお聞きしたいと思います。「投資とは良き機会を見つけることにあり、その上で我慢強く長期間保有すべし」とはあなたが主張なさっている言葉ですが、中国にも「十年一剣を磨く」[唐代の詩人、賈島]という言葉があります。その原則を承知しているプロの投資家は大勢いるものの、辛抱が長い期間にわたって続くことはなく、ひいては実入りの少ない投資へと陥っています。そこでお聞きしたいのは、ご自身の見解に従って、どのようにみずからを処しておられるのでしょうか。

<チャーリー・マンガー> それは、もしカジノでギャンブルに興じるかのように投資をするのだとしたら、良い結果はまるで残せないでしょうね。いちばん成功できるのは長期投資ですよ。しかし投資という活動を好きこのむのであれば、つまりカジノでギャンブルをするかのように、ときには儲けてときには損をするといったやりかたをするような人たちは、我が慈しむ人ではないですね。私の好みは長期投資家ですよ。長い期間をかけて物事が成しとげられていくことを理解している人たちです。中国人は賭けごとを減らしてもっと長期にわたって辛抱強く投資すれば、優れた成果を早々にあげられるようになりますよ。

<質問者> あなたは、「辛抱とは投資に不可欠なものであり、持って生まれた性質である」とも発言されています。それはつまり、辛抱強く生まれなかった人は投資をすべきではないということでしょうか。

<チャーリー> この世には愚かしいギャンブラーばかりいますが、彼らが辛抱強い投資家のような結果をあげることはないでしょうね。「辛抱」とは学んで身につく部分もあれば、生まれつきの部分もあります。米国には「集中力持続」という言葉があります。その力を持つ者は、答えを出すまでに長期間かかるゲームや行動において、精神を集中させることができます。中国人も集中力を保ってものごとを進めていますね。それは並はずれて好ましい性質ですよ。というのは、長い時間をかけて物事を深くかつ厳しく考えるほどに、正しい答えへ到達できるからです。そのように集中力をうまく持続させられる人たちが、賭け事にのめりこむのは奇妙なことですね。実に非生産的ですよ。

(つづく)

Question: Let’s start with how professional investors set up the right investment philosophy. You have emphasized that investment depends on finding good opportunities and holding for the long term with patience. In a Chinese saying: It takes 10 years’ time to sharpen one's sword. Although many professional investors know this principle, they fail in being patient in spending long time. This leads to fruitless investment. So how do you make your actions be in accordance with your notions?

Munger: Yes, well if you invests the way people gamble in casinos, you are not gonna do very well. So it’s the long-term investment that works the best. But if you like the action of investing, sometimes winning some losing, just like the action when they gamble in the casino. Those people are not my people. I like the long-term investors who figure out something is going to work over the long term. The sooner the Chinese people gamble less and invest patiently for the long term more, the sooner they will do better.

Question: You also mentioned that patience is necessary for investment and patience is a born characteristic. Does that mean if a person is not born with patience, he or she shouldn’t be investing?

Munger: The world is full of foolish gamblers. They will not do as well as the patient investors. I think patience can be learned to some extent and to some extent you are born with it. There’s a saying in American they call a long attention span. They can keep their mind on a game or an activity for a long time until they’ve solved it. And the Chinese do have a long attention span, and that is hugely desirable quality because you are more likely to get the right answer if you think deeply and hard about the subject for a long time. And it’s odd that people who are so good at having a long attention span like to gamble so much, which is quite counterproductive.

2018年8月8日水曜日

2018年バークシャー株主総会(14)貿易戦争と国家運営(後)

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答から、前回につづいて貿易戦争の話題です。(日本語は拙訳)

もしそのような状況にあるとしたら、そういった環境のもとで次の2つを実行する必要があります。この国にとって何が有益なのかはわかっているわけですから、それが現実的にどのような形でだれを損ねるのか、非常にうまく説明しなければなりません、たとえば、ニュー・ベッドフォードで当社が操業していた紡織工場で働いていた人が挙げられます。工員の半分はポルトガル語しか話せなかったので、ポルトガル語で説明する必要がありました。そして、彼らは唐突に仕事を失うことになるわけです。何年にもわたっていい仕事をしてきた人たちがです。

やるべきことは2つです。まずは、「全体としてみたときに有益となることに対して、個人が代償を支払っている」ことを理解しなければなりません。

次に、年齢などの理由から再訓練などとんでもないと考えられているところでは、その人たちを援助しなければなりません。同様に、この国全体としてみたときに利益となる物事によって犠牲になる人たちに対してもです。

そのためには社会全体が議員に働きかけて、全体としてみたときに利益が得られるような政策を発展させるように、うながす必要があります。それと同時に、そのプロセスにおいて経済的に押しつぶされる人が多くならないようにすることも必要です。この国では何年にもわたって、さまざまな領域でそうしてきました。

生産年齢にあって就業している人たちは、年寄りや子供の生活を支えています。たとえば、米国で赤ちゃんが生まれるということは、12年間の教育を受けさせる義務が生じます。それにかかる費用が、現在では15万ドルになることをご存知でしょうか。

この社会では、生産年齢人口に含まれる人たちと、老人や子供世代を結びつける仕組みがあります。そしてその仕組みは、時とともに改善されています。現状は「完璧」からほど遠いものですが、ここまで来る間にも改善されてきました。

適切な説明がなされた上で、犠牲になった人たちを政策面から援助する体制があれば、貿易はこの国にとって有益なものですし、またそのように説明できるものだと信じています。

そうは言いましたが、メイン州のデクスターで靴の生産に携わっていた人や、マサチューセッツ州のニュー・ベッドフォードで織機の仕事をしていた人、はたまたオハイオ州のヤングスタウンにある製鉄所で働いていた人たちを説得するのは、むずかしいことでした(拍手)。[過去記事]

And you need to do two things under those circumstances, if you have that situation. You know what’s good for the country. So, you have to be very good at explaining how it does really hurt, in a real way, somebody that works in a textile mill, like we had in New Bedford, where you only spoke Portuguese - half our workers only spoke Portuguese. And suddenly, they have no job. And they’ve been doing their job well for years.

You’ve got to do two things. You can - you’ll have to - you have to understand that that’s the price individuals pay for what’s good for the collective good.

And secondly, you’ve got to take care of the people that are - that - where retraining is a joke because of their age, or whatever it may be. And you’ve got to take care of the people that become the roadkill in something that is collectively good for us as a country. And -

That takes society acting through its representatives to develop the policies that will get us the right collective result, and not kill too many people economically in the process. And you know, we’ve done that in various arenas over the years.

The people in their productive years do help take care of the people that are too old, and too young. I mean, every time a baby is born in the United States, you know, we take on an obligation of educating them for 12 years. It’ll cost $150,000 now, you know? It -

We have a system that has a bond between the people in their productive years and the ones in the young and old. And it gets better over time. It’s far from perfect now. But it has gotten better over time.

And I believe that trade, properly explained, and with policies that take care of the people that are roadkill, is good for our country and can be explained.

But I think it’s a tough - it’s been a tough, tough sell to a guy that made shoes in Dexter, Maine or worked on a loom in New Bedford, Mass, or works in the steel mill in Youngstown, Ohio. (Applause)

2018年8月4日土曜日

2018年バークシャー株主総会(13)貿易戦争と国家運営(前)

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答から、現在の大きな問題である貿易戦争の話題です。その4字熟語が示すとおり、経済と政治の領域をまたいだ見解が述べられています。本シリーズ前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

18. 鉄鋼関税についてマンガー曰く、「あのドナルド・トランプでさえ、正しいときもある」

<ウォーレン・バフェット>  質問所5番のかた、どうぞ。

<聴衆からの質問者; おそらく小学生> ウォーレン・バフェットさん、チャーリー・マンガーさん、おはようございます。ぼくの名前はイーサン・ムポーザです。ネブラスカ州のオマハに住んでいます。

ドナルド・トランプの関税政策は、バークシャー・ハサウェイの製造関連事業に影響するでしょうか。(拍手)

<ウォーレン> そうですね、今のところは鋼材費用がいくぶん増加しています。しかし以前にもお話ししたように、米国と中国の双方が、自らを転落させるようなことはしないと思います。入れ替わりは幾分あるでしょうし、人によってはありがたくない事態になるかもしれませんが、いかなる種類であろうと本物の貿易戦争がこの国で続くことはないと思います。

この手のことを過去に何度か経験してきたわけですから、そこから教訓を得てきたと思います。

ただし、米国が掲げる貿易方針の一部に不満を抱く人たちが出てくるとは思います。同様に、他所が実行することに対してわたしたちが不満に感じることもあるでしょう。しかし結局のところは、ひどい答えに達することはないだろうと思います。

チャーリーはどうですかね..

<チャーリー・マンガー> そうですよ。製鉄業界の状況は、米国製鉄業界にとって信じられないほどの逆風でしたよ。

たとえドナルド・トランプであっても、今回の件では正しい判断も下していますね。(笑いと拍手)

<ウォーレン> 常々言っていることですが、どんな大統領であろうとも、その人物は最高教育責任者であるべきです。フランクリン・ルーズベルトが大恐慌の時期に、語らいの場として炉辺談話[=ラジオ放送]を始めたのはそのためです。何をしなければならないのか、また何が起こっているのかを大衆へと伝達する上で、とても重要なことでした。

貿易とはことさら難しい問題です。これは、貿易による便益が基本的に目に見えないからです。もし米国内での生産を強制する規則が定められていたら、今日身に着けている衣服を買うのにどれほど支払うことになっていたでしょうか。あるいは、テレビ受像機などの値段はどうなったでしょうか。

いろいろと買い求めていたり、自分のビジネスを継続しているときに、どんな便益を享受しているのか、日常において気にかける人はいないはずです。

一方、[貿易政策によって被る]欠点については、とても明白で、ひどく痛みを伴うものがあります。当社がメーン州で営んでいた製靴会社(デクスター・シューズ社)で起きたように、もしみなさんが解雇されたとしたら、どんな気持ちになるでしょうか。非常に優秀な現場作業員で、自分の仕事に誇りを持ち、おそらくは両親もかつては同じように働いていたものの、米国製の靴は外国製の靴とくらべて競争力がないことを、唐突に見せつけられるわけです。

アダム・スミスやデヴィッド・リカードなどについて話せばよいとか、自由貿易や比較優位やその手のあらゆることの利点を説明すれば、と思うかもしれません。しかしそれでは何も変わりません。[参考記事]

55や60歳の人にとって再訓練などの話になったとしても、「だからどうした」と思うことでしょう。

ですから、「便益面はおもてに現れないものの、費用面は非常にわかりやすい」といった影響を、ある程度の割合の支持者が被る場合、そのような状況で行う政治は厄介なものになるわけです。

(つづく)

18. Munger on steel tariffs: “Even Donald Trump can be right”

WARREN BUFFETT: OK. Station five.

AUDIENCE MEMBER: Good morning, Warren Buffett and Charlie Munger. My name is Ethan Mupposa (PH), and I am from Omaha, Nebraska.

My question is, how will Donald Trump’s tariffs affect the manufacturing business of Berkshire Hathaway?

WARREN BUFFETT: Well, to date - (applause) - steel costs - we’ve seen steel costs increase somewhat. But as I said earlier, I don’t think the United States or China - there’ll be some jockeying back and forth, and there will be something that leaves some people unhappy and - but I don’t think - I don’t think either country will dig themselves into something that precipitates and continues any kind of real trade war in this country.

We - we’ve had that in the past a few times. And I think we’ve learned a general lesson on it.

But there will - there will be some things about our trade policies that irritate others. And there will be some from others that irritate us. And there will be some back and forth. But in the end, I don’t think we’ll come out with a terrible answer on it.

Charlie, I’ll let you -

CHARLIE MUNGER: Well, steel has - it reached - the conditions in steel were almost unbelievably adverse to the American steel industry.

You know, even Donald Trump can be right on some of this stuff. (Laughter and applause)

WARREN BUFFETT: The - the thing about trade - you know, I’ve always said that the president, whether it’s president - any president - needs to be an educator-in-chief, which [Franklin] Roosevelt was in the Depression. That’s why he had those Fireside Chats, and it was very important that he communicated to the people what needed to be done and what was happening around them, and -

Trade is particularly difficult, because the benefits of trade are basically not visible, you know. You don’t know what you would be paying for the clothes you’re wearing today if we’d had a rule they all had to be manufactured in the United States, or what you’d be paying for your television set, or whatever it may be.

No one thinks about the benefits day-by-day as they walk around buying things and carrying on their own business.

The negatives, and there are negatives, are very apparent and very painful. And if you’re laid off - like happened in our shoe business [Dexter Shoes] in Maine - and you know you are - been a very, very, very good worker, and you were proud of what you did, and maybe your parents did it before you, and all of a sudden you find out that American shoes - shoes manufactured in America - are not competitive with shoes made outside the United States.

You know, you can talk all you want about Adam Smith or David Ricardo or something and explain the benefits of free trade and comparative advantage and all that sort of thing, and that doesn’t make any difference.

And if you’re 55 or 60 years old, to talk about retraining or something like that, you know, so what?

So, I - it is tough in politics where you have a hidden benefit and a very visible cost to a certain percentage of a - of your constituency.

2018年7月28日土曜日

(解答)プロの投資家たちが選ぶ数を当てよ(おまけ、バブル3景)

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まずは、前回の投稿でとりあげた問題に対する解答です。(日本語は拙訳)

66を越える答えがいくつもあったことには、少しばかり首をひねりましたね。そもそも取り得る数の最大値は66です。だれもが100を選んだ時にちょうどそうなる数字です。図表7をみると度数の上昇が認められることから、さまざまな水準で帰納的推論がなされたことがわかります。各参加者が選んだ数字の平均は26でした(この手のゲームではよくある値です)。それゆえ、平均値の2/3は17.4となります。このゲームにおいて他の人たちから一歩先んじることが、実に難しいことがわかる数字です。(p. 6)

(出典: 後述)

The fact I got a number of answers above 66 is a little disturbing! The highest possible answer is 66, because to pick this one must believe that everyone else has just picked 100. In Exhibit 7, you can see spikes at various levels of induction. The average number picked turned out to be 26 (which is fairly typical of such games), and thus the two-thirds average was 17.4. It proved incredibly hard to be one step ahead of everyone else in this game.

もうひとつご紹介する内容は、バブルについてです。今回引用した文書の著者ジェームズ・モンティエ氏は、現在の(主に米国)株式市場は一種のバブル状態にあると評価しています。ただしバブルには次に示すような種類があり、現在のバブルは上述したような「美人コンテスト的バブル」だと述べています。なお、引用元の文献は以下のとおりです(少し前に発表された文書のため、すみませんがURLが見つかりませんでした)。

The Advent of a Cynical Bubble (James Montier, GMO Asset Allocation Insights, Feb 2018)

1つ目の種類のバブルは典型的なもので、「XX現象」や「XX狂」と呼ばれることもあります。まさしくこれは「信念」がバブル状態にあるものです。この種のバブルでは、「今回ばかりは違う」「新たな時代が始まったのだ」と信じ込むようになります。巨大バブルの歴史を飾ってきた実例を挙げてみると、ドットコム・バブル[ハイテク、メディア、通信関連業界]、日本でのバブル、米国住宅バブル、行け行けの1920年代、があります。それらはいずれも、「妄想的な新時代思考」を示した輝かしい事例として際立っています。

2つ目の種類のバブルは「本源的バブル」と描写されるものです。このバブルでは、バブルの源にファンダメンタルズが存在します。さらに言えば、利益の上昇率が継続不能な水準まで増加することで、投資家が[将来の見通しをそのまま]外挿したり、過剰資本を起こしがちになります。米国住宅バブル期の金融企業は、この種のバブル状態にあった好例でした。住宅市場で沸いたバブルのおかげで彼らの利益は増大しましたが、多くの投資家はその事実を認識していませんでした。

3つ目の種類のバブルは、アカデミックな文献において「近合理的バブル」として知られています。個人的には、この命名にまるで賛成できません。その言葉は「見せかけの敬意」を匂わせていますが、私としては価値が認められないからです。私からすれば、このバブルは「さらなる愚者を待つ市場」をうまく描写したものだと考えています。「当該資産を妥当な価格(あるいは本源的価値)で買えたとは考えてもいないのに、バブルがはじける前にもっと高値で他人へ売りつけたいがゆえに買う」点で、なんとも冷笑的なバブルです。シティバンクの元CEOだったチャック・プリンスは、よくある冷笑的バブル思考を的確に披露してくれました。2007年7月にそれを示す言葉を口にしたのです。「曲の演奏がつづく限り、席を立って踊り続けねばなりません。当社はまだ踊り続けているのです」と。(p. 3)

The first and canonical type of bubble is the what might be called the “Fad” or the “Mania.” This is truly a bubble of belief. In this type of bubble, people really do believe that this time is different, that a new era has been begun. These are the great bubbles of history: the TMT bubble, the Japanese bubble, the US housing bubble, and the Roaring 20s all stand out as shining examples of delusional new age thinking.

The second type of bubble is described as an intrinsic bubble. In an intrinsic bubble, it is the fundamentals that are the source of the bubble. That is to say, earnings booming at an unsustainable rate, which then often gives rise to extrapolation and overcapitalization by investors. Financials during the US housing bubble were a good example of this kind of bubble. Their earnings were inflated by the economic bubble in the housing market, and this wasn’t recognized by many investors.

The third type of bubble is known in the academic literature as a near rational bubble. I am not a great fan of this nomenclature as it suggests a veneer of respectability that I find undeserved. To me these are really better described as greater fool markets. They are cynical bubbles in that those buying the asset in question don’t really believe they are buying at fair price (or intrinsic value), but rather are buying because they want to sell to someone else at an even higher price before the bubble bursts. Chuck Prince, the former CEO of Citibank, aptly demonstrated the typical cynical bubble mentality when in July of 2007 he uttered those fateful words, “As long as the music is playing, you’ve got to get up and dance. We are still dancing.”

2018年7月24日火曜日

(問題)プロの投資家たちが選ぶ数を当てよ

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以前に取り上げたことのあるマネー・マネージャー(M氏としておきます)の文章を読んでいたところ、おもしろい試みを取りあげていたので、ご紹介します。

M氏は現在の市場の成り行きを表現する上で、有名なケインズのたとえ話「美人コンテスト」をあげました。

職業家としての投資とは、新聞が主催する次のような競技に例えられるかもしれない。「参加者は、100枚ある顔写真の中から、もっとも美しい6名を選び出さなければならない。その際に、全参加者の選んだ平均にもっとも近い選択をした者が優勝となる」。各参加者は、もっとも美しいと自分自身が考える顔ではなく、他の参加者たちの気を惹く可能性がもっとも高い顔を選択しなければならない。そのため、誰もがこの問題を同じ観点からとらえることになる。もっとも美しいことが事実だったとしても、個人の判断で最上の顔を選ぶやりかたは適切ではない。さらには、平均としてみたときに純粋にもっとも美しいと思われる顔ですらない。それゆえに、この問題は第3次の水準に到達することとなる。「平均的見解とは何か」を予想する平均的見解がどのようなものかを判断するがために、知力を働かせるのだ。私が思うに、4次や5次さらにはもっと高次の思考を巡らす者がいるはずだ。

Professional investment may be likened to those newspaper competitions in which the competitors have to pick out the six prettiest faces from a hundred photographs, the prize being awarded to the competitor whose choice most nearly corresponds to the average preferences of the competitors as a whole; so that each competitor has to pick, not those faces which he himself finds prettiest, but those which he thinks likeliest to catch the fancy of the other competitors, all of whom are looking at the problem from the same point of view. It is not a case of choosing those which, to the best of one’s judgment, are really the prettiest, nor even those which average opinion genuinely thinks the prettiest. We have reached the third degree where we devote our intelligences to anticipating what average opinion expects the average opinion to be. And there are some, I believe, who practise the fourth, fifth and higher degrees.

そのうえでM氏は、美人コンテストのアイデアを実際に試すことをねらって次のような要領のゲームを実施したことを、紹介していました。

・ゲームの参加者は、0から100の整数の中から、ある数をひとつ選ぶこと。
・「全ゲーム参加者が選んだ数の平均値の3分の2」の値に最も近い数を選んだ者が、このゲームの勝者となる。

A game based on this idea can be constructed where participants are told to choose a number between 0 and 100.
The winner will be the person who picks the number closest to two-thirds of the average number picked.

ゲームの参加者はプロの投資家1,000名超とのことで、この情報は事前に知っておいてよいものと解釈しましょう。次回の投稿で正答(=平均値の2/3)を挙げますので、ぜひみなさんも勝者になることをめざして、お考えになってみてください。

なお、わたし自身も挑戦してみました。正答ではなかったものの、2ポイント程度の差に落ち着きました。まずまずのスコアだと自己評価しましたが、細かな詰めが甘いのはいつもながらの反省点です。

2018年7月20日金曜日

ヨーロッパが豊かになった理由(『進歩: 人類の未来が明るい10の理由』)

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中世までは世界の片田舎でしかなかった西欧が世界の中心部へと躍進した理由は、人文科学の領域でたびたび取り上げられる主題です。少し前の投稿でとりあげた本『進歩: 人類の未来が明るい10の理由』でも、単純ながらも強力な説明をしていたので、引用してご紹介します。

この時代、科学と技術の面ではアラブ人がはるかに先を行っており、西洋ではほぼ忘れ去られていたギリシャ哲学を生かし続けたのもアラブ人だった。

同時期に、経済的にも文化的にも繁栄した中国を支配していたのは宋王朝だった。法治と高い経済的な自由のおかげで、イノベーションの気運が生まれた。中国人は活字や火薬や羅針盤を使っていた--これは1620年という時期になっても、三大発明としてフランシス・ベーコンが挙げたものだ。

でも14世紀に中国を支配した明王朝は、技術や外国人に敵対した。海洋航海を死罪にして、世界を発見したかもしれない大型船を焼き払った。同様に、イスラム世界は13世紀の蒙古侵略のあとで内向きとなり、科学と近代化の多くの発想を粛清した。オスマン帝国では新技術は阻害され、印刷術は300年も遅れてしまい、タキ・アッディンが1577年に作ったイスタンブールの近代的な天文台は、たった3年しか続かずに、その後は神をスパイしようとしているといって破壊されてしまった。

別にヨーロッパの列強がマシだったわけではない。ヨーロッパのエリート層もまた新しいアイデアやイノベーションに反対した。でもこの大陸はあまりに断片化していた--地理的にも政治的にも言語的にも--おかげで、何か一つの集団や皇帝がそのすべてを支配はできなかった。著書『ヨーロッパの奇跡』でエリック・ジョーンズは、14世紀にはヨーロッパに1,000以上の政治単位があったと述べている。この複数主義はある意味で、競合する国民国家の体系を構築したときにもまだ残っていたといえる。新しい理論や発明、ビジネスモデルは必ずどこかでは生き延びられたし、その優位性を実証できた。それが他の人々に模倣されて、広まる。進歩は常に命綱を得られたというわけだ。

つまりヨーロッパを豊かにしたのは、優れた思想家や発明家や企業ではなく、ヨーロッパのエリート層がそれを邪魔するのにあまり成功しなかったという事実なのだった。アイデア、技術、資本は国から国へと移動できたので、国はお互いに競争して学び合うしかなく、お互いを近代化へと押しやった。これはいまのグローバリゼーションの時代と少し似ている。(p. 302)

2018年7月18日水曜日

2018年上半期、米国株式市場の総括

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何度か取り上げているバリュー投資家ウォーリー・ワイツ氏が、パートナー向けのレター(第2四半期)を公開していました。そのなかで興味深い数字が示されていたので、孫引きになりますがご紹介します。(日本語は拙訳)

2Q18 Value Matters (Weitz Investments)

テクノロジーや「確かな成長」を謳う各種のストーリーが、第2四半期にも投資家を魅了し続け、市場を高みへと導きました。なぜならそこには超大型の銘柄が含まれており、時価総額加重方式をとる同指数に対して、不釣り合いなほどの影響をもたらしたからです。経済コンサルタント会社として知られるゲイブカル・キャピタル(と同社の記事「統計で楽しもう」)によれば、2018年の前半6カ月間にS&P500があげた上昇分の71%は、アマゾン・マイクロソフト・アップルが寄与したものでした。その3社に加えて、マスターカード、さらには別のテクノロジー4銘柄が、同指数のあげた上昇分の105%に寄与していました。つまりそれら以外の492銘柄を合計すると、6月末時点では前年末比で下落していたのです。

In the second quarter, technology and other “reliable growth” stories continued to appeal to investors. They led the market higher, and because some are very large, they had a disproportionate impact on the capitalization-weighted indices. According to economic consultants, GaveKal Capital (and under the heading of “fun with statistics”), during the first six months of 2018, Amazon, Microsoft and Apple accounted for 71% of the gain in the S&P 500. Those three, along with Mastercard and four other tech stocks, accounted for 105% of the index’s gain. The other 492 stocks were, collectively, down year to date.

2018年7月16日月曜日

2018年バークシャー株主総会(12)米国における医療費の問題について(後)

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答から、前回のつづきでアマゾン社及びJPモルガン社との提携に関する話題です。お決まりのネタですが、ウォーレン・バフェットのジョークも楽しめます。(日本語は拙訳)

ただしこの提携は、利益を第一に考えて始めたものではありません。「従業員に対して優れた医療サービスをより安価に提供したい」、それがわたしたちの果たしたいことです。彼らが受けるサービスが現在よりも劣ったものになるのであれば、そのような考えに取り組むつもりは毛頭ありません。

しかし、「効果があり得る重大な変化を、実際に起こす方法がみつかるかもしれない」とわたしたちは考えています。そして、とてつもない抵抗が生じるであろうこともわかっています。

もし失敗におわるとしても、少なくとも挑戦したことにはなります。しかしこの件で必要な発想とは、わたしが「医療関係の諸専門誌をいくつか読んでブレイクスルーの瞬間を得たことで、あたかも医療機器システムのように組み込まれている一部分を取り替えることによって、何かしら貢献できる」と考えた程度のものではありません。

3つの組織にはおそらく100万名を超える従業員がいますが、わたしたちが公表したのちに、この件に携わりたいと希望する人からの連絡が止めどなくありました。現在は参画という段階ではないですが、もし効果的な発想に至ることができれば、いずれはそのような体制になるでしょう。つまりこの件で必要な発想とは、そのような水準のものです。

そして資源を投入できるか、要員を投入できるか、さらには何をおいてもCEOが重要です。要員を揃え、彼らを支援した上で、どうにかして良い方法を見つけられるだろうか。わたしたちの子供などの生涯において、18パーセントの数字が20や22パーセントに達することなく、良質な医療を享受し続けることができるものか。それというのも、結局のところ「無い袖は振れない」からです。

いずれは、それがわかるときが来ます。もし[バークシャー副会長の]アジート・ジェインであれば保険数理的に算定するでしょうから、わたしたちの構想には伸(の)らないでしょう。しかしそれでも、何かを成し遂げる可能性はあると思っています。

数値化できる人はいないと思いますが、わたしたちが何か重要なことを成し遂げる可能性はあります。なんといっても、実際に取り組む上で、わたしたちはほぼ最良の立場にあります。まぎれもなく適切なパートナーを得たわけですから、まずは行動に移して、行く末を見守りたいと思います(拍手)。

チャーリーはどうですか。

<チャーリー・マンガー> この種の公共サービスにおいて、成功を収めた先達がおりましたよ。何十年も前にさかのぼれば、ジョン・D・ロックフェラーが私財を費やして米国医療の分野を著しく発展させました。「著しい」という言葉がぴったりですよ。それに匹敵する発展をなしとげた人間は、他にはだれもいませんね。

ですから、ウォーレンがある方法でロックフェラーを模倣しているのは、その次になるわけです。たぶん良い結果になるでしょうがね。

<ウォーレン> ちなみにロックフェラーは非常に長生きしましたから、わたしは実際に3つの点で彼を真似している最中になります(笑)。

どうなるのかは、いずれわかります。しかし現在は多くの進展をみているところです。おそらく2,3か月のうちにはCEOを見つけられるでしょう。もし見つからなくても、締め切り的なものに間に合わせるだけのために、だれかを据えようとは考えていません。すばらしいパートナーがいるわけですから。

ただしわたしたちの提携では、正式な契約は結んでいません。ある会社の法務部門の人がお膳立てを進めていましたが、そこのCEOがとめました。

みなさんの所属する組織でも、多くの資源を抱えている部署があると思います。わたしたちも、わたしたちなりの官僚主義を抱えています。しかし、もし本当にもっともだと思えることがあれば、官僚主義を取り払うことができます。

支持を得られることもあれば、同時に反発も数多くあると思います。しかしわたしたちの考えが理にかなったものであれば、多くの米国企業から支持を集めるでしょう。

しかし言うまでもないですが、容易なことだったとしたら、すでに解決しているはずです。

<チャーリー> 簡単なことではないですよ。

<ウォーレン> そのとおりです。しかし挑戦してみるべきです。

But it is not a - the motivations are not primarily profit-making. They’re - we want to deliver - we want our employees to get better medical service at a lower cost. We’re not going to - we’re certainly not going to come up with something where we think the service that they receive is inferior to what they’re getting now.

But we do think that there may be ways to make a real - significant changes - that could have an effect. And we know that the resistance will be unbelievable.

And if we fail, we’ve at least tried. And - but they - the idea is not that I will be able to contribute anything to, you know, in some breakthrough moment, by reading a few medical journals or something - (laughs) - changing something that is as embedded as the medical system.

But the idea is that maybe the three organizations, which employ over a million people and which, after we announced it, we had a flood of calls from people that wanted to join in, but there isn’t anything to join into now. But they will if we have - come up with any ideas that are useful.

Whether we can - bring the resources, bring the person. And the CEO is terribly important. And then bring the person, support that person. And somehow, figure out a better way for people to continue to receive better medical care in the United States without that 8 percent - 18 percent - going to 20 or 22 percent, you know, in the lifetime of, you know, our children or something of the sort - because there are only a hundred cents in the dollar.

And we will see what happens. It’s - you know - if you were Ajit [Jain], actuarially figuring, it would not - you would not bet on us. But - I think there is some chance we will do something.

There’s a chance - nobody can quantify it - that we can do something significant. And we are positioned better than most people to try. And we’ve certainly got the right partners. So, we will give it a shot and see what happens.

Charlie? (Applause)

CHARLIE MUNGER: There is some precedent for success in this public service activity. If you go back many decades, John B. Rockefeller I, using his own money, made an enormous improvement in American medical care. Perfectly enormous. In fact, there’s never been any similar improvement done by any one man since that rivals it.

So Warren, having imitated Rockefeller in one way, is just trying another. And maybe it’ll work.

WARREN BUFFETT: Rockefeller, incidentally, lived a very long time. So I actually am trying to imitate him three ways there. (Laughter)

We’ll see what happens. But we are - we’re making a lot of progress. And I think we’ll probably have a CEO within a couple of months. But if we don’t have one, then we’re not going to pick somebody just because we want to meet any deadline or anything like that. We’ve got these wonderful partners.

We don’t have a partnership agreement among us. Somebody started drawing up one in a legal department and the CEO just put a stop to it.

They - you do have places that have a lot of resources. And while we all have our share of bureaucracy, we can cut through it if we’ve got something that we really think makes sense.

And we will get the support - we’ll get - we’ll get a lot of resistance, too. But we will get the support of a lot of American business, if we come up with something that makes sense.

But if it was easy, it would’ve already been done. There’s no question about that.

CHARLIE MUNGER: It’s not easy.

WARREN BUFFETT: No. (Laughs) But it should be tried.

2018年7月12日木曜日

2018年バークシャー株主総会(11)米国における医療費の問題について(前)

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答から、最近話題になっていたアマゾン社やJPモルガン社との提携話についてです。今回の質問者は、本題以外にも別の観点からの思いを込めて質問しています。しかしウォーレン・バフェットは脱線することなく、本題だけに集中して答えており、明快な捌きぶりだと感じました。なお、前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

15. アマゾン社及びJPモルガン社との医療費関連の提携

<ウォーレン・バフェット> 質問所4番のかた、どうぞ。

<質問者> チャーリーさん、ウォーレンさん、おはようございます。私は御二方の熱烈なファンで、チャーリーが書かれた認知上のバイアス25項目については特に気に入っています[過去記事一覧]。そのため、本題から若干はずれるとは思います。

私はワシントン州のシアトルから参りました。デジタル・マーケティングの会社を一人で運営しています。フェイスブック上の広告や電子メールを使ったマーケティングを専門としており、それらを多用しています。チャーリーが説明されたコカ・コーラに関する詳細は、実に信頼できるものと感じています[過去記事一覧]。

顧客の製品が持つ構造を理解したり宣伝したりする方法を見つける際に、[前述した認知上のバイアスを]参考情報として利用しています。ですからチャーリーの示された認知上のバイアスが、インターネット関連の企業においてうまく働くことは、明言できます。

さて、アマゾンやJPモルガンと医療関連で提携するとのことで是非ともお聞きしたいのですが、インターネット関連の企業に対して例のバイアスを適用する方法を、御二方は理解されはじめたのでしょうか。あるいは事業を理解しているとすれば、他の道具を使うことにしたのでしょうか。それというのも、「理解していない事業には投資しない」と度々発言してこられたものですから。

<ウォーレン> そうですね、わたしたちは医療関連の企業を設立するつもりはありませんし、必ずしも保険業のような会社をつくるわけでもありません。ただ単に、わたしが敬愛し信頼するリーダーの率いる3つの組織が存在するだけのことです。それら3つが互いにやりとりをしている、といったものです。

チャーリーは正しくも次のような発言をしていたと思います。「1960年にはGDP比で5パーセントだったのが、現在は18パーセント近くに達しているシステムを、なんらかの方法で変更することは、ほぼ不可能である」と。そのようなシステムに対して、わたしたちは何とかしたいと望んでいます。

米国のビジネスは他の国とくらべると、医療費の面が大きな足かせとなっています。かつて米国が5パーセントでやっていた時代に、米国のように5パーセント程度でやっていた国々がありました。しかし今では、かの国々が11パーセント越えないあたりでやっているところを、米国はなんとか18パーセントに抑えている状況です。

まさしく1960年には、米国における一人当たり医療費は170ドルでした。しかし今では1万ドル以上を費やしています。

「無い袖は振れぬ」わけですから、費用の問題が生じます。米国実業界とその競争力の面で、この問題は寄生虫であると言えます。

米国よりも少ない費用でうまくやっている諸国とくらべると、一人当たりの医者数が米国のほうが少なかったり、一人当たりの病床数や看護師数も少ない例があります。

医療システム全体が扱う金額は3兆3千億ドルに達しています。これは連邦政府の歳入とほぼ同じ金額です。3兆3千億ドルもの金額が、システムにかかわる云百万・云千万もの人たちに分配されるわけです。そのお金の1ドル1ドルが有権者へとつながっています。まさしく政治と言えるものです。

わたしたちのCEO探しは、現在取り組んでいるところですが、きっと果たせるでしょうから、遠からず発表できると思います。しかし、このことがカギとなります。

だれもが認めているように、医療システムの費用面は、ある種制御不能となっています。しかし往々にしてだれもが、他人の過失によるものだと考えています。果たしてCEOとなるその人物が想像力を抱き、さらに人々を支援することを通じて、種々の重大な改善をシステムにもたらせるでしょうか。やがては解が見つかるでしょうが、容易なことではないと思います。

(つづく)

15. Health care costs partnership with Amazon and JPMorgan

WARREN BUFFETT: OK. (Laughter) Station 4.

AUDIENCE MEMBER: Good morning, Charlie and Warren. I know that seems a little bit out of order, but I’m a huge fan of yours, Charlie, mostly for your 25 Cognitive Biases.

I’m from Seattle, Washington. I run a one-person digital marketing firm that specializes in Facebook ads and email marketing. I use these a lot. I - your breakdown of Coca-Cola was really, really solid.

And I use that as reference when looking to how to understand the mechanics of my clients’ products and how to promote them. So I’m fairly certain that your cognitive biases work for internet-related companies.

Now that you’re partnering with Amazon [and JPMorgan] on health care, I’m curious, have you started to understand how to apply these biases to internet-related companies? Or is there another set of tools you use to decide if you understand a business? Because you guys talk a lot about not investing in businesses that you don’t understand.

WARREN BUFFETT: Well, health care is a - we don’t plan to start health care companies or, necessarily, insurers or anything. We simply have three organizations with leaders that I admire and trust. And we - mutually goes around all three.

And we hope to do something which Charlie correctly would probably say is almost impossible to change in some way a system which is - was taking 5 percent of GDP in 1960, and now is taking close to 18 percent.

And we have a hugely noncompetitive medical cost in American business, relating to any country in the world. The countries that - there were some countries that were around our 5 percent when we were at 5 percent. But we’ve managed to get to 18 without them going beyond 11 or so.

Literally, in 1960, we were spending $170 per capita on medical costs in the United States. And now we’re spending over 10,000.

And, you know, every dollar only has a hundred cents. So there is a cost problem. It is a tapeworm, in terms of American business and its competitiveness.

We don’t - we have fewer doctors per capita. We have fewer hospital beds per capita, fewer nurses per capita, than some of the other countries that are well below us.

And you’ve got a system that is delivering $3.3 trillion - that’s almost as much as the federal government raises - it’s delivering 3.3 trillion, or some number like that, to millions and millions and millions of people who are involved in the system. And every dollar has a constituency. It’s just like politics.

And whether we can find the chief executive, which we’re working on now, and which I would expect we would - we would be able to announce before too long - that - but that’s a key part of it.

And whether that person will have the imagination and support of people that will enable us to make any kinds of significant improvements in a system which everybody agrees is sort of out of control on cost, but what - but - but they all think it’s the other guy’s fault, generally - we’ll find out. It won’t be - it won’t be easy.

なお新会社のCEOは少し前に決定しています(6月20日付の公式発表[PDF])。選任されたのはアトゥール・ガワンデ氏、本ブログではチェックリストに関する過去記事で取り上げた人物です。チャーリー・マンガーごひいきの人物を選んだわけですね。

2018年7月8日日曜日

人類の未来が暗く思える理由(『進歩: 人類の未来が明るい10の理由』)

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以前にご紹介したマット・リドレーの著作『進化は万能である』では、さまざまな社会的側面が進化的に発展してきた現実を取りあげていました(過去記事)。最近は「社会における進歩を正しく見つめよう」とする気風が高まっているのでしょうか、ビル・ゲイツも少し前から「鮮度の高い事実」を的確に認識した上で、現代社会が果たしてきた進歩の実態を啓蒙しようとしているようです(その一例)。それと似たような趣旨の本を少し前に読んだので、印象に残った一連の文章をご紹介します。

同書の邦題は『進歩: 人類の未来が明るい10の理由』、黄色のカバーのポップなデザインからは軽い内容を予期させますが、実際の本文に浮わついたところはありません。参考文献から集めた事実を連ねて、社会がいかほどに発展してきたのか、いくつかのテーマに沿って堅実に文章を書き進めています。個人的には例によって100%鵜呑みにできるとは考えませんが、いくぶん割り引いたとしても、現代社会がどのような高みに位置するのかを把握するのにふさわしい一冊だと思います。

今回引用するのは、本書の「おわりに」に含まれている文章です。「なぜ人々は暗い未来を思い描いているのか」について説明しています。本来であれば巻頭で触れるべき内容だと思いますが、あえて後段に回したものと想像します。

人々は一般に、私が本書で示したような希望に満ちた世界観を持っていないと考えてまちがいない。イギリス、オーストラリア、カナダ、アメリカの回答者の54パーセントは、今後100年でいまの生活様式が崩れる危険性は、50パーセント以上だと答えている。4分の1近くは、人類が絶滅する危険性が50パーセント以上だと述べている。(中略)

こうした想定は、しばしばメディアにより形成される。メディアは世界についてのある特定の見方を強調し、ドラマチックで驚くものばかりに注目する。そうした話はほぼまちがいなく戦争、殺人、自然災害といった悪いニュースだ。(中略)

多くのジャーナリストや編集者はこの傾向を知っている。アメリカの公共ラジオジャーナリストであるエリック・ワイナー曰く「正直いって、とんでもなく不幸な場所に暮らす、不幸な人々の話は人気が出るんです」。(p. 287)

たぶん、人は心配するようにできている。例外に関心がある。新しいこと、不思議なこと、予想外のことに気がつく。それが自然だ。通常の日常的な出来事は、いちいち説明して理解するまでもない。でも例外は理解する必要がある。(中略)

私たちが危険なものすべてにとても興味があるのは、それに興味を示さなかった人はとっくに死んでいるからだ。建物が火事なら、すぐにそれを知る必要がある。そしてその火事がテレビに映っているだけでも、多少は興味を惹く。幾重もの抽象化と感覚鈍化の下で、安全なソファにすわってテレビを見ているときでも、人の石器時代の脳が多少のストレスホルモンとアドレナリンを分泌するのだ。

スティーブン・ピンカーは、世界が実際よりひどいと思わせる心理的バイアスを3つ挙げている。(中略)

第3のバイアスは、人生がもっと単純でよかったされる黄金時代に対するノスタルジーだ。文化史家アーサー・ハーマンはこう洞察している。「過去も現在もほとんどあらゆる文化は、いまの男女は両親やご先祖の基準に達していないと信じている」。(中略)

私が人々に理想の時代について尋ね、世界史上で最も調和がとれて幸せだった時代はいつだと思うか尋ねると、驚くほど多くの人々は、自分が育った時代を挙げる。だからベビーブームの人々は、1950年代をなつかしがる。(p. 296)

現代に生きる人間にはそういったバイアスがあることを承知した上で、本題の内容をもう一か所引用します。「第4章 貧困」からの文章です。

なぜ貧困な人がいるのだろうか?
これは質問がまちがっている。
貧困についての説明は不要だ。というのもそれは万人の出発点だからだ。貧困は、富を創り出すまでの状態のことだ。最も豊かな国ですら、先祖たちの生活がいかに劣悪なものだったかを人々はつい忘れてしまう。フランスのような国で受け入れられていた貧困の定義はとても簡単だった。もう1日生き延びられるだけのパンを買えるなら、その人は貧困ではない。(中略)

アドリア海のぺスカラという、要塞と兵舎を持ち、特に貧しいというわけでもない町について、1564年に調査が行われている。それによると、町の世帯の4分の3は掘っ建て小屋に住んでいた。裕福なジェノアでは、貧民たちは冬ごとにガレー船の奴隷として自分を売った。パリでは最貧民たちは対になって鎖でつながれ、排水溝を掃除するというつらい仕事をやらされた。イギリスでは、貧困者は救済を受けるために作業小屋で働かざるを得ず、そこでは長時間労働をやらされ、ほとんど無賃だった。犬や馬や牛の骨を肥料用に砕く作業をやらされた人々もいるが、1845年に作業小屋の査察で、腹の減った貧民たちは腐りかけの骨をめぐって争い、その骨髄を吸い出そうとしていたことが示されている。(p. 95)

2018年7月4日水曜日

2018年バークシャー株主総会(10)チャーリー・マンガーの一刀両断

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答から、今回の話題は会計基準についてです。「会計に対する基本的な哲学」という意味で勉強になる文章ですが、チャーリー・マンガーが一言ですべてを片づける構図がおもしろいです。隣席のウォーレン・バフェットも、笑いがこぼれています。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

13. 収益勘定に事業価値を含めることは「とてつもなく偽装的である」

<ウォーレン・バフェット> 次はキャロルからお願いします。

<キャロル・ルーミス> ジャック・シゼルスキー氏という株主からの質問です。彼は会計の専門家として著名であり、「アカウンティング・オブザーバー」という業界誌を何年も前から執筆しています。

「今年の株主向けレターにおいてバフェット氏は、会計上の新規則が企業へ要求している要件、『保有投資資産に関する会計処理として時価(市場価格)方式を適用すること』に対して、次のような手厳しい見方を記しています。

『分析上の目的において、バークシャーの儲けは意味のないものになってしまう』と。[過去記事]

そのご意見に対して、私の見解を申し上げます。企業が収益を報告する際には、該当会計期間中に企業内外で生じたあらゆることに言及すべきではないでしょうか。

損益計算書においては、客観的に記述された新聞のようにあるべきではないでしょうか。株主価値を増加させるために経営陣が何をしたのか、また外部からの力がどのように影響する可能性があったのかを示しつつ、経営陣のもとで当該期間中に生じた事柄を株主へ周知させることで。

もし保有証券の価値が増加すれば、当然ながらその企業や株主の利益になるはずです。また証券の価値が減少すれば、反対に不利益となるはずです。

そういった変動は、ほぼまちがいなく現実のものです。つまり私の見解では、『リストラ関連の費用を素通りするようなやりかたで変動を無視する企業は、株主へ配布する新聞を検閲している』ことになります。

ですから、『私の発言に対して、どのようにお答えになりますか』というのが、私からの質問です」(笑)。

<ウォーレン・バフェット> 「質問の内容に対するわたしの答えがどうなるか」というご質問に対して、わたしからの次の質問が答えになります。「もしわたしたちが1,700億ドル分の市場価値になる企業各社を部分的に保有しており、それらは今後何十年間と保有し続けるつもりで、時間とともに価値が増していくことを期待し、当社の貸借対照表には市場価値ベースで反映されているとしましょう。そのとき、収益勘定を通じてそれらの増減を四半期ごとに計上するのは妥当でしょうか。その際には同時に、ほとんどの例でそうでしたが、保有した後にずっと大きな価値を持つようになった事業について、極端な例をあげるとガイコ社ですが、およそ5千万ドルで同社の半分を買いましたが、四半期ごとにその事業の価値増加分を収益勘定を通じて積み増したいものでしょうか」。

これは価値評価プロセスの問題になります。評価という意味では悪い点はありません。しかしそれは、純資産価値の増加あるいは減少と呼べるもので、クローズド・エンドあるいはオープン・エンドの投資信託がやっていることです。

しかし収益勘定を通じてそれを行う場合、もしわたしが60社から70社といった事業をみるとすれば、それらを四半期ごとに時価評価する際に、時間が経つにつれて購入時金額の10倍の価値に達した事業などが、当然ながら非常にたくさん存在することが考えられます。しかし四半期ごとの増加分を収益勘定に計上したとしても、投資家のうちの99パーセントの人は、1年間においてあげた経営成績という意味で、純利益の数字を意味あるものと受けとめるでしょう。ですから、それはとてつもなく偽装的なことだと思います。

つまり、[バークシャーの]今年の第1四半期の数字はさきほど見られたと思いますが、わたしからすれば営業利益と呼びたい数字は、過去最高の業績でした。一方、株式の評価額は60億ドル程度の下落でした。毎日の損得は収益勘定に記載するとなりますから、この金曜日にはおそらく25億ドルほど稼いだことになると言えます。もしも投資家や解説者やアナリストといった人たちに対して、「そのような純利益の数字をもとに行動せよ。四半期ごとや将来の収益予測を細かい数字まで出すように」と要求するのだとしたら、先ほどの数字を収益勘定に含めること自体が、多大なる害を及ぼすと思います。

貸借対照表上に投資有価証券の項目があること自体は、市場価値という情報を示すわけですから、正しいことです。しかし保有する事業、たとえばBNSF鉄道の半分を売却した場合、もちろんそうするつもりはありませんが、その際に簿価以上の金額を受け取ったとしたら、その資金を有価証券へ替えることができますので、多額の儲けを一晩であげたかのようにみえるでしょう。あるいはそれを査定し、たとえば3か月ごとに評価額を増減させれば、あらゆる類の操作につながる恐れがあります。そのようなことは、平均的な投資家だけでなく、すべての投資家をすっかり混乱させてしまうだけです。

わたしならば、そのような形のデータを受け取りたいとは思いません。ですから、そのような出しかたもしたくないと考えています。

チャーリーはどうですか。

<チャーリー・マンガー> 私からすれば、差異が生じた理由を付記するのは当然ですが、今までどおり純資産の数値に反映させればいいだけです。

つまり質問者は、自分の稼業が何たるかをわかっていませんね(失笑そして拍手)。

そういう言い方をするつもりはなかったですが、ときにはうっかりしてしまうのですよ(笑)。

<ウォーレン> ときどき彼はそうやって、引導を渡すこともあります(笑)。

13. Putting business values in income account is “enormously deceptive”

WARREN BUFFETT: OK, Carol.

CAROL LOOMIS: … shareholder named Jack Ciesielski . He’s a well-known accounting expert, who for many years has written “The Accounting Observer .”

“Mr. Buffett, in this year’s shareholder letter you have harsh words for the new accounting rule that requires companies to use market value accounting for their investment holdings.

″‘For analytical purposes,’ you said, ‘Berkshire’s bottom-line will be useless.’

“I’d like to argue with you about that. Shouldn’t a company’s earnings report cite everything that happened to, and within, a company during an accounting period?

“Shouldn’t the income statement be like an objectively written newspaper informing shareholders of what happened under the management for that period, showing what management did to increase shareholder value and how outside forces may have affected the firm?

“If securities increased in value, surely the company and the shareholders are better off. And surely they’re worse off if securities decreased in value.

“Those changes are most certainly real. In my opinion, ignoring changes in the way that some companies ignore restructuring costs, is censoring the shareholders’ newspaper.

“So my question is, how would you answer what I say?” (Laughter)

WARREN BUFFETT: Well, my answer to the question that asks what my answer would be to what he said - the - I would ask Jack, if we’ve got $170 billion of partly-owned companies, which we intend to own for decades, and which we expect to become worth more money over time, and where we reflect the market value in our balance sheet, does it make sense to, every quarter, mark those up and down through the income account, when at the same time we own businesses that have become worth far more money, in most cases, and become, you know, since we bought - you name the company - take GEICO, an extreme case - we bought half the company for $50 million, roughly - do we want to be marking that up every quarter to the value - and having it run through the income account?

That becomes an appraisal process. There’s nothing wrong with doing that, in terms of evaluation. But in terms of - and you can call it gain in net asset value or loss in net asset value - that’s what a closed-end investment fund, or an open-investment fund would do.

But to run that through an income account - if I looked at our 60 or 70 businesses, or whatever number there might be, and every quarter we marked those to market, we would have, obviously, a great many, in certain cases, where over time we’d have them at 10 times what we paid, but how quarter-by-quarter we should mark those up and run it through the income account, where 99 percent of investors probably look at net income as being meaningful, in terms of what has been produced from operations during the year, I think would be - well, I can say it would be enormously deceptive.

I mean, in the first quarter of this year - you saw the figures earlier - where we had the best what I would call operating earnings in our history, and our securities went - were down six billion, or whatever it was, to keep running that through the income account every day you would say that we might have made on Friday, we probably made 2 1/2 billion dollars. Well, if you have investors and commentators and analysts and everybody else working off those net income numbers and trying to project earnings for quarters, and earnings for future years, to the penny, I think you’re doing a great disservice by running those through the income account.

I think it’s fine to have marketable securities on the balance sheet - the information available as to their market value - but we have businesses there - if we - we never would do it - but if we were to sell half, we’ll say, of the BNSF railroad, we would receive more than we carried - carried for them - we would turn - we could turn it into a marketable security and it would look like we made a ton of money overnight. Or if we were to appraise it, you know, appraise it every three months and write it up and down, A, it could lead to all kinds of manipulation, but B, and it would just lead to the average - to any investor - being totally confused.

I don’t want to receive data in that manner and therefore I don’t want to send it out in that manner.

Charlie?

CHARLIE MUNGER: Well, to me it’s obvious that the change in valuation should be noted, and it is and always has been - it goes right into the net worth figures.

So the questioner doesn’t understand his own profession. (Laughter and applause)

I’m not supposed to talk that way but it slips out once in a while. (Laughter)

WARREN BUFFETT: Sometimes he even gives it a push. (Laughter)

2018年6月28日木曜日

人間はコンピューターに勝てるか(ハワード・マークス)

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オークツリーのハワード・マークスが新しいメモを公開しています(6月18日付)。今回は「人間が介在しない投資」として、3つの話題をとりあげています。ETF等のパッシブ投資、クォンツ投資、AI投資です。パッシブ投資に関しては、すこし前のメモを拡充したような内容です。クォンツ投資については概要を説明していますが、AIについては触りだけで、展望や技術的な限界を述べるには至っていません。新著の仕上げに注力しているからか、全体的には「中休み」といった印象を受けました。今回は、その中でも記憶にとどめておきたい箇所を断片的に引用します。(日本語は拙訳)

Investing Without People [PDF] (Oaktree Capital Management)

はじめの引用はクォンツ投資の限界についてです。

繰り返しますが、ジョージ・ソロスは再帰性理論のなかで「市場参加者の行動が市場を変える」と説いています。それゆえ、永続的に勝ち続ける数式など存在しないのでしょう。私からすれば、数量的投資(クォンツ投資)によって優れた成果をあげるには、定期的かつ正確に数式を書き換える能力が不可欠になると思います。投資とは動的なものであるゆえ、クォンツ投資の基礎をなす規則も変わらざるを得ないからです。(p. 11)

To reiterate, George Soros’s Theory of Reflexivity says the behavior of market participants alters the market. Thus no formula will be a winner forever. For me, that means the achievement of superior returns through quantitative investing requires the ability to constantly and correctly update the formula. Since investing is dynamic, the rules relied on in quantitative investing have to be dynamic.

次の引用は、市場参加者のうちパッシブ投資が占める割合についての考察です。個人的にも、この問題について空想することが時折あります。

[適正]価格発見の面でどれだけの投資がパッシブになれば、価値に対して支払う金額を適正に保てなくなるでしょうか。それはだれにもわかりません。株式投資信託が現在保有する資産額のうち、およそ40%がパッシブに運用されています。機関投資家においても、その数字の方向へと進むかもしれません。ただしそれでは不十分だとは思います。[機関投資家の世界では]今もなおほとんどの資金がアクティブに運用されています。つまり現在はまだ、価格を探るさまざまな活動が実施されているわけです。たしかにパッシブ運用の割合が100%になれば十分です。しかし「株式の適正価値を評価したり、企業のことを調査する者がだれもいない世界」を思い描けるものでしょうか。そのような世界があるとしたら、ぜひとも「そこで精を出す唯一の投資家」でありたいと思います。しかし問題なのは、「価格が本源的価値から十分に乖離し始めてアクティブ運用に値するようになるのは、40%から100%の間のどこからか」という点です。今の私には判断できませんが、アクティブ投資の未来のためにいずれは見つけ出せるかもしれません。(p. 5)

How much of the investing that takes place has to be passive for price discovery to be insufficient to keep prices aligned with fair values? No one knows the answer to that. Right now about 40% of all equity mutual fund capital is invested passively, and the figure may be moving in that direction among institutions. That’s probably not enough; most money is still managed actively, meaning a lot of price discovery is still taking place. Certainly 100% passive investing would suffice: can you picture a world in which nobody’s studying companies or assessing their stocks’ fair value? I’d gladly be the only investor working in that world. But where between 40% and 100% will prices begin to diverge enough from intrinsic values for active investing to be worthwhile? That’s the question. I don’t know, but we may find out . . . to the benefit of active investing.

最後の引用は、今回のメモでの白眉と言える文章です。

卓越した投資家とは、定量的分析や会計や財務の面で必ずや他よりも勝っているわけではありません。彼らの強みは主として、「平均的投資家が見過ごしてしまう、定性的あるいは長期的観点における利点を見定める力」にあります。もし[AIのような]コンピューターが同じようにそういった過ちをおかすとすれば、上位数パーセントの傑出した投資家がほどなく引退することはないと思います。(p. 16)

The greatest investors aren’t necessarily better than others at arithmetic, accounting or finance; their main advantage is that they see merit in qualitative attributes and/or in the long run that average investors miss. And if computers miss them too, I doubt the best few percent of investors will be retired anytime soon.

2018年6月24日日曜日

妥当な価格で優良企業を買うためのチェックリスト(GuruFocus創業者)

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コメント欄でリュウジさんがご紹介くださった本『とびきり良い会社をほどよい価格で買う方法』を少し前に読みました。投資で利益をあげるにはさまざまなやりかたがあると思いますが、本書ではあくまでもひとつのやりかたにこだわっています。題名が示すように「とびきり良い会社をほどよい価格で買う」、これだけに焦点を当てて平均以上の成績をあげるための戦術論全般を説明しています。対象読者としては「株式投資中級者」を想定しているようです。チャーリー・マンガー的な信条をそのまま掲げている点には感心しましたが、あとは本書のやりかたで望む成果をあげられるかどうかですね。

さて本書から今回引用するのは、p. 197に掲載されている「妥当な価格で優良企業を買うためのチェックリスト」です。これは完全無欠なものではないですし、状況によって要否が変わることもあるでしょう。しかし「あくまでもひな形として参考にし、個々人が吟味発展させる」という意味では、役に立つと思います(たとえば日本企業を評価する場合には、このままでは適用しにくい)。なによりも明文化され、リスト化されていることに意義があります。

なお、訳語「優良企業」に対応する原語は"Good companies"のようです。妥当な訳出だと思いますが、念のため記しました。

妥当な価格で優良企業を買うためのチェックリスト

1. 私はこの事業を理解しているか。

2. 企業を守る経営上の堀があるおかげで、今後5年から10年間、同じか類似した製品を売り続けることができるか。

3. この業界は変化が激しいか。

4. この企業には多様な顧客基盤があるか。

5. 固定資産が少ない事業か。

6. 景気循環に大きく影響される業界か。

7. この企業にはまだ成長の余地があるか。

8. 過去10年間、好景気のときも不景気のときも常に利益を出し続けてきたか。

9. 営業利益率は安定して2桁を維持しているか。

10. 利益率は競合他社よりも高いか。

11. 15%以上のROIC(投下資本利益率)を過去10年にわたって維持しているか。

12. 一貫して2桁の成長率で、売上高と利益を伸ばしてきたか。

13. 財務基盤がしっかりしているか。

14. 経営陣は自社株をかなり保有しているか。

15. 経営陣の収入は似た規模の他社と比べてどうか。

16. インサイダーはこの企業の株式を買っているか。

17. 内在価値やPER(株価収益率)で測った株価は妥当か。

18. 歴史的に見て、現在のバリュエーションはどうか。

19. これまでの不況期に株価はどうだったか。

20. 自分の調査にどれくらいの自信があるか。

著者であるチャーリー・ティエン氏が触れているように、上記のリストには投資界の達人たちが示した教えが取り入れられているので、たとえばフィル・フィッシャーの15項目と似たものがあります。ただし上記のリストは定量化しやすい項目ばかりになっているのが特徴的です(本書内で解説あり)。もちろんそれは、著者が運営する投資サイトGuruFocusで定量的評価ツールを提供していることの裏返しでもあるでしょう。しかし、閾値を厳密に定める評価には長短があることを承知していれば、「達人の教えをなるべく定量的に実践試行しつづける」ことでも、相応の成果をあげられると思います。

2018年6月20日水曜日

2018年バークシャー株主総会(9)ウェルズ・ファーゴについて(了)

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答から、ウェルズ・ファーゴ等の不祥事に関する話題は今回でおわりです。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<ウォーレン・バフェット> それは、ティノ・デ・アンジェリスという名の人間があらわれたときのことです[詐欺事件の首謀者]。たしかニュージャージー州のベイヨンだったと思いますが...

スキャンダルが発生した後の、1964年に開催されたアメックスの株主総会には、実はわたしも参加しました。その席で、ある参加者が監査人に歩み出るよう要求しました。

具体的な名前は挙げませんが、ある大手会計事務所の一員だった監査人がマイクのところへ足を進めました。そして次のように質問されました。「当社はあなたがたに昨年いくら支払ったのですか」。

その監査人は答えました。質問者はさらに問いただしました。「それでは、ここから15kmほど離れたベイヨンに赴いて、タンクの中に油がどれだけ残っているか調べてきてほしいと言われたら、一体いくらの追加費用をわれわれに要求するのですか」(微笑)。

実はちょっとした出来事がありました。ある人物がベイヨンの酒場から[会社に]連絡してきて、詐欺話が進んでいると知らせてくれていたのです。しかしアメックス側はそのことを聞きたくなかったため、耳を傾けませんでした。[参考サイト]

強大な企業がその後にむかえたのは、彼らいわく「息も絶え絶えの状態」でした。ですから、過ちとはいずれ犯してしまうものなのです。

いつかはバークシャーでも不愉快なニュース沙汰になることは、請け合います。それが何かはわかりません。しかし繰り返しになりますが、その後わたしたちがどのように行動するか、それがいちばん大切です。

そのような状況で尻込みしていたことが、わたしにも何度かあります。そのたびにチャーリーは、「何か行動を起こせ」と小突いてきました。ですから、みなさんが知らないところでチャーリーもいろいろと活躍してきたのです(微笑)。

(この質疑応答は、おわり)

And when some guy named Tino De Angelis in, I think it was Bayonne, New Jersey -

In fact, I went to the annual meeting in 1964 of American Express after the scandal developed, and somebody asked if the auditor would step forward.

And the auditor from one of the big firms, which I won’t mention, came up to the microphone, and somebody said, “How much did we pay you last year?”

And the auditor gave his answer, and then the questioner said, “Well, how much extra would you have charged us to go over to Bayonne, which was ten miles away, and check whether there’s any oil in the tanks?” (Laughs)

So it - you know, here was something - a tiny little operation - some guy was calling him from a bar in Bayonne and telling him this phony stuff was going on, and they didn’t want to hear it. They shut their ears to it.

And then what emerged was one great company after this kind of, what they thought was a near-death experience. So it’s - we’re going to make mistakes.

I will guarantee you that we will get some unpleasant news at Berkshire. I don’t know what it’ll be, you know - the most important thing is we do something about it.

And there have been times when I procrastinated, and Charlie has been the one that jabs me into action. And so he’s performed a lot of services you don’t know about. (Laughter)

2018年6月16日土曜日

2018年バークシャー株主総会(8)ウェルズ・ファーゴについて(3)

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答から、ウェルズ・ファーゴに関する話題がさらにつづきます。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<チャーリー・マンガー> それには賛成ですね。これからのウェルズ・ファーゴは、そういった悪事が露見しなかった場合よりも、いい企業になりますよ。

<ウォーレン・バフェット> あるいは「悪事を起こさなかった場合」よりも、良くなると思います。

<チャーリー> そのとおり。しかし、ハーヴェイ・ワインスタイン[映画『パルプ・フィクション』などのプロデューサー]もずいぶんと行動を改めたようですね(笑いと拍手)。

あれはたしかに不始末でしたよ。ただし彼らはそのことを心底わかっており、痛く混乱していますから、同じことは繰り返したくないと思っているでしょう。

さすれば、「将来に最良の振舞いをみせる銀行は、どこになりそうか」と問われたときに、ウェルズ・ファーゴの可能性も十分あると思いますね。

<ウォーレン> さきほど示したニューヨーク・タイムズ紙の1942年3月12日付紙面の裏側をみると、求人欄があります。その一部を占める大きめの欄には、「男性求む」と書いてあります。そして別の欄には「女性求む」とあります。

それでは、当時のニューヨーク・タイムズ紙がそうしていたことは正当だったのでしょうか。ご存知のように、同紙は優れた新聞です。しかし、人間とはあやまちを犯すものなのです。

「求人広告の掲載箇所を分ける」という発想は、広告を受けた際にいろいろ考えて出てきたのかもしれません。「求人が来たら、どの職業が適切かを考えながら、男女に分けるとしよう」と。あるいは、求人側が適切な割り振りを考えたのかもしれません。

世間ではおろかなことが数多くなされています。先に述べたように、1970年代初期のガイコは適切な引当金を計上できたのに、無視していました。つまり彼らは、新規の顧客に対してあやまった金額を請求していたのです。実際よりも少ない損失で済むと考えていたからです。

そういったことは、ウォール街を喜ばせたいがために行った部分も間違いなくあると思います。あるいは、ものごとがどのように進むのか正視したくなかったのかもしれません。しかし、その同社が目を見張るほどの強力な会社となりました。そうです、今では米国における[自動車]保険加入世帯の13%を占めています。

引当金だけでなく、破産が目前にせまった時期におのずと知ることになった困難によって高じたものに対しても、同社は目を向けるようになりました。42年前の..

<チャーリー> あれは、今回のウェルズ・ファーゴよりもずっとひどかったですね。彼らが大昔にしたことは、実にひどいものでしたよ。ねえ。

<ウォーレン> そのとおりです。彼らは大成功していたので、引当金の見直しを怠っていました。そしてアメックスは、1963年の委託倉庫会社に関する分として数ドルしか確保しませんでした。その後はご存知のように、その会社がアメックス本体を没落させるのではないかと恐れるようになったのです。

(もう1回つづく)

CHARLIE MUNGER: Well, I agree with that. I think Wells Fargo is going to be better going forward than it would have been if these leaks had never been discovered.

WARREN BUFFETT: Or happened.

CHARLIE MUNGER: Yeah, so I think it’s - it - but I think Harvey Weinstein has done a lot for improving behavior, too. (Laughter)

It was clearly an error, and they’re acutely aware of it and acutely embarrassed, and they don’t want to have it happen again.

You know, if I had to say which bank is more likely to behave the best in the future, it might be Wells Fargo, of all of them.

WARREN BUFFETT: This New York Times that I have here from March 12th, 1942, if you go toward the back of it, in the classified section, you have one big section that says, “Help Wanted Male,” and another one that says, “Help Wanted Female.”

You know, was the New York Times doing the right thing in those days? You know, I think the New York Times is a terrific paper. But people make mistakes.

And you know, the idea of classifying between - taking ads and saying, “Well, we’ll take them and divide them up between men and women, what jobs we think are appropriate,” or that the advertiser thinks is appropriate.

We do a lot of dumb things in this world. And GEICO, as I say, in the early 1970s, they just ignored - and you can do it in the setting of proper reserves, which mean they charged the wrong price to new customers because they thought their losses were less than they were.

And I’m sure some of that may have been a desire to please Wall Street or just because they didn’t want to face how things were going. But it came out incredibly stronger. You know, and now it’s got 13 percent of the households in the United States insured.

And it came out with an attention to reserves and that sort of thing that was heightened by the difficulties that they’d found themselves in where they almost went bankrupt. Forty-two -

CHARLIE MUNGER: It was a lot more stupid than Wells Fargo. It was really stupid what they did way back, right?

WARREN BUFFETT: Yeah. They had the world by the tail, and then they quit looking at the reserve development. But - and American Express was just picking up a few dollars by having the field warehousing company in 1963. And, you know, they were worried whether it was going to sink the company.