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2018年9月24日月曜日

<新訳>誤判断の心理学(チャーリー・マンガー)

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本ブログではチャーリー・マンガーの講演を順次ご紹介してきました。ただし「誤判断の心理学」と銘打った講演は抄訳にとどまっていました。今回からのシリーズでは同講演の全訳を拙訳にてご紹介します。引用元原書の版はExpanded Third Editionです。なお「講演」と呼んではいるものの、実際には各種講演をもとにした新たな「書き下ろし」エッセイとのことです。

誤判断の心理学
チャーリー・マンガーの講演3件から抜粋してまとめられた初出の文章。2005年にチャーリー自身が改訂し、相当量の文章が加筆修正された。

前書き

15年ほど前に心理学の話をしたときの各講演録を読み返してみたところ、当初の内容のほぼすべてを含みながらも、より論理的で、ずっと長い「講演」を生み出せることに気がつきました。

しかし、そうすることで次の4つの不利益が生じるだろうと、即座に思い至りました。

第一に、その長い「講演」は論理的にずっと完成された内容に書き上げられるはずだったので、多くの読者が当初の講演以上に退屈かつ混乱すると思われた点です。心理的傾向における独特の定義を扱う際に、心理学の教科書やユークリッド[数学]を連想させるようなやりかたをとるつもりでしたから、その可能性は考えられました。一体だれが、気晴らしのために教科書を読んだり、ユークリッドを学びなおそうと考えるものでしょうか。

第二に、私が身につけた心理学に関する知識のうち正式と言えるやりかたのものが、15年前にわずか3冊の教科書に目をとおした程度だった点です。そのため、心理学の分野でその後に発展したことは、事実上なにも知りません。さらに、長き論説にはみずからの推考を含み、はるかに学術的な心理学に対して批判をくだすことでしょう。このように素人がプロの領域へと侵入すれば、その領域の先生方が苦く受けとめるものも当然です。私のあやまちを嬉々として探し出し、私が開陳した批判に対して自説を以って反論する労を厭わないかもしれません。そのような新たな批判に、なぜ私が直面する必要があるのでしょうか。情報の面で優位な上に弁の立つ批判者からの追及を待ち望む人など、いったいどこにいるのでしょうか。

第三に、わが考察を披露した長き改訂版が、私に対して好意を持つまいと過去に心を決めた人たちから、必ずや批判を受ける点です。表現面や本質的な面に対する反論もあるでしょうが、そのほかにもあるでしょう。一介の老人が「伝統的な知恵にはろくに目を向けない態度を示す一方で、自分がなにひとつ受講したことのない教科に登場する話題を『まくし立てる』」姿に対して、傲慢とみる見解です。ハーバード・ロースクール時代からの旧友であるエド・ロスチャイルドは常々、そのようにまくし立てる心情を「靴用ボタン・コンプレックス」と呼んでいました。家族関連の知り合いが、靴用ボタンの事業で優勢的な地位を占めた後になってから、あらゆる話題を予言的に話していた様子にちなんで付けた呼び名でした。

第四に、私自身が間抜けぶりをさらしてしまう可能性がある点です。そういった非常に憂慮すべき4つの点があるにもかかわらず、以前の文章を拡充した版を発表することに決めました。私が何十年間にわたって成功を収めることができたのは、仕事やその方策において失敗する可能性が低い行動だけに限定してきたからこそと言えます[参考文献]。しかし今や私は、これから歩む道を選択しました。重大な個人的便益が得られることはなく、家族の一員や友人には確実に痛みをもたらすと共に、みずから醜態をさらしかねない道をです。それでは、なぜそのような道を歩むのでしょうか。

(つづく)

The Psychology of Human Misjudgment
Selections from three of Charlie's talks, combined into one talk never made, after revisions bv Charlie in 2005 that included considerable new material.

PREFACE

When I read transcripts of my psychology talks given about fifteen years ago, I realized that I could now create a more logical but much longer "talk," including most of what I had earlier said.

But I immediately saw four big disadvantages.

First, the longer "talk," because it was written out with more logical completeness, would be more boring and confusing to many people than any earlier talk. This would happen because I would use idiosyncratic definitions of psychological tendencies in a manner reminiscent of both psychology textbooks and Euclid. And who reads textbooks for fun or revisits Euclid?

Second, because my formal psychological knowledge came only from skimming three psychology textbooks about fifteen years ago, I know virtually nothing about any academic psychology later developed. Yet, in a longer talk containing guesses, I would be criticizing much academic psychology. This sort of intrusion into a professional territory by an amateur would be sure to be resented by professors who would rejoice in finding my errors and might be prompted to respond to my published criticism by providing theirs. Why should I care about new criticism? Well, who likes new hostility from articulate critics with an information advantage?

Third, a longer version of my ideas would surely draw some disapproval from people formerly disposed to like me. Not only would there be stylistic and substantive objections, but also there would be perceptions of arrogance in an old man who displayed much disregard for conventional wisdom while "popping-off' on a subject in which he had never taken a course. My old Harvard Law classmate, Ed Rothschild, always called such a popping-off "the shoe button complex," named for the condition of a family friend who spoke in oracular style on all subjects after becoming dominant in the shoe button business.

Fourth, I might make a fool of myself. Despite these four very considerable objections, I decided to publish the much-expanded version. Thus, after many decades in which I have succeeded mostly by restricting action to jobs and methods in which I was unlikely to fail, I have now chosen a course of action in which (1) I have no significant personal benefit to gain, (2) I will surely give some pain to family members and friends, and (3) I may make myself ridiculous. Why am I doing this?

蛇足ですが、チャーリーがなにかを説明するときには、冗長とも思える前振りを語ります。もちろんそれには理由があって、そのひとつが過去記事「<旧約>誤判断の心理学(24)他人に何かを頼むとき」で示されていると思います(再帰的なリンクになっている点にご注目を)。

2018年9月16日日曜日

2018年バークシャー株主総会(17)若きバークシャー株主諸君に告ぐ

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答からおなじみの話題、「バフェット以後」についてです。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

22. マンガーいわく、「我らが立ち去った後でも、心を移さず、株を売らぬべし」

<ジョナサン・ブラント> いいですか。

<キャロル・ルーミス> わたしの番を飛ばしていますよ。

<ウォーレン・バフェット> ええと、キャロルを飛ばしましたか。

<キャロル> そうです。

<ウォーレン> それはすみません。

<キャロル> いいですよ。

<ウォーレン> はい、それではお願いします。

<キャロル> この質問は軽い話題ではないと思います。モントリオールのギデオン・ポラックさんからの質問です。

彼はこう訊ねています。「1965年にあなたが指揮をとり始めてからバークシャー・ハサウェイの様相が変わったことは、世間が広く認めるところだと思います。当時のバークシャーは北東部で織物を製造する会社でした。それが今では、フォーチュン500のうちの第4位に位置する企業となりました。

「それでは、これからの50年間ではどうなるのでしょうか。2068年までのバークシャーはどのような姿をしているか、ご意見を披露していただけますか」。

<ウォーレン> それはずいぶん先のことだと思います(笑)。

残念ですが、わたしにはわかりません。50年前のときにも、今のようになっているなどわかりませんでした。

つまり、ある種の原則に従っていくとは思います。しかしそのころには、わたしとは違った考えをする人たちを見つけだして、会社を任せていると思います。また世の中も違っていることでしょう。

ただし、「世界中のどの大企業に劣らず、株主のことを考える企業」であってほしいとは強く願っていますし、そうなるに違いないと思います。株主をパートナーとして扱うでしょうし、自分たちを利するものとして会社の資金を使おうと考えるのではなく、自分の資金とまったく同じように使うことを心がけると思います。それ以外のことがどうなるかは、知るすべはないでしょう。

チャーリーはどうですか。

<チャーリー・マンガー> 私からは、若手の株主諸君に申し上げたいですね。我々が消え去った後に、さまざまな友人からの導きにしたがって、みなさんがバークシャー株を売却し、別のものに取り組むのであれば、そのほうが悪い結果につながると思いますよ(笑)。

ですから、「そのまま信頼せよ」と申し上げましょう(拍手)。

まあ、すでにそうしてしまったご家庭も数多くあるでしょうが。

<ウォーレン> みなさんからこれほど称賛されたのですから、次からはわたしも彼と同じように答えることにします(笑)。


22. Munger: Keep the faith and don’t sell your stock when we’re gone

WARREN BUFFETT: Jonathan?

JONATHAN BRANDT: Hello ?

CAROL LOOMIS: You skipped me.

WARREN BUFFETT: Did I skip ? I skipped Carol?

CAROL LOOMIS: Yup.

WARREN BUFFETT: Oh. I’m sorry.

CAROL LOOMIS: OK.

WARREN BUFFETT: OK.

CAROL LOOMIS: This question, and I would concede it is not a small one, comes from Gideon Pollack of Montreal.

He says, “The world knows generally how the looks of Berkshire Hathaway have changed since you began to run the company in 1965. Berkshire was then a tiny northeastern, textile company. And now it is the number-four company on the Fortune 500.

“What about the next 50 years? Could you give us your view of what Berkshire looks like in 2068?”

WARREN BUFFETT: I think it’ll look a long way away. (Laughter)

No, the answer is I don’t know. And I didn’t know, 50 years ago, what it would like now, I mean -

It will be based on certain principles. But where that leads, you know, we will find out and we’ll have people that are thinking about different things than I am. And we’ll have a world that’s different. But -

We will be - I very much hope and believe that we will be - that we’ll be as shareholder-oriented as any large company in the world. We will look at our shareholders as partners and we will be trying to do with their money exactly what we’d do with our own, not seeking to get an edge on them. And who knows what else will be happening then?

Charlie?

CHARLIE MUNGER: Well, I want to talk to the younger shareholders in the group. Those of you who, after we are gone, sell your Berkshire stock and do something else with it, helped by your many friends, I think are going to do worse. (Laughter)

So I would advise you to keep the faith. (Applause)

By the way, some of that has already happened in many families.

WARREN BUFFETT: I’ll give his answer next time now that I see it get all of that applause. (Laughter)

ウォーレン以降のバークシャーがどうなるのか。以下の過去記事ではチャーリーがその予想を披露しています。

2014年度マンガーからの手紙(4)ウォーレン・バフェットが去った後

2018年9月12日水曜日

中国が米国にもたらした、ささやかで劇的な日常(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーのインタビューのつづきです。今回は質問者が投げかけた下世話な問いに対して、チャーリー・マンガーは直接的には答えず、そのかわりにコスモポリタニズム的な話題を展開しています。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

なお文中に登場する著作『プーア・チャーリーの暦(Poor Charlie’s Almanack)』は、チャーリーの主要な講演をまとめた本です(ほかに、チャーリーに関連する文章も掲載されています)。ご存知とは思いますが、本ブログでは同書に含まれる全講演を訳出してあります。それらの記事に関する目次は以下のとおりです。ただし「講演その11: 誤判断の心理学(Talk 11: The Psychology of Human Misjudgment)」は抄訳にとどめていたため、遠からず全訳に取り組むつもりです。

(目次)チャーリー・マンガーの主要記事

<質問者> バークシャーの年次総会に参加するために、今年は1万名を超える中国人がオマハにやってきました。総会では中国に関する話題がよく取り上げられています。マンガーさんのお話しでは、「中国の将来は非常に明るく、中国での潜在的な投資先をこれまでに探してきた」とのことでした。それでは、現在の中国は投資環境の面でどういった時期にあるとお考えですか。現在の中国市場は、ちょうど米国市場の1973年や1974年、あるいは1982年のような段階でしょうか。また中国で物色されているのは、どの領域のものでしょうか。

<チャーリー・マンガー> 実に奇妙な事態だということは承知していますよ。ニューヨーク・タイムズ紙からは、「なぜバークシャー・ハサウェイやチャーリー・マンガーが、かの人々に人気があるのか」という質問を受けました。例の書物『プーア・チャーリーの暦(Poor Charlie’s Almanack)』のせいもあるでしょうが、それではなぜ中国人はあの本を好むのでしょうか。その答えは儒教を感じさせるからだと思いますね。中国には儒教の教えが深く根差しています。裕福だったり権力を有していたとしても、礼節を重んじることが要求されます。絶えず学ぶことを忘れず、品格と分別をもって行動することを良しとします。年を経てさらに充実し、働き続けるわけです。そういった教えはひとつの国に限定されはしませんが、おどろくべきことにウォーレン・バフェットや私が、儒教的な価値観を重要視してきたさまざまな人たちと同じように振舞ってきたのも事実です。

それから、ウォーレンや私が実のところ中国人を好んでいる、という理由もありますよ。もちろん人間とは自分を好む相手のことを好むものです。それでは、なぜオマハの二人組が中国人をひいきにするのだと思いますか。実は、多くの中国人が理解していない点があるのですね。米国人という観点から中国をながめると、こんな感じになるのですよ。中国人がはじめてやってきたころ、ここではシエラネバダ山脈を越える大陸横断鉄道を敷設しようとしていました。冬のさなかにひどい山道を通って険しい山々を越えようとする仕事で、だれにも果たせませんでした。不可能でした。人々が死に至ったのも、ひどく難事業だったからです。そこで、1万5千人ほどの中国人労働者が呼ばれました。当時の彼らは奴隷も同然でした。その労働者を冬季の山へと送り込み、鉄道を敷設するように言い渡しました。すると彼らは成し遂げたのです。アメリカ人だけでは成し得なかったことをです。もちろんそのことが非常に好ましい印象を残しました。そして月日は流れ、現在はアジアからの移民がたくさんやってきています。そういったアジア出身の人たちが米国で何を成し遂げたでしょうか。アジアからやってきた人たちは早々に、医者や法律家、学者、事業家などになりました。目ざましい成功をおさめました。以前の交響楽団をみれば、中国人は含まれていなかったものです。しかし今日では、練習をしている人たちをながめたときに、難易度の高いあらゆる楽器をうかがえば、そこには中国人の顔がみられます。この国で大きな成功を収めつつある人には有名な人たちもおり、当然ながらそのことは大きな問題とはなっていません。ですから、我々が中国人を好むのも当たり前と言えるわけです。

私が思うに、中国本土で暮らす普通の人たちは、米国でうまくいっている中国のイメージがどのようなものかを理解していませんね。これから極端な話をしますが、だれも想像していなかったでしょうし、だれも口にしたことがないことです。それというのも、かつて中国ではひどい貧困が続きましたし、人口が多すぎました。そこで、アメリカ人の夫婦が子宝に恵まれなければ、中国へおもむいて非常に貧しい家庭から中国人の女の子を養女に迎えることができました。ほどなくすると、米国における主要なあらゆる都市の人たちは、遠い中国の農地で産まれた望まれぬ女の子を引き取ってきたことで、「良い赤ちゃんを迎え入れた」と考えるようになりました。そういった赤ん坊は平均してみると、米国人の子供たちよりも健全に成長していきます。だから養子を欲しがる人たちはだれもが、米国の子供を欲しがらないのです。彼らが求めるのは中国人の女の子です。ことごとく立派に育ったからですね。中国本土の人たちは、それがどれだけ極端なことだったのか理解していません。米国におけるあらゆる町で起きてきたことなのですよ。米国のあらゆる私立学校では、中国の田舎から棄てられた女の子たちであふれています。彼女たちが取る成績はオールA、そのうえ表彰も受けています。当然ながら、このことは良い印象をもたらしました。全米でみられる、実に劇的なできごとですよ。

Question: There are more than 10,000 Chinese who came to Omaha to attend this year’s Berkshire’s annual meeting. China is a focus among those topics. Mr. Munger mentioned that the future of China would be very bright and you had already looked for potential targets in China. What kind of investment environment period is China now in? Is China’s market like the U.S. market in 1973, 1974 or even 1982? And what areas have you looked at to find your potential targets in China?

Munger: I know it’s very peculiar, and The New York Times asked me why are these people so interested in Berkshire Hathaway and Charlie Munger. Partly the book ("Poor Charlie’s Almanac"), yes, but why do the Chinese like the book? I think the answer is it sounds Confucian. China has a deep Confucian ethos. They want people to act modestly even though they are rich and powerful. They want people to constantly keep learning and behave with dignity and reason, and improves as they get old and keep working. Those lessons are not confined to one country. But it just happens that Warren Buffett and I act like much of the people who take Confucianism very seriously.

The other reason is that Warren and I really like the Chinese. And of course everybody likes people who like them. Now you say, why have the Chinese got so popular with the couple of Omaha boys? There’s something that a lot of Chinese don’t understand. If you look at China with a viewpoint of a U.S. citizen, here is what you see. The Chinese first came in here, trying to build the Sierra, the trans-continental railroad, in the winter through horrible passes in the steep mountains. Nobody could do it. It was impossible. They were dying and it was just too hard. So they brought in like 15,000 Chinese labors, who in those days were practically slaves, and they took those labors to the mountains in the winter and said you build the railroad. And they did. And the Americans couldn’t do it by themselves. That of course made a very favorable impression. While fade in fade out, now we have Asians immigrants. What have those Asians done in America? Well they come in and rapidly become doctors, lawyers, professors, businessmen and so forth, and succeeded mightily. If we go to a symphony orchestra, which used to have no Chinese. Every instrument that’s hard to play, and pick someone that are doing practice, you look up the instruments, there’s a Chinese face. Of course we find people popular who are succeeding so much in our country and not causing a lot of troubles. So naturally we like the Chinese.

And I don’t think the ordinary person on mainland China understands what an image of success China has in the United States. And the most extreme thing of all, nobody could have anticipated and nobody ever talks about it, it’s because there was so much poverty in China and it was so overpopulated, if an American couple were unable to have children of their own, they can always go to China and adopt a Chinese girl of a very poor family. So in every important city of America, people soon learned they got better babies, taking the unwanted Chinese girls from the remote Chinese farms. Those babies on average work out better than their own children. So everybody if they want to adopt a child they don’t want an American child. They want a Chinese girl. And of course all those girls worked out well. And most people in China don’t realize how extreme that’s been. That’s happened in every American city. Every American private school is full of the discarded Chinese girls from the Chinese countryside. They are getting all As and winning prizes. Of course they made a favorable impression. It’s just dramatic it’s all over America.

2018年9月4日火曜日

投資先は3つ(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーのインタビューのつづきです。ひとつめの話題は彼の投資先についてです。おなじみの話題ながらも、これまた最重要な投資哲学を体現しています。もうひとつの話題は読書についてです。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問者> マンガーさんが生涯を通じてもっとも満足した投資とは何ですか。また、いちばん悔いの残った投資は何ですか。

<チャーリー・マンガー> バークシャー・ハサウェイ株は1株につき16ドルで買いましたが、今では30万ドル近くで取引されていますね。非常に優れた投資先でしたよ。長い期間にわたりましたが、長期的な視点にたった投資でしたからね。投資をともにする仲間は好ましい人たちですし、投資した各社も気に入っています。同社に資金を据えたきりで50年以上になりますが、驚くなかれ、実にうまくいきました。その手の話はほかにもいろいろありますよ。リー・ルーと組んで中国に投資してきましたが、一体何だったか、13年あるいは15年だったか、さまざまな証券を買いましたが、売ったものはほとんどありませんね。失敗した投資はそれほど多くはなかったですよ。少しはありましたが、多くはありませんでした。まずい投資先をあれこれと抱えていたりはしませんね。マンガー家で保有している株式は、基本的には3つです。バークシャー・ハサウェイとコストコ、もうひとつがリー・ルーの運営しているパートナーシップです。齢95になる私の保有しているのが、3種類ですよ。金持ちになるために、あれこれと違ったものを保有する必要はないですね。

Question: Mr. Munger, what is your most satisfactory and what is your most unsatisfactory investment in your life time?

Munger: My Berkshire Hathaway stock cost me $16 a share, and it’s now selling for almost $300,000 a share. That’s been a very good investment. It took a long time, and it was a long-term investment. I like the people I was investing with and I like the companies I was investing in. I just sat there for more than 50 years and low and behold it’s worked out really well. And there are lots of stories like that. Li Lu and I have been investing together in China for what? Thirteen years or 15 years? And we have bought a lot of securities and we sold very few. I’ve not made very many bad investments. There have been small ones but not very many. I don’t have many bad investments. Basically the Mungers have three stocks - Berkshire Hathaway, Costco and Li Lu’s partnership. Well along my 95th years, three things. You don’t need to own different things to get rich.

<質問者> 1年間で何冊の本をお読みになりますか。どんな分野の本を読まれますか。

<チャーリー> 流し読みする本と、きちんと読む本を合わせて、毎週20冊読んでいますね。伝記をたくさん読みますし、歴史も読みます。ほとんどがノンフィクションですよ。

Question: How many books do you read every year and what subjects are they?

Munger: I either skim through or read through 20 books week. I read a lot of biographies, and some history. I read almost no fiction.

2018年8月20日月曜日

中国市場の未来は明るい(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーのインタビュー、前回分の投稿のつづきで、長期投資の話題です。赤字で強調した部分では、最重要な哲学にさりげなく触れています。(日本語は拙訳)

<質問者> かつてあなたは「誤った現象ばかりに投資家は目を向けている」とおっしゃいました。そのことについて、どう考えるべきなのでしょうか。真実とはどこにあるのでしょうか。真実にたどりつくにはどうすればいいのでしょうか。

<チャーリー・マンガー> 「市場には真実がある」と考える人が数多くいますね。「値段が動くことで、まさしく市場はなにかを訴えたがっている」と。しかし、バークシャー・ハサウェイやチャーリー・マンガーという人間は、資金を投じる際にそんな風には考えませんよ。我々が思い描くのは、その本源的価値がどれぐらいかであり、なにが取引にあがっているかです。そして「支払う金額以上に価値がある」と思えるときだけ買います。ですから我々は、割安になるのを待ちつづけ、そうなったときに買うことで、長期的な投資ができるように心がけているわけです。市場にいるあらゆるギャンブラー諸氏の様子に、目をやることもありません。私からすれば、彼らは泡沫にまみれていますね。そんな風にして金持ちになろうとするのは、愚かな時間の使いかたですよ。

<リー・ルー> 「真実とは、企業自体が持つ本来の価値である」と彼は答えました。これを理解することによってのみ、本当の儲けをあげることができます。価格の上下動だけを気にかけ、それらの変動に基づいて関連の投資をして儲けをあげるのは、非常に愚かな行動だというわけです。

<質問者> 中国では多くの投資家が、あなたやバフェットさんやリー・ルーさんを崇拝しています。それでは、まだ30年間の歴史しかない中国の資本市場が、御三方のような投資の達人を「生みだす」までに、どれほど時間がかかり、どのような条件が必要とされるでしょうか。

<チャーリー> 中国の市場は、投資で成功する者を数多く生みだしていくと思いますよ。中国人に満ちた香港は、投資家秩序に基づいた優れた証券市場と調和してきました。そのありようは今後何十年にもわたって中国本土全体にも広がり、信認の度合いを深め、規模を増大させていくでしょう。中国の証券市場や投資の取り組みは、長期間にわたって改善されていくと思いますね。当然ながら変動はあるでしょうが、しかし長期的な趨勢としては、ますます発展し、信頼を集め、価格も上昇していくことでしょう。

<リー・ルー> そちらの質問そのものに対する答えではないですが、「投資の達人は必ずや現れる」と彼はおっしゃっています。中国市場が、少しずつ良くなっていくだろうとも。

<チャーリー> 香港の中国人はこの50年間で金持ちになりましたね。彼らは短期志向の投機家やギャンブラーではなく、長期のうまい投資先をさがし求めた長期志向の投資家でした。投資先を手放さずに長期にわたって頑として保有しつづけました。香港在住の中国人を評したように、中国本土に対しても一言申し上げたいですね。成功するのは短期志向のギャンブラーではないと。長期で投資できるうまい対象を見出し、堅持しつづけることです。長期間にわたって、ですよ。

<リー・ルー> 香港における例は、中国の未来もうまく描いているかもしれません。大儲けできる人とは、当然ながら長期志向の投資家であり、短期志向のトレーダーではないでしょう。

(つづく)

Question: You said before most of what investors see are false phenomena. How should we think about that? Where is the truth then? How can we get to the truth?

Munger: A lot of people think there is such a thing it’s the truth in the market. And market tells you something just by bouncing around. That is not the way Berkshire Hathaway or Charlie Munger invests money. We have a view as to what the intrinsic value is and what is being traded. And we only buy it when we think it’s worth more than we are paying. So we are trying to make a long-term investment by waiting for something to be underpriced and then buying it. And we don’t give a damn about all those gamblers in the market. To me they are so much froth. It’s a foolish way to spend your time if you want to get rich that way.

Li Lu: He answered what the truth is - it’s the real value of the company itself. Only by understanding this can we really make money. For those who only care about price fluctuations and make relevant investments based on such fluctuations, making money this way is a very stupid action.

Question: In China, many investors regard you, Mr. Buffett and Mr. Li Lu, as their idols. Could you talk about how much time it would take the Chinese capital market, which only has 30 years of history, and under what conditions would the Chinese capital market “produce” investment masters like you three.

Munger: Well the Chinese market is going to create a lot of successful investors. If you look at Hong Kong, which has been full of Chinese people, meshed in a capitalist order with good securities market. That is going to spread all over China and increase in respectability and size for decades ahead. I anticipate the Chinese securities market and investing practices will get better and better for a long, long time. There will be fluctuations to be sure, but the long-term trend will be toward more achievement and more respectability and higher prices.

Li Lu: He didn’t answer your question directly, but he’s saying some investment masters will definitely appear. The Chinese market will get better step by step.

Munger: The Chinese, who’ve got rich in Hong Kong over the last 50 years, are not the short-term traders and gamblers. These have been the long-term investors who’ve sought out good long-term investment and stubbornly held them for a long period of time. And just as I said words for the Chinese in Hong Kong, a little words for the Chinese on the mainland. It’s not the short-term gambler that’s good. It’s identifying the good long-term investment and sticking with it. For a long term.

Li Lu: The example of Hong Kong can also reflect well the future of China. Those who will make big money undoubtedly will be the long-term investors, rather than short-term traders.

2018年8月12日日曜日

中国人と長期投資について(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーが中国系メディアによるインタビューに応じた記事がありましたので、ご紹介します。今回取り上げる話題は最重要な教えのひとつ、長期投資についてです。引用元は何度かご紹介しているGuruFocusです。なおインタビューの同席者として、チャーリーが個人的な資産の一部を運用委託しているマネージャー、リー・ルー氏も登場してきます。(日本語は拙訳)

Rare Charlie Munger and Li Lu Interview - Part I (GuruFocus, Grahamites氏の記事)

<質問者> 最初の話題として、プロの投資家はどのようにすれば適切な投資哲学を持てるかについてお聞きしたいと思います。「投資とは良き機会を見つけることにあり、その上で我慢強く長期間保有すべし」とはあなたが主張なさっている言葉ですが、中国にも「十年一剣を磨く」[唐代の詩人、賈島]という言葉があります。その原則を承知しているプロの投資家は大勢いるものの、辛抱が長い期間にわたって続くことはなく、ひいては実入りの少ない投資へと陥っています。そこでお聞きしたいのは、ご自身の見解に従って、どのようにみずからを処しておられるのでしょうか。

<チャーリー・マンガー> それは、もしカジノでギャンブルに興じるかのように投資をするのだとしたら、良い結果はまるで残せないでしょうね。いちばん成功できるのは長期投資ですよ。しかし投資という活動を好きこのむのであれば、つまりカジノでギャンブルをするかのように、ときには儲けてときには損をするといったやりかたをするような人たちは、我が慈しむ人ではないですね。私の好みは長期投資家ですよ。長い期間をかけて物事が成しとげられていくことを理解している人たちです。中国人は賭けごとを減らしてもっと長期にわたって辛抱強く投資すれば、優れた成果を早々にあげられるようになりますよ。

<質問者> あなたは、「辛抱とは投資に不可欠なものであり、持って生まれた性質である」とも発言されています。それはつまり、辛抱強く生まれなかった人は投資をすべきではないということでしょうか。

<チャーリー> この世には愚かしいギャンブラーばかりいますが、彼らが辛抱強い投資家のような結果をあげることはないでしょうね。「辛抱」とは学んで身につく部分もあれば、生まれつきの部分もあります。米国には「集中力持続」という言葉があります。その力を持つ者は、答えを出すまでに長期間かかるゲームや行動において、精神を集中させることができます。中国人も集中力を保ってものごとを進めていますね。それは並はずれて好ましい性質ですよ。というのは、長い時間をかけて物事を深くかつ厳しく考えるほどに、正しい答えへ到達できるからです。そのように集中力をうまく持続させられる人たちが、賭け事にのめりこむのは奇妙なことですね。実に非生産的ですよ。

(つづく)

Question: Let’s start with how professional investors set up the right investment philosophy. You have emphasized that investment depends on finding good opportunities and holding for the long term with patience. In a Chinese saying: It takes 10 years’ time to sharpen one's sword. Although many professional investors know this principle, they fail in being patient in spending long time. This leads to fruitless investment. So how do you make your actions be in accordance with your notions?

Munger: Yes, well if you invests the way people gamble in casinos, you are not gonna do very well. So it’s the long-term investment that works the best. But if you like the action of investing, sometimes winning some losing, just like the action when they gamble in the casino. Those people are not my people. I like the long-term investors who figure out something is going to work over the long term. The sooner the Chinese people gamble less and invest patiently for the long term more, the sooner they will do better.

Question: You also mentioned that patience is necessary for investment and patience is a born characteristic. Does that mean if a person is not born with patience, he or she shouldn’t be investing?

Munger: The world is full of foolish gamblers. They will not do as well as the patient investors. I think patience can be learned to some extent and to some extent you are born with it. There’s a saying in American they call a long attention span. They can keep their mind on a game or an activity for a long time until they’ve solved it. And the Chinese do have a long attention span, and that is hugely desirable quality because you are more likely to get the right answer if you think deeply and hard about the subject for a long time. And it’s odd that people who are so good at having a long attention span like to gamble so much, which is quite counterproductive.

2018年5月12日土曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(10)なおす術はわからない

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デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答、前回の話題だった「企業文化」のつづきです。(日本語は拙訳、意味段落での改行追加あり)

(1:41:04)

<チャーリー・マンガー> 所属する組織の規模が大きくなり、複雑さが増すにつれて、つまりはGM社やAT&T社のような文化と言えますが、非常に難しい問題になりますね。大企業では多かれ少なかれ同じように、非常に官僚主義的になっています。「きわめて官僚的である」、これがお決まりの社風ですよ。もちろん政府でもそうで、巨大な政府組織では官僚主義が生じています。官僚主義というものはさまざまな間違いを起こしますから、基本的には好かないですね。だからといって、そのかわりを私が示せるわけではありません。これまで以上に連邦政府をうまく運営する方法も知りません。私自身の見解として巨大な官僚的文化は基本的に好きになれないので、それゆえ深く考えることもないのです。官僚主義を大幅に修正する方法など、私にはわかりません。「従業員が100万人もいる企業の文化を変えてほしい」と任されても、私には地獄行きを宣告されたも同然ですよ。レストラン1軒の文化を変えることでさえ、容易ではないです。すでに官僚主義的な文化に染まった場所を、どうやって非官僚的に変えればよいのか、実に難しい問題だと思いますね。

バークシャーでは官僚主義の問題を解決するために最善を尽くしてきました。そうです、本社自体が存在しなければ、本社的な官僚主義などそんなに生じようがないですから(笑)。それが我々のとったシステムです。しかしそのようなシステムができあがったのは、我々が天才だったとか英明だったとか、そういうわけではないですよ。たまたまそうなった部分もあったのです。しかしそのやりかたがうまくいくとわかってからは、ずっとそうしてきました[過去記事]。しかし巨大な組織の企業文化を正す方法は、私にはわかりませんね。

But the minute you get into the bigger and more complicated places…I mean you can talk about the culture of General Motors or the culture of AT&T, it’s a very difficult subject. What big businesses have in common by and large is that they get very bureaucratic. That’s the one norm in culture is that they get very bureaucratic. And of course it happens to the government too. A big governmental body. And basically I don’t like bureaucracy, it creates a lot of error. I don’t have a substitute for it. I don’t have a better way of running the U.S. government than the way they’ve been doing it. But I basically don’t personally like big bureaucratic cultures and so I don’t think very much about big bureaucratic cultures. I don’t know how to fix bureaucracy in a big place. I would regard it as a sentence to hell if they gave me some company with a million employees to change the culture. I think it’s hard to change the culture in a restaurant. A place that’s already bureaucratic, how do you make it un-bureaucratic? It’s a very hard problem.

Berkshire has solved the problem as best it can…of bureaucracy. You can’t have too much bureaucracy at headquarters if there’s no bodies at headquarters. (laughter) That’s our system. I don’t think it arose because we were geniuses or anything. I think partly it was an accident. But once we saw what was working, we kept it. But I don’t have a solution for corporate culture at monstrous places.

2018年5月8日火曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(9)我が麗しきコストコよ

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デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答、今回の話題は企業文化です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

(1:39:16)

<質問29> 社風についておうかがいします。ある企業の社風を部外者の立場から、本当に知ることができるものでしょうか。それと同様に、組織における上層部の人間が、配下の者たちが抱く企業文化について、本当に確信できるものでしょうか。また、ウェルズ・ファーゴ社やGE社のような巨大企業の文化を評価する上で、どのようになさっていますか。文化を理解するのに有用だと考えていらっしゃるものには、何がありますか。

<チャーリー・マンガー> コストコ社のような企業の末端でどのような社風が根付いているか、みなさんもよく知っておられるでしょう。そこまで至った企業文化とは、広大かつ前向きな活力を有していますね。これからもずっと長きにわたって継続すると思いますよ。

しかしGEを調べてみると、非中央集権的な部分もあれば、そうでない部分もあります。単一のビジネスではなく、複数のビジネスを営んでいるからですね。これはかなり複雑な問題になりますよ。事業内容があれほど激しく異なってしまうと、いったい何がGEの文化だと言えるでしょうか。おそらく本社は、ある種の文化を有していることでしょう。その文化は、えてして誤った方向へと進むものです。ある事業から別の事業へと人材をできるだけ異動させるやりかたは、私が思うにずばり間違いですね。

コストコのように、並外れた文化をだれもが受け入れている企業は、きわめて稀です。そして彼らはその文化のもとで、ただひとつの基本的事業にまったくもって留まっています。彼らの有する強靭な文化が正しければ成果がどれだけ得られるのか考えたからこそ、コストコのような企業に心惹かれるわけですよ。

(次回に続く)

Question 29: Questions about culture. How can an outsider really know a company’s culture? And for that matter, how can an insider, at the top of an organization, really be certain about the culture of the company beneath him? And how would you go about assessing the culture of giants like Wells Fargo or General Electric? What is it that you look at that helps you understand culture?

Charlie: Well, you understand culture best where it’s really down (low) in a place like Costco. And there the culture is a vast and constructive force. Which will probably continue for a very, very long time.

The minute you get into General Electric, partly decentralized, partly not. Multi-business instead of one business. It gets very complicated. What is the culture of General Electric when the businesses can be so radically different? Maybe headquarters can have a certain kind of culture. And maybe the culture will be a little wrong. And maybe it’s wrong to shift people around from business to business as much as they do. Which I strongly suspect.

I do think…there are very few businesses like Costco that have a very extreme culture where everybody’s bought into. And where they stay in one basic business all the way. I love a business like Costco because of the strong culture and how much can be achieved if the culture is right.

備考です。チャーリーというよりもウォーレン・バフェットの件ですが、Twitterでご紹介したように、バークシャー・ハサウェイ株主総会の映像記録がCNBCのサイトで公開されていました(お世話になっている某サイトで紹介されていたのを見て、はじめて知りました)。1994年以降のものが収録されているので、天井と底が2組分ありますね。

Berkshire Hathaway Annual Meetings (CNBC)

上位にあたるサイトはこちらです。

The definitive collection - Buffett in his own words (CNBC)

2018年5月4日金曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(8)人工知能について

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前回につづいて、デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答です。「知恵のかたまり」とも言えるチャーリーが、人工知能について語ります。(日本語は拙訳)

<質問28> 人工知能(AI)は、社会に対してインターネット革命以上に大きな影響をもたらすと思われます。それでは、AIは各種業界に対して概してどのような影響を与えるか、また人類の将来に対してどのような影響を与えるのか、ご見解をお聞かせいただければ幸いです。

<チャーリー・マンガー> これはいい質問ですね(笑)。人工知能を研究している人たちは実際のところ、その質問に答えられないと思いますよ。私自身は、それほど多くは学び得られないと思って、人工知能のことは勉強していません。Facebook社やGoogle社ではAIがマーケティングの一環として機能しているのはわかります。だから、ある領域ではうまく機能するのでしょうね。しかし、この主題は実に複雑ですよ。正確にどうなっていくのかは、私にはわかりません。わが人生では、体系化した常識を用いるだけで相当うまくやってきました。ですから、人工知能のような領域に足を踏み入れたいと考えたことはないですね。水辺を探し回って小さな金塊を拾えるとすれば、それが可能な限りは、わずかな優位を得んがために沖積漂砂鉱床へ出向いて、莫大な量のデータをふるいにかけたいとは思いませんよ[=砂金採りの意に引掛けている。過去記事]。つまり、質問する相手をまちがっています。AIがどれほどすごいものなのか、私には自信をもって言い切れません。「AIがまちがいなく経済面での革命を起こす」とは思えないのです。これまで以上に利用されるのはたしかだと思いますが、AIを使うことによって世界で最高の大成功者になれるかどうかは、どんなものでしょうかね。人工知能がうまく働く領域はあるのでしょうが、我々もガイコ社(GEICO)で相当な時間にわたって導入を検討してきたものの、いまだに昔ながらの情報や工夫でやっています。ですから私の知っているのはここまでで、もうこれ以上は語れないのですよ。

Question 28: It looks like the A.I. will have a much bigger impact on society than the internet revolution, so would you mind maybe sharing some of your thoughts on how artificial intelligence will impact different industries in general and who [errata?] it will impact the future of the human race?

Charlie: Well, that’s a nice question. (laughter) The people who studied artificial intelligence don’t really know the answer to that question. I’m not studying artificial intelligence because I wouldn’t be able to learn much about it. I can see that artificial intelligence is working in the marketing arrangements of Facebook and Google, so I think it is working in some places very well. But it’s a very complicated subject. And what its exact consequences are going to be, I don’t know. I’ve done so well in life by just using organized common sense, that I never wanted to get into these fields like artificial intelligence. If you can walk around the shores and pick up boulders of gold, as long as the boulders keep being found and picked up, I don’t want to go to the placer mining sifting vast amounts of data for some little edge. So you’re just talking to the wrong person. And I’m not at all sure how great…I don’t think artificial intelligence is at all sure to create an economic revolution. I’m sure we’ll use more of it, but what are the consequence of using artificial intelligence to become the world’s best (golden boy)? There may be places where it works, but we’ve thought about it at Geico for years and years and years, but we’re still using the old fashion intelligence. So I don’t know enough about it to say more than that.

備考です。デイリー・ジャーナル社ではなくバークシャーの話ですが、明日5月5日は株主総会の開催日です。例によって、Yahooのサイトで実況放映されるとのことです(日本時間はPM10:45より)。

Berkshire Hathaway 2018 Annual Shareholders Meeting Livestream (Yahoo! Finance)

2018年4月28日土曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(7)保険会社はつらいよ

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前回につづいて、デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答です。(日本語は拙訳。意味段落での改行追加あり)

(1:25:32)

<質問23> おはようございます、バフェットさん...いや、マンガーさん。

<チャーリー・マンガー> 「バフェット」と呼んでくださるとは、これは光栄の至りですね(爆笑)。

<質問者> バークシャーが出した最新の年次報告書では、これまでと同様に簿価の変遷が記されています。52年間で19ドルから17万2千ドルへと増加しており、年率にすると19%の成長になります。それでは、この並外れたパーセントにおける大きな割合が、保険事業によってもたらされたレバレッジによるものなのでしょうか。保険会社を使って投資資産を保有できるおかげで、たとえば14%のリターンをあげることで、簿価の20%増へとつながるのでしょうか。

<チャーリー> バークシャーの数字には、あきらかにレバレッジが若干埋まっていましたね。それを保険事業がいくらか供したのも明白です。だからといって、すっかり埋まっていたわけではなかったですよ。それが役立った年もありましたし、困ってしまうほどの大量の資金をアジート[・ジェイン]がもたらしてくれた年もありました。彼はその資金をウォーレン[・バフェット]へ回し、ウォーレンが20%増やしたという顛末です。ですから、保険事業とバークシャー・ハサウェイの間で目を瞠るような相乗効果の生じた年が、何度かあったわけです。

しかし基本的には、保険という事業はたやすく儲けられる道ではないですよ。かの商売には危険や困難が多々ありますし、こうして座っている間にも刻々と競争が激しくなっています。バークシャーが成功できたのは、大きな失敗をほとんどおかさなかったからです。大間違い、そう実に大きなものはなかったですね。そして成功のほうは、かなりありました。我々が成果をあげた頃とくらべると、現在の状況下でそれらすべてを果たすのは、相当むずかしいことでしょう。50年間を通して年率19%の成長を遂げる企業など、きわめて稀ですよ。まったくもって、純資産がですよ。実に珍奇なことです。そんなことが再びすぐに起こるとは思えませんね。デイリー・ジャーナル社で起こるなど、絶対ありえないですよ。

Question 23: Good morning Mr. Buffett…Mr. Munger.

Charlie: I’m flattered to be called Mr. Buffett. (laughter)

Question 23 Continued: The most recent annual report for Berkshire, as in the past reports, the growth in book value was shown and over the past 52 years it has grown from $19 to $172,000. Which represents a return of 19% a year. Is a large part of that outsized percentage attributable to the leverage inherent in the insurance company, such that you can own an investment in the insurance company which returns say 14% and it becomes 20% to book value?

Charlie: Well obviously there was a little leverage buried in the Berkshire numbers. Obviously the insurance business provided some of that. It’s not over-whelming in its consequences. There were years when it was helping. There were years when Ajit made so much money that it was almost embarrassing. And then he’d give the money to Warren and Warren would make 20% on the money. So there were some years when some remarkable synergies between the insurance business and Berkshire Hathaway.

But basically the insurance business is not some cinch easy way to make money. There’s a lot of danger and trouble in the insurance business and its more and more competitive all the time now as we’re sitting here. Berkshire succeeded because there were very few big errors…there were like no big errors, really big. And there were a considerable number of successes. All of which would have been much harder to get under present conditions than they were at the time we got the results. And there are very few companies that have compounded at 19% per annum for fifty years. It’s (a weird) in net worth. That is very peculiar. I wouldn’t count on that happening again soon. It certainly won’t happen at the Daily Journal.

2018年4月24日火曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(6)やっぱり、今は甘くない

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前回のつづきで、デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答です。今回は2件の話題を取り上げます。ひとつめがバークシャー・ハサウェイのアジート・ジェインについて、もうひとつがウォーレン・バフェットの発言したリターン率についてです。(日本語は拙訳。意味段落での改行追加あり)

(1:19:02)

<質問19> アジート・ジェインはどのようにしてバークシャーの再保険事業を一から築き上げたのですか。

<チャーリー・マンガー> すごく単純なことですよ。彼は毎週90時間ほど働きましたし、非常に頭が切れて、実に賞賛すべき人物でしたからね。取引においても、すこぶる楽しんでいましたよ。ウォーレン・バフェットとは毎晩話しをしていましたね。そのような人物が他にいるかどうか、探してみたらどうですか。しかしながら、彼も以前ほどの成果は出せないと思います。昔よりもむずかしいゲームになりましたからね。つまりはそういうことですよ。

Question 19: How did Ajit Jain build Berkshire reinsurance from scratch?

Charlie: Well it’s very simple. He worked about 90 hours a week. He was very smart. He’s very honorable. He’s very pleasant to deal with. And he talked every night to Warren Buffett. Just find somebody else like that. But he won’t do as well because the game is harder now than it was then. And that’s my answer to your question.

(1:21:05)

<質問21> ウォーレン・バフェットは1999年に次のように言っておられました。「自分の運用資金が100万ドルであれば、[年率]50%のリターンをあげられる」と。一方であなたは「現在の投資環境はむずかしい」とおっしゃっていますが、そうであれば彼の言ったリターンは、今日では何%になるとお考えですか。

<チャーリー> 辛抱強い上に積極果敢で非常に聡明な人物が、「売買高の少ない株式」や「珍妙な領域」といった往来の少ない場所を探しだそうとして、労苦を厭わずに働いていると思いますよ。ことごとく抜け目のない人物が少額の資本を運用しているのであれば、現在のような状況であっても高いリターン率をあげられることでしょう。しかし、この問題は現在の私自身には当てはまりません。私にとっては困難な仕事ですし、バークシャーにとっても困難です。デイリー・ジャーナル社にとっても、容易なところは微塵(みじん)もありません。

当社のような「企業」という形態において株式を保有するのは不利ですね。期せずして株式を保有するに至ったのであって、そこに金(かね)があったから株式を買ったわけです。功を奏したものの、当社の株主の立場から見れば、間接的に保有したことになる株式に達するまで、所得税が幾層にも立ち並んでいるわけですから、好ましいことではありません。内国歳入法が規定するところのCコーポレーションとして課税される公開企業では、公開株をひとたび保有してしまえば、所得税を含むあらゆる種類の要因が、投資上の判断に影響を及ぼすことになります。そうであれば、慈善財団あるいは個人年金プランを通じて投資したほうが、ずっと容易ですよ。

概して言えば、そつのない人物が少額の資金を運用するのであれば、かなりうまく増大させられると思います。しかし金額が大きくなるや否や、難しくなりはじめます。ご列席のみなさんと同じ立場にあった私の頃とくらべると、みなさんのほうがずっと難しい状況だと思いますね。しかし私は死にかけている身であり、みなさんには長い年月が残されています(笑)。ですから、「私が占めている立場と交代したい」と望む人はいないでしょうね。

Question 21: In 1999, Warren Buffett said that he could return 50% if he ran $1 million. Give what you said about the investment landscape today being more difficult, what do you think that number would be today?

Charlie: Well I do think that a very smart man who’s patient and aggressive in combination, is willing to work hard, to root around in untraveled places like thinly traded stocks and other odd places. I do think a person with a lot of shrewdness, working with a small amount of capital, can probably earn high returns on capital even today. However that is not my personal problem at the moment. And for me it’s hard. And for Berkshire it’s hard. And for the Daily Journal we don’t have any cinch either.

It’s disadvantageous to have securities in a corporate vehicle like the Daily Journal Corporation. It’s an accident that we have them there. We have them there because that’s where the money was. The way it’s worked out, it’s not desirable if you’re a shareholder and you have a layer of corporate taxes between you and your securities that are indirectly owned. And once you get public securities held in a public corporation taxable under sub-Chapter C of the internal revenue code, all kinds of factors, including income taxes affect your investment decisions. And it’s much easier to invest in charitable endowment or your personal pension plan.

Generally speaking, I would say, if you’re shrewd enough with small sums of money, I think you can compound pretty well. The minute you get bigger sums, I think it starts getting difficult. It’s way more difficult for all you people sitting here than it was for me when I was in your position. But I’m about to die and you have a lot of years ahead. (laughter) You would not want to trade your position for mine.

2018年4月20日金曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(5)ヒトラーから学んだこと

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前回に続いて、デイリー・ジャーナル社株主総会の模様です。今回からはチャーリー・マンガーが交わした質疑応答を取り上げます。米国に主眼を置いた現在のマクロ経済に関する話題です。(日本語は拙訳。意味段落での改行追加あり)

(1:13:13)

<質問17> GDP比でみた連邦政府の債務水準が上昇しており、同時に景気循環の終盤にあって巨額の財政赤字に陥っています。そういったあらゆる現状を憂慮されていますか。

<チャーリー・マンガー> 連邦政府の債務水準が上昇していることは、もちろん不安視していますよ。この国にとって新たな領域に突入しており、新たな領域というものはたぶんに危機が待ち受けているものです。その一方で、程度はともあれこの世界がそれなりにうまく進行する可能性もあります。政府のとる行動パターンが、「歴史に照らして信頼できるものだ」とみなさんや私が考えるものとは大きく異なっているとしてもです。もちろん、この100年間でインフレーションを避けてきた時期には、当時の政府は物価の安定を目標に掲げていました。一方、今の政府の目標は2%のインフレです。さあ、一体どうなることでしょうか。「だれにもわからない」というのが答えです。しかし、「長期的なインフレ率が2%を大きく超える」とする側に賭けるのが筋ではないですかね。私ならそちらに賭けますよ。ただし我々は過去の経験から、「マクロ経済という代物は実に奇異なもので、物理学のようには動かない」ことを学んでいます。今後10年間における[経済]システムは、過去10年間に存在したシステムとは別のものです。異なるシステムには異なる公式が当てはまります。しかしシステムがいつ変化したのか、そして公式がいつ変化すべきなのかは、だれも教えてくれません。

ですから、「世界がすっかりとんでもないことになる」とは想像していません。第1次世界大戦後のドイツでは何が起きましたか。通貨の価値が基本的にゼロとなり、ハイパー・インフレーションが起きたのです。実に大きな過ちを大規模におかしました。しかしそのあとどうなったのかと言えば、かなりの短期間で復活しました。どうやって実現したかというと、モーゲージ[=住宅ローン]を価値の裏付けとした新たなライヒスマルク[通貨]を制定したのです。そのモーゲージは、不当にもタダでモーゲージを剥奪された人たちが所有する住宅や地所へと戻されたものでした。新ライヒスマルクは十分うまく機能しました。そのおかげでドイツは大惨事からうまく回復し、大恐慌の時期を迎えられました。そして実のところ、大恐慌とヴァイマル時代のインフレが組み合わさったことによって、ヒトラーが登場したのです。大恐慌がなければ、彼は権力を手にできなかったと思いますよ。

その後何が起きたのかは、みなさんもご承知の通りですね。欧州を先導する経済力を1930年代末までに持つようになった国は、どこでしょうか。そう、ドイツです。報復の思いなどに焦がれていたヒトラーは、多大なる軍備を取りそろえたり、多くの兵士を訓練したりしました。このように偶然生じたケインズ主義によって、ヒトラーの率いるドイツは大いに繁栄しました。そして1939年の欧州において、ドイツはもっとも繁栄した場所となったのです。だからこそ、彼らはあれほどまでの大惨事から復活できたのですよ。ですから私は、「世界が動乱の時代を迎えるかもしれないと思い病むことはない」と思います。なぜなら回復する術があるからです。いや、かつてのドイツが取ったやりかたを擁護してはいませんよ(笑)。しかしそういった先例を学ぶことで、私が言うところの「思考する上での奇抜さ」を築けるものと思います。おろかな戦争で壊滅した国家が、さらに自国の通貨を崩壊させ、世界恐慌を通過した後に、1939年には欧州でもっとも繁栄した国家となったのですから、これは励まされることですね。みなさんも一安心してください(笑)。

Question 17: Are you concerned at all about the rising level of government debt to GDP at the same time that we’re running large deficits late in the economic cycle.

Charlie: Of course I’m concerned about the rising level of government debt. This is new territory for us, and new territories probably has some danger in it. On the other hand, it is possible that the world will function more or less pretty well, even with a very different pattern of government behavior than you and I would have considered responsible based on history to date. Of course if you look at the inflation we got out of the last hundred years when the announced objective of government was to keep prices stable. Now the announced objective is 2% inflation. Well what the hell’s going to happen? Well the answer is, we don’t know. But isn’t the way to bet that it’s going to be…inflation over the long-term is way higher than 2%? I think the answer is yes. But I think that we have learned from what has happened in the past that macro-economics is a very peculiar subject and it doesn’t work like physics. The system is different in one decade, than the system that was present in the last decade. Different systems have different formulas, but they don’t tell you when systems have changed, and when the formulas have to change.

So I don’t expect the world to go totally to hell because…well, look at what happened in Germany after World War I. They had a hyper-inflation when the currency basically went to zero in value. They really screwed up big time. And what happened?…Well what happened was they recovered from it pretty quick. And they did it by creating a new Reichsmark backed by the mortgages which they put back on the houses and properties of the people who had unfairly gotten rid of their mortgages at no cost. And that new Reichsmark was working pretty well and Germany had pretty well recovered from that catastrophe and then along came the Great Depression. And the combination of the Great Depression and the Weimar inflation really brought in Hitler. Without the Great Depression I don’t think he would have come into power.

What happened…now you’ve got…by the late 30’s, what was the leading economic power in Europe? It was Germany. Cause Hitler in his crazy desire for vengeance and so on, bought a lot of munitions and trained a lot of soldiers and so forth. And the accidental Keyensianism of Germany under Hitler caused this vast prosperity. So Germany was the most prosperous place in Europe in 1939. So all that catastrophe, they recovered from. So I don’t think you should be too discouraged by the idea that the world might have some convulsions. Because there’s a way of recovering. Now I’m not advocating the German system (laughter), but I do think knowing these historical examples creates what I call “mental ploys.” And you’d think that a country that destroyed (itself) in a silly war, destruction of your own currency, great depression, and by 1939 it’s the most prosperous country in Europe. It’s encouraging. I hope you feel better. (laughter)

2018年4月16日月曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(4)正しい生き方とは

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前回に続いて、デイリー・ジャーナル社株主総会でチャーリー・マンガーが発言した内容です。短いですが、大切なことがすし詰めの文章です。(日本語は拙訳。意味段落での改行追加あり)

だからと言って、我々のしてきたことや心構えが時代遅れで、もう役に立たないと言っているわけではないですよ。今はただ見込みが薄いというだけです。「釣り人のおきて」というのがありますが、これは秀逸です。釣りをする上での規則、その1が「釣りたい魚のいるところで釣れ」、その2が「規則その1を忘れるな」[過去記事]。投資においても同じことが言えますね。魚がたくさん集まっている場所では、釣り人の腕前の良さを気にする必要はありません。しかし大量に釣り上げられた場所では、どれほどの腕利きでもさしたる釣果はあげられないでしょう。現在のこの世界をみれば、いたるところが後者に当てはまります。

しかし、それで意気消沈するのは違いますね。そうではなく、人生とは先の長いゲームで、易しい時期もあればむずかしい時期もあり、好機がやってくれば不運に見舞われることもあるわけです。だから正しい生き方とは、「あるがままを受けいれ、最善を尽くす」、そう歩むことです。年を取るまでには、みなさんにも好機がやってくるでしょう。一生の間に二度ばかり、それで打ち止めかもしれません。しかし、そのうちの一度でも物にできれば上出来ですよ。さあ、偉ぶった物言いはここまでにして、質問を受けましょう。

That’s not to say what we did and the attitudes that we had are obsolete or won’t be useful, it’s just that their prospects are worse. There’s a rule of fishing that’s a very good rule. The first rule of fishing is “fish where the fish are”, and the second rule of fishing is “don’t forget rule number one.” And in investing it’s the same thing. Some places have lots of fish and you don’t have to be that good a fisherman to do pretty well. Other places are so heavily fished that no matter how good a fisherman you are, you aren’t going to do very well. And in the world we’re living in now, an awful lot of places are in the second category.

I don’t think that should discourage anyone. I mean life’s a long game, and there are easy stretches and hard stretches and good opportunities and bad opportunities. The right way to go at life is to take it as it comes and do the best you can. And if you live to an old age, you’ll get your share of good opportunities. It may be two to a lifetime, that may be your full share. But if you seize one of the two, you’ll be alright. Well with that pontification done, I’ll take questions.

2018年4月12日木曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(3)そう簡単には大儲けできない

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前回に続いて、デイリー・ジャーナル社株主総会でチャーリー・マンガーが発言した内容をご紹介します。(日本語は拙訳。意味段落で改行追加しました)

[29:59]

資産運用業界における報酬体系、これは実におもしろいですね。昔から多額の資金を扱ってきた存在として、例えばマサチューセッツ・インベスターズ・トラスト(MIT)があります。同社は、ミューチュアルファンド[=投資信託]が許可された頃からの草分けでした。たしかに当時は称賛を集め、敬意を払われるに足る会社でしたよ。しかし運用資産が7,000億ドルかそこらを超えて、若き男女をおおぜい雇って要員を拡大するなどして、投資先を最低でも50件以上に拡大させたとなれば、S&P[500]平均の成績を上回る確率は減少して、ほぼ皆無へと至るでしょうね。もちろん彼らは、顧客がどれだけ払ってくれるのか思案したでしょう。実際のベーシス・ポイントはどうであれ、MITは長期にわたって運用報酬をとっていくのですから、プレッシャーを感じたり、自分たちの世界がおびやかされていると感じているかもしれません。

もうひとつ、おびやかされている領域があります。もしも手数料として「1アンド20」、すなわち運用資産総額の1%分に加えて利益の20%分を徴収する、あるいはもっとひどく資産総額の2%及び利益の20%を徴収するとしましょう。そして運用資産が300億ドルほどもあるとすれば、野心満々な部下の若者らはこぞって、理不尽なまでの金持ちに一刻も早くなりたいと欲するでしょう。そんな状況で顧客のために好成績をあげられる可能性は、いかほどだと思いますか。そういった手数料をとる普通の組織であれば、顧客がよい成績をあげる確率はわずかでしょうね。だからウォーレン[・バフェット]がヘッジファンド勢と対決して勝ちをおさめたのですよ[過去記事]。ウォーレンがS&P平均に賭けたのに対して、彼らは選り抜きの天才たちに賭けました。非常に高額の手数料をとる者たちです。しかし、その高い手数料が首をしめるのです。

競争のはげしい世界では、単純に証券を買うだけで大きな優位を得ようとするのは、それは大変なことです。何十億ドルもの資金で取り組む上に、多額の手数料が足枷となる状況で、「証券会社側の出すリサーチなどをいろいろ読んで、身を粉にして働ければうまい成果があがる」と考えるなんて、なおさらです。それは幻想ですよ。幻じみた見方で世の中と向き合うのは、正しいやりかたとは言えませんね。「現在直面している世の中よりも、バークシャーが台頭し始めた頃のほうが単純だった」とは思いませんし、「我々がしてきたのと同じやりかたをすれば、同じような成果を得られる」とも思いませんね。

I think the incentive structure in investment management is very interesting. If you look at the people who have a ton of money from the past, like say the Massachusetts Investor Trust or something like that, which pioneered Mutual Fund investing in the early days after Mutual Funds were allowed. It was certainly a respectable and honorable place. But once it gets to be $700 billion or whatever it is, and hires a lot of young men and has a big staff and so forth…and young women too…and spreads its investment over 50 securities at least, the chances that it’s going to outperform the S&P average really shrinks to about zero. And of course they wondered what we’ll keep paying, whatever number of basis points Massachusetts Investor Trust’s management operation charges for the long-term, and they may feel under pressure and that their world is threatened.

Another place that’s threatened. Suppose you’re charging say 1 and 20, one percent off the top and twenty percent of profits…or even worse, two percent off the top and twenty percent of profits…and you’ve got $30 billion or so under management and an army of young ambitious people, all of whom want to get unreasonably rich very fast. What are your chances of doing better for your clients? Well the average entity that charges those fees, the chances the clients will do well is pretty poor. That’s the reason Warren won that bet against the hedge funds. Where he bet on the S&P averages and they bet on carefully selected bunch of geniuses charging very high fees. And of course the high fees will just kill you.

It’s so hard in a competitive world to get big advantages just buying securities, particularly when you’re doing it by the billion, and then you add the burden of very high fees and think that by working hard and reading a lot of sell-side research and so forth, that you’re going to do well. It’s delusional. It’s not good to face the world in a delusional way. And I don’t think, when Berkshire came up, we had an easier world than you people are facing this point forward, and I don’t think you’re going to get the kind of results we got by just doing what we did.

2018年4月8日日曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(2)長老一同の知恵深さ

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2月に開催されたデイリー・ジャーナル社株主総会の模様から、前回の内容を受けたチャーリー・マンガーの語りをご紹介します。読み手によって解釈に差がつきそうな内容ですが、年齢を重ねてきた人ならではの、厚みがある見解だと感じました。そして、こまかいジョークのほうも楽しめます。(日本語は拙訳。意味段落で適宜改行しています)

(27:23)

<チャーリー・マンガー> 諸君が資金を託している人物も、その中に含まれていますね。我々には長い期間は残されていません。だからと言って、当社がうまくやれないとは言っていませんが(笑)、運用期間の点では実に興味深いものがありますね。

風変わりなるバークシャー・ハサウェイの取締役陣は年寄りばかりですし、経営陣も高齢です。年寄りの取締役をそろえているという点でバークシャー・ハサウェイやデイリー・ジャーナル社を超える組織はただひとつ、モルモン教会だけですよ(笑)。モルモン教を統率する集団には、すばらしい性質が2つあります。ひとつめは、[預言者などの]聖職者は無給であること。もうひとつは、率いる人たちは男性ばかりで、齢はおよそ85歳から100歳であること(笑)。彼らはこの仕組みを、ほかの教会よりもうまく運営しているわけです。無給の聖職者、そして高齢の男性陣ですよ。当然ながら我々は、バークシャーとデイリー・ジャーナル社でその仕組みを真似しています(笑)。その上、ずいぶんと高齢なバークシャーの取締役諸氏よりも、当社の取締役のほうがさらに高齢者ときています。ウォーレンいわく、「バークシャーと比べて当社では、若い連中がどうなのかいつも見て回っている」とのことですよ(笑)。

これは少しばかり珍妙なことですね。この世の中でどの教会が、人々を幸せにし続けるなどで最高の成績をあげているかと考えたら、(音声不明瞭)モルモン教会だというわけですから。無給の聖職者、それも85歳以上の男性だけで統率しているとは、だれに想像できるでしょう。なんとも不可思議な結末です。その意外な結末を良しとすべきなのでしょうね。私自身、奇妙な成り行きばかりが続いた人生を歩んできたことは、なんといっても間違いないですし。今日ここにいること自体、おどろきですよ。ある人によれば、私の敬する老婦人が94歳の誕生日パーティーでこう言ったそうです。「こうしてここにいられて、すごくうれしいわ」。いや、実際はこう言ったのです。「こういうのがなくても、すごくうれしいわ」(笑)。つまり私が言いたいのはそういうことです。奇妙なことですよ。

Charlie: Those include those who you’re invested with. We do not have a long runway. That doesn’t mean the company won’t do well, (laughter) but in terms of investment management runway, it’s rather interesting.

Berkshire Hathaway’s peculiar in that its directors are so old and its managers are so old. The only institution that exceeds Berkshire Hathaway and the Daily Journal in terms of old directors in office is the Mormon Church. (laughter) The Mormon church is run by a group of people and they have two wonderful qualities. There’s no paid clergy in the Mormon church. And the ruling powers in a group of males between about 85 and 100. And that system is more successful than any other church. No paid clergy and very old males. Obviously we are copying that system at Berkshire and the Daily Journal. (laughter) And we are so much older than the Berkshire directors who are also very old. Warren says we’re always checking to see how the young fellows are doing at the Daily Journal versus Berkshire.

It is slightly weird. But the world is…who would have guessed that the church with the best record for keeping people happy and so on and so on…(inaudible)…which is the Mormon church. Who would have guessed that it had no paid clergy, run only by males who are about 85 and up? Now that is a very odd result. I guess I should like odd results, because I’m sure as hell living a life of a lot of odd results. And I’m very surprised to be here. Somebody said, an old woman whom I liked, said at her 94th birthday party, “I’m very pleased to be here”, in fact she said, “I’m very pleased to be anywhere.” (laughter) Well that’s what it is, and it is weird.

2018年4月4日水曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(1)理想のマネー・マネージャー

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チャーリー・マンガーが会長を務めるデイリー・ジャーナル社の株主総会が、今年の2月14日に開催されました。そのトランスクリプトを公開してくださっているサイトがありましたので、一部をご紹介します。まず今回は「飛び抜けたマネー・マネージャー」に関する話題です。(日本語は拙訳。また意味段落で改行しています)

Charlie Munger: Full Transcript of Daily Journal Annual Meeting 2018 (Latticework Investing)

(21:00)

<チャーリー・マンガー> (前略)我々取締役会のひとりが、「どんな投資アドバイザーでも有するべき特質」を列挙していましてね。彼は、プロの投資家を選び出す後継担当者へその内容を伝えたところ、その人物は即座に半数をクビにしてしまいました。そのような異色の結果となった以上、[取締役の]ピーター・カウフマン本人から資産運用者を選定する際に使う「ファイブ・エース」方式を説明してもらおうと考えたわけです。それではピーター、よろしく。

<ピーター・カウフマン> 「飛び抜けたマネー・マネージャーとして推薦できるのは、どのような人物なのか」をご説明する上で、これから示す一連の条件を思い至りました。それらが的確なものであってほしいと思いますし、それにあてはまる当人のかたが、実際に決定をくだす人物へ結びつけてほしいとも思います。そうなれば私からではなく、その最終的な決定者からの話として受けとめるわけですから、より説得力が増すことでしょう。さて、私の考えた5つの条件に「ファイブ・エース」と名付けましたが、「ファイブ・エース」とはワイルドカードを使用するポーカーにおいて最強の役を指しています。

では、それぞれのエースを挙げていきます。1枚目のエースは「曇りなき誠実さ」です。2枚目のエースは「顧客から請け合ったことは何であれ、難なく軽々とこなせる能力」です。3枚目のエースは「正負両方向に対して、本当に公正な手数料体系」です。4枚目のエースは「投資対象となる領域において競争が少ないこと」です。そして5枚目のエースが「長期的な投資期間が見込めること」です。つまり、その運用者がまだ若いことを意味します。さらに、「もしそのような5つの特性すべてを有するマネー・マネージャーを探し出せたとしたら、やるべきことが2つある」と申し添えておきます。ひとつめは、その人物へ速やかに資金を託すこと。ふたつめは、許されるかぎりの全資金を託すことです。この会場にはマネー・マネージャーの方がおられるのは承知していますし…、

<チャーリー> それはもう、そのとおりですよ!(笑)

<ピーター> …さらには会場におられるマネー・マネージャーを雇っている方もおられます。もしマネー・マネージャーを雇う立場であれば、その人物を評価する上ですぐれた基本原理となります。

<チャーリー> そのとおり。しかし、雇った人の半数をクビにするには費用がかさむでしょうね(笑)。

<ピーター> しかし、もしみなさん自身がマネー・マネージャーであれば、この5つを「希求すべきことがら」とするほうが、たぶんもっと重要でしょう。「マネー・マネージャーとして、自分はどのような特質を持ち合わせるべきか」。まずは完璧に信用できる人物たるべきですし、「やります」と発言したことは実際に造作なくこなせなければなりません。手数料については、正負どちら側でも基本的に公正な体系を採用すべきです。そして競争の少ない領域をさがすべきです。というのは周知のように、謎を秘めている事業には余地が残されているからです。競争の激しい領域だとしたら、一体どのようなたぐいの余地が残っているでしょうか(質問21参照)。最後の5番目ですが、みなさんのなかには非常に幸運な方がたくさんおられます。「長期の投資期間」の欄には、「該当する」との印をつけられるでしょう。史上最高のマネー・マネージャーの方には、4つのエースしか当てはまらない人がいます。それは5番目に該当しないからです。

One of our directors came up with a list of qualities that any investment advisor should have. And he gave it to a future picker of professional investors, and the picker immediately fire half his picks. And I thought that was such a peculiar outcome that I’ll let Peter Kaufman share with you his ‘five aces’ system for picking an investment manager. Peter, go ahead.

Peter Kaufman: So I came up with this list in giving reference to a very exceptional money manager. And I not only wanted to give what I thought was the correct reference, I wanted the person that I was giving the reference to, to in turn be able to relate this above to the real shot-caller. So that a compelling narrative would be transferred from me directly to the ultimate shot-caller. So I came up with what I call the “five aces”. The five aces being the highest hand you can have in a wild card poker game.

Ace number one is total integrity. Ace number two is actual deep deep fluency on whatever it is you say you’re going to do on behalf of the client. Ace number three is a fee structure that is actually fair in both directions. Ace number four is an uncrowded investment space. Ace number five is a long run-way. Meaning that the manager is reasonable young in age. I further add that if you ever find a money manager who possesses all five of these characteristics, there are two things you should do. One, you should put money with them immediately. And number two, put as much money as you are allowed to put. Now I know we have money managers in the room, and we have…

Charlie: Do we ever! (laughter)

Peter Kaufman: And we have people who employee money managers who are in the room. If you employ money managers, this is an excellent formula to evaluate your money managers.

Charlie: Yeah, but it will cost you to fire half those you’ve hired..or you have hired. (laughter)

Peter Kaufman: But perhaps more importantly, if you’re a money manager, this should be your list of five aspirations. What characteristics should I seek as a money manager to possess? I should be completely trustworthy. I should have actual deep fluency in what I claim that I’m going to do. I should adopt a fee structure that’s generally fair in both directions. I should seek an uncrowded space because as we all know, in business where there’s mystery, there’s margin. What kind of margin are you going to have in a crowded space? (Note: See Question 21) And number 5, many of you in here, you’re very fortunate. You get to check that box for having a long runway. Some of the best money managers in history only get four out of these five aces because they don’t qualify for number five.

備考です。訳文や原文中に記されている時刻のハイパーリンク先は、総会の模様を録音した音声データを聞くことのできるサイトになっています(チャーリーの発言はあいかわらず爆笑を誘っています)。残念ながら映像のほうは、Youtubeにアップロードされた様子はないようです。いずれそのときが来れば、そちらへの紹介リンクも追記します。

2017年12月28日木曜日

2017年デイリー・ジャーナル株主総会(4)投資した資産が半減した経験

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デイリー・ジャーナル社2017年株主総会でのチャーリー・マンガーに対する質疑応答から、彼が過去に経験した資産価格下落の話題です。なおチャーリーの語る後半部は、以前に投稿した内容の再掲になります。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問28> 1973年から1974年にかけて運営されていた投資パートナーシップの資産が半減したときには、何が起こったのですか。

<チャーリー> そう、すごく単純なことですよ。簡単そのものです。いい質問ですね、あれは教訓になりますから。私が運営していたパートナーシップの資産価値が、1年の間に50%下落したのです。市場としては40%程度下落しました。あのときの景気後退は30年に一度のものでしたよ。「市場を独占していた新聞社が、純利益の3,4倍で売られていた」ほどですからね。おっしゃるとおり、どん底のときには頂点から50%落ちましたよ。保有したバークシャー株がそれだけ下落したのは過去に3回ありましたね。

私からすれば、市場の下落は人生に付き物だと考えますね。長期にわたってこのゲームに関わるつもりならば、そうする必要がでてきます。値段が半分まで下落したときでも、やたらと思い悩まずにやり過ごせますよ。より良い生き方を心がけていれば、資産半減の事態となっても、沈着冷静・端麗優雅に受け流せるでしょう。下落を回避しようとは試みないように。結局はやって来ることです(拍手)。「自分には来ない」と言う人は、十分果敢に投資していないからですよ。

Question 28: What happened 1973 and 1974 when your investment firm lost over half?

Charlie: Oh, that’s very simple. That’s very easy. That’s a good lesson. That’s a good question. What happened is the value of my partnership where I was running, went down by 50% in one year. Now the market went down by 40% or something. It was a once in 30 year recession. I mean monopoly newspapers are selling at 3 or 4 times earnings. At the bottom tick, I was down from the peak, 50%. You’re right about that. That has happened to me 3 times in my Berkshire stock.

so I regard it as part of manhood. If you’re going to be in this game for the long pull, which is the way to do it, you better be able to handle a 50% decline without fussing too much about it. And so my lesson to all of you is conduct your life so that you can handle the 50% decline with aplomb and grace. Don’t try to avoid it. (applause) It will come. In fact I would say if it doesn’t come, you’re not being aggressive enough.

備考です。バークシャー株の価格が半減した3回の時期は、株価チャートで確認したところ、おそらく2007-2009年、1998年-2000年、1973-1974年かと思われます。また1987年のブラック・マンデーの時期にも、4割弱の下落があったようです。このことから、よく言われる「10年周期」がバークシャー株によっても確認できますね。

2017年12月8日金曜日

2017年デイリー・ジャーナル株主総会(3)無駄な1年を過ごさないために

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デイリー・ジャーナル社2017年株主総会でのチャーリー・マンガーに対する質疑応答から、3つめの引用です。今回もおなじみの話題ではありますが(過去記事1,2など)、話題がいろいろな方向へと展開していて、楽しんで読めました。なお文中で登場する言葉「アイデア」は日本語に訳さずにそのまま使っていますが、あえて訳せば「持論・自説・意見・見解・哲学・姿勢・信条」といった言葉になるかと思います。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳。また意味段落にて適宜改行を追加)

The hardest idea you have ever destroyed? (Youtube)

<質問20> 以前に、「愛してやまないアイデアのひとつも葬っていない1年は、無為に過ごしただけの1年だ」とおっしゃっていました。また「質の追求」へと転身するのが困難だったウォーレン・バフェットを誘導された、という話も有名です。それでは、ご自身にとって捨て去るのがもっとも難しかったアイデアのことをご説明頂けますでしょうか。

<チャーリー> それはもう、愚かしいことを散々やらかしてきましたよ。そういったまずいアイデアを今も抱えているからこそ、それらを葬るのに忙しいわけです(笑)。数あるうちから一つに絞り込むのはむずかしいですね。しかし悪しきアイデアを葬り去るのは、実のところ楽しみながらやっていますよ。まあ言ってみれば、「元からのアイデアを葬ることは、我が定めだ」と考えているからです。古いアイデアのせいで新たな優れたアイデアを取り込めないことが、人生における主たる問題となっている人たちが実にたくさんいます。これぞ、人の世におけるお決まりの成り行きですね。ドイツの言い習わしに、「少年老い易く、学成り難し」というものがあります。これはだれもが直面する問題ですよ。「学成り難し」なのは、身についてしまった愚かなアイデアを取り除けないからです。

一方で、その問題を抱えていたほうがうまいこともあります。婚姻ですね。つまり婚姻関係を安定させるには、古いアイデアにこだわったほうが好ましいかもしれないわけです(軽笑)。しかしほとんどの領域では、身についた古いアイデアを除去したいと望むでしょう。それが良き習慣となれば、世にある競争の激しい分野において、他人がひどくつたないのに反して大幅な優位をもたらしてくれますよ。そういった悪しきアイデアのことを盛大に語りながら、同時にそのアイデアを叩くわけです。結局のところ、手にしたアイデアに対して意見をぶつけ合ったり、語ったりするのですよ。ただし言うまでもないですが、説得しなければならない人物とは、そのアイデアを身につけた自分自身です。そういったアイデアを激しく叩くわけです。そのこともあって私はこの世界のことを、たとえば「FRBがどのようにふるまうべきか」といった持論をあまり話さないわけです。ものごとをどのように運営すべきか他人に話すことを考えている間にも、そのアイデアを自分にも教え込もうとしていますから。みなさんも、物事を考える上でのさまざまな習慣を身に付けたほうがいいですよ。

若者があらゆる問題の原因などを盲信しているというのは、よくないと思いますね。なんでも知っていると自認する17歳の若者には、中絶や中東における外交政策などについてどうすべきかを世界中に教え授けたいと考える者もいます。しかし確信していることを滔々と論ずる彼らのしていることは、すでに有したアイデアを叩いているだけですよ。多くのことを学んで身に付け始めたときとしては、そのやりかたは実に愚かしいアイデアですね。

ですから、愚かなアイデアを取り除こうとする習慣は非常に大切です。私は愚かしいアイデアを葬るたびに、「よくやった」と自分自身を褒めてやっていますよ。「自分自身の良き振る舞いを、本当に強化できるのか」と問われるかもしれません。ええ、できますとも。他人が褒めてくれなくとも、自分で自分を褒めることはできます。「自分のことを褒めてやる」、私にはそのような重要な仕組みが備わっています(笑)。こよなく愛でるアイデアを葬るたびに、自分を褒めたたえるのです。くりかえし褒めてやることもあります(笑)。諸君も同じ考え方を習慣づけたほうがいいですよ。「新しいアイデアを受け入れられるようになる」、そのために支払う対価は実に高額です。実際問題として、新たなアイデアを取り入れられないゆえに多くの人が命を落とすわけですから。

Question 20: You’ve said, “any year in which you don’t destroy one of your best loved ideas is a wasted year.” It’s well known that you helped coached Warren towards quality which was a difficult transition for him. I was wondering if you could speak to the hardest idea that you’ve ever destroyed.

Charlie: Well I’ve done so many dumb things. That I’m very busy destroying bad ideas because I keep having them. So it’s hard for me to just single out from such a multitude. But I actually like it when I destroy a bad idea because I think I’m on the…I think it’s my duty to destroy old ideas. I know so many people whose main problem of life, is that the old ideas displace the entry of new ideas that are better. That is the absolute standard outcome in life. There’s an old German folk saying, “We’re too soon old and too late smart.” That’s everybody’s problem. And the reason we’re too late smart is that the stupid ideas we already have, we can’t get rid of!

Now it’s a good thing that we have that problem, in marriage that may be good for the stability of marriage that we stick with our old ideas. But in most fields you want to get rid of your old ideas. It’s a good habit and it gives you a big advantage in the competitive game of life…other people are so very bad at it. What happens is, as you spout ideas out, what you’re doing is you’re pounding them in. So you get these ideas and then you start agitating them and saying them and so forth. And of course, the person you’re really convincing is you who already had the ideas. You’re just pounding them in harder and harder. One of the reasons I don’t spend much time telling the world what I think about how the federal reserve system should behave and so forth. Because I know that I’m just pounding the ideas into my own head when I think I’m telling the other people how to run things. So I think you have to have mental habits…

I don’t like it when young people get violently convinced on every damn cause or something. They think they know everything. Some 17 year old who wants to tell the whole world what ought to be done about abortion or foreign policy in the middle east or something. All he’s doing when he or she spouts about what he deeply believes is pounding the ideas he already has in, which is a very dumb idea when you’re just starting and have a lot to learn.

So it’s very important that habit of getting rid of the dumb ideas. One of things I do is pat myself on the back every time I get rid of the dumb idea. You could say, ‘could you really reinforce your own good behavior?’ Yeah, you can. When other people won’t praise you, you can praise yourself. I have a big system of patting myself on the back. Every time I get rid of a much beloved idea I pat myself on the back. Sometime several times. And I recommend the same mental habit to all of you. The price we pay for being able to accept a new idea is just awesomely large. Indeed a lot of people die because they can’t get new ideas through their head.

2017年11月20日月曜日

2017年デイリー・ジャーナル株主総会(2)「とびっきり効果」の発見

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デイリー・ジャーナル社の2017年株主総会でチャーリー・マンガーが交わした質疑応答から、二つめの引用です。今回は、チャーリーが残した指折りの知的成果である「とびっきり効果」(Lollapalooza effect)についてです。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問13> 現在起こっているできごとで、気にかかっていることは何ですか。またそれらを特定するために、とびっきり効果のような学際的アプローチをどのように使っておられますか。

<チャーリー・マンガー> かつて私は、心理学のことを何もわかっていなかったものです。しかしそれは自分の手抜かりだと気づき、心理学の主要な初級教科書を3冊買って通読しました。私が「とびっきり効果」という用語を生みだしたのは、その時分でした。もちろんですが、まるでなっていない心理学者よりも、チャーリー・マンガーたる自分のほうがうまくやれると考えましたよ。とびっきり効果はどの本にも書いておらず、みずから思いついたアイデアのひとつです。これは、3つや4つの動向が同一の状況下で同時に働いたときに生じます。線形ではない働きをみせたとき、とびっきりな効果が生じたと言えるわけですね。[参考記事]

ところが心理学の研究者たちは、4つや5つの物事が同時に発生する実験を行うことができませんでした。彼らにしてみれば、実に複雑だったからですね。論文も出せませんでした。それゆえ彼らは、己の専門領域における最も重要なことを無視し通したわけです。もちろんながら、重要なことは他にもありましたよ。心理学を他のあらゆるものと総合する仕事です。ところが心理学の専門家である彼らは、「ほかのあらゆる物事」についてまるでわかっていなかったのです。これはやっかいですね。他の物事を知らずして、わかっている物事と総合するなどできませんよ。だから私がとびっきりな問題へ達することになったわけです。まあ実際のところ、その後も私は一人ぼっちでしたがね(笑)。彼の領域で名が通っているわけでもないですし。さはさりながら、私の考えは正当無欠なものですよ。[参考記事12]

Question 13: Question about Lollapalooza effects. What current event is causing you concern and how can you use that inter-disciplinary approach to spot them?

Charlie: Well, I coined that term the “Lollapalooza effect” because when I realized I didn't know any psychology and that was a mistake on my part, I bought the three main text books for introductory psychology and I read through them. And of course being Charlie Munger, I decided that the psychologists were doing it all wrong and I could do it better. And one of the ideas that I came up with which wasn't in any of the books was that the Lollapalooza effects came when 3 or 4 of the tendencies were operating at once in the same situation. I could see that it wasn't linear, you've got Lollapalooza effects.

But the psychology people couldn't do experiments that were 4 or 5 things happening at once because it got too complicated for them and they couldn't publish. So they were ignoring the most important thing in their own profession. And of course the other thing that was important was to synthesize psychology with all else. And the trouble with the psychology profession is that they don't know anything about ‘all else'. And you can't synthesize one thing you know with something you don't if you don't know the other thing. So that's why I came up with that Lollapalooza stuff. And by the way, I've been lonely ever since. (laughter) I'm not making any ground there. And by the way, I'm totally right.

2017年11月4日土曜日

2017年デイリー・ジャーナル株主総会(1)チャーリー・マンガーかく語りき

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バークシャー・ハサウェイの株主総会では、チャーリー・マンガーはウォーレン・バフェットの引き立て役としておとなしくしていますが、チャーリーが会長を務めるデイリー・ジャーナルの総会ではかなりの別人ぶりで、堂々とした独り舞台をみせています。距離が狭いこともあるせいか、参列者からの笑い声も頻繁にあがり、米国で一番楽しい総会かもしれません。


と、そのようなことを書けるのも、Youtubeに投稿されている映像を自宅で観られるからです。こちらのリンク先映像では投稿者の方が質疑項目ごとの目次を作成されており、ありがたいばかりです。(参列者爆笑シーンの一例は23分過ぎ)

Billionaire Charlie Munger: Advice for Business and Life (2017) (Youtube)

また別の方のサイトにはトランスクリプトがあります。

Charlie Munger: Full Transcript of Daily Journal Annual Meeting 2017 (HTML)

今回からの投稿では、今年の2月に開催された株主総会での質疑応答の様子を、上記の資料からご紹介します。今回の話題は、「ウォーレンが学び続けたことがバークシャー成功の要因だった」とする質疑の後半部分です(上記トランスクリプトのQ14)。バークシャーが2006年にイスカル社を買収したときの価格水準の話題と、航空会社への投資の話題です。(日本語は拙訳)

<チャーリー・マンガー> ベン・グレアムならば、イスカル社を買うようなことはしませんでしたよ。簿価の5倍になる金額を支払うのは、グレアムのやりかたではなかったですからね。ウォーレンはグレアムのもとで学びましたが、その後もずっとうまく学んだわけです。私自身も上手に学んできました。このゲームのいいところは、際限なく学び続けられる点ですね。実際のところ、今でもそうしていますから。

今や我々は、「突如として航空会社株を買うようになったのか」と報道されているのですよ。航空会社という商売について過去に我々がなんと発言していたか、覚えていますか。「そこまでひどいビジネスがあるとは、ご冗談でしょう」と考えていたのです。それが今では、航空会社関連の持ち株すべてを合わせると、中小の航空会社を1社分保有していることになります。我々は同じことを鉄道会社でもやりました。「鉄道なんてちっとも良かないね。事業者が多すぎて、トラックとの競争もあるし...」と言ったものです。80年間にわたってひどいビジネスだったことはたしかです。しかし彼の業界にはとうとう4つの大会社しか残っておらず、うまいビジネスへと変わりました。それと似たようなことが航空会社でも起きているわけですよ。

Ben Graham would have never bought Iscar. He paid 5 times book or something for Iscar. It wasn’t in the Graham play. And Warren who learned under Graham, just, he learned better over time. And I’ve learned better. The nice thing about the game we’re in, is that you can keep learning. And we’re still doing it.

Imagine we’re in the press…for all of a sudden (buying) airline stocks? What have we said about the airline business? We thought it was a joke it was such a terrible business. And now if you put all of those stocks together we own one minor airline. We did the same thing in railroads, we said “railroads are no damn good, you know there’s too many of them, truck competition…” And we were right it was a terrible business for about 80 years. But finally they got down to four big railroads and it was a better business. And something similar is happening in the airline business.

工具メーカーのイスカルに対して簿価の5倍を払ったという事実は、初見あるいは見逃していました。あくまでも個人的な見積もりですが、簿価5倍の買収水準はPER25倍から30倍になったとも考えられます。ウォーレンであれば出し渋りそうな金額です。しかし、うろ覚えですがイスカルの買収はチャーリーが熱を入れていたと記憶しています。そうだとすれば、ある程度の高値は納得できます。元から非公開企業だったのでイスカルの経営実態はよくわからないままですが、バークシャーの年次報告書によれば従業員数がこの10年間でほぼ倍増しており、着実に成長している様子がうかがえます。