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2018年5月12日土曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(10)なおす術はわからない

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デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答、前回の話題だった「企業文化」のつづきです。(日本語は拙訳、意味段落での改行追加あり)

(1:41:04)

<チャーリー・マンガー> 所属する組織の規模が大きくなり、複雑さが増すにつれて、つまりはGM社やAT&T社のような文化と言えますが、非常に難しい問題になりますね。大企業では多かれ少なかれ同じように、非常に官僚主義的になっています。「きわめて官僚的である」、これがお決まりの社風ですよ。もちろん政府でもそうで、巨大な政府組織では官僚主義が生じています。官僚主義というものはさまざまな間違いを起こしますから、基本的には好かないですね。だからといって、そのかわりを私が示せるわけではありません。これまで以上に連邦政府をうまく運営する方法も知りません。私自身の見解として巨大な官僚的文化は基本的に好きになれないので、それゆえ深く考えることもないのです。官僚主義を大幅に修正する方法など、私にはわかりません。「従業員が100万人もいる企業の文化を変えてほしい」と任されても、私には地獄行きを宣告されたも同然ですよ。レストラン1軒の文化を変えることでさえ、容易ではないです。すでに官僚主義的な文化に染まった場所を、どうやって非官僚的に変えればよいのか、実に難しい問題だと思いますね。

バークシャーでは官僚主義の問題を解決するために最善を尽くしてきました。そうです、本社自体が存在しなければ、本社的な官僚主義などそんなに生じようがないですから(笑)。それが我々のとったシステムです。しかしそのようなシステムができあがったのは、我々が天才だったとか英明だったとか、そういうわけではないですよ。たまたまそうなった部分もあったのです。しかしそのやりかたがうまくいくとわかってからは、ずっとそうしてきました[過去記事]。しかし巨大な組織の企業文化を正す方法は、私にはわかりませんね。

But the minute you get into the bigger and more complicated places…I mean you can talk about the culture of General Motors or the culture of AT&T, it’s a very difficult subject. What big businesses have in common by and large is that they get very bureaucratic. That’s the one norm in culture is that they get very bureaucratic. And of course it happens to the government too. A big governmental body. And basically I don’t like bureaucracy, it creates a lot of error. I don’t have a substitute for it. I don’t have a better way of running the U.S. government than the way they’ve been doing it. But I basically don’t personally like big bureaucratic cultures and so I don’t think very much about big bureaucratic cultures. I don’t know how to fix bureaucracy in a big place. I would regard it as a sentence to hell if they gave me some company with a million employees to change the culture. I think it’s hard to change the culture in a restaurant. A place that’s already bureaucratic, how do you make it un-bureaucratic? It’s a very hard problem.

Berkshire has solved the problem as best it can…of bureaucracy. You can’t have too much bureaucracy at headquarters if there’s no bodies at headquarters. (laughter) That’s our system. I don’t think it arose because we were geniuses or anything. I think partly it was an accident. But once we saw what was working, we kept it. But I don’t have a solution for corporate culture at monstrous places.

2018年5月8日火曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(9)我が麗しきコストコよ

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デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答、今回の話題は企業文化です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

(1:39:16)

<質問29> 社風についておうかがいします。ある企業の社風を部外者の立場から、本当に知ることができるものでしょうか。それと同様に、組織における上層部の人間が、配下の者たちが抱く企業文化について、本当に確信できるものでしょうか。また、ウェルズ・ファーゴ社やGE社のような巨大企業の文化を評価する上で、どのようになさっていますか。文化を理解するのに有用だと考えていらっしゃるものには、何がありますか。

<チャーリー・マンガー> コストコ社のような企業の末端でどのような社風が根付いているか、みなさんもよく知っておられるでしょう。そこまで至った企業文化とは、広大かつ前向きな活力を有していますね。これからもずっと長きにわたって継続すると思いますよ。

しかしGEを調べてみると、非中央集権的な部分もあれば、そうでない部分もあります。単一のビジネスではなく、複数のビジネスを営んでいるからですね。これはかなり複雑な問題になりますよ。事業内容があれほど激しく異なってしまうと、いったい何がGEの文化だと言えるでしょうか。おそらく本社は、ある種の文化を有していることでしょう。その文化は、えてして誤った方向へと進むものです。ある事業から別の事業へと人材をできるだけ異動させるやりかたは、私が思うにずばり間違いですね。

コストコのように、並外れた文化をだれもが受け入れている企業は、きわめて稀です。そして彼らはその文化のもとで、ただひとつの基本的事業にまったくもって留まっています。彼らの有する強靭な文化が正しければ成果がどれだけ得られるのか考えたからこそ、コストコのような企業に心惹かれるわけですよ。

(次回に続く)

Question 29: Questions about culture. How can an outsider really know a company’s culture? And for that matter, how can an insider, at the top of an organization, really be certain about the culture of the company beneath him? And how would you go about assessing the culture of giants like Wells Fargo or General Electric? What is it that you look at that helps you understand culture?

Charlie: Well, you understand culture best where it’s really down (low) in a place like Costco. And there the culture is a vast and constructive force. Which will probably continue for a very, very long time.

The minute you get into General Electric, partly decentralized, partly not. Multi-business instead of one business. It gets very complicated. What is the culture of General Electric when the businesses can be so radically different? Maybe headquarters can have a certain kind of culture. And maybe the culture will be a little wrong. And maybe it’s wrong to shift people around from business to business as much as they do. Which I strongly suspect.

I do think…there are very few businesses like Costco that have a very extreme culture where everybody’s bought into. And where they stay in one basic business all the way. I love a business like Costco because of the strong culture and how much can be achieved if the culture is right.

備考です。チャーリーというよりもウォーレン・バフェットの件ですが、Twitterでご紹介したように、バークシャー・ハサウェイ株主総会の映像記録がCNBCのサイトで公開されていました(お世話になっている某サイトで紹介されていたのを見て、はじめて知りました)。1994年以降のものが収録されているので、天井と底が2組分ありますね。

Berkshire Hathaway Annual Meetings (CNBC)

上位にあたるサイトはこちらです。

The definitive collection - Buffett in his own words (CNBC)

2018年5月4日金曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(8)人工知能について

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前回につづいて、デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答です。「知恵のかたまり」とも言えるチャーリーが、人工知能について語ります。(日本語は拙訳)

<質問28> 人工知能(AI)は、社会に対してインターネット革命以上に大きな影響をもたらすと思われます。それでは、AIは各種業界に対して概してどのような影響を与えるか、また人類の将来に対してどのような影響を与えるのか、ご見解をお聞かせいただければ幸いです。

<チャーリー・マンガー> これはいい質問ですね(笑)。人工知能を研究している人たちは実際のところ、その質問に答えられないと思いますよ。私自身は、それほど多くは学び得られないと思って、人工知能のことは勉強していません。Facebook社やGoogle社ではAIがマーケティングの一環として機能しているのはわかります。だから、ある領域ではうまく機能するのでしょうね。しかし、この主題は実に複雑ですよ。正確にどうなっていくのかは、私にはわかりません。わが人生では、体系化した常識を用いるだけで相当うまくやってきました。ですから、人工知能のような領域に足を踏み入れたいと考えたことはないですね。水辺を探し回って小さな金塊を拾えるとすれば、それが可能な限りは、わずかな優位を得んがために沖積漂砂鉱床へ出向いて、莫大な量のデータをふるいにかけたいとは思いませんよ[=砂金採りの意に引掛けている。過去記事]。つまり、質問する相手をまちがっています。AIがどれほどすごいものなのか、私には自信をもって言い切れません。「AIがまちがいなく経済面での革命を起こす」とは思えないのです。これまで以上に利用されるのはたしかだと思いますが、AIを使うことによって世界で最高の大成功者になれるかどうかは、どんなものでしょうかね。人工知能がうまく働く領域はあるのでしょうが、我々もガイコ社(GEICO)で相当な時間にわたって導入を検討してきたものの、いまだに昔ながらの情報や工夫でやっています。ですから私の知っているのはここまでで、もうこれ以上は語れないのですよ。

Question 28: It looks like the A.I. will have a much bigger impact on society than the internet revolution, so would you mind maybe sharing some of your thoughts on how artificial intelligence will impact different industries in general and who [errata?] it will impact the future of the human race?

Charlie: Well, that’s a nice question. (laughter) The people who studied artificial intelligence don’t really know the answer to that question. I’m not studying artificial intelligence because I wouldn’t be able to learn much about it. I can see that artificial intelligence is working in the marketing arrangements of Facebook and Google, so I think it is working in some places very well. But it’s a very complicated subject. And what its exact consequences are going to be, I don’t know. I’ve done so well in life by just using organized common sense, that I never wanted to get into these fields like artificial intelligence. If you can walk around the shores and pick up boulders of gold, as long as the boulders keep being found and picked up, I don’t want to go to the placer mining sifting vast amounts of data for some little edge. So you’re just talking to the wrong person. And I’m not at all sure how great…I don’t think artificial intelligence is at all sure to create an economic revolution. I’m sure we’ll use more of it, but what are the consequence of using artificial intelligence to become the world’s best (golden boy)? There may be places where it works, but we’ve thought about it at Geico for years and years and years, but we’re still using the old fashion intelligence. So I don’t know enough about it to say more than that.

備考です。デイリー・ジャーナル社ではなくバークシャーの話ですが、明日5月5日は株主総会の開催日です。例によって、Yahooのサイトで実況放映されるとのことです(日本時間はPM10:45より)。

Berkshire Hathaway 2018 Annual Shareholders Meeting Livestream (Yahoo! Finance)

2018年4月28日土曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(7)保険会社はつらいよ

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前回につづいて、デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答です。(日本語は拙訳。意味段落での改行追加あり)

(1:25:32)

<質問23> おはようございます、バフェットさん...いや、マンガーさん。

<チャーリー・マンガー> 「バフェット」と呼んでくださるとは、これは光栄の至りですね(爆笑)。

<質問者> バークシャーが出した最新の年次報告書では、これまでと同様に簿価の変遷が記されています。52年間で19ドルから17万2千ドルへと増加しており、年率にすると19%の成長になります。それでは、この並外れたパーセントにおける大きな割合が、保険事業によってもたらされたレバレッジによるものなのでしょうか。保険会社を使って投資資産を保有できるおかげで、たとえば14%のリターンをあげることで、簿価の20%増へとつながるのでしょうか。

<チャーリー> バークシャーの数字には、あきらかにレバレッジが若干埋まっていましたね。それを保険事業がいくらか供したのも明白です。だからといって、すっかり埋まっていたわけではなかったですよ。それが役立った年もありましたし、困ってしまうほどの大量の資金をアジート[・ジェイン]がもたらしてくれた年もありました。彼はその資金をウォーレン[・バフェット]へ回し、ウォーレンが20%増やしたという顛末です。ですから、保険事業とバークシャー・ハサウェイの間で目を瞠るような相乗効果の生じた年が、何度かあったわけです。

しかし基本的には、保険という事業はたやすく儲けられる道ではないですよ。かの商売には危険や困難が多々ありますし、こうして座っている間にも刻々と競争が激しくなっています。バークシャーが成功できたのは、大きな失敗をほとんどおかさなかったからです。大間違い、そう実に大きなものはなかったですね。そして成功のほうは、かなりありました。我々が成果をあげた頃とくらべると、現在の状況下でそれらすべてを果たすのは、相当むずかしいことでしょう。50年間を通して年率19%の成長を遂げる企業など、きわめて稀ですよ。まったくもって、純資産がですよ。実に珍奇なことです。そんなことが再びすぐに起こるとは思えませんね。デイリー・ジャーナル社で起こるなど、絶対ありえないですよ。

Question 23: Good morning Mr. Buffett…Mr. Munger.

Charlie: I’m flattered to be called Mr. Buffett. (laughter)

Question 23 Continued: The most recent annual report for Berkshire, as in the past reports, the growth in book value was shown and over the past 52 years it has grown from $19 to $172,000. Which represents a return of 19% a year. Is a large part of that outsized percentage attributable to the leverage inherent in the insurance company, such that you can own an investment in the insurance company which returns say 14% and it becomes 20% to book value?

Charlie: Well obviously there was a little leverage buried in the Berkshire numbers. Obviously the insurance business provided some of that. It’s not over-whelming in its consequences. There were years when it was helping. There were years when Ajit made so much money that it was almost embarrassing. And then he’d give the money to Warren and Warren would make 20% on the money. So there were some years when some remarkable synergies between the insurance business and Berkshire Hathaway.

But basically the insurance business is not some cinch easy way to make money. There’s a lot of danger and trouble in the insurance business and its more and more competitive all the time now as we’re sitting here. Berkshire succeeded because there were very few big errors…there were like no big errors, really big. And there were a considerable number of successes. All of which would have been much harder to get under present conditions than they were at the time we got the results. And there are very few companies that have compounded at 19% per annum for fifty years. It’s (a weird) in net worth. That is very peculiar. I wouldn’t count on that happening again soon. It certainly won’t happen at the Daily Journal.

2018年4月24日火曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(6)やっぱり、今は甘くない

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前回のつづきで、デイリー・ジャーナル社株主総会におけるチャーリー・マンガーの質疑応答です。今回は2件の話題を取り上げます。ひとつめがバークシャー・ハサウェイのアジート・ジェインについて、もうひとつがウォーレン・バフェットの発言したリターン率についてです。(日本語は拙訳。意味段落での改行追加あり)

(1:19:02)

<質問19> アジート・ジェインはどのようにしてバークシャーの再保険事業を一から築き上げたのですか。

<チャーリー・マンガー> すごく単純なことですよ。彼は毎週90時間ほど働きましたし、非常に頭が切れて、実に賞賛すべき人物でしたからね。取引においても、すこぶる楽しんでいましたよ。ウォーレン・バフェットとは毎晩話しをしていましたね。そのような人物が他にいるかどうか、探してみたらどうですか。しかしながら、彼も以前ほどの成果は出せないと思います。昔よりもむずかしいゲームになりましたからね。つまりはそういうことですよ。

Question 19: How did Ajit Jain build Berkshire reinsurance from scratch?

Charlie: Well it’s very simple. He worked about 90 hours a week. He was very smart. He’s very honorable. He’s very pleasant to deal with. And he talked every night to Warren Buffett. Just find somebody else like that. But he won’t do as well because the game is harder now than it was then. And that’s my answer to your question.

(1:21:05)

<質問21> ウォーレン・バフェットは1999年に次のように言っておられました。「自分の運用資金が100万ドルであれば、[年率]50%のリターンをあげられる」と。一方であなたは「現在の投資環境はむずかしい」とおっしゃっていますが、そうであれば彼の言ったリターンは、今日では何%になるとお考えですか。

<チャーリー> 辛抱強い上に積極果敢で非常に聡明な人物が、「売買高の少ない株式」や「珍妙な領域」といった往来の少ない場所を探しだそうとして、労苦を厭わずに働いていると思いますよ。ことごとく抜け目のない人物が少額の資本を運用しているのであれば、現在のような状況であっても高いリターン率をあげられることでしょう。しかし、この問題は現在の私自身には当てはまりません。私にとっては困難な仕事ですし、バークシャーにとっても困難です。デイリー・ジャーナル社にとっても、容易なところは微塵(みじん)もありません。

当社のような「企業」という形態において株式を保有するのは不利ですね。期せずして株式を保有するに至ったのであって、そこに金(かね)があったから株式を買ったわけです。功を奏したものの、当社の株主の立場から見れば、間接的に保有したことになる株式に達するまで、所得税が幾層にも立ち並んでいるわけですから、好ましいことではありません。内国歳入法が規定するところのCコーポレーションとして課税される公開企業では、公開株をひとたび保有してしまえば、所得税を含むあらゆる種類の要因が、投資上の判断に影響を及ぼすことになります。そうであれば、慈善財団あるいは個人年金プランを通じて投資したほうが、ずっと容易ですよ。

概して言えば、そつのない人物が少額の資金を運用するのであれば、かなりうまく増大させられると思います。しかし金額が大きくなるや否や、難しくなりはじめます。ご列席のみなさんと同じ立場にあった私の頃とくらべると、みなさんのほうがずっと難しい状況だと思いますね。しかし私は死にかけている身であり、みなさんには長い年月が残されています(笑)。ですから、「私が占めている立場と交代したい」と望む人はいないでしょうね。

Question 21: In 1999, Warren Buffett said that he could return 50% if he ran $1 million. Give what you said about the investment landscape today being more difficult, what do you think that number would be today?

Charlie: Well I do think that a very smart man who’s patient and aggressive in combination, is willing to work hard, to root around in untraveled places like thinly traded stocks and other odd places. I do think a person with a lot of shrewdness, working with a small amount of capital, can probably earn high returns on capital even today. However that is not my personal problem at the moment. And for me it’s hard. And for Berkshire it’s hard. And for the Daily Journal we don’t have any cinch either.

It’s disadvantageous to have securities in a corporate vehicle like the Daily Journal Corporation. It’s an accident that we have them there. We have them there because that’s where the money was. The way it’s worked out, it’s not desirable if you’re a shareholder and you have a layer of corporate taxes between you and your securities that are indirectly owned. And once you get public securities held in a public corporation taxable under sub-Chapter C of the internal revenue code, all kinds of factors, including income taxes affect your investment decisions. And it’s much easier to invest in charitable endowment or your personal pension plan.

Generally speaking, I would say, if you’re shrewd enough with small sums of money, I think you can compound pretty well. The minute you get bigger sums, I think it starts getting difficult. It’s way more difficult for all you people sitting here than it was for me when I was in your position. But I’m about to die and you have a lot of years ahead. (laughter) You would not want to trade your position for mine.

2018年4月20日金曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(5)ヒトラーから学んだこと

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前回に続いて、デイリー・ジャーナル社株主総会の模様です。今回からはチャーリー・マンガーが交わした質疑応答を取り上げます。米国に主眼を置いた現在のマクロ経済に関する話題です。(日本語は拙訳。意味段落での改行追加あり)

(1:13:13)

<質問17> GDP比でみた連邦政府の債務水準が上昇しており、同時に景気循環の終盤にあって巨額の財政赤字に陥っています。そういったあらゆる現状を憂慮されていますか。

<チャーリー・マンガー> 連邦政府の債務水準が上昇していることは、もちろん不安視していますよ。この国にとって新たな領域に突入しており、新たな領域というものはたぶんに危機が待ち受けているものです。その一方で、程度はともあれこの世界がそれなりにうまく進行する可能性もあります。政府のとる行動パターンが、「歴史に照らして信頼できるものだ」とみなさんや私が考えるものとは大きく異なっているとしてもです。もちろん、この100年間でインフレーションを避けてきた時期には、当時の政府は物価の安定を目標に掲げていました。一方、今の政府の目標は2%のインフレです。さあ、一体どうなることでしょうか。「だれにもわからない」というのが答えです。しかし、「長期的なインフレ率が2%を大きく超える」とする側に賭けるのが筋ではないですかね。私ならそちらに賭けますよ。ただし我々は過去の経験から、「マクロ経済という代物は実に奇異なもので、物理学のようには動かない」ことを学んでいます。今後10年間における[経済]システムは、過去10年間に存在したシステムとは別のものです。異なるシステムには異なる公式が当てはまります。しかしシステムがいつ変化したのか、そして公式がいつ変化すべきなのかは、だれも教えてくれません。

ですから、「世界がすっかりとんでもないことになる」とは想像していません。第1次世界大戦後のドイツでは何が起きましたか。通貨の価値が基本的にゼロとなり、ハイパー・インフレーションが起きたのです。実に大きな過ちを大規模におかしました。しかしそのあとどうなったのかと言えば、かなりの短期間で復活しました。どうやって実現したかというと、モーゲージ[=住宅ローン]を価値の裏付けとした新たなライヒスマルク[通貨]を制定したのです。そのモーゲージは、不当にもタダでモーゲージを剥奪された人たちが所有する住宅や地所へと戻されたものでした。新ライヒスマルクは十分うまく機能しました。そのおかげでドイツは大惨事からうまく回復し、大恐慌の時期を迎えられました。そして実のところ、大恐慌とヴァイマル時代のインフレが組み合わさったことによって、ヒトラーが登場したのです。大恐慌がなければ、彼は権力を手にできなかったと思いますよ。

その後何が起きたのかは、みなさんもご承知の通りですね。欧州を先導する経済力を1930年代末までに持つようになった国は、どこでしょうか。そう、ドイツです。報復の思いなどに焦がれていたヒトラーは、多大なる軍備を取りそろえたり、多くの兵士を訓練したりしました。このように偶然生じたケインズ主義によって、ヒトラーの率いるドイツは大いに繁栄しました。そして1939年の欧州において、ドイツはもっとも繁栄した場所となったのです。だからこそ、彼らはあれほどまでの大惨事から復活できたのですよ。ですから私は、「世界が動乱の時代を迎えるかもしれないと思い病むことはない」と思います。なぜなら回復する術があるからです。いや、かつてのドイツが取ったやりかたを擁護してはいませんよ(笑)。しかしそういった先例を学ぶことで、私が言うところの「思考する上での奇抜さ」を築けるものと思います。おろかな戦争で壊滅した国家が、さらに自国の通貨を崩壊させ、世界恐慌を通過した後に、1939年には欧州でもっとも繁栄した国家となったのですから、これは励まされることですね。みなさんも一安心してください(笑)。

Question 17: Are you concerned at all about the rising level of government debt to GDP at the same time that we’re running large deficits late in the economic cycle.

Charlie: Of course I’m concerned about the rising level of government debt. This is new territory for us, and new territories probably has some danger in it. On the other hand, it is possible that the world will function more or less pretty well, even with a very different pattern of government behavior than you and I would have considered responsible based on history to date. Of course if you look at the inflation we got out of the last hundred years when the announced objective of government was to keep prices stable. Now the announced objective is 2% inflation. Well what the hell’s going to happen? Well the answer is, we don’t know. But isn’t the way to bet that it’s going to be…inflation over the long-term is way higher than 2%? I think the answer is yes. But I think that we have learned from what has happened in the past that macro-economics is a very peculiar subject and it doesn’t work like physics. The system is different in one decade, than the system that was present in the last decade. Different systems have different formulas, but they don’t tell you when systems have changed, and when the formulas have to change.

So I don’t expect the world to go totally to hell because…well, look at what happened in Germany after World War I. They had a hyper-inflation when the currency basically went to zero in value. They really screwed up big time. And what happened?…Well what happened was they recovered from it pretty quick. And they did it by creating a new Reichsmark backed by the mortgages which they put back on the houses and properties of the people who had unfairly gotten rid of their mortgages at no cost. And that new Reichsmark was working pretty well and Germany had pretty well recovered from that catastrophe and then along came the Great Depression. And the combination of the Great Depression and the Weimar inflation really brought in Hitler. Without the Great Depression I don’t think he would have come into power.

What happened…now you’ve got…by the late 30’s, what was the leading economic power in Europe? It was Germany. Cause Hitler in his crazy desire for vengeance and so on, bought a lot of munitions and trained a lot of soldiers and so forth. And the accidental Keyensianism of Germany under Hitler caused this vast prosperity. So Germany was the most prosperous place in Europe in 1939. So all that catastrophe, they recovered from. So I don’t think you should be too discouraged by the idea that the world might have some convulsions. Because there’s a way of recovering. Now I’m not advocating the German system (laughter), but I do think knowing these historical examples creates what I call “mental ploys.” And you’d think that a country that destroyed (itself) in a silly war, destruction of your own currency, great depression, and by 1939 it’s the most prosperous country in Europe. It’s encouraging. I hope you feel better. (laughter)

2018年4月16日月曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(4)正しい生き方とは

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前回に続いて、デイリー・ジャーナル社株主総会でチャーリー・マンガーが発言した内容です。短いですが、大切なことがすし詰めの文章です。(日本語は拙訳。意味段落での改行追加あり)

だからと言って、我々のしてきたことや心構えが時代遅れで、もう役に立たないと言っているわけではないですよ。今はただ見込みが薄いというだけです。「釣り人のおきて」というのがありますが、これは秀逸です。釣りをする上での規則、その1が「釣りたい魚のいるところで釣れ」、その2が「規則その1を忘れるな」[過去記事]。投資においても同じことが言えますね。魚がたくさん集まっている場所では、釣り人の腕前の良さを気にする必要はありません。しかし大量に釣り上げられた場所では、どれほどの腕利きでもさしたる釣果はあげられないでしょう。現在のこの世界をみれば、いたるところが後者に当てはまります。

しかし、それで意気消沈するのは違いますね。そうではなく、人生とは先の長いゲームで、易しい時期もあればむずかしい時期もあり、好機がやってくれば不運に見舞われることもあるわけです。だから正しい生き方とは、「あるがままを受けいれ、最善を尽くす」、そう歩むことです。年を取るまでには、みなさんにも好機がやってくるでしょう。一生の間に二度ばかり、それで打ち止めかもしれません。しかし、そのうちの一度でも物にできれば上出来ですよ。さあ、偉ぶった物言いはここまでにして、質問を受けましょう。

That’s not to say what we did and the attitudes that we had are obsolete or won’t be useful, it’s just that their prospects are worse. There’s a rule of fishing that’s a very good rule. The first rule of fishing is “fish where the fish are”, and the second rule of fishing is “don’t forget rule number one.” And in investing it’s the same thing. Some places have lots of fish and you don’t have to be that good a fisherman to do pretty well. Other places are so heavily fished that no matter how good a fisherman you are, you aren’t going to do very well. And in the world we’re living in now, an awful lot of places are in the second category.

I don’t think that should discourage anyone. I mean life’s a long game, and there are easy stretches and hard stretches and good opportunities and bad opportunities. The right way to go at life is to take it as it comes and do the best you can. And if you live to an old age, you’ll get your share of good opportunities. It may be two to a lifetime, that may be your full share. But if you seize one of the two, you’ll be alright. Well with that pontification done, I’ll take questions.

2018年4月12日木曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(3)そう簡単には大儲けできない

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前回に続いて、デイリー・ジャーナル社株主総会でチャーリー・マンガーが発言した内容をご紹介します。(日本語は拙訳。意味段落で改行追加しました)

[29:59]

資産運用業界における報酬体系、これは実におもしろいですね。昔から多額の資金を扱ってきた存在として、例えばマサチューセッツ・インベスターズ・トラスト(MIT)があります。同社は、ミューチュアルファンド[=投資信託]が許可された頃からの草分けでした。たしかに当時は称賛を集め、敬意を払われるに足る会社でしたよ。しかし運用資産が7,000億ドルかそこらを超えて、若き男女をおおぜい雇って要員を拡大するなどして、投資先を最低でも50件以上に拡大させたとなれば、S&P[500]平均の成績を上回る確率は減少して、ほぼ皆無へと至るでしょうね。もちろん彼らは、顧客がどれだけ払ってくれるのか思案したでしょう。実際のベーシス・ポイントはどうであれ、MITは長期にわたって運用報酬をとっていくのですから、プレッシャーを感じたり、自分たちの世界がおびやかされていると感じているかもしれません。

もうひとつ、おびやかされている領域があります。もしも手数料として「1アンド20」、すなわち運用資産総額の1%分に加えて利益の20%分を徴収する、あるいはもっとひどく資産総額の2%及び利益の20%を徴収するとしましょう。そして運用資産が300億ドルほどもあるとすれば、野心満々な部下の若者らはこぞって、理不尽なまでの金持ちに一刻も早くなりたいと欲するでしょう。そんな状況で顧客のために好成績をあげられる可能性は、いかほどだと思いますか。そういった手数料をとる普通の組織であれば、顧客がよい成績をあげる確率はわずかでしょうね。だからウォーレン[・バフェット]がヘッジファンド勢と対決して勝ちをおさめたのですよ[過去記事]。ウォーレンがS&P平均に賭けたのに対して、彼らは選り抜きの天才たちに賭けました。非常に高額の手数料をとる者たちです。しかし、その高い手数料が首をしめるのです。

競争のはげしい世界では、単純に証券を買うだけで大きな優位を得ようとするのは、それは大変なことです。何十億ドルもの資金で取り組む上に、多額の手数料が足枷となる状況で、「証券会社側の出すリサーチなどをいろいろ読んで、身を粉にして働ければうまい成果があがる」と考えるなんて、なおさらです。それは幻想ですよ。幻じみた見方で世の中と向き合うのは、正しいやりかたとは言えませんね。「現在直面している世の中よりも、バークシャーが台頭し始めた頃のほうが単純だった」とは思いませんし、「我々がしてきたのと同じやりかたをすれば、同じような成果を得られる」とも思いませんね。

I think the incentive structure in investment management is very interesting. If you look at the people who have a ton of money from the past, like say the Massachusetts Investor Trust or something like that, which pioneered Mutual Fund investing in the early days after Mutual Funds were allowed. It was certainly a respectable and honorable place. But once it gets to be $700 billion or whatever it is, and hires a lot of young men and has a big staff and so forth…and young women too…and spreads its investment over 50 securities at least, the chances that it’s going to outperform the S&P average really shrinks to about zero. And of course they wondered what we’ll keep paying, whatever number of basis points Massachusetts Investor Trust’s management operation charges for the long-term, and they may feel under pressure and that their world is threatened.

Another place that’s threatened. Suppose you’re charging say 1 and 20, one percent off the top and twenty percent of profits…or even worse, two percent off the top and twenty percent of profits…and you’ve got $30 billion or so under management and an army of young ambitious people, all of whom want to get unreasonably rich very fast. What are your chances of doing better for your clients? Well the average entity that charges those fees, the chances the clients will do well is pretty poor. That’s the reason Warren won that bet against the hedge funds. Where he bet on the S&P averages and they bet on carefully selected bunch of geniuses charging very high fees. And of course the high fees will just kill you.

It’s so hard in a competitive world to get big advantages just buying securities, particularly when you’re doing it by the billion, and then you add the burden of very high fees and think that by working hard and reading a lot of sell-side research and so forth, that you’re going to do well. It’s delusional. It’s not good to face the world in a delusional way. And I don’t think, when Berkshire came up, we had an easier world than you people are facing this point forward, and I don’t think you’re going to get the kind of results we got by just doing what we did.

2018年4月8日日曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(2)長老一同の知恵深さ

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2月に開催されたデイリー・ジャーナル社株主総会の模様から、前回の内容を受けたチャーリー・マンガーの語りをご紹介します。読み手によって解釈に差がつきそうな内容ですが、年齢を重ねてきた人ならではの、厚みがある見解だと感じました。そして、こまかいジョークのほうも楽しめます。(日本語は拙訳。意味段落で適宜改行しています)

(27:23)

<チャーリー・マンガー> 諸君が資金を託している人物も、その中に含まれていますね。我々には長い期間は残されていません。だからと言って、当社がうまくやれないとは言っていませんが(笑)、運用期間の点では実に興味深いものがありますね。

風変わりなるバークシャー・ハサウェイの取締役陣は年寄りばかりですし、経営陣も高齢です。年寄りの取締役をそろえているという点でバークシャー・ハサウェイやデイリー・ジャーナル社を超える組織はただひとつ、モルモン教会だけですよ(笑)。モルモン教を統率する集団には、すばらしい性質が2つあります。ひとつめは、[預言者などの]聖職者は無給であること。もうひとつは、率いる人たちは男性ばかりで、齢はおよそ85歳から100歳であること(笑)。彼らはこの仕組みを、ほかの教会よりもうまく運営しているわけです。無給の聖職者、そして高齢の男性陣ですよ。当然ながら我々は、バークシャーとデイリー・ジャーナル社でその仕組みを真似しています(笑)。その上、ずいぶんと高齢なバークシャーの取締役諸氏よりも、当社の取締役のほうがさらに高齢者ときています。ウォーレンいわく、「バークシャーと比べて当社では、若い連中がどうなのかいつも見て回っている」とのことですよ(笑)。

これは少しばかり珍妙なことですね。この世の中でどの教会が、人々を幸せにし続けるなどで最高の成績をあげているかと考えたら、(音声不明瞭)モルモン教会だというわけですから。無給の聖職者、それも85歳以上の男性だけで統率しているとは、だれに想像できるでしょう。なんとも不可思議な結末です。その意外な結末を良しとすべきなのでしょうね。私自身、奇妙な成り行きばかりが続いた人生を歩んできたことは、なんといっても間違いないですし。今日ここにいること自体、おどろきですよ。ある人によれば、私の敬する老婦人が94歳の誕生日パーティーでこう言ったそうです。「こうしてここにいられて、すごくうれしいわ」。いや、実際はこう言ったのです。「こういうのがなくても、すごくうれしいわ」(笑)。つまり私が言いたいのはそういうことです。奇妙なことですよ。

Charlie: Those include those who you’re invested with. We do not have a long runway. That doesn’t mean the company won’t do well, (laughter) but in terms of investment management runway, it’s rather interesting.

Berkshire Hathaway’s peculiar in that its directors are so old and its managers are so old. The only institution that exceeds Berkshire Hathaway and the Daily Journal in terms of old directors in office is the Mormon Church. (laughter) The Mormon church is run by a group of people and they have two wonderful qualities. There’s no paid clergy in the Mormon church. And the ruling powers in a group of males between about 85 and 100. And that system is more successful than any other church. No paid clergy and very old males. Obviously we are copying that system at Berkshire and the Daily Journal. (laughter) And we are so much older than the Berkshire directors who are also very old. Warren says we’re always checking to see how the young fellows are doing at the Daily Journal versus Berkshire.

It is slightly weird. But the world is…who would have guessed that the church with the best record for keeping people happy and so on and so on…(inaudible)…which is the Mormon church. Who would have guessed that it had no paid clergy, run only by males who are about 85 and up? Now that is a very odd result. I guess I should like odd results, because I’m sure as hell living a life of a lot of odd results. And I’m very surprised to be here. Somebody said, an old woman whom I liked, said at her 94th birthday party, “I’m very pleased to be here”, in fact she said, “I’m very pleased to be anywhere.” (laughter) Well that’s what it is, and it is weird.

2018年4月4日水曜日

2018年デイリー・ジャーナル株主総会(1)理想のマネー・マネージャー

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チャーリー・マンガーが会長を務めるデイリー・ジャーナル社の株主総会が、今年の2月14日に開催されました。そのトランスクリプトを公開してくださっているサイトがありましたので、一部をご紹介します。まず今回は「飛び抜けたマネー・マネージャー」に関する話題です。(日本語は拙訳。また意味段落で改行しています)

Charlie Munger: Full Transcript of Daily Journal Annual Meeting 2018 (Latticework Investing)

(21:00)

<チャーリー・マンガー> (前略)我々取締役会のひとりが、「どんな投資アドバイザーでも有するべき特質」を列挙していましてね。彼は、プロの投資家を選び出す後継担当者へその内容を伝えたところ、その人物は即座に半数をクビにしてしまいました。そのような異色の結果となった以上、[取締役の]ピーター・カウフマン本人から資産運用者を選定する際に使う「ファイブ・エース」方式を説明してもらおうと考えたわけです。それではピーター、よろしく。

<ピーター・カウフマン> 「飛び抜けたマネー・マネージャーとして推薦できるのは、どのような人物なのか」をご説明する上で、これから示す一連の条件を思い至りました。それらが的確なものであってほしいと思いますし、それにあてはまる当人のかたが、実際に決定をくだす人物へ結びつけてほしいとも思います。そうなれば私からではなく、その最終的な決定者からの話として受けとめるわけですから、より説得力が増すことでしょう。さて、私の考えた5つの条件に「ファイブ・エース」と名付けましたが、「ファイブ・エース」とはワイルドカードを使用するポーカーにおいて最強の役を指しています。

では、それぞれのエースを挙げていきます。1枚目のエースは「曇りなき誠実さ」です。2枚目のエースは「顧客から請け合ったことは何であれ、難なく軽々とこなせる能力」です。3枚目のエースは「正負両方向に対して、本当に公正な手数料体系」です。4枚目のエースは「投資対象となる領域において競争が少ないこと」です。そして5枚目のエースが「長期的な投資期間が見込めること」です。つまり、その運用者がまだ若いことを意味します。さらに、「もしそのような5つの特性すべてを有するマネー・マネージャーを探し出せたとしたら、やるべきことが2つある」と申し添えておきます。ひとつめは、その人物へ速やかに資金を託すこと。ふたつめは、許されるかぎりの全資金を託すことです。この会場にはマネー・マネージャーの方がおられるのは承知していますし…、

<チャーリー> それはもう、そのとおりですよ!(笑)

<ピーター> …さらには会場におられるマネー・マネージャーを雇っている方もおられます。もしマネー・マネージャーを雇う立場であれば、その人物を評価する上ですぐれた基本原理となります。

<チャーリー> そのとおり。しかし、雇った人の半数をクビにするには費用がかさむでしょうね(笑)。

<ピーター> しかし、もしみなさん自身がマネー・マネージャーであれば、この5つを「希求すべきことがら」とするほうが、たぶんもっと重要でしょう。「マネー・マネージャーとして、自分はどのような特質を持ち合わせるべきか」。まずは完璧に信用できる人物たるべきですし、「やります」と発言したことは実際に造作なくこなせなければなりません。手数料については、正負どちら側でも基本的に公正な体系を採用すべきです。そして競争の少ない領域をさがすべきです。というのは周知のように、謎を秘めている事業には余地が残されているからです。競争の激しい領域だとしたら、一体どのようなたぐいの余地が残っているでしょうか(質問21参照)。最後の5番目ですが、みなさんのなかには非常に幸運な方がたくさんおられます。「長期の投資期間」の欄には、「該当する」との印をつけられるでしょう。史上最高のマネー・マネージャーの方には、4つのエースしか当てはまらない人がいます。それは5番目に該当しないからです。

One of our directors came up with a list of qualities that any investment advisor should have. And he gave it to a future picker of professional investors, and the picker immediately fire half his picks. And I thought that was such a peculiar outcome that I’ll let Peter Kaufman share with you his ‘five aces’ system for picking an investment manager. Peter, go ahead.

Peter Kaufman: So I came up with this list in giving reference to a very exceptional money manager. And I not only wanted to give what I thought was the correct reference, I wanted the person that I was giving the reference to, to in turn be able to relate this above to the real shot-caller. So that a compelling narrative would be transferred from me directly to the ultimate shot-caller. So I came up with what I call the “five aces”. The five aces being the highest hand you can have in a wild card poker game.

Ace number one is total integrity. Ace number two is actual deep deep fluency on whatever it is you say you’re going to do on behalf of the client. Ace number three is a fee structure that is actually fair in both directions. Ace number four is an uncrowded investment space. Ace number five is a long run-way. Meaning that the manager is reasonable young in age. I further add that if you ever find a money manager who possesses all five of these characteristics, there are two things you should do. One, you should put money with them immediately. And number two, put as much money as you are allowed to put. Now I know we have money managers in the room, and we have…

Charlie: Do we ever! (laughter)

Peter Kaufman: And we have people who employee money managers who are in the room. If you employ money managers, this is an excellent formula to evaluate your money managers.

Charlie: Yeah, but it will cost you to fire half those you’ve hired..or you have hired. (laughter)

Peter Kaufman: But perhaps more importantly, if you’re a money manager, this should be your list of five aspirations. What characteristics should I seek as a money manager to possess? I should be completely trustworthy. I should have actual deep fluency in what I claim that I’m going to do. I should adopt a fee structure that’s generally fair in both directions. I should seek an uncrowded space because as we all know, in business where there’s mystery, there’s margin. What kind of margin are you going to have in a crowded space? (Note: See Question 21) And number 5, many of you in here, you’re very fortunate. You get to check that box for having a long runway. Some of the best money managers in history only get four out of these five aces because they don’t qualify for number five.

備考です。訳文や原文中に記されている時刻のハイパーリンク先は、総会の模様を録音した音声データを聞くことのできるサイトになっています(チャーリーの発言はあいかわらず爆笑を誘っています)。残念ながら映像のほうは、Youtubeにアップロードされた様子はないようです。いずれそのときが来れば、そちらへの紹介リンクも追記します。

2017年12月28日木曜日

2017年デイリー・ジャーナル株主総会(4)投資した資産が半減した経験

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デイリー・ジャーナル社2017年株主総会でのチャーリー・マンガーに対する質疑応答から、彼が過去に経験した資産価格下落の話題です。なおチャーリーの語る後半部は、以前に投稿した内容の再掲になります。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問28> 1973年から1974年にかけて運営されていた投資パートナーシップの資産が半減したときには、何が起こったのですか。

<チャーリー> そう、すごく単純なことですよ。簡単そのものです。いい質問ですね、あれは教訓になりますから。私が運営していたパートナーシップの資産価値が、1年の間に50%下落したのです。市場としては40%程度下落しました。あのときの景気後退は30年に一度のものでしたよ。「市場を独占していた新聞社が、純利益の3,4倍で売られていた」ほどですからね。おっしゃるとおり、どん底のときには頂点から50%落ちましたよ。保有したバークシャー株がそれだけ下落したのは過去に3回ありましたね。

私からすれば、市場の下落は人生に付き物だと考えますね。長期にわたってこのゲームに関わるつもりならば、そうする必要がでてきます。値段が半分まで下落したときでも、やたらと思い悩まずにやり過ごせますよ。より良い生き方を心がけていれば、資産半減の事態となっても、沈着冷静・端麗優雅に受け流せるでしょう。下落を回避しようとは試みないように。結局はやって来ることです(拍手)。「自分には来ない」と言う人は、十分果敢に投資していないからですよ。

Question 28: What happened 1973 and 1974 when your investment firm lost over half?

Charlie: Oh, that’s very simple. That’s very easy. That’s a good lesson. That’s a good question. What happened is the value of my partnership where I was running, went down by 50% in one year. Now the market went down by 40% or something. It was a once in 30 year recession. I mean monopoly newspapers are selling at 3 or 4 times earnings. At the bottom tick, I was down from the peak, 50%. You’re right about that. That has happened to me 3 times in my Berkshire stock.

so I regard it as part of manhood. If you’re going to be in this game for the long pull, which is the way to do it, you better be able to handle a 50% decline without fussing too much about it. And so my lesson to all of you is conduct your life so that you can handle the 50% decline with aplomb and grace. Don’t try to avoid it. (applause) It will come. In fact I would say if it doesn’t come, you’re not being aggressive enough.

備考です。バークシャー株の価格が半減した3回の時期は、株価チャートで確認したところ、おそらく2007-2009年、1998年-2000年、1973-1974年かと思われます。また1987年のブラック・マンデーの時期にも、4割弱の下落があったようです。このことから、よく言われる「10年周期」がバークシャー株によっても確認できますね。

2017年12月8日金曜日

2017年デイリー・ジャーナル株主総会(3)無駄な1年を過ごさないために

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デイリー・ジャーナル社2017年株主総会でのチャーリー・マンガーに対する質疑応答から、3つめの引用です。今回もおなじみの話題ではありますが(過去記事1,2など)、話題がいろいろな方向へと展開していて、楽しんで読めました。なお文中で登場する言葉「アイデア」は日本語に訳さずにそのまま使っていますが、あえて訳せば「持論・自説・意見・見解・哲学・姿勢・信条」といった言葉になるかと思います。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳。また意味段落にて適宜改行を追加)

The hardest idea you have ever destroyed? (Youtube)

<質問20> 以前に、「愛してやまないアイデアのひとつも葬っていない1年は、無為に過ごしただけの1年だ」とおっしゃっていました。また「質の追求」へと転身するのが困難だったウォーレン・バフェットを誘導された、という話も有名です。それでは、ご自身にとって捨て去るのがもっとも難しかったアイデアのことをご説明頂けますでしょうか。

<チャーリー> それはもう、愚かしいことを散々やらかしてきましたよ。そういったまずいアイデアを今も抱えているからこそ、それらを葬るのに忙しいわけです(笑)。数あるうちから一つに絞り込むのはむずかしいですね。しかし悪しきアイデアを葬り去るのは、実のところ楽しみながらやっていますよ。まあ言ってみれば、「元からのアイデアを葬ることは、我が定めだ」と考えているからです。古いアイデアのせいで新たな優れたアイデアを取り込めないことが、人生における主たる問題となっている人たちが実にたくさんいます。これぞ、人の世におけるお決まりの成り行きですね。ドイツの言い習わしに、「少年老い易く、学成り難し」というものがあります。これはだれもが直面する問題ですよ。「学成り難し」なのは、身についてしまった愚かなアイデアを取り除けないからです。

一方で、その問題を抱えていたほうがうまいこともあります。婚姻ですね。つまり婚姻関係を安定させるには、古いアイデアにこだわったほうが好ましいかもしれないわけです(軽笑)。しかしほとんどの領域では、身についた古いアイデアを除去したいと望むでしょう。それが良き習慣となれば、世にある競争の激しい分野において、他人がひどくつたないのに反して大幅な優位をもたらしてくれますよ。そういった悪しきアイデアのことを盛大に語りながら、同時にそのアイデアを叩くわけです。結局のところ、手にしたアイデアに対して意見をぶつけ合ったり、語ったりするのですよ。ただし言うまでもないですが、説得しなければならない人物とは、そのアイデアを身につけた自分自身です。そういったアイデアを激しく叩くわけです。そのこともあって私はこの世界のことを、たとえば「FRBがどのようにふるまうべきか」といった持論をあまり話さないわけです。ものごとをどのように運営すべきか他人に話すことを考えている間にも、そのアイデアを自分にも教え込もうとしていますから。みなさんも、物事を考える上でのさまざまな習慣を身に付けたほうがいいですよ。

若者があらゆる問題の原因などを盲信しているというのは、よくないと思いますね。なんでも知っていると自認する17歳の若者には、中絶や中東における外交政策などについてどうすべきかを世界中に教え授けたいと考える者もいます。しかし確信していることを滔々と論ずる彼らのしていることは、すでに有したアイデアを叩いているだけですよ。多くのことを学んで身に付け始めたときとしては、そのやりかたは実に愚かしいアイデアですね。

ですから、愚かなアイデアを取り除こうとする習慣は非常に大切です。私は愚かしいアイデアを葬るたびに、「よくやった」と自分自身を褒めてやっていますよ。「自分自身の良き振る舞いを、本当に強化できるのか」と問われるかもしれません。ええ、できますとも。他人が褒めてくれなくとも、自分で自分を褒めることはできます。「自分のことを褒めてやる」、私にはそのような重要な仕組みが備わっています(笑)。こよなく愛でるアイデアを葬るたびに、自分を褒めたたえるのです。くりかえし褒めてやることもあります(笑)。諸君も同じ考え方を習慣づけたほうがいいですよ。「新しいアイデアを受け入れられるようになる」、そのために支払う対価は実に高額です。実際問題として、新たなアイデアを取り入れられないゆえに多くの人が命を落とすわけですから。

Question 20: You’ve said, “any year in which you don’t destroy one of your best loved ideas is a wasted year.” It’s well known that you helped coached Warren towards quality which was a difficult transition for him. I was wondering if you could speak to the hardest idea that you’ve ever destroyed.

Charlie: Well I’ve done so many dumb things. That I’m very busy destroying bad ideas because I keep having them. So it’s hard for me to just single out from such a multitude. But I actually like it when I destroy a bad idea because I think I’m on the…I think it’s my duty to destroy old ideas. I know so many people whose main problem of life, is that the old ideas displace the entry of new ideas that are better. That is the absolute standard outcome in life. There’s an old German folk saying, “We’re too soon old and too late smart.” That’s everybody’s problem. And the reason we’re too late smart is that the stupid ideas we already have, we can’t get rid of!

Now it’s a good thing that we have that problem, in marriage that may be good for the stability of marriage that we stick with our old ideas. But in most fields you want to get rid of your old ideas. It’s a good habit and it gives you a big advantage in the competitive game of life…other people are so very bad at it. What happens is, as you spout ideas out, what you’re doing is you’re pounding them in. So you get these ideas and then you start agitating them and saying them and so forth. And of course, the person you’re really convincing is you who already had the ideas. You’re just pounding them in harder and harder. One of the reasons I don’t spend much time telling the world what I think about how the federal reserve system should behave and so forth. Because I know that I’m just pounding the ideas into my own head when I think I’m telling the other people how to run things. So I think you have to have mental habits…

I don’t like it when young people get violently convinced on every damn cause or something. They think they know everything. Some 17 year old who wants to tell the whole world what ought to be done about abortion or foreign policy in the middle east or something. All he’s doing when he or she spouts about what he deeply believes is pounding the ideas he already has in, which is a very dumb idea when you’re just starting and have a lot to learn.

So it’s very important that habit of getting rid of the dumb ideas. One of things I do is pat myself on the back every time I get rid of the dumb idea. You could say, ‘could you really reinforce your own good behavior?’ Yeah, you can. When other people won’t praise you, you can praise yourself. I have a big system of patting myself on the back. Every time I get rid of a much beloved idea I pat myself on the back. Sometime several times. And I recommend the same mental habit to all of you. The price we pay for being able to accept a new idea is just awesomely large. Indeed a lot of people die because they can’t get new ideas through their head.

2017年11月20日月曜日

2017年デイリー・ジャーナル株主総会(2)「とびっきり効果」の発見

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デイリー・ジャーナル社の2017年株主総会でチャーリー・マンガーが交わした質疑応答から、二つめの引用です。今回は、チャーリーが残した指折りの知的成果である「とびっきり効果」(Lollapalooza effect)についてです。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問13> 現在起こっているできごとで、気にかかっていることは何ですか。またそれらを特定するために、とびっきり効果のような学際的アプローチをどのように使っておられますか。

<チャーリー・マンガー> かつて私は、心理学のことを何もわかっていなかったものです。しかしそれは自分の手抜かりだと気づき、心理学の主要な初級教科書を3冊買って通読しました。私が「とびっきり効果」という用語を生みだしたのは、その時分でした。もちろんですが、まるでなっていない心理学者よりも、チャーリー・マンガーたる自分のほうがうまくやれると考えましたよ。とびっきり効果はどの本にも書いておらず、みずから思いついたアイデアのひとつです。これは、3つや4つの動向が同一の状況下で同時に働いたときに生じます。線形ではない働きをみせたとき、とびっきりな効果が生じたと言えるわけですね。[参考記事]

ところが心理学の研究者たちは、4つや5つの物事が同時に発生する実験を行うことができませんでした。彼らにしてみれば、実に複雑だったからですね。論文も出せませんでした。それゆえ彼らは、己の専門領域における最も重要なことを無視し通したわけです。もちろんながら、重要なことは他にもありましたよ。心理学を他のあらゆるものと総合する仕事です。ところが心理学の専門家である彼らは、「ほかのあらゆる物事」についてまるでわかっていなかったのです。これはやっかいですね。他の物事を知らずして、わかっている物事と総合するなどできませんよ。だから私がとびっきりな問題へ達することになったわけです。まあ実際のところ、その後も私は一人ぼっちでしたがね(笑)。彼の領域で名が通っているわけでもないですし。さはさりながら、私の考えは正当無欠なものですよ。[参考記事12]

Question 13: Question about Lollapalooza effects. What current event is causing you concern and how can you use that inter-disciplinary approach to spot them?

Charlie: Well, I coined that term the “Lollapalooza effect” because when I realized I didn't know any psychology and that was a mistake on my part, I bought the three main text books for introductory psychology and I read through them. And of course being Charlie Munger, I decided that the psychologists were doing it all wrong and I could do it better. And one of the ideas that I came up with which wasn't in any of the books was that the Lollapalooza effects came when 3 or 4 of the tendencies were operating at once in the same situation. I could see that it wasn't linear, you've got Lollapalooza effects.

But the psychology people couldn't do experiments that were 4 or 5 things happening at once because it got too complicated for them and they couldn't publish. So they were ignoring the most important thing in their own profession. And of course the other thing that was important was to synthesize psychology with all else. And the trouble with the psychology profession is that they don't know anything about ‘all else'. And you can't synthesize one thing you know with something you don't if you don't know the other thing. So that's why I came up with that Lollapalooza stuff. And by the way, I've been lonely ever since. (laughter) I'm not making any ground there. And by the way, I'm totally right.

2017年11月4日土曜日

2017年デイリー・ジャーナル株主総会(1)チャーリー・マンガーかく語りき

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バークシャー・ハサウェイの株主総会では、チャーリー・マンガーはウォーレン・バフェットの引き立て役としておとなしくしていますが、チャーリーが会長を務めるデイリー・ジャーナルの総会ではかなりの別人ぶりで、堂々とした独り舞台をみせています。距離が狭いこともあるせいか、参列者からの笑い声も頻繁にあがり、米国で一番楽しい総会かもしれません。


と、そのようなことを書けるのも、Youtubeに投稿されている映像を自宅で観られるからです。こちらのリンク先映像では投稿者の方が質疑項目ごとの目次を作成されており、ありがたいばかりです。(参列者爆笑シーンの一例は23分過ぎ)

Billionaire Charlie Munger: Advice for Business and Life (2017) (Youtube)

また別の方のサイトにはトランスクリプトがあります。

Charlie Munger: Full Transcript of Daily Journal Annual Meeting 2017 (HTML)

今回からの投稿では、今年の2月に開催された株主総会での質疑応答の様子を、上記の資料からご紹介します。今回の話題は、「ウォーレンが学び続けたことがバークシャー成功の要因だった」とする質疑の後半部分です(上記トランスクリプトのQ14)。バークシャーが2006年にイスカル社を買収したときの価格水準の話題と、航空会社への投資の話題です。(日本語は拙訳)

<チャーリー・マンガー> ベン・グレアムならば、イスカル社を買うようなことはしませんでしたよ。簿価の5倍になる金額を支払うのは、グレアムのやりかたではなかったですからね。ウォーレンはグレアムのもとで学びましたが、その後もずっとうまく学んだわけです。私自身も上手に学んできました。このゲームのいいところは、際限なく学び続けられる点ですね。実際のところ、今でもそうしていますから。

今や我々は、「突如として航空会社株を買うようになったのか」と報道されているのですよ。航空会社という商売について過去に我々がなんと発言していたか、覚えていますか。「そこまでひどいビジネスがあるとは、ご冗談でしょう」と考えていたのです。それが今では、航空会社関連の持ち株すべてを合わせると、中小の航空会社を1社分保有していることになります。我々は同じことを鉄道会社でもやりました。「鉄道なんてちっとも良かないね。事業者が多すぎて、トラックとの競争もあるし...」と言ったものです。80年間にわたってひどいビジネスだったことはたしかです。しかし彼の業界にはとうとう4つの大会社しか残っておらず、うまいビジネスへと変わりました。それと似たようなことが航空会社でも起きているわけですよ。

Ben Graham would have never bought Iscar. He paid 5 times book or something for Iscar. It wasn’t in the Graham play. And Warren who learned under Graham, just, he learned better over time. And I’ve learned better. The nice thing about the game we’re in, is that you can keep learning. And we’re still doing it.

Imagine we’re in the press…for all of a sudden (buying) airline stocks? What have we said about the airline business? We thought it was a joke it was such a terrible business. And now if you put all of those stocks together we own one minor airline. We did the same thing in railroads, we said “railroads are no damn good, you know there’s too many of them, truck competition…” And we were right it was a terrible business for about 80 years. But finally they got down to four big railroads and it was a better business. And something similar is happening in the airline business.

工具メーカーのイスカルに対して簿価の5倍を払ったという事実は、初見あるいは見逃していました。あくまでも個人的な見積もりですが、簿価5倍の買収水準はPER25倍から30倍になったとも考えられます。ウォーレンであれば出し渋りそうな金額です。しかし、うろ覚えですがイスカルの買収はチャーリーが熱を入れていたと記憶しています。そうだとすれば、ある程度の高値は納得できます。元から非公開企業だったのでイスカルの経営実態はよくわからないままですが、バークシャーの年次報告書によれば従業員数がこの10年間でほぼ倍増しており、着実に成長している様子がうかがえます。

2017年10月24日火曜日

いずれ来たる下落を見やった投資家3名の言葉

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今回は、バリュー志向のマネージャーが市場の下落について最近触れていた文章を3つご紹介します。(日本語は拙訳)

はじめは、バリュー・ファンドFPAクレセントのマネージャーとしてよく取り上げているスティーブン・ローミック氏の文章です。彼が書いた第3四半期の顧客向けレター[PDF]から引用します。

たいていの場合、わたしたちが株価を追いかけるのは下落しているときだけです。しかし資金があふれ返っている現在の世界は、喜んで金額を上積みする投資家ばかりの状況です。そのようなわけでわたしたちは、クレセント・ファンドが旨とする保守的な姿勢を維持する道を選んでいるわけです。

「辛抱強く書き物を読み、経営者と対話し、きちんと考える」、これが取り得る最良の道だと確信します。[先日亡くなった]トム・ペティが書いたように、そして私たちもちょうど1年前の結びで書いたように、「待っている間がいちばんつらい」ものです。

We typically only chase price when it is falling. Today though, a world awash in capital has found investors willing to pay ever higher prices. We, therefore, prefer to maintain Crescent’s conservative posture.

We believe the best course is to patiently read, speak to business managers, and just think. As Mr. Petty wrote and as we closed exactly a year ago, “The waiting is the hardest part.”

次はウォーリー・ワイツ氏の文章です。「オマハのバリュー・マネージャー」として知られる人物で、彼についても何度か取り上げたことがあります。こちらも第3四半期の顧客向けレターからの引用です。

投資の世界では、こんな古いジョークがあります。新しく登場した巨大なビジネスの盛衰過程において、成長が鈍化して楽観的過ぎた見通しが実現不可能だったとわかると、成長株投資家は持ち株をGARP投資家(Growth At a Reasonable Price; 成長株を妥当な金額で買う)へ売却します。つづいてその株はバリュー投資家へ売られ、最終的にはどん底バリューを待ち受けていた連中の手にわたる、という筋書きです。それぞれの段階において買い手となる者は、「失望は一時的にすぎない、あるいは株価が下落したおかげで十分に割安になっている」と評価します。その際に、深刻な問題を抱えた「落下するナイフ」と、一時的に誤解されている割安な証券とを判別できること、それが決め手となります。

There is an old joke in the investment business that in the life cycle of a great new business, as growth slows and overly optimistic projections fail to materialize, growth investors sell to GARP (growth at a reasonable price) buyers, who sell to value investors, with the shares ultimately ending up in the hands of the deep value crowd. At each stage, the new buyers are making the assessment that the disappointment is temporary or that the stock price has declined enough to create a bargain. The trick is to be able to distinguish between the seriously troubled “falling knife” and the temporarily misunderstood undervalued security.

最後がチャーリー・マンガーです。今年の2月に開催されたデイリー・ジャーナル社の株主総会で彼が発言した内容です。

私からすれば、市場の下落は人生に付き物だと考えますね。長期にわたってこのゲームに関わるつもりならば、そうする必要がでてきます。値段が半分まで下落したときでも、やたらと思い悩まずにやり過ごせますよ。より良い生き方を心がけていれば、資産半減の事態となっても、沈着冷静・端麗優雅に受け流せるでしょう。下落を回避しようとは試みないように。結局はやって来ることです。「自分には来ない」と言う人は、十分果敢に投資していないからですよ。

I regard it as a part of manhood. If you’re going to be in this game for the long haul which is the way to do it. You better be able to handle a 50% decline without fussing too much. Conduct your life so you can handle a 50% decline with aplomb and grace. Don’t try to avoid it. It will come. And if it doesn’t come I’d say your not being aggressive enough”.

2017年9月8日金曜日

2017年バークシャー株主総会(5)オマハの大御所、アップル社を語る

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バークシャー・ハサウェイ年次株主総会の質疑応答のつづきです。今年はテクノロジー業界の話題が何度も登場しましたが、今回もそのひとつです。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

「よく知っている企業の株を買うこと」について

<質問> 投資上の助言として、「自分が知るものを買うこと」といつもおっしゃっていました。バフェットさんはテクノロジー通として有名ではありませんが、今ではテクノロジー企業に投資されていますし、たびたび話題にもあげられています。しかし、ツィートした件数はこの4年間で9件だけです(笑)。

<バフェット> あのツィートのほかは、僧院に通って修行していたものですから(笑)。

<質問> 「オマハの賢人」が「オマハのテクノロジー大御所」となったのはなぜですか。

<バフェット> (笑いながら)テクノロジー業界について、それほどは語っていないと思います。IBMには大きな投資をしましたが、うまくいきませんでした。資金を失ってはいませんが、強気相場だったことを考えると、大幅におくれをとりました。少し前からですが、アップル社の株を大量に保有しています。ある種の経済的特性の面で、同社は消費財を扱うほうの企業としてとらえています。同社の製品でできることや、他の人たちがある面において追い越そうと前進している可能性からすれば、同社にはテクノロジーに関する莫大な部分があります。保証はできませんが、2打数0安打でなくて1安打はできると思います。いずれわかることでしょう。

しかし「テクノロジーに興味を持っている15歳の若者と同じ水準の知識がある」と言い張るつもりはさらさらありません。消費者行動という点である程度は読めるかもしれない、と考えているだけです。その点についてはたしかに多くの情報を手に入れられますし、それに基づいて消費者が将来とる行動がどうなるのか成り行きを描いてみることができます。

証券投資の分野では、これからも失敗をやらかすと思います。過去にはテクノロジー業界以外で失敗を出してきました。どの業界に取り組もうとも、10割の打率はあげられません。保険業界のことはかなり知っておりますが、過去には保険株で1,2回損を出したことがあります。10割を打つことはできません。しかし、うまれてこのかたテクノロジーに関する実際の知識は、実のところまったく身につけたことがありません(笑)。

<マンガー> アップルの株を買ったのは、非常に良い兆候だと思いますよ。「正気でなくなった」か、「学習している」のどちらかを示していますね(笑)。私としては、「学習している」とする理由のほうを取りたいですが。

<バフェット> ええ、わたしもそちらですよ(笑)。

(PDFファイルのp.34。Yahoo! Finance映像では5:10:30)

BUY WHAT YOU KNOW

Q. Your investment advice has always been to buy what you know. You are not known for being a tech guy, but you are now investing and talking more about tech companies. You’ve only tweeted nine times in the last four years.

Warren Buffett: It was either that or go to a monastery. I don’t think I’ve talked that much about tech companies. I made a large investment in IBM, which has not turned out that well. We haven’t lost money. In terms of the bull market we’ve been in, it has been a significant laggard. Fairly recently, we took a large position in Apple, which I do regard more as a consumer goods company in terms of certain economic characteristics. It has a huge tech component in terms of what that product can do or what other people might come along to do to leapfrog it in some way. I think I’ll end up being one for two instead of 0 for 2, but we will find out.

I make no pretense whatsoever of being on the intellectual level of some 15-year old that has an interest in tech. I may have some insights into consumer behavior. I certainly can get a lot of information on consumer behavior and then try to draw inferences as to what consumer behavior is likely to be in the future.

I will make some mistakes on marketable securities. I’ve made them in other areas other than tech. You will not bat 1000 no matter what industries you try to stick with. I know insurance pretty well, but I think I’ve lost money on insurance stocks once or twice over the years. You don’t bat 1000, but I’ve gained no real knowledge about tech since I was born actually.

Charlie Munger: I think it’s a very good sign that you bought Apple. It shows either one of two things. Either you’ve gone crazy or you’re learning. I prefer the learning explanation.

Warren Buffett: So do I, actually.

2017年9月4日月曜日

2017年バークシャー株主総会(4)アマゾン社について

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前回からつづきます。バークシャー・ハサウェイ年次株主総会の質疑応答から、アマゾン社のCEOジェフ・ベゾスの話題です。(日本語は拙訳)

アマゾン社について

<質問> ジェフ・ベゾスを称賛されていますが、なぜアマゾンへ投資しなかったのですか。

<バフェット> あまりにボンクラだったせいで、なにが起ころうとしているのかわかっていませんでした。ジェフのことはずっと以前から褒めたたえてきましたし、彼のすることも観察してきました。しかし、これほどの規模まで成功するとは思いもしませんでした。ましてAWSというクラウド・サービスによってできる商売の可能性は、考えもしませんでした。小売事業を育てる一方でテクノロジー業界を一変させる可能性について質問されていたら、「それは大穴狙いだ」と答えたと思います。同社の傑出した事業運営ぶりを過小評価していたのです。オンラインでやることを思い描くのもそうですが、それにはたくさんの能力が必要です。

1997年の年次報告書で、彼はロードマップを描いています。そして彼は、離れ業に継ぐ離れ業を決めていきました。3,4か月前にチャーリー・ローズが彼にインタビューをしていましたが、ご覧になっていない方はCharlierose.comで話を聴いてみてください。いろんなことが学べると思います。少なくともわたしはそうでした。

同社の株式は常に割高だと思えました。しかし、彼が今日いる地位に到達できると考えたことは一度もありませんでした。まさに卓越した人だと思ってはいましたが、3年前や5年前、8年前、12年前にも、ここまで来るとは想像できませんでした。ところで、チャーリーはなぜ見逃したのですかね(笑)。

<マンガー> 易々とですよ。同社の実行していることが非常に難しいものだったからです。その当時と同じように将来も順風満帆なのだろうか、まったくもって不明瞭でした。アマゾン社が到達した業績を読めなかったことは、寸分も後悔していないですね。それよりも別件のほうが容易でした。若干はポカをしたと思いますが。

<バフェット> (笑いながら)そちらの方面は追いかけないようにしましょうか(笑)。

<マンガー> グーグル社のことですよ。

<バフェット> (軽くうなづきながら)たしかに、いろいろと見逃しましたね 。

<マンガー> そう、これからもそうなりますよ(笑)。しかしウォーレン、ありがたいことにすべてを見逃してはいませんよ。これは我々の秘密ですが、全部は見逃していません(笑)。

<バフェット> 次の質問に進んだほうがいいですね(拍手)。チャーリーの話が具体的になってきましたから。

(PDFファイルのp.36。Yahoo! Finance映像では5:24:30)

AMAZON

Q. You admire Jeff Bezos. Why have you not invested in Amazon?

Warren Buffett: I was too dumb to realize what was going to happen. I admired Jeff for a long, long time and watched what he was doing. I did not think he could succeed on the scale he has or even think about the possibility of doing anything with Amazon web services or the cloud. If you asked me the chances that while he was building up the retail operation, he would also be doing something that was disrupting the tech industry - that would have been a longshot for me. I underestimated the brilliance of the execution. It is one thing to dream about doing this stuff online, but it takes a lot of ability.

You can read his 1997 annual report, and he laid out a roadmap. He has done it and done it in spades, and if you haven’t seen his interview with Charlie Rose three or four months ago - Charlierose.com, go to it and listen to it because you will learn a lot, at least I did.

The stock always looked expensive. I really never thought he would be where he is today. I thought he was really brilliant. I did not think he would be where he is today when I looked at it 3, 5, 8, or 12 years ago. Charlie, how did you miss it?

Charlie Munger: It was easy. What was done there was very difficult. It was not at all obvious that it was all going to work as well as it did. I don’t feel any regret about missing out on the achievements of Amazon. Other things were easier, and I think we screwed up a little.

Warren Buffett: We won’t pursue that line.

Charlie Munger: I meant Google.

Warren Buffett: We missed a lot of things.

Charlie Munger: And we will keep doing it. Luckily, we don’t miss everything, Warren. That’s our secret. We don’t miss them all.

Warren Buffett: We better move on. He may start getting specific.

2017年8月28日月曜日

2017年バークシャー株主総会(3)本源的価値の複利成長について

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前回のつづきです。バークシャー・ハサウェイ年次株主総会の質疑応答から、企業価値の成長率についてです。(日本語は拙訳)

本源的価値の複利成長について

<質問> バークシャーの本源的価値は、これまでに複利換算で年間何パーセント増加してきましたか。また今後はどうなりそうですか。

<バフェット> 本源的価値は、過去にさかのぼる形でしか算出できません。しかし本来の定義はそうではなく、未来を向いています。つまり、現在から判定最終日までのあいだに創出されると予想した現金を、その期間において適切と思われる利率で割り引いた金額です。30年や40年間でみると、金利はとても広い幅で変動します。たとえば10年という期間をえらび、開始時期が[今から10年前の]2007年5月としたときに、「本源的価値が増加する割合は複利ベースでどうなるか」と問われれば、年間10%になるだろうと答えたと思います。しかし現実には、ありがたくない状況がやってきた期間でした。

10%を達成するのはかなり難しい課題ですし、この低金利の環境がつづくとすればほぼ不可能です。ご質問にお答えする前に、ある変数が将来どうなるのかひとつだけ教えてもらえるとしましょう。その際にわたしが知りたいのは、GDP成長率やだれが大統領に選ばれるかではありません。今後10年や20年における金利が平均としてどうなるかを知りたいです。現在みられている金利構成が平均だとしたら、10%の成果を出すのはとてもむずかしいものです。しかし生じうる金利の確率分布全体でみるのであれば、高望みではありますが10%成長は不可能ではないと思います。

「この低金利が長期間にわたって継続するなどありえない」と思えるのであれば、25年前の日本をふりかえってみてください。かの国の低金利がどのように永らえるのか、思い描くことはできませんでした。そして現在もなお同じ状況です。金利動向を予測するのは容易だ、とは微塵も考えていません。しかし残念なことに、うまいお答えを返すには金利を予測することが不可欠になります。

バークシャーのあげる成績がお粗末な程度におわる可能性は、他をあたった場合と同じように低いと思います。しかし驚くほどの高い率になる可能性も、同じように低いでしょう。いちばん近いのは10%近辺の範囲だと思いますが、その際の金利は劇的ではないものの高めになると仮定しています。つまり、この7年間にみられたより若干高い利率が次の10年あるいは20年の間に生じる、との仮定です。

<マンガー> 当社の現在の規模を考慮すると、過去にあげた栄光とくらべれば、今後のリターン率には陰りが生じるでしょうね。しかし以前からそう発言してきましたし、今やそれを証明している最中です(笑)。

<バフェット> チャーリー、そんな想いのまま人生お別れでいいのですか(笑)。

<マンガー> 当社の保有する事業は平均してみれば、たとえばS&P500各社の平均よりも高い投資価値があると思います。ですから、みなさんのような株主諸氏がひどい問題をかかえているとは思いませんね。

<バフェット> S&P500の各社を全体としてとらえると、株主志向の面では当社のほうが強いです。当社には、私企業のオーナーと同じようにものごとを決定する文化があります。これは多くの企業が持っていない贅沢品です。公開企業のCEOにお会いするたびに、いくつか質問をしています。そのひとつが、「会社全体を自分だけで保有しているとしたら、どのようにやりかたを変えますか」という質問です。たいていは、「あれをしたり、これをしたり、あるいは何とやら」といった答えが返ってきます。しかし、その相手から同じ質問を受けたとしたら、わたしならば次のように答えます。「自分たちだけで全株式を保有している場合にやることと、まったく同じように実行してきました」と(拍手)。

<マンガー> もうひとつ優位がありますよ。才気煥発であろうとする人は、世間に大勢います。しかし我々は、合理的でありつづけようとするだけです。これは大いなる優位ですね。利発であろうとするのは危険ですよ。賭けに出ているときは、なおさらです(拍手)。

(PDFファイルのp.11。Yahoo! Finance映像では1:26:00)

COMPOUNDING INTRINSIC VALUE

Q. At what rate has Berkshire compounded intrinsic value and at what rate can intrinsic value be compounded in the future?

Warren Buffett: Intrinsic value can only be calculated in retrospect, but the true definition would be the cash to be generated between now and judgment day discounted at an interest rate that seems appropriate at the time. That’s varied enormously over a 30 or 40-year period. If you pick out 10 years, and you’re back to May of 2007, we had some unpleasant things coming up. I’d say we’ve probably compounded intrinsic value about 10% annually since then.

I think that’s tough to achieve - almost impossible to achieve if we continue in this low interest rate environment. If you ask me to give the answer to the question - if I could only pick one statistic to ask you about the future before I gave the answer, I would not ask you about GDP growth or who was going to be president, I’d ask you what the interest rate is going to be over the next ten or twenty years on average. If you assume our present interest rate structure is likely to be the average, I would say it would be very difficult to get the 10%. If I were to pick for the whole range of probabilities on interest rates, I would say that that rate might be doable.

If you’d say we can’t continue these low interest rates for a long time, I’d ask you to look at Japan 25 years ago. We couldn’t see how their low interest rates could be sustained. We are still looking at the same thing - I don’t think it’s easy to predict the course of interest rates at all. Unfortunately, predicting interest rates is embedded in giving a good answer to you.

I’d say the chances of getting a terrible result in Berkshire are about as low as anything you could find. Chances of getting a sensational rate are also about as low as anything you could find. My best guess would be in the 10% range, but that assumes somewhat higher interest rates, not dramatically, but somewhat higher interest rates in the next 10 or 20 years than we experienced in the last seven years.

Charlie Munger: The future with our present size in terms of percentage rates of return is going to be less glorious than in the past. We keep saying that and now we are proving it.

Warren Buffett: Do you want to end on that note, Charlie?

Charlie Munger: I think we have a collection of businesses that on average has better investment values than say the S&P 500 average. I don’t think you shareholders have a terrible problem.

Warren Buffett: We do have more of a shareholder orientation than the S&P 500 as a whole. This company has a culture where decisions are made as a private owner would make them. That’s a luxury we have that many companies don’t have. One of the questions I ask the CEO of every public company that I meet: “What would you be doing differently if you owned it all yourself?”The answer is usually this, that and a couple of other things. If he would ask us, the answer is, we are doing exactly what we would be doing if we owned all the stock ourselves.

Charlie Munger: I think we have one other advantage. A lot of other people are trying to be brilliant. We are just trying to stay rational. It’s a big advantage. Trying to be brilliant is dangerous, particularly when you are gambling.

ウォーレンがチャーリーに向けたドライなジョークからは、二人を結ぶ信頼の強さがうかがえます。実にうらやましい大人たちです。

2017年8月24日木曜日

2017年バークシャー株主総会(2)EBITDAについて

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前回につづいてバークシャー・ハサウェイ年次株主総会の質疑応答から、今回はEBITDAの話題です。(日本語は拙訳)

人生で後悔したこと及びEBITDAについて

<質問> お二人は、世界中の何百万もの人たちからとても尊敬され、敬愛されていらっしゃいます[上海から来た質問者]。さて質問が2つあります。ひとつめはEBITDA(エビッダー; 利払い税引き償却前利益)についてです。事業を評価するのにふさわしい指標ではないと断言されていますが、なぜでしょうか。ふたつめは、お二人が人生で後悔されたことはありますか。人生や家族、個人的あるいは仕事の上でひとつだけ違うことをしていたら、と思われることは何ですか。

<バフェット> 個人的な問題についてのお返事は期待されないほうがよいかと思います。仕事の話ですと、チャーリー[・マンガー]ともっと早くから出会えていれば、とは何度も話したことがあります。出会った時のわたしは29歳で、彼は35歳でした。それ以降は愉快なことばかりでした。もっと早くから付き合い始めていれば、ずっと楽しかっただろうと思います。実はそうなる機会はありました。同じ商店で働いていたのです。ただし時期がちがっていました。

EBITDAには減価償却費が抜けています。これはもっともタチの悪い支出です。フロートの話題を好んで取り上げますが、フロートとは資金が先に手に入る一方、支出があとになる種類のものです。反対に減価償却費は、フロートとは反対の働きをします。つまり先に資金を支払いますが、会計上の支出はあとになります。これは好ましいものではありません。事業を買う上でほかの条件が同じであれば、減価償却費が発生しないもののほうがずっと望ましいです。固定資産に投じる資金が、基本的には必要ないからです。EBITDAは誤認を招く統計量です。非常に有害な手口で使われる可能性があります。

<マンガー> この問題の恐ろしさや、事業評価に対してその用語をもたらした人々の嫌悪すべき性質について軽くお考えだったように思いますが、どうですかね。まるでリース物件の不動産を扱う仲介業者が、1000平方フィートの一連の部屋をリースしようとする際に、実際は2000平方フィート分だったと言い出すようなものですよ。尊敬に値する行動ではないですね。そのようなやりかたで、かの言葉も広く使われるようになったのです。しかし公正な心を持った人間であれば、減価償却費は費用だと考えますよ。

<バフェット> ウォール街にとっては、とても有益な考えです。

<マンガー> だから連中はそうするのですよ。株価倍率が低くなりますから。

<バフェット> 奇妙なのは、実際にそれが受け入れられた方法です。それはともかく、この用語がどのように使われ、自分たちが使ってみせて概念を売りこむ様子がありありと残されています。2%と20%が同じ種類のものとなるわけです。この用語が通用する間は、この用語で押し通していくでしょう。

<マンガー> 今やビジネス・スクールでも使っています。おぞましくもおぞましいことですよ(笑)。盗人がその用語を使うだけでもうんざりなのに、広まったことでビジネス・スクールも真似をするとなれば、好ましい結末にはならないですね(拍手)。

(PDFファイルのp.45。Yahoo! Finance映像では6:18:40)

REGRETS IN LIFE and EBITDA

Q. You are highly respected and loved by millions globally. You believe EBITDA (is not a good parameter to evaluate a business. Do you have regrets in life, one thing you would have done differently in life, family, personal or business, what is it?

Warren Buffett: I don’t think you should expect us to answer that on personal matters. In business, I’d say I wished I met Charlie earlier. We’ve had a lot of fun ever since I was 29 and he was 35. It would have been even more fun if we started many years earlier. We had a chance to. We worked in the same grocery store but not at the same time.

In respect to EBITDA, it’s the worst kind of expense. We love to talk about float and float is where you get the money first and have the expense later. Depreciation is where you spend the money first and then record the expense later. It’s reverse float. It’s not a good thing. It’s much better to buy a business, everything else being equal, and it has no depreciation because it has essentially no investment in fixed assets. EBITDA is a very misleading statistic that can be used in very pernicious ways.

Charlie Munger: I think you understated the horrors of the subject and the disgusting nature of the people that brought that term when I was in business. It would be like a leasing broker of real estate who has a 1,000 square feet suite to be leased and says there’s 2,000 feet in it - that’s not honorable behavior and that’s the way that term got into common usage. Nobody in his right mind would think depreciation is not an expense.

Warren Buffett: It’s very much in the interest of Wall Street.

Charlie Munger: That’s why they did it. It made the multiple seem lower.

Warren Buffett: What’s amazing is the way it’s accepted actually. It just illustrates how people use language and sell concepts that work to their own use. 2% and 20% has the same sort of thing. As long as it can get sold, it will get sold.

Charlie Munger: Now they use it in the business schools. That is horror-squared. It’s bad enough when the thieves are using the term, but when it gets so common that the business schools copy it, that’s not a good result.

ウォーレン・バフェットはEBITDAのことを以前から問題視してレターでも取り上げていましたが、映像での発言によれば来年のレターでも触れる予定とのことです(ちなみに今春のレターでは、一言だけの指摘でした)。

2016年3月30日水曜日

我らを導く2つの掟(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーが2000年にフィランソロピー円卓会議で行った講話の最終回(10回目)です。しびれる話題で締めくくりをするのは、あいかわらずです。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

朝食会の場で物思いにふける話題としては、見事に資格がないのはわかっています。私の話した内容がことごとく正しいとすれば、我々が現在享受している繁栄は普通株に関連した「資産効果」によって、過去に起きたさまざまな急上昇期よりも強力な後押しを受けていたことになります。その中には不愉快なものも含まれていますよ。もしそうであれば、このところの好調期に大きく上昇したものは、将来の株価下落時のどこかで大きく下落するかもしれません。もしかしたら経済学者らはいずれ、株式市場の上下動が長く続くとみなされたときに、「株式市場が1ドル上がるごとに選択的支出を上昇させる圧力よりも、1ドル下がるごとに下落させる圧力のほうが大きい」と結論付けるようになるかもしれません。しかし、経済学者らが他の分野から最良の概念を借りることで力添えを得たいと望んだり、あるいは日本のことをもっとじっくり観察する意思があれば、以前からそのように確信していたと思いますね。

日本とくれば、経済学で言う「美徳効果」をずっと長期間にわたって存在させたいのも私の願いです。たとえば美徳を背景に成功した複式簿記がヴェニスに盛時をもたらしましたが、それとはある種反対の効果によって、公然となった腐敗した会計がやがては長期的な悪しき結末を生み出すからです。金融界での光景をみてソドムとゴモラを思い出すようになったら、現実問題としてどんなことになるのか心配しておいたほうがいいですよ。たとえその顛末に加わりたいと考えていてもです。

最後になります。今日私から示した結論が慈善財団に対して示唆するものは、以前に財団の財務担当役員諸氏へ話した結論も込みになりますが[過去記事]、投資上の技術を示唆するところをずっと超えているのは間違いないと思います。私が正しければ米国におけるほぼすべての財団は、より巨大なシステムと関わっている自分たちの資産運用業務を理解し損ねており、それゆえに賢明さを欠いています。そうだとすれば、良き状態とは言えません。大筋で当たっている掟として、次のようなものがあります。「ある組織が複雑なシステムに取り組むやりかたがそれなりにバカげているならば、その他もおしなべてバカげている」。ですから、財団への寄付に関して良しとされていることは、資産運用面での実情と同じように改善する必要があるかもしれません。ここでもさらに古き2つの掟が我々を導いてくれます。第一が「道義に従え」、第二が「聡明であれ」です。

道義のほうはサミュエル・ジョンソンによるものです。「責任ある公職者がたやすく取り除ける無知状態を放置したままでいることは、道義的義務を果たすという点で信用できない不正な行為だ」と彼は確信していました[過去記事]。聡明のほうの規則は、かつてのワーナー・スウェイジー社が工作機械を宣伝した広告を下敷きにしています。次のような文句です。「新しい工作機械をお望みなのに未だ購入されていないお客様は、すでに対価をお支払いになっていらっしゃいます」[過去記事]。ワーナー・スウェイジー社の規則は、思考する際の道具にも間違いなく当てはまりますよ。適切な思考道具を持っていない人は容易に取り除ける無知さゆえに、その人が助けたいと望む相手共々、以前から苦しみ続けているのですから。(おわり)

Well, this is enough uncredentialed musing for one breakfast meeting. If I am at all right, our present prosperity has had a stronger boost from common-stock-price-related "wealth effects", some of them disgusting, than has been the case in many former booms. If so, what was greater on the upside in the recent boom could also be greater on the downside at some time of future stock price decline. Incidentally, the economists may well conclude, eventually, that, when stock market advances and declines are regarded as long-lasting, there is more downside force on optional consumption per dollar of stock market decline than there is upside force per dollar of stock market rise. I suspect that economists would believe this already if they were more willing to take assistance from the best ideas outside their own discipline, or even to look harder at Japan.

Remembering Japan, I also want to raise the possibility that there are, in the very long term, "virtue effects" in economics - for instance that widespread corrupt accounting will eventually create bad long-term consequences as a sort of obverse effect from the virtue-based boost double-entry bookkeeping gave to the heyday of Venice. I suggest that when the financial scene starts reminding you of Sodom and Gomorrah, you should fear practical consequences even if you like to participate in what is going on.

Finally, I believe that implications for charitable foundations of my conclusions today, combined with conclusions in my former talk to foundation financial officers, go way beyond implications for investment techniques. If I am right, almost all U.S. foundations are unwise through failure to understand their own investment operations, related to the larger system. If so, this is not good. A rough rule in life is that an organization foolish in one way in dealing with a complex system is all too likely to be foolish in another. So the wisdom of foundation donations may need as much improvement as investment practices of foundations. And here we have two more old rules to guide us. One rule is ethical, and the other is prudential.

The ethical rule is from Samuel Johnson, who believed that maintenance of easily removable ignorance by a responsible officeholder was treacherous malfeasance in meeting moral obligation. The prudential rule is that underlying the old Warner & Swasey advertisement for machine tools: "The man who needs a new machine tool, and hasn't bought it, is already paying for it". The Warner & Swasey rule also applies, I believe, to thinking tools. If you don't have the right thinking tools, you, and the people you seek to help, are already suffering from your easily removable ignorance.