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2014年5月26日月曜日

2003年当時のチャーリー・マンガーの予言

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の31回目、今回で最終回です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<男性の質問者> デリバティブ契約の取引から生じる金融危機についてですが、バフェットさんは、精霊が瓶から飛び出し、深酒した分だけ二日酔いもひどくなる、と言っていました。そのシナリオがどのように進むのか、何か予想されていますか。(質問者は勘違いしている。当人はデリバティブについて質問しているが、バフェットはそれに対して「金融版の大量破壊兵器」と言った)

<マンガー> 大惨事を予想して当てるのは、当然ですがきわめてむずかしいことです。しかし確信をもって言えますが、やがて大きな災厄に見舞われます。現在のシステムは無責任すぎて、とても正気とは思えません。改善したと考えているものも、実は直っていません。複雑すぎて私には正しく判断することはできませんが、しかし何兆ドルもの金額が関わっているなど信じがたいものです。その複雑さや、会計処理のむずかしさ、そして動機づけが大きくなりすぎて資産価値やものごとを明確にすることに対して甘い考えを抱いている実態ときたら、とても信じがたい状況です。

デリバティブの契約を解消するのは、苦闘であり時間もかかる仕事です。エンロンがそうしようとしてどうなったかはご存知でしょう。監査済みの純資産が消失したのですよ。この国のデリバティブに関する会計では、得たことのない利益やどこにも存在しない資産が多数報告されているのです。

それから、「横領相当」による影響が大きい上に、デリバティブ取引に際した一般の横領による影響もあります。それらを元に戻すことにも痛みを伴います。痛みがどれほどの規模になるのか、どれだけうまく対処できるのか、わたしには何とも言えません。しかし公正な目で巨大なデリバティブ取引を本気で精査してみれば、ひと月もやればもううんざりだと感じるでしょう。ここはルイス・キャロル(『不思議の国のアリス』の著者)の世界かと、いかれ帽子屋のお茶会かと疑うでしょう。その仕事に携わる人たちがいかに間違ったことを精確に実行しているか、とても信じられないと思います。最低の経済学の先生が神々のように思えるほどです。その上、堕落しているせいでさらなる愚行が生み出されています。『大破局(フィアスコ)』[原題: F.I.A.S.C.O.]という本を読んでみてください。著者のフランク・パートロイは法学の教授であり、過去にはデリバティブのトレーダーだった人ですが、デリバティブ取引の世界がいかに腐敗しているかを内部にいた人間の目から描いています。彼が勤めていた会社は、ウォール街の中でも最大かつ最上とみなされていた一社です。この本を読んでいると胸くそが悪くなりますよ。

<ラジニーシュ・メータ> もう一つ質問をお受けしましょう。次のクラスが控えていますので。次の方、どうぞ。

<男性> カリフォルニア州住民提案13号[固定資産税率の上限制定]の欠陥についてウォーレンは自分が検討したことを発表していましたが、それに対して否定的な反応がありました。さらにそのことで[シュワルツェネッガーからその発言を控えるようにとの]忠告を受けましたが、それに対して彼はどう反応しましたか。ショックを受けたり、おどろいていましたか。

<マンガー> ウォーレンを驚かせるのは至難の業です。もう70歳を過ぎていますからね、彼はいろいろ経験してきましたし、頭の回転が速い人です。概して選挙の前になると、彼はある種の話題を避けるようにしています。ですから私がここにきているわけですよ(笑)。

Male: …financial destruction from trading of derivative contracts. Buffett said that the genie's out of the bottle and the hangover may be proportionate to the binge. Would you speculate for us how that scenario can play out? [The question was garbled, but the person asked about derivatives, which Buffett has called "financial weapons of mass destruction."]

Munger: Well, of course, catastrophe predictions have always been quite difficult to make with success. But I confidently predict that there are big troubles to come. The system is almost insanely irresponsible. And what people think are fixes aren't really fixes. It's so complicated I can't do it justice here - but you can't believe the trillions of dollars involved. You can't believe the complexity. You can't believe how difficult it is to do the accounting. You can't believe how big the incentives are to have wishful thinking about values and wishful thinking about ability to clear.

Running off derivative book is agony and takes time. And you saw what happened when they tried to run off the derivative books at Enron. Its certified net worth vanished. In the derivative books of America, there are a lot of reported profits that were never earned and assets that never existed.

And there are large febezzlement effects and some ordinary embezzlement effects that come from derivative activity. And the reversal of these is going to cause pain. How big the pain will be and how well it will be handled, I can't tell you. But you would be disgusted if you had a fair mind and spent a month really delving into a big derivative operation. You would think it was Lewis Carroll [author of Alice's Adventures in Wonderland]. You would think it was the Mad Hatter's Tea Party. And the false precision of these people is just unbelievable. They make the worst economics professors look like gods. Moreover, there is depravity augmenting the folly. Read the book "F.I.A.S.C.O.", by law professor and former derivatives trader Frank Partnoy, an insider account of depravity in derivative trading at one of the biggest and best-regarded Wall Street firms. The book will turn your stomach.

Rajneesh Mehta: We'll take one more question. There's a class outside that has to come in. So one more question.

Male: Could you describe Warren's reactions to the advice about the negative reaction that he got from musing about defects of California's Prop Thirteen? Was he shocked, surprised?

Munger: It's hard to shock Warren. He's past seventy, he's seen a lot. And his brain works quickly. He generally avoids certain subjects before elections, and that is what I am going to do here. (Laughter).


この講演は2003年10月に行われているので、チャーリーやウォーレンが2008年の金融危機の激しさを正しく予見していたことが確認できます。個人的な邪推ですが、チャーリーが積極的な株式投資を控えていたのは、その見通しがあったことも一因だったように思えます。

2014年5月16日金曜日

イエス・キリストを掲げた広告(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の30回目です。短い質疑応答があるのでもう1回つづきますが、今回が実質的な最終回です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

私からの話を締めくくるにあたって、もうひとつお粗末な話を披露したいと思います。限られたレパートリーにしがみついていると、間違った考えに達することを示す話です。この話の主人公は、旧世界からアメリカにやってきたハイマン・リーボウィッツという人物です。彼は新しい国にやってきたものの、昔と同じように家業の釘製造に励みました。苦労に苦労を重ねて、小さな釘事業がやっと大きな成功をおさめました。そこで彼の妻はこう言いました。「あんたも年なんだからさ、フロリダにでも行って仕事のことは息子に任せておしまいよ」。

彼は事業を息子に任せてフロリダへと離れました。ただし業績報告は毎週受け取っていました。フロリダにそれほど長く滞在する間もなく、業績が赤字へと急降下しました。実にひどいものでした。そこで彼は飛行機に乗って工場のあるニュージャージーに戻りました。空港から工場へ向かう途中、煌々と照らされた巨大な野外広告をみかけました。十字架に架けられたキリストが描かれており、その下に次の説明文が大きく付けられていました。「このときにもリーボウィッツ社の釘が使われていました」。彼は工場へ行って怒鳴りたてました。「このばかったれ小僧が。おまえは一体何をしたと思っているのだ。会社がここまでくるのに50年もかかったんだぞ」。息子が答えました。「父さん、大丈夫ですよ。ちゃんと直しておきますから」。

彼はフロリダに戻りましたが、さらなる報告を受けとっても業績は悪くなる一方でした。そこでまたもや飛行機で戻ることにしました。空港を出て標識に従うまま運転していくと、明かりのついた例の大きな広告がみえました。今度の十字架には何も架けられていませんでした。しかしなんとまあ、十字架の下でキリストは地面に放り出されていました。そして広告の文句はこうです。「リーボウィッツ製の釘は使われていませんでした」(笑)。

たしかに笑える話です。しかし間違った考えに囚われている人がたくさんいる状況をみれば、それほど馬鹿げた話ではありません。ケインズはこう言っています。「難しいのは新しい考えを取り入れることではない。古い考えを捨てることだ」。もっとうまく表現しているのがアインシュタインです。頭を使う仕事で成功をおさめた要因として、彼は「好奇心、集中、根気、自己批判」を挙げています。彼の言う自己批判とは、最愛にしてまるで駄目な自分のアイデアをうまくお払い箱にできる能力のことです。みずからが出した駄目なアイデアを上手に捨てられるようになれば、それはすばらしい才能と言えます。

今日の短い話に登場していた大きな教訓をふりかえってみましょう。私が言いたかったのはこうです。様々な学問分野にわたる数々の重要な技を用い、それを流暢に使えるようになるまで腕をみがき、経済学だけでなくあらゆることに活用すること。また複雑さや逆説には避けられないものがありますが、それでがっかりしないように。それらは、問題解決をいっそう楽しくするものだからです。私を導いてきた言葉として、再度ケインズからご紹介しましょう。「厳密にやって間違えるよりも、だいたい当たっているほうがましだ」。

最後に、同じような場で申し上げたことを繰り返して締めくくりとします。「学際的なやりかたに熟達したら、以前に戻りたいとは思わないだろう。両手を切り落とすようなものだから」。

これでおわりです。あとはみなさんの望むまでご質問を受けましょう(拍手)。

As I conclude, I want to tell one more story demonstrating how awful it is to get a wrong idea from a limited repertoire and just stick to it. And this is the story of Hyman Liebowitz, who came to America from the old country. In the new country, as in the old, he tried to make his way in the family trade, which was manufacturing nails. And he struggled, and he struggled, and finally, his little nail business got to vast prosperity, and his wife said to him, "You are old, Hyman, it's time to go to Florida and turn the business over to our son."

So down he went to Florida, turning his business over to the son, but he got weekly financial reports. And he hadn't been in Florida very long before they turned sharply negative. In fact, they were terrible. So he got on an airplane, and he went back to New Jersey where the factory was. As he left the airport on the way to the factory, he saw this enormous outdoor advertising sign lighted up. And there was Jesus, spread out on the cross. And under it was a big legend, "They Used Liebowitz's Nails." So he stormed into the factory and said, "You dumb son! What do you think you're doing? It took me fifty years to create this business!" "Papa," he said, "trust me. I will fix it."

So back he went to Florida, and while he was in Florida, he got more reports, and the results kept getting worse. So he got on the airplane again. Left the airport, drove by the sign, looked up at this big lighted sign, and now there's a vacant cross. And, lo and behold, Jesus is crumpled on the ground under the cross, and the sign said, "They Didn't Use Liebowitz's Nails." (Laugher).

Well, you can laugh at that. It is ridiculous, but it's no more ridiculous than the way a lot of people cling to failed ideas. Keynes said, "It's not bringing in the new ideas that's so hard. It's getting rid of the old ones." And Einstein said it better, attributing his mental success to "curiosity, concentration, perseverance, and self-criticism." By self-criticism, he meant becoming good at destroying your own best-loved and hardest-won ideas. If you can get really good at destroying your own wrong ideas, that is a great gift.

Well, it's time to repeat the big lesson in this little talk. What I've urged is the use of a bigger multidisciplinary bag of tricks, mastered to fluency, to help economics and everything else. And I also urged that people not be discouraged by irremovable complexity and paradox. It just adds more fun to the problems. My inspiration again is Keynes: Better roughly right than precisely wrong.

And so, I end by repeating what I said once before on a similar occasion. If you skillfully follow the multidisciplinary path, you will never wish to come back. It would be like cutting off your hands.

Well, that's the end. I'll take questions as long as people can endure me. (Applause)

2014年5月4日日曜日

経済学における不完全性定理(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の29回目です。悪徳の話題は今回までで、この講演も終わりに近づいてきました。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

妬みのからんだ悪徳がもたらすものから、興味深い問題がもう一つ生じています。モーセの戒律では賢明なことに、妬みに対して非常に厳しい批判を向けていました。彼らがいかに厳しく指摘していたか、覚えているでしょう。汝、隣人のロバをむさぼってはならない、隣人のはしためをむさぼってはならない、汝は…。人間とはどれだけ妬みがちなのか、妬みがどれだけ大きな問題を引き起こすか、古きユダヤ人はよくわかっていました。厳しい指摘だったものの、それは正しかったのです。しかし、マンデビルの著書『蜂の寓話』を覚えていますか。彼は(私からみれば)確信を以って自説を、つまり妬みは消費という性癖を焚きつける強力な原動力である、と開陳していました。ですから十戒で禁じられたこのひどい悪徳が、経済学にとってはあらゆる好ましい結果をもたらすことになります。つまり、経済学には誰一人逃れることのできない逆説があるわけです。

私がまだ若かったころに[数学者の]ゲーデルが皆の人気を集めていました。彼は、数学上のシステムには苛立たしいほどの不完全性を必ず伴っていることの証拠を見つけました。私はそのとき以来、数学には摘出することのできない欠陥が多々あり、逆説を含まない数学はあり得ないことを、先達の教えとして受けとめています。いかに懸命にやろうとも、数学者でいる以上はいくらかの逆説とは付き合っていかざるを得ないのです。

数学者が自らの創ったシステムから逆説を取り除けないのであれば、お粗末な経済学者が逆説を取り除くことはありません。言うまでもなく、その他大勢の我々でも同じです。しかし、このことは問題ではありません。逆説があればこそ、人生はおもしろいのです。私が逆説に出くわすとすれば、次のどちらかになると思います。このことを合点していたはずなのにまるっきりのバカをやらかすか、あるいは自分が従うやりかたの限界ぎりぎりを試す充実した時となるかです。どちらに転ぶかは人生のおもしろいところです。

Another interesting problem is raised by vice effects involving envy. Envy wisely got a very strong condemnation in the laws of Moses. You remember how they laid it on with a trowel: You couldn't covet thy neighbor's ass, you couldn't covet thy neighbor's servant girl, you couldn't covet…. Those old Jews knew how envious people are and how much trouble it caused. They really laid it on hard, and they were right. But Mandeville - remember his fable of bees? He demonstrated convincingly - to me, anyway - that envy was a great driver of proclivity to spend. And so, here's this terrible vice, which is forbidden in the Ten Commandments, and here it's driving all these favorable results in economics. There's some paradox in economics that nobody's going to get out.

When I was young, everybody was excited by Godel, who came up with proof that you couldn't have a mathematical system without a lot of irritating incompleteness in it. Well, since then, my betters tell me that they've come up with more irremovable defects in mathematics and have decided that you're never going to get mathematics without some paradox in it. No matter how hard you work, you're going to have to live with some paradox if you're a mathematician.

Well, if the mathematicians can't get the paradox out of their system when they're creating it themselves, the poor economists are never going to get rid of paradoxes, nor are any of the rest of us. It doesn't matter. Life is interesting with some paradox. When I run into a paradox, I think either I'm a total horse's ass to have gotten to this point, or I'm fruitfully near the edge of my discipline. It adds excitement to life to wonder which it is.

2014年4月18日金曜日

700年にわたって無給で働かせてきた職場(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の28回目です。前回につづいて今回は悪徳の話題です。(日本語は拙訳)

不道徳によってさまざまな悪影響がもたらされることは、はっきりしています。異常なまでのブームや不正直な宣伝を思い出してください。この半年分の新聞をみれば十分わかりますね。悪徳が満載で息苦しいほどです。また、この国の企業のトップが不公平なまでの報酬を受け取っていることにだれもが怒りを覚えていますが、それは当然です。ところが法律家や大学教授の発明によるイカれた対応策が多々はびこっており、不公平な報酬を正すことができません。しかし完全ではないにせよ妙案があります。取締役の選任要件を無報酬の大株主とするのです。互恵的傾向のもたらす影響が削がれることで、経営陣に支払われる不公平な報酬がどう変わるか、きっとびっくりするほどでしょう[参考記事]。

無報酬とするこのシステムとだいたい似たようなものが、あまりなじみのない場所で試されてきました。イングランドの下級刑事裁判所です。その裁判所は[素人の]治安判事によって構成されており、1年間の懲役や相当な罰金を科すことができます。判事は3名で、いずれも報酬はゼロです。かかった経費は支払われますが、裁量にはそれなりに制限があります。1年のうちの40日間を無償で半日勤務に就きます。この制度はおよそ700年間にわたって麗しくも機能してきました。有能かつ善良なる人々が義務を遂行して意義を理解するために、無給の判事になることを競いました。

この仕組みは、ベンジャミン・フランクリンが人生の終わり間際に合衆国政府に望んでいたものです。政府の高官たる者には報酬を支払わず、彼のような人間[=成功した実業家]やまったくの無給で働くモルモン教の裕福な聖職者や預言者のようであってほしいと望んでいました。カリフォルニアで起きている状況をみると、彼が正しかったのかもしれませんね。それはともかく、フランクリンの目指したほうへ進む人は現在はだれもいません。たとえば大学教授が取締役に任命されている状況をみればわかります。彼らの大多数は資金を必要としているからですね。

道徳規範をうまく機能させるには、不公平であっても是とすべきときがあります。現実社会ではほとんどの場合そのような結果になっていますが、これがつねに理解されているわけではありません。完璧な公平を希求することは、システムが機能する上で数々のひどい問題を引き起こします。個人に対して意図的に不公平とするのが然るべきシステムもあります。というのは、全体としてみれば概していっそう公平になるからです。つまり明らかに不公平であるものにも美徳が含まれ得るのです。何度も取りあげている事例ですが、アメリカ海軍では船を座礁させた艦長は自分に過失がなくてもそこで経歴はおしまいとなります。すべての艦長が座礁させまいと日夜精勤するようになれば、過失のない一個人に対する正義が欠けていたとしても、全員に対して大きな正義を貫くよりずっと有意義だからです。全体にわたる大きな公平を得るために一部の者が小さな不公平を忍従するやりかたは、みなさんにお勧めしたいモデルです。しかし繰り返すようですが、大学でよい成績をとりたいのであれば、とくに現代のロースクールでは公平性を求める手続きを溺愛する学校が多いので、これを研究課題にするようにとは申しません。

当然ながら経済学も不道徳によって甚大な影響を受けています。偽りと愚行にまみれたバブルが何度もありましたが、非常に不愉快な結果に終わるものばかりでした。近年にも何度かそうなりました。初期の大きなバブルのひとつが、言うまでもなくイングランドで起きた巨大なおぞましい南海泡沫事件です。その後のなりゆきは興味ぶかいものでした。南海泡沫事件のあとに何が起きたのか覚えている人は、あまりいないでしょう。金融活動が劇的に収縮し、多くの痛みが生じました。イングランドでは何十年にもわたって、特定の稀な例を除いて株式を公開取引することが禁じられました。議会が通過させた法案は、数名のパートナーとパートナーシップを設立することはできるが、株式を公開してはならないとするものでした。ところがイングランドは公開株式がなくても成長し続けました。カジノのような大騒ぎの中で多くの株式が取引されるおかげで儲けている人がこれについてよく勉強したら、きっとこの事例は気に食わないでしょう。公開市場で株式を取引できない時代が長く続いても、それでイングランドが衰退することはなかったのです。

これはまさに不動産と同じです。あらゆるショッピングセンターや自動車ディーラー、そういった不動産の持ち分が公開取引されない時代はずっと続いていました。しかし資本市場がひとたびできると、経済的な側面が考慮されてカジノのようにすばやく効率的であることが要求されるようになります。これは虚構ですね。そんな必要はありません。

Many bad effects from vice are clear. You've got the crazy booms and crooked promotions - all you have to do is read the paper over the last six months. There's enough vice to make us all choke. And, by the way, everybody's angry about unfair compensation at the top of American corporations, and people should be. We now face various crazy nostrums invented by lawyers and professors that won't give us a fix for unfair compensation, yet a good partial solution is obvious: If directors were significant shareholders who got a pay of zero, you'd be amazed what would happen to unfair compensation of corporate executives as we dampened effects from reciprocity tendency.

A roughly similar equivalent of this no-pay system has been tried in a strange place. In England, lay magistrates staff the lower criminal courts, which can send you to prison for a year or fine you substantially. You've got three judges sitting up there, and they all get a pay of zero. Their expenses are reimbursed, but not too liberally. And they work about forty half-days a year, as volunteers. It's worked beautifully for about seven hundred years. Able and honest people compete to become magistrates, to perform the duty and get the significance, but no pay.

This is the system Benjamin Franklin, near the end of his life, wanted for U.S. government. He didn't want the high executives of government to be paid, but to be like himself or the entirely unpaid, well-off ministers and rulers of the Mormon Church. And when I see what's happened in California, I'm not sure he wasn't right. At any rate, no one now drifts in Franklin's direction. For one thing, professors - and most of them need money - get appointed directors.

It is not always recognized that, to function best, morality should sometimes appear unfair, like most worldly outcomes. The craving for perfect fairness causes a lot of terrible problems in system function. Some systems should be made deliberately unfair to individuals because they'll be fairer on average for all of us. Thus, there can be virtue in apparent non-fairness. I frequently cite the example of having your career over, in the Navy, if your ship goes aground, even if it wasn't your fault. I say the lack of justice for the one guy that wasn't at fault is way more than made up by a greater justice for everybody when every captain of a ship always sweats blood to make sure the ship doesn't go aground. Tolerating a little unfairness to some to get a greater fairness for all is a model I recommend to all of you. But again, I wouldn't put it in your assigned college work if you want to be graded well, particularly in a modern law school wherein there is usually an over-love of fairness-seeking process.

There are, of course, enormous vice effects in economics. You have these bubbles with so much fraud and folly. The aftermath is frequently very unpleasant, and we've had some of that lately. One of the first big bubbles, of course, was the huge and horrible South Sea bubble in England. And the aftermath was interesting. Many of you probably don't remember what happened after the South Sea Bubble, which caused an enormous financial contraction and a lot of pain. Except in certain rare cases, they banned publicly traded stock in England for decades. Parliament passed a law that said you can have a partnership with a few partners, but you can't have publicly-traded stock. And, by the way, England continued to grow without publicly-traded stock. The people who are in the business of prospering because there's a lot of stock being traded in casino-like frenzy wouldn't like this example if they studied it enough. It didn't ruin England to have a long period when they didn't have publicly-traded shares.

Just as in real estate. We had all the shopping centers and auto dealerships, and so on, we needed for years when we didn't have publicly-traded real estate shares. It's a myth that once you've got some capital market, economic considerations demand that it has to be as fast and efficient as a casino. It doesn't.

2014年4月4日金曜日

ユダヤ人が考えだして、アメリカ人が仕上げた(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の27回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

9) 善行や悪徳がもたらす影響に対する低い関心

さて次は9番目の異議です。経済学では善行や悪徳がもたらすものに対してあまり注意が払われていません。多くの善行や悪徳が経済学に影響を及ぼすことは、私からみれば若い時分から明白でした。しかし善行や悪徳となると、経済学者はひどく居心地が悪くなるようですね。数字をたくさん羅列させるのには、おあつらえ向きではないからです。では、重要な善き行いが経済学にもたらされたことを示してみましょう。修道士のフラ・ルカ・デ・パチョーリによって発明された複式簿記が広まったことで、経済学に大いなる美徳が加わりました。そのおかげでビジネスはより統制できるものとなり、正直さが要求されるようになったのです。それからキャッシュ・レジスター[レジ]もあります。倫理上の面で、レジは会衆派教会[清教徒の一部]よりも多くをなしました。経済システムを向上させる上で、レジの登場はまさに強力なできごとでした。レジの果たす役割は、容易にだませるがゆえに社会を堕落させるシステムとは逆向きに働きます。レジのようにだますのが難しいシステムは悪徳を減らすことにつながり、社会における経済面での成果向上に寄与します。しかしこのような話題をする経済学者はほとんど見当たりませんね。

さらに進みます。私が思うに、信頼関係を徹底したエートスがあれば経済というシステムはもっとうまく機能します。かつて他者を信頼するというエートスは、少なくともこの国の過去の世代では信仰を通じて身につけました。宗教が罪悪感を植え付けてくれたのです。ご近所にチャーミングなアイルランド系のカトリックの司祭が住んでいますが、彼は好んでこういう言い方をします。「罪悪を考えだしたのは、いにしえのユダヤ人かもしれません。しかし仕上げをしたのはわたしたちです」(笑)。宗教から生まれたこの罪悪感は、他者を信頼するというエートスを働かせる上で大きな原動力となりました。これは人間の営む経済活動にも非常に有益なものでした。

9) Not Enough Attention to Virtue and Vice Effects

Okay, my ninth objection: not enough attention to virtue and vice effects in economics. It has been plain to me since early life that there are enormous virtue effects in economics and also enormous vice effects. But economists get very uncomfortable when you talk about virtue and vice. It doesn't lend itself to a lot of columns of numbers. But I would argue that there are big virtue effects in economics. I would say that the spreading of double-entry bookkeeping by the monk, Fra Luca de Pacioli, was a big virtue effect in economics. It made business more controllable, and it made it more honest. Then, the cash register. The cash register did more for human morality than the Congregational Church. It was a really powerful phenomenon to make an economic system work better, just as, in reverse, a system that can be easily defrauded ruins a civilization. A system that's very hard to defraud, like a cash register-based system, helps the economic performance of a civilization by reducing vice, but very few people within economics talk about it in those terms.

I'll go further: I say economic systems work better when there's an extreme reliability ethos. And the traditional way to get a reliability ethos, at least in past generations in America, was through religion. The religions instilled guilt. We have a charming Irish Catholic priest in our neighborhood and he loves to say, "Those old Jews may have invented guilt, but we perfected it." (Laughter). And this guilt, derived from religion, has been a huge driver of a reliability ethos, which has been very helpful to economic outcomes for man.

2014年3月18日火曜日

Febezzlement(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の26回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

8) 「横領相当」という概念に対する低い関心

8番目の異議へと進みましょう。それは、経済学が簡単明瞭かつもっとも根本的な代数の原則に対してほとんど関心を示していないことです。経済学は代数ができないのか、と仰天されるでしょう。その一例を示してみます。年寄りの上に因襲破りなもので私が間違っているのかもしれませんが、まあやってみます。つまり、経済学は「横領相当」(febezzlement)という概念に対して十分な注意を払っていないということです。これは[経済学者]ガルブレイスの考えを元にしています。ガルブレイスの考えとはこうです。「隠された横領があれば、経済に対してケインジアン的なすばらしい刺激を与えられる。なぜなら、横領された人は以前と変わらずに金が十分あると考えてそのまま消費するし、金を盗んだほうには新たな購買力が加わるからだ」。ガルブレイスの言う部分は正しい分析だと思います。しかしこの考えは、わずかな現象しか扱っていない点に問題があります。横領はほとんどの場合発覚するものですが、もしそうなればガルブレイスの言う効果は即座に反転します。つまり、生じていた効果がすばやく消えてしまうのです。

しかしガルブレイスは考えなかったようですが、もっと代数に注意を払うならばこう考えるでしょう。「代数の基本的な原則、それはA=BかつB=CならばA=Cである」。この基本的な原則は、機能的に等価なものをできるかぎり探すように求めています。それでは次にこう考えてください。「経済学において横領相当というものが存在するだろうか」。ガルブレイスは、明るみになっていない横領の数量を示す「bezzle」という言葉を考案しました。そこで私も同じように「febezzlement」という言葉を生みだすことにします。これは「横領と機能的に等しい(=横領相当)」という意味です(functional equivalent of embezzlement)。

その言葉は「横領と機能的に等しい行為は何だろうか」と自問した後に考えついたのですが、その際に見事で前向きな答えが数多く得られました。いくつかは資産運用に関するものです。結局は私も資産運用業界に近い仕事をしているわけです。私の考えではアメリカ人は普通株のポートフォリオに投資することで、総額にして何十億ドルという金額を無駄にしています。市場が上昇し続けるうちは値段が順調に増えていくため、資金が無駄にされていても気がつきません。一方で投資顧問を商売とする側は、実は損切りをしておきながらその金をもらうのは当然だと考えています。これこそまさに「隠れた横領と機能的に等しい行為」です。私があまり講演に呼ばれない理由がこれでおわかりでしょう。

ですから横領と機能的に等しい「横領相当」を経済の中から探してみれば、甚だしいほど強力な要因をみつけられます。現在生み出されている「資産効果」(wealth effect)は、以前からの「資産効果」をステロイド強化したものなのです。私のように考える人は事実上皆無だと思います。しかし、独自の手法で熱心にやっている大学院生で論文のテーマを承認前に決めねばならない人がいるでしょうから、私が出したこのアイデアの権利は放棄しておきます。

8) Not Enough Attention to the Concept of Febezzlement

Okay, I'm now down to my eighth objection: too little attention within economics to the simplest and most fundamental principle of algebra. Now, this sounds outrageous, that economics doesn't do algebra, right? Well, I want to try an example - I may be wrong on this. I'm old and I'm iconoclastic - but I throw it out anyway. I say that economics doesn't pay enough attention to the concept of febezzlement. And that I derive from Galbraith's idea. Galbraith's idea was that, if you have an undisclosed embezzlement, it has a wonderful Keynesian stimulating effect on the economy because the guy who's been embezzled thinks he is as rich as he always was and spends accordingly, and the guy that had stolen the money gets all this new purchasing power. I think that's correct analysis on Galbraith's part. The trouble with his notion is that he's described a minor phenomenon. Because when the embezzlement is discovered, as it almost surely will be, the effect will quickly reverse. So the effect quickly cancels out.

But suppose you paid a lot of attention to algebra, which I guess Galbraith didn't, and you think, "Well, the fundamental principle of algebra is, ‘If A is equal to B and B is equal to C, then A is equal to C.'" You've then got a fundamental principle that demands that you look for functional equivalents, all you can find. So suppose you ask the question, "Is there such a thing in economics as a febezzlement?" By the way, Galbraith invented the word "bezzle" to describe the amount of undisclosed embezzlement, so I invented the word "febezzlement": the functional equivalent of embezzlement.

This happened after I asked the question, "Is there a functional equivalent of embezzlement?" I came up with a lot of wonderful, affirmative answers. Some were in investment management. After all, I'm near investment management. I considered the billions of dollars totally wasted in the course of investing common stock portfolios for American owners. As long as the market keeps going up, the guy who's wasting all this money doesn't feel it because he's looking at these steadily rising values. And to the guy who is getting the money for investment advice, the money looks like well-earned income, when he's really selling detriment for money, surely the functional equivalent of undisclosed embezzlement. You can see why I don't get invited to many lectures.

So I say, if you look in the economy for febezzlement, the functional equivalent of embezzlement, you'll find some enormously powerful factors. They create some "wealth effect" that is on steroids compared to the old "wealth effect." But practically nobody thinks as I do, and I quitclaim my idea to any hungry graduate student who has independent means, which he will need before his thesis topic is approved.

2014年2月26日水曜日

経済学者リカードの盲点(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の25回目です。二次的・三次的影響の話題は今回までです。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

このこと[前回分のニーダーホッファーの事例]は、人間の作ったあらゆるシステムで如何にごまかしがされているかを示しています。さらにもうひとつ、結果がもたらす結果のことをきちんと考えていなかった例として、リカードが提唱した比較優位の法則に対して経済学の世界が示した一般的な反応があげられます。この法則は、貿易によって取引をする双方が利益を得るというものです。リカードはすばらしくもあいまいな説明を考えだしましたが、説得力があったために人々を惹きつけ、いまだに魅了し続けています。とても有用な概念だったからですね。経済学の世界におけるだれもが、貿易から生じる一次的優位性をリカードの説明する効果から考えると比較優位は重要な概念だと理解しています。しかしたとえば中国人のような、非常に有能な民族ながらもひどく貧しく遅れている状況があると考えてみてください。一方で我々は先進国の人間として中国と自由貿易を始め、ずっと継続していくとします。

それでは二次的、三次的な結果がどうなるか検討します。平均的なアメリカ人としての幸福度という意味では、中国と貿易しないでいるよりもずっと豊かになったのはわかりますね。リカードがそれを証明しています。しかし経済学的な意味ではどちらの国が速く成長し続けるでしょうか。ずばり中国です。彼らは自由貿易を通じて強力な手助けを受け、世界中のあらゆる現代的な技術を吸収しています。アジアの虎たちが示したように、中国も急速に発展するでしょう。香港や台湾、あるいは初期の日本を考えてみればわかります。ですから総勢12億人を超える後進的な貧農ばかりの弱国から始めても、やがては我々よりもずっと大きく強力な国家となるでしょう。原子爆弾だって、ずっと高性能のものを我々以上に保有するかもしれません。結局のところリカードは、当初は先を進んでいた国家にとってすばらしい結末となるのか否かは明らかにしていませんでした。二次あるいは高次にわたる影響については、彼は判断を下していなかったのです。

このような話題を経済学の教授に持ちかけてみるとどうなるでしょうか。私は3回やったことがありますが、彼らはこの種の話をしたくないゆえにおぞましさでひるんだり、攻撃的になるものです。このやりかたは彼らの麗しき原則をまさしくお釈迦にしますからね。二次・三次といった影響を無視しておけば、いたって簡単になるわけです。

この件を3回試して返ってきた答えで、ジョージ・シュルツ[レーガン政権の国務長官]のものが一番でした。彼はこう言いました。「チャーリー、わたしが言いたいのはだな、もし中国との貿易をやめても他の先進国はそのまま続けるだろうから、中国が発展して我々を超えていくのは止められないのだよ。つまり我々は、リカードが診立てた貿易上の優位を失うわけだ」。たしかにそれは当たっています。そこで私は言いました。「ジョージ、あなたは『共有地の悲劇』の新しい形を発明なさったわけですな。システムに囚われてしまい、それを修復することができない。世界の偉大なリーダーだった我々が世界をリードする点でいよいよ浅瀬に乗り上げるつもりであれば、早々に没落しようというわけですな」。彼は答えました。「チャーリー、そんなことは考えたくないのだよ」。彼は賢いだけでなく私より年上ですから、私のほうが彼から学ぶべきなのかもしれません。

This shows how all human systems are gamed. Another example of not thinking through the consequences of the consequences is the standard reaction in economics to Ricardo's law of comparative advantage giving benefit on both sides of trade. Ricardo came up with a wonderful, non-obvious explanation that was so powerful that people were charmed with it, and they still are because it's a very useful idea. Everybody in economics understands that comparative advantage is a big deal, when one considers first-order advantages in trade from the Ricardo effect. But suppose you've got a very talented ethnic group, like the Chinese, and they're very poor and backward, and you're an advanced nation, and you create free trade with China, and it goes on for a long time.

Now let's follow and second- and third-order consequences. You are more prosperous than you would have been if you hadn't traded with China in terms of average well-being in the United States, right? Ricardo proved it. But which nation is going to be growing faster in economic terms? It's obviously China. They're absorbing all the modern technology of the world through this great facilitator in free trade, and, like the Asian Tigers have proved, they will get ahead fast. Look at Hong Kong. Look at Taiwan. Look at early Japan. So, you start in a place where you've got a weak nation of backward peasants, a billion and a quarter of them, and, in the end, they're going to be a much bigger, stronger nation than you are, maybe even having more and better atomic bombs. Well, Ricardo did not prove that that's a wonderful outcome for the former leading nation. He didn't try to determine second-order and higher-order effects.

If you try and talk like this to economics professors, and I've done this three times, they shrink in horror and offense because they don't like this kind of talk. It really gums up this nice discipline of theirs, which is so much simpler when you ignore second- and third-order consequences.

The best answer I ever got on that subject - in three tries - was from George Shultz. He said, "Charlie, the way I figure it is if we stop trading with China, the other advanced nations will do it anyway, and we wouldn't stop the ascent of China compared to us, and we'd lose the Ricardo-diagnosed advantages of trade." Which is obviously correct. And I said, "Well, George, you've just invented a new form of the tragedy of the commons. You're locked in this system, and you can't fix it. You're going to go to a tragic hell in a handbasket, if going to hell involves being once the great leader of the world and finally going to the shallows in terms of leadership." And he said, "Charlie, I do not want to think about this." I think he's wise. He's even older than I am, and maybe I should learn from him.


この講演が行われたのは2003年10月3日でした。ブッシュ大統領によるイラク侵攻があった年です。そのころはまだ中国の経済的・軍事的影響力はあまり語られていなかったと覚えています。チャーリーの洞察は的確ですね。

2014年2月18日火曜日

ニーダーホッファー式履修法(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の24回目です。二次的・三次的影響の話題がつづきます。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

人間のシステムにおいて謀りごとをする見事な例として、ヴィクター・ニーダーホッファー[ソロスのパートナーだったファンド・マネージャー]がハーバード大学経済学部で歩んだ経歴があげられます。警官の息子だった彼はハーバードでAばかりの成績をとる必要がありました。しかし学校でまじめに勉強するつもりはさらさらありませんでした。他のことのほうをやりたかったからです。ひとつめが世界クラスのチェッカー選手として競技に参加すること。二つめがトランプ賭博で大金を賭けること。彼はひねもす勝負していましたが、非常にやり手でした。三つめがスカッシュの全米チャンピオンになることです。彼はその地位を何年間か占めていたことがあります。そして最後がパートタイムのテニス選手として、できるだけ腕をみがくことでした。

多くのことに時間を割く必要のある彼は、それでもハーバードでAをとろうと経済学部を選びました。フランス詩学でも選んだのでは、と思ったでしょう。しかしこの大将はチェッカーのチャンピオン級だったことを忘れてはなりません。ハーバードの経済学部より賢く立ち回ってみせる、と彼は考えたのですね。そしてそのとおりになりました。自分たちがやらなければ教授へ回る退屈な仕事のほとんどを院生たちが担当していることに、彼は気がついていました。ハーバードの大学院生になるのは大変なことで、多大なる労苦を教授から感謝されるほど彼らはとても聡明で協調でき、また一生懸命に取り組みました。 ニーダーホッファーにはそれもわかっていました。

そういうわけでまさに上級の大学院コースを教える教授は、習慣としてあるいは返報的傾向と呼ばれる心理的な力から予想されるように[参考記事]、常にAの成績を授けていたのです。そこでヴィクター・ニーダーホッファーは、ハーバードの経済学部でもっとも上級の大学院コースばかり履修しました。講義にはほとんど参加しなかった彼がとった成績は、もちろんAまたAの連続でした。やがてハーバードでは「あらたな天才がうちに登場したのかな」と感じた人がいたかもしれません。なんとも滑稽な話ですが、このやりかたは今でも使えるでしょう。ニーダーホッファーは有名になり、彼のやり方は「ニーダーホッファー式履修法」(Niederhoffering the curriculum)と呼ばれています(笑)。

There was a wonderful example of gaming a human system in the career of Victor Niederhoffer in the Economics Department of Harvard. Victor Niederhoffer was the son of a police lieutenant, and he needed to get A's at Harvard. But he didn't want to do any serious work at Harvard because what he really liked doing was, one, playing world-class checkers; two, gambling in high-stakes card games, at which he was very good, all hours of the day and night; three, being the squash champion of the United States, which he was for years; and, four, being about as good a tennis player as a part-time tennis player could be.

This did not leave much time for getting A's at Harvard, so he went into the Economics Department. You'd think he would have chosen French poetry. But remember, this was a guy who could play championship checkers. He thought he was up to outsmarting the Harvard Economics Department. And he was. He noticed that the graduate students did most of the boring work that would otherwise go to the professors, and he noticed that because it was so hard to get to be a graduate student at Harvard, they were all very brilliant and organized and hard working, as well as much needed by grateful professors.

And therefore, by custom, and as would be predicted from the psychological force called "reciprocity tendency", in a really advanced graduate course, the professors always gave an A. So Victor Niederhoffer signed up for nothing but the most advanced graduate courses in the Harvard Economics Department, and, of course, he got A, after A, after A, after A, and was hardly ever near a class. And for a while, some people at Harvard may have thought it had a new prodigy on its hands. That's a ridiculous story, but the scheme will work still. And Niederhoffer is famous: They call his style "Niederhoffering the curriculum." (Laughter).

2014年2月8日土曜日

地獄の底がふさわしい(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の23回目です。前回のつづきで、二次的・三次的影響の話です。(日本語は拙訳)

メディケアの例で示したように、人間の作ったシステムであれば何であれ、策略が生じます。これは人の心理に深く根ざすところによるものです。そして謀りごとをする中で、巧みな才能が姿をあらわします。ゲーム理論には大いなる潜在力があるからですね。それゆえに、カリフォルニアの労災補償制度では策略が芸術的な域まで達し、結局はうまく機能しませんでした。システムにおいて策を講じるうちに、人は不正というものを学びます。これは社会の発展にとって良きことでしょうか。経済の発展につながるでしょうか。断じて否と言えます。容易にごまかしがきくシステムを設計した人は、地獄の底へ落ちるのがふさわしいでしょう[ダンテ『神曲』の地獄界第九圏]。

わたしの友人一族が経営する会社は、トラック・トレーラー業界の8%を占めていました。彼はちょうどカリフォルニアでの最後の工場を閉めたところでした。テキサスにも一つありましたが、そちらの状況はもっと悪く、労災にかかる費用が賃金比にして2ケタ台の割合に達していました。トラック・トレーラーの製造では、それほどの利益は出せません。彼は工場を閉鎖し、ユタ州のオグデンへ移転しました、モルモン教徒が大勢いる土地です。彼らは大家族を養い、災害補償で駆け引きなどしない人たちでした。労災費用は賃金の2%分でした。

彼のテキサス工場を占めていたラテン系の人たちは、モルモン教徒とくらべてうまれつき不正直だったり悪人だったのでしょうか。いいえ、ちがいます。単に、不正を働けば報われるように動機づけが構成されていたからです。それは無知な議員によって制定されたものです。ロースクールを卒業した者ばかりだというのに、自分たちが社会発展の足をひっぱっているとは考えなかったのです。うそをついたりごまかすことがもたらす二次的・三次的効果を考慮しなかったのですね。このことがあらゆる場所で起こるようになると経済学はこの件で持ちきりになり、これからもずっとつづくかのようになりました。

Anyway, as the Medicare example showed, all human systems are gamed, for reasons rooted deeply in psychology, and great skill is displayed in the gaming because game theory has so much potential. That's what's wrong with the workers' comp system in California. Gaming has been raised to an art form. In the course of gaming the system, people learn to be crooked. Is this good for civilization? Is it good for economic performance? Hell, no. The people who design easily gameable systems belong in the lowest circle of hell.

I've got a friend whose family controls about eight percent of the truck trailer market. He just closed his last factory in California, and he had one in Texas that was even worse. The workers' comp cost in his Texas plant got to be double-digit percentages of payroll. Well, there's no such profit in making truck trailers. He closed his plant and moved it to Ogden, Utah, where a bunch of believing Mormons are raising big families and don't game the workers' comp system. The workers' comp expense is two percent of payroll.

Are the Latinos who were peopling his plant in Texas intrinsically dishonest or bad compared to the Mormons? No. It's just the incentive structure that so rewards all this fraud is put in place by these ignorant legislatures, many members of which have been to law school, and they just don't think about what terrible things they're doing to the civilization because they don't take into account the second-order effects and the third-order effects in lying and cheating. So, this happens everywhere, and when economics is full of it, it is just like the rest of life.

2014年1月18日土曜日

結果の結果のそのまた結果(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の22回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

7) 二次的あるいはより高次にわたる影響に対する関心の低さ

次の話題へ進みます。7番目のあやまち、それは二次的影響あるいはさらに高次の影響に対して経済学ではほとんど関心が払われていないことです。この欠陥は非常に理解しやすいものです。つまり物事の結果が結果を生み、結果の結果がそのまた結果を生みだすということです。これはとても複雑になります。気象学者の任に就いていたときには、これを非常にいらだたしく感じていました。しかし経済学からみれば、気象学など楽勝なものです。

メディケアに関する当初の法律を制定するにあたって、博士号を有する経済学者を含むさまざまな専門家が推定費用を算出しました。しかし彼らが経済面で極端なまでに無知だったことが露呈しました。彼らがやったのは、過去にかかった費用をそのまま外挿しただけだったのです。

費用見積もりを超えること、割合にして1000%超となりました。つまり彼らが見積もった金額は、実際にかかった費用の10%未満だったのです。新たな奨励策が開始されるや否や、その誘因にしたがって動向に変化が生じ、見積もっていたものとはまるで違う数字になりました。また予想していたとおり、高価な薬や治療法が開発されました。では卓越した専門家のみなさんが、それほどお粗末な予測を出したのはなぜでしょうか。それは、容易に答えが求まるように物事を単純化しすぎたからです。まるで、無教養な人がπ[パイ;円周率]を3.2に丸めるようなものですね。影響が及ぼす影響のそのまた影響などは考慮しない、彼らはその方針をとったのです。

学術界という世界でこの一般的な思考ミスの姿をみましたが、これにはひとつ良い点があります。ミクロ経済学という点では、ビジネスに携わる人のほうが愚かだということです。先に述べたメディケアのような心神喪失の例をビジネスの世界から挙げてみましょう。織物工場の経営者を説得しようとする人の話です。「こいつの出来といったらどうでしょう。新しく開発された織機ですが、生産性が大幅に向上しています。3年で元(もと)が取れます」。そういった織機などを20年間も買いつづけると、得られる利益はどうなるでしょうか。投下資本あたり4%で、ずっとそのままです。これは技術面でうまくいかないわけではなくて、経済が支配する法則にしたがうからです。つまり新型織機による利益は織物を購入する顧客へと向かい、織物工場の所有者のものにはならない、ということです。基礎的な経済学の授業をとったりビジネススクールを出た人が、なぜこんなことがわからないのでしょうか。きっと学校が手を抜いているのでしょう。そのような心神喪失がそうそうおこるとは思えませんから。

ふつう私が見積もるときは、型にはまったやりかたには従いません。他の人にそれをやらせたこともありません。机の上に「おえっ」と吐きたくないですから(笑)。そういったバカバカしいやりかたを始終やっている人たちはたしかにいます。しかしどれほどバカげたことをやっていても、彼らのことを信じる人も多いものです。この国では、バカげた予測をせっせとやるのは、うまい売込みのやりかたですね。

投資銀行ともなると、このやりかたは芸術的な形となります。彼らの予測にも目を通したことはありませんが、ある会社をウォーレンと共に買うことになったときの話をしましょう。その会社の売り手は、投資銀行が作成した莫大な調査結果を携えていました。こんなに分厚いのですよ。我々はそれが病死体であるかのようにお返ししました。「これに200万ドルも払ったんですよ」と、彼は言いました。「そういうのは使ったことも見たこともありません」と、私は答えました。

7) Too Little Attention to Second- and Higher-Order Effects

On to the next one, the seventh defect: too little attention in economics to second-order and even higher-order effects. This defect is quite understandable because the consequences have consequences, and the consequences of the consequences have consequences, and so on. It gets very complicated. When I was a meteorologist, I found this stuff very irritating. And economics makes meteorology look like a tea party.

Extreme economic ignorance was displayed when various experts, including Ph. D. economists, forecast the cost of the original Medicare law. They did simple extrapolations of past costs.

Well, the cost forecast was off by a factor of more than one thousand percent. The cost they projected was less than ten percent of the cost that happened. Once they put in place various new incentives, the behavior changed in response to the incentives, and the numbers became quite different from their projection. And medicine invented new and expensive remedies, as it was sure to do. How could a great group of experts make such a silly forecast? Answer: They oversimplified to get easy figures, like the rube rounding pi to 3.2! They chose not to consider effects of effects on effects, and so on.

One good thing about this common form of misthinking from the viewpoint of academia is that business people are even more foolish about microeconomics. The business version of the Medicare-type insanity is when you own a textile plant and a guy comes in and says, "Oh, isn't this wonderful? They invented a new loom. It'll pay for itself in three years at current prices because it adds so much efficiency to the production of textiles." And you keep buying these looms, and their equivalent, for twenty years, and you keep making four percent on capital; you never go anywhere. And the answer is, it wasn't that technology didn't work, it's that the laws of economics caused the benefit from the new looms to go to the people that bought the textiles, not the guy that owned the textile plant. How could anybody not know that if he'd taken freshmen economics or been through business school? I think the schools are doing a lousy job. Otherwise, such insanities wouldn't happen so often.

Usually, I don't use formal projections. I don't let people do them for me because I don't like throwing up on the desk (laughter), but I see them made in a very foolish way all the time, and many people believe in them, no matter how foolish they are. It's an effective sales technique in America to put a foolish projection on a desk.

And if you're an investment banker, it's an art form. I don't read their projections either. Once Warren and I bought a company, and the seller had a big study done by an investment banker. It was about this thick. We just turned it over as if it were a diseased carcass. He said, "We paid $2 million for that." I said, "We don't use them. Never look at them."

2013年12月10日火曜日

手抜きをするのは、裏切りも同然だ(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の21回目です。前回のつづきで、心理学を軽んじる話題の締めくくりになります。(日本語は拙訳)

次も同様なものですが、機能不全状態となった経済が回復したラテンアメリカでの奇妙な事例にふれたいと思います。ラテンアメリカのこの一部の地域では、だれもが何でもかんでも盗む習慣が広まっていました。会社のものを着服し、地域で開放されているあらゆるものを盗みました。もちろん、経済活動は事実上停止状態でした。ところがこの問題が解決されたのです。私がこの事例をどこでみつけたと思いますか。ヒントを出しましょう、経済学の論文集ではありません。そうです、心理学の論文集でみつけたのです。頭のいい人たちがおいでになり、いろんな心理的なトリックを使ったことで問題を解決しました。

そのような機能不全状態の経済が回復した見事な事例があり、多くの問題が簡単な技で解決される一方、自分では対処方法もわからず問題も理解できないとしても、経済学者は弁解もしないと思います。専門である経済システムを機能不全から立ち直らせる心理的芸当さえ知らないのに、心理学に対してなぜそれほどまでに無知でいられるのでしょうか。

ここで過激な強制命令を出しましょう。ハード・サイエンスにおける根源的なものを組織化するエートスよりもずっと厳しいですよ。これはサミュエル・ジョンソンの言葉です。彼の発言は実質的にこうです。「もし学術界がわずかの努力で容易に取り除ける無知を抱えたままならば、学術界のその行いは裏切りも同然だ」。彼は「裏切り」という言葉を使っているのです。この文句を私が気に入っている理由は、おわかりだと思います。彼はこう言っているのです。間抜けなところがなるべくないように努める学術界の一員ならば、取り除くことが可能な無知は自分のシステムからできるだけ多く排除する義務があると。

In this vein, I next want to mention a strange Latin American case of a dysfunctional economy that got fixed. In this little subdivision of Latin America, a culture had arisen wherein everybody stole everything. They embezzled from the company, they stole everything that was loose in the community. And of course, the economy came practically to a halt. And this thing got fixed. Now where did I read about this case? I'll give you a hint. It wasn't in the annals of economics. I found this case in the annals of psychology. Clever people went down and used a bunch of psychological tricks. And they fixed it.

Well, I think there's no excuse if you're an economist, when there are wonderful cases like that of the dysfunctional economy becoming fixed, and these simple tricks that solve so many problems, and you don't know how to do the fixes and understand the problems. Why be so ignorant about psychology that you don't even know psychology's tricks that will fix your own dysfunctional economic systems?

Here I want to give you an extreme injunction. This is even tougher than the fundamental organizing ethos of hard science. This has been attributed to Samuel Johnson. He said in substance that if an academic maintains in place an ignorance that can be easily removed with a little work, the conduct of the academic amounts to treachery. That was his word, "treachery." You can see why I love this stuff. He says you have a duty if you're an academic to be as little of a klutz as you can possibly be, and therefore you have got to keep grinding out of your system as much removable ignorance as you can remove.

2013年12月8日日曜日

(回答)そのスロットマシンが特別な理由(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の20回目です。前回投稿した問題の回答部分です。(日本語は拙訳)

その台が他とちがうのは、現代的な電子工学によって高い割合でニアミスするように設定されている点です。普通の台とくらべて「BAR = BAR = レモン」や「BAR = BAR = グレープフルーツ」といった目がよく揃うようにしたわけです。これが頻繁にプレイされている原因です。この答えをどうやって求めたかは、心理的な要因を考えれば簡単明白ですね。その台は、打ち手の基本的な心理的反応を呼び起こしているわけです。

心理的要因にはどんなものがあるのかわかっていてチェックリスト形式で頭の中に叩き込まれていれば、リスト中の要因をあたっていくことでやがてはドカンと大当たり。この現象を説明するものにたどり着きます。これ以上効率的にやれる方法はありません。そういった心理的な仕掛けについて学んでいない人には、答えは思い浮かばないのです。百人一首大会に目隠しで出場するような人生をおくりたいなら、ここにいらっしゃるのはなぜでしょうか。腕利きの選手のように成功したいのであれば、心理学も学んだうえで経済学に取り組むということも含めて、それらの心理的性向を習得すべきです。

What’s different about that machine is people have used modern electronics to give a higher ratio of near misses. That machine is going bar, bar, lemon, bar, bar, grapefruit, way more often than normal machines, and that will cause heavier play. How do you get an answer like that? Easy. Obviously, there’s a psychological cause: That machine is doing something to trigger some basic psychological response.

If you know the psychological factors, if you've got them on a checklist in your head, you just run down the factors, and, boom!, you get to one that must explain this occurrence. There isn't any other way to do it effectively. These answers are not going to come to people who don’t learn these mental tricks. If you want to go through life like a one legged man in an ass-kicking contest, why be my guest. But if you want to succeed, like a strong man with two legs, you have to pick up these tricks, including doing economics while knowing psychology.

2013年12月6日金曜日

(問題)そのスロットマシンが特別な理由(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の19回目です。チャーリーから「やさしい」問題が出題されています。回答は次回にご紹介します。なお、前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

6) 心理学に対する極端かつ非生産的なほどの無知

それでは6番目の欠陥に進みましょう。経済学では、極端かつ非生産的なまでに心理学に対して関心を持っていません。これは学際主義を軽視している一分野と言えます。ここでひとつ非常に簡単な問題を出しましょう。私は簡単な問題を専門にしているのです。

ラスベガスで小さなカジノをやっているとします。スロットマシンは標準的なものが50台あります。それらは見た目も同じ、機能も同じ、出玉率も同一、当たりの組み合わせも同一と、つまり同じ勝率で動作しています。ところが終業後に勝ち状況を確認すると、ある1台は他の台よりも25%多く[カジノ側の]勝ちを記録していました。50台のうちのどこに配置しても、時をおかずしてそうなります。この説明にはまちがいはありません。さて、この大勝ちする台は他と何がちがうのでしょうか(静寂)。だれかわかりますか。

<ある男性> その台でたくさんの人が勝負するからです。

<マンガー> いやいや、なぜたくさんの人がその台で勝負するのか知りたいのです。

6) Extreme and Counterproductive Psychological Ignorance

All right, I'm down to the sixth main defect, and this is a subdivision of the lack of adequate multidisciplinarity: extreme and counterproductive psychological ignorance in economics. Here I want to give you a very simple problem. I specialize in simple problems.

You own a small casino in Las Vegas. It has fifty standard slot machines. Identical in appearance, they're identical in the function. They have exactly the same payout ratios. The things that cause the payouts are exactly the same. They occur in the same percentages. But there's one machine in this group of slot machines that, no matter where you put it among the fifty, in fairly short order, when you go to the machines at the end of the day, there will be twenty-five more winnings from this one machine than from any other machine. Now surely, I'm not going to have a failure here. What is different about that heavy-winning machine? (Silence) Can anybody do it?

Male: More people play it.

Munger: No, no, I want to know why more people play it.

いつものようにわたしはハズレましたが、この問題は正解する方がたくさんいらっしゃるかもしれません。

2013年11月20日水曜日

マックス・プランクの運転手(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の18回目です。前回から間隔があいてしまいましたが、今回まで「総合」の話題がつづきます。(日本語は拙訳)

みなさんを総合の世界へと誘ってきた途中ですが、さて私企業や政府においてどれだけ取り組まれているのか、また何を以って各機能の居場所を決めればよいのか、はたまた総合がうまくいかない理由は何か、こういったことを見極めようとすると、ぐっとむずかしくなります。

私が思うに、経済学を修めて学校を出た高いIQの持ち主であればだれでも、それらの考えすべてを総合した10ページほどの説得力ある文章を書けて然るべきです。しかし、この国の事実上すべての経済学部でこのテストを実施しても、見事にお粗末な総合ばかり返ってくるでしょう。私なら、そちらに大金を賭けます。ロナルド・コース[経済学者]を持ち出してくるかもしれない。取引コストの話になるかもしれない。教授が教えてくれたものの消化しきれないあれこれが出てくるかもしれない。しかし、そういったあらゆるものがどのように相互関連するか本当に理解しているのかとなれば、すごく上手な人はごくわずかだろうと確信をもって予想できます。

じゃあやってみるかと思った人はぜひ挑戦してください。むずかしいことがわかると思います。これに関連して、ぜひ申し上げておきたい興味深い話題があります。プランク定数を発見した偉大なるノーベル賞受賞者マックス・プランクのことです。彼は経済学にいちど挑戦したものの、さじを投げました。指折りの頭脳の持ち主であるマックス・プランクが経済学をあきらめたのはなぜでしょうか。彼の答えはこうでした。「こいつはむずかしすぎる。答えを出そうにも、大雑把で不確かなものにしかならない」。道理を追究していたプランクを満足させるものではなく、けっきょくあきらめることになりました。完璧な道理は導き出せないとプランクが早々に認識していたのであれば、みなさんもまったく同じ結果に到達するだろうと確信できます。

ところでマックス・プランクには有名な逸話があります。真偽のほどはあやしいのですが、こんな話です。ノーベル賞を受賞してから、彼はあちこちから講演を依頼されるようになりました。そこでドイツ中を講演する際に、運転手に車を運転してもらいました。やがて講演内容を覚えてしまった運転手は、あるとき彼に言いました。「どうでしょうプランク教授、お互いの立場をとりかえてみませんか」。そういうわけで、運転手は朝起きると講演にでかけるようになりました。しまいにはある物理学者が席から立ち上がり、きわめて難解な質問をだしてきました。しかし運転手はうまくやったもので、こう答えたのです。「なんとまあ、ミュンヘンのような進んだ街の市民たる方が、そのように初歩的な質問をなさるとは。よろしいでしょう、わが車の運転手に答えさせるとします」(笑)。

Well, I've taken you part way through the synthesis. It gets harder when you want to figure out how much activity should be within private firms, and how much should be within the government, and what are the factors that determine which functions are where, and why do the failures occur, and so on and so on.

It's my opinion that anybody with a high I.Q. who graduated in economics ought to be able to sit down and write a ten-page synthesis of all these ideas that's quite persuasive. And I would bet a lot of money that I could give this test in practically every economics department in the country and get a perfectly lousy bunch of synthesis. They'd give me Ronald Coase. They'd talk about transaction costs. They'd click off a little something that their professors gave them and spit it back. But in terms of really understanding how it all fits together, I would confidently predict that most people couldn't do it very well.

By the way, if any of you want to try and do this, go ahead. I think you'll find it hard. In this connection, one of the interesting things that I want to mention is that Max Planck, the great Nobel laureate who found Planck's constant, tried once to do economics. He gave it up. Now why did Max Planck, one of the smartest people who ever lived, give up economics? The answer is, he said, "It's too hard. The best solution you can get is messy and uncertain." It didn't satisfy Planck's craving for order, and so he gave it up. And if Max Planck early on realized he was never going to get perfect order, I will confidently predict that all of the rest of you are going to have exactly the same result.

By the way there's a famous story about Max Planck which is apocryphal: After he won his prize, he was invited to lecture everywhere, and he had this chauffeur that drove him around to give public lectures all through Germany. And the chauffeur memorized the lecture, and so one day he said, "Gee Professor Planck, why don't you let me try it as we switch places?" And so he got up and gave the lecture. At the end of it, some physicist stood up and posed a question of extreme difficulty. But the chauffeur was up to it. "Well," he said, "I'm surprised that a citizen of an advanced city like Munich is asking so elementary a question, so I'm going to ask my chauffeur to respond." (Laughter).


余談ですが、以前の投稿でご紹介した本『とんでもなく面白い 仕事に役立つ数学』(西成活裕 著)でも、今回と同じ運転手の話題が取り上げられていました。ただし、昔聞いた話ということですが登場人物がアインシュタインになっています(p.234)。

2013年10月12日土曜日

おとなりのことは気にならんよ(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の17回目です。前回ご紹介した話題「コワい隣人」の答えになります。(日本語は拙訳)

おぞましい隣人のせいでダメになったホテルをどうすればいいか、マッキンゼーやハーバードの先生方にお願いすればよかったのかもしれません。そうすれば厚さが30センチにもなる報告書を出してくれたでしょう。しかしそうするかわりに、我々はその物件にこう掲げました。「売ります/貸します」。すると、それを見た人がこう持ちかけてきたのです。「お宅のホテルを改修するのに20万ドル使うことになるので、ツケでいいならそれなりの値段で買おう。それから、用途地域を変えてもらえるなら、駐車場はゴルフのパット用練習場にしたいね」。我々は言いました、「ホテルには駐車場がないと困るのでは。どうするおつもりですか」。彼は答えました、「いいや、うちの商売はフロリダの年寄りを飛行機にのせてきて空港のそばに泊まらせ、そこからディズニーランドやいろんな場所へバスで行き来するんだ[話題となっている場所はロサンゼルス]。おとなりのガラが悪くても気にならんよ。うちのお客さんはホテルの中で満足しているタチだからな。連中のやることは、朝になったらバスに乗って、夜になったら帰ってくるだけ。だから駐車場はいらんが、ゴルフのパットは練習したいんだ」。そういうわけで取引成立です。かように美しくまとまり、貸付金は返済されてすべてがうまくいきました。

あきらかにこの例では、リカードとピン工場の事例が相互作用しています。高齢者を楽しませるようにこの男が考え出した風変りなシステム、これがピン工場そのものです。一方で、そのシステムを有する男を見つけるに至った点は、まさにリカードです。これらは互いに影響し合っています。

Now we could have gone to McKinsey, or maybe a bunch of professors from Harvard, and we would have gotten a report about 10 inches thick about the ways we could approach this failing hotel in this terrible neighborhood. But instead, we put a sign on the property that said: "For sale or rent." And in came, in response to that sign, a man who said, "I'll spend $200,000 fixing up your hotel, and buy it at a high price on credit, if you can get zoning so I can turn the parking lot into a putting green." "You've got to have a parking lot in a hotel," we said. "What do you have in mind?" He said. "No, my business is flying seniors in from Florida, putting them near the airport, and then letting them go out to Disneyland and various places by bus and coming back. And I don't care how bad the neighborhood is going to be because my people are self-contained behind walls. All they have to do is get on the bus in the morning and come home in the evening, and they don't need a parking lot; they need a putting green." So we made the deal with the guy. The whole thing worked beautifully, and the loan got paid off, and it all worked out.

Obviously that's an interaction of Ricardo and the pin factory examples. The odd system that this guy had designed to amuse seniors was pure pin factory, and finding the guy with this system was pure Ricardo. So these things are interacting.


これは「おもしろい小ばなし」として記憶されるものかもしれません。ですが個人的には、このような経験を学術的な視点から一般化し、知恵の一例として示せるマンガーの思考プロセスのほうがずっと興味ぶかく感じられます。

ご参考までに、以下の地図はハリウッド・パーク競馬場の場所(A地点)を示したものです。L.A.の国際空港から6kmほどの場所にあります。


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2013年10月10日木曜日

コワい隣人の話(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の16回目です。今回のチャーリーは問題を出しているわけではないのですが、オチの部分は次回にご紹介します。この問題がどのように解決されたのか、どうぞ想像してみてください。なお、前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

総合に関する2つ目の興味深い問題には、経済学におけるもっとも著名な2つの例にかかわっています。ひとつめがリカードの「交易における比較優位の原則」で、もうひとつがアダム・スミスの「ピン工場」です。もちろんどちらも、一人当たりの生産量を大幅に向上させる上で役立つものです。また、なんらかの形で適材適所を実践している点でも、それらは似通っています。しかしながら、この2つの例は甚だしく異なったものです。かたやピン工場は集権的な計画の極致であり、システム全体が一部の人によって計画されます。もう一方のリカードのほうは、交易を進めることで自然に生じる結果です。

総合することの味をしめるようになると、当然ながらすぐにこう考えるようになります。「この2つは相互作用しているだろうか」。もちろんしています。見事なものです。これも、現代の経済システムが持つ力をうみだす元となるものです。この種の相互作用を実際に経験したことがあります。バークシャーが保有していた貯蓄貸付組合が、ハリウッド・パーク競馬場の向かいにあるホテルへ貸付けしていた時のことです。しばらくしてそこの隣人が入れ替わり、ギャングやポン引きや麻薬の売人ばかりになりました。彼らは壁から銅製のパイプを引きはがして、麻薬をやるときに使っていました。ホテルの周りは銃を持ち歩く連中ばかりになって、だれも近寄らなくなりました。我々は2,3回競売にかけましたが、貸付金は無価値となってしまいました。このように、解決できない経済的な問題があったのです。そう、ミクロ経済的な問題です。

The second interesting problem with synthesis involves two of the most famous examples in the economics. Number one is Ricardo's principle of comparative advantage in trade, and the other is Adam Smith's pin factory. And both of these, of course, work to vastly increase economic output per person, and they're similar in that each somehow directs functions into the hands of people who are very good at doing the functions. Yet they're radically different examples in that one of them is the ultimate example of central planning, the pin factory, where the whole system was planned by somebody, while the other example, Ricardo's, happens automatically as a natural consequence of trade.

And, of course, once you get into the joys of synthesis, you immediately think. "Do these things interact?" Of course they interact. Beautifully. And that's one of the causes of the power of a modern economic system. I saw an example of that kind of interaction years ago. Berkshire had this former savings and loan company, and it had made this loan on a hotel right opposite the Hollywood Park Racetrack. In due time the neighborhood changed and it was full of gangs, pimps, and dope dealers. They tore copper pipe out of the wall for dope fixes, and there were people hanging around the hotel with guns, and nobody would come. We foreclosed on it two or three times, and the loan value went down to nothing. We seemed to have an insolvable economic problem - a microeconomic problem.

2013年9月16日月曜日

ほとんどのMBAの学生が答えられない(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の15回目です。今回は5つ目のあやまちの話題ですが、すでに本シリーズ以前の過去の投稿で核心的な部分を取り上げています。以下のリンク先記事をごらんになられていない方は、はじめにそちらをお読みください。(日本語は拙訳)

(問題)ビジネス・スクールの学生への質問
(回答)ビジネス・スクールの学生への質問

なお、前回分はこちらです。

5) 経済学において、総合がほとんどなされていないこと

経済学に対する5番目の批判は、「総合」がほとんどなされていない点です。伝統的な経済学以外のものと組み合わせないだけでなく、経済学の領域内においてもそうしていません。2ヶ所のビジネススクールで次の質問を投げかけたことがあります。「みなさんは需要曲線と供給曲線のことを学習されたと思います。通常は、価格を上げるにつれて売れる量が減少し、反対に価格を下げると売れる量が増加する。これはみなさんが習ったとおりですね」。学生は一同にうなずきました。「それではお聞きしますが、物理的にたくさんの量を売りたい時に値上げするのが正解なのは、どんなものがありますか。例をいくつかあげてください」。そう質問すると、なんとも不気味な静寂がしばらくつづきました。ついにはどちらの学校でも、50人に1人ぐらいの割合で例を1つあげることができました。ある状況下では高い価格が品質をおおよそあらわすことになり、売り上げ増加につながるとの考えに至ったのです。

私の友人のビル・バルハウスという人がこれを実践しました。彼は、精密機器を製造する会社ベックマン・インストルメンツのトップでした。製品に瑕疵があって問題がおきれば、購入者に深刻な害をあたえるものでした。原油の油井ポンプではないですが、そのような例を思い浮かべてもらえればよいでしょう。他社製品よりも優れているのに売上げがかんばしくなかったのですが、彼はその理由に気づきました。他よりも値段が安かったため、品質の劣った機器だとみなされていたのです。そこで20%ほど値上げしたところ、売上数量が増加しました。

しかし、現代のビジネス・スクールでようやくこの一例をあげられた人は、50人に1人の割合でした。片方の学校はスタンフォードのビジネス・スクールです。入るのがむずかしい学校ですね。しかも私が聞きたかったほうの答えをあげた人はいまだ皆無です。もし値段を上げて、浮いたお金で競合の購買代理人を買収したらどうなると思いますか(笑)。うまくいくでしょうか。「値上げと売上増加分によってさらに売上げを向上させる」という考えと同等にはたらくものが、経済学つまりミクロ経済学に存在するでしょうか。そうです、ひとたび心理的に跳躍すれば無数に考えられるようになります。単純なことですね。

最たる例が資産運用業界です。ミューチュアル・ファンド[=投資信託]のマネージャーとなれば、さらなる売上げ増を求めるものです。ですからふつうは、手数料を上げようと思いつきます。もちろんそうすれば最終顧客のものとなる投資対象の口数を減らし、その投資対象の購入単価を上げることになります。浮いた手数料分は、販売代理人を買収するのに使います。つまりブローカーを買収して顧客を裏切らせ、顧客の資金を手数料の高い商品へ投資させるわけです。このやりかたがうまくいき、ミューチュアル・ファンドの売上げは少なくとも1兆ドルに達しています。

このたくらみには人間の本性の望ましくない一面があらわれています。私はこれを固く遠ざけて生きてきたことを申し上げておきますが、自分で買いたいと思わないものを売りつける、そのようなことに人生を費やす必要はないでしょう。合法的なものであったとしても、いい考えだとは思えません。しかし私の考えを額面どおりに受けとってはなりません。雇用されないおそれがあるからです。「どこかが雇ってくれればいいさ」というリスクを避けたければ、私の考えにしたがうべきではありません。

ここでお話ししたちょっとした質問は私が見聞きしてきたことです。これは、たとえ高度な学問的環境であっても、経済に関する問題を考える場では、いかに総合がなされていないかを示した一例となっています。明白な回答ができる、わかりきった問題についてですよ。しかし、経済学の科目を4つとったあとにビジネス・スクールに進学し、高いIQをそなえて小論文をこなす人であっても、役に立つ総合ができないのです。そのようにお粗末なのは、なんでもわかっている大学教授が、学生へ教えるのをあえて控えているせいではありません。教授たち自身がこういった総合を、全然うまくやれないのが原因です。他のやりかたで訓練を受けてきたのですね。ケインズかガルブレイスのどちらだったか思い出せませんが、こう発言しています。「経済学の教授はその方策を知っているがために、もっとも効率的にふるまう」。彼らは大学院で学んだことを使って、小さな成果をあげるのでしょう。その後の人生の間に(笑)。

5) Too Little Synthesis in Economics

My fifth criticism is there is too little synthesis in economics, not only with matter outside traditional economics, but also within economics. I have posed before two different business school classes the following problem. I say, "You have studied supply and demand curves. You have learned that when you raise the price, ordinarily, the volume you can sell goes down, and when you reduce the price, the volume you can sell goes up. Is that right? That's what you've learned?" They all nod yes. And I say, "Now tell me several instances when, if you want the physical volume to go up, the correct answer is to increase the price." And there's this long and ghastly pause. And finally, in each of the two business schools in which I've tried this, maybe one person in fifty could name one instance. They come up with the idea that, under certain circumstances a higher price acts as a rough indicator of quality and thereby increases sales volumes.

This happened in the case of my friend, Bill Ballhaus. When he was head of Beckman Instruments, it produced some complicated product where, if it failed, it caused enormous damage to the purchaser. It wasn't a pump at the bottom of an oil well, but that's a good mental example. And he realized that the reason this thing was selling so poorly, even though it was better than anybody else's product, was because it was priced lower. It made people think it was a low-quality gizmo. So he raised the price by twenty percent or so, and the volume went way up.

But only one in fifty can come up with this sole instance in a modern business school - one of the business schools being Stanford, which is hard to get into. And nobody has yet come up with the main answer that I like. Suppose you raise that price and use the extra money to bribe the other guy's purchasing agent? (Laughter). Is that going to work? And are there functional equivalents in economics - microeconomics - of raising the price and using the extra sales proceeds to drive sales higher? And, of course, there are a zillion, once you've made that mental jump. It's so simple.

One of the most extreme examples is in the investment management field. Suppose you're the manager of a mutual fund, and you want to sell more. People commonly come to the following answer: You raise the commissions, which, of course, reduces the number of units of real investments delivered to the ultimate buyer, so you're increasing the price per unit of real investment that you're selling the ultimate customer. And you're using that extra commission to bribe the customer's purchasing agent. You're bribing the broker to betray his client and put the client's money into the high-commission product. This has worked to produce at least a trillion dollars of mutual fund sales.

This tactic is not an attractive part of human nature, and I want to tell you that I pretty completely avoided it in my life. I don't think it's necessary to spend your life selling what you would never buy. Even though it's legal, I don't think it's a good idea. But you shouldn't accept all my notions because you'll risk becoming unemployable. You shouldn't take my notions unless you're willing to risk being unemployable by all but a few.

I think my experience with my simple question is an example of how little synthesis people get, even in advanced academic settings, considering economic questions. Obvious questions, with such obvious answers. Yet, people take four courses in economics, go to business school, have all these I.Q. points, and write all these essays, but they can't synthesize worth a damn. This failure is not because the professors know all this stuff and they're deliberately withholding it from the students. This failure happens because the professors aren't all that good at this kind of synthesis. They were trained in a different way. I can't remember if it was Keynes or Galbraith who said that economics professors are most economical with ideas. They make a few they learned in graduate school last a lifetime. (Laughter).

2013年9月1日日曜日

ビリヤードでもテニスでもチェスでもない(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の14回目です。前回だされた問題の答えにあたる部分です。(日本語は拙訳)

視覚と手指を反射的に協調させることが多く要求されるものではないでしょう。85歳にもなる人が全国ビリヤード大会で勝てることはないですから。テニスともなればなおさらで、まずあり得ません。さらに彼は指摘しました。チェスも無理ですね。この物理学者はとてもうまい指し手なのです。なぜならば、厳しいゲームだからです。システムが非常に複雑ですし、多大なスタミナも要求されます。ここまできて彼は思いあたり、チェッカーのことに思い至りました。「ああそうか、そのゲームなら85歳になった時でもいろいろ経験してきたことが最高位へと導いてくれますね」。

はたして、それが正解でした。

それはともかく、逆方向と順方向に発想を逆転させながら、そういった頭で考える謎解きをすることをお勧めします。併せて経済学の世界では、ここで示したような小さなスケールでのミクロ経済学に熟達するのがよいでしょう。

It can't be anything requiring a lot of hand-eye coordination. Nobody eighty-five years of age is going to win a national billiards tournament, much less a national tennis tournament. It just can't be. Then, he figured it couldn't be chess, which this physicist plays very well, because it's too hard. The complexity of the system and the stamina required are too great. But that led into checkers. And he thought, "Ah ha! There's a game where vast experience might guide you to be the best even though you're eighty-five years of age."

And sure enough that was the right answer.

Anyway, I recommend that sort of mental puzzle solving to all of you, flipping one's thinking both backward and forward. And I recommend that academic economics get better at very small-scale microeconomics as demonstrated here.

2013年8月30日金曜日

65年ぶりに再び優勝した人(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の13回目です。今回もまたチャーリーからの問題が出ています。回答部分の文章は次回にご紹介します。なお、前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

それでは、そういった問題を私がどのように解いているかお話ししましょう。言うまでも私は単純なサーチ・エンジンを心に抱き、チェックリストを順に確認していきます。さらに、大雑把なアルゴリズムをいくつか使っています。これは非常に多くの複雑なシステムにおいて、かなりうまくいきます。そういったアルゴリズムはたとえば次のように使います。著しい成功とは、それらの要因を組み合わせることでなされるものです。

A) ひとつかふたつの変数を極大化あるいは極小化すること。たとえば、コストコや当社の家具・電化製品店の例があげられます。

B) 成功要因を追加して、より大きな連携をつくることで成功を後押しすること。これは非線形的に進むことがよくあるため、物理学における破断点や臨界といった概念を思い浮かべるかもしれません。そうです、非線形的な結果がしばしばもたらされるのです。もうひと押しすることで、「とびっきりな」結果が得られます。私は生涯を通じて「とびっきりな」結果をさがし求めてきたので、それらがどのように発生するのか説明してくれるモデルには大きな関心を持っています。

C) 多くの要因において、徹底的にすぐれた成績を追求すること。トヨタやレス・シュワブがその例です。

D) ある種の大波をとらえて乗ること。オラクルが例です。なお今日の議事次第の中でオラクルのCFO(ジェフ・ヘンリー)が多くを占めていますが、オラクルのことはそれを知る前から話題にあげようと考えていました。

概して私が問題を解く際に使っており、みなさんにもお勧めなのは、急所を突くアルゴリズムを選んで、前向きだけでなく後ろ向きにもやることです。一例をあげてみましょう。私は家族にちょっとしたパズルを出して悩ませることがあります。次の問題は、それほど昔でない頃に家族へ出したものです。「この国でおこなわれる活動のひとつで、一対一のコンテスト形式によって国内チャンピオンを決めるものがあります。65年前に優勝した人が再び優勝しました。さて、その活動とは何でしょうか」(一時中断)。この問題についても、答えがひらめく人はあまりみたことはありません。私の家族でも、それほど多くはひらめきませんでした。しかし息子の一人に物理学者がいて、私好みのこの種の考え方に精通していました。ほどなく正解にたどりついた彼の説明はこうです。

Well, how did I solve those problems? Obviously I was using a simple search engine in my mind to go through checklist-style, and I was using some rough algorithms that work pretty well in a great many complex systems, and those algorithms run something like this: Extreme success is likely to be caused by some combination of the following factors:

A) Extreme maximization or minimization of one or two variables. Example, Costco or our furniture and appliance store.

B) Adding success factors so that a bigger combination drives success, often in nonlinear fashion, as one is reminded by the concept of breakpoint and the concept of critical mass in physics. Often results are not linear. You get a little bit more mass, and you get a lollapalooza result. And, of course, I've been searching for lollapalooza results all my life, so I'm very interested in models that explain their occurrence.

C) An extreme of good performance over many factors. Example, Toyota or Les Schwab.

D) Catching and riding some sort of big wave. Example, Oracle. By the way, I cited Oracle before I knew that the Oracle CFO (Jeff Henley) was a big part of the proceedings here today.

Generally I recommend and use in problem solving cut-to-the quick algorithms, and I find you have to use them both forward and backward. Let me give you an example. I irritate my family by giving them little puzzles, and one of the puzzles that I gave my family not very long ago was when I said, "There's an activity in America, with one-on-one contests and a national championship. The same person won the championship on two occasions about sixty-five years apart." "Now," I said, "name the activity." (Pause). Again, I don't see a lot of light bulbs going on. And in my family, not a lot of light bulbs were flashing. But I have a physicist son who has been trained more in the type of thinking I like. And he immediately got the right answer, and here's the way he reasoned:


何年か前にこの文章を読んだときは、答えが全く思いつきませんでした。日本人になじみのない話題を取り上げているので、どんぴしゃりの答えを出すのは困難だと思います。

2013年8月14日水曜日

レス・シュワブ・タイヤが成功した理由(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の12回目です。前回だされたレス・シュワブ・タイヤの問題に対する答えです。(日本語は拙訳)

シュワブ氏には乗れる波があったでしょうか。このように質問を考えることで、答えがでてきます。日本人は、タイヤの商売を一から始めて巨大になりました。ですからこの御仁も、早い段階のどこかでその波に乗ったにちがいありません。それにつづいてゆっくりと成功をおさめていく間は、他にも理由があったはずです。たぶんまちがいないでしょうが、この人は正しいことを山ほどやったのでしょう。その中でもきっとやったと思われるのが、マンキューが言うところの「動機づけがもたらす強力な原動力」を組み合わせることです。きわめて巧妙な動機づけのしくみを使って、自分の会社の人たちを扱っていたことでしょう。たくみな人材登用のシステムがあったり、宣伝が上手だったのでしょう。彼は芸術的な才能を持っていたのですね。だから、日本製タイヤが攻めてくる波に乗る必要がありました。彼らと同じように、日本人も成功していたからです。才能あふれる人が熱狂的なまでに正しいことを次々と行い、賢明な仕組みによって従業員をうまく使ったのです。このように、答えはそれほどむずかしいものではありません。際立った成功の原因となるものが他に考えられるものでしょうか。

ビジネススクールの卒業生を雇っても、みなさんほどにはこの手の問題にうまく対処できません。彼らをあまり雇わないのも、たぶんそのせいだと思います。

Is there some wave that Schwab could have caught? The minute you ask the question, the answer pops in. The Japanese had a zero position in tires, and they got big. So this guy must have ridden that wave some in the early times. Then, the slow following success has to have some other causes. And what probably happened here, obviously, is this guy did one hell of a lot of things right. And among the things that he must have done right is he must have harnessed what Mankiw calls the superpower of incentives. He must have a very clever incentive structure driving his people. And a clever personnel selection system, etc. And he must be pretty good at advertising. Which he is. He's an artist. So, he had to get a wave in Japanese tire invasion, the Japanese being as successful as they were. And then a talented fanatic had to get a hell of a lot of things right and keep them right with clever systems. Again, not that hard of an answer. But what else would be a likely cause of the peculiar success?

We hire business school graduates, and they're no better at these problems than you were. Maybe that's the reason we hire so few of them.


なにげない文章ですが、ビジネスで成功する上での重要なことをチャーリーは示していると思います。それは自助努力だけでなく、「波に乗る」とか「てこの力を借りる」といった他者の力をうまく利用することの大切さです。チャーリーは伝記を読むことを勧めているので、ジョン・D・ロックフェラーやアンドリュー・カーネギー、ベンジャミン・フランクリンといった成功者の伝記を以前に読んでみました。大物になる前の彼らは、別の成功者とめぐりあうきっかけを育て、他人から与えられたチャンスを逃すことなく、次の大きな成功へうまくつなげていると感じました。

「波に乗る」とはいい言葉だと思います。波をつかむ技量や才覚や度胸も必要ですが、波がこなければ始まらないという運の要素が含まれていて、現実を冷徹にとらえていると思います。