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2017年12月30日土曜日

2017年投稿分から、おすすめの言葉三選

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今年は投稿数が少なかったこともあり、心にとどめておきたい言葉を3つ取りあげて、年の締めくくりといたします。いずれも、未来予測に関する同じ話題へ焦点を当てており、かき混ぜるとひとつに溶け合いそうな文章です。

予測に関する5つの警句(ハワード・マークス)より、
未来を予測する者たちは、2つの種族に分けられる。物事をわかっていない者たちと、自分が物事をわかっていないことを理解していない者たちだ。
(ジョン・ケネス・ガルブレイス[経済学者])

予測というものは、未来よりも予測者について語ってくれることが多い。
(ウォーレン・バフェット)

『かくて行動経済学は生まれり』(マイケル・ルイス)より、
人は自分がわかっていないことをわかっていないというだけでなく、自分たちの無知を判断材料として考慮しようとしないのだ。

2017年12月28日木曜日

2017年デイリー・ジャーナル株主総会(4)投資した資産が半減した経験

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デイリー・ジャーナル社2017年株主総会でのチャーリー・マンガーに対する質疑応答から、彼が過去に経験した資産価格下落の話題です。なおチャーリーの語る後半部は、以前に投稿した内容の再掲になります。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問28> 1973年から1974年にかけて運営されていた投資パートナーシップの資産が半減したときには、何が起こったのですか。

<チャーリー> そう、すごく単純なことですよ。簡単そのものです。いい質問ですね、あれは教訓になりますから。私が運営していたパートナーシップの資産価値が、1年の間に50%下落したのです。市場としては40%程度下落しました。あのときの景気後退は30年に一度のものでしたよ。「市場を独占していた新聞社が、純利益の3,4倍で売られていた」ほどですからね。おっしゃるとおり、どん底のときには頂点から50%落ちましたよ。保有したバークシャー株がそれだけ下落したのは過去に3回ありましたね。

私からすれば、市場の下落は人生に付き物だと考えますね。長期にわたってこのゲームに関わるつもりならば、そうする必要がでてきます。値段が半分まで下落したときでも、やたらと思い悩まずにやり過ごせますよ。より良い生き方を心がけていれば、資産半減の事態となっても、沈着冷静・端麗優雅に受け流せるでしょう。下落を回避しようとは試みないように。結局はやって来ることです(拍手)。「自分には来ない」と言う人は、十分果敢に投資していないからですよ。

Question 28: What happened 1973 and 1974 when your investment firm lost over half?

Charlie: Oh, that’s very simple. That’s very easy. That’s a good lesson. That’s a good question. What happened is the value of my partnership where I was running, went down by 50% in one year. Now the market went down by 40% or something. It was a once in 30 year recession. I mean monopoly newspapers are selling at 3 or 4 times earnings. At the bottom tick, I was down from the peak, 50%. You’re right about that. That has happened to me 3 times in my Berkshire stock.

so I regard it as part of manhood. If you’re going to be in this game for the long pull, which is the way to do it, you better be able to handle a 50% decline without fussing too much about it. And so my lesson to all of you is conduct your life so that you can handle the 50% decline with aplomb and grace. Don’t try to avoid it. (applause) It will come. In fact I would say if it doesn’t come, you’re not being aggressive enough.

備考です。バークシャー株の価格が半減した3回の時期は、株価チャートで確認したところ、おそらく2007-2009年、1998年-2000年、1973-1974年かと思われます。また1987年のブラック・マンデーの時期にも、4割弱の下落があったようです。このことから、よく言われる「10年周期」がバークシャー株によっても確認できますね。

2017年12月24日日曜日

問題解決の技法(4)一般化せよ(クロード・シャノン)

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数学者クロード・シャノンが行った問題解決に関する講演について、4回目の投稿です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

研究活動を行う際に役立つ思考上の工夫としては、他には一般化があると思います。特に数学上の研究では威力を発揮します。「隔絶した特殊な結果を証明する」、そのような形で発展した代表的理論、とりわけ定理に取り組む人は、まず一般化から始めるものです。N次元で考える前には2次元で試すでしょうし、ある種の代数の問題であれば、普遍代数学の領域で考えるものです。実数の領域に関することであれば、普遍代数やその類の領域へ移って考えるでしょう。このことさえ忘れずに実行すれば、実際はたやすく取り組めます。なにか答えを見つけたときには、ただちに「もっと一般化できないか」と自問することです。「より多くを含んだ広範な記述ができないだろうか」と。思うに、工学の分野でも同じように留意されるべきです。賢明な方法で何かを達成した人があらわれたら、それをみて次のように自問するのがよいでしょう。「同じ原則をもっと一般的な形で適用できないだろうか。この巧妙なアイデアを同じように使って、もっと幅広い範疇のさまざまな問題を解決できないだろうか。この特定のことを使える領域が、どこか他にないだろうか」と。

Another mental gimmick for aid in research work, I think, is the idea of generalization. This is very powerful in mathematical research. The typical mathematical theory developed in the following way to prove a very isolated, special result, particular theorem - someone always will come along and start generalization it. He will leave it where it was in two dimensions before he will do it in N dimensions; or if it was in some kind of algebra, he will work in a general algebraic field; if it was in the field of real numbers, he will change it to a general algebraic field or something of that sort. This is actually quite easy to do if you only remember to do it. If the minute you’ve found an answer to something, the next thing to do is to ask yourself if you can generalize this anymore - can I make the same, make a broader statement which includes more - there, I think, in terms of engineering, the same thing should be kept in mind. As you see, if somebody comes along with a clever way of doing something, one should ask oneself "Can I apply the same principle in more general ways? Can I use this same clever idea represented here to solve a larger class of problems? Is there any place else that I can use this particular thing?"

「一般化」というアイデアをチャーリー・マンガーの言葉に置き換えるとすれば、「ハードサイエンスにおけるエートス」がうってつけのように思います。(過去記事1, 過去記事2)

2017年12月20日水曜日

投資家トッド・コームズの仕事量

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バークシャー・ハサウェイのトッド・コームズと言えば、ウォーレン・バフェットが次の世代を見すえて運用を任せているマネー・マネージャーの一人です(もうひとりは、テッド・ウェシュラー)。半年以上前のものですが、彼がどのように仕事に取り組んでいるのか触れた記事がありましたので、ご紹介します。同様の話題について過去にも投稿しましたが、補完する内容が語られています。(日本語は拙訳)

EXCLUSIVE: Warren Buffett's money managers, Todd Combs and Ted Weschler, speak (Yahoo! Finance)

「朝は7時か8時にオフィスに着いて、夜の7時か8時まで読み物をしていますね」、彼は笑いながらそう答えた。「家に帰って家族と会った後は、眠りに就くまでベッドの中でさらに1,2時間読んでいます。想像がつくと思いますが、1週間にかかってくる電話はほんの3,4件ほどですから、仕事に割込みが入ることはごくわずかです。ついてくれているアシスタントの女性がすばらしく、私の読むものについて熟知していますし、ある程度はなんでも用意してくれます。私が印をつけて彼女に戻す、といった若干のやり取りをするわけです。ファイリングなどは、きちんとした決まりを定めてあります。しかし文字通り1日に12時間、あらゆるものについて読んでいます」。

(中略)

「ええ、読む対象もあらゆる範囲にわたっています。当然なのは、まず新聞です。それから、250社前後の公開企業を毎四半期監視しているので、各社の四半期報告書には目を通しています。さらにはSEC[証券取引委員会]に提出された各種報告書も数多く読みます。また[業績発表説明会の]トランスクリプトも多々読んでいます。聴くよりも読んだほうが速いですし、会話で出てくる双方の小競り合いも飛ばせますから」。

「SECへの提出資料をいろいろ読むほかに、業界誌もいろいろと数十誌購読しています。それから、相談できるすばらしいアナリストが一人いて、チャネルの現状を調べる際に手伝ってくれます。たとえば、顧客や供給者や元従業員などと話ができるわけです。実のところ、「実際にそうだったらどうなのか」という見方をするように心がけています。どの証券を調べる際にも、『企業全体を保有していたらどうなるだろうか』という感覚で取り組むようにしています」。

“I get in around 7 or 8, and I read until about 7 or 8 at night,” he says with a laugh. “And I go home, and see my family, and then I’ll read for another hour or two in bed at night. And you know, there might only be three to four phone calls the entire week. So there are very, very few interruptions. I have a great assistant who knows everything that I read, and she kinda provides everything, and there’s a back and forth between us where I’ll mark it up, and give it back to her. And we have a system for filing and so forth. But it’s literally just reading about 12 hours a day of everything I just mentioned.”

*

“Well it runs the gamut as well. I would say certainly newspapers. I follow about 250 public companies every quarter. And so I go through, for each quarter each one of those companies, their quarterly reports. So a lot of S.E.C. filings. A lotta transcripts. I can read a transcript much faster than I can listen to the conference call. And you weed out some of the friction there as well.

“So a lot of S.E.C. filings. A lotta trade magazines. There are a couple dozen of those that I subscribe to. And then I have a wonderful analyst who helps me with channel checks where we talk to customers, suppliers, ex-employees and so forth. We’re really trying to get a view of what it would be like - every security that we look at, we’re really trying to get a sense of what it would be like to own the entire business.”

トッドの仕事ぶりは、まさしくGEICO時代のルー・シンプソンを思い出させますね(参考記事)。

2017年12月16日土曜日

パッシブはアクティブである(GMO)

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ジェレミー・グランサムのファンドGMOのサイトに掲載されていた「S&P500の価値評価」の文書から、もう少し引用します。なお同文書が読者として想定しているのは、機関投資家だと思われます。そのため、投資を生業としていない一般の個人投資家には当てはめにくい指摘があります。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

パッシブの道を選ぶことはアクティブな判断である
人間には、ここしばらくに起きたできごとを延長して将来を予想する性質があります。絶対的および相対的基準のどちらにおいても、米国株式が著しい成績をあげてきたことで、多くの人によって「米国株こそ保有すべき唯一の資産であり、それをパッシブに保有するやりかたがもっとも安あがりだ」と推奨される理由が、容易にうかがえます。

そうだとしてもパッシブを選んだ判断は、アクティブに決めた結果だと言えます。そして現在の投資家が十分な注意を向けていない重大なリスクがそこに存在するのではないか、と私たちは考えています。多くの投資家がパッシブ運用をますます強要するにつれて、アクティブ運用による各種の投資機会が増加しています。S&P500指数に連動したパッシブ運用へ資産を配分すると決めることは、長期的リターンを決定づけるものとして私たちが最も重要だと信じている要因、すなわち価値評価水準(valuation)を無視することを意味しています。そこに至っては、みずからを「投資家である」と語る資格はありません。「投機家」と名乗ることはできますが、「投資家」ではありません。パッシブ運用を選ぶことは、アクティブ投資家が持つある能力を排除することになります。それは、「指数を構成する証券の中で、とんでもなく割高な銘柄の割合を減らす」能力です(当然ながら私たちの好みは株式の銘柄選択においても同様で、価値評価に基づいたやりかたです)。史上3番目に割高な米国株市場に際して、パッシブな指数における構成比率と同じ配分をすることは、いずれは非常に高くつく決定だと私たちは考えています。それにもかかわらず、パッシブ投資は今もなお人気のある選択肢です。米国株市場におけるパッシブなインデックス投資の占める割合は、30%前後に至っています。(p. 8)

(中略)

絶対的な面からみると、投資機会は乏しくきわめて困難な状況です。しかしながら、現在のように資産価格が完璧と言える状況であれば、資産への値付けを大きく変動させても、失望を招くことはほとんどないでしょう。そうであれば私たちからは、現金的な短期性資産を大量に保有することをお勧めします(私たちの資産配分方針も同様です)。クマのプーさんが語った不滅の忠告を思い返してみてください。「なにもしないことのありがたさはバカにできないよ」。お好みであれば、次のように覚えておくのもよいでしょう。「することが何もなければ、何もするな」[過去記事1, 過去記事2]。(p. 111)

Going passive is an active decision
Human nature is to extrapolate the recent past. It is easy to see, given the strong performance of US equities in both absolute and relative terms, why many are suggesting they are the only asset you need to own. And the cheapest way of owning them is passively.

However, the decision to be passive is still an active decision - and we would suggest one with important risks that investors are not paying adequate attention to today. As more and more investors turn to passively-managed mandates, the opportunity set for active management increases. A decision to allocate to a passive S&P 500 index is to say that you are ignoring what we believe is the most important determinant of long-term returns: valuation. At this point, you are no longer entitled to refer to yourself as an investor. You may call yourself a speculator, but not an investor. Going passive eliminates the ability of an active investor to underweight the most egregiously overpriced securities in the index (we obviously prefer a valuation-based approach for stock selection as well). When faced with the third most expensive US equity market of all time, maintaining a normal weight in a passive index seems to us to be a decision that will likely be very costly. Yet despite this, it remains a popular path, with around 30% of all assets in the US equity market in the hands of passive indexers (see Exhibit 9).

*

In absolute terms, the opportunity set is extremely challenging. However, when assets are priced for perfection as they currently are, it takes very little disappointment to lead to significant shifts in the pricing of assets. Hence our advice (and positioning) is to hold significant amounts of dry powder, recalling the immortal advice of Winnie-the-Pooh, “Never underestimate the value of doing nothing”or, if you prefer, remember - when there is nothing to do, do nothing.

2017年12月12日火曜日

問題解決の技法(3)異なる観点から見つめよ(クロード・シャノン)

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数学者クロード・シャノンが行った問題解決に関する講演について、3回目の投稿です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

対象となっている問題に迫る方法として他に考えられるのは、できるだけ異なった形式でその問題を記述しなおしてみることです。たとえば言葉を変えてみたり、視点を移動させたり、可能な限りあらゆる角度から見つめたりします。そうすることで複数の角度から同時に、問題を凝視できるようになります。それによって、その問題における本当に基本的な部分が見通せるようになり、重要な諸要因を結びつけることで解を導き出せるでしょう。このやりかたを実行するのは実のところむずかしいのですが、大切なことです。もしそうしなければ、思考の轍(わだち)へと容易にはまってしまうからです。問題に取り組み始めた地点から円周上をずっと回ってきて、ここまでたどり着けさえすれば、先が見通せるようになるかもしれません。しかしそれでは、「問題をみつめる際のある種のやりかた」に縛りつける思考上の障害物から離れられません。それがために、当該の問題に関する新参者があらわれたときに、先に述べたようなやりかたで解を見つけてしまう例が非常によくみられます。一方で問題に取り組んでいた本人は、何か月にもわたる苦労の末に解を見出した次第です。新人のほうはその問題を新鮮な視点からみつめたのに対して、本人のほうは思考の轍へとはまっていたのです。

Another approach for a given problem is to try to restate it in just as many different forms as you can. Change the words. Change the viewpoint. Look at it from every possible angle. After you’ve done that, you can try to look at it from several angles at the same time and perhaps you can get an insight into the real basic issues of the problem, so that you can correlate the important factors and come out with the solution. It’s difficult really to do this, but it is important that you do. If you don’t, it is very easy to get into ruts of mental thinking. You start with a problem here and you go around a circle here and if you could only get over to this point, perhaps you would see your way clear; but you can’t break loose from certain mental blocks which are holding you in certain ways of looking at a problem. That is the reason why very frequently someone who is quite green to a problem will sometimes come in and look at it and find the solution like that, while you have been laboring for months over it. You’ve got set into some ruts here of mental thinking and someone else comes in and sees it from a fresh viewpoint.

今回の説明は、今さらながら合点のいく文章でした。「問題とは、手持ちの道具では容易に解決できないもののことである。だからこそ問題を解決するには、両者の関係性を変えることが有効的だ」、個人的にはそう受けとめました。問題のほうを取り換える方法としては、第1回目の説明であったように単純化したり、今回の説明のように違う視点でとらえるやりかたが考えられます。他方、手持ちの道具を取り換えるためには、他の領域や分野から道具を借りてくることになるでしょう(参考記事1, 参考記事2)。

クロード・シャノン氏のこの講演は気軽に訳し始めたので、これほど楽しめるとは思いもしませんでした。チャーリー・マンガーの教えと照らし合わせながら読み込んだことで、これまで気づけなかったものごとの本質を浮かび上がらせてくれました。

2017年12月8日金曜日

2017年デイリー・ジャーナル株主総会(3)無駄な1年を過ごさないために

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デイリー・ジャーナル社2017年株主総会でのチャーリー・マンガーに対する質疑応答から、3つめの引用です。今回もおなじみの話題ではありますが(過去記事1,2など)、話題がいろいろな方向へと展開していて、楽しんで読めました。なお文中で登場する言葉「アイデア」は日本語に訳さずにそのまま使っていますが、あえて訳せば「持論・自説・意見・見解・哲学・姿勢・信条」といった言葉になるかと思います。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳。また意味段落にて適宜改行を追加)

The hardest idea you have ever destroyed? (Youtube)

<質問20> 以前に、「愛してやまないアイデアのひとつも葬っていない1年は、無為に過ごしただけの1年だ」とおっしゃっていました。また「質の追求」へと転身するのが困難だったウォーレン・バフェットを誘導された、という話も有名です。それでは、ご自身にとって捨て去るのがもっとも難しかったアイデアのことをご説明頂けますでしょうか。

<チャーリー> それはもう、愚かしいことを散々やらかしてきましたよ。そういったまずいアイデアを今も抱えているからこそ、それらを葬るのに忙しいわけです(笑)。数あるうちから一つに絞り込むのはむずかしいですね。しかし悪しきアイデアを葬り去るのは、実のところ楽しみながらやっていますよ。まあ言ってみれば、「元からのアイデアを葬ることは、我が定めだ」と考えているからです。古いアイデアのせいで新たな優れたアイデアを取り込めないことが、人生における主たる問題となっている人たちが実にたくさんいます。これぞ、人の世におけるお決まりの成り行きですね。ドイツの言い習わしに、「少年老い易く、学成り難し」というものがあります。これはだれもが直面する問題ですよ。「学成り難し」なのは、身についてしまった愚かなアイデアを取り除けないからです。

一方で、その問題を抱えていたほうがうまいこともあります。婚姻ですね。つまり婚姻関係を安定させるには、古いアイデアにこだわったほうが好ましいかもしれないわけです(軽笑)。しかしほとんどの領域では、身についた古いアイデアを除去したいと望むでしょう。それが良き習慣となれば、世にある競争の激しい分野において、他人がひどくつたないのに反して大幅な優位をもたらしてくれますよ。そういった悪しきアイデアのことを盛大に語りながら、同時にそのアイデアを叩くわけです。結局のところ、手にしたアイデアに対して意見をぶつけ合ったり、語ったりするのですよ。ただし言うまでもないですが、説得しなければならない人物とは、そのアイデアを身につけた自分自身です。そういったアイデアを激しく叩くわけです。そのこともあって私はこの世界のことを、たとえば「FRBがどのようにふるまうべきか」といった持論をあまり話さないわけです。ものごとをどのように運営すべきか他人に話すことを考えている間にも、そのアイデアを自分にも教え込もうとしていますから。みなさんも、物事を考える上でのさまざまな習慣を身に付けたほうがいいですよ。

若者があらゆる問題の原因などを盲信しているというのは、よくないと思いますね。なんでも知っていると自認する17歳の若者には、中絶や中東における外交政策などについてどうすべきかを世界中に教え授けたいと考える者もいます。しかし確信していることを滔々と論ずる彼らのしていることは、すでに有したアイデアを叩いているだけですよ。多くのことを学んで身に付け始めたときとしては、そのやりかたは実に愚かしいアイデアですね。

ですから、愚かなアイデアを取り除こうとする習慣は非常に大切です。私は愚かしいアイデアを葬るたびに、「よくやった」と自分自身を褒めてやっていますよ。「自分自身の良き振る舞いを、本当に強化できるのか」と問われるかもしれません。ええ、できますとも。他人が褒めてくれなくとも、自分で自分を褒めることはできます。「自分のことを褒めてやる」、私にはそのような重要な仕組みが備わっています(笑)。こよなく愛でるアイデアを葬るたびに、自分を褒めたたえるのです。くりかえし褒めてやることもあります(笑)。諸君も同じ考え方を習慣づけたほうがいいですよ。「新しいアイデアを受け入れられるようになる」、そのために支払う対価は実に高額です。実際問題として、新たなアイデアを取り入れられないゆえに多くの人が命を落とすわけですから。

Question 20: You’ve said, “any year in which you don’t destroy one of your best loved ideas is a wasted year.” It’s well known that you helped coached Warren towards quality which was a difficult transition for him. I was wondering if you could speak to the hardest idea that you’ve ever destroyed.

Charlie: Well I’ve done so many dumb things. That I’m very busy destroying bad ideas because I keep having them. So it’s hard for me to just single out from such a multitude. But I actually like it when I destroy a bad idea because I think I’m on the…I think it’s my duty to destroy old ideas. I know so many people whose main problem of life, is that the old ideas displace the entry of new ideas that are better. That is the absolute standard outcome in life. There’s an old German folk saying, “We’re too soon old and too late smart.” That’s everybody’s problem. And the reason we’re too late smart is that the stupid ideas we already have, we can’t get rid of!

Now it’s a good thing that we have that problem, in marriage that may be good for the stability of marriage that we stick with our old ideas. But in most fields you want to get rid of your old ideas. It’s a good habit and it gives you a big advantage in the competitive game of life…other people are so very bad at it. What happens is, as you spout ideas out, what you’re doing is you’re pounding them in. So you get these ideas and then you start agitating them and saying them and so forth. And of course, the person you’re really convincing is you who already had the ideas. You’re just pounding them in harder and harder. One of the reasons I don’t spend much time telling the world what I think about how the federal reserve system should behave and so forth. Because I know that I’m just pounding the ideas into my own head when I think I’m telling the other people how to run things. So I think you have to have mental habits…

I don’t like it when young people get violently convinced on every damn cause or something. They think they know everything. Some 17 year old who wants to tell the whole world what ought to be done about abortion or foreign policy in the middle east or something. All he’s doing when he or she spouts about what he deeply believes is pounding the ideas he already has in, which is a very dumb idea when you’re just starting and have a lot to learn.

So it’s very important that habit of getting rid of the dumb ideas. One of things I do is pat myself on the back every time I get rid of the dumb idea. You could say, ‘could you really reinforce your own good behavior?’ Yeah, you can. When other people won’t praise you, you can praise yourself. I have a big system of patting myself on the back. Every time I get rid of a much beloved idea I pat myself on the back. Sometime several times. And I recommend the same mental habit to all of you. The price we pay for being able to accept a new idea is just awesomely large. Indeed a lot of people die because they can’t get new ideas through their head.

2017年12月4日月曜日

S&P500に対する価値評価(GMO)

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今回は、ジェレミー・グランサム氏のファンドGMOのWebサイトで公開されている文書から、S&P500の価値評価(valuation)の状況について触れた文章を一部ご紹介します。(日本語は拙訳)

The S&P 500: Just Say No (Matt Kadnar and James Montier; GMO White Paper) [PDF]

S&P500に対する価値評価

我々が行うあらゆることの基盤となるものが、価値評価です。ですから、まずは現在のS&P500が受けている評価の状況に対して受託者スミス氏[説明省略]が抱いている悩みから始めましょう。はじめに独自のフレームワークを用いることで、我々が実施している価値評価を見て回ります。次に、リターンに寄与する要因を理解していきます。

どのような証券市場においても、発生するリターンは4つの要素に分解できます。長期的にみた場合、リターンは配当(成長及び利回り)によってのみ、ほとんどが説明できます。株式の保有者は「企業が長期的成長のために費やせるように」と資本を提供しているのですから、報酬を受ける必要があります。その報酬は、企業がリスキーな投資から生み出すキャッシュフローから利益や配当の形でまかなわれます。

証券という資産クラスを保有することで儲けをあげる際に、寄与する要因として他に考えられるものは、株価倍率(PER)そして利益率上昇の2つです(これらを合わせて「価値評価要素」と我々は呼んでいます)。それら4つの要素はひとつの個性を形成しています。つまり、リターンは常に4つの要素へと(事後的に)分解できるという性格です。図表1では、西暦1970年以降におけるS&P500のリターン[黒]を4要素(利益[青]、配当[黄]、利益率[えんじ]、PER[緑])に分解しています。利益率[えんじ]とPER[緑]は非常に長期にわたって、基本的に横ばいに推移してきました。前述したように長期間でみると、生じたリターンの多くは配当がもたらしています。


これと同じ分割手法を直近7年間に当てはめてみると、図表2に示すように異なった展開があらわれます。予想されるとおり、利益と配当は成長しています。しかし大幅に拡大したPER[緑]と利益率[えんじ]が4つの中で最も強く押し上げたことで、リターンに対して著しく寄与しています。これは短期間にみられるよくある例であり、価値評価要素の移り変わりがリターンの変動性を司っています。


もし利益と配当が見事なまでに安定していれば(現在はそのとおりですが)、「この7年間に味わったすばらしいリターンをS&P500が今後ももたらし続ける」と信じるのは、「この7年間と同じように、PERと利益率が今後も拡大し続ける」と信じるのと同じことになります。歴史を振り返ると、この仮定が存在した記録は、慎ましく言っても極めてわずかしか残されていません。「直近の状況が際限なく継続する」と仮定するのはおどろくほど容易なことですが、資産を扱う市場においてそのような仮定をするのは、この上なく危険です。おそらく現在のS&P500がそうであるように、割高な市場においては特にそうだと言えます。(p. 1)

Valuation of the S&P 500

The bedrock of everything we do is valuation, so let’s begin addressing Trustee Smith’s concerns with a look at the current valuation of the S&P 500. We will start our tour of valuation by examining our own framework. This in turn starts by understanding the drivers of return.

For any equity market, the return achieved can be broken down into four component parts. In the long term, the return is almost exclusively driven by dividends (growth and yield). Equity owners need to be compensated for providing capital to companies to help fund their long-term investments. That compensation comes from the cash flows the companies generate from their risky investments via earnings and dividends.

The two other ways to make money from owning an equity asset class are from multiple (P/E) or margin expansion (collectively we call these elements the valuation components). Together these four components make an identity - we can (ex post) always decompose returns into these factors. In Exhibit 1, we show a return decomposition for the S&P 500 since 1970 based on these four factors (earnings, dividends, margins, and P/Es). Margins and P/Es are basically flat over this very long time period. As we stated above, over the long term, the returns achieved have been delivered largely by dividends.

Using this same decomposition over the last seven years, we see quite a different story in Exhibit 2. Earnings and dividends have grown as one would expect, but P/E and margin expansion have significantly contributed to returns with multiple expansion actually providing the biggest boost of the four. This is typical of short-term periods, where the volatility of returns is dominated by shifts in the valuation components.

If earnings and dividends are remarkably stable (and they are), to believe that the S&P will continue delivering the wonderful returns we have experienced over the last seven years is to believe that P/Es and margins will continue to expand just as they have over the last seven years. The historical record for this assumption is quite thin, to put it kindly. It is remarkably easy to assume that the recent past should continue indefinitely but it is an extremely dangerous assumption when it comes to asset markets. Particularly expensive ones, as the S&P 500 appears to be.