さて本書から今回引用するのは、p. 197に掲載されている「妥当な価格で優良企業を買うためのチェックリスト」です。これは完全無欠なものではないですし、状況によって要否が変わることもあるでしょう。しかし「あくまでもひな形として参考にし、個々人が吟味発展させる」という意味では、役に立つと思います(たとえば日本企業を評価する場合には、このままでは適用しにくい)。なによりも明文化され、リスト化されていることに意義があります。
なお、訳語「優良企業」に対応する原語は"Good companies"のようです。妥当な訳出だと思いますが、念のため記しました。
妥当な価格で優良企業を買うためのチェックリスト
1. 私はこの事業を理解しているか。
2. 企業を守る経営上の堀があるおかげで、今後5年から10年間、同じか類似した製品を売り続けることができるか。
3. この業界は変化が激しいか。
4. この企業には多様な顧客基盤があるか。
5. 固定資産が少ない事業か。
6. 景気循環に大きく影響される業界か。
7. この企業にはまだ成長の余地があるか。
8. 過去10年間、好景気のときも不景気のときも常に利益を出し続けてきたか。
9. 営業利益率は安定して2桁を維持しているか。
10. 利益率は競合他社よりも高いか。
11. 15%以上のROIC(投下資本利益率)を過去10年にわたって維持しているか。
12. 一貫して2桁の成長率で、売上高と利益を伸ばしてきたか。
13. 財務基盤がしっかりしているか。
14. 経営陣は自社株をかなり保有しているか。
15. 経営陣の収入は似た規模の他社と比べてどうか。
16. インサイダーはこの企業の株式を買っているか。
17. 内在価値やPER(株価収益率)で測った株価は妥当か。
18. 歴史的に見て、現在のバリュエーションはどうか。
19. これまでの不況期に株価はどうだったか。
20. 自分の調査にどれくらいの自信があるか。
著者であるチャーリー・ティエン氏が触れているように、上記のリストには投資界の達人たちが示した教えが取り入れられているので、たとえばフィル・フィッシャーの15項目と似たものがあります。ただし上記のリストは定量化しやすい項目ばかりになっているのが特徴的です(本書内で解説あり)。もちろんそれは、著者が運営する投資サイトGuruFocusで定量的評価ツールを提供していることの裏返しでもあるでしょう。しかし、閾値を厳密に定める評価には長短があることを承知していれば、「達人の教えをなるべく定量的に実践試行しつづける」ことでも、相応の成果をあげられると思います。