ot

2014年3月30日日曜日

山のようなフードスタンプ(ウォーレン・バフェット)

0 件のコメント:
ウォーレン・バフェットが1994年にネブラスカ大学でおこなった講演その18です。拍手を送りたくなる発言です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問者> 私は[芸術学部]音楽スクールの博士課程に在籍していますので、質問内容も芸術に対する資金提供の話題になります。芸術活動へ資金を出す責任はどこにあるとお考えですか。政府の政策としてか、企業なのか、それとも個人が出すものでしょうか。

<バフェット> 政府の政策か個人によるものだと思います。つまり、その2つの組み合わせになるでしょう。50年とか75年前は完全に個人が出していた時代でした。しかしさまざまな活動があるので、政府や個人のどちらにも資金を提供する場があると思います。

<質問者> お子さんに対して金銭的に支援なさっていないと聞いていますが、本当でしょうか。反対に、ご両親から金銭的に受けたものは何でしたか。

<バフェット> そうですね、あらゆる良いことを授かりました。ただし、お金はもらいませんでした。実際のところ、わたし自身が望んでいなかったですし、もっといい両親の子供だったらなどと考えたこともありませんでした。これはきわめて大切なことです。子供を裕福にしてあげることは、わたしの信ずるところではありません。社会全体としてみれば、それはまちがっているとさえ思います。貧困者に対してフードスタンプ[生活保護用の金券]を配ることは[自立心を]弱らせることにつながる、と説く人たちがいます。「フードスタンプを付与された人はそれに依存するようになり、次の世代はさらに多くのフードスタンプを求めるようになる」といった話でした。それではそのような人たちと、生まれてから遺産を相続するまでずっとフードスタンプをもらえる子女とでは、どんな違いがあると言えるでしょう。彼らが受けとるフードスタンプには株式や債券という名前がついており、世話をしてくれる福祉担当者も実は信託担当者です。そのような巨大な信託がどれだけ自立心を低下させるのか、彼らが見たこともないほどでしょう。基本的にわたしはこう考えています。金持ちが自分の子供に対して残したりあげたりするときは、何かをするのに十分な程度にして、何もしなくていいほどたっぷりにしてはなりません。それが理に適っていると思います。一文無しの家に生まれたかのようにすべきとは思いませんが、何もせずにぬくぬく暮らせるのはよくないと思います。山のようなフードスタンプを受けとるというスネかじりを原則的につづける生き方です。これはわたし個人としての哲学です。

Q. I'm a doctoral student in the School of Music, and my question has to do with arts funding. I'm wondering where you think the responsibility for funding for arts programs would lie. Would that be with governmental programs or with businesses or private individuals?

A. I think it's with government programs and private individuals. I mean, I think it's probably a combination needed on that. If you go back 50 or 75 years, it was entirely private. But, I think, in terms of a lot of activities like that, there is a place for both the government and for private funding.

Q. I've heard that you refuse to assist your children financially. Is this true? And, what did you get from your parents financially?

A. Well, I got all kinds of good things. But, I didn't get money. And, I really didn't want it actually. I don't think I could have been raised with a better pair of parents. That was enormously important. I don't believe in making kids rich. I just think it's wrong in terms of society. I hear these people who lecture about the debilitating effects of food stamps on the poor. They say, "You know, you give them food stamps, and they get dependent, and then the next generation wants more food stamps," and all that sort of thing. What is the difference between that and some kid who gets a lifetime supply of food stamps at birth through inheritance, you know, except the food stamps are called stocks and bonds and the welfare officer is called a trust officer? They never seem to see the debilitating effects of having some big trust for themselves. I basically believe that if you are rich, you should leave your kids or give them enough so they can do anything but not enough so they can do nothing. I just think that makes sense. I don't think it should be like they were born into total poverty, and I don't think they should be entitled to live a life of doing nothing, essentially living off this stored-up supply of food stamps which somebody handed them. So, that is my own personal philosophy on it.

2014年3月28日金曜日

株式の期待リターン率について(チャーリー・マンガー)

0 件のコメント:
チャーリー・マンガーの(再考)世知入門の18回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問者> あなたやバフェットさんが言われることは、ことごとく筋が通っていると思います。ですが、30年前にベン・グレアムが使った言葉とそっくり同じようにも聞こえます。彼は、株価[S&P]が900ドルのときに割高だと発言していました。

<マンガー> 我々がグレアムと同意見だとは思いませんね。彼は人間としてはすばらしい人物でしたが、株式市場全体の行く末を予想するという点ではネジがゆるんでいました。それとは違って、市場に対する私やウォーレンの見方は不可知論者であることがほとんどです。

その一方で我々はこう言ったこともあります。全般としてみれば普通株は、インフレ調整後で10から11%のリターンを何年にもわたってあげるだろう。ただし、すごく長くは続かないと。そう、継続はできません。単に不可能なのです。世界の富はそのような成長率では増えません。過去15年間にスタンフォードのポートフォリオで起こったことがどうであれ、今後はほぼ間違いなくそのような好い目に遭うことはないでしょう。それでも大丈夫でしょう。しかしこの15年間は投資家にとって至福の時代でしたね。そのような規模のぼろ儲けがいつまでも続くことはありません。

<質問者> バークシャーが公表した年次報告書に対して、報道の多くが悲観的な見方を示し、会社がどんどん大きくなるにつれて残された機会が少なくなっていくことを危惧しています。10年後にはどうなっているのでしょうか。

<マンガー> 我々は「バークシャーの規模が業績の足をひっぱって、株主の富が今後増加する率は以前とくらべて下がっていくだろう」とたびたび繰り返してきました。これは見解ではなくて確約です、と何度も言いました。

しかし現在から毎年15%ずつ簿価を増加させることができれば、それほど悪い数字ではありません。長期間投資してくれる株主も満足してくれるでしょう。つまりいくぶん減速しても仕方がない、と我々は考えているわけです。そうなるのは間違いないと思いますが。それでも長期の株主は納得してくれると思います。

しかし、現在の簿価が15%ずつ増加していくと約束したわけではないですよ。

Q: Everything you and Buffett say seems logical. But it sounds like exactly the same language that Ben Graham was using thirty years ago when he was saying the stock market was overvalued - when it was at 900.

Oh, I don't think that we share that with him. Graham, great though he was as a man, had a screw loose as he tried to predict outcomes for the stock market as a whole. In contrast, Warren and I are almost always agnostic about the market.

On the other hand, we have said that common stocks generally have generated returns of ten to eleven percent after inflation for many years and that those returns can't continue for a very long period. And they can't. It's simply impossible. The wealth of the world will compound at no such rate. Whatever experience Stanford has had in its portfolio for the last fifteen years, its future experience is virtually certain to be worse. It may still be okay. But it's been a hog heaven period for investors over the last fifteen years. Bonanza effects of such scale can't last forever.

Q: Berkshire's annual report got a lot of press for being pessimistic and for expressing concern about the shrinking pool of opportunities as the company gets bigger and bigger. Where does that leave you ten years from now?

We've said over and over that our future rate of compounding our shareholders' wealth is going to go down compared to our past - and that our size will be an anchor dragging on performance. And we've said over and over again that this is not an opinion, but a promise.

However, let's suppose that we were able to compound our present book value at fifteen percent per annum from this point. That would not be so bad and would work out okay for our long-term shareholder. I'm just saying that we could afford to slow down some, as we surely will, and still do okay for the long-term shareholder.

By the way, I'm not promising that we will compound our present book value at fifteen percent per annum.


バークシャーの1株当たり簿価の変化をみると、講演が行われる前(1995年末)に14,503ドルだったものが、2013年末には135,001ドルになっています。これは9.3倍であり、年率換算にして13.2%ずつ成長したことになります。なお、この間のS&P500の増加率は年率6.3%でした。ただしこれには配当を含んでいないので、それを合算すると税引き前で8.2%程度になります。

2014年3月26日水曜日

これから坂を下る人(『シグナル&ノイズ』)

0 件のコメント:
読むのを楽しみにしていた本『シグナル&ノイズ』を読了しました。期待にたがわず、十分楽しめ、そして学ぶものがありました。本書では将来予測に関する世の中のさまざまな課題を取りあげています。過去の投稿で『異端の統計学 ベイズ』をご紹介した流れで本書のことに触れましたが、この本でもベイズ統計学的なアプローチや不確実性が重視されています。著者ネイト・シルバー氏が携わる本業や経験したことに関する話題は読ませる文章で、自然と引き込まれました。しかしそれにとどまらず、全般的に文章の構成・展開がこなれており、最後まで読み手を引っぱってくれる本だと思います。お勧めできる本です。

今回ご紹介するのは同書からの引用で、「結果とプロセス」の話題です。この話題は少し前に取り上げています(マイケル・モーブッサンの回)。

私たちアメリカ人は、結果が重視される社会に生きている。金持ちや有名人、あるいは美しい人を見ると、その人たちがそうなるのにふさわしい人だと考える傾向がある。こうした考え方は、自らを取り巻く状況をさらに強める性質をもっている。金を儲ける人はさらに儲ける機会を生み出し、有名人はさらに名声を高める方法を手にし、美の基準はハリウッドスターの容貌を変えるかもしれない。

別に政治的な意図はないし、富の再分配について議論するつもりもない。しかし、経験的に言って、成功というのは、ハードワーク、才能、そして機会と環境の組み合わせで決まる。ノイズとシグナルの組み合わせと言っていいかもしれない。私たちはたいていシグナルの要素を重視するが、うまくいかないときには運のせいにする傾向がある。世の中では、家の大きさが成功の大きさを意味し、そこにたどり着くまでに乗り越えてきたハードルについては誰も深く考えない。

予測に関して言えば、とにかく結果が重視される。株式相場の底を言い当てた投資家は天才扱いだ(欠陥だらけの統計モデルがたまたま当てたとしても)。ワールドシリーズで優勝したチームのゼネラル・マネージャーは、なにはともあれ、ほかのチームのゼネラル・マネージャーより優秀だとみなされる。そこに至るプロセスなど問題にされない。これはポーカーにも当てはまる。クリス・マネーメーカーも「幸運のカードをつかんだ素人ギャンブラー」という宣伝文句だったら、これほど話題になることはなかっただろう。

ときとして私たちは、運というものを予測が外れたことの言い訳に使おうとする。金融危機が表面化した際の格付会社のように。けれども、予測が外れた本当の理由は、現実に存在する以上のシグナルをキャッチしようとしたことにある。

この問題を解決する1つの方法は、もっと厳しく予測を評価することだ。結果を評価することで、安定的に正しく予測できるようになる分野もあるだろう。もう1つは、結果ではなくプロセスを重視する方法だ。データにノイズが非常に多いときにはこの方法しかないだろう。ノイズが多すぎて、どの予測が正しいのかわからないときは、予測者の姿勢や適性に注目しよう。それらは予測の結果と相関があるはずだ(ある意味、私たちは予測者がどのくらい正確な予測をするかを予測していると言える)。

ポーカーのプレーヤーは、こういうことを普通の人よりよく理解している。理屈抜きの浮き沈みを体験しているからだ。ドワンのように高い賭け金でプレーする人は、株の投資家が一生をかけて経験するような変動を1ゲームで経験することもある。いいプレーをして勝つ。いいプレーをして負ける。まずいプレーをして負ける。まずいプレーをして勝つ。ポーカーのプレーヤーなら誰でも、これらの状況を何度も経験するので、プロセスと結果は違うものだらけだということがわかっている。

一流のプレーヤーと話せばわかるが、彼らは自分の成功を当然のこととは思っていない。常に自分を改善しようとしている。ドワンは言った。「もう十分に上達した、ポーカーはわかった、と言う人はこれから坂を下る人だ」(p.360)


もうひとつ、おまけです。この手の文章は時折目にしますが、仮に半分割り引いたとしても、個別銘柄をさがす個人投資家にとっては大いなる福音だと感じています。

ブロジェット[元アナリストで、現在はBusiness Insiderを主宰]はこう語ってくれた。「トレーダーやファンド・マネージャーと話してみればわかると思うが、彼らは翌週か翌月、あるいは四半期先くらいのことしか考えていない。長期的な視点なんてものはない。ライバルと比較して、自分のパフォーマンスはどうか、という視点しかない。90日間で成果を出さなければ、クライアントは自分を切る。メディアにもこきおろされ、恥ずかしい思いをして、成績が地の底まで落ちる。こんな状況でファンダメンタルズなんて何の役にも立たないよ」(p.390)

2014年3月24日月曜日

ウォートン・スクールによるインタビュー記事(ハワード・マークス)

0 件のコメント:
オークツリーの会長ハワード・マークスが、母校ペンシルバニア大学ウォートン・スクールのインタビューを受けていました。最近は出ずっぱりのようで、ほかで読んだことのある話題もでています。一部を引用してご紹介します。(日本語は拙訳)

Investor Howard Marks on Luck, Risks and the Job that Got Away (Wharton, University of Pennsylvania)

はじめの話題は、個人投資家がそのまま適用するのはむずかしいやりかたです。ただし、価値を評価する際の姿勢としては参考になります。

仕事をする中で彼がいくらか学んだことは、[昔の勤め先である]シティバンクが[1970年前後に]「ニフティー・フィフティー」を重視する政策をとったことで、「アメリカで最高の諸企業に投資して多額の損失を出したこと」だった。その後同社は「アメリカで最悪の諸企業に投資し、多額の利益をあげた」。マークスはさらに付け加えた。「何を買ったかではなく、いくら払ったのか。投資で成功するこの理由がわかるまでに、いつまでも時間をかけてはいられません」。質の高い資産は割高となりやすいため、まずい投資となりうる、とマークスは指摘する。逆に質の悪い資産は安値で買えるため、良い投資となりうるのだ。オークツリーが今日手がけるもので、債務不履行(か寸前の)債券(Distressed debt)は最大の割合を占めている。「当社はその領域で一貫して大きな成功をおさめてきた」とマークスは言う。

「過去25年間にわたって当社は年率23%のリターンをあげてきました。また案件のうちの95%が黒字となりました」と彼は説明した。またオークツリーはその間におよそ50の基金から資金を預かったが、損失を出したものは1件もなかった、と彼は加えた。「こう表現してよいのであれば、10社に投資して1社がグーグルとなれば成功とみなされるベンチャー・キャピタルのような博打(ばくち)ではありませんでした」。

What his career experience so far had told him was that with its Nifty 50 policy, Citibank had invested in "the best companies in America and lost a lot of money." Then it invested in "the worst companies in America and made a lot of money," Marks noted, adding that "it shouldn't take you too long to figure out that success in investing is not a function of what you buy. It's a function of what you pay." An asset of high quality, Marks pointed out, can be overpriced and be a bad investment; an asset of low quality can be bought cheaply and be a good investment. Distressed debt is the lion's share of what Oaktree handles today, and Marks said the company has been enormously successful - consistently so - in that area.

"Our return over the past 25 years has been 23% a year. And 95% of our outcomes are positive," he noted, adding that Oaktree has raised about 50 funds over the same period and never had one that lost money. "It's not a crapshoot like - if you'll pardon the expression - venture capital, where you invest in 10 companies but if one of them turns out to be Google, you're a success."


投資で成功するための別のたとえ話として、マークスはカリフォルニアに住んで長いことを好んで取りあげる。地震が頻発する地域に家を持つことを投資ポートフォリオと比較するのだ。「構造的な欠陥があるかもしれない家に30年間住んで倒れなかったとします。だからといって、それが無欠陥を証明するわけではありません。試練にさらされなかっただけのことです」。ポートフォリオに対して次のように問いかけることが重要だ、とマークスは言う。市場が上昇した時に儲かるかではなく、下落した時に傷を負わずにいられるか、と。「あなたが託した投資のプロは、値上がりする可能性を持ちながらも併せてリスクを管理できるほどに、慎重で先見性があって多様にふるまえる人でしたか」。

Another metaphor for successful investing which Marks is fond of citing is based on his many years in California. He compared an investment portfolio to a house located in an earthquake zone. "The house might have a structural flaw. And you might live in that house for 30 years and it doesn't fall down. But that doesn't prove it doesn't have a flaw - it only means it wasn't tested." Marks said that the important question about a portfolio is not if it made money when the market went up, but if it would have stayed intact if the market went down: "Has the investment professional been prudent, farsighted and versatile enough to include risk controls at the same time as upside potential?"

2014年3月22日土曜日

株を買う前にやるべきこと(ウォーレン・バフェット)

0 件のコメント:
ウォーレン・バフェットが1994年にネブラスカ大学でおこなった講演その17です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問者> どこの大学でも「常識」の科目を教えるべきとお考えになっている、と耳にしました。そこでお聞きしたいのですが、あなたの定義では常識とはどのようなもので、何を教えるべきと思いますか。

<バフェット> 常識について教えるべきだ、と言ったかどうかは覚えていませんね。というのも、それは教えることができるものなのか自信がありませんから。しかし、高い知能を持った大勢の人が道を踏み外していることには驚いています。ビジネスに限らず、まぎれもなくすばらしい頭脳を持った人があまりにも多くの自滅的な行動に携わってしまうのは、わたしには驚くべきことです。非常に思慮深いと思える人たちを調べてみましたが、どうすれば本当に効くのかつかめませんでした。ですから、他人に対してどのように植えつけたり教えればいいのか、さっぱりわかりません。しかし、ものごとに対して必要以上に複雑にやっている人はたくさんいると思っています。わたしたちが投資する方法には複雑なところはまったくありません。すごくわかりやすいやりかたです。株を買う前には紙に書いておくべきだ、と以前から考えてきました。「GMを47ドルで購入する」とか「USスチールを83ドルで買う」のようにです。そして買った理由を書き出しておきます。それも1枚紙の表側に全部が書き込めるように、つまり一段落で表すようにしてください。ビジネスにおける重要ですばらしいアイデアは、すべてと言っていいほど非常に単純なものです。サム・ウォルトンがウォル・マートでやったアイデアもすごく単純でした。その作業はむずかしくありません。おそらく常識の話題と少し関わってきますが、もし何かをなしとげたいと考えるのであれば集中して取り組むべきです。ミセスBも集中してやっていました。彼女は人生を通して1日たりとも学校に通わなかったのですが、あらゆる種類の人よりも優秀でした。頭が良くて熱意に満ちていただけでなく、集中していたからです。IBMを始めたトム・ワトソンも同じようにやりました。彼はこう言っています。「私は天才ではない。ただしうまくやれる分野ならいろいろとある。だから私はその分野にとどまりつづけるのだ」。そして集中するということにも、さまざまな常識が関わっています。

Q. I've heard that you feel that all universities should teach a course in common sense. I was just wondering: What is your definition of common sense? What should this course teach?

A. Well, I don't know whether I've said they ought to teach a course in common sense because I'm not sure you could teach it. But, I do find it amazing how many people with high IQs get off the track. It's astounding to me how people who are really very smart manage to engage in so many self-destructive actions, and I'm not just thinking in terms of business. I have no real prescription, as I look around at the people whom I think are extremely sensible. I don't know quite how to transplant that or teach that to other people. I think a lot of people make things more complicated than they need to. There is nothing complicated about the way we invest. It is very understandable. I've felt that before people buy a stock, they should take a piece of paper and simply write "I'm buying General Motors at 47," or "I'm buying US Steel at 83." They should just write out what their reasoning is, and they should be able to get it all on one side of one piece of paper. In fact, they should be able to get it into a paragraph. Almost all of the big, great ideas in business are very simple. Sam Walton's idea was very simple at Wal-Mart. It's not hard to do. If you want to accomplish something, and this ties in a little bit with common sense maybe, you have to have focus. Mrs. B had focus. Mrs. B never went to school a day in her life, and she ran rings around all kinds of people because she's smart and energetic. She was also focused. Tom Watson, who started IBM, was the same way. He said, "I'm no genius. I'm smart in spots, but I stay around these spots," and there is a lot to that.

2014年3月20日木曜日

チャーリー・マンガーの真髄

0 件のコメント:
本ブログでは頻繁にチャーリー・マンガーの講演をとりあげています。ただし、彼がウォーレン・バフェットのパートナーであることは知っていたとしても、彼の話には興味がない方がいらっしゃるかもしれません。政府の要人だった人物を問いただしたり、著名な経済学者を非難するほど大層な人なのだろうかと感じるかもしれません。あるいは心理学がどうしたとか、順列がどうしたとか、グラフがどうしたとか、具体的にどう役に立つのか頭をひねるかもしれません。そこで今回は彼がみせてくれた一太刀を、少しわかりやすい形でご紹介します。経済紙Wall Street Journalのエッセイ記事からの引用です。

ただし原文記事は有料のようなので、以下のリンク先にはGoogleのキャッシュを指定しています。執筆者はときどきご紹介するジェイソン・ツヴァイク氏です。

Charlie Munger: Lessons From an Investing Giant (Wall Street Journal)

多くの資産運用マネージャーは、会議に出席したり、電子メールを飛ばし読みしたり、金融テレビ番組で株価表示がチカチカするのを凝視するといった毎日を過ごしている。そのくせ彼らは、市場に打ち勝とうとする気持ちでいっぱいだ。反対にマンガー氏やバフェット氏は「静かな部屋に座って読み物をし、ものごとを考え、電話で会話する」とシェーン・パリッシュは言う。彼は意思決定に関する興味ぶかいブログ「Farnam Street」を書いている資産運用マネージャーである。

「気が散るものには注意を向けず、決断する回数を減らすように日常の生活を確立することで」と彼はつけ加える。マンガー及びバフェットの両氏は「よりよい決断をくだせる確率を高めています」

Many money managers spend their days in meetings, riffling through emails, staring at stock-quote machines with financial television flickering in the background, while they obsess about beating the market. Mr. Munger and Mr. Buffett, on the other hand, "sit in a quiet room and read and think and talk to people on the phone," says Shane Parrish, a money manager who edits Farnam Street, a compelling blog about decision making.

"By organizing their lives to tune out distractions and make fewer decisions," he adds, Mr. Munger and Mr. Buffett "have tilted their odds toward making better decisions."

2009年の第1四半期には、金融危機が始まってからもっとも絶望的な毎日がつづいていた。マンガー氏はその最中にみずからが会長を務める小さな出版社デイリー・ジャーナルの有する現金の71%を投じて、多くの投資家が逃げ出していた銀行株を購入した。2009年の3月末には、彼の賭け分はすでに60%の利益を出していた。のちに購入したものを含めると、マンガー氏は4,970万ドルを株式や債券に投資した。デイリー・ジャーナル社が8月20日に提出した会計報告によれば。その価値は現時点で1億2,840万ドルとなっている。

In the first quarter of 2009, during the most desperate days of the financial crisis, Mr. Munger took 71% of the cash at Daily Journal, a small publishing company he chairs, and poured it into the bank stocks that so many other investors were fleeing. By March 31, 2009, his bet already had gained 60%. With other purchases he made later, Mr. Munger invested $49.7 million into stocks and bonds that today are worth $128.4 million, according to financial statements Daily Journal filed on Aug. 20.

文章だけではうまく伝わってこないと思います。そこで以下の2つのチャートをごらんください。1つめはS&P500指数のチャートで、2つめはチャーリーが実行したデイリー・ジャーナル社(DJCO)の資産配分です。

[S&P500指数のチャート]

[デイリー・ジャーナル社の資産推移(四半期毎)]

デイリー・ジャーナル社の資産の具体的な金額は、同社の10-K及び10-Qを参照しました。また同社の話題は過去記事でも何度か取りあげています(過去記事1過去記事2)。

2014年3月18日火曜日

Febezzlement(チャーリー・マンガー)

0 件のコメント:
チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の26回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

8) 「横領相当」という概念に対する低い関心

8番目の異議へと進みましょう。それは、経済学が簡単明瞭かつもっとも根本的な代数の原則に対してほとんど関心を示していないことです。経済学は代数ができないのか、と仰天されるでしょう。その一例を示してみます。年寄りの上に因襲破りなもので私が間違っているのかもしれませんが、まあやってみます。つまり、経済学は「横領相当」(febezzlement)という概念に対して十分な注意を払っていないということです。これは[経済学者]ガルブレイスの考えを元にしています。ガルブレイスの考えとはこうです。「隠された横領があれば、経済に対してケインジアン的なすばらしい刺激を与えられる。なぜなら、横領された人は以前と変わらずに金が十分あると考えてそのまま消費するし、金を盗んだほうには新たな購買力が加わるからだ」。ガルブレイスの言う部分は正しい分析だと思います。しかしこの考えは、わずかな現象しか扱っていない点に問題があります。横領はほとんどの場合発覚するものですが、もしそうなればガルブレイスの言う効果は即座に反転します。つまり、生じていた効果がすばやく消えてしまうのです。

しかしガルブレイスは考えなかったようですが、もっと代数に注意を払うならばこう考えるでしょう。「代数の基本的な原則、それはA=BかつB=CならばA=Cである」。この基本的な原則は、機能的に等価なものをできるかぎり探すように求めています。それでは次にこう考えてください。「経済学において横領相当というものが存在するだろうか」。ガルブレイスは、明るみになっていない横領の数量を示す「bezzle」という言葉を考案しました。そこで私も同じように「febezzlement」という言葉を生みだすことにします。これは「横領と機能的に等しい(=横領相当)」という意味です(functional equivalent of embezzlement)。

その言葉は「横領と機能的に等しい行為は何だろうか」と自問した後に考えついたのですが、その際に見事で前向きな答えが数多く得られました。いくつかは資産運用に関するものです。結局は私も資産運用業界に近い仕事をしているわけです。私の考えではアメリカ人は普通株のポートフォリオに投資することで、総額にして何十億ドルという金額を無駄にしています。市場が上昇し続けるうちは値段が順調に増えていくため、資金が無駄にされていても気がつきません。一方で投資顧問を商売とする側は、実は損切りをしておきながらその金をもらうのは当然だと考えています。これこそまさに「隠れた横領と機能的に等しい行為」です。私があまり講演に呼ばれない理由がこれでおわかりでしょう。

ですから横領と機能的に等しい「横領相当」を経済の中から探してみれば、甚だしいほど強力な要因をみつけられます。現在生み出されている「資産効果」(wealth effect)は、以前からの「資産効果」をステロイド強化したものなのです。私のように考える人は事実上皆無だと思います。しかし、独自の手法で熱心にやっている大学院生で論文のテーマを承認前に決めねばならない人がいるでしょうから、私が出したこのアイデアの権利は放棄しておきます。

8) Not Enough Attention to the Concept of Febezzlement

Okay, I'm now down to my eighth objection: too little attention within economics to the simplest and most fundamental principle of algebra. Now, this sounds outrageous, that economics doesn't do algebra, right? Well, I want to try an example - I may be wrong on this. I'm old and I'm iconoclastic - but I throw it out anyway. I say that economics doesn't pay enough attention to the concept of febezzlement. And that I derive from Galbraith's idea. Galbraith's idea was that, if you have an undisclosed embezzlement, it has a wonderful Keynesian stimulating effect on the economy because the guy who's been embezzled thinks he is as rich as he always was and spends accordingly, and the guy that had stolen the money gets all this new purchasing power. I think that's correct analysis on Galbraith's part. The trouble with his notion is that he's described a minor phenomenon. Because when the embezzlement is discovered, as it almost surely will be, the effect will quickly reverse. So the effect quickly cancels out.

But suppose you paid a lot of attention to algebra, which I guess Galbraith didn't, and you think, "Well, the fundamental principle of algebra is, ‘If A is equal to B and B is equal to C, then A is equal to C.'" You've then got a fundamental principle that demands that you look for functional equivalents, all you can find. So suppose you ask the question, "Is there such a thing in economics as a febezzlement?" By the way, Galbraith invented the word "bezzle" to describe the amount of undisclosed embezzlement, so I invented the word "febezzlement": the functional equivalent of embezzlement.

This happened after I asked the question, "Is there a functional equivalent of embezzlement?" I came up with a lot of wonderful, affirmative answers. Some were in investment management. After all, I'm near investment management. I considered the billions of dollars totally wasted in the course of investing common stock portfolios for American owners. As long as the market keeps going up, the guy who's wasting all this money doesn't feel it because he's looking at these steadily rising values. And to the guy who is getting the money for investment advice, the money looks like well-earned income, when he's really selling detriment for money, surely the functional equivalent of undisclosed embezzlement. You can see why I don't get invited to many lectures.

So I say, if you look in the economy for febezzlement, the functional equivalent of embezzlement, you'll find some enormously powerful factors. They create some "wealth effect" that is on steroids compared to the old "wealth effect." But practically nobody thinks as I do, and I quitclaim my idea to any hungry graduate student who has independent means, which he will need before his thesis topic is approved.

2014年3月16日日曜日

いつか来た道(セス・クラーマン)

0 件のコメント:
ヘッジファンドBaupostのボスであるセス・クラーマンが、ファンドの投資家向けに昨年度のレターを出していました。彼の文章がおもてに出てくることは少ないのですが、今回は以下のサイトで一部が引用されていました。そのうちのさらに一部(文章全体の末尾の箇所)をご紹介します。(日本語は拙訳)

Seth Klarman 2013 Letter To Investors: The Truman Show (Outlier Allocators)

「やがて、いつの日か」

いつの日か金融市場は再び下降するでしょう。いつの日か株式や債券市場が上昇することは政府の政策ではなくなるでしょう。今日や明日でないにしても、たぶんいつかやってきます。いつの日かQE(量的緩和政策)は終わりを告げ、現金が無料ではなくなるでしょう。いつの日か企業破たんが認められるようになり、いつの日か経済は再び縮小するでしょう。投資家はいつかどこかで何らかの形で資金を失い、投機よりも資産を保全することがふたたび好まれるようになるでしょう。いつの日か金利は上昇し、債券価格は下落するでしょう。そして固定金利の金融商品を保有することで期待されるリターンは、ほぼリスクに見合ったものへと立ち返るでしょう。

いつの日かプロの投資家が仕事に出てきたときに恐怖が市場を襲い、野火のように広がっていくでしょう。悪いニュースが流れ込み、市場は厳しく下落するでしょう。

「いつか来た道」

市場が反転すれば、投資家が見聞きしていたあらゆる物事は上下が逆転し、表裏が反転するでしょう。「下落は買いどき」は「何をねぼけていたのだ」に置き換わり、もうこれ以上悪くならないと投資家が確信するときに、まさにそこから悪くなっていくでしょう。あのころならいつでもリスクを回避できたのにとか、投資で儲けたことによるどんな喜びよりも損失を出す痛みのほうがずっと不愉快なことを、苦々しくも思い返すでしょう。買うほうが売るよりも易しかったとか、弱気相場ではゴキブリホイホイへと変わる投資があまりにも多いこと、つまり「入口はあっても出口はない」ことを知らしめてくれるでしょう。いつもは相関しないはずの投資が、一時的ながらも著しく連動するようになるでしょう。弱気相場になると投資家は常に試されるようになり、その上でさらに試されます。貧弱なポジションをとっていて準備のできていない者はだれでも、下落の道は長くつづくと感じるでしょう。無傷で切り抜けられる者はほとんどおらず、いたとしてもわずかにとどまるでしょう。

6年前には身のほどを知らない投資家がたくさんいました。賢さを鼻にかけたものの試練にさらされていなかった仕組商品が焦げ付き崩壊したことで、巨大金融機関はひざを屈することとなりました。金融機関や機関投資家は危機的な損失に苦しみました。そして生き残った者は、これからはもっと慎重にやって、おごることなく、短期的に考えないようにとみずからに誓いを立てました。

しかしここにふたたび熱狂的な環境へと足を踏み入れたことで、あらゆる理屈を超えて価格が上昇する証券が出てきました。借り入れの姿が戻ってきた市場や資産クラスが増えて、注意を払うことは一般的でないとみられる一方で、リスクをとるほうがより慎重な道のりとみなされるようになりました。2008年に学んだ教訓が一時的でしかなかったのも当然です。傲慢と恐れ、そして天井とどん底は避けがたく繰り返していきます。この上昇が終わるのはいつなのか、それはわかりません。しかしいつかは終わります。そして終わりがくれば流れが逆転することはたしかです。その心構えができている人はわずかでしょうし、実際に用意ができている人もわずかでしょう。

"Someday…"

Someday, financial markets will again decline. Someday, rising stock and bond markets will no longer be government policy - maybe not today or tomorrow, but someday. Someday, QE will end and money won't be free. Someday, corporate failure will be permitted. Someday, the economy will turn down again, and someday, somewhere, somehow, investors will lose money and once again come to favor capital preservation over speculation. Someday, interest rates will be higher, bond prices lower, and the prospective return from owning fixed-income instruments will again be roughly commensurate with the risk.

Someday, professional investors will come to work and fear will have come to the markets and that fear will spread like wildfire. The news flow will be bad, and the markets will be tumbling.

"Here We Are Again"

When the markets reverse, everything investors thought they knew will be turned upside down and inside out. "Buy the dips" will be replaced with "what was I thinking?" Just when investors become convinced that it can't get any worse, it will. They will be painfully reminded of why it's always a good time to be risk-averse, and that the pain of investment loss is considerably more unpleasant than the pleasure from any gain. They will be reminded that it's easier to buy than to sell, and that in bear markets, all too many investments turn into roach motels: "You can get in but you can't get out." Correlations of otherwise uncorrelated investments will temporarily be extremely high. Investors in bear markets are always tested and retested. Anyone who is poorly positioned and ill-prepared will find there's a long way to fall. Few, if any, will escape unscathed.

Six years ago, many investors were way out over their skis. Giant financial institutions were brought to their knees when untested structured products that were too-clever-by-half turned toxic and collapsed. Financial institutions and institutional investors suffered grievous losses. The survivors pledged to themselves that they would forever be more careful, less greedy, less short-term oriented.

But here we are again, mired in a euphoric environment in which some securities have risen in price beyond all reason, where leverage is returning to many markets and asset classes, and where caution seems radical and risk-taking the more prudent course. Not surprisingly, lessons learned in 2008 were only learned temporarily. These are the inevitable cycles of greed and fear, of peaks and troughs. Can we say when it will end? No. Can we say that it will end? Yes. And when it ends and the trend reverses, here is what we can say for sure. Few will be ready. Few will be prepared.


蛇足その1です。おとといの3/14(金)に市場全体が下落しました(TOPIXで-3.22%)。その際に、新規の銘柄へ若干ながら投資しました。常々考えている買値の基準とくらべて2割は高かったのですが、自分自身に対する言い訳はともかく、セス・クラーマンの言うとおり「買いは易し」だと実感しました。

蛇足その2です。セス・クラーマンの書く原文には印象に残るリズムがよく登場します。彼に限らず、著名なマネージャーの書く文章には工夫が凝らされており、顧客をうまく惹きつけていると思います。セス・クラーマンの文章では簡潔で清潔感のあるレトリックが使われており、わたしがよく読む書き手の中ではもっとも詩的な匂いが感じられる文章です。

蛇足その3です。今回の原文記事では映画"The Truman Show"の話題が登場しています。1998年に公開された同作品は、わたしも劇場で鑑賞しました。映画『マスク』が公開されたときにジム・キャリーのファンになってから、彼がシリアスな作品に登場するのを待っていたときの一本でした。その年観た封切作品の中で3本指に入るお気に入りでした。いい作品です。

2014年3月14日金曜日

2013年度バフェットからの手紙 - 無形資産の償却費について

4 件のコメント:
ウォーレン・バフェットによる2013年度「株主のみなさんへ」[PDF]から、買収などに伴って発生する無形資産の償却費に関する話題を引用します。一見すると初歩的な説明ですが、企業買収というテーマを考え直す材料になる文章だと思います。(日本語は拙訳)

真剣にとりくんでいる投資家であれば、無形資産という分類には異なった性質のものが混ざっていることを理解しておく必要があります。あるものはまさに時間と共に減耗する一方、価値をまったく失わないものもあります。たとえばソフトウェアにかかる償却費はまさに本物の支出です。しかし他の無形資産、たとえば顧客との取引関係(customer relationships)に関する償却費はパーチェス法を通じて発生するもので、あきらかに実際の支出ではありません。たとえ投資家の視点から見てそれらが大きく異なっていたとしても、企業会計原則(GAAP)ではその2種類の違いを区別せず、利益を算出する際にどちらも費用として計上します。

本文書の29ページ[損益計算書]に載せた数字は企業会計原則に準ずるものです。そこでは、この章に含まれる企業群[バークシャーの子会社]に関する償却費6億4,800万ドルが費用として計上されています。そのうち「実際の支出に即したもの」は20%で、残りはそうでないと言うことができます。わたしどもは多くの買収をしてきたことで、この違いが重大なものとなってきました。今後も買収を続ければ、違いがさらに大きくなるのはまず間違いありません。

もちろん帳簿上だけの費用計上は、その資産の残存価額がやがてゼロになることで終了となります。しかしそうなるまでには、たいていの場合15年間かかります。つまり残念なことに、今の分の償却が終わることで報告利益上の恩恵をうけるのは、わたしのあとを継ぐ人になるでしょう。

一方わたしどもが報告する減価償却費は、そっくりすべて実際に支出される費用です。このことは、どの他社でもまずそのとおりだと言えます。ウォール街の住人は評価基準のひとつとしてEBITDA(利払い税引き償却前利益)を売り込んできますが、それを目にしたら財布のひもを締めてください。

もちろんわたしどもが提出する利益報告はひきつづきGAAPに準拠していきます。しかしあるがままを受け入れるには、報告上の償却費用の大部分を足し戻すことを覚えておいてください。(PDFファイルの13ページ目)

[前略] serious investors should understand the disparate nature of intangible assets: Some truly deplete over time while others in no way lose value. With software, for example, amortization charges are very real expenses. Charges against other intangibles such as the amortization of customer relationships, however, arise through purchase-accounting rules and are clearly not real costs. GAAP accounting draws no distinction between the two types of charges. Both, that is, are recorded as expenses when earnings are calculated - even though from an investor's viewpoint they could not be more different.

In the GAAP-compliant figures we show on page 29, amortization charges of $648 million for the companies included in this section are deducted as expenses. We would call about 20% of these “real,” the rest not. This difference has become significant because of the many acquisitions we have made. It will almost certainly rise further as we acquire more companies.

Eventually, of course, the non-real charges disappear when the assets to which they're related become fully amortized. But this usually takes 15 years and - alas - it will be my successor whose reported earnings get the benefit of their expiration.

Every dime of depreciation expense we report, however, is a real cost. And that's true at almost all other companies as well. When Wall Streeters tout EBITDA as a valuation guide, button your wallet.

Our public reports of earnings will, of course, continue to conform to GAAP. To embrace reality, however, remember to add back most of the amortization charges we report.


現在83歳のウォーレンは、15年後には98歳になる計算です。上の文章では後継者云々と書いていますが、実のところご本人は15年前を振り返って「株主のみなさんへ」を書くつもりでいると思います。個人的にはその年齢はむずかしいだろうと考えていましたが、ウォーレンがこの話題を書いたことで確率を再検討しました。98歳になっても筆をとっている確率は、3割から4割ぐらいと予想します(あくまでも軽い予想です)。

2014年3月12日水曜日

これさえあればだれでも使える投資戦略(チャーリー・マンガー)

0 件のコメント:
チャーリー・マンガーの(再考)世知入門の17回目です。前回分はこちらです。なお、この講演が行われたのは1996年です。(日本語は拙訳)

<質問者> この強気相場がまだつづくとお考えですか。

<マンガー> 今から25年後にアメリカ企業全体でみた資産価値が相当大きくなっていないとしたら、それは驚くでしょうね。これからもずっと[株式という]紙切れを交換しあう取引をみんなでやっていけば、資産運用という業界は運用する側にとってすばらしい商売でありつづけるでしょう。しかし我々自身の資金と呼べるものを除けば、実際のところ我々はその業界には何も投じていません。

<質問者> あなたの投資戦略が進化して、最初に始めたときはベン・グレアム式のやりかただったのがバークシャー・ハサウェイ式に変わったことに関心があります。そのモデルを投資の初心者に対して推奨しますか。たとえば資金のすべてあるいはほとんどをこれはすごいと思えるただひとつのチャンスへつぎこみ、その後は何十年と放置しておくやりかたです。それとも、その戦略はもっと成熟した投資家向けでしょうか。

<マンガー> 投資というゲームに参加する際にはだれであろうと、自らの限界効用をよく考え、また自らの心理面を考慮したやりかたをとるべきです[限界効用に関する参考記事;第3原理]。実際ある程度の損失は不可避なのですが、それでも損失が出ると気に病んでしまう人は、非常に保守的な形態の投資を利用し、まるごと安心できる毎日を選ぶほうが賢明かもしれません。つまり、自分自身の気質や能力に合うように戦略を調整しなければならないわけです。「これさえあればだれでも使える投資戦略」などを私から差し出すことはできません。

たしかに私は自分のやりかたでうまくいきました。しかし損失にうまく対峙できたことも影響しています。私には心理的に受けとめられるのです。加えて、損失が出たこともほとんどありませんでした。結局、この組み合わせがうまくいきました。

<質問者> バークシャーの株価は割高なので買いを勧めていない、とバフェットさんだけでなくあなたもおっしゃっていますが。

<マンガー> そうは言ってませんね(割高だと思うとは)。我々なら買わないねとか、当時の値段で我々の友人が買おうとしているのに対して勧めないよ、と言っただけです。しかしそれは当時のバークシャーの本源的価値に対する話です。

<質問者> もし資金があれば、わたしなら買います。バークシャーのリターンは下がっていくとあなたが言いつづけて、もう20年間になるのですから。

<マンガー> その楽観的な見方が正しかったとなるように、お祈りしますよ。しかし私は意見を変えるつもりはありません。結局、今の我々は未知の領域へと達してしまいました。友人にはこう話しています。「できる限りのことはしているが、もうこんな齢になってしまったよ。こんなことは初めてだから、うまくいくかどうかはわからんさ」。

ここまで価値を有し、かつ莫大な資本を抱える領域まで来たことは、ウォーレン共々ありません。二人とも初めてのことなので、今も学びつづけています。

Q: Do you expect this (bull) run to continue?

Well, I'd be amazed if the capitalized value of all American business weren't considerably higher twenty-five years from now. And if people continue to trade with one another and shuffle these pieces of paper around, then money management may continue to be a marvelous business for the managers. But except for what might be called our own money, we're really not in it.

Q: I was interested in the evolution of your investment strategy from when you first began - using the Ben Graham model - to the Berkshire Hathaway model. Would you recommend that model to a beginning investor - i.e., dumping most of it or all of it into one opportunity we think is a great one and leaving it there for decades? Or is that strategy really for a more mature investor?

Each person has to play the game given his own marginal utility considerations and in a way that takes into account his own psychology. If losses are going to make you miserable - and some losses are inevitable - you might be wise to utilize a very conservative pattern of investment and saving all your life. So you have to adapt your strategy to your own nature and your own talents. I don't think there's a one-size-fits-all investment strategy that I can give you.

Mine works for me. But, in part, that's because I'm good at taking losses. I can take ‘em psychologically. And, besides, I have very few. The combination works fine.

Q: You and Buffett have said that Berkshire's stock is overvalued and you wouldn't recommend buying it.

We didn't say (we thought it was overvalued). We just said that we wouldn't buy it or recommend that our friends buy it at the prices then prevailing. But that just related to Berkshire's intrinsic value as it was at that time.

Q: If I had the money, I would buy it - because you've been saying that your returns will go down for twenty years….

Well, I hope that your optimism is justified. But I do not change my opinion. After all, today we're in uncharted territory. I sometimes tell my friends, "I'm doing the best I can. But I've never grown old before. I'm doing it for the first time. And I'm not sure that I'll do it right."

Warren and I have never been in this kind of territory - with high valuations and a huge amount of capital. We've never done it before. So we're learning.

2014年3月10日月曜日

ナダルに思い知らされるわけではない(ハワード・マークス)

0 件のコメント:
前回の投稿につづいて、ハワード・マークスのインタビュー記事からもう一か所引用します。(日本語は拙訳)

<質問者> そのことから本質的な哲学的疑問が浮かび上がります。投資において運はどのような役割を果たすのでしょうか。

<マークス> 運というのはきわめて重要なものです。能力や勤勉さ、根気はどれも非常に大切です。しかし幸運も欠かせないものです。優れた分析や決断をすることで成功する確率を限界まで高めることはできます。しかしそれらがいつでも働くとは限りません。この世界は平穏な場所ではないので、偶然が重要な役割を果たします。私が大学で最初に学んだことは、投資において生じた結果からは判断の良否を見分けることはできないというものでした。偶然や運が関わるためです。

<質問者> だれが本当にすぐれた投資家でだれがそうでないのか、どうすれば言えるのでしょうか。

<マークス> 私がよく好んで指摘することですが、歯を治療したり、病気の診断をしたり、法務上の各種手続きをしたりということは自分自身ではやりませんね。だからこそ、投資の世界においても他の分野と同じように腕のいいプロを雇うべきなのです。それは容易なことではないからです。いや、訂正しましょう、平均でよいなら簡単です。インデックス・ファンドに投資したり、平均的な投資信託を一式そろえれば平均点はとれます。しかし私にとって投資で成功するとは、平均点ではなくて平均以上の成績をあげることです。これも、先のことがむずかしい理由の一部となっています。私は「第二段階」と呼んでいますが、投資とは「二重に考える」ことが要求される心理的な行動です。他人の考えをしのぐことが必要であり、さらにほとんどのことが直観に反するからです。このことは、橋梁を建設したりテニスをするといった実体を伴う活動には当てはまりません。心理的・感情的な複雑さの点でそこまでの水準を必要としないからです。

<質問者> しかしその話題ですが、ウィンブルドンのようなグランドスラムのテニス・トーナメントで勝つには平均では足りないと思いますがどうですか。

<マークス> テニスが投資と違う点は、まず第一に幸運をそれほど必要としないことです。ロジャー・フェデラーのようなプロの選手は肩やひじ、臀部や脚部をどう動かせばどのようにボールが進んでいくかを精確に把握しています。しかし投資の世界では違います。結果を完璧に予想することはできませんし、結果の信頼性も高くありません。もうひとつ違う点は、フェデラーがゲーム中にウィナーを狙っていることです。ウィナーにならずに容易に返球されるようであれば、ナダルに思い知らされるからです。しかしあなたと私で勝負する場合、私がウィナーをとろうとがんばる必要はありません。ミスをしないやりかたでも勝てるからです。ボールが継続するようゲームをつづけるだけです。20回もつづけるうちにあなたのほうがボールをネットにかけるかコートの外に打つだろうとわかっているので、私としては毎回きちんと打ち返します。ですから私はウィナーを狙う必要はなく、ミスしないように努めればよいだけです。このことは、我々がオークツリー[ハワードが会長を務める資産運用会社]でモットーとするものでもあります。適格な投資を多数実行し、そのどれもが火を噴かない。これが我々の望むことです。つまり敗者を出さないようにすれば、あとは勝者がうまくやってくれます。

<質問者> それはご自身が投資するポートフォリオでも同じですか。

<マークス> 私が投資する際には保守的にやっています。オークツリーが成功することで私が得られる同社の持ち分や収入、またオークツリー・ファンドに対する投資は相当大きなものです。ですから、自分の投資のリスク度合いを引き上げる必要性はまったく感じていません。最大の利益を得ようと有り金すべてを投資して一時たりとも寝かさない、と感じる類いの人間ではありません。流動性を確保し、信頼に足るポートフォリオを持つことで大いなる安心を得ています。金融危機が起こる前は、私は自己資金のほぼ全額を財務省証券に投じ、オークツリーには投資していませんでした。それによって完全に安全なリターンとして約6%が確保されていました。今日では、1年から5年満期の財務省証券に投資したければ1%のリターンしか得られません。税金とインフレを考慮すると損失が出るため、そのリターンでは不十分です。ですから、アクティブに運用する分を増加させたというのが私の答えです。しかし最大限に積極的とまでは至っていません。世界中のみなさんと同じように、やむを得ずリスク・カーブを移動させました。ただし私の場合は注意深くですが。

That leads us to an essential philosophical question. What's the role of luck in investing?
Luck is extremely important. Skill, hard work and perseverance are all very important. But you need luck, too. Sure, you can maximize your chances of success by doing good analysis and making good decisions. But that doesn't mean they're going to work all the time, since the world is not an orderly place and randomness plays an important part. One of the first things I learned at university is that you can't tell from the outcome whether a decision was a good investment decision or a bad investment decision because of the role of random and luck.

So how can we even tell who's really a good investor and who's not?
I always like to point out that nobody does their own dental work, or their medical work, or their own legal work. Therefore, in investing, like in any other field, you should hire a skilled professional because it's not easy. Let me correct that: it's easy if you want to do average. You can buy an index fund or a portfolio of average mutual funds and you get average results. But success in investing for me is not to be average; it's to be above average. That's the part that is hard. Investing is a mental activity in which you have to double think at what I call the second level, since your job is to out-think the others and most things are counterintuitive. That's not true in a physical activity like bridge building or tennis, for example, in which you don't have that level of psychological and emotional complexity.

But then again, to win a grand slam tennis tournament like Wimbledon it's also not enough to be average.
First of all, unlike in investing, there's not that much luck in tennis. A pro like Roger Federer knows exactly where the ball is going to go when he moves his shoulder, his elbow, his hip and his legs in a certain way. But in investing that's not true. Outcomes aren't fully predictable or dependable. And there's more: When Federer plays he tries to hit winners. If he does not hit a winner and gives an easy return, Nadal will stuff it down his throat. But when you and I play together, I don't have to try to hit winners. I can beat you by not hitting losers. I'm just going to keep the ball in play. I put it every time back knowing that if I can do it twenty times you're finally going to hit the ball into the net or off the court. So I don't have to hit a winner. I only have to avoid hitting a loser. And that's our motto at Oaktree Capital, too. We want to make a large number of competent investments and have none of them to blow up. And if we avoid the losers, the winners take care of themselves.

Is that also true for your personal investment portfolio?
I am a conservative investor. My ownership of Oaktree Capital and the income I derive from Oaktree's success and my investments in Oaktree funds is very substantial. So I've never felt the need to press up my risk exposure. I am not one of these people who feel that every dollar has to be fully employed at maximum return every minute. I derive a lot of comfort from having liquidity and a dependable portfolio. Before the crisis, I used Treasuries for virtually all my money that was not invested in Oaktree. That allowed me to get a return of around 6% with total safety. Today, if I want to invest in Treasuries with one to five year maturities I only get 1%. That's not enough because after taxes and inflation I lose money. So the answer is that I have increased my active investments. I'm still not maximally aggressive. By necessity, like everybody else in the world, I've moved out the risk curve - but in my case with caution.


備考です。運に関する過去記事としてはマイケル・モーブッサンのものが参考になります。
能力のパラドックス(1)(マイケル・モーブッサン)
能力のパラドックス(2)(マイケル・モーブッサン)
能力のパラドックス(3)(マイケル・モーブッサン)
能力のパラドックス(4)(マイケル・モーブッサン)
能力のパラドックス(5)(マイケル・モーブッサン)
能力のパラドックス(6)(マイケル・モーブッサン)
能力のパラドックス(7)(マイケル・モーブッサン)

また「二重思考」のような多重的に考えるやりかたは、本ブログの主題のひとつとして取り上げつづけています。ここでは以下の2件を挙げておきます。特に2件目のダーウィンのやりかたは最上のものです。
心理学的な落とし穴を避ける考え方(チャーリー・マンガー)
誤判断の心理学(5)自縄自縛(チャーリー・マンガー)

2014年3月8日土曜日

今やっとけば金持ちになれるぞ(ハワード・マークス)

0 件のコメント:
資産運用会社Oaktreeの会長ハワード・マークスがインタビューに応じていた記事がありました(GuruFocusで紹介されていました)。彼自身の書くメモと同じように、このインタビューでも一般投資家に対してわかりやすい表現で現状認識や助言を語っています。今回と次回で一部を引用してご紹介しますが、それほど長くはないので原文記事全体を読まれたほうがよいかもしれません。(日本語は拙訳)

≪In the end, the devil usually wins≫ (Finanz und Wirtschaft)

<質問者> 今回の強気相場がつづく中で、投資家が注意しなければならないリスクとはなんでしょうか。

<マークス> 投資におけるリスクは何かと質問されたら、「資金を失うこと」とお答えになるでしょう。ところが投資におけるリスクは実際には2つあります。ひとつは資金を失うこと、もうひとつが好機を逸することです。どちらかであれば排除することができますが、両方同時には排除できません。そこで問題になるのが、2つのリスクに対してどのように身を処すべきかです。積極果敢にやるか、堅く守りに入るか、それともそのあいだを進むか。この状況からは、あるコメディー映画が思い浮かびます。そこでは登場人物の男が一体どうしようか悩んでいます。彼の右肩には白いローブをまとった天使が腰かけており、こう話しかけてきます。「やめておきなさい。思慮が足りない。良い考えでないどころか、正しくもない。これはやっかいなことになりますよ」。一方、反対の肩にはピッチフォーク[3本歯の農具]を手にした赤いローブの悪魔が座っています。悪魔はこうささやきかけます。「やるんだ。今やっとけば金持ちになれるぞ」。たいていの場合、結局勝つのは悪魔のほうです。「慎重、熟慮、善行」は古来より伝わる教えです。しかし金持ちになりたいという欲望と争えば、恐慌状態の時期を除けばたいていは欲望のほうが勝ちをおさめます。バブルが形成され、バーニー・マドフが金を集めたような詐欺が起こるのはそのためです。

<質問者> 悪魔の口車に乗せられないためにはどうすればよいのでしょうか。

<マークス> 私はこの業界に入って45年以上になります。その間、さまざまな経験をしてきました。それに加えて、感情に左右されやすい性格ではありません。実際、私が知っているすばらしい投資家は感情に流されない人ばかりです。感情的な人は、お祭り騒ぎをする他人たちが値段をつり上げた天井で買ってしまい、みんなが意気消沈して値段がさがった底値で売ってしまうものです。他人と同じように動き、甚だしい状況のときに間違ったことを毎度のようにくりかえします。だからこそ、投資で成功するための最重要な基準として感情に流されないことが含まれるのです。感情に流されてしまう人は、自分の資金で投資すべきではありません。この一言に尽きます。すばらしい投資家のほとんどの人は「逆張り」と呼ばれる姿勢を実践しています。これは他の大勢がやることの逆をやることを意味しますが、その実態は極度な状況下でも適切な行動をとるという意味です。感情に流されずに理性的にやることは、逆張りを実践していく上での基本的な要件のひとつです。

What are the risks investors should be aware of as this bull market goes on?
If I ask you what's the risk in investing, you would answer the risk of losing money. But there actually are two risks in investing: One is to lose money and the other is to miss opportunity. You can eliminate either one, but you can't eliminate both at the same time. So the question is how you're going to position yourself versus these two risks: straight down the middle, more aggressive or more defensive. I think of it like a comedy movie where a guy is considering some activity. On his right shoulder is sitting an angel in a white robe. He says: ≪No, don't do it! It's not prudent, it's not a good idea, it's not proper and you'll get in trouble≫. On the other shoulder is the devil in a red robe with his pitchfork. He whispers: ≪Do it, you'll get rich≫. In the end, the devil usually wins. Caution, maturity and doing the right thing are old-fashioned ideas. And when they do battle against the desire to get rich, other than in panic times the desire to get rich usually wins. That's why bubbles are created and frauds like Bernie Madoff get money.

How do you avoid getting trapped by the devil?
I've been in this business for over forty-five years now, so I've had a lot of experience. In addition, I am not a very emotional person. In fact, almost all the great investors I know are unemotional. If you're emotional then you'll buy at the top when everybody is euphoric and prices are high. Also, you'll sell at the bottom when everybody is depressed and prices are low. You'll be like everybody else and you will always do the wrong thing at the extremes. Therefore, unemotionalism is one of the most important criteria for being a successful investor. And if you can't be unemotional you should not invest your own money, period. Most great investors practice something called contrarianism. It consists of doing the right thing at the extremes which is the contrary of what everybody else is doing. So unemtionalism is one of the basic requirements for contrarianism.

2014年3月6日木曜日

私が大統領に選ばれたら、やってほしいこと(ウォーレン・バフェット)

0 件のコメント:
ウォーレン・バフェットが1994年にネブラスカ大学でおこなった講演その16です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問者> 本来やめるべきなのに政府が今なお行っていることに対して、どうお考えですか。もし大統領になったとしたら、最初に変えたいと思うものは何でしょうか。

<バフェット> そうですね、もしわたしが大統領に選ばれたとしたら、最初にやってほしいのは票の数え直しです。御免こうむりたい仕事ですからね。わたしがお断りしたい仕事はいろいろありますが、その中でもおそらく上位にきます。大統領職のことは少し知っていますし、ほんのわずかだけ関わったことがありますが、とにかくあれは大変な仕事です。非常に大規模な組織を運営するのは、どんなものでもすごく大変です。[学長の]スパニア博士もたぶん同意してくださると思います。国民や莫大な予算に関する決定を迫られている人たちが山ほどいる本当に複雑な組織ですから、相当大変な管理でしょう。そしてほとんどの場合、職務を8年間つづけなければならないという現実を考えてみてください。組織文化を変えるというのは大変極まりないことです。少しなら経験があるのでわかります。仕事をする上で、ひとつコツがあります。それは、正しい心構えをすでに備えた文化の中に加わることです。わたしどもはそうする幸運に恵まれました。デクスター・シューズ社やシーズ・キャンディー社に投資した時に楽だったのは、そこにはある種の企業文化が育っていたからです。つまり、正しいことをするという方針をリーダーたちが掲げていたのですね。一方、政府となればこれは大変なことだと思います。しかし、もしわたしの方針でやれるのであれば、累進消費税をやります[過去記事]。そして財政は必ずしも均衡する必要はないですが、政府債務の増加率はGDP成長率より低く抑えます。つまり、収入に対する債務の割合を増加させないようにしたいですね。

しかし個別の案件については良い案はありません。立候補しているわけではないですし、20,30年先には既定路線ですから、やるとすればたぶん社会保障[=健康保険など]の支給開始年齢を引きあげます。1937年や定年が65歳に決められたころとくらべると、ずいぶん状況が変わったからです。その年になっても十分生産的にやれると思います[この講演当時のウォーレンの年齢は64歳]。65歳以下の人がそれより年上の人を支えるという人口構成は、60年前にくらべると大きく変化して難題となっています。まだまだ生産的に働けるでしょうから、社会保障の支給開始年齢を遅らせる政策をとります。大幅な歳出削減につながると思います。これで、AARP[全米退職者協会]などの組織票も入ってこないでしょう。

Q. What do you think the government is currently doing that they should stop doing? And, if you were President, what would be the first change you would make?

A. If I were President, the first thing I'd do is demand a recount. That is a job I would not like to have. There are a lot of jobs I would not like to have, but that would probably be tops on the list. I think it's very tough because I've seen a little of it, and I've even experienced a little tiny bit. It's very tough to manage any extremely large organization. Maybe Dr. Spanier will agree with me on that, too. You have a really complex organization with loads of people that have to be decision makers under you and huge budgets. That is very difficult to manage. Then think about the fact that the most time you are going to have to do the job in is eight years. Changing cultures is really tough. I've had a little experience with that. The trick in business is to get in with a culture that's already the right kind. And, we've had good luck doing that. When we invest in a Dexter Shoe or See's Candy, that is very easy, because they have grown in a certain way because the head people think about doing the right things. I think it would be very tough in government. If I had my way, there would be a progressive consumption tax. There wouldn't necessarily be a balanced budget. But, the national debt would grow at a rate that would be less than the growth of the Gross Domestic Product. In other words, I would make sure that debt in relation to income did not increase.

But, in terms of specific programs, you know I have no great ideas. I would probably - since I'm not running for office, and this is already scheduled to come in a couple of decades - I would probably extend the age at which Social Security kicks in, because I think the world is a lot different than in 1937 or whenever the retirement age was put in at 65. I think people are very productive at that age. If you look at demographics for people under 65 to support people over 65, it is a much different chore than it was 60 years ago. I just think there are more productive years, so I would have Social Security start somewhat later. That would save a lot of money. It would also not get the vote of the AARP or other organizations.

2014年3月4日火曜日

私が投資家の道を選んだ理由(チャーリー・マンガー)

0 件のコメント:
チャーリー・マンガーの(再考)世知入門の16回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

なおチャーリーの略歴は、過去記事「チャーリー・マンガーとは何者か(2)略歴(Wikipedia私家版)」で取りあげています。

<質問者> 法曹界を離れた理由を教えてください。

<マンガー> うちは大家族で、[妻の]ナンシーと私で8人の子供を養っていましたから..。法律業界が突如繁盛するようになるとは考えてもみませんでした。私がやめてまもなく、業界に大金が流れ込むようになったのです。1962年にはほとんど身を引いて、完全にやめたのが1965年でした。ずいぶん昔の話です。

他には、自分で決断して自分の資金を賭けるのが好みだったこともあります。どんなことであろうと顧客よりも自分のほうがわかっている、と感じたことがよくありました。そうであれば彼らのやり方に従う理由はないですね。さらに意固地な性格だったのもあります。また独立してやれるだけの元手を得たいという望みもありました。

大多数の顧客は本当にすばらしい人たちでした。ただ、わたしにとって楽しめない人がひとりふたりいました。加えて、投資家という独立独歩な立場に惹かれていました。また、ある種の勝負したいという気概は常にいだいていました。物事の道理を明かして、それに賭けることが好きなのです。ですから、心の赴くほうへと歩んだだけなのです。

<質問者> ラスベガスのようなギャンブルはやりますか。

<マンガー> 胴元がオッズを決める勝負に100ドル賭けるなど、決してやりません。そんなことをする必要がどこにありますか。お遊びとして仲間と賭けることはありますよ。世界一のカード・プレイヤーとも言えるボブ・ハマンのようなすごくうまいブリッジの選手と勝負することもあります。しかし彼と勝負して負け分を払うのは楽しみとわかってのことです。あくまでもお遊びです。

「合法的ギャンブル」という人を操ったような文化が、私は嫌いです。そのことも考慮に入れれば、単純な数学的オッズにもとづいて胴元と勝負するなど、まったくもって思いつきようがありません。合法ギャンブルというのは好きになれませんね。

一方で、言わば「賭けという名の決闘」をするのは好きです。ですから、友人とやる軽めの社交的なギャンブルは好きです。しかし商売としてギャンブルをやる環境は好きではありません。

<質問者> ミューチュアル・ファンド[=投資信託]や資産運用の業界は、あなたが入ってからどう変わりましたか。また市場の成長について、ご意見がありますか。

<マンガー> 実際にはその業界に入ったわけではありません。非公開の小さなパートナーシップを14年間やっていただけです。20年以上前の話ですね。しかし他人からの資金はこれっぽっちにもなりませんでした。少なくとも現在の資産運用者の基準からみればそう言えます。ですから、実際は投資信託の商売には加わってはいなかったのです。

しかしこの国における資産運用ビジネスは、近年大きく成長した商売のひとつですね。裕福なプロや億万長者がたくさん生まれました。最初からいた人には、そこは正真正銘の金鉱でした。年金基金が大きくなり、アメリカ企業の価値が増大し、さらには世界中の富によって驚嘆すべき職業がつくりだされたのです。その仕事についた人の多くが裕福な生活へと持ち上げられました。

我々は、彼らとさまざまなやりかたで取引しています。しかし彼らの一員でなくなってから、ずいぶん経ちました。我々は非常に長い間、基本的に自らの資金を投資してきたのです。

Q: Could you talk about why you left the law?

I had a huge family. Nancy and I supported eight children…. And I didn't realize that the law was going to get as prosperous as it suddenly got. The big money came into law shortly after I left it. By 1962, I was mostly out. And I was totally out by 1965. So that was a long time ago.

Also, I preferred making the decisions and gambling my own money. I usually thought I knew better than the client anyway. So why should I have to do it his way? So partly, it was having an opinionated personality. And partly, it was a desire to get resources permitting independence.

Also, the bulk of my clients were terrific. But there were one or two I didn't enjoy. Plus, I like the independence of a capitalist. And I'd always had sort of a gambling personality. I like figuring things out and making bets. So I simply did what came naturally.

Q: Do you ever gamble Las Vegas-style?

I won't bet $100 against house odds between now and the grave. I don't do that. Why should I? I will gamble recreationally with my pals. And I'll occasionally play a much better bridge player, like Bob Hamman, who might be the best card player in the world. But I know I'm paying for the fun of playing with him. That's recreational.

As for gambling with simple mechanical house odds against me, why in the world would I ever want to do that - particularly given how I detest the manipulative culture of legalized gambling. So I don't like legalized gambling.

On the other hand, I do like the manly art of wagering, so to speak. And I like light social gambling among friends. But I do not like the professional gambling milieu.

Q: Could you say something about how the mutual fund and money management business has changed since you got into it - and the growth of capital markets?

Actually, I didn't really get into it. I had a little private partnership for fourteen years - up until a little over twenty years ago. However, I never had enough money from other people to amount to a hill of beans - at least by current investment-management standards. So I've never really been part of the mutual fund business.

But the money management business has been one of the great growth businesses in the recent history of the United States. It's created many affluent professionals and multimillionaires. It's been a perfect gold mine for people who got in it early. The growth of pension funds, the value of America corporations, and the world's wealth have created a fabulous profession for many and carried lots of them up to affluence.

And we deal with them in a variety of ways. However, we haven't been part of it for many years. We've basically invested our own money for a long, long time.


備考その1です。チャーリーが子だくさんな理由は、夫妻ともに一度離婚しており、再婚前の両者の子供が合わさったことも影響しています。ちなみに2001年にチャーリー夫妻の結婚45周年を祝って一族がイギリスに旅行したときの写真をみると、総勢33名が写っていました。

備考その2です。チャーリーの話題に登場するボブ・ハマン氏はトップレベルのブリッジのプレイヤーで、ブリッジが好きなウォーレン・バフェットとも仲がいいようです。きたる5月に行われるバークシャーの株主総会(別名:資本家のウッドストック)に彼が参加することが、先日の「株主のみなさんへ」[PDF]に出ていました。

加えて日曜日の午後には、世界でも指折りのブリッジの名手のおふたり、ボブ・ハマンとシャロン・オズバーグが株主のみなさんとブリッジをする予定です。勝負する際には、くれぐれもお金を賭けないように。

Additionally, we will have Bob Hamman and Sharon Osberg, two of the world's top bridge experts, available to play bridge with our shareholders on Sunday afternoon. Don't play them for money.(PDFファイル25ページ目)

2014年3月3日月曜日

2013年度バフェットからの手紙 - またしてもやってしまいました

0 件のコメント:
2013年度のバークシャー・ハサウェイ社の業績は、売上高が約18兆円、純利益が2兆円弱でした。その会社のトップであるウォーレン・バフェット氏が、今年も株主のみなさんへ自分のあやまちを報告します。2013年度「株主のみなさんへ」[PDF]からの引用です。(日本語は拙訳)

なお2011年度に書いた報告は、過去記事「今年も反省します」で取りあげています。

わたしたちは株式を保有するだけでなく、債券にも多額の資金を投資しています。その投資は成功におわることが多いものの、必ずしもそうとは言い切れません。

エナジー・フューチャー社(Energy Future Holdings)という会社をご存知の方は、ほとんどいらっしゃらないと思います。それはツイています。わたしもそうだったらと心の底から思います。2007年に設立された同社は、多額の借入金を使ってテキサス州にある電力事業を買収する目的の会社でした。80億ドルの資金を払った投資家が株式を保有し、その上で必要な多額の資金は借入によって賄うことになりました。バークシャーは20億ドル分の債券を購入しました。そのときチャーリー[・マンガー]に相談せずに、わたしの判断で進めてしまいました。これが大きなまちがいでした。

天然ガスの価格が上昇していなかったら、同社はほぼ間違いなく2014年中に破産したでしょう。我々は昨年、保有する債券を2億5,900万ドルで売却しました。債券を保有している期間に受け取った利息が8億3,700万ドルでしたので、結局は税引き前で8億7,300万ドルの損失を出しました。次からはちゃんとチャーリーに電話をかけるようにします。(PDFファイル19ページ目)

In addition to our equity holdings, we also invest substantial sums in bonds. Usually, we've done well in these. But not always.

Most of you have never heard of Energy Future Holdings. Consider yourselves lucky; I certainly wish I hadn't. The company was formed in 2007 to effect a giant leveraged buyout of electric utility assets in Texas. The equity owners put up $8 billion and borrowed a massive amount in addition. About $2 billion of the debt was purchased by Berkshire, pursuant to a decision I made without consulting with Charlie. That was a big mistake.

Unless natural gas prices soar, EFH will almost certainly file for bankruptcy in 2014. Last year, we sold our holdings for $259 million. While owning the bonds, we received $837 million in cash interest. Overall, therefore, we suffered a pre-tax loss of $873 million. Next time I'll call Charlie.


純利益2兆円弱の裏に8億7,300万ドル(900億円弱)の損失があったと聞かされても、ウォーレンに不平を言うバークシャーの株主は非常に少ないでしょう。少なくとも個人的にはなんとも感じていません。自分の意見をそのまま敷衍できるわけではないですが、バークシャーの株主がウォーレンやチャーリーに寄せる忠誠心は絶大なものと感じています。彼らのようなすばらしい能力を持った人間が誠実にふるまおうと努力している様子をみると、その組み合わせが稀なゆえに自然と惹かれてしまうような気がします。

その意味で今回の文章を読んで個人的に気がついた点は、「このような報告事例がバークシャー子会社の経営陣に対して言行一致の見本となる」ことです。ウォーレンが彼らに要求するものに、「悪いニュースを早く知らせてほしい」という指示があります。時期という点では、今回の文章は遅れてはいます。しかし隠し立てをせずに正確な事実を伝えあうという前向きな姿勢は、みずから進んで示しています。世間一般の優良企業の経営陣ががむしゃらにやるのは仕方がないことかもしれませんが、ソフトなアプローチを積み重ねるウォーレンのようなやりかたも、もっと評価されていいと感じています。またこのような経営文化が存在することは、きわめて真似のしにくい競争優位だと思います。

話は大きく変わりますが、もうひとつ気づいた点はウォーレンが合意した債券の利率水準です。20億ドルの元本に対して約6年間で受け取った利息が8億3,700万ドルでした。単純に計算すると利率は約7%になります。投資時期が2007年と微妙な時期ではありますが、ウォーレンは意外と楽観的に考えていたように個人的には受けとめました。

2014年3月2日日曜日

わかりやすい解法が見つかりました(ベノワ・マンデルブロ)

0 件のコメント:
複雑なものごとを分析する方法として、本ブログではチャーリー・マンガーのやりかたを繰り返し取り上げています。要約すると「学術界などから借りてきた種々のモデルを使って事象を説明できるか試し、よりよい説明モデル群を見いだす」とするものです。モデル化できるということは、行く末をある程度は予想できることにつながります。あらゆるものが容易にモデル化できるわけではないと思いますが、チャーリーは「徐々にものごとがうまくつながって認識できるようになる」と説明しています。

今回ご紹介するのは、少し前に取り上げた数学者マンデルブロの自伝『フラクタリスト―マンデルブロ自伝―』からの引用です。彼が大学に入学する前に体得した天才的なモデル化の話です。

数学教授のコワサール先生は、このころリセ・デュ・パルクに着任したばかりだったが、それから長いあいだここで立派な教員生活を送ることになる。トープの教授というエリート集団の中でも、コワサール先生は抜きん出ていた。毎日、1日の半分ほどを私はコワサール先生とともに過ごした。先生は黒板の前に立ち、やたらと長い問題を書いた。それは先生が過去何世代もの教師たちの経験を踏まえて、ばかばかしいほど複雑な計算が必要となるようにわざと作成したものだった。問題はいつも代数的または解析幾何学的に記述されていた。

私の中で、同じ問題を幾何学的に言い換える声が聞こえた。テュールにいたあいだずっと、私は時代遅れの数学の教科書を使って勉強していた。1930年代の教科書と比べて、あるいは今日の教科書と比べても、図版がはるかにたくさん載っていて、説明が充実し、やる気をかき立てる内容となっていた。そんな教科書で数学を勉強した私は、何世紀にもわたってきわめて特殊な図形が幅広く集められた一大図形"動物園"を知悉(ちしつ)するに至っていた。だからたとえ解析的な装いをまとっていても、そしてそれが私にとって"見知らぬ"装いであり、図形の基本的な性質とは無縁のように見えても、私はいろいろな図形をすぐさまそこに見出すことができた。

私はいつも最初にさっと図を描いた。そうするとすぐに、なにかが欠けていて美的に不完全だと感じられた。たとえば単純な射影変換や、何らかの円に関する反転操作を加えるとよくなったりした。この種の変換を何回かおこなうと、たいていの図形はもっと調和のとれたものになった。古代ギリシャ人ならこの新しい図形は「対称性が高い」と言っただろう。まもなく対称性を探して調べることが、私の勉強の中心となった。この愉快な作業は、とんでもなく難しい問題を単純な問題に変えた。必要な代数はあとで必ず補える。どうしようもなく複雑な積分の問題も、見慣れた図形に"還元"すれば簡単に解ける。私は手を挙げて自分の発見を発表したものだ。「先生、幾何学的なわかりやすい解法が見つかりました」。先生がどれほど難解な問題を考えても、私はたちまち解いてしまった。それからは、特に意識的に追い求めたわけでもないのに、即座に難なく、いかなる難問もクリアしてしまう一本の道が、私の前には開きつづけたのだった。1944年にリヨンで過ごした冬のあいだ、学期が進むにつれて、私の特異な才能は強固で信頼できるものであることが明らかになっていった。(p.133)


本ブログでメンタル・モデルに関する話題をはじめて読まれる方は、たとえば以下の過去記事がご参考になるかと思います。いずれもチャーリー・マンガーの講話の一部です。

2014年3月1日土曜日

2013年度バフェットからの手紙 - 投資に関するわたしからの助言(3)

0 件のコメント:
ウォーレン・バフェットの2013年度「株主のみなさんへ」、Fortune誌掲載分の最終回です。大団円で、きれいな幕引きです。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

さて、ベン・グレアムの話題に戻りましょう。ここまで書いてきた投資に関する考えのほとんどは、ベンの書いた本『賢明なる投資家』(The Intelligent Investor)からわたしが学んだことです。1949年に買ったその本が金融面におけるわたしの人生を変えました。

ベンの本を読む前にも投資に関するあらゆる本を貪り読んでいました。そして投資の世界をうろうろしたものです。読んで覚えたさまざまなことに夢中になり、手書きでチャートを書いたり、市場に現れた兆候をもとに株価の動きを予測しようとしました。証券会社の事務所に行って腰を下ろし、銘柄情報のテープが吐き出されるのをながめたりしました。評論家の意見にも耳を傾けました。どれも楽しめるものでしたが、どこにも行けないという想いを払いのけることはできませんでした。

それに反して、ベンは自分の考えを優雅にそしてわかりやすい普通の文体で論理的に説明していました(ギリシャ文字や複雑な公式は出てきません)。のちの改版で第8章そして第20章と章立てされた箇所に、わたしにとって核心となる内容が記されていました。その主張こそ、今日のわたしが投資上の判断をくだす際の導き手となっています。

その本には興味をひく情報がいくつか追加されています。のちに出た版の追記では、ベンが投資した宝の山が何だったのか名前が明かされました。初版を書いていた頃の1948年に、ベンはその銘柄を買っていたのです。驚くなかれ、謎の会社はGeico[ガイコ;バークシャーの子会社となった保険会社]でした。ガイコがまだよちよち歩きの頃にベンが同社の特質を認識していなかったら、わたしやバークシャーの将来はまるでちがっていたでしょう。

また1949年版では、ある鉄道会社の株が推奨されています。当時の1株当たり利益10ドルに対して、株価は17ドルでした(最新の事例をあつかう勇気を持っていたことも、ベンを尊敬する理由のひとつです。へまをやれば公然と冷笑されるかもしれないのですから)。低い評価を受けていたのは、当時の会計基準によるところもありました。鉄道会社が会計報告する際には、その利益から関連会社に留保されている利益の大幅な額を控除する決まりになっていました。

推奨されていたのはノーザン・パシフィック社の株でした。そのもっとも重要な関連会社がシカゴ・バーリントン&クインシーです。現在それらの鉄道は、バークシャーの完全子会社となったBNSF(バーリントン・ノーザン・サンタフェ鉄道)において重要な位置を占めています。この本を読んだ頃に市場がノーザン・パシフィックに付けていた値段は約4,000万ドルでした。現在その後継会社は(もちろん多大なる資産が加えられましたが)、4日間ごとにその金額を稼いでいます。(訂正しました:4分間->4日間)

最初に『賢明なる投資家』を買ったときにいくら払ったのか、思い出すことができません。しかし値段はどうであれ、この件はベンの格言がいかに正しいか強調しています。「価格とは自分が払ったものであり、価値とは自分が得たものである」。わたしが投資したあらゆるものの中で、ベンの本を買ったことが最高の投資でした(ただし結婚許可証に2回お金を出したことは別にして)。

And now back to Ben Graham. I learned most of the thoughts in this investment discussion from Ben's book The Intelligent Investor, which I bought in 1949. My financial life changed with that purchase.

Before reading Ben's book, I had wandered around the investing landscape, devouring everything written on the subject. Much of what I read fascinated me: I tried my hand at charting and at using market indicia to predict stock movements. I sat in brokerage offices watching the tape roll by, and I listened to commentators. All of this was fun, but I couldn't shake the feeling that I wasn't getting anywhere.

In contrast, Ben's ideas were explained logically in elegant, easy-to-understand prose (without Greek letters or complicated formulas). For me, the key points were laid out in what later editions labeled Chapters 8 and 20. These points guide my investing decisions today.

A couple of interesting sidelights about the book: Later editions included a postscript describing an unnamed investment that was a bonanza for Ben. Ben made the purchase in 1948 when he was writing the first edition and -- brace yourself -- the mystery company was Geico. If Ben had not recognized the special qualities of Geico when it was still in its infancy, my future and Berkshire's would have been far different.

The 1949 edition of the book also recommended a railroad stock that was then selling for $17 and earning about $10 per share. (One of the reasons I admired Ben was that he had the guts to use current examples, leaving himself open to sneers if he stumbled.) In part, that low valuation resulted from an accounting rule of the time that required the railroad to exclude from its reported earnings the substantial retained earnings of affiliates.

The recommended stock was Northern Pacific, and its most important affiliate was Chicago, Burlington & Quincy. These railroads are now important parts of BNSF (Burlington Northern Santa Fe), which is today fully owned by Berkshire. When I read the book, Northern Pacific had a market value of about $40 million. Now its successor (having added a great many properties, to be sure) earns that amount every four days.

I can't remember what I paid for that first copy of The Intelligent Investor. Whatever the cost, it would underscore the truth of Ben's adage: Price is what you pay; value is what you get. Of all the investments I ever made, buying Ben's book was the best (except for my purchase of two marriage licenses).


備考です。バークシャー・ハサウェイのプレスリリースによれば、2013年度の年次報告書は日本時間の3/1(土)22:00(米東部標準時3/1(土)8:00)に公開される模様です。