ペンローズや既存の戦略論の学者は「利潤の最大化」を企業の目的と仮定して、理論の構築を行なっている。しかし、私が現場で見た国内ものづくり‘中企業’の目的は、どうもそれだけではない。「従業員(家族) の雇用の確保」および「企業(家業) の存続」といった目的も強く存在するように見受けられた。特に‘中の小’企業では、「利潤最大化」よりこれらの目的を優先していることを感じさせるコメントに、数多く遭遇した。また、「長期存続と成長がトレードオフとなる状況に、これまで何度も直面してきた」という話も何度も伺った。そのひとつが、第2 節で紹介した豊田周辺地域に所在する自動車2次サプライヤーにおける海外展開と国内開発能力維持のトレードオフの話であった。やはり、(日本製造業の)‘中企業’と大企業は同じ企業という生き物でも、種がやや異なるのであろう。 (PDFファイルのp.37)
中小企業では資本と経営が一体となっていることが多いので、自分たちのニッチを見つけてそこで暮らすことができれば、どれだけ成長を望むかは経営者すなわち資本家次第です。長く存続してきた中小企業は大きくは成長できなかったかもしれませんが、生き残ってきたという実績があります。あるいは成長したいという誘惑よりも、もっと充実したものをみつけたのかもしれません。
株式を公開したり資本参加を募った企業は、一転して投資家から冷徹な扱いを受けます。うまくいけば喝采が、そうでなければ非難が待っています。投資家と経営者の距離が離れるだけで、二者の関係は大きく変わるものです。「信用」という言葉は、実に重い意味を持っていますね。
競争に明けくれ、利益があがらず、行き先に迷っている大企業はいったいどこへ行けばよいのでしょう。その答えは、上にもあげた「ニッチ」という言葉にあると思います。つまり、人とは違う自分の居場所を探す、それに尽きるのではないでしょうか。
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