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2017年8月28日月曜日

2017年バークシャー株主総会(3)本源的価値の複利成長について

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前回のつづきです。バークシャー・ハサウェイ年次株主総会の質疑応答から、企業価値の成長率についてです。(日本語は拙訳)

本源的価値の複利成長について

<質問> バークシャーの本源的価値は、これまでに複利換算で年間何パーセント増加してきましたか。また今後はどうなりそうですか。

<バフェット> 本源的価値は、過去にさかのぼる形でしか算出できません。しかし本来の定義はそうではなく、未来を向いています。つまり、現在から判定最終日までのあいだに創出されると予想した現金を、その期間において適切と思われる利率で割り引いた金額です。30年や40年間でみると、金利はとても広い幅で変動します。たとえば10年という期間をえらび、開始時期が[今から10年前の]2007年5月としたときに、「本源的価値が増加する割合は複利ベースでどうなるか」と問われれば、年間10%になるだろうと答えたと思います。しかし現実には、ありがたくない状況がやってきた期間でした。

10%を達成するのはかなり難しい課題ですし、この低金利の環境がつづくとすればほぼ不可能です。ご質問にお答えする前に、ある変数が将来どうなるのかひとつだけ教えてもらえるとしましょう。その際にわたしが知りたいのは、GDP成長率やだれが大統領に選ばれるかではありません。今後10年や20年における金利が平均としてどうなるかを知りたいです。現在みられている金利構成が平均だとしたら、10%の成果を出すのはとてもむずかしいものです。しかし生じうる金利の確率分布全体でみるのであれば、高望みではありますが10%成長は不可能ではないと思います。

「この低金利が長期間にわたって継続するなどありえない」と思えるのであれば、25年前の日本をふりかえってみてください。かの国の低金利がどのように永らえるのか、思い描くことはできませんでした。そして現在もなお同じ状況です。金利動向を予測するのは容易だ、とは微塵も考えていません。しかし残念なことに、うまいお答えを返すには金利を予測することが不可欠になります。

バークシャーのあげる成績がお粗末な程度におわる可能性は、他をあたった場合と同じように低いと思います。しかし驚くほどの高い率になる可能性も、同じように低いでしょう。いちばん近いのは10%近辺の範囲だと思いますが、その際の金利は劇的ではないものの高めになると仮定しています。つまり、この7年間にみられたより若干高い利率が次の10年あるいは20年の間に生じる、との仮定です。

<マンガー> 当社の現在の規模を考慮すると、過去にあげた栄光とくらべれば、今後のリターン率には陰りが生じるでしょうね。しかし以前からそう発言してきましたし、今やそれを証明している最中です(笑)。

<バフェット> チャーリー、そんな想いのまま人生お別れでいいのですか(笑)。

<マンガー> 当社の保有する事業は平均してみれば、たとえばS&P500各社の平均よりも高い投資価値があると思います。ですから、みなさんのような株主諸氏がひどい問題をかかえているとは思いませんね。

<バフェット> S&P500の各社を全体としてとらえると、株主志向の面では当社のほうが強いです。当社には、私企業のオーナーと同じようにものごとを決定する文化があります。これは多くの企業が持っていない贅沢品です。公開企業のCEOにお会いするたびに、いくつか質問をしています。そのひとつが、「会社全体を自分だけで保有しているとしたら、どのようにやりかたを変えますか」という質問です。たいていは、「あれをしたり、これをしたり、あるいは何とやら」といった答えが返ってきます。しかし、その相手から同じ質問を受けたとしたら、わたしならば次のように答えます。「自分たちだけで全株式を保有している場合にやることと、まったく同じように実行してきました」と(拍手)。

<マンガー> もうひとつ優位がありますよ。才気煥発であろうとする人は、世間に大勢います。しかし我々は、合理的でありつづけようとするだけです。これは大いなる優位ですね。利発であろうとするのは危険ですよ。賭けに出ているときは、なおさらです(拍手)。

(PDFファイルのp.11。Yahoo! Finance映像では1:26:00)

COMPOUNDING INTRINSIC VALUE

Q. At what rate has Berkshire compounded intrinsic value and at what rate can intrinsic value be compounded in the future?

Warren Buffett: Intrinsic value can only be calculated in retrospect, but the true definition would be the cash to be generated between now and judgment day discounted at an interest rate that seems appropriate at the time. That’s varied enormously over a 30 or 40-year period. If you pick out 10 years, and you’re back to May of 2007, we had some unpleasant things coming up. I’d say we’ve probably compounded intrinsic value about 10% annually since then.

I think that’s tough to achieve - almost impossible to achieve if we continue in this low interest rate environment. If you ask me to give the answer to the question - if I could only pick one statistic to ask you about the future before I gave the answer, I would not ask you about GDP growth or who was going to be president, I’d ask you what the interest rate is going to be over the next ten or twenty years on average. If you assume our present interest rate structure is likely to be the average, I would say it would be very difficult to get the 10%. If I were to pick for the whole range of probabilities on interest rates, I would say that that rate might be doable.

If you’d say we can’t continue these low interest rates for a long time, I’d ask you to look at Japan 25 years ago. We couldn’t see how their low interest rates could be sustained. We are still looking at the same thing - I don’t think it’s easy to predict the course of interest rates at all. Unfortunately, predicting interest rates is embedded in giving a good answer to you.

I’d say the chances of getting a terrible result in Berkshire are about as low as anything you could find. Chances of getting a sensational rate are also about as low as anything you could find. My best guess would be in the 10% range, but that assumes somewhat higher interest rates, not dramatically, but somewhat higher interest rates in the next 10 or 20 years than we experienced in the last seven years.

Charlie Munger: The future with our present size in terms of percentage rates of return is going to be less glorious than in the past. We keep saying that and now we are proving it.

Warren Buffett: Do you want to end on that note, Charlie?

Charlie Munger: I think we have a collection of businesses that on average has better investment values than say the S&P 500 average. I don’t think you shareholders have a terrible problem.

Warren Buffett: We do have more of a shareholder orientation than the S&P 500 as a whole. This company has a culture where decisions are made as a private owner would make them. That’s a luxury we have that many companies don’t have. One of the questions I ask the CEO of every public company that I meet: “What would you be doing differently if you owned it all yourself?”The answer is usually this, that and a couple of other things. If he would ask us, the answer is, we are doing exactly what we would be doing if we owned all the stock ourselves.

Charlie Munger: I think we have one other advantage. A lot of other people are trying to be brilliant. We are just trying to stay rational. It’s a big advantage. Trying to be brilliant is dangerous, particularly when you are gambling.

ウォーレンがチャーリーに向けたドライなジョークからは、二人を結ぶ信頼の強さがうかがえます。実にうらやましい大人たちです。

2017年8月24日木曜日

2017年バークシャー株主総会(2)EBITDAについて

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前回につづいてバークシャー・ハサウェイ年次株主総会の質疑応答から、今回はEBITDAの話題です。(日本語は拙訳)

人生で後悔したこと及びEBITDAについて

<質問> お二人は、世界中の何百万もの人たちからとても尊敬され、敬愛されていらっしゃいます[上海から来た質問者]。さて質問が2つあります。ひとつめはEBITDA(エビッダー; 利払い税引き償却前利益)についてです。事業を評価するのにふさわしい指標ではないと断言されていますが、なぜでしょうか。ふたつめは、お二人が人生で後悔されたことはありますか。人生や家族、個人的あるいは仕事の上でひとつだけ違うことをしていたら、と思われることは何ですか。

<バフェット> 個人的な問題についてのお返事は期待されないほうがよいかと思います。仕事の話ですと、チャーリー[・マンガー]ともっと早くから出会えていれば、とは何度も話したことがあります。出会った時のわたしは29歳で、彼は35歳でした。それ以降は愉快なことばかりでした。もっと早くから付き合い始めていれば、ずっと楽しかっただろうと思います。実はそうなる機会はありました。同じ商店で働いていたのです。ただし時期がちがっていました。

EBITDAには減価償却費が抜けています。これはもっともタチの悪い支出です。フロートの話題を好んで取り上げますが、フロートとは資金が先に手に入る一方、支出があとになる種類のものです。反対に減価償却費は、フロートとは反対の働きをします。つまり先に資金を支払いますが、会計上の支出はあとになります。これは好ましいものではありません。事業を買う上でほかの条件が同じであれば、減価償却費が発生しないもののほうがずっと望ましいです。固定資産に投じる資金が、基本的には必要ないからです。EBITDAは誤認を招く統計量です。非常に有害な手口で使われる可能性があります。

<マンガー> この問題の恐ろしさや、事業評価に対してその用語をもたらした人々の嫌悪すべき性質について軽くお考えだったように思いますが、どうですかね。まるでリース物件の不動産を扱う仲介業者が、1000平方フィートの一連の部屋をリースしようとする際に、実際は2000平方フィート分だったと言い出すようなものですよ。尊敬に値する行動ではないですね。そのようなやりかたで、かの言葉も広く使われるようになったのです。しかし公正な心を持った人間であれば、減価償却費は費用だと考えますよ。

<バフェット> ウォール街にとっては、とても有益な考えです。

<マンガー> だから連中はそうするのですよ。株価倍率が低くなりますから。

<バフェット> 奇妙なのは、実際にそれが受け入れられた方法です。それはともかく、この用語がどのように使われ、自分たちが使ってみせて概念を売りこむ様子がありありと残されています。2%と20%が同じ種類のものとなるわけです。この用語が通用する間は、この用語で押し通していくでしょう。

<マンガー> 今やビジネス・スクールでも使っています。おぞましくもおぞましいことですよ(笑)。盗人がその用語を使うだけでもうんざりなのに、広まったことでビジネス・スクールも真似をするとなれば、好ましい結末にはならないですね(拍手)。

(PDFファイルのp.45。Yahoo! Finance映像では6:18:40)

REGRETS IN LIFE and EBITDA

Q. You are highly respected and loved by millions globally. You believe EBITDA (is not a good parameter to evaluate a business. Do you have regrets in life, one thing you would have done differently in life, family, personal or business, what is it?

Warren Buffett: I don’t think you should expect us to answer that on personal matters. In business, I’d say I wished I met Charlie earlier. We’ve had a lot of fun ever since I was 29 and he was 35. It would have been even more fun if we started many years earlier. We had a chance to. We worked in the same grocery store but not at the same time.

In respect to EBITDA, it’s the worst kind of expense. We love to talk about float and float is where you get the money first and have the expense later. Depreciation is where you spend the money first and then record the expense later. It’s reverse float. It’s not a good thing. It’s much better to buy a business, everything else being equal, and it has no depreciation because it has essentially no investment in fixed assets. EBITDA is a very misleading statistic that can be used in very pernicious ways.

Charlie Munger: I think you understated the horrors of the subject and the disgusting nature of the people that brought that term when I was in business. It would be like a leasing broker of real estate who has a 1,000 square feet suite to be leased and says there’s 2,000 feet in it - that’s not honorable behavior and that’s the way that term got into common usage. Nobody in his right mind would think depreciation is not an expense.

Warren Buffett: It’s very much in the interest of Wall Street.

Charlie Munger: That’s why they did it. It made the multiple seem lower.

Warren Buffett: What’s amazing is the way it’s accepted actually. It just illustrates how people use language and sell concepts that work to their own use. 2% and 20% has the same sort of thing. As long as it can get sold, it will get sold.

Charlie Munger: Now they use it in the business schools. That is horror-squared. It’s bad enough when the thieves are using the term, but when it gets so common that the business schools copy it, that’s not a good result.

ウォーレン・バフェットはEBITDAのことを以前から問題視してレターでも取り上げていましたが、映像での発言によれば来年のレターでも触れる予定とのことです(ちなみに今春のレターでは、一言だけの指摘でした)。

2017年8月20日日曜日

2017年バークシャー株主総会(1)投資先の現状確認について

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今回からは、5月に開催されたバークシャー・ハサウェイ年次株主総会の質疑応答を、訳文付きで少しずつご紹介します(順不同)。引用元のテキストとしては、2年前と同じようにイングリッド・ヘンダーショット女史によるメモを主体にする予定です。

Berkshire Hathaway 2017 Annual Meeting Notes BY INGRID R. HENDERSHOT, CFA [PDF] (Hendershot Investments, Inc.)

またYahoo! Financeで公開されている映像も適宜参考にします。

Berkshire Hathaway 2017 Annual Shareholders Meeting Livestream (Yahoo! Finance 放映時間:7時間30分16秒)

なお引用元のテキストは長文のパラグラフ構成になっているので、読みやすさを目的として、適当と思われる意味段落ごとに改行を追加しました。

株式投資先の現状確認について

<質問> [バークシャーの投資先である]ウェルズ・ファーゴ(営業面でのスキャンダル)、アメリカン・エクスプレス(コストコ社向け事業の契約解除)、ユナイテッド航空(顧客サービス[暴力による乗客の強制降機])、コカ・コーラ(炭酸飲料の売上増の鈍化)の各社は問題を抱えていますが、バークシャーが株式投資をしている企業の現状確認にはどれだけ時間をかけていますか。

<バフェット> それらの企業の株は大量に保有しています。アメリカン・エクスプレスやウェルズ・ファーゴは、数百億ドル以上の時価総額へと見事に登りつづけています。それら各社は、わたしたちがとても好んでいる事業を手がけています。ただし、その性質はそれぞれ異なっています。

ユナイテッド航空の件ですが、実は4大航空会社全体に対する株式保有者として当社は最大ですが、4社はそれぞれ問題がありますし、反対にとても大きな優位を持った会社もあります。

アメリカン・エクスプレスの話をされましたが、第一四半期の報告書を読むとプラチナ・カードの話題が出ており、非常にうまくやっています。

そういった各社には、どれも競合他社がいます。株を買った際には、「会社に問題がまったくないだろう」とか「競争相手は全然いないだろう」とは考えていませんでした。各社を買ったのは、それぞれが非常に強力な力を持っていると考えたからです。業界で占めている地位も気に入っていました。持続可能な競争優位がどこにあるのか、わたしたちは調べることにしています。非常に良い事業を手にすることができたとしても、それを奪おうとする競合他社がたくさんいます。そこで、競合他社を撃退できるかどうか、その企業や製品や経営陣が持つ能力について判断をくだすわけです。それらの企業が消え去ることはないでしょう。特定の会社名は出しませんが、そういった各社は非常によい位置にあります。

もしすばらしい事業を手にできれば、たとえシーズ・キャンディー社のような小さな会社であっても、基本的には経済的な城をもっていると言えます。しかし資本主義の社会では、他者がその城をうばいとろうとします。城を護るために、さまざまな方法でその周りに濠(moat)を築きたいと考えるでしょう。そして城内には、襲撃者を撃退する際にひどく頼りになる騎士にいてほしいと望むでしょう。しかし、襲撃者が立ち消えることもないでしょう。

コカ・コーラ社は西暦1886年に創業しました。アメリカン・エクスプレス社の始まりは1851年か1852年です。ウェルズ・ファーゴが何年の創業だったかわかりませんが、アメリカン・エクスプレスはウェルズ・ファーゴによって事業が開始されました。それらの企業は長い間にわたってたくさんの挑戦がありました。当社の保険事業にも挑戦がありました。しかし当社にはトニー・ナイスリーとアジート・ジェインのようなリーダーがいます。彼らはバークシャーの価値を何百億ドルも増やしてくれました。保険業界でも競争は常にあります。襲撃者を撃退するために、さまざまな手を打つ必要があります。

たしかご質問の本題は、「投資先の現状を確認するためにどれだけ時間をかけるか」というものでしたね。わたしは毎日やっていますし、チャーリーもそうです。

<マンガー> 言い加えることは何もないですね。(笑)

<バフェット> 話に加わらないようですから、今度から給料を減らしましょう。(笑)

(PDFファイルのp.6。Yahoo! Finance映像では50:00過ぎ)

REVIEWING STOCK INVESTMENTS

Q. Given issues at Wells Fargo (sales scandal), American Express (loss of business with Costco), United Airlines (customer service) and Coca-Cola (slowing soda sales), how much time is spent reviewing Berkshire stock investments?

Warren Buffett: Those are very large holdings. American Express and Wells Fargo, you are getting up well into the high tens of billions of dollars. Those are businesses that we like very much - they have different characteristics.

United Airlines, we are the largest holder of the four largest airlines, but all businesses have problems and some of them have very big pluses.

You mentioned American Express. If you read their first quarter report, they talk about their platinum card, it is doing very well.

There's competition in all of these businesses. We didn't buy them with the idea that they would never have problems or never have competition. We bought them because we thought they had very strong hands. We liked their position. We do look to see where they have durable competitive advantages. If you've got a very good business, you will have plenty of competitors who will try to take it away from you. Then you make a judgment as to the ability of your particular company and product and management to ward off the competitors. They won't go away. I'm not going to get into the specific names. Those companies are very well positioned.

If you have a wonderful business, even if it's a small one like See's Candies, you basically have an economic castle. In capitalism, people are going to try to take away that castle from you. You want a moat around it protecting it in various ways, and you want a knight in the castle that's pretty darn good at warding off marauders. There will be marauders that will never go away.

Coca Cola was established in 1886, American Express was started in 1851 or 1852, Wells Fargo, I don't know what year they started -- American Express was started by Wells Fargo as well. These companies had lots of challenges over the decades. Our insurance business had challenges, but we have leaders like Tony Nicely and Ajit Jain, who has added tens of billions of dollars of value to Berkshire. There will always be competition in insurance. There are various things to do to ward off the marauders.

The specific question was how much time is spent reviewing our investments? I do it every day.

Charlie Munger: I don't think I have anything to add to that either.

Warren Buffett: We will cut his salary if he doesn't participate.

2017年8月16日水曜日

インデックス投資も同じ道を帰る(ハワード・マークス)

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前回につづいて、ハワード・マークスによるパッシブ投資に関する話題です。(日本語は拙訳)

パッシブ投資が低額の手数料や経費ゆえに魅力的であるということは、つまりファンドの組成者は規模の大きさを強調しなければなりません。インデックス・ファンドよりも高い手数料を得るとともに利益のあがる規模に到達させようとして、ETFのスポンサーは「さらにスマート」で、しかも厳密にはパッシブでない媒体へと変更することを考えました。それゆえにETFを組成する際に、株式の分類(バリュー型か成長型か)や特性(ボラティリティーが低いか高いか)、あるいは業種や地理的な位置といった、諸々の特殊な切り口による領域からの要求を満たすようにしたのです。「成長型でいてバリューがあり、投資先として優良な企業で、株価のボラティリティーは小さく、モメンタム志向である」、これらすべてを求める人に応じたパッシブ型ETFも複数存在します。極端なところでは、次のような企業へパッシブに投資するファンドから選べるようにもなりました。経営陣の男女比に偏りが少ない企業、「聖書的責任投資」に適合した企業[=聖書の教えを遵守した企業への投資]、そして医療マリファナ、肥満解消、ミレニアル世代向け、ウィスキー及び蒸留酒といった分野に注力する企業、です。

しかし、投資を実行する媒体がそれほど狭い領域に焦点を当ててしまうと、「パッシブ」という言葉にはどのような意味があるのでしょうか。広汎な領域にわたるインデックスから逸脱すれば、まず定義の上で支障がありますし、さらに非パッシブな個別の判断が必要になってきます。個別要因を反映した保有株式を誇張するパッシブなファンドは、「スマート・ベータ・ファンド」と呼ばれています。しかし今日ではてんで尊敬されないアクティブ志向の運用者よりも、それらの株式を選択する規則を決めた人のほうが若干でもスマート(賢い)とは、一体だれが言えるのでしょうか。これはすなわち、先述したブレグマン言うところの「語義的投資」です。つまり、「株式を選択する理由は、貼り付けられたラベルをもとにしており、定量的分析によるものではない」という意味です。上述した特性のうちの多くを株式が有しているかどうか判断する絶対的基準はないことになります。

「スマートな」商品が商業的規模に達してほしいと組成者が考えている場合、「時価総額が最大規模であり、かつ流動性がもっとも高い諸々の株式」に大きく依存しがちな点が重要です。たとえばETF内にアップル社の株式が含まれていれば、実に大きな規模のファンドとなり得ます。それゆえに今日では、テクノロジー株や成長株、バリュー株、モメンタム志向、大型株、優良企業株、低ボラティリティー、配当株、レバレッジ株を看板に掲げている各種のETFには、アップル株が含まれています。

以下の文章は、バロンズ誌が今月(7月)早々の記事で触れねばならなかった見解です。

時価総額加重平均型のインデックスでは、買い手は個別の選択をせずに、すでに比重過多な(そして割高であることも多い)銘柄で満たしている。一方、比重の小さい銘柄は無視されたままである。これでは「安く買って、高く売る」の反対だ。

このところ上位の成績をおさめている銘柄は、時価総額を増大させながら、ファンドの大きなポジションを占めるようになっています。このことは、「ETFに資本が集まった際にはそれらの銘柄を大量に買い付けねばならず、株価上昇をさらに煽る」ことを意味します。それゆえに現在つづいている上昇局面では、パッシブ投資を実行する媒体の一部が自動的に買い付けるがために、構成比率が大きくて流動性の高い大型銘柄がその恩恵を受けてきました。単に割高だからといって株式購入をとどめる選択肢を有していないからです。

西暦2000年のテクノロジー株と同様、永久機関のようにみえるこの現象が、永久に働き続けることはないでしょう。もし[インデックス・]ファンドがそれらの株式をまさに放出すれば、それゆえにETFでも同じことが起こり、過度なまでに買われてきた銘柄は、過度なまでに売られる定めとなります。そして、市場が収縮する時期に売却しなければならないとしたら、過度なまでに保有している大人気銘柄を買ってくれる相手を見つけるには、インデックス・ファンドやETFは一体どこを探せばいいものでしょうか。このようにパッシブな買い付けによって生じた価格上昇は、結局は循環的なものであって永続しないだろうと思います。

最後にもうひとつ、株式市場におけるシステミックなリスクを考慮せねばなりません。ブレグマン言うところの「インデックス真っ盛りの、大規模かつ大混雑したモメンタム売買」です。S&P指数上昇に寄与する割合をますます増加させているのは、一握りの銘柄、つまりFAANG銘柄とその他若干です。つまり、株式市場の健全さが過大評価されている可能性があります。

上述したすべての要因が、パッシブな媒体、特にスマート・ベータETFが持つと考えられている有効性に対して疑問を投げかけています。

・「アップル社の株は安全株なのか。それとも、このところ好調な成績をおさめている株なのか」。その違いについて、きちんと思案している人がいるのでしょうか。
・異なるやり方を標榜している種々のパッシブな媒体に対して資金を投じている人は、自身の期待している分散効果や流動性や安全性を確保できているのでしょうか。
・個々の保有銘柄やポートフォリオ構成について慎重に分析することもなく、意思決定の対象にもせず、さらには価格によらず買い付けを実行する。そのようなプロセスへ投資家がこぞって手持ちの資金を投じる実態について、何を考えたらよいのでしょうか。

The low fees and expenses that make passive investments attractive mean their organizers have to emphasize scale. To earn higher fees than index funds and achieve profitable scale, ETF sponsors have been turning to "smarter," not-exactly-passive vehicles. Thus ETFs have been organized to meet (or create) demand for funds in specialized areas such as various stock categories (value or growth), stock characteristics (low volatility or high quality), types of companies, or geographies. There are passive ETFs for people who want growth, value, high quality, low volatility and momentum. Going to the extreme, investors now can choose from funds that invest passively in companies that have gender-diverse senior management, practice "biblically responsible investing," or focus on medical marijuana, solutions to obesity, serving millennials, and whiskey and spirits.

But what does "passive" mean when a vehicle's focus is so narrowly defined? Each deviation from the broad indices introduces definitional issues and non-passive, discretionary decisions. Passive funds that emphasize stocks reflecting specific factors are called "smart-beta funds," but who can say the people setting their selection rules are any smarter than the active managers who are so disrespected these days? Bregman calls this "semantic investing," meaning stocks are chosen on the basis of labels, not quantitative analysis. There are no absolute standards for which stocks represent many of the characteristics listed above.

Importantly, organizers wanting their "smart" products to reach commercial scale are likely to rely heavily on the largest-capitalization, most-liquid stocks. For example, having Apple in your ETF allows it to get really big. Thus Apple is included today in ETFs emphasizing tech, growth, value, momentum, large-caps, high quality, low volatility, dividends, and leverage.

Here's what Barron's had to say earlier this month:

With cap-weighted indexes, index buyers have no discretion but to load up on stocks that are already overweight (and often pricey) and neglect those already underweight. That's the opposite of buy low, sell high.

The large positions occupied by the top recent performers - with their swollen market caps - mean that as ETFs attract capital, they have to buy large amounts of these stocks, further fueling their rise. Thus, in the current up-cycle, over-weighted, liquid, large-cap stocks have benefitted from forced buying on the part of passive vehicles, which don't have the option to refrain from buying a stock just because its overpriced.

Like the tech stocks in 2000, this seeming perpetual motion machine is unlikely to work forever. If funds ever flow out of equities and thus ETFs, what has been disproportionately bought will have to be disproportionately sold. It's not clear where index funds and ETFs will find buyers for their over-weighted, highly appreciated holdings if they have to sell in a crunch. In this way, appreciation that was driven by passive buying is likely to eventually turn out to be rotational, not perpetual.

Finally, the systemic risks to the stock market have to be considered. Bregman calls "the index universe a big, crowded momentum trade." A handful of stocks - the FAANGs and a few more - are responsible for a rising percentage of the S&P's gains, meaning the stock market's health may be overstated.

All the above factors raise questions about the likely effectiveness of passive vehicles - and especially smart-beta ETFs.

- Is Apple a safe stock or a stock that has performed well of late? Is anyone thinking about the difference?
- Are investors who invest in a number of passive vehicles described in different ways likely to achieve the diversification, liquidity and safety they expect?
- And what should we think about the willingness of investors to turn over their capital to a process in which neither individual holdings nor portfolio construction is the subject of thoughtful analysis and decision-making, and in which buying takes place regardless of price?

2017年8月12日土曜日

インデックス投資において考慮すべき点(ハワード・マークス)

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ハワード・マークスの最新レターからもうひとつ、インデックス・ファンドなどのパッシブ投資に関する話題をご紹介します。今回は、彼の示す小気味よい考察に啓発されました。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

パッシブ投資及びETFについて

50年前になりますが、シカゴ大学の[経営]大学院に到着してすぐに、「市場効率性」のおかげで次のことを教わりました。第一に、資産価格はリスク調整後の利回りが妥当となるように決定されること。第二に、それに対する例外を一貫して見つけ続けられる者はいないこと、です。言い換えれば、「市場に勝つことはできない」とするものでした。私たちを教える先生たちはさらに、「各銘柄を少数ずつ買い付けることで、銘柄選定の専門家を上回る負けしらずの低コストな手段ができる」というアイデアを考え出しました。

その示唆を実践に移した人がジョン・ボーグルです。前年にバンガードを創設していた彼は、1975年に「ファースト・インデックス投資信託」を始めました。これが、商業ベースの大きさに達した最初のインデックス・ファンドです。S&P500を模倣するように設計されたその媒体は、のちに「バンガード・500・インデックス・ファンド」と改名されました。

インデックス連動あるいはパッシブ投資の考えはその後40年の間に徐々に成長し、2014年には株式投資信託における預かり資産の20%を占めるまでになりました。この10年間ほどはアクティブ運用者が概して劣った成績に甘んじていることや、ETFつまり売買の手間をより簡素にしてくれた上場投資信託が創設されたことを考慮すれば、アクティブ投資からパッシブ投資への移行は加速してきました。今日では強力な潮流となり、株式投信における全資産の37%を占めるまで拡大しています。この10年間にインデックス・ファンドやETFに流入した資金は、1兆4千億ドルでした(それに対して、アクティブ運用型の投資信託からは1兆2千億ドルが流出しました)。

投資におけるあらゆる流行と同様、パッシブ投資は次のような長所ゆえにあたたかく歓迎されています。

・ここ10年間前後をみると、パッシブなポートフォリオの成績がアクティブ投資を上回っていたこと。
・パッシブ投資であれば、インデックスに負けないことが保証されていること。
・パッシブな仕組みにかかる手数料や経費はずっと安価であり、アクティブ型の運用に対して永続的な優位を確立できること。

こういったことは、パッシブ投資やインデックス・ファンドやETFが不敗を企図したものだと述べているのでしょうか。いいえ、まったくもって違います。

・パッシブ投資家は「引けを取る」リスクからは保護されるものの、それと同時に「上回る」可能性を放棄することになる。
・アクティブ投資家の一部で近年の成績が平均に届かなかったことが、永続的ではなくて循環的なものだったことが明かされるかもしれない。
・この数年間の所産としてETFが約束している流動性は、特に高利回り債のような流動性の低い領域に投資するものほど、大規模な弱気相場での試練を受けていない。

さらに何点か、考慮に値することがあります。

まず、パッシブ投資という知恵がどこから生じたものなのか、思い出してほしいと思います。それは、「アクティブ投資家のとる行為が、妥当な資産価格を導いている」ことに信を置く点からです。だからこそ、割安なものが見当たらないことになります。しかし、株式投資の過半数がパッシブな運用によるものとなったら、一体どうなるでしょうか。おそらく価格は自由になって「妥当な水準」から発散し、割安銘柄(及び割高銘柄)が現在よりもありふれたものとなるに違いありません。それがすなわち「アクティブ運用者が勝利できる」約束とはならないものの、彼らの努力が実を結ぶために必要な条件を明らかに満たすことでしょう。

当社の顧客である年金基金で投資担当役員を務めている方から、次の質問を受けました。「うちの財務担当役員が提案してきたのですよ。アクティブ運用者はみんな放り出して、全資産をインデックス・ファンドやETFに投じようと。どうしたものですかね」。私からは単純な返答をしました。「ではその方に質問してみてください。投資する資産がどれだけの金額であれば、それを分析検討する者が皆無であっても、安心していられますか、と」。

「バスケット方式による機械的投資」によって、数兆ドルの資金が盲目的に動かされています。この呼び名は、ホライゾン・キネティクス・ファンドの[共同創業者である]スティーブン・ブレグマンが付けたものです。銘柄に対する価値評価に関してETFが疑問を抱くことはありません。すなわちファンダメンタルを分析する者がいないため、価格発見の面でなにも寄与しません。パッシブ投資へ資金がさらに移動するようであれば、アクティブ運用者のもとで働くアナリストの数は減少するでしょう。しかし同時に、パッシブ型ファンドのポートフォリオ構成を司るルールをだれが決めるのか、それについても思いを巡らせるべきです。

(この項つづく)

Passive Investing/ETFs

Fifty years ago, shortly after arriving at the University of Chicago for graduate school, I was taught that thanks to market efficiency, (a) assets are priced to provide fair risk-adjusted returns and (b) no one can consistently find the exceptions. In other words, "you can't beat the market." Our professors even advanced the idea of buying a little bit of each stock as a can't-fail, low-cost way to outperform the stock-pickers.

John Bogle put that suggestion into practice. Having founded Vanguard a year earlier, he launched the First Index Investment Trust in 1975, the first index fund to reach commercial scale. As a vehicle designed to emulate the S&P 500, it was later renamed the Vanguard 500 Index Fund.

The concept of indexation, or passive investing, grew gradually over the next four decades, until it accounted for 20% of equity mutual fund assets in 2014. Given the generally lagging performance of active managers over the last dozen or so years, as well as the creation of ETFs, or exchange-traded funds, which make transacting simpler, the shift from active to passive investing has accelerated. Today it's a powerful movement that has expanded to cover 37% of equity fund assets. In the last ten years, $1.4 trillion has flowed into index mutual funds and ETFs (and $1.2 trillion out of actively managed mutual funds).

Like all investment fashions, passive investing is being warmly embraced for its positives:

- Passive portfolios have outperformed active investing over the last decade or so.
- With passive investing you're guaranteed not to underperform the index.
- Finally, the much lower fees and expenses on passive vehicles are certain to constitute a permanent advantage relative to active management.

Does that mean passive investing, index funds and ETFs are a no-lose proposition? Certainly not:

- While passive investors protect against the risk of underperforming, they also surrender the possibility of outperforming.
- The recent underperformance on the part of active investors may well prove to be cyclical rather than permanent.
- As a product of the last several years, ETFs' promise of liquidity has yet to be tested in a major bear market, particularly in less-liquid fields like high yield bonds.

Here are a few more things worth thinking about:

Remember, the wisdom of passive investing stems from the belief that the efforts of active investors cause assets to be fairly priced - that's why there are no bargains to find. But what happens when the majority of equity investment comes to be managed passively? Then prices will be freer to diverge from "fair," and bargains (and over-pricings) should become more commonplace. This won't assure success for active managers, but certainly it will satisfy a necessary condition for their efforts to be effective.

One of my clients, the chief investment officer of a pension fund, told me the treasurer had proposed dumping all active managers and putting the whole fund into index funds and ETFs. My response was simple: ask him how much of the fund he's comfortable having in assets no one is analyzing.

As Steven Bregman of Horizon Kinetics puts it, "basket-based mechanistic investing" is blindly moving trillions of dollars. ETFs don't have fundamental analysts, and because they don't question valuations, they don't contribute to price discovery. Not only is the number of active managers' analysts likely to decline if more money is shifted to passive investing, but people should also wonder about who's setting the rules that govern passive funds' portfolio construction.

2017年8月8日火曜日

投資家が見せる、ある種の楽観(ハワード・マークス)

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前回ご紹介したハワード・マークスのレターの続きです。(日本語は拙訳)

強気相場を牽引するそれら最強銘柄の株価は、必ずや完璧な金額にまで到達します。しかし多くの場合、やがてはその企業の完璧さが幻想あるいは儚い(はかない)ものだったことがわかります。ニフティー・フィフティーに含まれていた「不敗銘柄」とされた企業のなかには、市場で生じた巨大な変化によって最終的には機能不全となった会社もありました。コダック、ポラロイド、ゼロックス、シアーズ、シンプリシティー・パターン(当時は自分の衣服を自身で裁縫する人が多かったのですが、わかりましたか)の各社です。それはまさしく、投資家の出した資金を蒸発させるためにも完璧でした。またそれだけではなく、成功していた企業の株価のほうも、より標準に近い倍率へと回帰しました。その結果、株式から得られる利益率は平均未満となったのです。

高い倍率へと株価が力強く上昇すると、少数の銘柄が強気相場における牽引役となります。しかしそのあとには価格の反転訂正がつづき、最大の損失を背負うことになる例がよくみられます。肯定的な雰囲気の中でものごとがうまく進んでいると、そのような展開になる可能性が難なく見逃されてしまうのです。

最後になりますが、「市場におけるテクニカルな要因のおかげで、牽引者たる株式を猛烈に買う行為が、終わることなく継続する」現象を説明する解釈がたびたび生じています。つまり「最高上昇率の銘柄がその座を保ち続ける」という意味です。たとえば1990年代終盤のテクノロジー銘柄のバブルの際には、投資家の間で次のような結論が下されました。

・株価が好調なため、その企業はこれからも資本を惹きつける。
・テクノロジー業界の企業及びその株式は最高の成績をあげているため、今後もまちがいなく新規購入資金における不釣り合いなまでの割合を惹きつける。
・テクノロジー株が際立った上昇率をみせたことで、さらに多くのテクノロジー銘柄が株式インデックスへ追加される。
・それによってインデックス・ファンドや隠れインデックス実践者は、購入資金のなかからこれまで以上の割合をテクノロジー株へと振り向ける必要が生じる。
・インデックスの利回りに遅れまいとして、ベンチマーク主導型のアクティブ運用者はテクノロジー株の保有割合を増やさざるを得なくなる。
・それゆえに、テクノロジー株が購入資金のなかで占める割合は増える一方で止むことをしらず、さらには平均成績を上回り続けることも確実である。

これをして、「好循環」あるいは「永久機関」と呼ぶ人がいるかもしれません。強気相場にあって、投資家の想像力を焚きつける種類の考えです。しかし「永遠に続く」と謳う論理は、ときにはそれ自身の重みゆえに、崩壊する定めにあります。西暦2000年がそうだったように。

投資において考慮すべき最も重要な点には、直観に反するものがたくさんあります。そのひとつが、「他のものを永久に上回りそうな市場やニッチやグループは存在しない」ことを理解できる力です。人間の性質から言って、「最高」とされるものはなんであれ、輝かしいファンダメンタルを有していることを考慮しても、行き過ぎた高値になる定めにあります。それゆえにファンダメンタルが現状維持であっても、高すぎる金額に達している株価の成績は平凡な数字になります。そして実は最高ではなかったことがわかったり、あるいは事業が失速し始めれば、ファンダメンタルの低下と株価倍率の減少が二重に襲いかかり、ひどく痛ましい事態がやってくるかもしれません。

"FAANG"の各社が抜群ではないとか、上にあげたような結末を迎えるであろうと言っているわけではありません。ただ、そういった企業が現在高い地位にあることが、「投資家が見せる、ある種の楽観」を示す兆候だと言っているだけです。これは、私たちが注視すべき点です。

The super-stocks that lead a bull market inevitably become priced for perfection. And in many cases the companies' perfection turns out eventually to be either illusory or ephemeral. Some of the "can't lose" companies of the Nifty Fifty were ultimately crippled by massive changes in their markets, including Kodak, Polaroid, Xerox, Sears and Simplicity Pattern (do you see many people sewing their own clothes these days?). Not only did the perfection that investors had paid for evaporate, but even the successful companies' stock prices reverted to more-normal valuation multiples, resulting in sub-par equity returns.

The powerful multiple expansion that makes a small number of stocks the leaders in a bull market is often reversed in the correction that follows, saddling them with the biggest losses. But when the mood is positive and things are going well, the likelihood of such a development is easily overlooked.

Finally, a rationale often arises to the effect that, thanks to market technicals, investors' powerful buying of the leading stocks is sure to continue non-stop, meaning they can't help but remain the best performers. In the tech bubble of the late 1990's, for example, investors concluded that:

- stocks were doing so well that they would continue to attract capital,
- since tech companies and tech stocks were the best performers, they were sure to continue attracting a disproportionate share of the new buying,
- the superior performance of the tech stocks would cause more of them to be added to the stock indices,
- this would require index funds and closet indexers to direct a rising share of their buying to tech stocks,
- in order to keep up with the returns on the indices, benchmark-conscious active managers would have to respond by increasing their tech stock holdings, and,
- thus tech stocks couldn't fail to attract an ever-rising share of buying, and were sure to keep outperforming.

You can call this a virtuous circle or a perpetual motion machine. It's the kind of thing that fires investors' imaginations in a bull market. But the logic that says it will work forever always collapses, sometimes just under its own weight, as was the case in 2000.

Many of the most important considerations in investing are counterintuitive. One of those is the ability to understand that no market, niche or group is likely to outperform the others forever. Given human nature, "the best" will always come eventually to be overpriced, even for their stellar fundamentals. Thus even if the fundamentals hold up, the stocks' performance from those too-high prices will become ordinary. And if they turn out not really to have been the best - or if their business falters - the combination of fundamental decline and multiple contraction can be really painful.

I'm not saying the FAANGs aren't great, or that they'll suffer such a fate. Just that their elevated status today is a sign of the kind of investor optimism for which we must be on the lookout.

2017年8月4日金曜日

最強銘柄が選出されるとき(ハワード・マークス)

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ハワード・マークスが新しいメモを7月末に公開していました。彼は2冊目の著作を現在執筆中で、来年刊行の予定だそうです。新刊で扱うテーマは「周期」で、今回のメモでもその種になる話題が含まれているとのことです。そのこともあったのでしょう、「いつもの2倍」ほどの長さになったメモは正味22ページあり、現状に対して彼が感じている想いやその元となる事実が、さまざまな観点から書き連ねてあります。彼は「未来を予測するものではなく、きざしを示すだけ」だと表明していますが、個人的にはそのほうがありがたいです。今回のメモは通読する価値があります。

さて今回からの投稿では、メモの一部をご紹介します。はじめに、"Super-Stocks"(最高の株式銘柄)と題した一節を取り上げます。原文は以下のリンク先にあります。(日本語は拙訳)

There They Go Again... Again [PDF] (Oaktree Capital Management)

最高の株式銘柄

強気相場というものは、株式のなかから「最強の銘柄」とされる一群が選出されることによって特徴づけられることがよくあります。一群の周囲をただよう魅惑的な伝説は、他の要因と相まって株価上昇の機運を支えます。その現象が極端な段階にまで達すれば、毎度のことながらも4ページ目に列挙したようなブームの際にみられる要素を、ある程度満たすようになります。たとえば以下のようなものです。

・「中断する術を持たない好循環」を信用すること。
・「企業の持つ本質的な強みを考慮すれば、株価が高すぎることはない」と確信すること。
・そのような肯定的見解を無制限に外挿することに対して、投資家みずからが疑念を抱かないこと。

現在起こっている循環をみると、"FAANG"(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、社名を変更してアルファベットとなったグーグル)によって代表されるテクノロジー企業の小集団へそれらの特徴が当てはまります。どの企業も秀でたビジネス・モデルを誇示し、市場では比類なきリーダーシップを露わにしています。ここでもっとも重要なのは、「各社は未来を手中にしており、それゆえにこれからも勝者たること必至」とみなされている点です。

好循環が続いている間は、たしかにその通りです。まさしく1960年代のニフティー・フィフティー銘柄がそうだったように。はたまた70年代の石油株や80年代のハードディスク会社、90年代のテクノロジー・メディア・通信会社がそうだったように。しかしそれらの時代には、次のようなことが生じました。

・予期せぬ形で環境が変化した。
・ビジネス・モデルの新規性ゆえに隠れていた欠陥が明らかになった。
・競争が激化した。
・卓越したコンセプトが事業運営上の弱さを招いた。
・企業のファンダメンタルがいかに優れていても、株価が割高となって巨額の損失をもたらした。

FAANGの各社は実にすばらしい企業で、急速に成長しています。また(競合が存在する領域では)、敵を粉砕しています。しかしながら、なかには利益率の高くない企業がありますし、売上高と比較して利益の伸びが鈍化している企業もあります。「明日の超優良企業」と断言できる会社もありますが、各社すべてがそうだと言えるでしょうか。向かうところ敵なしで、成功するのは絶対確実なのでしょうか。

そういった企業の株を投資家が購入する際の株価は、当該企業が現在あげている利益の30年分以上になるのが普通です。明らかな理由があるからこそ、少し先までの成長見通しに胸躍らせるのでしょうが、それでは長期的に見たときにその利益水準は持続するものでしょうか。利益に対して高い倍率の値段がついている株式の場合、その価値の多くは必然的に「長期」の位置を占めるわけです。[息子の]アンドリューの指摘では、iPhoneが世に出てからちょうど10年ですし、インターネットが広く使われるようになってから20年は経過していません。このことから次の疑問が浮かび上がります。「テクノロジーに資金を投じる投資家は、本当に未来を観通せるのか。それゆえに、長期的な収益力に関して抱いている楽観的な各種の仮定、それらが総合された購入金額に対してどれだけの幸福を感じたらよいのか」。もちろんですが、まだまだ若いそれらの企業にとって最上の時はこれからやってくることを、単純に意味しているだけなのかもしれません。

この話題に関する一節を、ある企業が株主向けに書いた1997年度のレターから引用します。

私たちは、数多くの重要な戦略的パートナーと長期的な提携関係を結びました。そのなかには、アメリカ・オンライン、ヤフー、エキサイト、ネットスケープ、ジオシティーズ、アルタビスタ、アット・ホーム、プロディジーの各社が含まれています。


上の文に出てくる「重要な戦略的パートナー」のうち、現在も意味のある形で存在している企業は何社あると思われますか(重要なのか、あるいは戦略的なのか、という疑問は別として)。正解は0社です(ヤフー社はその条件を満たしていないはずだと考えるのであれば、正解は1社となるでしょう)。この文章は、アマゾン社の1997年度の年次報告書から抜粋したものです。つまるところ、将来とは予測できないものであり、小さな欠陥に無縁なものや企業なぞ存在しないのです。(p. 6)

(この項つづく)

Super-Stocks

Bull markets are often marked by the anointment of a single group of stocks as “the greatest,” and the attractive legend surrounding this group is among the factors that support the bull move. When taken to the extreme - as it invariably is - this phenomenon satisfies some of the elements in a boom listed on page four, including:

- trust in a virtuous circle incapable of being interrupted;
- conviction that, given the companies’ fundamental merit, there’s no price too high for their stocks; and
- the willing suspension of disbelief that allows investors to extrapolate thse positive views to infinity.

In the current iteration, these attributes are being applied to a small group of tech-based companies, which are typified by “the FAANGs”: Facebook, Amazon, Apple, Netflix and Google (now renamed Alphabet). They all sport great business models and unchallenged leadership in their markets. Most importantly, they’re viewed as having captured the future and thus as sure to be winners in the years to come.

True as far as it goes … just as it appeared to be true of the Nifty-Fifty in the 1960s, oil stocks in the '70s, disk drive companies in the '80s, and tech/media/telecom in the late '90s. But in each of those cases:

- the environment changed in unforeseen ways,
- it turned out that the newness of the business model had hidden its flaws,
- competition arose,
- excellence in the concept gave rise to weaknesses in execution, and/or
- it was shown that even great fundamentals can become overpriced and thus give way to massive losses.

The FAANGs are truly great companies, growing rapidly and trouncing the competition (where it exists). But some are doing so without much profitability, and for others profits are growing slower than revenues. Some of them doubtless will be the great companies of tomorrow. But will they all? Are they invincible, and is their success truly inevitable?

The prices investors are paying for these stocks generally represent 30 or more years of the companies' current earnings. There are clear reasons to be excited about their growth in the near term, but what about the durability of earnings over the long term, where much of the value in a high-multiple stock necessarily lies? Andrew points out that the iPhone is just ten years old, and twenty years ago the Internet wasn't in widespread use. That raises the question of whether investors in technology can really see the future, and thus how happy they should be paying prices that incorporate optimistic assumptions regarding long-term earnings power. Of course, this may just mean the best is yet to come for these fairly young companies.

Here's a passage from one company's 1997 letter to shareholders:

We established long-term relationships with many important strategic partners, including America Online, Yahoo!, Excite, Netscape, GeoCities, AltaVista, @Home, and Prodigy.


How many of these "important strategic partners" still exist in a meaningful way today (leaving aside the question of whether they're important or strategic)? The answer is zero (unless you believe Yahoo! satisfies the criteria, in which case the answer is one). The source of the citation is Amazon's 1997 annual report, and the bottom line is that the future is unpredictable, and nothing and no company is immune to glitches.