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2018年9月28日金曜日

この良き時代に終わりは来ない(スティーブン・ローミック)

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バリュー・ファンドFPAのマネージャーであるスティーブン・ローミックが、少し前に第二四半期のコメントを公開していたので、ご紹介します。引用する話題は、今後の市場動向を占ったものです。この手の話題は疑念を抱きながら目を通すようにしていますが、今回取り上げるチャートはそれなりに信頼できると感じました。(日本語は拙訳)

Second Quarter 2018 Commentary (FPA Crescent Fund) [PDF]

下図における青色の線は、S&P500の10年平均収益率[過去10年間であげた総リターンの騰落率を年率換算した値]を示しています。一方で緑色(若草色)の線は、家計部門が保有する金融資産のうち株式投資が占める割合を示しています。ただしこちらは10年先に進めて描線するとともに、縦軸の天地を逆転させています。それによって、S&P500収益率との相関関係がいっそう明確になるように表現しています。


この図において緑色の線は、西暦2010年に最底辺に達しています。ただし先に述べたように縦軸が逆転しているので、実際には頂点に到達していました。さらにグラフを10年分先に進めて描いているので、40%ほどの保有率に達していたのは実のところ10年早く、2000年のことでした。これは言い換えれば、家計部門による株式の保有割合が頂点に達したのは2000年であり、収益率がやがてマイナス一桁の値になることを示唆していたのです。まさしくそのとおりになりました。

この図に示したように、家計部門における金融資産中の[株式]保有率と、市場平均があげる将来リターン率の間にみられる負の相関が、56年間にわたって存在してきたことがはっきりとみられます。

それでは、現在の家計部門が金融資産の面でとっているリスクの度合いは、将来についてなにを言わんとしているでしょうか。それはつまり、米国市場の想定リターン率が一桁前半の数値へ向かおうとしていることです(図中で緑色の線が右端へと向かっている箇所は、青色の線がそちらへ到達することを暗示しています)。(p. 6)

The blue line on this chart below shows the trailing 10-year return of the S&P 500. The green line shows household equity as a percent of household financial assets, shifted forward ten years and flipped upside-down to more clearly depict its correlation to the S&P’s return.

You can see the green line reaching its nadir in 2010. That was really the peak - remember, the chart is flipped. Since it’s also shifted forward ten years, that peak of about 40% really occurred 10 years earlier in 2000. In other words, household investment in stocks hit a high in 2000 and suggested that returns would be negative single digits and that’s what happened.

The inverse relationship between household ownership of financial assets and future market returns has clearly been present for 56 years.

So what does today’s household financial asset exposure suggest about the future? Current exposure suggests that the US market’s projected return will converge towards the [low single digits] (the green line data point to the far right of the chart suggests that the blue line will end up there.)”

大衆が正しかった例は稀有であり、今回も例外とはならないようです。株価が後退する時期には、上昇するときよりも速やかに下落するものです。「この良き時代に終わりは来ない」と投資家が考える時期は、「この苦難の時代が終わるとは思えない」と投資家が考える時期へと姿を変えるのです。(p. 10)

The Crowd is rarely right, and this time is unlikely to prove the exception. When stocks do decline, they tend to fall more quickly than they rise. The good times that investors think will never end morph into bad times that investors think will never end.

2018年9月16日日曜日

2018年バークシャー株主総会(17)若きバークシャー株主諸君に告ぐ

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バークシャー・ハサウェイ株主総会での質疑応答からおなじみの話題、「バフェット以後」についてです。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

22. マンガーいわく、「我らが立ち去った後でも、心を移さず、株を売らぬべし」

<ジョナサン・ブラント> いいですか。

<キャロル・ルーミス> わたしの番を飛ばしていますよ。

<ウォーレン・バフェット> ええと、キャロルを飛ばしましたか。

<キャロル> そうです。

<ウォーレン> それはすみません。

<キャロル> いいですよ。

<ウォーレン> はい、それではお願いします。

<キャロル> この質問は軽い話題ではないと思います。モントリオールのギデオン・ポラックさんからの質問です。

彼はこう訊ねています。「1965年にあなたが指揮をとり始めてからバークシャー・ハサウェイの様相が変わったことは、世間が広く認めるところだと思います。当時のバークシャーは北東部で織物を製造する会社でした。それが今では、フォーチュン500のうちの第4位に位置する企業となりました。

「それでは、これからの50年間ではどうなるのでしょうか。2068年までのバークシャーはどのような姿をしているか、ご意見を披露していただけますか」。

<ウォーレン> それはずいぶん先のことだと思います(笑)。

残念ですが、わたしにはわかりません。50年前のときにも、今のようになっているなどわかりませんでした。

つまり、ある種の原則に従っていくとは思います。しかしそのころには、わたしとは違った考えをする人たちを見つけだして、会社を任せていると思います。また世の中も違っていることでしょう。

ただし、「世界中のどの大企業に劣らず、株主のことを考える企業」であってほしいとは強く願っていますし、そうなるに違いないと思います。株主をパートナーとして扱うでしょうし、自分たちを利するものとして会社の資金を使おうと考えるのではなく、自分の資金とまったく同じように使うことを心がけると思います。それ以外のことがどうなるかは、知るすべはないでしょう。

チャーリーはどうですか。

<チャーリー・マンガー> 私からは、若手の株主諸君に申し上げたいですね。我々が消え去った後に、さまざまな友人からの導きにしたがって、みなさんがバークシャー株を売却し、別のものに取り組むのであれば、そのほうが悪い結果につながると思いますよ(笑)。

ですから、「そのまま信頼せよ」と申し上げましょう(拍手)。

まあ、すでにそうしてしまったご家庭も数多くあるでしょうが。

<ウォーレン> みなさんからこれほど称賛されたのですから、次からはわたしも彼と同じように答えることにします(笑)。


22. Munger: Keep the faith and don’t sell your stock when we’re gone

WARREN BUFFETT: Jonathan?

JONATHAN BRANDT: Hello ?

CAROL LOOMIS: You skipped me.

WARREN BUFFETT: Did I skip ? I skipped Carol?

CAROL LOOMIS: Yup.

WARREN BUFFETT: Oh. I’m sorry.

CAROL LOOMIS: OK.

WARREN BUFFETT: OK.

CAROL LOOMIS: This question, and I would concede it is not a small one, comes from Gideon Pollack of Montreal.

He says, “The world knows generally how the looks of Berkshire Hathaway have changed since you began to run the company in 1965. Berkshire was then a tiny northeastern, textile company. And now it is the number-four company on the Fortune 500.

“What about the next 50 years? Could you give us your view of what Berkshire looks like in 2068?”

WARREN BUFFETT: I think it’ll look a long way away. (Laughter)

No, the answer is I don’t know. And I didn’t know, 50 years ago, what it would like now, I mean -

It will be based on certain principles. But where that leads, you know, we will find out and we’ll have people that are thinking about different things than I am. And we’ll have a world that’s different. But -

We will be - I very much hope and believe that we will be - that we’ll be as shareholder-oriented as any large company in the world. We will look at our shareholders as partners and we will be trying to do with their money exactly what we’d do with our own, not seeking to get an edge on them. And who knows what else will be happening then?

Charlie?

CHARLIE MUNGER: Well, I want to talk to the younger shareholders in the group. Those of you who, after we are gone, sell your Berkshire stock and do something else with it, helped by your many friends, I think are going to do worse. (Laughter)

So I would advise you to keep the faith. (Applause)

By the way, some of that has already happened in many families.

WARREN BUFFETT: I’ll give his answer next time now that I see it get all of that applause. (Laughter)

ウォーレン以降のバークシャーがどうなるのか。以下の過去記事ではチャーリーがその予想を披露しています。

2014年度マンガーからの手紙(4)ウォーレン・バフェットが去った後

2018年8月20日月曜日

中国市場の未来は明るい(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーのインタビュー、前回分の投稿のつづきで、長期投資の話題です。赤字で強調した部分では、最重要な哲学にさりげなく触れています。(日本語は拙訳)

<質問者> かつてあなたは「誤った現象ばかりに投資家は目を向けている」とおっしゃいました。そのことについて、どう考えるべきなのでしょうか。真実とはどこにあるのでしょうか。真実にたどりつくにはどうすればいいのでしょうか。

<チャーリー・マンガー> 「市場には真実がある」と考える人が数多くいますね。「値段が動くことで、まさしく市場はなにかを訴えたがっている」と。しかし、バークシャー・ハサウェイやチャーリー・マンガーという人間は、資金を投じる際にそんな風には考えませんよ。我々が思い描くのは、その本源的価値がどれぐらいかであり、なにが取引にあがっているかです。そして「支払う金額以上に価値がある」と思えるときだけ買います。ですから我々は、割安になるのを待ちつづけ、そうなったときに買うことで、長期的な投資ができるように心がけているわけです。市場にいるあらゆるギャンブラー諸氏の様子に、目をやることもありません。私からすれば、彼らは泡沫にまみれていますね。そんな風にして金持ちになろうとするのは、愚かな時間の使いかたですよ。

<リー・ルー> 「真実とは、企業自体が持つ本来の価値である」と彼は答えました。これを理解することによってのみ、本当の儲けをあげることができます。価格の上下動だけを気にかけ、それらの変動に基づいて関連の投資をして儲けをあげるのは、非常に愚かな行動だというわけです。

<質問者> 中国では多くの投資家が、あなたやバフェットさんやリー・ルーさんを崇拝しています。それでは、まだ30年間の歴史しかない中国の資本市場が、御三方のような投資の達人を「生みだす」までに、どれほど時間がかかり、どのような条件が必要とされるでしょうか。

<チャーリー> 中国の市場は、投資で成功する者を数多く生みだしていくと思いますよ。中国人に満ちた香港は、投資家秩序に基づいた優れた証券市場と調和してきました。そのありようは今後何十年にもわたって中国本土全体にも広がり、信認の度合いを深め、規模を増大させていくでしょう。中国の証券市場や投資の取り組みは、長期間にわたって改善されていくと思いますね。当然ながら変動はあるでしょうが、しかし長期的な趨勢としては、ますます発展し、信頼を集め、価格も上昇していくことでしょう。

<リー・ルー> そちらの質問そのものに対する答えではないですが、「投資の達人は必ずや現れる」と彼はおっしゃっています。中国市場が、少しずつ良くなっていくだろうとも。

<チャーリー> 香港の中国人はこの50年間で金持ちになりましたね。彼らは短期志向の投機家やギャンブラーではなく、長期のうまい投資先をさがし求めた長期志向の投資家でした。投資先を手放さずに長期にわたって頑として保有しつづけました。香港在住の中国人を評したように、中国本土に対しても一言申し上げたいですね。成功するのは短期志向のギャンブラーではないと。長期で投資できるうまい対象を見出し、堅持しつづけることです。長期間にわたって、ですよ。

<リー・ルー> 香港における例は、中国の未来もうまく描いているかもしれません。大儲けできる人とは、当然ながら長期志向の投資家であり、短期志向のトレーダーではないでしょう。

(つづく)

Question: You said before most of what investors see are false phenomena. How should we think about that? Where is the truth then? How can we get to the truth?

Munger: A lot of people think there is such a thing it’s the truth in the market. And market tells you something just by bouncing around. That is not the way Berkshire Hathaway or Charlie Munger invests money. We have a view as to what the intrinsic value is and what is being traded. And we only buy it when we think it’s worth more than we are paying. So we are trying to make a long-term investment by waiting for something to be underpriced and then buying it. And we don’t give a damn about all those gamblers in the market. To me they are so much froth. It’s a foolish way to spend your time if you want to get rich that way.

Li Lu: He answered what the truth is - it’s the real value of the company itself. Only by understanding this can we really make money. For those who only care about price fluctuations and make relevant investments based on such fluctuations, making money this way is a very stupid action.

Question: In China, many investors regard you, Mr. Buffett and Mr. Li Lu, as their idols. Could you talk about how much time it would take the Chinese capital market, which only has 30 years of history, and under what conditions would the Chinese capital market “produce” investment masters like you three.

Munger: Well the Chinese market is going to create a lot of successful investors. If you look at Hong Kong, which has been full of Chinese people, meshed in a capitalist order with good securities market. That is going to spread all over China and increase in respectability and size for decades ahead. I anticipate the Chinese securities market and investing practices will get better and better for a long, long time. There will be fluctuations to be sure, but the long-term trend will be toward more achievement and more respectability and higher prices.

Li Lu: He didn’t answer your question directly, but he’s saying some investment masters will definitely appear. The Chinese market will get better step by step.

Munger: The Chinese, who’ve got rich in Hong Kong over the last 50 years, are not the short-term traders and gamblers. These have been the long-term investors who’ve sought out good long-term investment and stubbornly held them for a long period of time. And just as I said words for the Chinese in Hong Kong, a little words for the Chinese on the mainland. It’s not the short-term gambler that’s good. It’s identifying the good long-term investment and sticking with it. For a long term.

Li Lu: The example of Hong Kong can also reflect well the future of China. Those who will make big money undoubtedly will be the long-term investors, rather than short-term traders.

2018年8月16日木曜日

人類の余命(『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』)

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最近読み終えた本『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』は、個人的には引きこまれてしまう類の本で、全編をとおして楽しんで読めました。本書では、異星人(本書では地球外文明、ETCと記す)の存在を裏付ける現実的証拠がまだみつからない理由について、さまざまな分野からあげられた説明を科学的かつわかりやすく再構成しています。また14年前に刊行された邦訳の増補改訂版ということで、新しい科学的発見や知見が盛り込まれています。さらには、それぞれの理由に対して著者自身の見解が付け加えられています。話題は物理学にとどまらず、ハードサイエンスの各部門(地球科学、生物学、化学)や数学そしてSF小説に及んでおり、そういった専門用語の訳文の正確さも十分だと感じました(単純な校正モレは散見されます)。ただし「人類や地球生物の未来は、多難で暗いものである」と繰り返し説明されるので、心配が募りやすい方にはお勧めできません。

今回ご紹介するのは、本書で取り上げられていた思考法についてです。この「デルタt論法」と呼ばれる思考法は単純ながらも強力で、読んでいて感心の一言でした。ただし個人的に感銘を受けた点は、この論法自体や具体的な効力ではなく、ものごとを形而上的にとらえてモデリングする能力のほうです。

1969年、学生時代のリチャード・ゴットはベルリンの壁を訪れた。休暇でヨーロッパ旅行をしている途中で、ベルリンの壁を見に行くのも予定の一つだった。その前にはたとえば4000年前にできたストーン・ヘンジを見て、それにふさわしい感動を得た。ベルリンの壁を見たとき、この冷戦の産物はストーンヘンジほど長い間立っているのだろうとかと思った。冷戦時代の外交戦略の詳細に通じ、両陣営の相対的な経済力・軍事力を知る立場にあった政治家なら、根拠のある推定をしたかもしれない(政治家の実績から判断すれば、それは間違っていただろうが)。ゴットにはそんな専門知識はなかったが、次のような推論をした。

まず、自分がいるのは、壁が存続している間のランダムな時点だ。壁が築かれる(1961年)のを見ているのではなく、壁が壊されるのを見ているのでもない(今は1989年にそうなったことはわかっているが)。ただ休暇でそこにいただけだ。したがって、壁が立っている期間を4つに分けたまん中の2つ分の間に壁を見ている可能性が50パーセントだと推論を進めた。自分がその期間の最初にいるなら、壁は寿命の4分の1の間存在しており、まだ4分の3の寿命が残っていることになる。言い換えると、壁はこれから、すでに存在している期間の3倍の期間続くことになる。自分がそこにいるのが同じ期間の最後だとしたら、すでに寿命の4分の3が経過しており、残りは4分の1だけとなる。言い換えると、壁がこれから存在しつづけるのは、これまで存在してきた期間の3分の1だけだということだ。ゴットが見たときの壁は、できて8年だった。そこで1969年夏のゴットは、壁はあと2年と3分の2(8*1/3)から24年(8*3)立っている可能性が50パーセントあると予想した。あのテレビの劇的な映像を見た人なら思い出すように、壁が壊されたのは、ゴットが訪れてから20年後のことだった--予測の範囲内に収まる。(中略)


物理学で予測をするときは、50パーセントの可能性ではなく、95パーセントの可能性で考えるのが標準となる。ゴットの論法はそのまま使えるが、数字が少し変わる。自分が何かの事物を見ていることに特別のことがない場合、その事物はその時点での年齢の39分の1から39倍の間続く可能性が95パーセントある。(p. 276)

デルタt論法を使ってコンクリートの壁や人間関係の寿命を推定するのは楽しいが、それはもっとゆゆきしきことの推定にも使える。ホモ・サピエンスの余命だ。人類は誕生して17万5000年ほど。ゴットの規則を適用すると、人類の残りの寿命はおよそ4500年から680万年である可能性が95パーセント。それからすると、人類の寿命は18万年ないし700万年程度ということになる(哺乳類に属する種の平均寿命は200万年ほどと言われる。いちばん近い近縁種のネアンデルタール人は20万年だったらしい。やはりヒト科に属し、人類の直接の祖先かもしれないホモ・エレクトゥスは、140万年続いたかもしれない。するとゴットの推定は、種の寿命についても、確かにおおよそは正しいと言える)。(p. 278)

蛇足ですが、この手の話題を進めると「地球外への移住」にも行きつきますが、そこで思い当たるのはやはりイーロン・マスクです(過去記事)。最近は欠点が目立つようになってきましたが、新たな世界を切り開けるのは彼のような変人だろう、と個人的には考えています。「世界を動かすのは凡人であり、世界を変えるのは変人である」というのが私の持論です。なお「変人」という言葉に語弊を感じられる方は、「神経発達症を強く有している者」と読みかえてください。

2018年3月3日土曜日

2017年度バフェットからの手紙(6)大暴落が待っている

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2017年度「バフェットからの手紙」から、前回につづく文章です。(日本語は拙訳)

短期でみたときに価格が無秩序に変動するせいで、長期的な価値の成長ぶりを覆い隠す鮮明な例が、バークシャー自身にもあります。この53年間において当社は利益を再投資し、複利が持つ魔法の力を利かせつづけることで、会社の価値を高めてきました。年を追うごとに前進してきました。しかしバークシャー株のほうは、実に激しい下落を4回経験しました。その惨状ぶりは次のとおりです。

期間高値安値下落率
1973年3月~1975年1月9338-59.1%
1987年10月2日~1987年10月27日4,2502,675-37.1%
1998年6月19日~2000年3月10日80,90041,300-48.9%
2008年9月19日~2009年3月5日147,00072,400-50.7%

「借入金に頼って株を保有してはならない」、その理由を説明するために、わたしにはこれ以上のものを取りそろえることはできません。短期的には、株価がどれだけ下落するのか言い当てる術はありません。借入れた金額が少なく、下落市場によって持ち株が即座には脅かされなくても、おぞましい見出しや絶句するような解説に触れれば、心中穏やかではいられないかもしれません。平静を保てなければ、適切な判断は下せないものです。

当社(や他社)の株式はこれからの53年間に、上の表と同じような下落に見舞われることでしょう。しかし、それがいつ起こるのかは誰にもわかりません。いつであろうと信号機が黄色を飛ばして、青から赤に変わるかもしれないからです。

しかし大幅な下落が生じたときに、債務に縛られていない者の手にはめったにない機会がやってきます。そのときこそ、[文筆家の]キップリングが詩作『もしもー』にしたためた文章を噛みしめるときです。

もしも、どんな君のことにも周りが心乱しても、落ち着いていられれば、
もしも、辛抱強い君がずっと飽きずに待っていられれば、
もしも、君の頭で考えられて、それ自体を目的と取り違えなければ、
もしも、だれからも疑われるときに己を信じていられれば、
世界は君のものであり、すべてはそこにあるのだから。

(PDFファイル9ページ目。この節、おわり)

Berkshire, itself, provides some vivid examples of how price randomness in the short term can obscure long-term growth in value. For the last 53 years, the company has built value by reinvesting its earnings and letting compound interest work its magic. Year by year, we have moved forward. Yet Berkshire shares have suffered four truly major dips. Here are the gory details:

Period High Low Percentage Decrease
March 1973-January 1975 93 38 (59.1%)
10/2/87-10/27/87 4,250 2,675 (37.1%)
6/19/98-3/10/2000 80,900 41,300 (48.9%)
9/19/08-3/5/09 147,000 72,400 (50.7%)

This table offers the strongest argument I can muster against ever using borrowed money to own stocks. There is simply no telling how far stocks can fall in a short period. Even if your borrowings are small and your positions aren’t immediately threatened by the plunging market, your mind may well become rattled by scary headlines and breathless commentary. And an unsettled mind will not make good decisions.

In the next 53 years our shares (and others) will experience declines resembling those in the table. No one can tell you when these will happen. The light can at any time go from green to red without pausing at yellow.

When major declines occur, however, they offer extraordinary opportunities to those who are not handicapped by debt. That’s the time to heed these lines from Kipling’s If:

“If you can keep your head when all about you are losing theirs . . .
If you can wait and not be tired by waiting . . .
If you can think - and not make thoughts your aim . . .
If you can trust yourself when all men doubt you . . .
Yours is the Earth and everything that’s in it.”

備考です。今回の「バークシャー株暴落」の話題は、昨年開催されたデイリー・ジャーナル社の株主総会で、チャーリー・マンガーも口にしていました(過去記事)。この経験は彼らにとって錨(いかり)のような役割を果たしているのかもしれませんね。

もうひとつ、こちらは蛇足です。上の文中で暴落時の日付が記されていたので、自分の売買記録を確認してみました。バークシャーのB株、2009年3月5日に購入していました。分割前の株価で2,339.75ドルでした。ただし、その数日後の3月9日に買った株のほうが安かったです。こちらは2,302.9ドルでした。ウォーレンの日付と若干ずれているのは、B株だったからか、それとも取引時間中だったからか。どちらにせよ、「バイ・アメリカン」と宣言したウォーレンが正しかったと認められるのは、まだ先のことでした。

2018年2月8日木曜日

かつて私も早すぎた(ハワード・マークス)

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前回の投稿につづいて、ハワード・マークスの最新メモから、これで最後の引用です。(日本語は拙訳)

経済活動が好調な時期には、リスクが頭をもたげることはなく、リスクを取る者が大儲けします。そしてリスクの小さな別の候補はリターンの魅力に欠けるため、投資家は良識を脱ぎ捨ててしまい、「値段が高いことは、自分にとって問題ではない」と判断します。これは往々にしてあやまちとなりますが、そうなるまでに何年もかかることがあります。

箔をつけるために、その見方を支持する文章を引用します。

「マクロ的環境が今後も良好である限り、株価は『発行者の利益成長、それゆえ本源的価値の成長』を大きく上回る勢いで引き続き上昇しうる」、そのような見解に基づいているせいか、市場はきわめて快適な場所のようです。また市場参加者の中で適切な価値評価水準、つまり資産とその価格を繋ぐものに気をとめる者はごくわずかです。そのような状況が重なっていることから、私たちは「いずれ必ずや悪い結末に至る」と考えています..。

安定した経済や、低水準の金利、莫大なキャッシュフロー、楽観視著しい投資家、といった今日みられる諸要素が組み合わさることで、「巧拙どちらの投資対象にも資本は向けられ、『リスクは敬遠すべきもの』とはほとんど捉えられることのない」環境が創り出されました。

顧客向けのメモ「あなたは投資家、それとも投機家?」の中で、私がこの文章を書いたのは1997年のことです。現在の私と同じように、当時の私も慎重でした。そして「実はそれで正しかった」、そうなるまでに3年近くかかりました。これは「書いたときには間違っていた」という意味ではありません..。時期が早すぎたのです。(p. 4)

At times when the economy does well, risk doesn’t rear its head, risk-takers prosper and the returns on low-risk alternatives are unattractive, investors tend to drop their prudence and conclude that high prices aren’t a problem in and of themselves. This usually turns out to be a mistake, but it can take years.

For authority, I’ll cite a passage that seconds that view:

The market seems extremely comfortable with the proposition that as long as the macro-environment remains benign, stocks prices can continue to appreciate at rates that far outstrip the growth of their issuers’ profits, and thus the growth of their intrinsic value. Few market participants seem concerned about appropriate valuation levels - the relationship between assets and their prices - and this is a condition that we think must eventually have negative consequences. . . .

Today’s combination of a stable economy, low interest rates, enormous cash flows and strong investor optimism has created a climate in which capital is available for both good investments and bad, and in which risk is rarely seen as something to be shunned.

I wrote that in 1997, in a clients-only memo entitled “Are You an Investor or a Speculator?” I was cautionary then, like I am now. And it took almost three years for that to turn out to be correct. That doesn’t mean it wasn’t correct when it was written . . . just early.

「早すぎる」予測については、以下の過去記事でも取り上げています。

・連続正解数1回(ハワード・マークス)
・早すぎることと誤っていることが区別できないとき(セス・クラーマン)

2018年1月20日土曜日

金利からみた現在の株価水準(ウォーレン・バフェット、2017年10月)

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前々回の投稿で、現在の全般的な株価に対するウォーレン・バフェットの見解をご紹介しました。今回は、その際に触れた「3か月ほど前のインタビュー」から一部をご紹介します。(日本語は拙訳)

Chairman & CEO of Berkshire Hathaway Warren Buffett Speaks with CNBC’s Becky Quick on “Squawk Box” Today (トランスクリプト)

Watch CNBC's full interview with Warren Buffett (映像)

<ベッキー・クイック> (前略) 市場はと言えば、あまり反応がないようです。潜在的に悪いニュースをどれも無視しています、ダウ工業平均株価は昨日さらに記録を更新して、今では8四半期連続で上昇しています。このような市場の状況を妥当だとお考えですか。現在の市場がくだしている評価は、理にかなったものなのでしょうか。

<ウォーレン・バフェット> ええ、現在の金利水準からみると、市場の評価は妥当です。これはつまり、いずれ戻るところに照らし合わせて資金をどの資産へと振り向けるか、結局はそれで決まります。一番の基準になるのが米国政府です。10年物[の米国債]の利回りが2.3%であれば[インタビュー時点での利率]、株式のほうがかなり良い投資対象だと思います。わたしがどちらかを選ぶとしたら、現時点では株式にします。そうではなく、10年物の利回りが5あるいは6%であれば、株式の評価水準はまったく異なってきます。この件は以前に少し話をしましたね。

<ベッキー> そのことを言おうと、ちょうど考えていたところです。「重力として働くことで市場をどのように引き下げるのか、さらには現在はそうなっていない」話をしてから、何年か経ちました。

<ウォーレン> そうです、金利は重力です。もし今から最終日まで金利ゼロが続くとわかっていれば、たくさんの資金を別の資産へつぎ込むかもしれません。ゼロのところに資金を寝かせたくないですから。8年前の2009年にはここまで利率が低くなかったことを思い出します。しかし影響力は強力でした。低金利が長く続くにつれて、おなじみとなった利率近辺で考えだす人が多くなります。ですからしばらくは、この水準における株式の成績はまちがいなく債券を上回ると思います。金利が3%程度の30年物債券をショートして、一方でS&P500を買い持ちして30年間放っておくとすると、株は債券を大きく上回ると思います。ここで疑問となるのが、「どの変数が変化するのか」です。金利が変化するとはだれもが予想していますが、しかしそう予想してからずいぶん経ちました。

<ベッキー> それはつまり、もしひとつの要因が金利だとすれば、連銀が金利引き上げをにらんでいることはだれもが知っています。時間をかけて、ゆっくりと徐々に上げるようです。少なくとも、彼らはそのように匂わせています。それでは、引き上げが今後数年間は継続するほうに賭けますか。つまり、2.3%から5%まで時間をかけて金利引き上げを進めるでしょうか。

<ウォーレン> 長くかけると思います。

<ベッキー> 0.25%ずつ引き上げていくとしたら。

<ウォーレン> ええ、そうです。じっくり時間をかけると思います。ただしわたしとしては、株式市場がどうなるのか賭けたり予想したりはしません。ただ、ビジネスを買うだけですので。あえて予想すれば、もし10年債の利回りが5%になれば、株価はいくぶん下がると思います。(後略)

BECKY QUICK: And-- and you see a situation like this develop. Obviously-- our-- our-- our hearts and our thoughts are-- with-- the people of Las Vegas and the people who have traveled around to be there today. But we are talking about business, too. And as much as we should not become inured to this, if you look at the markets, it's hard to see much of a reaction. The markets have ignored just about any potential bad news badly with the Dow setting another record yesterday and with eight quarters in a row now of gains for the market. Is that-- a market that makes sense to you? Do valuations here make sense?

WARREN BUFFETT: Well, the valuations make sense-- with interest rates-- where they are. I mean, in-- in the end, you-- you measure laying out money for an asset in relation to what you're going to get back. And the-- and the number one yardstick is U.S. government. And-- and-- when you get 230 on the-- on the 10 year-- I think stocks will do considerably better than that. So if I have a choice of the two, I'm gonna take stocks at that point. On the other hand, if-- if interest rates were-- on the 10 year were five or six, you would have a whole different valuation standard for-- for stocks. And-- and we've talked about that, you know, for some time now.

BECKY QUICK: I was going to say, it's been years that you've been talking about how-- this is in relation to gravity, and pulling the market down, and how it's not happening here.

WARREN BUFFETT: Yeah, interest rates are gravity. If-- if we knew interest rates were gonna be zero from now till judgment day, you know, you could pay a lotta money for any other asset. You would not want to put your money on a zero. And I would have thought back in nineteen-- I mean, 2009 that rates would not be this low-- eight years later. But it's been a powerful factor. And the longer it persists, the more people start thinking in terms of something close to the-- the rates they've seen for a long time. So-- the one thing I'm sure of is that-- over time-- stocks from this level will beat bonds from this level-- you know? If I could be short the 30-year bond at 3% or something, and long the S&P 500, and just have it put away for 30 years, stocks are gonna far outperform bonds. And the question is: Which variable is gonna change? And everybody expects interest rates to change, but they've been expecting it quite a while.

BECKY QUICK: So does that mean-- I mean, if the one factor is interest rates, we know that the Fed is looking at raising rates. It's going to do so slowly and gradually over time. At least that's what they've been telegraphing to this point. Would you bet on that continuing for the next couple of years? I mean, 2.3% to 5% is a long way when you're moving—

WARREN BUFFETT: That'd be a long away.

BECKY QUICK: --when you're moving in quarter-point increments.

WARREN BUFFETT: Yeah. Yeah, that'd be a long way. And my-- I would-- I would guess-- I don't try and guess the stock market. I just buy businesses, how I-- but if I were to guess, if-- if interest rates-- if the 10 year moved up to 5%, I think stocks would be somewhat cheaper.

2018年1月8日月曜日

強気相場がますます高騰する可能性を感じる(ジェレミー・グランサム)

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GMOのジェレミー・グランサムが1月3日付で、「私見」と断り書きをした文章を公開していました。今回の株式市場がこれからどうなるのか、過去のバブルを振り返った上で、以前の彼とはずいぶん異なる見解を披露しています。冒頭部及びまとめの部分を中心にご紹介します。(日本語は拙訳)

Bracing Yourself for a Possible Near-Term Melt-Up (A Very Personal View) (GMO) [PDF]

バリュー投資を奉じる投資家の一員たる私自身が、今やなんとも興味深い場所に位置しているものだと感じています。「現在の市場は、米国史上において最も高値をつけた時期のひとつだ」と認識する一方で、巨大株式バブルの歴史を研究する一人として、「長く続いてきた今回の強気相場において、急騰期あるいは高騰期に踏み入ったことを示す兆候が現在観察できる」ことを認める自分がいるからです。市場が高値をつけていることを示すデータは、明解で現実のものです。「現在の価格が際立って高い」との結論を株式市場分析から得るのと同様に、たしかなものだと言えます。それとは対照的に、「株価高騰が続く」とする私見は、統計的要因と心理的要因を混ぜ合わせたところから導いています。ただしそれらの要因は、それぞれが大きく異なった過去の時期に基づいており、それがために利用可能な情報の多くが容易には比較できません。さらには、米国それも数件の事例に著しく依存しています。しかしながらおかしなことに、今回のバブルという意味では、「割高だ」とする単純な事実よりも、統計的ではないデータのほうがより説得力があると感じられます。読者のみなさんも、どうなのかは判断できないことでしょう。それはともかく、この文章で私がやるべきことは、統計的なものだけでなくあけっぴろげなものも合わせて、なるべく明瞭に証拠を示すことであります。(p. 1)

I find myself in an interesting position for an investor from the value school. I recognize on one hand that this is one of the highest-priced markets in US history. On the other hand, as a historian of the great equity bubbles, I also recognize that we are currently showing signs of entering the blow-off or melt-up phase of this very long bull market. The data on the high price of the market is clean and factual. We can be as certain as we ever get in stock market analysis that the current price is exceptionally high. In contrast, my judgment on the melt-up is based on a mish-mash of statistical and psychological factors based on previous eras, each one very different, so that much of the information available is not easily comparable. It also leans very heavily on a few US examples. Yet, strangely, I find the less statistical data more compelling in this bubble context than the simple fact of overpricing. Whether you will also, dear reader, remains to be seen. In any case, my task in this note is to present the evidence, both statistical and touchy-feely, as clearly as I can.

私の予想のまとめ(まったくの個人的見解によるもの)

・株価の高騰あるいはバブルの最終期が今後6か月から2年にわたって生じる可能性が、例えば50%以上の確率で考えられます。

・もし株価高騰が続いたとすれば、そのあとにバブルの破裂あるいは価格下落が生じる確率は、相当高い(例えば90%以上の確率)と思われます。

・もし株価高騰の後に下落が生じるとすれば、50%程度の下落率になる可能性がかなりあると思われます。

・そのような下落が生じた後には、1998年以前の水準だった15倍超の倍率まで反騰する可能性がかなり高い(2/3以上)と思われます。ただし直近20年間で見られた傾向の平均には若干とどかないでしょう。それ以降の傾向は、以前に記したレター『鳴動ならんや、さめざめと』で触れた航路を進み、従前の平均へとゆるやかに近づいていくと思われます。(p. 12)

Summary of my guesses (absolutely my personal views)

- A melt-up or end-phase of a bubble within the next 6 months to 2 years is likely, i.e., over 50%.

- If there is a melt-up, then the odds of a subsequent bubble break or melt-down are very, very high, i.e., over 90%.

- If there is a market decline following a melt-up, it is quite likely to be a decline of some 50% (see Appendix).

- If such a decline takes place, I believe the market is very likely (over 2:1) to bounce back up way over the pre 1998 level of 15x, but likely a bit below the average trend of the last 20 years, as the trend slowly works its way back toward the old normal on my“Not with a Bang but a Whimper” flight path.

以下の図は、現在の株式市場がやがてバブルの頂点に達すると仮定したS&P500のチャートです(グランサム氏による予想)。3400や3700という数字が書かれています。

(p. 4)

最後におまけです。ビットコイン相場と過去のバブル相場における頂点を対比したチャートです。(緑色:ビットコイン、えんじ色:南海バブル、紺色:チューリップ・バブル、黄色:1929年世界恐慌時のS&P500)

(p. 11)

2017年12月16日土曜日

パッシブはアクティブである(GMO)

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ジェレミー・グランサムのファンドGMOのサイトに掲載されていた「S&P500の価値評価」の文書から、もう少し引用します。なお同文書が読者として想定しているのは、機関投資家だと思われます。そのため、投資を生業としていない一般の個人投資家には当てはめにくい指摘があります。前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

パッシブの道を選ぶことはアクティブな判断である
人間には、ここしばらくに起きたできごとを延長して将来を予想する性質があります。絶対的および相対的基準のどちらにおいても、米国株式が著しい成績をあげてきたことで、多くの人によって「米国株こそ保有すべき唯一の資産であり、それをパッシブに保有するやりかたがもっとも安あがりだ」と推奨される理由が、容易にうかがえます。

そうだとしてもパッシブを選んだ判断は、アクティブに決めた結果だと言えます。そして現在の投資家が十分な注意を向けていない重大なリスクがそこに存在するのではないか、と私たちは考えています。多くの投資家がパッシブ運用をますます強要するにつれて、アクティブ運用による各種の投資機会が増加しています。S&P500指数に連動したパッシブ運用へ資産を配分すると決めることは、長期的リターンを決定づけるものとして私たちが最も重要だと信じている要因、すなわち価値評価水準(valuation)を無視することを意味しています。そこに至っては、みずからを「投資家である」と語る資格はありません。「投機家」と名乗ることはできますが、「投資家」ではありません。パッシブ運用を選ぶことは、アクティブ投資家が持つある能力を排除することになります。それは、「指数を構成する証券の中で、とんでもなく割高な銘柄の割合を減らす」能力です(当然ながら私たちの好みは株式の銘柄選択においても同様で、価値評価に基づいたやりかたです)。史上3番目に割高な米国株市場に際して、パッシブな指数における構成比率と同じ配分をすることは、いずれは非常に高くつく決定だと私たちは考えています。それにもかかわらず、パッシブ投資は今もなお人気のある選択肢です。米国株市場におけるパッシブなインデックス投資の占める割合は、30%前後に至っています。(p. 8)

(中略)

絶対的な面からみると、投資機会は乏しくきわめて困難な状況です。しかしながら、現在のように資産価格が完璧と言える状況であれば、資産への値付けを大きく変動させても、失望を招くことはほとんどないでしょう。そうであれば私たちからは、現金的な短期性資産を大量に保有することをお勧めします(私たちの資産配分方針も同様です)。クマのプーさんが語った不滅の忠告を思い返してみてください。「なにもしないことのありがたさはバカにできないよ」。お好みであれば、次のように覚えておくのもよいでしょう。「することが何もなければ、何もするな」[過去記事1, 過去記事2]。(p. 111)

Going passive is an active decision
Human nature is to extrapolate the recent past. It is easy to see, given the strong performance of US equities in both absolute and relative terms, why many are suggesting they are the only asset you need to own. And the cheapest way of owning them is passively.

However, the decision to be passive is still an active decision - and we would suggest one with important risks that investors are not paying adequate attention to today. As more and more investors turn to passively-managed mandates, the opportunity set for active management increases. A decision to allocate to a passive S&P 500 index is to say that you are ignoring what we believe is the most important determinant of long-term returns: valuation. At this point, you are no longer entitled to refer to yourself as an investor. You may call yourself a speculator, but not an investor. Going passive eliminates the ability of an active investor to underweight the most egregiously overpriced securities in the index (we obviously prefer a valuation-based approach for stock selection as well). When faced with the third most expensive US equity market of all time, maintaining a normal weight in a passive index seems to us to be a decision that will likely be very costly. Yet despite this, it remains a popular path, with around 30% of all assets in the US equity market in the hands of passive indexers (see Exhibit 9).

*

In absolute terms, the opportunity set is extremely challenging. However, when assets are priced for perfection as they currently are, it takes very little disappointment to lead to significant shifts in the pricing of assets. Hence our advice (and positioning) is to hold significant amounts of dry powder, recalling the immortal advice of Winnie-the-Pooh, “Never underestimate the value of doing nothing”or, if you prefer, remember - when there is nothing to do, do nothing.

2017年12月4日月曜日

S&P500に対する価値評価(GMO)

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今回は、ジェレミー・グランサム氏のファンドGMOのWebサイトで公開されている文書から、S&P500の価値評価(valuation)の状況について触れた文章を一部ご紹介します。(日本語は拙訳)

The S&P 500: Just Say No (Matt Kadnar and James Montier; GMO White Paper) [PDF]

S&P500に対する価値評価

我々が行うあらゆることの基盤となるものが、価値評価です。ですから、まずは現在のS&P500が受けている評価の状況に対して受託者スミス氏[説明省略]が抱いている悩みから始めましょう。はじめに独自のフレームワークを用いることで、我々が実施している価値評価を見て回ります。次に、リターンに寄与する要因を理解していきます。

どのような証券市場においても、発生するリターンは4つの要素に分解できます。長期的にみた場合、リターンは配当(成長及び利回り)によってのみ、ほとんどが説明できます。株式の保有者は「企業が長期的成長のために費やせるように」と資本を提供しているのですから、報酬を受ける必要があります。その報酬は、企業がリスキーな投資から生み出すキャッシュフローから利益や配当の形でまかなわれます。

証券という資産クラスを保有することで儲けをあげる際に、寄与する要因として他に考えられるものは、株価倍率(PER)そして利益率上昇の2つです(これらを合わせて「価値評価要素」と我々は呼んでいます)。それら4つの要素はひとつの個性を形成しています。つまり、リターンは常に4つの要素へと(事後的に)分解できるという性格です。図表1では、西暦1970年以降におけるS&P500のリターン[黒]を4要素(利益[青]、配当[黄]、利益率[えんじ]、PER[緑])に分解しています。利益率[えんじ]とPER[緑]は非常に長期にわたって、基本的に横ばいに推移してきました。前述したように長期間でみると、生じたリターンの多くは配当がもたらしています。


これと同じ分割手法を直近7年間に当てはめてみると、図表2に示すように異なった展開があらわれます。予想されるとおり、利益と配当は成長しています。しかし大幅に拡大したPER[緑]と利益率[えんじ]が4つの中で最も強く押し上げたことで、リターンに対して著しく寄与しています。これは短期間にみられるよくある例であり、価値評価要素の移り変わりがリターンの変動性を司っています。


もし利益と配当が見事なまでに安定していれば(現在はそのとおりですが)、「この7年間に味わったすばらしいリターンをS&P500が今後ももたらし続ける」と信じるのは、「この7年間と同じように、PERと利益率が今後も拡大し続ける」と信じるのと同じことになります。歴史を振り返ると、この仮定が存在した記録は、慎ましく言っても極めてわずかしか残されていません。「直近の状況が際限なく継続する」と仮定するのはおどろくほど容易なことですが、資産を扱う市場においてそのような仮定をするのは、この上なく危険です。おそらく現在のS&P500がそうであるように、割高な市場においては特にそうだと言えます。(p. 1)

Valuation of the S&P 500

The bedrock of everything we do is valuation, so let’s begin addressing Trustee Smith’s concerns with a look at the current valuation of the S&P 500. We will start our tour of valuation by examining our own framework. This in turn starts by understanding the drivers of return.

For any equity market, the return achieved can be broken down into four component parts. In the long term, the return is almost exclusively driven by dividends (growth and yield). Equity owners need to be compensated for providing capital to companies to help fund their long-term investments. That compensation comes from the cash flows the companies generate from their risky investments via earnings and dividends.

The two other ways to make money from owning an equity asset class are from multiple (P/E) or margin expansion (collectively we call these elements the valuation components). Together these four components make an identity - we can (ex post) always decompose returns into these factors. In Exhibit 1, we show a return decomposition for the S&P 500 since 1970 based on these four factors (earnings, dividends, margins, and P/Es). Margins and P/Es are basically flat over this very long time period. As we stated above, over the long term, the returns achieved have been delivered largely by dividends.

Using this same decomposition over the last seven years, we see quite a different story in Exhibit 2. Earnings and dividends have grown as one would expect, but P/E and margin expansion have significantly contributed to returns with multiple expansion actually providing the biggest boost of the four. This is typical of short-term periods, where the volatility of returns is dominated by shifts in the valuation components.

If earnings and dividends are remarkably stable (and they are), to believe that the S&P will continue delivering the wonderful returns we have experienced over the last seven years is to believe that P/Es and margins will continue to expand just as they have over the last seven years. The historical record for this assumption is quite thin, to put it kindly. It is remarkably easy to assume that the recent past should continue indefinitely but it is an extremely dangerous assumption when it comes to asset markets. Particularly expensive ones, as the S&P 500 appears to be.

2017年8月16日水曜日

インデックス投資も同じ道を帰る(ハワード・マークス)

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前回につづいて、ハワード・マークスによるパッシブ投資に関する話題です。(日本語は拙訳)

パッシブ投資が低額の手数料や経費ゆえに魅力的であるということは、つまりファンドの組成者は規模の大きさを強調しなければなりません。インデックス・ファンドよりも高い手数料を得るとともに利益のあがる規模に到達させようとして、ETFのスポンサーは「さらにスマート」で、しかも厳密にはパッシブでない媒体へと変更することを考えました。それゆえにETFを組成する際に、株式の分類(バリュー型か成長型か)や特性(ボラティリティーが低いか高いか)、あるいは業種や地理的な位置といった、諸々の特殊な切り口による領域からの要求を満たすようにしたのです。「成長型でいてバリューがあり、投資先として優良な企業で、株価のボラティリティーは小さく、モメンタム志向である」、これらすべてを求める人に応じたパッシブ型ETFも複数存在します。極端なところでは、次のような企業へパッシブに投資するファンドから選べるようにもなりました。経営陣の男女比に偏りが少ない企業、「聖書的責任投資」に適合した企業[=聖書の教えを遵守した企業への投資]、そして医療マリファナ、肥満解消、ミレニアル世代向け、ウィスキー及び蒸留酒といった分野に注力する企業、です。

しかし、投資を実行する媒体がそれほど狭い領域に焦点を当ててしまうと、「パッシブ」という言葉にはどのような意味があるのでしょうか。広汎な領域にわたるインデックスから逸脱すれば、まず定義の上で支障がありますし、さらに非パッシブな個別の判断が必要になってきます。個別要因を反映した保有株式を誇張するパッシブなファンドは、「スマート・ベータ・ファンド」と呼ばれています。しかし今日ではてんで尊敬されないアクティブ志向の運用者よりも、それらの株式を選択する規則を決めた人のほうが若干でもスマート(賢い)とは、一体だれが言えるのでしょうか。これはすなわち、先述したブレグマン言うところの「語義的投資」です。つまり、「株式を選択する理由は、貼り付けられたラベルをもとにしており、定量的分析によるものではない」という意味です。上述した特性のうちの多くを株式が有しているかどうか判断する絶対的基準はないことになります。

「スマートな」商品が商業的規模に達してほしいと組成者が考えている場合、「時価総額が最大規模であり、かつ流動性がもっとも高い諸々の株式」に大きく依存しがちな点が重要です。たとえばETF内にアップル社の株式が含まれていれば、実に大きな規模のファンドとなり得ます。それゆえに今日では、テクノロジー株や成長株、バリュー株、モメンタム志向、大型株、優良企業株、低ボラティリティー、配当株、レバレッジ株を看板に掲げている各種のETFには、アップル株が含まれています。

以下の文章は、バロンズ誌が今月(7月)早々の記事で触れねばならなかった見解です。

時価総額加重平均型のインデックスでは、買い手は個別の選択をせずに、すでに比重過多な(そして割高であることも多い)銘柄で満たしている。一方、比重の小さい銘柄は無視されたままである。これでは「安く買って、高く売る」の反対だ。

このところ上位の成績をおさめている銘柄は、時価総額を増大させながら、ファンドの大きなポジションを占めるようになっています。このことは、「ETFに資本が集まった際にはそれらの銘柄を大量に買い付けねばならず、株価上昇をさらに煽る」ことを意味します。それゆえに現在つづいている上昇局面では、パッシブ投資を実行する媒体の一部が自動的に買い付けるがために、構成比率が大きくて流動性の高い大型銘柄がその恩恵を受けてきました。単に割高だからといって株式購入をとどめる選択肢を有していないからです。

西暦2000年のテクノロジー株と同様、永久機関のようにみえるこの現象が、永久に働き続けることはないでしょう。もし[インデックス・]ファンドがそれらの株式をまさに放出すれば、それゆえにETFでも同じことが起こり、過度なまでに買われてきた銘柄は、過度なまでに売られる定めとなります。そして、市場が収縮する時期に売却しなければならないとしたら、過度なまでに保有している大人気銘柄を買ってくれる相手を見つけるには、インデックス・ファンドやETFは一体どこを探せばいいものでしょうか。このようにパッシブな買い付けによって生じた価格上昇は、結局は循環的なものであって永続しないだろうと思います。

最後にもうひとつ、株式市場におけるシステミックなリスクを考慮せねばなりません。ブレグマン言うところの「インデックス真っ盛りの、大規模かつ大混雑したモメンタム売買」です。S&P指数上昇に寄与する割合をますます増加させているのは、一握りの銘柄、つまりFAANG銘柄とその他若干です。つまり、株式市場の健全さが過大評価されている可能性があります。

上述したすべての要因が、パッシブな媒体、特にスマート・ベータETFが持つと考えられている有効性に対して疑問を投げかけています。

・「アップル社の株は安全株なのか。それとも、このところ好調な成績をおさめている株なのか」。その違いについて、きちんと思案している人がいるのでしょうか。
・異なるやり方を標榜している種々のパッシブな媒体に対して資金を投じている人は、自身の期待している分散効果や流動性や安全性を確保できているのでしょうか。
・個々の保有銘柄やポートフォリオ構成について慎重に分析することもなく、意思決定の対象にもせず、さらには価格によらず買い付けを実行する。そのようなプロセスへ投資家がこぞって手持ちの資金を投じる実態について、何を考えたらよいのでしょうか。

The low fees and expenses that make passive investments attractive mean their organizers have to emphasize scale. To earn higher fees than index funds and achieve profitable scale, ETF sponsors have been turning to "smarter," not-exactly-passive vehicles. Thus ETFs have been organized to meet (or create) demand for funds in specialized areas such as various stock categories (value or growth), stock characteristics (low volatility or high quality), types of companies, or geographies. There are passive ETFs for people who want growth, value, high quality, low volatility and momentum. Going to the extreme, investors now can choose from funds that invest passively in companies that have gender-diverse senior management, practice "biblically responsible investing," or focus on medical marijuana, solutions to obesity, serving millennials, and whiskey and spirits.

But what does "passive" mean when a vehicle's focus is so narrowly defined? Each deviation from the broad indices introduces definitional issues and non-passive, discretionary decisions. Passive funds that emphasize stocks reflecting specific factors are called "smart-beta funds," but who can say the people setting their selection rules are any smarter than the active managers who are so disrespected these days? Bregman calls this "semantic investing," meaning stocks are chosen on the basis of labels, not quantitative analysis. There are no absolute standards for which stocks represent many of the characteristics listed above.

Importantly, organizers wanting their "smart" products to reach commercial scale are likely to rely heavily on the largest-capitalization, most-liquid stocks. For example, having Apple in your ETF allows it to get really big. Thus Apple is included today in ETFs emphasizing tech, growth, value, momentum, large-caps, high quality, low volatility, dividends, and leverage.

Here's what Barron's had to say earlier this month:

With cap-weighted indexes, index buyers have no discretion but to load up on stocks that are already overweight (and often pricey) and neglect those already underweight. That's the opposite of buy low, sell high.

The large positions occupied by the top recent performers - with their swollen market caps - mean that as ETFs attract capital, they have to buy large amounts of these stocks, further fueling their rise. Thus, in the current up-cycle, over-weighted, liquid, large-cap stocks have benefitted from forced buying on the part of passive vehicles, which don't have the option to refrain from buying a stock just because its overpriced.

Like the tech stocks in 2000, this seeming perpetual motion machine is unlikely to work forever. If funds ever flow out of equities and thus ETFs, what has been disproportionately bought will have to be disproportionately sold. It's not clear where index funds and ETFs will find buyers for their over-weighted, highly appreciated holdings if they have to sell in a crunch. In this way, appreciation that was driven by passive buying is likely to eventually turn out to be rotational, not perpetual.

Finally, the systemic risks to the stock market have to be considered. Bregman calls "the index universe a big, crowded momentum trade." A handful of stocks - the FAANGs and a few more - are responsible for a rising percentage of the S&P's gains, meaning the stock market's health may be overstated.

All the above factors raise questions about the likely effectiveness of passive vehicles - and especially smart-beta ETFs.

- Is Apple a safe stock or a stock that has performed well of late? Is anyone thinking about the difference?
- Are investors who invest in a number of passive vehicles described in different ways likely to achieve the diversification, liquidity and safety they expect?
- And what should we think about the willingness of investors to turn over their capital to a process in which neither individual holdings nor portfolio construction is the subject of thoughtful analysis and decision-making, and in which buying takes place regardless of price?

2017年7月18日火曜日

予測に関する5つの警句(ハワード・マークス)

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ハワード・マークスが1月に書いたレターから、最後のご紹介です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

最後に特別付録です。予測のことを話題にした引用文ばかりを、私は40年来収集して(再利用もして)きましたが、その中から珠玉の5本をご紹介します。全体としてみれば、今回の主題について語るべき内容が事実上すべて盛り込まれています。

未来を予測する者たちは、2つの種族に分けられる。物事をわかっていない者たちと、自分が物事をわかっていないことを理解していない者たちだ。
(ジョン・ケネス・ガルブレイス[経済学者])

どれだけ洗練させようとも、「みずからが持つあらゆる知識は過去についてであり、みずからが下すあらゆる判断は未来についてである」という事実の重みを減じることはない。
(GE社の元重役イアン・ウィルソン)

予測をすると、未来がわかるという幻想が生まれる。
(ピーター・バーンスタイン[著述家、経済学者])

予測というものは、未来よりも予測者について語ってくれることが多い。
(ウォーレン・バフェット)

未来のことなど考えないですよ。すぐにやってきますから。
(アルバート・アインシュタイン)


Bonus section: I’ve been collecting (and recycling) quotations for almost forty years, more of them concerning forecasts than anything else. Here are five of the very best. Together they say virtually everything that has to be said on the subject:

We have two classes of forecasters: Those who don’t know – and those who don’t know they don’t know.
– John Kenneth Galbraith

No amount of sophistication is going to allay the fact that all of your knowledge is about the past and all your decisions are about the future.
– Ian Wilson (former GE executive)

Forecasts create the mirage that the future is knowable.
– Peter Bernstein

Forecasts usually tell us more of the forecaster than of the future.
– Warren Buffett

I never think of the future – it comes soon enough.
– Albert Einstein

2017年7月14日金曜日

電子が感情を持ち合わせていたら(ハワード・マークス)

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前回につづいて、ハワード・マークスのレターから短い文章ですが引用します。「予測」に関する話題です。(日本語は拙訳)

未来については、事実というものは存在しません。あるのは、ただの見解です。自分が予想したマクロ的な将来を心底から断言する人は、無知ゆえの発言なのか、それとも自信過剰か、あるいは嘘をついているのか、いずれもみずからの先見性を誇張しています。

経済や金利や通貨や市場の動向は、科学的なプロセスに従った結果として進展するものではありません。そこには感情や弱さや偏向をいだいた人間が介在するので、大幅に予測不能なものが形成されます。物理学者のリチャード・ファインマンは、かつて次のように述べました。「それぞれの電子が感情を持ち合わせていたら、物理学はどれだけ難しくなるんだろうね」と。

不確実なことに対する予測に基づいて大胆な行動に出るのは、単に筋ちがいなだけではなく、危険なやりかたです。マーク・トウェインは次のように言っています。「やっかいごとになるのを知らないのが問題ではない。確信していたのに当たらないのが問題なのだ」。(p. 9)

There are no facts about the future, just opinions. Anyone who asserts with conviction what he thinks will happen in the macro future is overstating his foresight, whether out of ignorance, hubris or dishonesty.

Developments in economies, interest rates, currencies and markets aren’t the result of scientific processes. The involvement in them of people – with their emotions, foibles and biases – renders them highly unpredictable. As physicist Richard Feynman put it, “Imagine how much harder physics would be if electrons had feelings!”

Taking bold action based on forecasts of things that are uncertain isn’t just misguided; it’s dangerous. As Mark Twain said, “It ain’t what you don’t know that gets you into trouble. it’s what you know for certain that just ain’t true.”

蛇足ですが、とんちんかんな発言を見聞きしたときには、わたし自身も上記のような二者択一(無知あるいは嘘つき)でとらえているので、上の文章には共感できました。

2017年6月8日木曜日

2016年度バフェットからの手紙(3)100歳になっても生きているだろうか

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2016年度「バフェットからの手紙」からの引用です。今回から取り上げる部分が、一般(=非株主)向けのメイン・テーマと言えると思います。まずは、ウォーレンが好む軽いジョークの連発からです。(日本語は拙訳)

「賭け」(あるいは、自分の資金がウォール街へおさまることになる経緯)

この章のはじめのほうでは、わたしが9年前に勝負にのったある投資の話をします。それから次に、わたしが投資に対して強く抱いている見方を挙げています。しかしその前に、「ロング・ベッツ」(Long Bets; 長期的予測)という異色の組織がその賭けの中で果たす役割について、かいつまんで記したいと思います。

「ロング・ベッツ」はアマゾン社のジェフ・ベゾスの資金提供を受けて設立・運営されてきた非営利の団体で、長期的な予測がどうなったのか、その顛末を処理運営するものです。この予測に参加する「提案者」は、かなり先の日付になってから是非が明らかになる自分自身の見解を、Longbets.orgのサイトへ提出します。そして、それと反対の見解を抱く、つまり自分の反対側に賭けてくれる参加者を待ちます、その「疑義者」が申し出てくれた時点で、両者は自分の側が勝ったときに賭け金の受取人となる慈善先を指名します。そして「ロング・ベッツ」へ賭け金を預け入れると共に、自分側の立場を擁護する小論文を提出します。勝負が決まった時点で、「ロング・ベッツ」は勝った側の慈善先へ賭け金を支払います。

それでは、「ロング・ベッツ」が運営している興味津々なサイトで見受けられる事例を、いくつか挙げてみましょう。

2002年には、ミッチ・ケイパーという起業家[1-2-3で有名なLotusの創業者]が「チューリング・テストを合格するコンピューターや『機械知能』は、2029年までは登場しない」と宣言しました。チューリング・テストとは、コンピューターが人間[の受け答え]を模倣できるどうかを試すテストです。一方、発明家であるレイ・カーツワイル[A.I.の領域で活躍]は反対の見方を示しました。彼らは各々の見解を支持する金額として1万ドルを用意しました。どちらがこの賭けに勝つのかは、わたしにはわかりません。しかし「チャーリー・マンガーをそっくり真似できるコンピューターは登場しない」という見方には、自信をもって賭けられます。

それと同じ年にマイクロソフト社のクレイグ・マンディー[元最高研究戦略責任者]が、「パイロットの不要な旅客飛行機の定期便が、2030年までに出現する」と宣言しました。これに反対したのがグーグル社のエリック・シュミット[元CEO]です。この勝負での賭け金は1,000ドルずつでした。巨額な費用負担を被るかもしれないエリックの胸焼けをやわらげたいと思い、彼がしたことの一部を受け持とうと先日わたしから提案しました。すると彼は即座に500ドル分をわたしに回してくれました。(もしわたしたちの側が負けることになったときに、「負担分を支払わなければならない西暦2030年前後に、わたしがまだ生きている」と彼が想定してくれた点が、うれしいですね)

“The Bet” (or how your money finds its way to Wall Street)

In this section, you will encounter, early on, the story of an investment bet I made nine years ago and, next, some strong opinions I have about investing. As a starter, though, I want to briefly describe Long Bets, a unique establishment that played a role in the bet.

Long Bets was seeded by Amazon's Jeff Bezos and operates as a non-profit organization that administers just what you'd guess: long-term bets. To participate, “proposers" post a proposition at Longbets.org that will be proved right or wrong at a distant date. They then wait for a contrary-minded party to take the other side of the bet. When a “doubter" steps forward, each side names a charity that will be the beneficiary if its side wins; parks its wager with Long Bets; and posts a short essay defending its position on the Long Bets website. When the bet is concluded, Long Bets pays off the winning charity.

Here are examples of what you will find on Long Bets' very interesting site:

In 2002, entrepreneur Mitch Kapor asserted that “By 2029 no computer - or ‘machine intelligence' - will have passed the Turing Test," which deals with whether a computer can successfully impersonate a human being. Inventor Ray Kurzweil took the opposing view. Each backed up his opinion with $10,000. I don't know who will win this bet, but I will confidently wager that no computer will ever replicate Charlie.

That same year, Craig Mundie of Microsoft asserted that pilotless planes would routinely fly passengers by 2030, while Eric Schmidt of Google argued otherwise. The stakes were $1,000 each. To ease any heartburn Eric might be experiencing from his outsized exposure, I recently offered to take a piece of his action. He promptly laid off $500 with me. (I like his assumption that I'll be around in 2030 to contribute my payment, should we lose.)

2016年2月24日水曜日

無傷で迎えることのできる大統領選投票日(ジェレミー・グランサム)

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GMOのジェレミー・グランサムが少し前にレターを公開していました。今後1年間の市場予測を試みているのは、年初ながらの恒例のようです。今回は、おなじみのキーワード「大統領選」が登場している文章を引用します。なお、もうひとつ取りあげられていた話題は「アメリカの強み(そしてカナダも含めた地理的強み)」についてでした。(日本語は拙訳)

GMO Quarterly Letter 4Q 2015 - Part II: 2015 and 2016, U.S. Equity Bubble Update, and Yet More on Oil [PDF] (GMO)

今回の株式市場における上昇[2009年から現在まで]では、もっとも重要な要素である「最大規模まで到達した大嵐」がみられません。孫に語りきかせるほどの狂乱した投機話や、個人投資家がみせるものすごい熱狂、感情の高ぶりや能力以上に過熱した経済、さらにはS&P500指数が最低でも2シグマ以上つまり2,300ポイントに到達していること、それらすべてが揃っている必要があります。現段階ではそのすべてを欠いていますから、「おそらく」大統領選投票日を程度の差はあれど無傷で迎えられると考えています。ただし私が言う「おそらく」という言葉の定義は、先に記した否定的な各要素によって50%をちょうど超える程度まで引き下げられていることに触れておきます。この予測では、中国については読みきれていません。最近はお決まりのワイルド・カードとなりましたが、現在の市場は中国の低成長を織り込んでいます(今後10年間の年間成長率を4%とするのは妥当な目標だと思います)。しかしGDP成長率が相当なマイナスまで後退したら、世界的な成長に対する比較的楽観視した私の見方は、もろくも崩れると思われます。(PDFファイル15ページ目)

The most important missing ingredient is a fully-fledged blow-off. This should come complete with crazy speculative anecdotes for your grandchildren, massive enthusiasm from individual investors, an overwrought, overcapacity economy, and, at minimum, a 2-sigma S&P 500 at 2300. Lacking all of this, I still believe it is "likely" that we will reach Election Day more or less intact. I will, though, admit to my definition of "likely" being beaten down by the negative factors listed earlier to something just over 50%. The wild card, as usual these days, is China. The market is discounting lower growth. (I believe 4% a year for the next 10 years would be a reasonable target.) But a deep entry into negative GDP numbers might ruin my relatively positive case for global growth.

2015年9月8日火曜日

2002年にバフェットが予想していた株式市場からのリターン率

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ウォーレン・バフェットがバークシャー・ハサウェイの株主向けに書いた2001年度の「バフェットからの手紙」を読んでいたところ、株式市場の将来を予想していた文章がありました。今回はその箇所をご紹介し、現時点で彼の予想がどこまで合致しているか、結果を振りかえります。(日本語は拙訳)

SHAREHOLDER LETTER 2001 [PDF] (Berkshire Hathaway)

当社の[株式]ポートフォリオは、2001年を通じてほとんど変化しませんでした。上位の持ち株を全体としてみたときの成績は、ここ数年間おもわしくありません。業績が残念なものにとどまったことも、その一因です。当社が株式を保有している全企業の営む根本的な事業については、チャーリーもわたしもひきつづき好んでいます。ただし、全体としてみたバークシャーの保有株式は割安ではないと考えています。

それらの証券に対してあまり夢中になれないのは、今後の10年前後における株式全般の見通しについてまったくもって気乗りしないのと同じです。アレン社が7月に開催した会合の席で、株式から得られるリターンについて私見を申し上げました(2年前にも同様の説明をしましたが、それを受けたものです)。わたしの発言を編集した記事が、12月10日付けのフォーチュン誌に掲載されています。その記事の写しを本書に添付しました(同記事[PDF]へのリンク)。なお1999年に講演した内容も、フォーチュン誌が当時掲載しています。そちらをお読みになりたい方は、当社のウェブサイトをご覧ください(同記事[PDF]へのリンク)。

米国の企業はこれからも好業績をあげていくだろう、とチャーリー共々考えております。しかし今日の株価は、「投資家が得られるリターンは平凡な数字にとどまるよ」と警告しているように思います。これまで非常に長い期間にわたり、市場[の成績]は事業を上回ってきました。ですから、いつかはその現象が終わらなければなりませんでした。しかし多くの投資家は、事業の進展と共に歩めない市場にはがっかりしてしまうものです。このゲームに比較的新しく参加した人にとっては特にそうだと思います。(PDFファイル14ページ目)

We made few changes in our portfolio during 2001. As a group, our larger holdings have performed poorly in the last few years, some because of disappointing operating results. Charlie and I still like the basic businesses of all the companies we own. But we do not believe Berkshire's equity holdings as a group are undervalued.

Our restrained enthusiasm for these securities is matched by decidedly lukewarm feelings about the prospects for stocks in general over the next decade or so. I expressed my views about equity returns in a speech I gave at an Allen and Company meeting in July (which was a follow-up to a similar presentation I had made two years earlier) and an edited version of my comments appeared in a December 10th Fortune article. I'm enclosing a copy of that article. You can also view the Fortune version of my 1999 talk at our website www.berkshirehathaway.com.

Charlie and I believe that American business will do fine over time but think that today's equity prices presage only moderate returns for investors. The market outperformed business for a very long period, and that phenomenon had to end. A market that no more than parallels business progress, however, is likely to leave many investors disappointed, particularly those relatively new to the game.

さて、ウォーレンが予想した当時(2002年初)から現在(2015年初)までのS&P500指数の上昇率をくらべてみます。Google Financeのデータによれば、2002年初の指数は1148、2015年初は2059でした。この間の上昇率は約80%、年率にすると約4.63%です。

S&P500のチャート; 2002年初から2014年末まで

一方、13年間でのインフレ率は年率2.2%程度と算出できます(参考サイト)。またS&P500指数に連動するファンドに投資すると、配当利回りは基本的にインフレ率と相殺される程度におさまるようです(参考サイト)。つまりS&P500に投資した場合の実質リターンは、さきに示したように年率5%を超えない水準だったと言えます。10年先を予想したウォーレンは「平凡なリターン(moderate returns)」と書きましたが、現時点から振りかえれば絶妙な見通しだったように感じます。

なおウォーレンが上記のレターを書いたのは、ITバブルで市場が頂点に達した2000年3月から20%ほど下落した頃でした。

2015年5月8日金曜日

米FRBのバブル・トリオ(ジェレミー・グランサム)

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GMOのレター(2015年第1四半期)が公開されていました。昨日のニュースでFRBのイェレン議長の発言が話題になっていましたが、それと交錯する話題を引用します。(日本語は拙訳)

Are We the Stranded Asset? (and other updates) [PDF] (GMO Quarterly Letter 1Q 2015)

米国市場に関する現時点での短評: まだバブルではないが、いずれそうなるとの私見

奇妙にも操作されたこの世界でカギとなるのは、FRBが上昇相場の側についている間は強気派にかなりの望みがある点です。グリーンスパン、バーナンキ、そしてイェレンとつづく時代をとおして、FRBはバブルが最大限に膨張するまで資産価格の上昇をとめませんでした。2000年に米国成長株、そして2006年に米国住宅市場で起こったことは、驚くなかれ、実のところ3シグマの出来事だったのです。これらは米国史上飛び抜けて巨大な株式バブルと住宅バブルでした。またイェレンは前任者らと同じように、資産効果を生み出すために資産価格を押し上げるFRBの役割を誇示してきました。さらにこれまでの彼女は、「いかなる資産バブルの可能性であっても阻止する責務を感じない」とする彼らの見解とも同じようです。私からすれば、FRBが資産[価格]を動かす力を持っていることは認識できるわけですから(ただし経済を加速する力としては、がっかりするほど限定的です)、経済面での国際的な大事件が生じない以上、現在のFRBは今再びバブルが頂点に達するまで資産価格を刺激しつづけることを志向かつ決定した、と考えても筋が通っていると思われます。そして現時点ではまだその段階に至っていないのです。(PDFファイル9ページ目)

A brief update on the U.S. market: still not bubbling yet, but I think it will

The key point here is that in our strange, manipulated world, as long as the Fed is on the side of a strong market there is considerable hope for the bulls. In the Greenspan/Bernanke/Yellen Era, the Fed historically did not stop its asset price pushing until fully-fledged bubbles had occurred, as they did in U.S. growth stocks in 2000 and in U.S. housing in 2006. Both of these were in fact stunning three-sigma events, by far the biggest equity bubble and housing bubble in U.S. history. Yellen, like both of her predecessors, has bragged about the Fed's role in pushing up asset prices in order to get a wealth effect. Thus far, she seems to also share their view on feeling no responsibility to interfere with any asset bubble that may form. For me, recognizing the power of the Fed to move assets (although desperately limited power to boost the economy), it seems logical to assume that absent a major international economic accident, the current Fed is bound and determined to continue stimulating asset prices until we once again have a fully-fledged bubble. And we are not there yet.

上記のような市場予測のほかに、彼が取りあげる話題には人口問題や資源問題などがあります。超長期的な視点からながめることが多く、個人的には興味ぶかく読んでいます。

2015年4月18日土曜日

2015年デイリー・ジャーナル株主総会(2)過ぎ去りし最上の50年間

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チャーリー・マンガーが質問に答えるデイリー・ジャーナル社の株主総会、今回はインフレ等の話題です。前回とは違う引用元からご紹介します。

Charlie Munger's 2015 Daily Journal Annual Meeting - Part 1 (Forbes)

<質問者> 米国のバランスシートは2007年には9,000億ドルでしたが、今では6兆ドルほどになっています[原文ママ。おそらくFRBのことで、後者の数字も4兆ドル強と思われる]。このような信用経済の下で、この会場にいるだれかが生きている間に9,000億ドルに戻ると考えられますか。

<マンガー>言うまでもなくわたしはかなりの年ですから、コーヒーが5セントだったり、カフェテリアでの食べ放題が25セントだったり、新発売の自動車が600ドルだった時代のことを覚えています。何十年という期間でみると、民主主義の社会では金銭の価値は減価することが予想されます。人間の性質を考えれば、これは今後もつづくでしょう。加速せざるを得ないことになるかもしれません。

我々が経験した数々の厳しいインフレの時期はどれも短く、イタリアやアルゼンチンそしてブラジルのような場所で起きたことを考えると、私からすればうれしい驚きでした。もっとひどくなるだろうと予想していました。

過去50年の人生を振り返ると、普通株の平均リターン(配当込み)は税引き前で年率10%ほどでした。そのうち真水の上昇分がどれだけで、インフレ分がどれだけの割合なのかはわかりません。しかしたとえば実質的な上昇が7%でインフレが3%とすれば、私ならば信じがたいほどに良い数字だと考えます。

私の年代の人たちは、有史をつうじて最上かつもっとも安楽な時期を生きてきました。死亡率は過去最低、投資利益は過去最高、生活水準の向上率もほぼすべての人において過去最高でした。戦争を含んだあらゆることによる精死亡率も低下しています。スティーブン・ピンカーの主張するとおりですね[著書『暴力の人類史』]。過去最高のすばらしい時期だったのです。

これまで過ごしてきた50年間を不幸せな時期だったと考えるのは、残念なことに自分の人生をまちがって評価しています。これ以上は望めない時代だったのです。これからは悪くなる可能性が高いでしょうね。どんなときであろうとも、悪化することに備えておくのは賢明な姿勢です。うれしい驚きとはたやすいものですが、問題を引き起こすのは好ましくない驚きが起きた場合ですから。

金融上の政策という点でみれば、金銭の購買力は時を追うごとに低下すると考えられます。今後50年間のほうが今まで以上の問題を抱えることになるのは、ほぼ確実と言えるでしょう。技術は発展し続けますから、イカレポンチが何人かいるだけで、世界貿易センターでの事件がピクニックのように思える、そうなる可能性もあります。厳しい世の中へと変わることに対して備えるべきです。

Q: The U.S. had a $0.9 trillion balance sheet in 2007. Now it's about six trillion. In anyone's lifetime in this room, will it ever go back to $0.9 trillion under the credit economy?

Mr. Munger: Of course, I'm so old I remember coffee at five cents, and all-you-can-eat cafeterias at 25 cents, and brand new automobiles for $600. Over a span of many decades you can count on democracy to cause the money to deteriorate. That will continue because of human nature. It may even accelerate eventually.

Considering the experiences in places like Italy and Argentina and Brazil, I have been pleasantly surprised after the many bouts of inflation we went through. I anticipated more trouble than we actually had.

In my lifetime, over the past 50 years, the common stock averages (including their dividends) produced about 10 percent per annum pre-tax. I don't know what percent of that is real gain, and how much is inflation. Let's say it's seven percent real gain and three percent inflation. I work out those figures as unbelievably good.

Somebody my age has lived through the best and easiest period that ever happened in the history of the world, with the lowest death rates, the highest investment production, the biggest increases per annum that most people's standard of living ever got. The net death rate from war, from everything is better. Steven Pinker is right. It's the most fabulous period that ever happened.

If you're unhappy with what you've had over the last 50 years, you have an unfortunate misappraisal of life. It's as good as it gets, and it's very likely to get worse. It's always wise to be prepared for it getting worse. Favorable surprises are easy to handle. It's the unfavorable surprises that cause the trouble.

In terms of monetary authorities, you can count on the purchasing power of money to go down over time. You can almost count on the fact that you'll have way more trouble in the next 50 years than we had in the last. The technology is changing, so that a few nutcases could make the World Trade Center look like a picnic. We should all be prepared to adjust to a world that is harder.

2015年4月16日木曜日

シェールオイルについて(エクソンモービルCEOレックス・ティラソン)

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少し前にエクソンモービル社をえがいた『石油の帝国』を読了し、その流れで先だって同社が開催したアナリスト向けミーティングのトランスクリプトを読みました。目新しい情報はあまりなかったように思います。が、現在の市場動向に振り回されることなく以前からの基本戦略を踏襲しようとする経営姿勢は、同書に描かれているとおりでいかにも同社らしいと感じました。今回引用するのは、CEOのティラソン氏がアナリストの質問に答える形で、原油の価格動向とシェールオイル業界について触れた部分です。(日本語は拙訳)

Exxon Mobil's (XOM) CEO Rex Tillerson Hosts 2015 Analyst Meeting (Transcript) (Seeking Alpha)

<ティラソン> 世界中の地政学的イベントによって、ある程度の供給量が阻害されてきました。そのことが長期にわたってものごとを維持してきた、というのが私の見方です。しかし昨年になってからマーケットは実際に起こっていることを認識しはじめ、それで価格の訂正が始まったのだと思います。つまり、供給が需要を超過しているだけの問題です。その期間がどれだけ継続するかを言葉で表すのは常に困難なことですが、いくつか気づいた点があります。そのひとつが、北米でのタイトオイル[シェールオイル等]の供給は、一部の人たちが考えているよりも弾力的な点です。それと直接は関連しないものの、この5年から7年間にシェールガスの領域で生じた掘削リグの稼働本数の減少から類推できることがあります(以降、音声不良)。

[シェールガス田における]リグの稼働数は、1,600基超から現在の280基まで減少しました。しかしリグが減少している環境下で、ガスの生産能力は日産550億立方フィートから740億立方フィート へと50%増加しています。価格の下落動向はもっとひどいもので、8.25ドルから3ドル以下まで落ち込みました。しかしタイトオイルはあきらめたらどうかと示唆してはいません。それらの知見から学べるものがある、というのが私の考えです。最初に申した見解、つまり北米のタイトオイルはある人たちが予想する以上に弾力的な動向を示すものと考えられるわけです。

The geopolitical events of the world were keeping some supplies disrupted. And so, I think that's what supported things for a long time until last year the market began to realize what was happening. And I think that's when the correction occurred. So it's simply supply outstripping demand. In terms of the duration, it's always hard to say the duration, but I would just make a few observations. One, I think the North American tight oil supply is more resilient than some people think it is. And I would draw some -- not direct correlation, but I would draw some analogy from the shale gas experience of the last 5 to 7 years where reductions of rig counts [Technical Difficulty].

Where rig counts went from north of 1600, down to 280 today and gas capacity went from 55 billion cubic feet a day to 74 billion cubic feet a day, a 50% increase in a declining rig environment, and a terribly declining price environment, $8.25 to south of $3. Now I am not suggesting you're going to have a lay down on tight oil, but I think there are a few lessons you can learn from observing that. So I think the first comment, I'll make is I think North America tight oil is going to be more resilient than some people think it's going to be.

『石油の帝国』については、あらためて取り上げるつもりです。読みごたえたっぷりの著作です。

2014年12月28日日曜日

ネバダ州CFA協会での講演(8)最終回(ボブ・ロドリゲス)

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マネー・マネージャーのボブ・ロドリゲスが10月におこなった講演の8回目、これでおわりです。この文章を読み返す日がいつやってくるか、楽しみに待ちたいものです。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

債券市場では別のむずかしい選択が提示されています。10年物財務省証券の利回りが2.3%、低インフレの環境がこのまま継続しない限り、失敗の許される余地はほとんどありません。今後2-3年は、まさに正念場だと思います。しかしその後においても、元本割れのリスクは年を追うにつれて級数的に増していくのは確実だと思います。

その数年間は、危険な時期になります。各国政府がこの道を改めない限り、不安定でむずかしい将来が待っています。各国の経済を再建するのに欠かせないものの、財政上の困難な選択肢をあえて選ぶ政治家は、ほとんどいません。ですから経済成長を刺激する種類のなかで、金融政策だけが唯一のものになると思われます。

「QEに関する諸政策が無残にも失敗に終わる」、この2-3年のうちにそれが明らかになると予想します。抑圧された経済成長が、失業の増大あるいは水準以下の雇用とともに、多くの国家を襲うでしょう。それでは、財政再建が検討されないままQEが失敗したら、経済成長を刺激するにはどうすればよいでしょうか。ここで申し上げたいのが、経済刺激という矢筒には最後の1本が残されており、それが通貨政策であることです。自国通貨の対外的な価値を下落させる道が、最後に残されています。日本と欧州はどちらもこの道を歩んでいます。もし彼らが通貨の下落に成功したら、他の国々にもそれが及ぶでしょう。国際通貨に関するエピソードのうち、大規模だった近年の2件が、1980年から1985年と、1998年から2001年でした。米ドルはその衝撃を吸収する役目を示しました。米ドル・インデックスのチャートをみれば、そこに表れているとおりです。しかしそういった過去のエピソードとは異なり、今回も同様の結末になるとは思えません。過去の時期とくらべると、この国が全体として不安定になっているからです。ですからドルの価値が若干でも上昇すると、さらなる否定的な反応が即座に生じるでしょう。今後数年間は通貨市場にじっと注意を払いつづけること、みなさんにはこのことをおすすめします。

これは明らかに否定的な見通しです。しかしわたしは、データが結論へと導くように仕向けたのです。そのような見通しにもかかわらず、どのようにすればそれをうまく利用できるでしょうか。資金は全額投資するようにとの圧力が昂進するなかで、流動性を利用することが将来を見越した投資戦略としてまちがいないと思います。資金を投じるのにもってこいの時期が、再びやってくるでしょう。バリュー投資に関する有名な言葉、これをみなさんにおすすめします。「他人が貪欲なときは慎重であれ。他人が慎重なときは貪欲に行け」。市場における変動は、著しく増大するにちがいありません。ですから手持ちの流動性を増やしておけば、正しい時期がめぐってきたときに、欲張りになれる機会を提供してくれるでしょう。

わたしの仕事人生は、今やたそがれの時期に達しました。わたしがある程度の知恵を備えるに至り、また投資における勇気の一面を示せていれば、うれしいものです。[ジャーナリストの]ノーマン・カズンズはこう言っています。「知恵とは、将来の行く末を予想するものである」。知恵とはいつも至るところにあるものですが、それに気づけないだけかもしれません。そして勇気のほうは、かつての同郷人が示していた見方がわたしの好みです。マーク・トウェインの言葉です。「勇気とは、恐れに立ち向かうものであり、恐れを御するものであって、恐れを持たぬことではない」。知恵に到達して勇気を示すこと、そうすれば成功した投資のプロとなれること請け合いだと思います。

ご清聴ありがとうございました。

The bond market presents another difficult choice. With the ten-year Treasury bond yield at 2.3%, there is little margin for error, unless we remain in a low inflationary environment. For the next two or three years, I believe this will be the case. However, with each passing year after that, I believe the risks of principal loss rises at an exponential rate.

These are dangerous times. Unless sovereign governments mend their ways, we face a volatile and difficult future. Few politicians are willing to make the difficult fiscal policy choices that are necessary to reform their respective economies; thus, monetary policy appears to be the only game in town to stimulate economic growth.

Within two or three years, I expect that it will be obvious that QE policies will have failed miserably. Stunted economic growth, with elevated unemployment or under employment, will force the hand of many countries. How to stimulate economic growth when fiscal policy reform is off the table and QE has failed? I would argue that the last arrow available in the quiver of economic stimulation is currency policy. A general competitive devaluation of a country's currency will be all that remains. Both Japan and Europe are proceeding down this pathway. Should they be successful in their currency devaluations, this will force the hands of other countries. In the last two major international currency episodes, 1980-1985 and 1998-2001, the dollar proved to be the currency shock absorber. A review of the US Dollar Index graph will demonstrate this. Unlike these previous episodes, I don't believe a similar outcome is possible since this country has far more systemic imbalances, when compared to those prior periods, and thus, a smaller rise in the dollar's value will elicit a more immediate negative response. So my recommendation to you is to keep a very close watch on the currency markets over the next few years.

This has been a decidedly negative outlook but I let the data lead me to the conclusion. Despite this, how can you take advantage of it? With heightened pressures to be fully invested, I believe the utilization of liquidity as a proactive investment strategy is warranted. There will come a time when it will be wonderful to be investing again. My recommendation to you is the classic value saying--be cautious while others are greedy and be greedy when others are cautious. Market volatility is bound to increase materially so an elevated liquidity position will afford you the opportunity to be greedy when the time is right.

As I enter the twilight of my career, I hope that I have attained some degree of wisdom as well as demonstrated an element of investment courage. As Norman Cousins said, "Wisdom is the anticipation of consequences." They are always there but you may not be aware of them. And as for courage, I like one of our former local resident's views on the topic. Mark Twain said, "Courage is resistance to fear, mastery of fear, not absence of fear." Attain wisdom and demonstrate courage and you are well on your way to becoming a successful investment professional.

Thank you.