(その24) 理由を尊重する傾向
Twenty-Four: Reason-Respecting Tendency
進んだ文化のもとではよくみられますが、人間にはものごとを正しく認識することを好む性質があるため、それを訓練するのを楽しむところがあります。クロスワードなどのパズルやブリッジ、詰将棋のように、知性を必要とするあらゆるゲームが広く親しまれているのは、これによるものです。
となれば、この傾向が言わんとすることは明らかでしょう。ものを教えようとする人は、なぜやってほしいのかも言わずに命令口調で伝えるのではなく、本来の理由を説明するようにすれば、言われたほうもずっとうまく学べるようになるのです。理由のことをきちんと考えてから要求を言いわたし、さらには、要求する相手とは理由づけも含めてコミュニケーションすること。賢明なる心がけとはこういうものです。
There is in man, particularly one in an advanced culture, a natural love of accurate cognition and a joy in its exercise. This accounts for the widespread popularity of crossword puzzles, other puzzles, and bridge and chess columns, as well as all games requiring mental skill.
This tendency has an obvious implication. It makes man especially prone to learn well when a would-be teacher gives correct reasons for what is taught, instead of simply laying out the desired belief ex cathedra with no reasons given. Few practices, therefore, are wiser than not only thinking through reasons before giving orders but also communicating these reasons to the recipient of the order.
「なぜ」という疑問に答えるのに有用な考えを入れておく格子枠に対して、人生を通じて経験したり、読んだり聞いたりしたことを追加し続けることで、学んだことがもっとも容易に吸収され、また使われます。実のところ「なぜ」と疑問を持つことは、精神面の潜在能力を大きく広げてくれる、ロゼッタ・ストーンの役割を果たします。
しかし残念なことに「理由を尊重する傾向」は強力なものなので、説明される理由が意味のないものだったり、誤っていても、命令や要求に応じやすくする力があります。これを示した心理学の実験があります。コピー機に並ぶ人の列に来た実験担当者が「これをコピーしないといけないのです」と理由を説明することで、見事にも先頭へ割り込ませてもらったのでした。この「理由を尊重する傾向」が生み出す副産物は、理由というものの重要性が広く認知されているために起こる、ありがたくない条件反射なのです。当然ながら、幾多のくだらない理由があちこちで使われており、たとえばコマーシャルの中や、カルトにおいて「信者」が拒絶するものを受け入れされるときが、その例です。
In general, learning is most easily assimilated and used when, life long, people consistently hang their experience, actual and vicarious, on a latticework of theory answering the question: Why? Indeed, the question “Why?” is a sort of Rosetta stone opening up the major potentiality of mental life.
Unfortunately, Reason-Respecting Tendency is so strong that even a person's giving of meaningless or incorrect reasons will increase compliance with his orders and requests. This has been demonstrated in psychology experiments wherein “compliance practitioners” successfully jump to the head of the lines in front of copying machines by explaining their reason: “I have to make some copies.” This sort of unfortunate byproduct of Reason-Respecting Tendency is a conditioned reflex, based on a widespread appreciation of the importance of reasons. And, naturally, the practice of laying out various claptrap reasons is much used by commercial and cult “compliance practitioners” to help them get what they don't deserve.
格子枠の話題はおなじみとなってきましたが、以下の過去記事でとりあげています。
2 件のコメント:
== 理由を求める。 ==
人間はやることに理由を求めたがるのは人間の本質ですね。
しっかりとしたビジネスを行っている家具小売大手がここ数カ月の間に暴落していますが、私は、この暴落を
「証券会社といった権威ある者が投資判断を買いから中立に引き下げると、その内容が近視眼的なくだらない理由であるにもかかわらず、その内容よりも権威ある者が投資判断を引き下げたんだからという理由で多くの投資家が条件反射的に売ってしまう。売られている状況を見たさらに多くの投資家が多くの投資家が売っているという理由を見つけて条件反射で売ってしまっている。」
からであると考え、平常心を保ちながら買い進めています。
自分がパニックに陥らないための心の隠れ家のようなものですが、実はこれこそがマヌケな人間(私)がもっともらしい理由を見つけて条件反射でマヌケな行動をしてしまう良い例なのかもしれません。
== ブロンコさん、ありがとうございます ==
ブロンコさん、お久しぶりです。コメントをありがとうございました。
今回も心理学的な話題を展開していただき、参考になりました。理由を求めるのと併せて、「権威によって、誤って影響される傾向」が働いている典型ですね。また2段階で分析させているあたりも、ブロンコさんらしいやりかたと感じました。
ご指摘の企業はニトリかと想像します。最近の価格下落はわたしも気にはなっていました。せっかく機会を作っていただいたので、身を入れて自分なりに調べてみたいと思います。
またよろしくお願いします。
それでは失礼いたします。
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