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2018年12月24日月曜日

いつ買い始めればよいのか(後)(ハワード・マークス)

前回の投稿のつづきで、ハワード・マークスによる「証券の買いどき」の説明です。『市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学』からの引用文です。

だが、真意はこうなのではないか。「(とりわけ下げどまる前に買うこと、そして市場の状態が良くないことに)恐怖を感じるから、相場が底に達して混乱が収まり、先行き不透明感がなくなるまで待とう」。だが、これまで述べてきたことから、もうすっかりおわかりではないかと思うのだが、混乱が収まり、投資家の気持ちが落ち着いたころには、バーゲンは終わっているのだ。

オークツリーでは、底に達するまでは買わない、という考え方を徹底的に排除している。

・第一に、いつ底に達したのかを知る方法などない。ネオンサインが光って知らせてくれるわけではないのだ。その時点を過ぎてからでなければ、底に達したと認識することはできない。回復が始まる前の日というのが底の定義だからである。したがって、当然のように事後でなければ認識できない。

・第二に、欲しい資産を最大限に買うことができるのは、だいたいにおいて相場が下落しているときだ。ナイフを掴もうとしない市場参加者が傍観している間に、降伏した売り手から買うのである。だが、ひとたび相場が底に達して下げどまると、当然のように売り手はほとんどいなくなる。そして、その後の反騰の時期には買い手が優勢となる。売り物は枯渇し、買い志望者は競争の激化に直面するのである。

(中略)

確実性と精度を重視する方針に基づいて実施されるであろう他の多くの投資行動の場合と同じく、底打ちするのを待ってから買いはじめるのは非常に典型的な愚行である。では、底値に狙いを定めるのが間違いだというのなら、一体いつ買えばよいのか。答えは単純明快だ。価格が本質的価値を下回ったときである。価格が下がりつづけている場合はどうなのか。さらにお買い得になっているであろうから、買い増せばよい。したがって、最終的に成功を収めるために必要なのは、(1)本質的価値を推計すること、(2)初志貫徹するための精神的な強さを身につけること、(3)結果的に本質的価値の推計が正しかったと判明すること、の三つに尽きる。(p. 316)

上の引用文には重大な注意点があります。「価格が本源的価値を下回ったとき」が買いどきだとしていますが、ハワード・マークス氏自身が本書全般で触れているように、下落中の価格はさらに下落し続ける可能性が十分に考えられる点です。その方向性に対する感覚を学べるのが本書であり、それこそが本書の持つ最大の価値ですから、上記引用の字面だけをとらえて行動に移すのは早計だと思われます。

また価格下落については、高名な2人のバリュー投資家が教示してくれた言葉を以下の過去記事でご紹介しています。

3割下がっても、油断は禁物(セス・クラーマン)
「いずれ来たる下落を見やった投資家3名の言葉」中の、チャーリー・マンガーの言葉

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