ot

2020年5月12日火曜日

2020年バークシャー株主総会(1)チャーリー・マンガーのいない総会

バークシャー・ハサウェイの株主総会が5月2日(土)に開催されました。例年とはちがって、今年は取締役会を中心とするメンバーのみが参加する次第となりました。また壇上に座る2名はウォーレン・バフェットと、事実上の後継者と思われる副会長のグレッグ・アベル(発音は"エイベル"に近い)でした。

総会の模様はYahoo Financeがストリーミング中継をしましたが、そのアーカイブ映像は以下の2つのサイトでも公開されています。今回からご紹介するシリーズでは、トランスクリプトが付けられている前者のサイトから原文を引用させていただきます。

Berkshire Hathaway Shareholder Event 2020 (rev.com) (トランスクリプト付き)

2020 Berkshire Hathaway Annual Meeting - Part 1 (CNBC) (映像拡大表示可)

総会全体の構成としては、前半にウォーレンから長いスピーチがあり、途中に公式の議事をはさんで、後半はいつものように株主から寄せられた質問に対して2名が見解を述べていました。まず今回は、前半冒頭部の話をご紹介します。(日本語は拙訳)

なお、総会全般の基調とそれを受けた反応について、あらかじめ少し触れておきます。前半部に取り上げられた話題に重苦しい面があったり、質疑応答ではバークシャーが慎重な資本配分を堅持していく方針を伝えたことで、既存株主からは批判的な感想も挙げられました(某所での話)。もちろん、航空会社株の売却があったことや、さらにはバークシャーの株価が低迷していることも大きな理由なのでしょう。しかしさまざまな要因を考慮すれば、ウォーレンが選んだ事業上の方針や今回のスピーチは、個人的には同意できるものですし、改めて学ぶところもいろいろとありました。またグレッグ・アベルの姿勢や人柄にも、好印象を持ちました。

<ウォーレン> これからバークシャ・ハサウェイの年次総会を始めます。とても年次総会にはみえないと思います。なおさら年次総会に感じられないのは、60年来のわがパートナーであるチャーリー・マンガーが列席していないからでしょう。この総会に参列されるみなさんは、実のところチャーリーの話を聞きたくて集まっている人ばかりだと思います。しかしながら、ご安心ください。96歳になったチャーリーは元気にやっております。知性のほうも以前と変わらず明敏です。強い声音もそのままです。しかし、この総会のために彼をオマハに呼ぶのが妙案だとは思えませんでした。実のところ今回の件で、彼は新しい生活を始めています。日々の作業にZoom[によるオンライン会合]を加えたのです。彼は毎日さまざまな人と会合をしています。ですから、わたしからすれば彼という存在をテクノロジー的に飛ばした形になります。これは、それほど大したことではありません。いわば、ピーナッツなどを踏まないようにして歩くようなものです(笑)。それはともかく、チャーリーが元気なことはたしかです。来年には、ここに戻ってきます。来年は例年どおりにすべてが開催できるよう、準備を進めていきます。

当社の保険部門を統括する副会長アジート・ジェインも、ニューヨークで健在にやっています。彼についても、この総会のためにオマハに来てもらう必要はないと考えました。ただし、本日わたしの左隣にはグレッグ・アベルが列席しています。副会長である彼は、保険事業を除く全事業を統括しています。つまり、売上高の総額が15兆円以上で、産業の領域は何十にもわたり、総従業員数が30万名以上になる企業群を管理しています。彼はその仕事に就いてから数年目になります。正直なところ、数年前のわたしにはろくにできていなかった責務を、もしもアジートとグレッグに任せていなかったら、今日のわたしになにができていたのか想像もできません。グレッグには大いに感謝しています。今日の話が進むうちに、彼の出番が増えてくると思います。


(Warren Buffett 00:06)

This is the annual meeting of Berkshire Hathaway. It doesn't look like an annual meeting. It doesn't feel exactly like an annual meeting, and it particularly doesn't feel like an annual meeting because my partner of 60 years, Charlie Munger, is not sitting up here. I think most of the people that come to our meeting really come to listen to Charlie. But I want to assure you, charlie at 96 is in fine shape. His mind is as good as ever. His voice is as strong as ever, but it just didn't seem like a good idea to have him make the trip to Omaha for this meeting. Charlie, Charlie is really taking to this new life. He's added Zoom to his repertoire. So has meetings every day with various people, and he's just skipped right by me technologically. But that really isn't such a huge achievement. It's more like, kind of like stepping over a peanut or something. But nevertheless, I want you to assure you, Charlie is in fine shape, and he'll be back next year. We'll try to have everything in the show that we normally have next year.

(Warren Buffett 01:26)

Ajit Jain also, who is the vice chairman in charge of insurance, is safely in New York. Again, it just did not seem worthwhile for him to travel to Omaha for this meeting. But on my left we do have Greg Abel, and Greg is the vice chairman in charge of all operations except insurance. So Greg manages a business that has more than 150 billion in revenues and crosses across dozens of industries and has more than 300,000 employees. He's been at that job a couple of years, and frankly, I don't know what I'd be doing today if I didn't have Ajit and Greg handling the duties that I was doing only about a quarter as well a couple of years ago. So I owe a lot of thanks to Greg, and you'll get exposed to him more as this meeting goes along.

2 件のコメント:

リュウジ さんのコメント...

株主総会の翻訳楽しみにしておりました。今年もこの季節がやってきましたね。

近年は数年前に比べると「株主への手紙」や総会関係の翻訳記事が随所で見られるようになりましたが、個人的にはbetseldomさんの記事でないとどうにもしっくりこないので、こうして拝読できることをうれしく思います。

ところで、ウォーレンの「魅力的な価格の企業は見当たらない」発言や航空株に対する方針転換、金融株の一部売却など、気になる動きもありましたね。ウォーレンも様子見せざるを得ない状況なのか、布石のための微調整なのか。疑問は尽きません。

betseldom さんのコメント...

リュウジさん、こんにちは。コメントをありがとうございます。

翻訳については、時間的な制約の中で、自分がある程度納得できる水準に達した文章を投稿しているつもりです。ですから、リュウジさんのような読み手の方がごひいきにしてくださるのは、うれしいばかりです。訳文の質に濃淡があるかと思いますが、ひきつづきお付き合いいただければと存じます。

ウォーレンの現在とっている行動や姿勢が、ちょうど訳出してきた「南北戦争編」や次の「世界恐慌編」が示唆するところと交わる可能性は無視できないと、個人的には考えています。世の中だけでなく、現在は彼自身も試されていると自覚しているでしょうし、今回が最大最後の大仕事だと感じているようにも思えます。翻訳のほうはどこまで取り組めるかお約束できませんが、今次総会のトランスクリプトは通読する価値があると申し上げておきます。

またよろしくお願いします。それでは失礼します。