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2012年3月8日木曜日

バークシャー・ハサウェイの夜明け

個人的な思い込みですが、2008年以来の日本の株式相場の低迷は、1970年代のアメリカのものと似たところがあります。1973年と1974年にはS&P500指数も大きく落ち込み、-14.8%と-26.4%の減少でした(配当込み)。ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイも同様に純資産が伸び悩みましたが、その後の上昇ぶりは相当なものです。1975年からの4年間のゲインは、21.9%, 59.3%, 31.9%, 24.0%です。今回はウォーレンによる1978年の「株主のみなさんへ」からの引用で、1970年代中盤以降にウォーレンがとっていた投資姿勢です。(日本語は拙訳)

ご参考までに、当時のアメリカ株式市場の動きとしてS&P500のチャートを文末に載せています。ウォーレンの文章を読んでから、ごらんになってください。

ここで打ち明けてしまいますが、保険部門で行っている株式投資については、すごく楽観的にみています。もちろん、無条件に株に入れ込んでしまうわけではありません。状況によっては、保険屋が普通株へ投資するのはほとんど意味がないときもあります。

今はわくわくしながら、保険部門の純資産の大部分を株式投資へ向けています。ただし、投資対象は次の条件を満たすものに限っています。私どもがビジネスを理解しており、長期的な見通しが明るく、誠実でいて有能な人が経営しており、そしてとても魅力的な値段がつけられている場合です。最初の3つの条件を満たす投資候補は若干は見つかるものですが、最後の条件がそろわずに投資に踏み切れないことはよくあります。例えば、1971年にはバークシャーの保険部門における普通株投資の資産規模は、簿価ベースで10.7百万ドル[現在価値で約58億円。以下同様]、時価評価額では11.7百万ドル[63億円]でした。素晴らしい企業はあったのですが、株価のほうはほとんど興味を持てませんでした。(書かずにいられないので書いてしまいますが、年金基金の[資産運用]マネージャーは、1971年当時には純資産の122%を株式へ投資していました。高値での買い物だったので、十分には買えなかったようです。一方、株価が底値をつけた後の1974年には、株への投資比率は21%と、記録的な低水準にとどまりました)

この数年間、われわれの歩みは変わりました。1975年末に保険部門が保有していた普通株は、時価では39.3百万ドル[160億円]、簿価ベースもちょうど同じです。それが1978年末の株式(転換優先株含む)は、簿価ベースで129.1百万ドル[520億円]、時価で216.5百万ドル[870億円]に増えました。普通株の売却益は税引前で24.7百万ドル[100億円]でしたので、この3年間での株式投資からの利益は、含み益を合わせると112百万ドル[450億円]になります。同期間のダウ平均は852から805ポイントへ下がりました。バリュー株の投資家にとっては最上の時期でした。

証券市場では競売によって価格が提示されるので、まさしくずば抜けた企業に対して、ぱっとしないビジネスを取引相手から買うときよりも、大幅に割り引かれた値段がつくことがあります。私どもはそのような機会を探し続け、保険部門の株式ポートフォリオに組み入れていきます。

(訳注)1ドル=100円で計算しました。

We confess considerable optimism regarding our insurance equity investments. Of course, our enthusiasm for stocks is not unconditional. Under some circumstances, common stock investments by insurers make very little sense.

We get excited enough to commit a big percentage of insurance company net worth to equities only when we find (1) businesses we can understand, (2) with favorable long-term prospects, (3) operated by honest and competent people, and (4) priced very attractively. We usually can identify a small number of potential investments meeting requirements (1), (2) and (3), but (4) often prevents action. For example, in 1971 our total common stock position at Berkshire's insurance subsidiaries amounted to only $10.7 million at cost, and $11.7 million at market. There were equities of identifiably excellent companies available - but very few at interesting prices. (An irresistible footnote: in 1971, pension fund managers invested a record 122% of net funds available in equities - at full prices they couldn't buy enough of them. In 1974, after the bottom had fallen out, they committed a then record low of 21% to stocks.)

The past few years have been a different story for us. At the end of 1975 our insurance subsidiaries held common equities with a market value exactly equal to cost of $39.3 million. At the end of 1978 this position had been increased to equities (including a convertible preferred) with a cost of $129.1 million and a market value of $216.5 million. During the intervening three years we also had realized pre-tax gains from common equities of approximately $24.7 million. Therefore, our overall unrealized and realized pre-tax gains in equities for the three year period came to approximately $112 million. During this same interval the Dow-Jones Industrial Average declined from 852 to 805. It was a marvelous period for the value-oriented equity
buyer.

We continue to find for our insurance portfolios small portions of really outstanding businesses that are available, through the auction pricing mechanism of security markets, at prices dramatically cheaper than the valuations inferior businesses command on negotiated sales.

1975年末のバークシャーには株式の含み益がなかったとは、なんとなく勇気付けられるものです。といっても、その後に大きなゲインをあげたのは、ワシントン・ポストとGEICO。どちらもバークシャー躍進の中心銘柄です。ただし、両社ともウォーレンが経営判断に関わるようになっていくので、ふつうの個人投資家とは、若干趣きが違いますね。

最後になりましたが、S&P500のチャート(1970年代)はこちらです。


2 件のコメント:

is さんのコメント...

== No title ==
betseldomさんのブログにもありましたが、
1973年~1974年はチャーリーマンガーにとってはかなりやばい年でしたよね。
30%減が2年も続くって精神的にも相当参りますよね。
75-78年のバリュー株の投資家の成績とダウ平均が少しも比例していないのは
驚きですね。バフェットだけじゃなさそうですし。
ちなみに、私は78年生まれです^^

betseldom さんのコメント...

== 30%減が2年間続くと、半減ですよね ==
ウォーレンは「半減ぐらいはふつうです」とか言っていますが、私だったら持ち株がすっかり半減したら、相当へこみますね。
なお、チャーリーのパートナーシップが大幅下落した原因は、構成比率が最大の2銘柄が足をひっぱったとのことです。
たしかに、同期間のバリュー投資家の成績は見事ですね。シュロスだけでなく、Tweedy, BrowneやSequoiaも大幅上昇でしたね。
それでは失礼します。